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(1)

獲 得, す なわ ち接 着 に対 す る要 求 性 の変 化 であ る^<1,2)>。一 方, 多 くの腫 瘍 細 胞 が増 殖 因子 を産 生 す る こ とが 知 られ て お り^<3∼6)>, 腫 瘍 細 胞 の増 殖 特 性 は腫 瘍 細 胞 自身 が 産 生 す る 増 殖 因子 に 起 因す るの で は な いか と 考 え られ て い る^<7)>。図1の3つ の モ デ ル in vivo を想 定 した も の で あ る が, こ れ を in vitro に あ て は め て, 正 常 細 胞 で は増 殖 因 子 を 外か ら 与 え る 必 要 が あ っ て endocrine の系 に な っ て い る の に対 して, 腫 瘍 細 胞 で は autocrine の系 が 成 立 して い る と考 え るの で あ る 。

TGFは transforming growth factor あ る い は tumor growth factor の 略 で あ る。1978年 にRNA腫 瘍 ウ イ ル ス に よ り腫 瘍 化 した マ ウス線 維 芽 細 胞 の無 血 清培 養上 清 か ら分離 さ れ た の が 最 初 の 報 告 で あ り^<8)>, そ の後, 多 く の腫 瘍 細 胞, 腫 瘍 組 織,, 胎 児 細胞 さ らに 正常 組 織 か ら も 種 々 の タ イ プ のTGFが 分 離 され て い る^<9)>。TGFは正 常 線 維 芽 細 胞 に 腫 瘍 細 胞 の増 殖 特 性 を 発現 させ る活 性 を 持 っ 。 す なお ち, TGF存 在 下 で は 正 常 細胞 は 軟寒 天 中 で 増 殖 して コ ロ ニ ー を形 成 す る (図2)。 し か し な が ら 図1. 増 殖 因子 産 生 細 胞 と受 容 細 胞 と の関 係^<7)> 増殖 因子 産生細胞 か ら分 泌 され た 増 殖 因 子 が, 血 流 を 介 して 遠 隔 の受 容 細 胞 に作 用 す る場 合 を endocrine, 直 接 近 傍 の増 殖 因子 産 生 細 胞 とは 別 の種 類 の 細 胞 に 作 用 す る場 合 を paracrine, 増 殖 因 子産 生細 胞 が 自身 で産 生 した 増 殖 因子 に対 す る受 容 細 胞 で あ る 場 合 を autocrine と定 義 した 。in vitro に お い て は, 増 殖 因 子 を 血 清 ま た は 精 製増 殖 因子 と し て添 加 す る こ とで供 給 さ れ る 場 合 を endocrine, co-culture あ る い は feeder cell layer を 使 用す る こ とで 増 殖 因 子 を 供 給す る 場 合 を paracrine, 無血 清 培 地 ま た は 限 定 培 地 で 増 殖 が 可 能 な 場 合 を autocrine と理 解 す る こ とが で きる 。

Reiko Hirai, Kazuko Yamaoka, 東 京 都 臨 床 医 学 総 合 研 究 所 腫 瘍 細 胞 研 究 室 (〒113東 京 都 文 京 区 本 駒 込3-18-22) [Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science, Honkomagome, Bunkyo-ku, Tokyo 113, Japan]Transforming Growth Factor

Key word【TGF】 【細 胞 腫 瘍 化】 【autocrine】

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であ るが, あ る種 のTGFは 正 常 組 織 に も存 在 す る こ と が 明 らか に な っ た の で, TGFは transforming growth actor の 略 と して お くの が 適 当 で あ ろ う。TGFは 多 く の腫 瘍 細 胞 か ら産 生 され, 正 常 細胞 に腫 瘍細 胞 の 増 殖 特 性 を発 現 さ せ る増 殖 因 子 で あ る と ころか ら, 腫 瘍 細 胞 自 身 の増 殖 に autocrine 的 に関 与 して い る こ と が 予 想 さ れ, 腫 瘍 細 胞 由来 増 殖 因子 の 中 で も特 に注 目を集 め て い る とい え よ う。 あ る種 のTGFを 腫 瘍 マ ー カ ー の ひ とつ と して ス ク リー ニ ン グに利 用 しよ う とす る試 み, あ るい は増 殖 の遅 い細 胞 にTGFを 作 用 さ せ る こ とに よ り, 増 殖 を促 進 させ て物 質 産 生 能 を 向上 させ る こ との検 討 な ど の応 用 的 研 究 もな され て い るが, TGFの 基 礎 的 研 究 は, [1] 各種TGFの 構 造, [2] 細 胞の 腫 瘍化 とTGF産 生 との 関連, さ らに[3] TGFの 作 用 機 序 を 解 明 す る こ とに よ り, 腫 瘍 細 胞 の増 殖 にお け るTGFの 役 割 を 明 ら か に し, そ れ に立 脚 して腫 瘍 細 胞 の増 殖 を制 御 す る こ と を 目標 と して行 なわ れ て い る。 本 稿 で は まず 上 記 [1] につ い て 概 説 し, 筆 者 らの 研 究 を 中心 に [2] お よび [3] に関 連 した研 究 の現 状 を述 べ, 最 後 に最 近 TGFβ が あ る 種 の 細 胞 に お い て は 増 殖 阻害 的 に 作 用 す る bi functionalな 増 殖 因子 であ る こ とが 明 らか に な っ た の で^<10,11)>, これ につ い て 紹 介 し, TGFの 作 用 に関 し新 た な 視 点 か ら問 い直 す 必 要 性 につ い て述 べ る。 I. 各 種TGFの 性 質 と 構 造 TGFは 物 理 化 学 的 な らび に 生 物 学 的 性 質 を 異 にす る 複 数 の増 殖 因 子 の 総 称 であ る。 活 性 判 定 の指 標 細 胞 と し て は ラ ッ トま た は マ ウ ス の線 維 芽 細 胞, NRK49Fま た はBALB3T3細 胞 な どが 使 用 され る。SGFと い う名 称 で 報 告 され た 最 初 のTGF8^<8)>は, 後 に さ らにTGFα と β とに分 画 され る こ とが わ か っ た^<12)>。α,β 以 外 のTGF は一 括 して γタ イ プ と され て い る。 表1に 筆 者 らが1983 年 に 既報 のTGFと は 異 な る 新 しいTGFを 分 離 し, TGFγ2と 命 名 した 際 た採 用 したTGFの 分 類 の基 準 を 示 した 。 1. TGFα TGFα はEGFレ セ プ タ ー に 結 合 す るTGF群 と 定 義 され, 活 性 は 表1に 示 す よ うに^<125>Iで標 識 さ れ た EGF^<*1>の レセ プ タ ー へ の 結 合 の 競 合 阻止能 に よっ て 測 定 さ れ る。各 種 腫 瘍 細胞 また はそ れ ら の無 血 清 培 養 上 清 図2. BALB3T3A31細 胞 の軟 寒 天 培 地 中で の増 殖 10^3個 のBALB3T3A31細 胞 を1mlの 軟 寒 天 培 地 (0.35%寒 天 を 含 む5%ウ シ胎 児 血 清 加 ダ ル ベ ッコMEM培 地)に 懸 濁 し, あ らか じめ1mlの 硬 寒 天 培 地 (0.7%寒 天 を 含 む) で コ ー トして お いた 径35mmの シ ャー レに 入 れ, 室 温 で 固 めた の ち, 37℃ で7日 間培 養 した 。A : TGF非 存 在, B : TGFγ2存 在 。 充 分 量 のTGFが 存 在 す る 場 合 の コ ロニ ー 形 成 率 は100%近 くに 達 す る 。 表1. TGFの 分 類

^*1 上 皮 細 胞 増 殖 因 子 (epidermal growth factor) : 分 子 量 約6

,000の 蛋 白 質 で, 上 皮 細 胞, 線 維 芽 細 胞 の増 殖 を促 進 す る 。雄 マ ゥ

ス の 顎 下 腺 に 多 量 に 存 在 す る。

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か ら酸 抽 出 した 蛋 白質 を酸 性 条 件 下 で ゲ ル濾 過 にか け て 分 画 す る こ と に よ り部 分 精 製 標 品 を得 る こ とが で き る。 図3に 例 と して トリ肉 腫 ウイ ル ス に よ り腫瘍 化 した ラ ッ ト細 胞S-7-1の 無 血 清 培 養 上 清 中 のTGFの バ イ オ ゲ ルP-60で の分 画 像 を示 した 。 フ ラ ク シ ョン52-62に 高 分 子TGFα が, フ ラ クシ ョン84-88に 低 分 子TGFα が 検 出 され る。な お フ ラ ク シ ョン66-76に 溶 出す る画 分 に は, 後 述 す るTGFβ が 存 在 す る。 各 画 分 を さ らに逆 相 ク ロ マ トグ ラ フ イー にか け る こ とに よ り, そ れ ぞれ の TGFを 精 製 す る こ とが で き る。 低 分 子TGFα は6シ ス テ イ ン残 基 を含 む50ア ミノ 酸 か ら な っ て お り, そ の一 次 構 造 は ヒ ト, マ ウ スお よび ラ ッ トで きわ め て 近似 して い る。N末 側26ア ミノ酸 に つ い て み る と ヒ トと ラ ッ トとで3ア ミノ酸 が異 な る のみ で あ る^<13)>。ま た, 低 分 子TGFα はEGF (53ア ミノ酸) と全 ア ミノ酸 の33%が 共 通 で あ っ て^<14,15)>, 図4に 示 す よ うに類 似 した 二 次 構 造 を とる こ とが 予 想 され て い る が, 両 者 は 抗 原 的 に は ま った く 異 な る。 す で に ヒ ト TGFα のmRNAが クロー ン化 さ れ て 高分 子 前 駆 体 の存 在 が 示 唆 され て お り^<16)>, 遺 伝 子 は第2染 色 体 に位 置 づ け され て い る^<17)>。低 分 子TGFα ばEGFと は別 の遺 伝 子 に 指 令 され る蛋 白質 であ る に もか か わ らず, 両 者 の生 物 学 的 性 質 は現 在 の とこ ろ ま っ た ぐ同 じ と考 え られ て い る。 す なわ ちTGFα はEGFと 同様 にEGFレ セ プ タ ー を介 して作 用 し, 各 種 の線 維 芽 細 胞 に対 して mitogen (細 胞 分 裂 促 進 因 子) 活 性 を 示 す 。ま た, EGFの 生 理 作 用 と し て 知 られ て い る新 生 児 マ ウス の eyelid opening 促 進^<18)> や, 骨 か らのCa^<2+>遊離 誘 導^<19)>などの 活 性 も示す 。 しか 図3. ト リ肉 腫 ウイ ル ス に ょる 腫 瘍 化 細 胞S-7-1が 産 生 す るTGFの バ イオ ゲルP-60で の 分 画 S-7-1細 胞 の 無 血 清 培 養 上 清 (10 1) を 出 発 材 料 と して, ダ イ ア フ ロー で の 濃縮, 1%酢 酸 に対 す る透 析, 凍 結 乾 燥 を 行 な った のち, 1M酢 酸 に よ り蛋 白質 を抽 出, バ イ オ ゲルP-60に か け, 1M酢 酸 で溶 出 した 。 各 画 分 に つ い て, ミン ク肺 由 来 細 胞CCL64へ の [^<125>I] EGFの 結 合 阻 止 活 性 (TGFα 活 性) (○), NRK49F細 胞 のEGF (2ng/ml) 存 在 下 で の コ ロ ニ ー形 成 能 (TGFα お よび β活 性) (●) を 測 定 した 。 図4. EGF (a) お よびTGFα (b) の ア ミ ノ酸 配 列 と予 想 され る 二次 構 造 TGFα の ア ミノ酸 の中 で 影 で 示 した もの はEGFと 共 通 で あ る。 1118

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し, 単 独 で はTGF活 性を もつ て い な い。 表1に は 低分 子TGFα のみ を あ げ て お い た が, 図3 に 見 られ る よ うに分 子量2∼3万 の高 分 子TGFα も存 在 す る。 高 分 子TGFα につ いて は低 分 子TGFα と共 通 の ア ミノ酸 配列 を もち, 抗 原 性 につ い て も共 通 であ る こ とが わ か って い るが^<20)>, 詳 細 は 検討 中 で あ る。 高 分 子 TGFα はTGF活 性 を もち, あ る種 の腫 瘍 マ ー カ ー と な り うる可 能 性 が 示 唆 され て い る^<21)>。 2. TGFβ TGFβ は表1に 示 した分 子量25,000の1種 類 が 知 ら れ て い る。分 子 量12,500の サ ブ ユ ニ ッ ト2個 の ホモ2 量 体 で あ り, ヒ トTGFβ はmRNAが ク ロー ン化 され て全 構 造 が 決定 され て い る^<22)>。ヒ ト以 外 で は ウシTGFβ につ い て一 部 の ア ミノ酸 配 列 が知 られ てお り^<23)>, 両 者 は き わ め て近 似 して い る。 ラ ッ トNRK49F細 胞 をTGF 活 性 の指 標 細 胞 と した場 合 に は, 単 独 で はTGFと して 作用 せず, EGFま た はTGFα との 共 存 下 で の みTGF 活 性 を示 す 。 こ の性 質 はTGFβ を 同 定す る うえ で は 便 利 で あ る が, 他 の指 標 細 胞, た とえ ば マ ウスAKR2B やBALB3T3細 胞 な どを 用 い た 場 合 に はEGFな どの 共 存 は必 要 で は ない た め に 一 時 期 混 乱 を 生 じた 。 表1に T GFγ1と してお い たTGFはTGFβ そ の もの で あ る こ とが後 にわ か っ た の は そ の一 例 で あ る。 TGFβ は熱 お よび酸 耐 性 め 安 定 な 蛋 白質 で, 1PM程 度 の 低濃 度 で 活 性 を示 す 。多 くの 腫 瘍 細 胞 か ら産 生 され る ほか, ほ とん どす べ て の正 常細 胞 に 存 在 し, と くに血 小 板 中 に多 量 に蓄 積 され て い る こ とが 知 られ てお り^<24)>, 血 小板 由 来 の増 殖 因 子PDGF^<*2>と 同様 に 創 傷 の修 復 の 際 な どに paracrine 的 に機 能 す るの で は な いか と考 え ら れ て い る^<25)>。ま た, あ る種の 細胞 に 対 して は後 述 す る よ うに増 殖 阻 害 作 用 を示 す こ とも知 られ て い る。 血 小 板 を 出発 材 料 と して, 酸 抽 出, ゲル 濾 過 (図5) 逆 相 ク ロマ トグ ラ フ ィー を行 な うこ とに よ り, 精 製 標 品 を 得 る こ と が で き る。 また 図3と 図 与を比 較 す る と 明 らか な よ う に, 腫 瘍 細 胞 か ら得 る こ と も可 能 で あ る。TGFβ の み を 産 生 す る腫 瘍 細 胞 も報 告 され て い る が, 多 くの 場 合, 図 3に 見 られ る よ うにTGFα と β の双 方 が 産 生 され る こ と は興 味 深 い。TGFβ は特 異 的 な レセ プ タ ー を 介 して 作 用 す る こ とが 知 られ て い る^<26∼28)>。 3. TGFγ2 TGFγ2は ト リ肉腫 ウ イル ス に よ り腫 瘍 化 した ラ ッ ト 細 胞 か ら中 性 条 件 下 で分 離 ・精 製 さ れ たTGFで あ り, 熱 お よび 酸 に対 して 不 安 定 な分 子 量12,000の 単 鎖 蛋 白 質 であ る こ と, BALB3T3細 胞 を 指 標 細 胞 と し, TGF 図5. ヒ ト血 小 板 由来TGFβ の バ イ オ ゲルP-60で の分 画 有 効 期 限 切 れ 血 小 板 濃 縮 血 漿 か ら ヒ ト血 小 板 を 集 め, リ ン酸 緩 衝 液 (pH7.2) で 抽 出, 同 緩 衝 液 で 平 衡 化 したCMセ フ ァ デ ック ス カ ラ ム にか け てPDGFを 除 い た あ と, 1%酢 酸 に 対 す る 透 析, 凍 結 乾 燥 を経 て, 1M酢 酸 に よ り抽 出 され た蛋 白質 をバ イ オ ゲルP-60で の ゲル 濾 過 にか け た 。TGF活 性 (●) をEGF存

在 下 でNRK49F細 胞 を 指 標 細 胞 と して 測 定 し, EGFま た はTGFα 活 性 (○) を [^<125>I] EGFのCCL

64細 胞 へ の 結 合 阻 止 活 性 で 測 定 した 。

^*2 血小板 由来増殖因子 (platelet-derived growth factor) : 血小板α顆粒に 存在 す る分子量約30,000の 蛋白質で, 線維芽 細胞の増殖を促進す る。A, Bふ たつのサブユニ ッ トか らな り, Bサ ブユニ ッ トは発癌遺伝 子 sis と共通のア ミノ酸配列 をもつ。

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活 性 な らび に mitogen 活 性 を 有す る こ とが 明 らか に な って い る^<29,30)>。図6にTGFγ2の 精 製 法 を 示 し た 。 TGFγ2の 一 次 構 造 の解 析 は進 行 中 で あ る が, 物 理 化 学 的 な らび に生 物 学 的 性 質 と, N末 側 の一 部 ア ミノ酸 配 列 か ら, TGFγ2はTGFα お よび βや 既 知 の増 殖 因 子 とは ま っ た く異 な る蛋 白質 であ る こ とが示 され た 。 レセ プ タ ー は現 在 検 討 中 で あ る。 4. そ の 他 のTGF α, β, γ2以 外 に も これ ら とは 性 質 を異 にす る複 数 の TGFが 存 在 す る こ とを 示 唆 す る報 告 があ るが, 詳 細 は 明 らか に され て い な い 。 な お筆 者 らは mitogen と して 知 られ て い るPDGFがTGFと して の活 性 を もつ こ と を観 察 して い る。PDGFの 一 部 と発 癌 遺 伝 子 sis との類 似 が報 告 さ れ て お り^<31,32)>, ま たPDGF関 連 増 殖 因 子^<*3> が種 々 の腫 瘍 細胞 か ら産 生 さ れ る こ とが知 られ て い るの で, PDGFがTGFと して の 作 用 を もつ こ とは auto -crine説 の根 拠 の ひ とつ とな る と考 え られ る 。 II. 細 胞 腫 瘍 化 とTGFの 発 現 TGFα お よび βにつ い て は クロー ン化 され たcDNA を用 い て 腫 瘍 細 胞 と正 常 細 胞 とに お け る発 現 の比 較 が な さ れ て お り^<16,22)>, い ず れ も腫 瘍 細 胞 に 高 い とい う結 果 が 得 られ て い る。 さ ら に in vitro で の腫 瘍 化 細 胞 とそ の親 細 胞 と に お い て, 腫 瘍 化 に 伴 っ てTGFα^<33)>お よ び TGFβ^<34)>の産 生 の増 加 と細 胞 外 へ の分 泌 が起 き る こ とが 観 察 され て い る。PDGF関 連 増 殖 因 子 につ い て も 同様 の 報 告 が あ る^<35,36)>。な お 最 近, TGFα は 腫 瘍 細 胞 以 外 に, 発 生 の一 時期 に も特 異 的 に発 現 す るこ とが報 告 され た 。 ラ ッ ト胚 で のTGFαmRNAの 発 現 は, 9日 胚 を ピ ー ク と し, 11日 胚 で は 消 失す る^<37)>。一 方, EGFは15 日胚 か ら認 め られ るの で^<38)>, TGFα は胎 児 型EGFで あ って, 11∼15日 胚 でTGFα か らEGFへ の切 替 え が起 こ る ので はな い か と考 え られ る。 発 癌 遺 伝 子srcを もつ ト リ肉 腫 ウ イル ス は 強発 癌 性 の RNA腫 瘍 ウイ ル ス で あ る 。 筆 者 らは この ウ イル ス に よ り腫 瘍 化 した ラ ッ トNRK由 来 細 胞 が細 胞 外 にTGFを 産 生 す る こ と, 温 度 感 受 性 (ts) 変 異 株 ウ イル ス に よ り 腫 瘍 化 した 細 胞 にお い て はTGFの 産 生 も温 度 に 依 存す る こ とを見 いだ した (表2)。TGFγ2は77N1細 胞 の 細 胞 内TGFで あ る。 そ れ で はTGFは 細 胞 腫 瘍 化 の 結 果, 新 しく合 成 が 始 ま る の であ ろ うか, あ る いは 合 成 量 あ る い は代 謝 系 に変 化 が 起 こ っ て, そ のた め に細 胞 外 へ 出 され る よ うに な る の で あ ろ うか 。77N1細 胞 とそ の正 常 親 株 細 胞NRK細 胞 とに お け るTGFの 発 現 を 検 討 し た と ころ, 77N1細 胞 で は 細胞 内 ・外 にTGFが 存 在 す るの に対 して, 正 常 細 胞 のNRK細 胞 で は細 胞 内 に のみ TGFが 存 在す る こ とが わ か った 。 図7は [^<35>S] メチ オ ニ ン標 識 した 細胞 か ら 精 製TGFγ2に 対 す る 抗 血 清 に よ り免 疫 沈 降 さ せ た蛋 白 質 をSDS-PAGEで 解 析 した 結 果 で あ る。77N1細 胞 の細 胞 内 ・外 お よびNRK細 胞 の 細 胞 内TGFは いず れ もTGFγ2で あ っ た 。 したが っ て, 細胞 腫 瘍 化 に 伴 うTGFの 発 現 の 変 化 はTGFの 新 た な 合成 で は な く細 胞 外 へ の産 生 で あ る こ とが示 唆 され 図6. TGFγ2精 製 の方 法 ^*3 ヒ ト骨 肉 腫 由 来 細胞 が 産 生 す るODGF, SV40ウ イ ル ス に よ り腫 瘍 化 した ラ ッ ト線 維 芽 細 胞 が 産 生す るFDGFな ど で, い ず れ もPDGFと 共 通 の 抗原 性 を もち, PDGFレ セ プ タ ー に 結 合す る 。最 近, DGFの あ る もの はPDGFのA鎖 の ホ モ2量 体 で あ

る こ とが 報 告 さ れ て い る [Betshortz. C. et al.: Nature, 320, 695-699 (1986)]。

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た。 なお, 77N1細 胞 の細 胞 外TGFと 細 胞 内TGFと はDEAEセ フ ァセ ル イ オ ン交 換 ク ロマ トグ ラ フ ィー で の挙 動 が 異 な って お り, ま た, ゲル 濾過 に よ り求 め た 細 胞 外TGFγ2の 分 子 量 が 約4万 で あ っ た こ と か ら, TGFγ2は 細 胞 外 へ の分 泌 に 際 して な ん らか の 修飾 を受 け る こ とが予 想 され て い る^<39)>。 腫 瘍 化 に伴 うTGFの 細 胞 外 へ の 産 生 は, ラ ッ トF 2408#7細 胞 と同細 胞 由 来 の腫 瘍細 胞 で も同様 に観 察 さ れ た。 す なわ ち各 種 のRNA腫 瘍 ウイ ル ス に よる腫 瘍化 細 胞 は細 胞 外 にTGFを 産 生 し, 正 常親 株 細 胞 は細 胞 内 に のみ 活 性 物 質 を も って い た 。 そ こでsrcに よ る腫 瘍細 胞 で は77N1細 胞 と同様 にTGFγ2が 産 生 され るか 否 か を検 討 した。抗TGFγ2血 清 に よ る免 疫沈 降 実験 に よ り, F2408#7細 胞 お よび 同 細胞 由 来 の トリ肉腫 ウイ ル ス で の腫 瘍化 細 胞S-7-1の 双 方 の細 胞 内 にTGFγ2が 存 在 す る こ とが 示 され た が, S-7-1細 胞 が細 胞 外 へ産 生 す るTGFはTGFγ2と は 異 な って, 熱 ・酸 耐 性 で あ っ た。 各 種 のTGFに 対 す る抗 体, 抗 血 清 が用 意 で きれ ば 少 な く とも 既知 のTGFに つ い て は 同定 が容 易 に行 な え る の で あ る が (現在 で は抗TGFα 血 清 の 入 手 が 可 能), TGFの 分 子種 の決 定 は あ る程 度 の 精 製 を 行 な って 各 画 分 の諸 性 質 を調 べ るこ とで な さ れ るの が一 般 的 であ る。 上 に 図3と して 示 した の がS-7-1細 胞 の 細 胞 外TGF で あ っ て, す で に述 べ た よ うにTGFα (低 分 子, 高 分 子 と も) とTGFβ とが そ の 成 分 で あ った 。 した が っ て, src に よ る腫 瘍 化 細胞 で は細 胞 外 にTGFが 産 生 され る よ う に な るが, 産 生 され るTGFの 分 子 種 を 決 定 す る の は細 胞 側 の 何 らか の要 因 で あ る こ とが 示 唆 され た^<40)>。 III. TGFの 作 用 機 序 一 般 に 増 殖 因 子 を 細胞 に 作 用 させ る と, そ の増殖 因子 に対 す る レセ プタ ー に増 殖 因 子 が結 合 し, 次 い で増 殖 因 子 ・レセ プ タ ー複 合 体 が 細 胞 内 に 移 行 す る。 そ の結 果, 細 胞 表 面 の レセ プ ター 数 が 減 少す る こ と に な る が, TGFα は 腫 瘍 化 細胞 に お け るEGFレ セ プ タ ー の極 端 な 減 少 の機 構 の解 析 か ら 発 見 され, EGFレ セ プ タ ー の減 少 は腫 瘍 化 細 胞 自身 が 産 生 す るTGFα に 原 因す る と考 え られ た^<8,41)>。TGFβ産 生 細胞 に お け るTGFβ レセ プ タ ー の減 少 につ いて も報 告 され て い る^<34)>。これ らの結 果 は TGFが 産 生 細 胞 の増 殖 に autocrine 的 に 関 与 して い る こ とを 示 す 間 接 的 な証 拠 で はあ るが, 現 にTGFを 産 生 して い る細 胞 にお い て, そ の増 殖 がTGFに 依 存 す る こ とを 直 接 的 に 証 明す る のは きわ め て 難 しいた め, まず 指 標 細胞 で あ る正 常 細 胞 に お い てTGFの 作 用 機 作 を解 明 し, そ の知 見 を ふ ま え た うえ で 腫 瘍 細 胞 の増 殖 に お け る TGFの 役 割 を 検 討 す る のが 適 当 であ ろ う。TGFの 作 用 機 作 の 解 析 と して, 第1に 各TGFに 対 す る レセ プ タ ー の 同 定, 第2にTGF-レ セ プ タ ー の結 合 後 の細 胞 内 で の 動 態 と 増 殖 シ グナ ル の 伝 達 機 構 の 解 明, 第3に これ は TGF研 究 の最 も重 要 な 問 題 のひ とつ であ る が, TGFと 他 の mitogen と の作 用 の違 い の検 討, が 必 要 であ る と 考 え られ る 。 この第1お よび 第2の 問 題 の 一 部 につ い て はす で にわ か っ て い る点 もあ るが, 第2の うち, 増 殖 シ グナ ル の伝 達機 構 に 関 して は どの増 殖 因 子 につ い て も ま だ 明 らか で な く, 発 癌遺 伝 子 の 作用 機 構 と も関 連 して最 近 の 癌研 究 の ひ とつ の 焦 点 とな って い る^<42)>。ま た, 第3 の 問 題 に は ほ とん ど手 が つ け られ て い な い のが 現 状 で あ る とい え よ う。 レセ プ タ ーに つ い て は, TGFα の 場 合 はEGFレ セ プ タ ー を 介 して 作用 す るの で, EGFで 得 られ た 知 見 をそ の ま ま あ て は め られ るで あ ろ う。 た だ し 高 分 子TGFα 図7. 77N1細 胞 内 ・外 お よびNRK細 胞 内TGFの 抗TGFγ2血 清 を 用 い た 免 疫 沈 降 に よ る解 析 [^<35>S] メチ オ ニ ンで標 識 した 細 胞 か らRIPA緩 衝 液 (1%

DOC, 1%Triton X-100, 0.1%SDSを 含 む0.14M NaCl

加 ト リスHCl, pH7.4) で 抽 出 液 を 調 製 し, 抗TGFγ2血 清 (ウ サ ギ で作 成) で 免 疫 沈 降 物 を得 た 。 細 胞 外TGFに つ い て は 無 血 清 培 養 上 清 を 抗 血 清 と反 応 さ せ た あ と, 抗 原 抗 体 複 合 体 をRIPA緩 衝 液 で 洗 う方 法 に よっ た 。SDSポ リア ク リル ア ミ ド電 気 泳 動 (15%ゲ ル を 使 用) 後, フル オ ロ グ ラ フ ィー を と った 。1, 2 : NRK細 胞 抽 出 液, 3, 4 : 177N1細 胞 抽 出 液, 5, 6 : 77N1細 胞 無 血 清 培 養 上 清, 1, 3, 5 : 正 常 ウサ ギ 血 清, 2, 4, 6 : 抗TGFγ2血 清 。 分 子 量 の 単 位 はK (10^3)。

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TGFβ を 作 用 させ たNRK49F細 胞 でEGFレ セ プ タ ー の一 過 性 の 増 加 が 観 察 され る こ とな どが 知 られ て い る^<44)>。今 後 は各 種TGFで の デ ー タ の 集 積 に 加 え て, TGFに 特 異 的 な 反 応 と い うも のが 存在 す るか 否 か の 検 討 が 重 要 であ ろ う。 IV. TGFβ の 増 殖 阻 害 作 用 に つ い て 一 昨 年, 東 京 で開 催 され た 国 際 細 胞 生 物 学 会 に お い て 米 国NCIの Roberts がTGFβ に よ る ヒ ト癌 細胞 の増 殖 阻害 につ い て初 め て報 告 し, TGF研 究 者 を 驚 か せ た 。 TGFβ は指 標 細 胞 のNRK49F細 胞 を 軟 寒 天 培 地 中 で 増 殖 させ る の に 必 要 な の と 同 程 度 の 濃 度 で, メ ラ ノ ー マ, 線 維 肉腫, 肺 癌, 乳癌 な どに 由来 す る細 胞 株 の軟 寒 天 培 地 中 で の増 殖 を 阻害 した^<10)>。筆 者 ら も ヒ トメ ラ ノ ー マ 由 来 細胞M14の 軟 寒 天 培 地 中 で の コ ロ ニ ー形 成 が TGFβ に よっ て阻 害 さ れ るこ と (表3), さ ら に単 層 培 養 下 で も増 殖 阻害 が起 き る こ とを 観察 して い る。 これ ら のTGFβ の 阻 害 作 用 はTGFβ 単 独 で 起 こ っ て い る。 最 近, Todaro らは 癌 細 胞 の 増 殖 を 特 異 的 に 阻 害 す る tumor inhibitory factor (TIF) に つ い て 報 告 し て い る^<45,46)>。2種類 のTIFは いず れ も ヒ トの 横紋 筋 肉腫 由 来 細 胞 の 培 養 上 清 か ら分 離 さ れ た が, そ の うちTIF-I はTGFβ に きわ め て類 似 した性 質 を有 し て お り, 両 者 は同 じ物 質 で あ る 可 能 性 が 高 い 。 ま たTGFβ は腫 瘍 細 胞 のみ な らず, ミ ン ク 肺 由来 線 維 芽 細 胞CCL 64^<11)> や ヒ ト正 常2倍 体 線 維 芽 細 胞TIG-3 (加 治 ら : 未 発 表) な ど の正 常 細 胞 の単 層 培 養 にお け る増 殖 を も阻 害 す る。 TIG-3細 胞 の増 殖 は, 血 清 添 加 培 地 お よ びPDGFま た はEGFを 加 え た 無血 清培 地 中 で, TGFβ に よ り阻 害 され た 。 ミク ロサ イ トフル オ ロ メ ト リー に よ る測 定 結 果 か ら, TGFβ を 作 用 させ た 同細 胞 は細 胞 周 期 のG1期 に留 ま って い る こ とが 明 らか に な って い る。TGFβ の 増 殖 阻害 作 用 に つ い て の 以 上 の 結 果 は い ず れ も in vitro で の培 養 に馴 化 した 細 胞 系 で 得 られ た も の であ る が, 徳 島大 学 医学 部 の市 原 明 教 授 ら に よ って 開 発 され た ラ ッ ト肝 実 質 細胞 の初 代 培 養 系^<47)>にお い てTGFβの 作 用 を 検 討 した と ころ, 顕 著 な増 殖 阻 害 作 用 が認 め られ た^<48)>。 こ の よ うにTGFβ の作 用 は細 胞 系 な らび に培 養 条 件 に よ って 異 な り, 表4に ま とめ た よ うに, あ る場 合 た は 増 殖 促 進 的 に, あ る場 合 に は増 殖 阻 害 的 に作 用 す る こ と が 確 か め られ た た め, 現 在 はTGFβ は bifunctional な 増 殖 因 子 で あ る と理 解 され て い る。 現 時 点 で は生 体 内 に A31, F2408#7, トリ肉 腫ウ イル ス に よ り腫 瘍 化 した ラ ッ ト線 維 芽 細 胞 でTGFβ 産 生 細 胞S-7-1, ヒ トお よび マ ウ ス メ ラ ノ ー マ 由 来 細 胞M14 , B16に つ い て, 2×10^3個 の細 胞 を5%ウ シ 胎 児 血 清 を含 む 軟 寒 天 培 地 中で 培 養 し, TGFβ 存在 下 にお け る コ ロニ ー形 成 能 を 測定 した 。^<a)>+ : EGF (4ng/ml) 共 存, - : TGFβ 単 独, ^<b)>4cm^2あ た りの コ ロニ ー 数, ^<c)>調べ て い な い 。 表4. TGFβ の細 胞増 殖 に 対す る 作 用 細 胞 株 名 に マ ー ク のな い もの は 文 献10に よ る。^< a)>筆 者 ら : 未 発 表 , ^<b)>文献11お よび^<c)>文 献48。 1122

(8)

お け る 役 割 を推 察 す る こ とは困 難 であ る が, in vitro に お い てTGFβ が 増 殖 促 進 的 に作 用 す る の はむ しろ 特 殊 な 株 化 線 維 芽 細 胞 に限 られ てお り, 種 々 の腫 瘍 細 胞, ヒ ト正 常2倍 体 線 維 芽 細 胞, さ ら に肝 実 質 細 胞 初 代 培 養 系 とい う in vivo で の状 態 に 近 い と考 え られ る細 胞 系 に お い て増 殖 阻 害 的 に作 用 した こ とは, 本 来, TGFβ が 増 殖 抑 制 的 な調 節 に関 与 す る増 殖 因 子 で あ る可 能 性 を うか が わ せ る。 加 え て 筆 者 ら は ヒ ト血 小 板 の 中 性 条 件 下 で の 抽 出 物 中 に はTGF活 性 が 証 明 され ず, これ を 酸 処 理 す る と TGF活 性 が 出現 す る こ とを 見 い だ して い る。 中 性条 件 下 で イオ ン交 換 ク ロマ トグ ラ フ ィーお よび ゲ ル濾 過 に よ り部分 精製 した不 活 性 型TGFβ は, 分 子 量 約12万 で あ り, 同 一 画 分 に精 製TGFβ の 活 性 を 阻 害 す る 因 子 の 存 在 が 認 め られ た (図8)。 これ ら の結 果 はTGFβ は通 常 は血 小板 内 に 他 の 蛋 白 質 と結 合 した 不 活 性 型 の状 態 で 蓄 え られ て い る こ とを示 唆 し, 増 殖 促 進 的 にせ よ阻 害 的 に せ よ, 作 用 す る以 前 に な ん らか の 活 性 化 の機 構 が 存 在 す る こ とを予 想 させ る。in vitro で も不 活 性 型TGFβ が産 生 され て い る 例 が あ る^<49)>が, 上 に 述べ たS-7-1細 胞 な ど の腫 瘍 細 胞 が産 生 す るTGFβ は 中 性 の培 養 液 中 に高 い 活 性 が証 明 さ れ るの で, これ らの腫 瘍 細胞 に お い て は活 性 化 の機 構 も 同時 に発 現 して い る と考 え られ る。 なお 最 近, TGFβ の各 種 細 胞 の増 殖 お よび 分 化 形 質 発 現 に対 す る作 用 に 関す る報 告 が 相 次 い で い るが^<50∼54)>, い ず れ もそ れ ぞれ の 実験 系 に お い て, TGFβ が 培 養 条 件 な らび に他 の増 殖 因 子 との組 合 せ に よ って, 異 なっ た 作 用 を 示す bifunctional な増 殖 因 子 で あ る との 結 果 が 得 ら れ て い る。 おわ りに 個 人 的 感 想 で あ る が, TGF研 究 の 進 み 方 は発 癌 遺 伝 子 の研 究 のそ れ と類 似 す る と ころ が あ る よ う に 思 わ れ る。 ど ち ら もRNA腫 瘍 ウ イ ル ス の研 究 分 野 か ら 出発 し, まず 腫 瘍 細 胞 で 多 数 の 発 癌 遺 伝 子 あ るい は TGFが 見 い だ さ れ て そ の 作 用 が 検 討 され, つ い で 正 常 細 胞 に も同 じ また は類 似 の も のが 存 在 す る こ とが 明 らか と な り, 本 来 これ ら は正 常 な細 胞 の増 殖 の制 御 にか か わ って い るの で はな いか と推 定 され る に至 っ て い るか ら で あ る。TGFの 研 究 は歴 史 が 浅 く, 研 究 者 も少 な く, 進 展 も遅 い が, 腫 瘍 細 胞 の増 殖 の本 質 を解 明 し, そ れ に 立 脚 した細 胞 増 殖 制御 の方 法 を 求 め る こ とは きわ め て重 要 で あ り, さ らに新 た な 知 見 が 求 め られ て い る。 TGFβ お よびPDGFに っいての研究は東京都老人総合研 究 所 アイ ソ トープ研究 室の加 治和彦 博士 と協同 して行な った もの で ある。 また研 究を行な うにあた って御指導 ・御援助をいただ いた東京都臨床 医学総 合研 究所 腫瘍 細胞研究室長 ・平郡昭義博 士な らびに新潟大学理学 部三井宏美 教授に深謝す る。 文 献 (文献番号を太字にしたものは特に重要な文献であることを示す) 1) Dulbecco, R.: Nature, 227, 802-806 (1970) 図8. ヒ ト血 小 板 由来 不 活 性 型TGFβ の Superose 12に よ る 分 画 ヒ ト血 小 板 の リン酸 緩 衝 液 (pH7.2) で の 抽 出 液 か ら, 同 緩 衝 液 で 平 衡 化 したCMセ フ ァデ ックス カ ラ ムを 通 してPDGF を 除 い た あ と, 33%硫 酸 ア ン モ ニ ウ ム で沈 殿 す る画 分 を 集 め, 0.2mM PMSF加10mMト リスHCl, pH7.4 (緩 衝液A) で 平 衡 化 したDEAEセ ス ァ セル カ ラ ムに か け た 。TGFβ は0.3M NaClで 溶 出 さ れ る 画分 に 回収 され た の で, この 部 分 を 濃 縮

し, 0.3M NaCl加 緩 衝 液Aで 平 衡 化 した Superose 12カ ラ ム

(フ ァル マ シ ア) で の ゲル 濾 過 に か け て 分 画 した 。(a) 280nm

で の 吸光 度, (b) 各 画 分 め 酸 処 理 (1M酢 酸, 4℃, 60分) 前

(●) 後 (○) のTGF活 性, お よび (c) 精 製TGFβ に対 す る

阻害 活 性 。阻 害 活性 は精 製TGFβ (0.5ng/ml) と各 画分 とを

4℃ で16時 間反 応 させ た あ と, TGF活 性 を 測 定 した 。

(9)

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参照

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