理 学 療 法 学
第
32
巻 第5
号333
〜
340
貞 〔2005
年
〕報 告
系
列 的
な
筋
出
力 感 覚
の
記 憶 特 性
に
関 す
る
研 究
*大 橋 ゆ
か
り
* *’
#坂 本 由 美
篠 崎 真 枝
要 旨本
研
究の 凵 的 は筋
出力感 覚
の入力 過 程
や記 憶 形 態
につ い て検 討 す
る ことであ
る。
その た め の手段
と して,
心 理学 領
域の需語 的
な記 憶 研 究
の成果
であ
る系 列 位 置 効 果
に関 す
る仮 説
を川
い た。本研 究
は健 常 成 人 を対
.
象
と し た3
つ の実 験 か ら構
成 さ れ る。
実 験1
では0
.
5kg
〜
4kg
の範 囲
の5
種 類
の砂 嚢
をラ ンダ ムな順 序
で提
示 し,
後に再 生 を 求 めて系
列 位 置 効 果につ い て検 討 し た、
実 験2
で は主 と して砂嚢
の重さを判 断す
る段
階 での誤
差 を 測定
し,
実験
3
で は砂 嚢
に よ る 重 さの系 列
を0
.
5kg
〜
7kg
ま
で の7
項 凵
に増
やし
て 門二度
,
系
列位
置 効 果 を検
討 し た。
結 果 と し て,
本 研 究 に お け る3
実 験で は 筋 出 力 感 覚の記 憶にお け る系列 位 置 効 果
は見 出
さ れ な かっ た。
む し ろ系
列 的 な筋
出力 感 覚
の 入 力 時 点で は各
被 験 膏の 保 有 する“
スキー
マ関
tw”
に 照 ら し て判
断 す る トップ・
ダ ウン過程
が機 能
しており
,
再
生時
にも 各
人の スキー
マ が強
い影響 を与 え
る こ と が示 唆
さ れ た。
キー
ワー
ド運 動 記 憶
,
系
列 位 置 効 果,
ス キー
マ はじ め
に本 研 究の 目 的は
筋
出 力 感 覚の 入 力 過 程 や 記 憶 形 態 につ いて検 討 す
ること で あ る。
その た めの手段
と し て,
心 理学 領
域の言
語 的 な 記憶
研究
の成
果 で あ る系
列位
置 効 果 に 関 する仮
説1) を 川い た。
系
列位
置 効 果 と は複 数の 項 冂 か ら な る リス ト を 呈 示 し,
後
に再 生を求
め た際 に,
リス トの初
頭と末
尾の項 目 は再 生率
が高
い現象
の こ と である、
,
系
列初
頭の再生率
が高
いこと を初 頭 性 効 呆
,
系 列 末 尾
の再 牛 率
が高
い ことを
新 近 性 効
果 と呼
ぶ。
こ の よう
な 現象
が起
こ る原 因につ い てはい くつ かの説 が あ り,
現 在 も 究 明 が 続い てい る2 )/3)。
しか し.
これ まで 般 に広 く支 持 さ れて き た二貯
蔵 庫 理 論’
d}の 枠内
で の 仮 説 は.
現在
で も 充 分 な妥
当 性 を 備 え ている/
t.
一
二貯 蔵 庫
岬 論 を 用いた系
列 位 置
効果
の説 明
は 次の よう
なも
の で あ る。
記憶 す
べき項
口の リス トが旱
示 さ れ る と,
情 報はま ず 短 期 記 憶へ 入 ノ丿さ れて く る,
、
し か し 短 期 記 憶 は 容 量 も 保 持 時 問 も 小 さい貯 蔵 庫 なので,1
項 目3
文 字 *The Sludv of CharncierlsLics of thc… Kinesthetic MemQrv for Serial
Ptluscle F〔,rce
ProdueLiv”
* *
茨 城 県 立医療 大学 保 健 医 療 学 部 理 学 療 法 学 科
〔〒300
−
0394 茨 城県稲 敷 郡阿見町 阿見4669−
2)1
’
ukari Ohashi,
RPT,
Yumi SnkameIo,
RPT、
Masau Shinozak[.
RPT
』
Dゆarlmen [〔〕f I’
hysic・
al Therapy.
Sしhoel of Medical Hcalth,
Ibとtraki Prefecturul Uni、
.
ersity of Ilemith Scic【lccs#
E
.
illail:uhashKlj1,
ipu.
aC、
jP‘受
i
・
」ロ 2004 年le月14冂 受 理「] 2005年4月23日} 程 度の無 意 味 綴 りで あ れ ば2
〜
3
項 目で容 量 がい っ ぱい になっ て し ま う。
こ こ で被 験 者 が 手 を拱
い てい れ ば,
4
番 目の項 [1
を 認 識 し た時
点で1
〜
3
番
目の い ず れ かの項
目 は 忘 却 さ れ る、
、
し か し,
被 験 者 が 短 期 記憶
に入力
さ れ た 情 報 に 充 分 な リハー
サル を 加 えて いれ ば,
忘却
を防 ぐ
こ とが で き る。
リハー
サル と は情 報
を記憶
に留
めておく
ために 彳∫う 認 知 的 操 作の こ とで,
こ の よ う な 実 験 場II
で は 「復 唱」
が 般 的 で あ る/
t ま た,
多 くの リハー
サル を受
けた情 報ほ ど,
安 定 した記 憶と して保 持 さ れ や す く な る。
系
列 初 頭の項 日は最 も早い時 期に皇 示 さ れるので,
項 日の 呈示
か ら再
生 まで の時 問
が最 も長 く
,
リハー
サ ルを 受 ける機
会 が最
も 多い の で安 定
し た 長期 記憶
に成 り
やす
い。
従っ て,
初 頭性 効 果
は長期
記憶
か ら の再
生 を反 映 す
る と 考 え ら れてい る。一
方,
系 列 末
尾の項
目 はリハー
サ ルを受
け る機 会
は少
ないが,
呈示
さ れてか ら再
生す
るま
での 時 間 が 短い の で,
再 牛 を 求 め ら れ た 時にま だ 短 期 記 憶の 中 に 保 持 さ れてい る。
従っ て,
新 近 性 効 果 は 短 期 記 憶 か らの 冉 生 を 反 映 す る と考
え ら れてい る。
二貯 蔵 庫 理 論に よる系 列 位 置 効 果の
説
明 を 裏づ ける実 験 結 果 も般 に 支 持 さ れてい るD
。
例 え ば,
項 目の 呈示
間 隔 を 極 め て 短 くす る と 初 頭性
効果
だ け が消
失す
る が.
これ は リハー
サル時 間
の不
足に起因
する。
ま た,
項 目
リ ス トを 呈・
F し 終 わっ た 後 に,
挿
入 課 題 な ど を課
して再
牛 ま での時 間 を 延 長 す る と,
新
近性 効 果
だけ
が消 失す
る。 これ は系 列 末
尾の項 目 は短
期 記 憶であっ た た め時 問経 過
に と
も
ない消 失
し た が,
系列 初
頭の項
目は長 期 記 憶
に な っ て いた た め挿 人 課 題 後
であ
っ ても再
生叮能
であ
っ た と解 釈
さ れ る。
本 研 究
では 以 ヒの ような 言語 記憶
にお ける先 行 研 究
を参 考
に し な が ら運 動 記 憶
の特 性
につ い て検 討
し た。特
に,
運 動感
覚の 中に は筋
出力 感覚
の よう
に明確
なイ メー
ジ として捉 える こ とが 困 難 な もの も ある。
この よう
な 運動 感 覚
の入力 過 程
にも 言語 的 な
リハー
サ ルに相 当す
る過
程 が 介 入 してい るの か,
運 動の記憶
に も百 語 記憶
と同等
の 二貯
蔵 庫 理 論 が適
用で き るのか などの問 題を系 列 学
習 の手法
を 借 りて検
討 し た。
実 験
1
L
冂的
筋
,bl1力 感 覚
の系
列 を 記憶
し,
後
に再 生す
る際
に,
言 語
記憶
に見
ら れ る の と 同じ ような 系 列 位 置 効 果
がIU
現 す
る かどう
かを調
べ ることを 目的
と し た。 2.
方 法対
象
:健 常
な成 人 女 性
8
名 (
年 齢
28.
8
±4,
6
歳
)を 被
験 者とした。
各
被 験 者に は,
事前
に実験
1
の概要
を説
明 し た 上 で協 力
を求
め,
ゴ承
を得
た。
記憶 課 題
:実験
L
で被 験 者
が記 憶 す
る よう
に求
め ら れ た の は,
5
種 類
の砂 嚢 (
0
.
5
kg
,
l
kg
,
2kg
,
3kg
,
4kg
)
に よっ て作
り出
され た筋 出 力 感 覚
の系 列
である。
つ ま り,
被験 者
は これら の砂 嚢 を
ラ ンダムな順 序
で1
つず
つ提 示
さ れ,
そ れを持
ち ヒげ
た時
の」
」
重さtt
の感 覚
,
もしくは その重さを持
ちE
げる の に要
し た物
”
の感 覚
を系
列 的 に記憶 す
る よう
に求
め ら れ た。千 続
き:実 験
1
で 用 い た装揖
を 図1
に示 し た。
被 験 者 は図
1
左の よう
に,
椅
座位
を と り,
利 き 予の 肘 関 節 を9
.
oe
屈 曲 し
,
前 腕 を 回外 す
るtt
被験 者
はこ の肢 位
で手
に フ ッ クを持
ち,
閉
眼 する。
次
に,
実 験 者
は前
述 し た5
種
類の砂嚢
の う ちの1
つ を被 験 者
の持
つ フ ッ ク に掛
け るu1 つ の砂 嚢 を 約15
秒 間 フ ッ ク に掛
けてお き,
その砂 嚢
を外
してか ら約
10
秒 後
に次の砂嚢
をフ ック に掛 け る よ う に し た。
5
つ の砂 嚢
を すべ て提 示 し 終 わっ た ら, 約15
秒の 問 隔 を おい て再 牛の手
続 き を 行っ た。
冉生 順 序
は砂 嚢
の提
示 川頁序 との関 係 で 定 め た が,
これ につ い て は次
項で詳
述 す るこ と と し,
まず
再 生の 般的 手 続 き
につ い て述
べる。再 生
は図
1
右
の よう な装 置 を用
い て行
っ た。被 験 者
の 肢 位は砂嚢 提
示 時 と同 じ で あ る が,
再
生中
は開眼 し て も良
い もの と し た。
冉生 時
に は被験 者
の持
つ フ ッ クに ワイ
ヤー
を掛 け
,
ワイ
ヤー
の先 端 を張 力 計
に接 続 し
た。 こ の 状 態で,
被 験 者に砂嚢
を持
ち上げるのに要
し た のと 同等
と感
じ ら れ る力
で ワ イヤー
を引 き ヒげ
ても ら
い.
そ
の時
の張 力 を記 録
し た。再
生 は1
つ の刺 激
に対
して3
回ず
つ実 験 装
置
刺 激 提 示調
図1
実 験 装 置 左:刺 激提小用の装 置,
右:P
}生用の装 置行
い,
平 均 値
を その刺
激に対
する再 生 値 と し た。
系 列 位 置
効果
に関 す る 仮 説 :前 述の よ う に,
初 頭 性 効果
が出現 す
る た めには,
系 列 初
頭の部
分 が 充 分 な リハー
サ ルを受
け,
その結 果
と して比 較 的安
定 し た 記 憶になっ てい な ければ ならない。
こ の点,
実 験1
では 砂 嚢の提 示中
にも
,
次
の砂 嚢 を提 示 す
るま
で の間 隔
にも挿
入課 題
な どは課
し てい ない。
ま た,
大 橋の報 告5 〕か ら,
筋 収 縮 の感覚
は 言 語ほ ど明 瞭に で は ない にせ よ,
実 際の 筋 収 縮 を ともな
わ ないイメー
ジ ヒの リハー
サル (メン タル・
プ ラ ク テ ィ ス)によ り あ る程
度 記憶
に留
めておく
こと
が 可 能である と考
え ら れる,
、
従っ て,
筋 川 力 感 覚 が 言 語 と 同 じ よ う な 過程
で記憶 構
造 に取
り込 ま れ 保 持 さ れ る と仮 定
するな ら ば,
実 験i
では 砂嚢
の提 示 順序
や 再生順 序
に 関 わ ら ず 初 頭 性 効 果 は 川 現 す る と 考 え ら れ る。
.
一
方
,
新 近 性 効 果 が 川 現 す る た め に は,
あ
る刺 激
の提
示 か ら,
その刺 激の 再 生 までの時 間 問 隔 が短
い こと が 必 要 条 件 に な る。
そこで実 験1
では,
砂 嚢の提 示 順 序と再 生 順序
を 同 じ に す る 順向
再 生の試 行
と,提
示順 序 と
は逆
の 順 序で再 生 す る 逆向
再 生の試 行
を 設定
し た、
,筋 出 力 感
覚 に 関 す る 新 近 性 効 果 が 言 語 記憶
と 同 じメ カニ ズム で出
現 す る と 仮定
す る な ら ば,
順向
再生
では新 近 性 効 果
は出
現 せず
,
逆 向 再生
でのみ新 近性 効 果
が出現 す
ると考 え ら
れ る (図2
)。
刺 激の提 示
・
再 生 に 関 す る条件
:実 験
1
で は各 被 験 者
が,
順
1
‘lj再
生 および逆 向再
生の試 行
を1
試 行 ず
つ,
計
2
試 行 行 う も
の とし た。
そ の際
,
半
数の被
験者
は 順向
再 生を先
に行
い,
残 り半数
の被験 者
は逆 向冉
生 を先
に行 う
も の と し た。ま た
,
前 述の と お り,
刺 激 と して用い た 砂 嚢 はO
.
5
kg
か
ら4kg
ま
で の5
種 類
で,
これ ら をラ ンダム な 順序
で提 示
し た、
3
.
結 果 及
び考察
実 験
ユで収 集
し た 全 デー
タ を系
列 位 置 (す な わ ち 何番
系 列的 な筋 出 力 感覚の記憶 特 性に 関する 研究
335
逆 向 再 生の場 合 こでこの 問 題 を検
討 す る た め に 実 験2
を 行っ た,
実 験
2
提示 順序 再 生 順序・・ … ⇒ ・
i
”i
” ” ・・ …墫
,
_
ヨ
ttttt
ttt
ttttt
ttt −
1 初頭 性 効果(+) 新 近 性 効 果 (+) 〔kgw) 2 平 均 誤 差 1 [ 〔 図2
再 生 方向と
系
列 位 置 効 果の 関 係 1 2 3 系 列 位 置 4 a「
図3
実 験1の再生方向と系 列 位 置に よ る誤 差の比 較 ◆ :順 向ir}生 時の誤 差,
口 :逆 向 再生時の誤 差.
誤 差 範囲は上側T バー
が順 向 再生時の標 準 偏差,
ド側 逆 T バー
が逆 向再 生 時の標 準 偏 差 を表 す.
目 に 提 示 した か ) 別 に 配 置 して図3
に 示 した、
,
図3
の縦
軸
は再
生 さ れ た張 力
か ら砂嚢
の重 量 を 引いた 誤 差の 平 均 値 で あ る。
図
3
のデー
タにつ い て,
系 列 位 置と再生 方向
(順向
か逆
向
か ) を 要 囚 とす
る2
要
因分 散 分 析 を行
っ た とこ ろ,
i
こ効 果 お よ び交
彑作
用 はいず
れも有 意
で はな
かっ た。実
験1
に おい て,
言 語 記 憶と同 様の系
列 位 置効
果が存 在
し た と す れ ば,
少 な く と も系
列位
置と門二生方 向
の交
互作
用 が有
意 に な る はず
で あ る、.
従
っ て,
実 験
1
で は筋 出力 感
覚の 記 憶 に お け る 系 列 位 置 効 果 は 認め られ なかっ た。
し か し
,
”
重さtt
あるい は ワ ブ という筋 出 力 感 覚
は,
.
、.
ポ語と は異 な り連
続変 数
であ る.
、
従
っ て,
実 験
デ ザ イン と して は5
つ の異
なる刺 激
(砂 嚢
)を
川い たが,
被 験 者
に はいく
つ か の刺 激
が弁 別
さ れな
かっ た叮能 性 もあ
る。
こ の ような 人 力段 階
で の誤差 が存 在 し
た場 合
.
次 項
に述
べる よう
に,
こ れ が再 生結
果に ’j’
え る影 響
は大 きい/
.
t
そL
目 的実 験
1
の よう
に筋 出
力 感覚
の占
己
憶
一
冉 生 を
行 う場 合
, 少 な くと も 次 の 3つ の潜 在 的な過 租が介入 して い る と考 え ら れる ;.
:1
)刺 激 提 示 段 階
で の筋 出 力 感 覚
C
’
重
さ”
,
tt力
tt等
)の認 知
,.
刺 激 提 示
か ら再
生 まで の時 間
にお ける筋
出力 感 覚
の記 憶
,
再
生段
階で の運動
の制 御
。
こ の中
で.
系列 位 置効 果
が引
き 出 さ れ るの はの
過 程
にお い てで あ るので,.
:P
との 過 程 に お け る 誤 差 は 極 力 排 除 し たい
。
実 験1
では,
1
つ の刺 激 に対 して3
回の再 生 を行
い,
その平均 値
を と ることでにお け る
誤
差 を抑 制
し よ う と し た が,11
:に関
しては何
ら操 作
を加
え な かっ た。
そこ で実 験2
では,
砂 嚢の重 量 が 各々弁 別 さ れて認 知 さ れ た か どう
か を確 認
しつ つ,
再度
,
系 列 位 置 効 果
につ い て検 討 し た。
2
.
方 法対
象
:実 験1
と 同 じ8
名
を被
験者
と し,
実
験2
の概 要 を 説 明 し たL
で 門二度 協 力 を 求 め,
了 承 を 得 た。
手 続 き :実 験 装 置, 刺 激 (砂 嚢)の提 示 方 法, 全ての 刺 激 を 提
.
示 し終 わっ て か ら行 う 系 列 と しての 再 生 方 法 は 実 験1
と同 様であ る,
.
但 し,
実 験 2で は各
被 験 者は順向
再生 か逆向
再生 かの ど ち ら か・
方
の み を行
う もの とした
/
t刺 激
の提
示・
出二生に関す
る条件
:実験
2
で は,
1
つ の刺 激
を提
.
示し た直 後
に そ の刺 激
に対
.
する再
生 を行
い,
そ の後
,
次
の刺 激 を提 示 す
ると
いう壬続 きを
とった
/
t,
さ ら に,
すべての刺 激 を提
示 し終
わっ た とこ ろ で,
実 験
ユと 同 様に刺 激 系 列の順向
再生 ま た は逆向
再生 を行っ た、
.
実験
2
で は砂 嚢
は0、
5kg ,1
kg,2kg ,4kg
の4
種 類 を用
い た、.
実 験
1
で は5
種 類
の砂 嚢
を用
い たが,
実 験
2
で は刺 激提
示 中の直 後
.
冉 生とす
べ て の刺 激提 示 後
の系 列冉
生を休 憩
を挟 まず
に行 う
必要
が あっ た た め.
被験 者
の疲労
を考 慮
し て刺
激の数 を減
ら し た。
3
,
結 果 及
び考 察
刺 激 提
示中
に行
っ た直 後 再
生に おける再 生値
と,
すべ て の刺 激
を提 示
し終
わっ た後
に行
っ た系 列 再
生にお ける再
生f
直
につ い て,
砂 嚢
の重 量 と再
生時 期 (
直 後
再 生 か系
列 再 生か) を要
因 と する分 散 分 析
を行
っ た とこ ろ,
砂嚢
の 重 量:に よ る主効 果
の みが有 意
であ
っ た(
df
=
3
〆56
,
F
≡n9 .
280,
p
〈.
0001
>。
さ ら に,
Scheff6
の方 法
に よ るp
{}sthoc
test
の結
果よ り,
4
つ0)砂 嚢
に 対 す る 再 生値
は各
々有 意
に異 な
っ て い た こ と が明
ら か に なっ た 〔P
〈.
05
),.
次に,
実 験2
の 系 列 再 生 に お け る 系 列 位 置 効 果の 有 無〔kgw)
り
一
5 1 平 均 誤 差 o.
5 0 1 2 系 列 位 置 3 t 図4
実 験2
の再 生順 序 と系列 位 置に よ る誤 差の比較 ◆:順 向冉 生 時の誤 差,
口 :逆向再 生 時の 誤 差.
誤 差 範 囲は 上側T バー
が 順 向 再 生 時の標 準 偏 差,
下側 逆T
バー
が逆 向再生時の標 準 偏 差 を表 す.
を検 討 す
る た め に,
再
生方 向 別
に系列 位 置
に対 す
る平均
誤
差 を算
出 し,
分 散 分析
を行
っ たが,
系 列 位 置
の卞効
果,
冉生 方向
の主 効果
お よび 交互作 用
はいず
れも有 意
で はな かっ た(
図
4
)
Ct以 上の分 析 よ り
,
砂 嚢に よる刺 激系 列
を記憶
し,
後
に 再 生 す る 過 程 で は,
刺 激 が 提 示 さ れ た 時に被 験 者 が 認 知 し たi
観
的 な“
重
さ”
ま た は“
]J
”
が記 憶
過 程で変 容 す
ること
なく
,
系 列
再生
時 に も そのま ま 再 生 さ れ た と考
え ら れ る。
ま た,
実 験2
に おい て も 実 験1
と 同 様に,
筋 出力 感
覚
の系
列 記憶
に お け る系列 位 置効 果
は出現
しな
かっ た。
実
験
3
ユ.
目 的 実 験1
お よ び 実 験2
では,
砂 嚢による刺 激 系 列の記 憶 冉生
に お け る系
列位
置効
果 は 出 現 し な かっ た。
し か し,
実 験
1
,
2
で用
いた系 列
は項
目数
が4
〜
5
項
目 という
小系 列
であっ た。一
般に 言 語 的 な 短 期 記 憶の 容 量 は7
項 目前 後
と考 え
ら れてい る 4)。運 動 記 憶
の容 量
につ い て は 明確 な 見 解
がな
いが,
4
〜
5
項 目
で は記憶 負 荷
と し て小
さ過
ぎた た め に,
実
験1
,
2
で は天 井 効 果 が 生 じて し まった可 能性 もあ
る。そ
こで,
実 験
3
で は刺 激 系 列 を
7
項
目 に増
や した。・
方
,
7
項
目の系 列
は言語 的 な 短 期 記 憶
とし て は ほ ぼ 100%の容 量にな る。
従
っ て,
被 験者
が刺
激系 列
の手掛
り と し て“
重 さの 順 序”
を 言 語 的 に 記 憶 す る方 策
を とっ た場 合
に は,
この レベ ルでの錯
誤(
つ ま り“
重
さの順 序 の記憶 違
い”
)
が 生 じ る 可 能性
が あ る。
そこ で
実験
3
で は,
第
ユ試 行
と し て 実 験1
同 様の再 生を行
い,
第
2
試 行
と して再 生
の際
に’
重
さの順
JS
”
に 関す
る情 報
の参
照 を 可能
とす る手
掛 り 冉 生 を行
っ た。
2
.
方 法
対
象
:健 常
な 成 人男性
4
名
お よ び成 人 女 性
6
名 (
年 齢
29
.
4
±4
.
4
歳 )
を被 験 者
とし
た。各 被 験 者
に は,
事 前
に 実 験3
の概 要 を説 明
し たE
で協 力
を求
め,
ゴ承
を得
た。
手 続 き :
第
1
試行
の手 続
きは,
砂 嚢
の系 列
の違
い を 除 け ば ほ ぼ実 験
1
と同 様
であ
る。但 し
,
各 被 験 者 は順 向 再
生 か 逆向
再 生 かの ど ち ら か一
方
の み を行 う も
の と し た。使 川 し た 砂
嚢
の系 列
は 次の2
種 類
であ り
,
被 験 者
ごと に ど ち ら か・
方
の系 列
を用
い た。A
系
列 :lkg
,
1
.
5
kg
,
2kg
,
3kg
,
4kg
,
5
.
5
kg
,
7kg
B
系 列 :.
5kg
,
1kg
,
1
.
5
kg
,
2
,
5
kg
,
3
,
5
kg
,
5kg
,
6
,
5
kg
第
2
試 行 も 大 枠で は第1試 行と同 様で ある。
異 な る 点 は,
再 生 時
に使
用す
る手 掛 り
の作 成
・
参
照 に 関 す る手
続き
の み である。
第
2
試 行
で は1
つ の 砂 嚢 を 提 示 し てい る最 巾
に,
被験 者
に’
重
さの見積
りt「
を して も らっ た、
、
被験 者
は閉
眼 で砂 嚢 を持 ち
上 げ な が ら,
その砂嚢
が 「何kg
」
だ と 思う
か を 口 頭 で 報 告 し,
実 験 者 が メ モ を 作 成 した。
また,
い くつかの砂 嚢 を 持 ち 上 げ た 後で,
前
に戻 っ て「
何 番
目を何
kg
に修
IE
」
す るこ と はい つ で も 可 能 とし た。但
し,
被
験者
が行っ た 見 積 り に 対 す るフィー
ド バ ッ クは一
切与
え なか っ た。
被 験 者
は こ の よう
に して作
成
し た」
」
重 さ
のイ
メー
ジに関 す
る メ モ”
を参 照
しな
が ら再
生す
るも
の とし た。
な お
,
第
1
試 行
でA
系 列
の順 向 再
生 を行
っ たな ら ば第
2
試 行
で はB
系 列
の逆 向再 生 を行 う と
いう
よう
に,
被
験 者
ごとに試 行
間で砂 嚢
の系
列 お よ び 再 生方 向
が 異 な る よう
に ラ ン ダ ム に配置
した。
3
.
結
果 及び考 察
実 験
3
で は3
要
因分 散 分 析
に よっ て系 列 位
置効
果を分析
し た。要 因
は系 列 位 置
,
再
生方 向 (
順 向
,
逆 向 )
,
試
行
(第1
試 行,
第2
試 行 )である。
分 析
の結 果
,
試 行 要
因 と 再 生 方 向 要 因の 交 互 作 用の み が有
意で あ っ た (df=
11112
,
F −
6
.
921
,
p<.
O
ユ)
。
これ は図
5
に示 す
よう
に,
第
1
試 行
の川貝向
再 生にお け る 誤 差 が 他の系 列
の誤
差 よ り も 大 きい こ とに よ る 交 互 作 用であ り,
系列 位 置効 果
と は 無関 係
で あ る。
従
っ て,
実 験
3
に おい ても系 列 位 置
効
果 は 出 現 し な かっ た と 結 論づけるこ とが できる.
,
総 合考
察本研 究
で行
っ た3
つ の実 験
では筋 出 力
の系 列 を記憶
し 再 生 する場 合
には言 語 記憶
に み ら れ る よう
な系 列 位 置 効
果
は認
め られ な
かっ た。し
か し若 干 視 点 を変 え
ること に より
,
筋
出力 感覚
の系 列 的記 憶
の特 徴
と思
われ
る こと が いく
つ か明
ら かになっ たの で,
それ ら の点 を含
め て考 察
す
る。言 語 記 憶
にお け
る系 列 位 置 効 果
は記憶 す
るべき言語 情
報
が ボ ト ム ア ッ プ処 理 され る過 程で生 じ る 現 象であ る。
系列 的 な筋 出力 感覚の記 憶 特 性に 関する 研究
337
(kgw)構
嵩
・羹
f
;
葦
1 図5
実 験
3
に おける再 生 方向 と系 列 位 置に よ る誤 差の比 較E
段が第1
試 行,
ド段が第2
試 行のグ ラフ.
◆ :川頁向 π 生 時の 誤 差,
[ :逆 向 再 生 時の誤 差.
誤 差範囲 はE側T バー
が順 向 再生時の標 準 偏 差,
下側 逆T バー
が逆 向再生時の標 準 偏 差 を表 す.
ボ トムア ッ プ処 理
の過 程
で より多 く
の リハー
サルを受 け
る系
列初
頭に初
頭性 効 果
が出
現し,
再
生ま
で の時 間
が短
い系列 終 末
に新 近性 効 果
が出現 す
る。本研 究
に おけ
る実
験
卜3
で は リハー
サル を妨 げ
る手続 き
は用
い て い な い、
、
ま た逆向
樽 生は,
系 列
の終 末
の刺
激 を 最 初に再 生さ せ る ことで新 近性 効 果
が出現
し やす
い条件
であ
っ た,
、
こ の ような 条 件 設 定
に も関
らず
,
本研
究 で は系
列
位置
効果
は出 現 しなかっ た。
こ の よ う な
結 果
に なっ た 理 由 はい くつ か考
え ら れ る が,
実
験後
に 被 験者
が 述べ た 感 想 か ら 示唆
さ れ たこ とが あ る。
実 験後
の感 想
として多 く
の被 験 者
が,
「
重
さ 〔ま
た は力
)の順 序
を覚
える の が精
一
杯
で,
図
重 さ その もの”
は とても覚 え
てい ら れな
かっ た」
と 述べ た。
“
重 さ その ものtt
は記憶
で き ない となる と,
今
回 川いた刺 激 系
列 が全 く
の新 奇
の情 報 と
し て ボ トムアッ プ さ れ たと
は言
い難
く
なる。
む しろ‘
’
重
さの順 序
”
を 手掛
りに,
門二生時
に何
ら か の トッ プ ダ ウ ン処理 が行
わ れ た可能性
がある。
こ の
点
につ い て.
本 研 究
の デー
タ で検 証
してみる と次 の よう
に な る。
ま ず,
実 験L2
で は被
験者
ご と に砂 嚢
の重 量に対 す る 再 生 値の 回 帰 直 線 が4本 ずつ得 ら れた。
ま た,
砂 嚢の 重 量 と 再 生 値の相 関 は 全ての回 帰 直 線 で 有意 だ
っ た。
そこで,
各
回帰 直 線
の傾 き
お よび
y.
切 片 を 従
属 変 数 に と り,
被
験者
と 実 験 日(
実験
1
か実験
2
か ) を 独 立 変 数 とす る 分 散 分 析 を 行っ た。
その 結 果, 回 帰 直 線 の傾 きにつ いて も,
y切 片につ い て も 被 験 者 要 因の 毛 効 果の み が 有 意 と なっ た (傾 き ;F
=
3
.
612
,
y切 片 ;F −
3
.
516
, い ず れ もdf=
7
/16
, p〈,
05
)
。
つ ま り,
砂嚢
の重 量 と再 生 値
の 関係
は被 験 者毎
に異 な
る関 数
で表
さ れ る もの で あっ た (図6
)。
この 結 果は,
筋 出 力
の感 覚
がSchmidt
の提 唱
した スキー
マ理 論
61 におけ
る スキー
マ の形 態
で記憶 され
てい る ことを示 唆 し
てお り
,
本 研 究
に おける再
生の際
にも
こ れ ら の ス キー
マ が参
照 基準
に使
わ れ たの で はないか と考 え
ら れる。次
に,
実 験
3
に おけ
る手 掛 り再
生につ いて述
べ る/
.
t図
7
に再
生結 果
の例
を示
したが,
実 験
1
,
2
と 比べ る と,
実験
3
では砂 嚢
の市
さの系 列
に対
.
して再
生値
が 必ず
しも
漸 増 関 数
にな
ら ないという点
が異
なっ てい る/
t第
2
試行
で は手 掛 り再
生 という 方法
をJiJ
い たに も関
わ ら ず,
10
名 中
9
名
の被 験 者
で筋 出 力
の大き
さの順序
の間
違いが 生 じ た、
第
2
試 行
で被
験者
に作
成
さ せ たチ掛
りは‘
’
何
kg
”
とい う 重 さの形 態 を とっ てい るが,
見 積 りに対.
するフ ィー
ドバ ック が与
え ら れ な かっ た た め に 必ず
し も較
正 さ れ た 間 隔 尺度
に は なっ てい なし た だ し,tt
順 序
の手掛 り
”
には な り得 たと考
え ら れる。
そ れ に も 関わ らず
,
多 く
の 被 験 者で再牛時に順 序の 問違
いが生 じた。
この 結 果は刺
激
入力 時
に 運動 情 報 を短 期 記 憶 と
し て保 持
し て お け る時
間
や容 量
に関す
る示 唆
を含
ん でい る、
、
この点
につ い ては さ らに詳 細 な 分 析 が 必 要で あ り,
今 後の課 題 と して検 討 し たい。
図
6
実験1
,
2
に お け る各被 験 者の再 生値グ ラ フ横 軸は重 錘の重さ
,
縦 軸は 再 生 さ れ た張 力を表 す,
系 列 的な筋出力 感 覚の記憶 特 性に関す る研究 339
(
kgw
)
12
9
6
3
00
ワ一
4
6
(
kg
)
図7
実 験
3
に お け る各
被 験 者の再 生値 (6
名分σ)例 示 〕 グラ フ横 軸 は 重 錘の重 さ,
縦 軸 は 匹 生 さ れ た 張 力 を 表 す.
◆
:第
1
試行
〔手掛
り な し〕,
L
.
1
:第
2
試 行 C・
f一
掛りあ1・
) )文 献
D
野飼幸 [E
:短 期記憶.
「現代 基 礎心 理学 4 記憶 」小谷津 孝明 〔
Wt
・
),
東 京大 学川 版 会,
19
.
82
,
pp45−
64
.
2} 水 野 りか :視 空 間ス ケッチパ ッ ドへ の 長期記憶の 影響一
新近 性 効果 の 新た な要因の検 討
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心 理 学訓積侖
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−
359,
1993.
6}Schmidt RA :Ascllema lheエ)rv of discrdc motor sk川
<Abstract>
The
Study
ofCharacteristics
ofthe
Kinesthetic
Memory
for
Serial
Muscle
Force
Production
Yukari
OHASHL
RPT,
Yumi
SAKAMOTO,
RPT,
Masae
SHINOZAKL
RPTDepartment
ofPdysical
Therqpy,
School
of
Mbdical
Health,
Ibaraki
Prefectural
University
ofHealth
Seiences
Serial
position effectshave
been
eonfirmedthrough
several researches with regardto
verbalmemory
in
thefield
of psychology.In
thisstudy, we examinedif
the serialpesition
effects are also confirmedin
the
motor memory.The
purpose
of thisstudy was toget
someimplications
aboutthe
kinesthetic
input
process andits
memory systems.This
study consisted of three experiments ofheatthy
adults.In
experiment1,
we asked subjectsto
closetheir
eyes,flex
their
elbow at a right angle, andhold
5
different
weights,between
O.5
and4
kg,
in
random order.Then,
we asked subjects to reproduce eachforce
that
they
neededto
hold
the
5
different
weightsin
order orin
reverse,In
experiment2,
we measured errorsin
each subjectto
detect
scale of each given weight.In
experiment3,
we reexamined the serial position effects using7
different
weights,O.5
kg
'-
7
kg.
As
a result, we could notfind
any serialposition
effectsin
the memory ofkinesthetic
sense according to our three experimentsin
this
study.Rather,
we got animplication
of that a schemain
each subject was referred tocletect
the
scale ofthe
given weight atthe
point ofinput
ofkinesthetic
sense.It
was suggested that thetep-down
process
using the schemain
individual
was working atthe stage of