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広島大学病院におけるVeno-venous Extracorporeal Membrane Oxygenation(V-V ECMO)装着患者への理学療法介入の現状

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 814 42 巻第 8 号 814 ~ 815 頁(2015 年) 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 分科学会シンポジウム 11(日本呼吸理学療法学会). 広島大学病院における Veno-venous Extracorporeal Membrane * Oxygenation(V-V ECMO)装着患者への理学療法介入の現状 皿 田 和 宏 1) 對 東 俊 介 1) 関 川 清 一 2) 1) 1) 1) 西 川 裕 一 河 江 敏 広 佐々木康介 治療の主眼は,陽圧換気による圧外傷を避けるために,肺保護. はじめに. として“lung rest(肺を休ませる) ”を行うことである。酸素化. 体 外 式 膜 型 人 工 肺:extracorporeal membrane oxygenation. および換気補助は ECMO に依存し,人工呼吸器の陽圧換気設定. (以下,ECMO)は,カニューレから脱血した血液を人工膜を. を最小限に変更することで圧外傷を回避しやすくなる。その間に. 介してガス交換し,再度身体に戻すことで組織呼吸を維持する. 自己肺の機能回復を待つことになる。もっとも肺保護として優れ. ものである。静脈脱血-静脈返血:veno-venous(以下,V-V). るのは,ECMO を残した人工呼吸器からの離脱(抜管)である。. ECMO による治療は,2009(平成 21)年に成人の重症呼吸不全 1) 症例に対する有効性を示す“CESAR trial ”が発表されてから. 当院における V-V ECMO 装着患者と理学療法実績. 注目度が高まった。その理由のひとつに ECMO システムが進. 1.V-V ECMO 装着患者に対する理学療法開始基準. 歩し,より安全でより高性能な機器の開発が挙げられる。また,. 当院においては,救急科 MD と協議して以下の 3 項目に関. ガイドライン. 2). が発表されるなど,ECMO 管理システムが発. 展した背景も大きく影響している。ECMO 管理患者に対する早 期離床や腹臥位管理の必要性も提唱されている. 3). ため,我々理. 学療法士(PT)は,適切な時期に病態を考慮しながら積極的に V-V ECMO 装着患者への理学療法介入を考慮すべきである。. する基準を暫定的に決めている。 1)病勢が制御されている:炎症および組織障害の改善を認め た場合(画像所見,KL-6 値など) 2)出血が制御されている:活動性出血を認めず,出血リスク が高くない場合(頭蓋内,胸腔内,肺内,腹腔内,粘膜, カニューレおよびドレーン刺入部など). ECMO 機器に関する海外と日本の違い. 3)咳 嗽 が 制 御 さ れ て い る: 過 剰 な 反 射 を 誘 発 し な い 場 合. 機器に関して海外と日本との間での相違点は,カニュレー. (“lung rest”の妨げにならない). ションである。海外ではダブルルーメンカニューレを右内頸静. 2.実績. 脈から挿入して脱血および送血を行うことが多い。しかし,日. 当院における V-V ECMO 症例は,2005 年 1 月~ 2015 年 2. 本では認可されていないためシングルルーメンカニューレ 2 本. 月までに 35 例であった(図 1)。2011 年以前の 8 症例(平均年. を脱血または送血用に右大腿静脈および右内頸静脈から挿入し. 齢:56.8 ± 21.5 歳)における生存率は 12.5%,2012 年以降に. て体外循環を行っている. 導入数が増加した後の 27 症例(平均年齢:64.3 ± 12.2 歳)に おける生存率は 55.6%であった。. V-V ECMO の対象患者と治療の主眼. V-V ECMO 管理期間中の体位呼吸療法や立位を含む理学療. 対象は,適切に通常の人工呼吸器管理を行っても 80%以上 の死亡率が予想される重篤な急性呼吸不全患者である. 2). 。疾患. 法介入は,2011 年以前の 8 症例では 1 例もなかったが,2012 年以降の 27 症例では 21 例(77.8%)であった(図 1)。. としては,重症 acute respiratory distress syndrome(ARDS),. V-V ECMO 管理期間中の理学療法内容は,完全側臥位 19 例. 肺移植までの待機,重症インフルエンザ,脂肪塞栓,重症肺外. (70.4%),腹臥位 4 例(14.8%),Tilt table を利用した立位練. 傷,重症肺胞出血,間質性肺炎急性増悪などである。. 習 3 例(11.1%)(重複あり)であり,V-V ECMO 管理中に介 入できなかったのは 6 例(22.2%)であった。この内 3 例では,. *. Physical Therapy to Patients with Veno-venous Extracorporeal Membrane Oxygenation (V-V ECMO) in Hiroshima University Hospital 1) 広島大学病院診療支援部リハビリテーション部門 (〒 734–8551 広島県広島市南区霞 1–2–3) Kazuhiro Sarada, PT, Shunsuke Taito, PT, Yuichi Nishikawa, PT, Toshihiro Kawae, PT, Kosuke Sasaki, PT: Division of Rehabilitation, Department of Clinical Practice and Support, Hiroshima University Hospital 2) 広島大学大学院医歯薬保健学研究院 Kiyokazu Sekikawa, PT: Graduate School of Biomedical and Health Sciences, Hiroshima University キーワード:体外式膜型人工肺,理学療法,現状. V-V ECMO 離脱翌日から完全側臥位または端座位練習を開始 しており,まったくの非介入は 3 例(11.1%)であった。. 考 察 ECMO 症例に対する理学療法は,ガイドライン 3)では「背 側無気肺の発生は避けるべき」とされ,腹臥位管理の実施につ いて言及されている。また「患者の体位は病態を考慮したうえ で可能な限り可動性のある正常な体位を保つべき」としてお り,早期理学療法の概念が盛りこまれている。このため体外循.

(2) 当院における体外式膜型人工肺装着患者への理学療法介入の現状. 815. 院の実績症例の平均年齢は,64.3 ± 12.2 歳であった。生存率は, 実施施設の集約化を推進し,集中的・専門的に治療を行う方が 改善効果は高くなると報告されている 15)ため,日本でも集約 化の動きがある 16)。. さいごに どんな重症患者でも,最終目標は ADL 自立である。その意 味で超急性期から長期的な QOL を見据えた介入が必要である。 そのためには適切な時期からの理学療法介入が必要であるが, 多職種連携が必須となる。このため,体外循環実施症例に対し 図 1 年別の V-V ECMO 患者数と理学療法実績 V-V ECMO 症例数:35 例(2005 年 1 月~ 2015 年 2 月) 生存率:2011 年以前(8 症例) ;12.5%,2012 年以降(27 症例) ; 55.6% V-V ECMO 管理期間中の理学療法介入数(体位呼吸療法お よび立位を含む離床練習,関節可動域練習のみの患者は含ま ず):2011 年以前(8 症例);0 例,2012 年以降(27 症例); 21 例(77.8%) 環装置の装着自体が理学療法非介入の理由とはならない。しか し,V-V ECMO の導入が必要な重症呼吸不全患者の急性期で は,肺の炎症が強く患者の呼吸努力が強いため,適切な鎮静 および鎮痛が必要となる。過剰な呼吸努力により肺障害が増悪 する可能性が指摘されている. 4). ため,理学療法介入によって. “lung rest”を妨げる場合には,介入時期や内容を担当医と十 分に協議する必要がある。 完全側臥位や腹臥位などの体位呼吸療法は,特に重症 ARDS 患者に対して長期予後の改善効果が示されている 5)6)。ECMO 症例に対しても安全に腹臥位を実施できる 7) ため,当院にお いても積極的に実施してきた。しかし,体外循環管理中の患者 に対する腹臥位は,十分な安全性の確保が重要であり,多くの 人手や経験が必要である。腹臥位困難例では,ECMO 管理期 間中の前傾側臥位により腹臥位と同等の効果が示されている 8) ため,代替手段として利用価値は高い。 ECMO 症例に対する早期離床の効果は十分に示されてい ない。症例報告レベルでは,肺移植までの待機期間に V-V ECMO を導入した患者に対する端座位や歩行練習を行ったも –11). のもある 9. 。また,Abrams ら 11)は,ECMO 管理中の 100. 症例の内,35 例に対して積極的な理学療法介入を行い,その 内の 18 例(51%)で歩行練習を行ったと報告している。これ らのほとんどの症例は,ダブルルーメンを用いたカニュレー ションにより達成されているが,大腿部でカニュレーションを 実施した 2 症例についても,立位保持練習および 1.2  m の歩行 を有害事象なく実現している。当院で離床練習を実施する場合 には,Tilt table を利用した立位練習を行っている。臥床姿勢 のまま Tilt table に移動して立位姿勢に移行することが可能で あり,カニューレの長さは移動に十分耐えられる長さを有して いるため,安全性に問題は生じていない。 当院の生存率は,2012(平成 24)年以降に導入数が増加し た後の 27 症例において 55.6%であったが,他の報告. 12–14). で. の生存率は,68 ~ 92%と非常に高い。この理由は,他の報告 が新型インフルエンザという特定の疾患に限定して調査したも のであり,また対象患者の年齢の相違が大きく影響しているも のと考える。他文献の中央値は 31 ~ 39 歳と非常に若いが,当. て,積極的な理学療法介入を実現できる環境や文化の構築を日 頃から行っておくことが重要である。. 文 献 1) Peek GJ, Mugford M, et al.: Efficacy and economic assessment of conventional ventilatory support versus extracorporeal membrane oxygenation for severe adult respiratory failure (CESAR): a multicentre randomised controlled trial. Lancet. 2009; 374: 1351–1363. 2) Extracorporeal Life Support Organization [Internet]. Arbor: ELSO guidelines [cited 2015 Jun 26]. Available from: https://www.elso. org/Resources/Guidelines.aspx 3) Extracorporeal Life Support Organization [Internet]. Arbor: ELSO Guidelines General v 1.3 Japanese [cited 2015 Jun 26]. Available from: https://www.elso.org/Resources/Guidelines.aspx 4) Amato MB, Meade MO, et al.: Driving pressure and survival in the acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med. 2015; 372: 747–755. 5) Guérin C, Reignier J, et al.: Prone positioning in severe acute respiratory distress syndrome. N Engl J Med. 2013; 368: 2159 –. 2168. 6) De Jong A, Molinari N, et al.: Feasibility and effectiveness of prone position in morbidly obese patients with ARDS: a casecontrol clinical study. Chest. 2013; 143: 1554–1561. 7) Guervilly C, Hraiech S, et al.: Prone positioning during venovenous extracorporeal membrane oxygenation for severe acute respiratory distress syndrome in adults. Minerva Anestesiol. 2014; 80: 307–313. 8) Brunauer A, Dankl D, et al.: Incomplete (135°) prone position as an alternative to full prone position for lung recruitment in ARDS during ECMO therapy. Wien Klin Wochenschr. 2015; 127: 149–150. 9) Lowman JD, Kirk TK, et al.: Physical therapy management of a patient on portable extracorporeal membrane oxygenation as a bridge to lung transplantation: a case report. Cardiopulm Phys Ther J. 2012; 23: 30–35. 10) Garcia JP, Kon ZN, et al.: Ambulatory veno-venous extracorporeal membrane oxygenation: innovation and pitfalls. J Thorac Cardiovasc Surg. 2011; 142: 755–761. 11) Abrams D, Javidfar J, et al.: Early mobilization of patients receiving extracorporeal membrane oxygenation: a retrospective cohort study. Crit Care. 2014; 18: R38. 12) Holzgraefe B, Broomé M, et al.: Extracorporeal membrane oxygenation for pandemic H1N1 2009 respiratory failure. Minerva Anestesiol. 2010; 76: 1043–1051. 13) Forrest P, Ratchford J, et al.: Retrieval of critically ill adults using extracorporeal membrane oxygenation: an Australian experience. Intensive Care Med. 2011; 37: 824–830. 14) Patroniti N, Zangrillo A, et al.: The Italian ECMO network experience during the 2009 influenza A (H1N1) pandemic: preparation for severe respiratory emergency outbreaks. Intensive Care Med. 2011; 37: 1447–1457. 15) Barbaro RP, Odetola FO, et al.: Association of hospital-level volume of extracorporeal membrane oxygenation cases and mortality. Analysis of the extracorporeal life support organization registry. Am J Respir Crit Care Med. 2015; 191: 894–901. 16) 竹田晋浩:我が国の ECMO プロジェクト.Intensivist.2013; 5: 354–358..

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