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日本の国際協力が果たすべき役割

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 653 ~ 654 頁(2015 日本の国際協力が果たすべき役割 年). 653. 合同シンポジウム 3(JICA). 日本の国際協力が果たすべき役割* ─人々の命と生活と尊厳を守る国際協力をめざして─ 戸 田 隆 夫**. ようになった今日,先進国から開発途上国に対する援助とし. 国際社会の中心的課題としての開発問題. て,開発途上国の個別のリクエストに応じてプロジェクトを実. 世界人口の約 8 割(約 56 億人)が開発途上国といわれてい. 施する,というスタイルのみでは,多様化・高度化し,かつ多. る地域に住み,約 15%(約 10 億人)が 1 日 1.25 米ドル未満で. くの場合国境を越えて相互に影響し合う開発途上国のニーズに. 生活している。世界最高水準の保健指標を誇る日本と開発途. 応えることが難しくなりつつある。さらに,開発途上国への資. 上国について,5 歳未満の死亡率や妊産婦の死亡率を比較する. 金の流れの約 3 分の 2 が民間資金によるものであり,国際協力. と,アフリカの最貧国などとは,100 倍以上の格差が未だ存在. の担い手も多様化しつつある。これらの変化を反映して,これ. する. 1). 。つまり,今日の世界において,開発,とりわけ貧困の. からの国際協力は,今後ますます,世界中の多様なアクターを. 克服は,世界の周縁で起こっているマイナーな問題ではなく,. ダイナミックに巻きこみ,世界の問題を世界中の人々が協働し. 世界中の多くの人々の命,生活や尊厳を守るために,避けて通. て解決する,という新しいスタイルに移行していく。. ることのできない重い課題としてのしかかっている。世界に多. そのような状況変化の中で,日本がなすべきことは少なくと. くの資源を依存し,輸出入が日本経済と日本人の生存の生命線. も 3 つある。第一に,日本が掲げてきた「人間の安全保障」の. であり,世界の平和と安定によって自国の安寧を享受している. 理念を生かした協力をこれまで以上に重視し継続していくこと. 日本人は,このことについて,本来,誰よりも敏感でなければ. である。「人間の安全保障」とは,「人間存在の中核的価値であ. ならない。しかし,日本で暮らしていると,このことを実感す. る命と生活と尊厳を守ること」である。それを実現するために. ることは難しい。したがって,これに対してなにか具体的な行. は,特定疾患対策など個々の開発課題への個別の対処や高度に. 動をとろうとすることは,一般的な日本人にとっては,残念な. 細分化された専門技術や情報を個別に活用することだけでは不. がらきわめて稀である。. 十分である。改めて,人々を中心に据え,人々のために,人々. 問題をさらに深刻にしているのは,開発途上国の中における. に届く協力を,様々な専門性を連携させるかたちで実践しなけ. 格差である。その中でも障害者は,就労,教育,保健サービス. ればならない。. 等へのアクセスにおいて,非障害者よりも困難な状況におかれ. 第二に,開発の過程で,すべての人々がそこに参加し,かつ,. 2). ている。世界総人口の約 15%(約 10 億人) と推定される障. すべての人々がその恩恵を享受できるような開発を推進するこ. 害者が,世界の貧困人口の 20%を占める。開発途上国に住む. とである。先進国,途上国を問わず,国内外での人々の間の格. 障害者の 8 割以上が,貧困ライン. 3). 以下で生活している. 4). 。. 差がますます広がる今日において,自らの命,生活,そして尊. つまり,開発問題は,中国やインドなどのいわゆる新興国が. 厳が,自らの努力だけで守ることが困難な人々に対して,これ. 目覚ましい発展を遂げつつある今日においても,なお,国際社. まで以上に,光をあてなければならない。その際,障害者を含. 会における中心的課題のひとつであり続けている。. む社会的に困難な状況におかれた人々が開発の過程に参加し,. 国際潮流の変化の渦中で,日本がなすべきこと. 貢献し,かつ利益を享受することは,特に重要である。それは, 慈善事業を推進することではない。すべての人々がその可能性. これらの問題解決をめざす国際協力のありさまは,不可逆的. を発揮し,尊厳を保って生き続けることのできる社会は,障害. に進展するグローバリゼーションの中で,大きな変容を遂げつ. の有無に限らず,すべての人々が協働してめざすべき望ましい. つある。人,もの,金,情報が国境を越え,世界中を駆け巡る. 社会の姿である。. *. The Role of Japan’s Development Cooperation in the New World Trend: Protecting Life, Livelihood and Dignity of People All Over the World ** 独立行政法人 国際協力機構 人間開発部部長 (〒 102–8012 東京都千代田区二番町 5–25 二番町センタービル) Takao Toda, PhD: Japan International Cooperation Agency, Human Development Department キーワード:国際協力,人間の安全保障,障害と開発. 第三に,日本は,日本自体の開発過程や開発途上国に対する これまでの協力における成功と失敗の経験からの学びを最大限 に生かし,それを,個々の事業活動に反映させるのみならず, それらのエッセンスが,世界の公共財として活用されるように これまで以上に努力をすべきである。さらに,それらの成果が, 特定の事業の単なる「小さな成功物語」に終わらず,そのプロ.

(2) 654. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. セスや方法論を含め,世界の人々に共有・共感可能な形で可視. の力によって,さらに進化を遂げ,有意の国際貢献を具体化し. 化され,世界中の国々のそれぞれの状況に適したかたちで活用. ていくことを切望する。. され,それらを触媒に,世界が学び合うことによって,より多 くの人々が裨益する社会変革のムーブメント(社会的運動)と なっていくような協力を追求していかなければならない。日本 自体が発展を遂げるために国内において私たちの先達が営々と 積み上げてきた試みから得られる知見もあれば,日本人が国際 協力を通じた世界への貢献の試みから得られる知見もある。 障害と開発の分野においても,日本の経験,そして,日本人 による数々の国際貢献の試みは,世界的に見て貴重なものが少 なくない。それには,国際場裡における政策過程のレベルでの 貢献(特に障害者の権利条約の制定,各国における署名,批 准,そのための国内法の整備などに関すること)から,実際に 人々が暮らし,助け合う場であるコミュニティのレベルに至る まで,様々な営みが含まれる。それらが,私たちおよび次世代. 文 献 1) WHO. 2014. “Maternal mortality ratio (per 100 000 live births), 2013”. http://gamapserver.who.int/mapLibrary/Files/Maps/ Global_mmr_2013.png(2015 年 5 月 15 日引用) 2) WHO. 2006. “Promoting access to healthcare services for persons with disabilities”. http://www.who.int/nmh/donorinfo/vip_ promoting_access_healthcare_rehabilitation_update.pdf.pdf(2015 年 5 月 14 日引用) 3) World Bank. 2012. “Poverty & Equality Data FAQs”, 16 Feb 2012. http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/TOPICS/EXT POVERTY/0,,contentMDK:23012899~pagePK:210058~piPK:210062~ theSitePK:336992,00.html(2015 年 5 月 20 日引用) 4) ILO. 2011. Moving towards disability inclusion. http://www.ilo. org/wcmsp5/groups/public/---ed_emp/---ifp_skills/documents/ publication/wcms_160776.pdf(2015 年 5 月 15 日引用).

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