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Rumination about an Interpersonal Offense Scale(RIO)日本語版の作成ならびに信頼性・妥当性の検討

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-43

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-Rumination about an Interpersonal Offense Scale(RIO)

日本語版の作成ならびに信頼性・妥当性の検討

○佐藤 秀樹1)、鈴木 伸一2) 1 )早稲田大学大学院人間科学研究科、 2 )早稲田大学人間科学学術院 【問題と目的】 反すうとは,「ある苦痛の症状や その原因,意味, 結果について繰り返し考えてしまうこと」と定義さ れ,抑うつの維持・増悪に影響するとされる(Nolen-Hoeksema et al., 2008)。これまでの研究では,反す うの特性的側面だけでなく,状態的側面も検討されて いる。たとえば,反すうを実験的に誘導すると,ネガ ティブ感情やネガティブな自伝的記憶の想起を高め (Lyubomirsky et al., 1998; Lyubomirsky & Nolen-Hoeksema, 1995),課題に対する集中力や社会的問題 解決能力を低下させる(Lyubomirsky et al., 2003) ことが示されている。反すうの認知情報処理のメカニ ズムや反すうと抑うつの因果関係を明らかにするため にも,反すうの状態的側面の検討が必要である。 その一方で,本邦において状態反すうを測定する標 準化された尺度が開発されていない。そのなかで,状 態反すうを測定する尺度としてRumination about an Interpersonal Offense Scale(RIO; Wade et al., 2008)がある。RIOは 6 項目 5 件法の尺度であり,信 頼 性 と 妥 当 性 が 確 認 さ れ て い る(Wade et al., 2008)。また,RIOでは 1 因子構造が確認されており, 抑うつと負の相関関係にあることが報告されている (Wade et al., 2008)。これらのことから,RIOは状態 反すうを測定するのに有用なツールであると考えられ るが,RIOの日本語版は作成されていない。そこで本 研 究 で は,ISPORタ ス ク フ ォ ー ス(Wild et al., 2005)とCOSMINを参考に, RIO日本語版の作成ならび に信頼性・妥当性を検討することを目的とした。 【方法】 調査対象者 首都圏の私立大学に通う大学生・大学院 生208名(男性71名,女性137名;平均年齢20.46±2.24 歳)を分析対象とした。再検査信頼性の検討では,55 名を分析対象とした。 RIO日本語版の作成手続き RIOの邦訳は,原版著者の Nathaniel G. Wadeから承諾を得たうえで開始された。 まず,臨床心理学を専門とする大学院生 1 名と,英語 と 日 本 語 に 堪 能 で 本 研 究 の 目 的 を 知 ら な い 1 名 が 別々にRIO原版を邦訳したうえで各邦訳版を統合し, 2 名で翻訳された項目の合意を図った。邦訳された RIOは,専門業者であり元の英語版を知らない英語話 者 1 名によって逆邦訳された。その後,原版著者と協 議を重ねながら細部の修正を行い,原版と日本語版の 文章の同等性を確認したうえでRIO日本語版を完成さ せた。 調査項目 ( a )デモグラフィックデータ:性別と年 齢を聴取した。( b )状態反すう:本研究で作成した RIO日本語版を用いた。この尺度は 6 項目 5 件法から 構成される。( c )特性反すう:日本語版Ruminative Responses Scale(RRS;Hasegawa, 2013)を用いた。 この尺度は22項目 4 件法から構成される。( d )私的 自己意識:Rumination-Reflection Questionnaire日本 語版(RRQ;高野・丹野,2008)を用いた。この尺度 は24項目 5 件法からなり,「反芻」と「省察」の下位 因 子 で 構 成 さ れ る。( e ) 感 情 調 整:E m o t i o n Regulation Questionnaire日本語版(ERQ;吉津他, 2013)を用いた。この尺度は10項目 7 件法からなり, 「抑制」と「再評価」の下位因子で構成される。( f ) 抑うつ:日本語版Center for Epidemiologic Studies Depression(CES- D ;島他,1985)を用いた。この尺 度は20項目 4 件法から構成される。( g )感情状態: 日本語版Positive and Negative Affect Schedule (PANAS;佐藤・安田,2001)を用いた。この尺度は16 項目 6 件法からなり,「ポジティブ感情」と「ネガティ ブ感情」の下位因子で構成される。 調査手続き 本調査は,講義終了後の時間で一斉に無 記名式で行われた。その際,本研究の趣旨説明と,研 究参加は自由意志であり,研究に参加しないことで不 利益を受けることは一切ないことを事前に口頭で説明 したうえで,研究参加に同意した者のみが研究に参加 した。そして, 1 回目の調査終了後に約 2 週間の間隔 を空け,上記と同様の手続きで 2 回目の回答を求め た。 倫理的配慮 本研究は,早稲田大学「人を対象とする 研究に関する倫理審査委員会」の承認を得て実施され た(承認番号:2018-024)。 【結果】 第 1 に,項目分析として,RIO日本語版の天井効果 と床効果を確認したところ,全ての項目で外れ値は存 在しなかった。次に M ±1SDによる G - P 分析の結果, 全ての項目で上位群は下位群よりも得点が高かった (ps<.001)。そして I - T 相関の結果,全ての項目で 中程度以上の相関係数が算出された。最後に各項目と

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-43 383 -合計の得点でクロンバックの α 係数を算出したとこ ろ,いずれも十分な値を示した(e.g., RIOの合計点: Cronbach’s α = .80)。 第 2 に,RIOの原版では 1 因子構造が確認されてい る(Wade et al., 2008)ため,RIO日本語版も 1 因子 構造を仮定した確証的因子分析を行った。その結果, 各項目の因子負荷量は.60以上であり,すぐれた因子 負荷量であることが示された(Table 1)。また,モデ ルの適合度は,CMIN = 99.26,GFI = .85,AGFI = .65,CFI = .87,TLI = .78,RMSEA = .22であり,基 準値には満たないもののおおむね良好であった。 第 3 に,RIO日本語版の構成概念妥当性と検討する ために,RIO日本語版と各尺度で相関分析を実施した (Table 2)。その結果,RIO日本語版はRRSと中程度の 正の相関(r = .62),RRQの反芻と中程度の正の相関 (r = .61),ERQの抑制と弱い負の相関(r = -.20), CES- D と中程度の正の相関(r = .62),PANASのネガ ティブ感情と中程度の正の相関(r = .63),ポジティ ブ感情と弱い負の相関(r = -.07)を示した。また, RIO日本語版はRRQの省察と弱い負の相関(r = -.20), ERQの再評価と弱い正の相関(r = .13)を示した。 最後に,RIO日本語版の再検査信頼性を検討するた めに,第 1 回調査と第 2 回調査の間で級内相関係数

(Interclass Correlation Coefficient: ICC)を算出 した。その結果,すぐれた再検査信頼性が確認された (ICC (2, 1) = .81, 95%CI =[.67, .89])。 【考察】 本研究の結果から,RIO日本語版は十分な信頼性と 妥当性を有する尺度であることが示された。構成概念 妥当性に関する仮説も,特性反すう・私的自己意識の 反芻と省察,抑うつ・ネガティブ感情で支持された。 これは,反すうの特性的側面と状態的側面でも,ネガ ティブ思考の反復性という面で共通していることや, それによってネガティブ感情が増大するという指摘 (Nolen-Hoeksema et al., 2008)からも推察される。 一方で,感情調整の抑制は感情が生起した後に感情の 表出を抑える方略であるため(Gross, 1998),状態反 すうと感情の表出を抑えるという行動反応には関連が なかったと考えられる。また,状態反すうはネガティ ブ感情とは中程度の負の相関が示されたが,ポジティ ブ感情とは相関が示されなかったことから,それらの 感情は 1 次元ではなく 2 次元性を有することが示唆さ れる。今後は,RIO日本語版を用いた反すう操作の妥 当性の検討が求められる。

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