Hypergeometric
representation of the
solution of
the singular
Cauchy problem
for
fuchsian
p.d.e.
同志社大学・文化情報学部
浦部 治一郎Doshisha
University
Jiichiroh
Urabe
1.
フックス型偏微分方程式とその定義
今から約
30
年前、Bauendi-Goulaouic
はその論文([BG-73])
において、確定特異点を持つ常微分方程式にならい、 フックス型偏微分作用素を定
義し、 その解を構成した。 その後、 田原 $([\mathrm{T}- 79])_{\backslash }$ 萬代
([M-OO])
をはじめとして多くの研究がある。 複素領域で $t=0$ にのみ特異性 (多価性)
を持つ斉次方程式 $Pu=0$ の解を構成するのが基本である。
Bauendi-Goulaouic の意味でのフックス型偏微分作用素とは次のように、
定義さ れる。$t\in C,$$x=(x_{1)}x_{2}, \cdots, x_{n})\in C^{n}$, $D_{t}= \frac{\partial}{\partial t},$$D_{x}= \frac{\partial}{\partial x}$
.
とし $(t, x)$ 空間の原点の近傍 $\Omega$ で
$m$ 階の線形偏微分作用素
$P= \sum_{j+|\alpha|\leq m}a_{j,a}.(t, x)D_{t^{j}}D_{x}^{\alpha}$
を考えよう。 ここで $a_{j,\alpha}(t, x)$ は$\Omega$ で正則であり、
$a_{j,\alpha}(t, x)=t^{v(j,\alpha)}\tilde{a}_{j,\alpha}(t, x)$ $\tilde{a}_{j_{\}}\alpha}neq0$
とかくことにする。係数$a_{j,\alpha}(t, x)$ の $t$ に関する vanishing
order
$v(j, \alpha)$ (こ対して $w(j, \alpha)=j-v(_{\dot{f}}.’\alpha)$ をこの項 $a_{j,\alpha}D_{t}^{j}D_{x}^{\alpha}$ の重み
(weight)
という。 この偏微分作用素 $P$ の各 項の重みの最大値 $w(P)={\rm Max}_{j,\alpha}w(j, \alpha)$ 偏微分作用素 $P$ の重みという。(1)
$w(P)\geq 0$(2)
$w(j, \alpha)=w(P)\Rightarrow\alpha=0$(3)
$w(m, 0)=w(P),\tilde{a}_{m,0}(0, x)\neq 0$偏微分作用素 $P$がこの
3
条件を満たすとき、$P$ はフックス型偏微分作用素 であるという。 ここでは、斉次方程式を扱うので、このとき $\tilde{a}_{m,0}(0, x)=1$ として扱う。 (必要なら $\Omega$ を小さくとる。) 重み $m-k$ のフックス型偏微 分作用素とは次の形をしている。 $P=t^{k}D_{t}^{m}+ \sum_{j=1}^{k}P_{j}(t, x;D_{x})t^{k-j}D_{t}^{m-j}+\sum_{j=h^{\wedge+}1}^{m}P_{j}(t, x;D_{x})D_{t}^{m-j}$ ここで$P_{j}(0, x;D_{x})$ $1\leq j\leq k$ は正則関数であり、$P_{j}(t, x;D_{x})$ は $m-j$ 階の正則関数係数の偏微分作用素である。 $Ch_{P}(x, \lambda)=\sum_{w(j,0)=w(P)}\tilde{a}_{j,0}(0, x)(\lambda)_{m-j}=t^{w(P)-\lambda}P(t^{\lambda})|_{t=0}$ を $P$ の特性多項式といい、$Ch_{P}(x, \lambda)=0$ の根 $\lambda_{j}(x)$ を特性指数という。2.
特異初期値問題 フックス型偏微分方程式の研究において、複素領域で $t=0$ にのみ特 異性 (多価性) を持つ斉次方程式 $Pu=0$ の解を構成する研究が多くな されてきた。 さらに、 ここでは、初期平面 $t=0$ の中の余次元1
の超平 面上に特異性を与え、 そこから出発する特性面と初期平面の両方に特異 性を持つ解を構成したい。一般のフックス型偏微分方程式を対象とする
ことは難しいので、次にあげる単純な複素2
変数2
階線形作用素 $L$ に対する斉次方程式に対してこの問題を考えることにする。
$C^{2}\ni(t, x)$ 座標 をとる。 $L=tD_{t}^{2}-D_{x}^{2}-c(t, x)D_{t}-a(t, x)D_{x}-b(t, x)$ ただし $a(t, x),$$b(t, x),$ $c(t, x)$ は原点の近傍 $\Omega$ で正則な関数とする。 このフックス型偏微分作用素 $L$に対する次の特異初期値問題を考える。
$\{$ $Lu(t, x)=0$ $u(0, x)=w(x)f_{\alpha}(x)$ここで $w(x)$ は $\Omega$ と初期平面 $E=\{(t, x)|t=0\}$. との共通部分 $\Omega$ 口 $E$で
正則な関数であり、
初期値で与える特異性は
であり、 また、 この問題の解 $u(t, x)$ は初期条件 $u(0, x)=w(x)f_{\alpha}(x)$ を
ベーススペースの初期平面の原点を除いた部分で満たすことを要請する
こととする。 この特異初期値問題に対して、 解 $u(t, x)$ を構成し、その特異性が何処 に、 どのように現れるのかを見ていくわけである。 まず、 特異性の現れる所、つまり $L$の特性面について見てみよう。
$L$ のいわゆる主要部は $tD_{t}^{2}-D_{x}^{2}$ であり、特性方程式 $(ch.eq.)$ $t\varphi_{t}^{2}-\varphi_{x^{2}}|_{\varphi=0}=0$ をみたす曲面 $\{(t, x)|\varphi(t, x)=0\}$ を求めると、 曲線族 $E_{s}=\{(t, x)|4t=(x-s)^{2}\}$ とその包絡線である初期平面 $E=$ $\{(t, x)|t=0\}$ からなっており、原点を通る特性面は $K=E_{0}\cup E$である。この特性方程式 ($\mathrm{c}h$
.eq.)
に初期条件 $\varphi(0, x)=x$ を付け加えた初期値問題の解$\xi,$$\eta$ は $\xi=x-2\sqrt{t}$, $\eta=x+2\sqrt{t}$ で与えられる。 他方、 このフックス型偏微分作用素 $L$ に対する特性指数は
0,
$1+c(0, x)$ である。ここでの特異初期値問題では初期値の特異性は初期平面
$E$ の原 点にあるので $c(0,0)$ を $c$ と書くことにする。つまり $c=c(0,0)$ . このフックス型偏微分作用素 $L$ に対する次の主要部 $P_{c}$ を考える。 $P_{c}=tD_{t}^{2}-D_{x}^{2}-cD_{1}$ このより単純なフックス型偏微分作用素 $P_{c}$ に対する特異初期値問題を 考えることから始めるわけである。この問題に関連して今から
1
世紀前に出版されたG.Darboux
の曲面論 の名著[D-96]
からLaplace
列とそれらに関連した事項を思い起こそう。ここに現れた $P_{c}u(t, x)=0$ は変数を $(t, x)$ から $[\xi, \eta]$ に変換をすると
Euler-Poisson
方程式 $E(\beta, \beta’)$ (今ではEuler-
Poisson-Darboux
方程式とも云う)
$E(\beta, \beta’)$ $(D_{\eta}D_{\xi}- \frac{\beta’}{\xi-\eta}D_{\xi}+\frac{\beta}{\xi-\eta}D_{\eta})u[\xi, \eta]=0$
になる。実際
$\{\xi=x-2\sqrt{t}$ $\{x=\frac{1}{2}\xi+\eta)\sqrt{t}=\frac{1}{(4}(\eta-\xi)$
$\eta=x+2\sqrt{t}$ ’
$\{D_{\eta}=(D_{x}+\sqrt{t}D_{t})D_{\xi}=\frac{1}{\frac{21}{2}}(D_{x}-\sqrt{t}D_{t})$ , $\{D_{t}=\frac{4}{(\eta-\xi),D_{\eta}}(D_{\eta}-D_{\xi})D_{x}=+D_{\xi}$
であり、$P_{c}$ は一4倍の
Euler-Poisson
作用素 $(D_{\eta}D_{\xi}- \frac{\beta’}{\xi-\eta}D_{\xi}+\frac{\beta}{\xi-\eta}D_{\eta})$において $\beta=\beta^{l}=-(\frac{1}{2}+c)$ としたものとなる。 $P_{\beta,\beta’}=(\xi-\eta)D_{\eta}D_{\xi}-\beta’D_{\xi}+\beta D_{\eta}$ と置くと $\{D_{\eta}P_{\beta,\beta},=P_{\mathcal{B},\beta+1},D_{\eta}D_{\xi}P_{\beta,\beta’}=P_{\beta+1,\beta’}D_{\xi}$ ,
つまり、 $D_{\xi},$$D_{\eta}$ は編微分作用素 $P_{\beta,\beta’}$ の昇降演算子の役割を果たして
いる。
Euler-Poisson
方程式 $E(\beta)\beta’)$ は$\beta=0,$ $\beta’=0$ のどちらかが成り立てば、
簡単に積分で解けるわけであるが、 この関係式によれば、
次のこ とがわかる。Euler-Poisson
方程式 $E(\beta, \beta’)$ の解全体のつくる集合を $Z(\beta, \beta’)$ で表すことにすると、$\beta\neq 0$ であれば、
が成り立つ。 また$\beta’\neq 0$ であれば、
$D_{\eta}Z(\beta, \beta’)=Z(\beta, \beta’+1)$
が成り立つ。 一般には
$D_{\xi}^{m}D_{\eta}^{n}Z(\beta, \beta’)\subseteq Z(\beta+m, \beta’+n)$
が成り立つ。また $(\beta)_{m}(\beta’)_{n}\neq 0$のとき上の式で等号が成り立つ。このこ とより、$\beta,$$\beta’$
のどちらかが整数であれば解を積分により求められ、整数
でないときにはRiemann-Liouville
積分を使って解を表すことができる。
$\ovalbox{\tt\small REJECT}_{\beta’},[X(\xi)Y(\eta)]=0$ と変数分離法で解くかとができ、そのことからも解の積分表示を求める ことができる。 また$\zeta=\frac{\eta}{\xi}$ とおき、$u=\xi^{\lambda}\phi(\zeta)$ とすると、方程式 $E(\beta, \beta’)$ は次のガウ スの超幾何方程式になる。 $[ \zeta(1-\zeta)\frac{d^{2}}{d\zeta^{2}}+\{1-\lambda-\beta-(1-\lambda+\beta’)\zeta\}\frac{d}{dz}+\lambda\beta_{\rfloor}^{J1}\phi(()=0$この方程式の列 $E(\beta+m, \beta’),$$E(\beta, \beta’+n)$ $m,$$n\in \mathrm{Z}$ は
Laplace
列の1
例である。$\beta,$$\beta’$のどちらかが整数であれば,Laplace
列は有限で終わり、解は $Z(\beta+m, \beta’),$ $Z(\beta, \beta’+n)$ に属する関数の ” 正則関数係数
” の線形 結合で表される。 これがLaplaceの方法である。 これを使って我々の特異 初期値問題を解こうというわけである。 この他多くのことが
Darboux
の 本には書かれており是非参照されたい。4.
補助関数 $z= \frac{4t}{x^{2}}$ とおき、 $P_{c}(u(t, x))=0$ の解で $U_{\alpha}^{\dot{\mathrm{c}}}(t, x)= \frac{x^{\alpha}}{\Gamma(\alpha+1)}U(z)$ の形のものを見つけてみる。$P_{c}(U(z))=0$ に代入して計算すると、 次の ガウスの超幾何微分方程式が得られる。$[z(1-z) \frac{d^{2}}{dz^{2}}+\{-c-(\alpha+\frac{3}{2})z\}\frac{d}{dz}+\frac{\alpha(1-\alpha)}{4}]U(z)=0$
我々の結果を述べるために重要な役割をはたす補助関数 $U_{\alpha}^{c}(t, x)$ $\alpha,$$c\in$
$\mathrm{C}$ を次の特異初期値問題の解として定義する。
$\{$
$P_{c}U_{\alpha}^{c}(t, x)=(tD_{t}^{2}-D_{x}^{2}-cD_{t})U_{\alpha}^{c}(t, x)=0$ $U_{\alpha}^{c}(0, x)=f_{\alpha}(x)$
$U_{\alpha}^{c}(t, x)$ は今まで述べたことより.
$U_{\alpha}^{c}(t, x)= \frac{1}{\Gamma(\alpha+1)}x^{\alpha}F(\frac{-\alpha}{2}7\frac{-\alpha+1}{2}\dagger-c, \frac{4t}{x^{2}})$
.
と表すことができる。 P』と $D_{x}$ は可換であり、$D_{x}f_{\alpha}(x)=f_{\alpha+1}(x)$ であるから $\{$ $P_{c}(D_{x}U_{\alpha}^{c}(t, x))=D_{x}(P_{c}(D_{x}U_{\alpha}^{c}(t, x))=0$ $D_{x}U_{\alpha}^{c}(\mathrm{O}, x)=f_{\alpha-1}(x)$ となり $D_{x}U_{\alpha}^{c}(t, x)=U_{\alpha-1}^{c}(t, x)$ である。 $D_{t}P_{c}=P_{c-1}D_{t}$ であり $\{$ $D_{t}(P_{\mathrm{c}}(U_{\alpha}^{c}(t, x)))=P_{c-1}(U_{\alpha}^{c}(t, x)))=0$
$D_{t}U_{\alpha}^{c}(0, x)=- \frac{1}{c}U_{\alpha-2}^{c}(0, x)=-\frac{1}{c}f_{\alpha-2}(x)$
このことより
$D_{t}U_{\alpha}^{c}(t, x)=- \frac{1}{c}$
U\mbox{\boldmath$\alpha$}c
二
l
$(t, x)$が成り立つ。 これらより、一種のLaplace列 $ker(P_{c\mathit{1}\mathit{4}})$ $k\in \mathrm{Z}$ の中で $D_{t}$
が昇降演算子の働きをし、 隣り合う $ker(=/’ c_{+k})$ と $ker(P_{c+k-1})$ の関係付
けるわけであり、$D_{x}$ が同一の $ker(P_{c+k})$ のなかの階層構造をつくるわけ
である。
これらの補助関数ひ$\alpha+rc-k(t, x)$ $r,$$k\in \mathrm{Z}$
の正則関数係数の無限級数とし
て、
最初の特異初期値問題を解く。
これらのLaplace
列 $ker(P_{c+k})$ に属すメーター付けられ、 特異性 (多価性)
を記述するモノドロミー行列は共
通のスペクトル (固有値) を持つ。 このことが重要である。(固有ベクト
ルは共通でない。)
なお、$\alpha=n$ $n\in \mathrm{N}$ の場合、 $U_{\alpha}^{c}(t_{\dot{J}}x)$ は $(t, x^{2})$ の $n$ 次多項式である。
5.
今までの結果 $c(0, x)$ が定数の場合、[U-88]
において 定理 原点の近傍$\Omega$を十分小さくとれば、
この特異初期値問題に対し、 $\Omega\backslash K$ の上の一般被覆面 $\Omega\overline{\backslash }K$ で正則な解が存在する。 もう少し精確に云 うと、 解 $u(t, x)$ は次のように表現できる。$u(t, x)= \sum_{r=0}^{\infty}[u_{r}(t, x)U_{\alpha+r-1}^{c}(t, x) +v_{r}(t, x)tD_{\mathrm{t}}U_{\alpha+r}^{c}(t, x)]$
ここで $u_{r}(t, x)$ と $v_{r}(t, x)$ は共通の領域 $\Omega$ で正則な関数であり $c=$
$\mathrm{c}(0,0)$ である。
$c$ が非負の整数でない場合は、
この解は一意的である。そうでない場合
は
nullsolution
を構成することができる。$c(0, x)$ が定数の場合はLaplace列 $ker(C_{c+k})$ は必要なく、$ker(P_{c})$ の中
の関数の正則関数係数の級数でこと足りている。
また、 初期値が極を持つ場合
$\{$
$Lu(t, x)=0$
$u(0, x)=w(x)k_{-n}(x)$ $(n\in \mathrm{N})$
.
ここで $w(x)$ は$\Omega\cap E$ で正則$_{\mathrm{c}}\mathrm{r}\ovalbox{\tt\small REJECT} 5\backslash \text{数^{}\prime}$であり、
$k_{\alpha}(x)= \frac{\partial f_{\alpha}}{\partial\alpha}(x)=\frac{\partial}{\partial\alpha}(\frac{x^{\alpha}}{\Gamma(\alpha+1)})$
である。 もう少し詳しくすると、 次のようである。
$k_{\alpha}(x)=\{$
$\frac{1}{\Gamma(\alpha+1)}x^{\alpha}(\log x+\psi(\alpha+1))$
$|\alpha+1|!(-1)^{\alpha-1}x^{\alpha}$
for
$\alpha=-n$ $(n\in \mathrm{N})$.この極性特異初期値問題を解くためには、 もとの特異初期値問題の両
$\{$
$L \frac{\partial u}{\partial\alpha}(t, x)=0$
$\frac{\partial u}{\partial\alpha}(0_{7}x)=w(x)\frac{\partial f_{\alpha}}{\partial\alpha}(x)$
$\frac{\partial u}{\partial\alpha}(t, x)|_{\alpha=-n}$ がこの場合の解を与える。
5.
今回の結果 $c(0, x)$ が定数でない場合、 定理 原点の近傍$\Omega$を十分小さくとれば、
この特異初期値問題に対し、 $\Omega\backslash K$ の上の一般被覆面 $\Omega\overline{\backslash }K$ で正則な解が存在する。 もう少し精確に云 うと、 解 $u(t, x)$ は次のように表現できる。$u(t, x)= \sum_{k=0}^{\infty}\sum_{r=0}^{\infty}[u_{r,k}(t, x)U_{\alpha+r-1}^{c-k}(t, x) +v_{r,k}(t, x)tD_{t}U_{\alpha+r}^{c-k}(t, x)]$
ここで $u_{r,k}.(t, x)$ と $v_{r,k}.(t, x)$ は共通の領域 $\Omega$ で正則な関数であり $c=$ $c(\mathrm{O}, 0)$ である。 $c$ が非負の整数でない場合は、