情報処理 Vol.51 No.4 Apr. 2010
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拡
張
現
実
感
(
AR
)
特集
[基礎]
1.
基礎 1
:拡張現実感
(Augmented Reality:AR)概論
2.
基礎 2
: 位置合わせ技術
3.
基礎 3
:開発用ツール
[応用]
4.
応用 1
:モバイル AR
5.
応用 2
:プラント保守作業支援
6.
応用 3
:医療分野における AR の活用
7.
応用 4
:ミュージアムへの展開
8.
応用 5
:プロジェクション型 AR
[展望]
9.
展望 1
:AR のハードウェア
10.
展望 2
:AR のためのセンシング
11.
展望 3
:AR のインタフェース
12.
展望 4
:AR の社会的インパクト
情報処理 Vol.51 No.4 Apr. 2010
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コンピュータ技術の発展,一般社会への浸透によって,
我々の意識の向かう先には日常的に情報ディスプレイが
存在するようになった.仕事のときでも,家庭でも,電
車に乗っているときでも,常に情報ディスプレイと向か
い合って生活するようになった.我々が生きているこの
世界はおそらくすべてが現実であるが,情報ディスプレ
イの先にあるコンピュータの中のディジタルデータによ
って構成される情報に我々の意識が向いたとき,それを
仮想世界として現実世界と切り分けて考えるようになっ
た.その結果,我々は現実世界と仮想世界での両方の世
界で生きることとなり,最近では仮想世界の生活時間が
現実世界での生活時間を超えている人も,特に我々の業
界では,かなり多いのではないだろうか.
コンピュータはもともと人間の活動を支援する道具で
あり,それによって人間の現実世界での活動は直接的に
助けられてきた.しかし,現在では,仮想世界での生活
時間が延びることと相まって,仮想世界での活動を支援
する道具としての使われ方が非常に多くなってきた.
拡張現実感とは,現実世界の中にコンピュータ内の情
報や仮想物体を実際にあるかのようにユーザに提示する
技術である.現実世界と仮想世界を密接に関係づけるこ
とで,人間の現実世界での活動を直接的に支援すること
を目指している.このような情報提示手法を用いること
で現実世界を仮想的に補強することができれば,ユーザ
は,現実世界の中での活動において,情報サービスを非
常に自然な形で受けることができると考えられる.
これまでの情報サービスでは,情報がユーザに提示さ
れる場所は,紙の上であったり,ディスプレイモニタの
中であったために,その情報を理解した後,ユーザはそ
れを現実世界の問題と対応付ける必要があった.たとえ
ば,操作手順として,ボタン
A
を押しなさいという指
示が示されていれば,現実世界の作業対象においてどれ
がボタン
A
かを探さなければならなかった.拡張現実
感技術を用いると,操作すべき実際のボタン
A
に対し
て,それを押しなさいという指示を直接表示できるため
に,このような対応付けの問題は起きない.これは,人
間の支援者がジェスチャを交えて作業を教示する形態に
近い.また,前述のように,最近では仮想世界の中だけ
で完結する活動も非常に多いのだが,拡張現実感を用い
ることで,そのような活動を現実世界の中に連れ出すこ
ともできる.それによって,現実世界で人間が獲得して
きたスキルを有効に利用できることになる.
このような情報提示形態を実現するためには,さまざ
まな要素技術に関する研究が必要である.
1990
年代前
半に拡張現実感の考え方が認知されて以来,多くの研究
がなされてきた.その結果,現時点で完全な拡張現実感
技術が完成したわけではないが,これまでに開発された
技術をうまく利用することにより,理想的な拡張現実感
でないまでも,実用的/商用的なシステムの構築が可能
な時代になってきた.
本特集では内容を
3
部にわけている.第
1
部では,概
論として拡張現実感という考え方や技術がどのようなも
のであるかを解説した後,その最も基本的な技術とされ
ている位置合わせ技術について説明を加え,現時点で拡
張現実感システムを構築するために利用可能なツールを
紹介する.第
2
部では,現時点で利用可能な技術を用
いて,現在取り組まれているいくつかの応用について紹
介する.まず,現在その実用化が最も注目されている分
野である携帯電話などの端末を使用して実現される拡張
現実感について紹介する.続いて,プラント保守,医療,
ミュージアムという
3
つの異なる分野での応用事例につ
いて紹介する.最後に,実現形態が他のものと大きく異
なるものの興味深い取り組みであるプロジェクション型
の拡張現実感について紹介する.第
3
部では,究極の
拡張現実感を目指し,現在精力的に取り組まれている技
術課題をハードウェア,センシング,インタフェースの
3
つの側面から展望し,最後に拡張現実感の社会的イン
パクトとして応用面での興味深い展開を紹介する.
(平成22年3月15日)
拡
張
現
実
感
(
AR
)
編集
に
あたって
特集
加藤博一
奈良先端科学技術大学院大学