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<論文>知的資産情報開示の現状と課題--オンバランス・アプローチを中心に

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(1)商経学叢. 第57巻 第2号2010年12月. 知 的資産情報 開示 の現状 と課題 一オ ン バ ラ ン ス ・ア プ ロ ー チ を 中 心 に. 戸 概要. 田. 統. 久. 企 業 は持 続 的 競 争 優 位 性 を 確 保 す るた め に,そ の 源 泉 とな る知 的 資 産(無 形 資 産)の. 蓄 積 と活 用 を 重 視 した 企 業 経 営 が 求 め られ る よ う にな って きて い る。 しか し,現 在 の 企 業 情 報 開 示 制 度 の も とで は,知 的 資 産 に関 す る情 報 の 開 示 は いま だ 十 分 で あ る と は言 い 難 い 。 そ こで 本 稿 で は,知 的 資 産 情 報 開 示 に関 す るオ ンバ ラ ンス ・ア プ ロー チ の も とで,知 的 資 産 の 会 計 的 認 識 の 現 状 と課 題 を 明 らか にす る こ とを 目的 と して い る。 具 体 的 には,知 的 資 産 を 分 類 す る こ と に よ って そ の 特 徴 を 整 理 した うえ で,現 在 の 制 度 会 計 にお け る概 念 フ レー ム ワー ク と会 計 基 準 に照 ら して,知 的 資 産 の 会 計 的 認 識 の 限 界 と可 能 性 を 検 討 して い る。. Abstract. Nowadays,. sets (intangibles) management. information. firms are faced to focus on stocking. to gain However,. is sufficient. and using intellectual as-. sustainable. competitive. advantages. it is difficult. to say that. disclosure. under the existing. corporate. in their. corporate. of intellectual. disclosure. assets'. system.. This pa-. per aims to clarify the present status and issues of the accounting recognition about intellectual assets related to the On-balance Approach. Specifically, it classifies intellectual tation. assets to illustrate. and possibility. conceptual. キ ー ワー ド. framework. their. characteristics. first,. and then discusses. of accounting. recognition. about. them in the context. and standards. of financial. accounting.. 知 的 資 産 情 報 開 示,無. ク,会 計 基 準 原 稿 受 理 日2010年10月13日. 形 資 産,オ. ン バ ラ ン ス ・ア プ ロ ー チ,概. the limiof the. 念 フ レー ム ワー.

(2) 第57巻. 1.問. 第2号. 題 の 所 在. 自 由 貿 易 の 拡 大 や 資 本 の 国 際 化 な ど に 起 因 す る経 済 の グ ロ ー バ ル 化 は,企 業 の 競 争 フ ィ ール ドの 規 模 を拡 大 させ,ま. た,製 造 業 中心 か らサ ー ビス業 中心 へ の 移 行 と い う産 業. 構 造 の 変 化 は,規 模 の 経 済 性 や 生 産 効 率 と い っ たハ ー ド重 視 の 競 争 か らサ ー ビ スの 独 自性 や 適 時 性 と い っ た ソ フ ト重 視 の 競 争 へ と,企 業 の 競 争 軸 を 変 化 させ た 。 そ の 結 果,企 業 は 熾 烈 な 国 内外 の 競 争 に さ らされ る こ と とな り,そ の な か で 持 続 的 な 競 争 優 位 を 確 保 す るた め に,イ ノ ベ ー シ ョ ンを連 続 的 に創 出す る た め の知 的活 動 に焦 点 を あ て,知 的 資産(intellectualassets)な. い し無 形 資 産(intangibles)を. 重 視 した企 業 モ デ ル に変 化 しな けれ ば. な らな くな っ た(1)。 この よ う に企 業 活 動 に お いて 知 的 資 産 が 台 頭 す るな か,現 在 の 企 業 情 報 開 示 の 枠 組 み で は,企 業 の 重 要 な 価 値 ドラ イバ ーで あ る知 的 資 産 に関 す る情 報 が 十 分 に開 示 され て い る と は言 い難 い。 実 際 に,と. くに米 国 を 中心 と した資 本 市 場 に お け る情 報 開 示 に関 す る実 証 研. 究 で は,研 究 開 発 等 を 重 視 した企 業 の 知 的 経 営 活 動 は企 業 価 値 の 効 率 的 な 創 出 に大 き く貢 献 して お り,ま た,資 本 市 場 参 加 者 らも その よ うな 経 営 活 動 が 企 業 価 値 の 増 加 を もた らす こ と を了 解 して い るが,財 務 報 告 を 中心 と した企 業 情 報 開 示 で はそ の 情 報 の 開 示 は不 十 分 で あ る と い う結 果 が 得 られ て い た(2)。 ま た,制 度 会 計 の 基 準 に 目を 向 けて み て も,無 形 資 産 は 「物 的 実 態 の な い識 別 可 能 な 非 貨 幣 性 資 産 」と狭 義 に定 義 さ れ(3),企業 の 知 的 活 動 か ら生 じる無 形 の 価 値 源 泉 た る広 義 の 無 形 資 産(知 的 資 産)は,現. 在 の と こ ろ その ご く一一 部 しか 会 計 的 認 識 の 対 象 にな らな い こ と. とな って い る。 す な わ ち,貸 借 対 照 表 にオ ンバ ラ ン ス され 開 示 され る無 形 資 産 と は,外 部 か ら取 得 した無 形 資 産 の う ち資 産 の 認 識 要 件 を満 たす もの(購 入 した 特 許 権 や ソ フ トウ ェ ア な ど),企 業 結 合 時 に発 生 す る の れ ん,企 業 結 合 時 に発 生 す るの れ ん か ら分 離 可 能 な 無 形. (1)本. 稿 で は,「 知 的 資 産(IntellectualAssets)」. 次 節 で 説 明 す る と お り,互 (2)Lev(2001):広. と 「無 形 資 産(lntangibles)」. と い う 用 語 は,. 換 的 に 使 用 して い る 。. 瀬 ・櫻 井 監 訳(2002)13頁. お よ び63-67頁. (3)国 際 会 計 基 準(lnternationalAccountingStandards:以 ろ で,米 国 財 務 会 計 基 準(StatementofFinancialAccountingStandard:以. を参照。 下,IASと. 略 す)38,par.8.と 下,「FAS」. こ と. 略 す)142号 で は,無 形 資 産 は 「物 的 実 体 を 持 た な い(金 融 資 産 を 含 ま な い)資 産 」 と 定 義 さ れ て い る(FASB(2001c)AppendixF,F1)。 内 容 的 に はIASの 定 義 と大 き く変 わ る もの で はな い 。 な お,米 GAAP)の. 国 財 務 会 計 審 議 会 は2009年7月. に,政. 府 機 関 以 外 に 適 用 さ れ る 米 国 会 計 原 則(US. TM:以. 唯 一 の 権 威 原 典 と し て 米 国 会 計 基 準 編 纂 書(AccountingStandardsCodification 下,「ASC」. と 略 す)を. 公 表 し た 。 そ の た め,現. て い る。 -156(452)一. 在 で はFAS142はASC350に. 置 き換 わ っ.

(3) 知 的 資 産 情 報 開 示 の 現 状 と課 題(戸 田). 資 産(の れ ん か ら分 離 して識 別 可 能 な ブ ラ ン ドな ど),お よ び 自己創 設 無 形 資 産 の一 部(あ る種 の宣 伝 費,ソ. フ トウ ェ ア制 作 関 連 コス ト,研 究 開 発 費 の一 部 な ど)で あ る(4)。これ ら. は いず れ も取 得 価 額 な い し投 資 に要 した コ ス トに基 づ いて 当初 認 識 され,当 初 認 識 後 は原 則 と して 規 則 的 償 却 も し くは減 損 処 理 され る。 したが って,無 形 資 産 はそ れ が オ ンバ ラ ン ス され て いて も取 得 原 価 を基 礎 と して 評 価 され る にす ぎず,無 形 資 産 が 企 業 の 価 値 創 出 に 大 き く貢 献 して い る実 態 は開 示 され て いな い。 この よ う に,現 行 の 制 度 会 計 に お いて は知 的 資 産(無 形 資 産)に 関 す る情 報 開 示 は非 常 に限 定 的 で あ り,企 業 の 知 的 資 産 重 視 の 経 営 実 態 を 適 切 に開 示 す るた め に は,新 た な 情 報 開 示 の 方 向 を模 索 しな けれ ばな らな い。 こ こで,知 的 資 産 情 報 開 示 の 方 向 と して, ①. オ ンバ ラ ン ス ・ア プ ロ ー チ. ②. レポ ー テ ィ ング ・ア プ ロ ー チ. の2つ の ア プ ロー チが 考 え られ る。 ① は,伝 統 的 財 務 諸 表 の 認 識 規 準 の 枠 内で,ま た はそ の 一 部 を拡 張 す る こ と に よ り,企 業 が 保 有 す る知 的 資 産 の オ ンバ ラ ン ス化(資 産 認 識)を 模 索 す る ア プ ロー チで あ り,② は,企 業 が 知 的 資 産 を創 出 ・蓄 積 ・活 用 して 企 業 価 値 を 生 み 出す 態 様 を,財 務 諸 表 と は別 の 報 告 書 の な か で レポ ー テ ィ ング し,オ ンバ ラ ン ス化 の 限 界 に対 処 しよ う とす る ア プ ロー チで あ る。 そ こで,本 稿 は,オ ンバ ラ ン ス ・ア プ ロ ー チの も とで,知 的 資 産 の 会 計 的 認 識 の 現 状 を 確 認 し,そ の 可 能 性 と課 題 を 明 らか にす る こ とを 目的 と して い る。 まず 第2節 で 知 的 資 産 を分 類 す る こ と に よ って その 特 徴 を 整 理 し,次 に第3節 で 現 在 の 概 念 フ レー ム ワー ク に照 ら して,第4節. で 現 行 の 会 計 基 準 に照 ら して,知 的 資 産 の オ ンバ ラ ン ス化(資 産 認 識)の. 可 能 性 と限 界 を検 討 して い く。 な お,レ ポ ー テ ィ ン グ ・ア プ ロー チ につ いて は別 稿 で 論 じ る こ と に した い。. 2.知. 的 資 産 の 定 義 ・分 類 ・特 徴. (1)知 的 資 産 の 定 義 も っ と も広 く定 義 づ け るな ら,知 的 資 産 と は,知 識 経 済 下 に お いて,企 業 の 超 過 収 益 力 あ る い は企 業 価 値 を 生 み 出 す 源 泉 で あ り有 形 財 で な い もの の総 称 で あ る(5)。そ して そ れ ら. (4)詳. 細 は,古. 賀(2005)56-59頁,岡. (FASB(2001c)),お. 田(2002)87-97頁,FAS141(FASB(2001b)),FAS142. よ びIAS38(IAS(2008c))を. (5)FASB(2001a)p.10. -157(453)一. 参照。.

(4) 第57巻 は,過. 去 の 事 象 や 取 引(自. 第2号. 己 創 設 や 購 入 や そ の 他 あ ら ゆ る 形 式 の 取 得)に. よ って 企 業 の 支. 配 下 も し くは少 な くと も影 響 下 に あ るが 物 的 実 体 を 持 たな い将 来 の 経 済 的 利 益 の 非 貨 幣 的 な 源 泉 で あ り,そ. れ が 他 の 企 業 資 産 か ら分 離 して 売 却 で き る か 否 か を 問 わ な い,幅. 念 で あ る 。 具 体 的 に は,知 け で な く,ブ. 的 資 産 に は,知. ラ ン ド,ノ ウ ハ ウ,人. 広 い概. 的 財 産 権 や 商 標 な ど の 法 的 権 利 に 基 づ く資 産 だ. 的 資 産 や 顧 客 関 係 な ど,企 業 の 知 的 活 動 に 関 し て 取 得 ・. 創 出 され た あ らゆ る企 業 価 値 源 泉 が 含 まれ る。 と こ ろ で,知 capital)お. 的 資 産(intellectualassets)と. 類 似 し た 用 語 に 知 的 資 本(intellectual. よ び 無 形 資 産(intangibles/intangibleassets)と. い う用 語 が あ る が,現. の と こ ろ こ れ ら は コ ン セ ン サ ス の 得 られ た 明 確 な 定 義 を 持 っ て お らず,同 互 換 的 に 用 い ら れ て い る こ と が 多 い(6)。強 い て 言 う な ら ば,欧 が 用 い られ る こ と が 多 く,米. 在. 義 の 言 葉 と して. 州 で は知 的資 本 とい う用 語. 国 で は 無 形 資 産 と い う 用 語 が 用 い られ る こ と が 多 い 。 こ の よ. う な 考 え 方 を 踏 ま え た う え で,本 と い う 用 語 を 主 に 用 い る が,文. 稿 に お い て は,経. 済 産 業 省 の 用 例 に した が っ て 知 的 資 産. 脈 に よ って は知 的 資 本 お よ び無 形 資 産 と い う用 語 も知 的 資. 産 と互 換 的 に用 い る こ と にす る。. (2)知 的 資 産 の 分 類 この よ う に,企 業 価 値 の 創 出 に重 要 な 役 割 を 果 たす 無 形 の 価 値 源 泉 は,知 的 資 産,知 的 資 本 ま た は無 形 資 産 と それ ぞ れ 相 互 換 的 に呼 称 され て い るが,本 質 的 に は 同 じもの を 指 し て いて い る。 しか しな が ら,同 じ 「資 産 」 と い う言 葉 を 使 用 して い る無 形 資 産 と知 的 資 産 と い う用 語 の 起 源 を 考 え た場 合,無 形 資 産 と い う用 語 は,そ の 資 産 が 有 形 か 否 か と い う資 産 の 形 態 的 側 面 に着 目 した用 語 で あ るの に対 して,知 的 資 産 と い う用 語 は,そ の 資 産 の 企 業 知 識(ナ. レ ッジ)と. して の 性 質 な い し属 性 に注 目 した用 語 で あ る と捉 え る こ とが で き,. それ ぞ れ異 な るデ ィ メ ンジ ョ ン(次 元)に 立 つ もの で あ る と い え る(7)。 す な わ ち,無 形 資 産 と は有 形 資 産 との 対 比 に よ って 生 じた言 葉 で あ るか ら,形 を 持 た な い こ と(無 形 で あ る こ と)に 起 因 す る 「資 産 性 の 曖 昧 さ」 に無 形 資 産 の 特 性 を見 出す こ とが で き,一 方 で,知 的 資 産 と は企 業 に お け る ナ レ ッジの 性 質 な い し位 置 づ けを 意 識 した 言 葉 で あ る とす れ ば, その 特 性 は個 々の 企 業 の 「知 的 資 産 経 営 の 文 脈 」 の な か で 独 自 に把 握 され る もの で あ る と いえ る。 以 上 の よ う に,無 形 資 産 と い う言 葉 と知 的 資 産 と い う言 葉 の 違 い は,無 形 の 企 業 価 値 源. (6)例. え ば,MERITUM(2001)p78お. (7)古. 賀(2005)7頁. よ びFASB(2001a)P.5を. を参 照 。 -158(454)一. 参照。.

(5) 知的資産情報開示の現状 と課題(戸 田) 泉 の 特 性 な い し属 性 の 捉 え 方 に よ る もの で あ る。 こ こで,無 形 資 産 と い う用 語 が 象 徴 す る 特 性 を無 形 特 性,知 的 資 産 と しい う用 語 が 象 徴 す る特 性 を ナ レ ッジ属 性 と名 付 け るな ら, 知 的 資 産 の 分 類 に は,無 形 特 性 に基 づ く分 類 と ナ レ ッジ属 性 に基 づ く分 類 の2と お りの 分 類 が 考 え られ る。 例 え ば,特 許 権 と顧 客 満 足(顧 客 との 良 好 な 関 係)は,両. 者 と も企 業 に. 競 争 優 位 性 を も た らす 無 形 の 価 値 源 泉 で あ るが,そ の 無 形 特 性 に着 目 して 比 較 した 場 合, 特 許 権 は法 律 で 守 られ た権 利 で あ り有 形 資 産 と 同 じよ う に企 業 か ら分 離 して 認 識 した り外 部 と取 引 した りす る こ と もで き るが,顧 客 満 足 は,法 的 に守 られ た 権 利 で はな い し通 常 企 業 か ら分 離 して 認 識 や 取 引 す る こ とが で きず,こ の 点 に お いて 有 形 資 産 と決 定 的 に性 質 を 異 に す る。 つ ま り,特 許 権 よ り も顧 客 満 足 の ほ うが 無 形 特 性 が 強 い と い え る。 こ れ に 対 し,両 者 を ナ レ ッジ属 性 に着 目 して 比 較 した場 合,特 許 権 は製 品 の 排 他 的 製 造 に よ り企 業 に競 争 優 位 性 を も た らす もの で あ り,研 究 開 発 活 動 と い う組 織 的 な ナ レ ッジ活 動 に よ って も た らされ る知 的 資 産(構 造 資 産)で. あ るが,顧 客 満 足 は リピー ター の 獲 得 な どの 競 争 優. 位 性 を も た ら し,そ れ は企 業 外 部 との 関 係 の 改 善 と維 持 な どの 活 動 に よ って もた ら され る 知 的 資 産(関 係 資 産)で. あ る。. 無 形 特 性 に基 づ く分 類 と ナ レ ッジ属 性 に基 づ く分 類 に お け る規 準 は,そ れ ぞ れ 次 の よ う に説 明 で き る。 前 述 の よ う に,無 形 特 性 に基 づ く分 類 で は,無 形 資 産 と有 形 資 産 との 対 比 お よ び相 違 点 に着 目 した もの で あ るか ら,物 的 実 体 を 持 たな い こ とを 原 因 とす る識 別 の 困 難 性,企 業 や 他 の 資 産 か らの 分 離 の 困 難 性,取 引 の 困 難 性 等 が 分 類 規 準 とな る。 また,ナ レ ッジ属 性 に基 づ く分 類 で は,企 業 の 様 々な 知 識 活 動 の な か で 特 定 の 知 的 資 産 が どの よ う な 意 味 を持 ち,ど の よ うな位 置 づ け(文 脈)に あ るの か が 分 類 規 準 とな る と考 え られ る。 そ れ らを具 体 化 し図 化 した もの が 図 表1で. あ る。 以 下 で は,無 形 特 性 に基 づ く分 類 と ナ レ ッ. 図 表1知. 的資産の分類. 一. L△堕 崖」L竺 竺聾 」L墜 墜 」 〈ナ レ ッ ジ属 性 に基 づ く分 類 〉. 一159(455)一.

(6) 第57巻. 第2号. ジ属 性 に基 づ く分 類 の それ ぞ れ につ いて 具 体 的 に検 討 す る こ と に よ り,知 的 資 産 の 特 徴 を 浮 き彫 りにす る。. (3)知的 資 産 の 特 徴 国 際 会 計 基 準 審 議 会(lnternationalAccountingStandardsBoard:以 と略 す)お 下,「FASB」. 下,「IASB」. よ び米 国 財 務 会 計 基 準 審 議 会(FinancialAccountingStandardsBoard:以 と 略 す)の 考 え 方 に も とつ く と,無 形 特 性 に よ る知 的 資 産 の 分 類 規 準 と し. て,分 離 可 能 性 と法 的 確 定 性,す な わ ち識 別 可 能 性(identifiability)に. 基 づいた規準が. 挙 げ られ る(8)。これ は,知 的 資 産 が 企 業 や他 の 資産 か ら分 離 可 能 で あ る か ど うか,分 離 可 能 で あ るな らそれ が 契 約 や 法 律 上 の 権 利 に基 づ い た もの で あ るか ど うか と い う規 準 に基 づ く分 類 で あ る。 す な わ ち,知 的 資 産 は, ①. 契 約 や 法 律 上 の 権 利 に基 づ くもの. ②. 契 約 や 法 的 権 利 に基 づ くもの で はな いが 企 業 や 他 の 資 産 か ら分 離 可 能 で あ る もの. ③. 企 業 や 他 の 資 産 か ら分 離 で きな い もの. の3つ. に 分 類 で き る。 分 離 可 能 性 と法 的 確 定 性 は 完 全 に は 相 関 的 で は な い か も しれ な い. が,一 般 に① か ら③ に移 行 す る ほ ど有 形 資 産 と は反 対 の 性 質 を 強 めて い る と考 え られ る。 例 え ば,① に は特 許 権,著 作 権,未 履 行 契 約,放 送 権 な どが含 ま れ,② に は デ ー タ ベ ー ス, 顧 客 リス ト,マ ニ ュ アル,研 究 開発 が含 ま れ,③ に は組 織 文 化 や企 業 風 土,顧 客 満足,コ ー ポ レー ト ・ブ ラ ン ドな どが 含 まれ る(9)。 こ こで,知 的 資 産 は企 業 や 他 の 資 産 か らの 分 離 に制 約 が あ る場 合 が 多 く,法 的 に も不 安 定 な もの で あ る場 合 が 多 い と い う こ と は(す な わ ち識 別 可能 性 が低 い とい う こ とは),次 の よ う こ と を意 味 す る。 知 的 資 産 は識 別 可 能 性 が 低 い た め,そ れ が もた らす 経 済 的 便 益 の 測 定 が 困 難 で あ り,ま た知 的 資 産 と経 済 的 便 益 との 因 果 関 係 の 判 別 が 容 易 で はな く,資 産 価 値 の 評 価 ・測 定 が 困 難 で あ り,さ らに有 形 資 産 と異 な り取 引 や 移 転 に も制 約 を 有 す る。 つ ま り,無 形 特 性 に基 づ く分 類 規 準 か ら,知 的 資 産 の 特 徴 と して,効 果 の 測 定 困 難 性,価 値. (8)IASB(2004a)p.1667,FASB(2001a)pp.68-70.な 性 の 有 無 は,法. お,岡. 的 権 利 が 付 随 す る か 否 か,他. 説 明 さ れ て い る(岡. 田(2002)に. の 資 産 か ら 分 離 可 能 か,等. 田(2002)64頁)。. (9)FASB(2001a)p.69. -160(456)一. お い て も,識. 別可能. に よ っ て 判 断 さ れ る,と.

(7) 知 的 資 産 情 報 開 示 の 現 状 と課 題(戸 田) の 測 定 ・評 価 困 難 性,取 特 徴 は,現. 引 ・移 転 困 難 性,が. 指 摘 で き る⑩。 そ して,こ. 在 の 財 務 報 告 に お け る 知 的 資 産 の 資 産 性 に 影 響 し,知. れ らの知 的 資 産 の. 的 資 産 の オ ンバ ラ ン ス化. を 困 難 な も の に して い る と い え る 。 こ れ に 対 し,ナ ①. レ ッ ジ属 性 に 基 づ く分 類 に よ る と,知. 人 的 資 産(humancapital):従. 的 資 産 は 以 下 の3つ. 業 員 の 知 識,技. 術,経. 験,能. 力 な ど の,従. 社 す る と き に 自 分 と 一緒 に 持 ち 出 す ナ レ ッ ジ で あ る 。 そ れ は,個 場 合 も あ る し,一 ②. に 区 分 で き る(ll)。 業員が退. 人 特 有 の もの で あ る. 般 的 な もの で あ る場 合 も あ る。. 構 造 資 産(structuralcapital):企. 業 文 化,組. 織 ル ー チ ン,デ. ー タ ベ ー ス な ど の,. 従 業 員 の 退 職 後 も企 業 に残 留 す る ナ レ ッジで あ る。 ③. 関 係 資 産(relationalcapital):顧 の,企. 客,サ. プ ラ イ ヤ ー,研. 究 開 発 パ ー トナ ー な ど. 業 の 対 外 的 関 係 に関 係 したす べ て の 資 源 を い う。. こ の 分 類 は,理. 論 的 合 理 性 か ら演 繹 的 に 追 究 し た 分 類 で は な く,知. 的資産経営の実践の. な か で 経 験 的 に こ の よ う な 区 分 に 収 敏 し た も の で あ る⑫。 こ れ ま で の 世 界 中 の 実 務 実 践 の な か で 基 本 的 属 性(ナ な か で,こ. の3つ. レ ッ ジ 属 性)に. 即 し た 多 種 多 様 な 区 分 法 が 提 唱 さ れ て き た が,そ. に 区 分 す る 方 法 が 欧 州 の 知 的 資 本 マ ネ ジ メ ン トと レ ポ ー テ ィ ン グ に お い. て 広 く採 用 さ れ,定. 着 して い る 。. こ れ ら知 的 資 産 の ナ レ ッ ジ 属 性 に 基 づ く分 類 は,企. 業 知 識 が 企 業 に ど の よ う に 作 用 して. 価 値 創 造 さ せ る の か と い う 視 点 か らの 分 類 で あ り,企. 業 の 価 値 創 造 は,適. 動 を 通 じて こ れ ら の 資 産 の 正 し い 結 合 力(connectivity)を る 。 そ して,知. 的 資 産 は 企 業 の 人 的 資 産,構. 造 資 産,関. 切な知的資産活. 形 成 す る こ と に よ り達 成 さ れ 係 資 産 の 単 純 な 合 計 で は な く,そ. の よ う な 正 し い 結 合 力 に よ っ て 相 乗 的 に 効 果 を 発 す る も の で あ る ⑱。 例 え ば,企 開 発 組 織(構. 造 資 産)が. 万 全 で あ っ て も,優. 十 分 に 整 備 さ れ て お り,他. 秀 な 研 究 員(人. 果 を 上 げ な い で あ ろ う 。 ま た,こ て い け ば,相. の. 的 資 産)が. 企 業 と の 共 同 研 究 体 制(関. 業の研究 係 資 産)が. 存 在 で きな けれ ば企 業 の 研 究 開 発 活 動 は効. れ らを 高 い レベ ル で 保 有 し,正. しい連 携 の も とで 活 用 し. 乗 的 に 効 果 を 発 す る こ と が 考 え られ る 。. ⑩Lev(2001)で. は,無. 形 資 産(知. 的 資 産)の. 特 徴 と し て,①. 売 買 不 可 能 性 が 挙 げ ら て い る(Lev(2001):広 財 産 権 の 不 明 確 さ か ら,所. 高 い 不 確 実 性,②. 瀬 ・櫻 井 訳(2002)98頁)。. 部 分 的 排 除,③. ② 部 分 的 排 除 と は,. 有 者 以 外 の 者 が そ の 投 資 の ベ ネ フ ィ ッ トの 一 部 を 享 受 す る の を 容 易 に. 排 除 で き な い こ と で あ る 。 例 え ば,従 業 員 教 育 に 対 す る 投 資 は,従 の 会 社 が そ の よ う な 投 資 の ベ ネ フ ィ ッ トを 享 受 す る こ と に な る(前. 業 員 が 転 職 し て し ま う と,他 掲 書40-41頁)。. ⑪MERITUM(2001)pp.20-21. ⑫. 知 的 資 産 の ナ レ ッ ジ 属 性 に 基 づ く分 類 に 関 し て,こ ア プ ロ ー チ の 研 究 にGr6jer(2000)が あ る。. ⑬MERITU(2001)p.79を. 参 照。 一161(457)一. の よ う な 経 験 的 ア プ ロ ー チ に 対 し,理. 論的.

(8) 第57巻 こ の よ う に 知 的 資 産 は,人 で き る が,そ activities)に. れ ら は さ ら に,無. 的 資 産,構. 第2号. 造 的 資 産,関. 係 的 資 産 の3つ. 形 資 源(intangibleresources)と. 分 類 す る こ と が で き る ω。 例 え ば,知. ク お よ び 従 業 員 の ス キ ル 等 は 無 形 資 源 で あ る が,従. 得 し た り,そ. の 価 値 を 高 め た り,そ. 無 形 財 活 動(intangible. 的 財 産 権,デ. 究 開 発 お よ び顧 客 満. 形 資 源 を 新 し く内部 創 設 ま た は取. 形 資 源 を 配 置(allocation)す. る ㈹。 無 形 資 源 と無 形 財 活 動 は 相 互 に フ ィ ー ドバ ッ ク し,そ 報 と い っ た 知 的 資 産 が さ ら に 蓄 積 さ れ て い き,知. の で あ る(1の 。 一 般 に,有. ッ トワ ー. う い っ た 内 部 創 設 ・取 得 や 価 値 向 上 の 結 果 を 評 価 ・モ. ニ タ リ ン グ し た り す る こ と を 企 図 して,無. 識,情. ー タ ベ ー ス,ネ. 業 員 訓 練 活 動,研. 足 度 調 査 等 は 無 形 財 活 動 で あ る ⑮。 無 形 財 活 動 と は,無. の カ テ ゴ リー に 分 類. る こ とを意 味 す. のなかで新 たなアイデアや知. 的 資 産 の 価 値 を 逓 増 させ て い くも. 形 資 産 は 使 用 な い し利 用 に よ っ て そ の 価 値 を 減 少 さ せ る が,知. 資 産 は こ の よ う な フ ィ ー ドバ ッ ク の な か で,そ. 的. の 使 用 な い し利 用 に よ っ て 価 値 を 減 ず る こ. と な く逓 増 さ せ て い く。 こ の よ う な 知 的 資 産 の ナ レ ッ ジ 属 性 か らの 分 類 に よ り,知 らか に な る 。 知 的 資 産 は,あ. る企 業 に と って は価 値 の あ る もの で あ って も他 の 企 業 にお い. て は 無 価 値 で あ る 場 合 が 多 く,そ で あ る 。 ま た,知. 的 資 産 の 次 の よ うな 特 性 が 明. の 意 味 で 企 業 経 営 の 特 定 の コ ン テ ク ス トに 依 存 す る も の. 的 資 産 は正 しい配 置 と結 合 に よ って 一 体 とな って 価 値 創 出す る もの で あ. る た め 相 互 関 連 性 が 高 く,効. 果 の 相 乗 性 が 強 い 。 ま た,知. 動 が 動 的 に 相 互 関 連 して お り,使. 的 資 産 は,無. 形 資 源 と無 形 財 活. 用 と と も に価 値 を 逓 増 させ る もの で あ る。. 以 上 で 知 的 資 産 の 分 類 と 特 徴 を 検 討 し た が,そ. 図表2知. の 内 容 を 要 約 した も の が 図 表2で. あ る。. 的資産 の分類 と特徴. デ ィメ ン ジ ョ ン. 無形特性 一 形 態的側面. ナ レ ッジ属 性 一 企 業 知 識 の性 質. 分類規準. 分 離 可 能 性 ・法 的確 定 性. 人 的資 産 ・構 造 資 産 ・関 係 資 産. 主 な特徴. 効 果 の測 定 が 困難 価 値 の測 定 ・評 価 が 困難 取 引 ・移 転 に制 約. 企 業 活 動 の特 定 の文 脈 に依 存 相 互 関連 に よ って効 果 を発 現 使 用 に伴 って価 値 が逓 増. ωMERITUM(2001)に は,静 的(static)な activity)に. よ る と,人 的 ・構 造 ・関 係 資 産 と い う 分 類 の 以 外 に,無 形 財(intangibles) 無 形 資 源(intangibleresource)と 動 的(dynamic)な 無 形 財 活 動(intangible. 分 類 で き る(MERITUM(2001)pp.79-80)。. 本 文 の 記 述 は,こ. の 指摘 を 参 考 に し. た もの で あ る。 ⑮Ibid.,pp.79-80を ㈹Ibid。,p.80を ⑰Lev(2001)で. 参照。 参照。 は,類. 似 の 内 容 が 利 益 逓 増 効 果 と し て 説 明 さ れ て い る(Lev(2001):広. 井 訳(2002)32頁)。 -162(458)一. 瀬 ・櫻.

(9) 知 的 資 産 情 報 開 示 の 現 状 と課 題(戸 田). 3.概. 念 フ レ ー ム ワ ー ク と知 的 資 産 オ ンバ ラ ン ス 化. (1)資. 産 定 義 と 知 的(無. FASBお. よ びIASBに. 形)資. 産. よ る と,資 産 が オ ンバ ラ ン ス さ れ る に は,ま ず 当 該 資 産 が 資 産 定. 義 を 満 足 し,そ の う え で い くつ か の 認 識 規 準(recognitioncriteria)を け な い 。 す な わ ち,知. 的 資 産 が 資 産 と して 貸 借 対 照 表 上 で 開 示 さ れ る に は,知. 度 会 計 上 の 資 産 性 を 有 す る(資 識 規 準)を. 産 定 義 を 満 足 す る)こ. 満 た す 必 要 が あ る 。 そ こ で,知. 資 産 定 義 の 諸 要 素 を 満 足 す る の か 否 か,資 か,資. 満 た さな けれ ば い. と と,所. 的資産が制. 定 の オ ン バ ラ ン ス 要 件(認. 的 資 産 の 有 す る 諸 特 性 に 照 ら して,知. 的資産 は. 産 性 を 有 しな い と す れ ば ど の 要 件 に 欠 格 す る の. 産 性 を 有 す る の で あ れ ば 認 識 規 準 を 満 た す も の で あ る の か に つ い て 順 に 点 検 して い. く。 FASBとIASBの FASB:資. 資 産 定 義 と は,そ 産 と は,過. 去 の 取 引 ま た は 事 象 の 結 果 と し て,あ. た は 支 配 さ れ て い る,発 IASB:資. れ ぞ れ 以 下 の と お りで あ る 。. 産 と は,過. る特 定 の 実 体 に よ り取 得 ま. 生 の 可 能 性 の 高 い 将 来 の 経 済 的 便 益 で あ るq8)。. 去 の 事 象 の 結 果 と し て 当 該 企 業 が 支 配 し,か. つ,将. 来の経済的便. 益 が 当 該 企 業 に 流 入 す る こ と が 期 待 さ れ る 資 源 を い う⑲。 こ れ ら は,表. 現 の 違 い は あ る も の の,本. 質 的 に 共 通 し た 要 件 を 表 して い る 。 す な わ ち,あ. る 項 目 が 資 産 と して 識 別 さ れ る た め の 要 件 と して, ①. 将 来 の 経 済 的 便 益 の 要 件(futureeconomicbenefit). ②. 支 配 の 要 件(controlled). ③. 過 去 の 取 引 ・事 象 の 要 件(pasttransactionorevent). を 要 求 して い る ⑳。 ① 将 来 の 経 済 的 便 益 の 要 件 と は,営. 利 企 業 に お い て は,あ. る 項 目(知. 的 資 産)が. 結果的. に 企 業 に 正 味 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー を も た ら す か 否 か と い う こ と で あ る⑫1)⑳ 。 この よ うな 経 済 的 便 益 の 要 件 に 照 ら して,知. 的 資 産 と は,知. 識 経 済 下 に お いて 企 業 の 超 過 収 益 力 あ る い は. ㈱FASB(1985a),par.25. ⑲IASB(1984):日. 本 公 認 会 計 士 協 会 訳(2001)32頁,パ. ラ49(a)。. ⑳FASB(2001a)p.62,p.71. (21)FASB(1985a),par.28. ⑳. こ れ に 対 し,非. 営 利 企 業 に お け る 経 済 的 便 益 と は,希. 望 ま た は 要 求 され た 財 や サ ー ビス を 受 益. 者 や 参 加 者 に 提 供 す る こ と で あ り,当 該 企 業 に 直 接 的 に 正 味 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー を も た ら す 結 果 と な る 場 合 と な ら な い 場 合 が あ る(FASB(1985)p.16,par.28)。 -163(459)一.

(10) 第57巻. 第2号. 企 業 価 値 を生 み 出す 源 泉 で あ り,ま た,企 業 の 超 過 収 益 力 や 営 利 企 業 の 企 業 価 値 は最 終 的 に は正 味 キ ャ ッ シ ュ フ ロー に帰 結 す る か ら㈱,知 的 資 産 は 将 来 の 経 済 的便 益 の要 件 を 満 た す と いえ る。 端 的 に いえ ば,知 的 資 産 は,そ の 利 用 や 譲 渡 に よ って 企 業 に将 来 キ ャ ッシ ュ フ ロ ー を も た らす と考 え られ るか ら,将 来 の 経 済 的 便 益 で あ る と考 え られ る。 ② 支 配 の 要 件 と は,将 来 の 経 済 的 便 益 に対 す る支 配 の 有 無 で あ り,企 業 が あ る項 目(知 的 資 産)か. ら将 来 の 利 益 を 引 き 出す こ とが で き,他 者 に は それ が で きな い と い う こ とを 意. 味 す る。 つ ま り,企 業 が あ る資 源 か ら生 じる将 来 の 経 済 的 利 益 を 獲 得 す る こ とが で き,他 者 が そ の利 益 に接 近(access)す. る こ とを コ ン トロー ル で き る場 合 に,当 該 企 業 はそ の 資. 源 を支 配 して い る とい え る⑳。 こ こ で,支 配 の要 件 は一 般 的 に は法 的 権 利 の基 礎 に 依 存 す るが,も. しその 実 体 が 他 の 方 法 で 便 益 を 獲 得 ・支 配 す る能 力 を 有 して い るの で あれ ば,権. 利 の 法 的 強 制 力 は,あ FASB(2001a)に. る実 体 が 資 産 を 所 有 す る た め の 不 可 欠 な 必 要 条 件 で は な い ㈱。. よ る と,「 分 離 可 能 性(separability)と. tractual/legalrights)は(そ. 契 約 ・法 律 上 の 権 利(con-. れ 自体 が)資 産 の本 質 的 な性 質 で は な い が,支 配 と い う一. つ の 本 質 的 な 性 質 の 証 拠 で あ る⑳。」 つ ま り,知 的資 産 の資 産 性 の有 無 は,法 的 確 定 性 と分 離 可 能 性 に左 右 され る こ と にな る⑳。 この よ うな 支 配 可 能 性 の 要 件 の 下 で は,例 え ば,顧 客 リス トは,企 業 や 他 の 資 産 か ら分 離 可 能 で あ り法 的 所 有 権 を 有 す る た め支 配 の 要 件 を 満 たす,も. し くは満 た す 可 能 性 が あ る. が,顧 客 満 足 は法 的権 利 とは 無 関 係 か つ 分 離 困難 で あ るた め支 配 の要 件 を 満 た さな い ㈱。 さ らに,レ ヴ(BaruchLev)の. 指 摘 す る よ うに,知 的 資 産 は一一 般 に,部 分 的 排 除 とい う. 特 性 ⑳ を有 す る た め支 配 の 要 件 を 満 た さ な い こ とが 多 い㊤ ①。 例 え ば,特 許 権 の よ う に法 的 所 有 権 を有 す る もの で あ って も,特 許 期 間 の 満 了 後 は,所 有 者 以 外 の 者 が そ の 特 許 の 内容 を 自 由 に使 用 し,研 究 開 発 投 資 な しに経 済 的 利 益 を 得 る こ とが で き るGl)。 ③ 過 去 の 取 引 ・事 象 の 要 件 は,企 業 の 将 来 利 益 に対 す る支 配 を 生 じさせ る もの で あ り, 典 型 的 に は,交 換 取 引 な ど外 部 との取 引 を通 じて あ る資 源 が獲 得 さ れ る こ とを意 味 す る㈱。 ⑳. 詳 細 は,FASB(1976):津. 守 訳(1997)86-92頁(と. く に88頁)を. 参照。. ⑳FASB(1985a),par。26. (2∂Ibid. (2③FASB(2001a)p.71。 ⑳. 支 配 の 要 件 と 分 離 可 能 性 ・法 的 確 定 性 の 関 係,お よ び 支 配 の 要 件 の 必 要 性 に つ い て の 詳 細 は, FASB(1976):津 守 訳(1997)92-111頁(と く に92頁)を 参 照。. ㈱FASB(2001a)p.71. ⑳. 部 分 的 排 除 と は,財. 産 権 の 不 明 確 さ か ら,所. 有 者 以 外 の 者 が そ の 投 資 の ベ ネ フ ィ ッ トの 一 部 を. 享 受 す る の を 容 易 に 排 除 で き な い こ と で あ る 。(Lev(2001):広 ⑳ el)前. 前 掲 書98頁 掲 書41頁. 。 。。. ⑳FASB(2001a)p.71,p.78. -164(460)一. 瀬 ・櫻 井 訳(2002)40-41頁).

(11) 知 的 資 産 情 報 開 示 の 現 状 と課 題(戸 田). これ は,あ る資 源 に対 す る支 配 性 を担 保 す る た め に は,過 去 に外 部 との 取 引 に よ って 法 的 財 産 権 ㈱ が 移 転 した 証 拠 が 必 要 な 場 合 が 多 い,と 考 え られ るた めで あ る。 この よ う に外 部 取 引 ・事 象 の み を要 件 と考 え た場 合,知 的 資 産 は企 業 の 知 的 活 動 に よ って 企 業 内部 か ら 自 己創 設 され る こ とが 多 く,ま た取 引 や 移 転 に制 約 を 有 す る こ とが 多 いた め,一 義 的 に は こ の 要 件 を満 た さな い こ とが 多 い。 しか し,例 え ば埋 蔵 資 源 の よ う に外 部 取 引 ・事 象 以 外 か ら発 見 ・獲 得 され た有 形 資 産 が 資 産 性を 有 す る こ とを 考 慮 す る と,外 部 取 引 以 外 の 事 象 に よ る取 得 も,代 替 的 に この 要 件 に含 ま れ る と解 釈 す る こ とが で き る麗。 つ ま り,他 の 資 産 要 件(経 済 的 便 益 の要 件 と支 配 の要 件)を 満 た した項 目が 発 見 等 に よ って 識 別(identification)で. き るの で あ れ ば,そ の識 別 を も って 過 去 の 取 引 や 事 象 が 生 じた 証 拠 とす る こ と. が で き る㈱。 この よ うに考 え る と,知 的 資 産 は一 般 に 取 引 や 移 転 に制 約 が あ る とい う特 性 を有 す るが,内 部 創 設 の 知 的 資 産 で あ って も それ が 識 別 で き る もの で あ るな ら ば,過 去 の 取 引 ・事 象 の 要 件 を満 たす 可 能 性 が あ る と いえ る。 以 上 か ら知 的 資 産 は,① 将 来 の 経 済 的 便 益 の 要 件 は満 たす もの の,② 支 配 の 要 件 を 満 た さな い もの が 多 く,③ 過 去 の 取 引 ・事 象 の 要 件 に一 義 的 に は制 約 され るが,代 替 的 解 釈 に よ って その 制 約 を 逃 れ 得 る場 合 が あ る,と 結 論 づ け る こ とが で き る。 つ ま り,知 的 資 産 に 制 度 会 計 上 の 資 産 性 を認 め る に は,② 支 配 の 要 件 を拡 張 ま た は再 検 討 す る必 要 が あ り,過 去 の 取 引 ・事 象 の 用 件 につ いて も,上 記 「識 別 」 に関 す る よ り具 体 的 な 一 定 の 基 準 が 必 要 で あ ろ う㈹。. (2)認 識 規 準 と知 的 資 産 あ る知 的 資 産 が これ らの 資 産 定 義 を 満 た した場 合 に も,そ れ が 資 産 と して オ ンバ ラ ン ス され る に は所 定 の 認 識 規 準 を ク リアー しな けれ ばな らな い。 資 産 が オ ンバ ラ ン ス され るた めの 認 識 規 準 と は,次 の よ うな もの で あ る㊨ の㈱。 (a)当 該 項 目 に関 連 す る将 来 の 経 済 的 便 益 が,企 業 に流 入 す るか 又 は企 業 か ら流 出す る. ㈱. 資 産 概 念 に 関 す る 財 産 権 ア プ ロ ー チ に つ い て は,古. 賀(2002)65-69頁. 法 律 上 の 財 産 概 念 の 関 係 に つ い て は,FASB(1976):津. を 参 照 。 ま た,資. 守 訳(1997)94-99頁. 産 と. を参照。. ⑳FASB(2001a)p.78. ㈹Ibid。 ⑳. 無 形 資 産 の 会 計 認 識 に 照 ら し た 現 在 の 資 産 定 義 の 問 題 点 な い し 変 化 の 必 要 性 に つ い て は, Tollington(2002)(古 賀 監 訳(2004))第3章 を参 照 。. ⑳IASB(1984):日. 本 公 認 会 計 士 協 会 訳(2001)37頁,パ. ⑬FASB(1984)は,資. 産 の 認 識(オ. 可 能 性(measurability),③ (1984)p。25,par.63)。 討 さ れ る こ と,お. ンバ ラ ン ス)規. 目 的 適 合 性(relevance),④. ラ83。 準 と し て,①. 知 的 資 産 の 認 識 規 準 に つ い て は,①. よ びIASBの. 測定. 挙 げ て い る(FASB. ② の 議 論 に よ って ③ ④ が あ る程 度 の 検. 認 識 規 準 と の 整 合 性 の 観 点 か ら,③ 一165(461)一. 定 義(definitions),②. 信 頼 性(reliability)を. ④ につ い て の議 論 は省 略 す る。.

(12) 第57巻. 第2号. 可 能 性 が 高 い こ と(経 済 的 便 益 の 高 い発 生 可 能 性 鋤 (b)当 該 項 目が 信 頼 性 を も って 測 定 で き る原 価 ま た は価 値 を 有 して こ と(信 頼 で あ る測 定 の 可 能 性) (a)の経 済 的 便 益 の 高 い 発 生 可 能 性 に関 して,一 般 に知 的 資 産 は,そ れ が もた らす 将 来 キ ャ ッシ ュ フ ロー の 測 定 が 困 難 で あ り,キ ャ ッシ ュ フ ロー が 獲 得 され た と して も,両 者 の 因 果 関 係 の 判 別 は容 易 で はな い こ とが 多 い。 つ ま り,知 的 資 産 が もた らす 将 来 キ ャ ッシ ュ フ ロ ーな い し経 済 的 便 益 の 発 生 可 能 性 が 高 いか ど うか 判 定 は,企 業 の 知 的 資 産 活 動 の 進 行 に依 存 す る もの で あ り,ま た,個 々の 知 的 資 産 に起 因 す る経 済 的 便 益 の 発 生 可 能 性 は,当 該 知 的 資 産 が 企 業 の 知 的 資 産 活 動 の どの 局 面 に貢 献 す るの か に大 き く影 響 され る もの で あ る。 この よ う に考 え る と,例 え ば,特 許 権 な どの 法 的 権 利 と して 確 定 され た 知 的 資 産 な ど は,こ の 認 識 規 準 に容 易 に適 合 す るが,研 究 開 発 投 資 の 初 期 段 階 で 取 得 ・蓄 積 され た 知 的 資 産 な ど は,こ の 認 識 規 準 を満 た さな い こ とが 多 い。 ま た,(b)の 信 頼 で き る測 定 の 可 能 性 に関 して,一 般 に資 産 の 測 定 ・評 価 に は,コ ス ト ・ ア プ ロ ー チ(取 得 に要 した費 用 に基 づ く評 価),マ 価 額 に基 づ く評 価),イ. ー ケ ッ ト ・ア プ ロー チ(市 場 で の 取 引. ンカ ム ・ア プ ロ ー チ(将 来 キ ャ ッシ ュ フ ロー に基 づ く評 価)が 考. え られ るω。 知 的 資 産 の 測 定 属 性 を 考 慮 す る と,知 的 資 産 は,有 形 資 産 の よ う に使 用 や 利 用 に よ って 時 の 経 過 と と もに取 得 時 の 価 値 を 減 ず る もの で はな く,む しろ使 用 や 利 用 に よ って 価 値 を 逓 増 させ る もの で あ るか ら,過 去 の 取 引 価 額 は重 要 で はな く,一 般 に コ ス ト ・ア プ ロー チ に よ る評 価 は適 当で はな い。 ま た,知 的 資 産 は,一 般 に,企 業 の 知 的 活 動 に お いて 利 用 や 使 用 す る こ と を 目的 と して 取 得 ・蓄 積 され る もの で あ り,売 却 目的 の ソ フ トウ ェ アや 特 許 権 な どの 一 部 の もの を 除 いて,そ れ 自体 を 売 却 して 利 益 を 獲 得 す る こ とを 意 図 した もの で はな いか ら,マ ー ケ ッ ト ・ア プ ロー チが 適 応 す る ケー ス も ご く限 定 され る。 つ ま り,知 的 資 産 の 本 源 的 な価 値 は,そ の 利 用 や 使 用 に よ って 生 み 出 され る イ ノベ ー シ ョン と,そ の イ ノベ ー シ ョ ンが 生 み 出す 将 来 キ ャ ッシ ュ フ ロー に帰 属 す る もの で あ るか ら,イ ン カ ム ・ア プ ロ ー チ に よ る評 価 が 適 して い る と いえ る。 しか しな が ら,上 記 の よ うな 測 定 属 性 を考 慮 しな くと も,知 的 資 産 の 測 定 ・評 価 は,こ. ㈱. 厳 密 に い え ば,FASBは 資 産 認 識 規 準 に(a)経 済 的 便 益 の 発 生 可 能 性 を 含 め て い な い 。 し か し, FASBの 資 産 定 義 に は 「発 生 の 可 能 性 の 高 い(probable)将 来 の 経 済 的 便益 で あ る」 こ とが 要 求 さ れ て い る こ と か ら,(a)経. 済 的 便 益 の 発 生 可 能 性 も 資 産 認 識 規 準 で あ る と して,こ. れ以降の議論. を 進 め る こ と にす る。 ω. 知 的 資 産 に 関 す る コ ス ト ・ ア プ ロ ー チ,マ し て は,古 賀(2005)65-67頁,93-113頁,126-129頁. ー ケ ッ ト ・ ア プ ロ ー チ,イ を 参照 。. -166(462)一. ンカ ム ・ア プ ロー チ に関.

(13) 知的資産情報開示の現状 と課題(戸 田) の3つ の ア プ ロー チの いず れ に も制 約 を有 す る場 合 が 多 い。 コ ス ト ・ア プ ロー チ に対 す る 制 約 と して,知 的 資 産 は取 引 ・移 転 が 困 難 な 場 合 が 多 い た め 内部 創 設 され る こ とが 多 い こ と,マ ー ケ ッ ト ・ア プ ロー チ に対 す る制 約 と して,知 的 資 産 は分 離 可 能 性 や 法 的 確 定 性 に 制 限 を有 す る こ とが 挙 げ られ る。 さ らに,イ. ンカ ム ・ア プ ロ ー チ につ いて も,前 述 の よ う. に,知 的 資 産 が も た らす 将 来 キ ャ ッシ ュ フ ロー の 測 定 は困 難 で あ り,キ ャ ッシ ュ フ ロー が 獲 得 され た と して も,両 者 の 因 果 関 係 の 判 別 は容 易 で はな い こ とが 多 いた め,そ れ らが 明 確 な 知 的 資 産 以 外 は この 認 識 規 準 を 満 さな い こ と にな る。 例 え ば,未 完 了 の 研 究 開 発 は, それ が 成 功 す るか ど うか は不 明 で あ る た め に将 来 の 経 済 的 便 益 の 発 生 の 可 能 性 も不 明 で あ り,研 究 開 発 が 成 功 す る可 能 性 が 高 ま っ た と して も,そ れ が もた らす 将 来 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー は測 定 困 難 で あ り,将 来 キ ャ ッシ ュ フ ロ ーが 測 定 で き た と して も,当 該 研 究 開 発 に使 用 した個 々の 知 的 資 産 の それ ぞ れ に,ど れ だ け その キ ャ ッシ ュ フ ロー を 帰 属 させ るか は算 定 困 難 で あ る場 合 が 多 い。 この よ う に,(a)経 済 的 便 益 の 高 い発 生 可 能 性 お よ び(b)信頼 で き る測 定 の 可 能 性 と い う認 識 規 準 に関 して,現 在 の と こ ろ多 くの 知 的 資 産 は制 約 を有 して い る と いえ る。 しか し,測 定 の 信 頼 性 に関 して は,例 え ば有 形 固 定 資 産 の 減 価 償 却 や 減 損 処 理 に よ る評 価 ・測 定 の よ う に,仮 構 的 で あ って も一 定 の 合 理 性 を有 す る評 価 ・測 定 手 法 が 考 案 され,そ れ が 社 会 的 合 意 を得 る こ とが で き るな ら,現 在 の と こ ろオ ンバ ラ ン ス され て いな い知 的 資 産 も認 識 規 準 を満 たす 余 地 が 出て くる もの と考 え られ る。 そ うで あ るな らば,今 後 新 た な 測 定 手 段 な い し技 術 を開 発 し,そ れ につ いて 社 会 的 合 意 の 形 成 して い くこ とが 期 待 され る。 現 在 の と こ ろ取 組 み が 試 行 され て き た測 定 ・評 価 手 法 の 例 に,リ アル ・オ プ シ ョン法 を 用 いた 特 許 権 の 評 価 法 や,広 告 宣 伝 費 等 の財 務 数 値 か らブ ラ ン ド価 値 を評 価 す る方 法 な どが あ る がω, これ らは いず れ も,未 だ 社 会 的 コ ンセ ンサ スが 得 られ た評 価 方 法 と は言 い難 い。 知 的 資 産 の オ ンバ ラ ンス化 ア プ ロー チ に道 を開 いて い くに は,こ の よ うな 新 た な 測 定 技 術 の 研 究 の 進 展 が 必 要 で あ ろ う。. 4.会. 計 基 準 と知 的 資 産 オ ンバ ラ ン ス化. 前 節 で は概 念 フ レー ム ワ ー ク に照 ら して 知 的 資 産 の オ ンバ ラ ン ス化 の 可 能 性 と限 界 を 検. ql)無 形 資 産 の 新 た な 測 定 技 術 に つ い て,実 務 上 で テ ス ト さ れ て い る 特 許 権 評 価 の リ ア ル ・オ プ シ ョ ン 法 の 例 に,PL-X社(ThePatent&LicenseExchange,Inc)のTRRUメ ト リクス な ど が あ り,ブ. ラ ン ド価 値 の 評 価 方 法 の 例 に は,経. を 参 照)や. イ ン タ ー ブ ラ ン ド社(lnterbrandCo.)の. 済 産 業 省 の ブ ラ ン ド価 値 評 価 モ デ ル(広. -167(463)一. 瀬(2002). ブ ラ ン ド価 値 評 価 モ デ ル 等 が あ る 。.

(14) 第57巻. 第2号. 討 したが,具 体 的 な 会 計 基 準 の な か に知 的 資 産 の オ ンバ ラ ン ス化 を 規 定 して い る現 行 基 準 は,図 表3に 示 す と お りで あ る。 そ こで 本 節 で は,ま ず(1)無形 資 産 お よ び研 究 開 発 支 出 に 関 す る会 計 基 準 を確 認 しな が ら,そ の 底 流 にあ る 「取 引 ア プ ロー チ」対 「評 価 ア プ ロー チ」 を検 討 す る こ とで 知 的 資 産 オ ンバ ラ ンスの 限 界 を 指 摘 し,次 に(2)企業 結 合 に よ り取 得 され たの れ ん と,の れ ん か ら分 離 さ れ る仕 掛 研 究 開発(IPR&D)の. 会計処理 を検証す ること. に よ って,知 的 資 産 オ ンバ ラ ン ス化 の 拡 大 傾 向 を 確 認 す る。. 図 表3知. 的 資 産(無 形 資 産)に 関 す る 現 行 の 会 計 制 度 FASB. 無形資産 (た だ し,企 業 結 合 に よ り取 得 さ れ た の れ ん 以 外). ・FAS142「. 日本基 準. IASB のれん及 び. ・IAS38「. そ の 他 の 無 形 資 産」. 無形資産」. (2004/03改 訂) ・IAS36「 資 産 の減 損 」. (2001/06). (2004/03改. 訂). な し(た だ し,「企 業 会 計 原 則 」に 営 業 権 ・特 許 権 ・ 商 標 権 等 に関 す る若 干 の 規 定 は あ る。 また, 2009年12月にASBJよ り「無 形 資 産 に 関 す る論 点 整 理 」 が公 表 さ れ て い る). ・FAS2「. 研究開発費会. ・IAS38「. 計(1974/10) ・FAS68「 研 究 開 発 計 画 」(1982/10) ・FAS86「 売 却,賃. 研究開発等. 無形資産」. (2004/03改 訂) ・IAS36「 資 産 の減 損 」 (2004/03改. 訂). 貸,. その他の方法で市場 に 提 供 され る コ ン ピ ュー. ・「 研 究 開 発 費 等 に係 る 会 計 基 準 」(1998/03) ・企 業 会 計 基 準 第23号 「 研 究 開発 費等 に係 る 会 計 基 準」 の一 部 改 正 (2008/12) ・企 業 会 計 原 則 (1982/04). タ ・ソ フ ト ウ ェ ア の コ ス トの 会 計 」(1986/08). 企 業 結 合 に よ り取 得 され た の れ ん. ・FAS141「. 企業 結合」. ・IFRS3「. (2007/12改 ・FAS142「. 訂) のれん及 び. (2008/01改 訂) ・IAS36「 資 産 の減 損 」. そ の 他 の 無 形 資 産」. ・企 業 会 計 基 準 第21号 「 企 業 結 合 に係 る会 計 基 準 」(2008/12). (2004/03改 訂) ・IAS38「 無形資産」. (2001/06). (2004/03改 *2009年7月. 企業結合」. 訂). の 米 国 会 計 基 準 の 編 纂 に よ り,FAS142はASC350に,FAS2・FAS68・FAS86は. ASC730に,FAS141はASC805に. 置 き換 わ って い る。. (1)無 形 資 産 お よび 研 究 開 発 支 出 一 「取 引 アプ ロー チ」 対 「評 価 アプ ロー チ」 IAS38は,無. 形 資 産 全 般 の 当初 認 識,測 定,お よ び 当初 認 識 後 の評 価 を規 定 す る,現 在. の と こ ろ唯 一 の包 括 的 な会 計 基 準 で あ る。FAS142も が,主. 無 形 資 産 の 会 計 処 理 を 規 定 して い る. に 当初 認 識 後 の 評 価 に関 す る会 計 基 準 で あ り,無 形 資 産 の 当 初 認 識 に関 す る規 定 は. ほ と ん ど記 さ れ て い な い⑫。 ま た,日 本 に お い て も,無 形 資 産 に関 す る包 括 的 な会 計 基 準. 働FAS142は. 無 形 資 産 の 当 初 認 識 に 関 し て,個. 創 設 の 無 形 資 産 は 認 識 しな い(par.10),と. 別 に 取 得 さ れ た 無 形 資 産 は 認 識 し(par.9),自. 定 め て い るの み で あ る。. -168(464)一. 己.

(15) 知的資産情報開示の現状 と課題(戸 田) は現 在 の と こ ろ存 在 しな い(た だ し,2009年12月. にASBJよ. り 「無 形 資 産 に関 す る論 点 整. 理 」 は公 表 され て い る)。 IAS38に. よ る と,企 業 が あ る項 目を無 形 資 産 と して認 識 す る(オ ンバ ラ ンスす る)に は,. それ が 無 形 資 産 の定 義 お よ び認 識 規 準 を満 た す こ とを示 す こ とが 要 求 され て い る (par.18)。 そ して,無 形 資 産 は 「物 的 実 体 の な い 識 別 可 能 な(identifiable)非. 貨 幣資産. (par.8)」 と定 義 さ れ,あ る資 産 が 識 別 可 能 で あ る と い う こ と は,当 該 資 産 が 企 業 か ら分 離 可 能 で あ る こ と,も う(par.12)。. し くは 当該 資 産 は契 約 ・法 律 上 の 権 利 か ら生 じた もの で あ る こ とを い. ま た,認 識 規 準 とは,そ の 無 形 資 産 に起 因 す る将 来 の 経 済 的 便 益 が 起 業 に流. 入 す る 可 能 性 が 高 い こ と と,無 形 資 産 の コ ス トが 信 頼 性 を も って 測 定 で き る こ とで あ る (par.22)。 な お,無 形 資 産 は原 価(cost)で そ してIAS38は,無. 当 初 測定 され な け れ ば な らな い(par.24)。. 形 資 産 の 当初 認 識 の 会 計 処 理 を,主 に① 個 別 に取 得 され た場 合,②. 企 業 結 合 の 一 環 と して 取 得 され た場 合,お. よ び③ 自 己創 設 され たの れ ん ・無 形 資 産 に区 分. して 会 計 処 理 を規 定 して い る。 ① と② の 場 合 に は,無 形 資 産 の 取 得 対 価 は,無 形 資 産 に 内 包 され る将 来 の 経 済 的 便 益 が 企 業 に流 入 す る可 能 性 の 期 待 度 を反 映 して い るた め,発 生 可 能 性 の 認 識 規 準 は常 に満 た され て い る と され て い る(pars.25,33)。 無 形 資 産 の 対 価 は いず れ も第3者. 同 じ く,① ② の 場 合 の. との 取 引 に よ り決 定 され て い る もの で あ るの で,信 頼 性. あ る測 定 可 能 性 につ いて も通 常 は満 足 して い る,と 説 明 され て い る(pars.26,35)。 そ して, ① に該 当す る無 形 資 産 は,個 別 取 引 に よ り取 得 され て い るか ら識 別 可 能 性 基 準(無 形 資 産 の 定 義)も 満 たす た め制 約 な く資 産 認 識(す. る こ とが で き,② の 場 合 に は,企 業 結 合 時 に. 発 生 す るの れ ん か ら分 離 して 識 別 す る こ とが 可 能 で あ る場 合 に は,資 産 認 識 す る こ とが 可 能 と い う こ と にな る。 これ に対 し,③ 自 己創 設 の の れ ん ・無 形 資 産 の う ち,自 己創 設 の れ ん につ いて は,識 別 可 能 な 資 源 で はな い(す な わ ち分 離 可能 で は な く,契 約 ・法 律 上 の 権 利 か ら生 じた もの で も な い)こ と を主 な理 由 と して,そ の 資 産 認 識 を 全 面 的 に禁 止 して い る(pars.48-50)。 自 己創 設 の 無 形 資 産 につ いて は,便 益 の 発 生 可 能 性 と測 定 の 信 頼 性 に以 下 の よ うな 制 約 をつ け た うえ で,一 部 の 無 形 資 産 に の み 資 産 認 識 を 要 求 して い る(pars.51-64)。. まず,自. 己創 設 無 形 資 産 が 認 識 要 件 を満 たす か 否 か を判 断 す る た め,企 業 は資 産 の 創 出過 程 を 研 究 局 面 と開 発 局 面 に分 類 し,研 究 局 面 か ら生 じた無 形 資 産 の 資 産 認 識 は禁 止 す る。 そ して, 開 発 局 面 につ いて は,使 用 ま た は売 却 が で き る よ う に無 形 資 産 を 完 成 させ る技 術 的 実 行 可 能 性 や,完 成 した無 形 資 産 が 高 い可 能 性 を も って 将 来 の 経 済 的 便 益 を 創 出す る こ とが で き る方 法 や,当 該 無 形 資 産 へ の 支 出が 信 頼 性 を も って 測 定 で き る可 能 性 な ど,全 部 で6項 一169(465)一. 目.

(16) 第57巻. 第2号. の 要 件 をす べ て 満 た して い る こ と を示 す こ とが で き る場 合 に は,企 業 は無 形 資 産 を 資 産 認 識 しな けれ ば な らな い(par.57)。 に も,無 形 資 産 の 定 義(と. も ち ろん,自 己創 設 無 形 資 産 の 認 識 規 準 を 判 定 す る場 合. くに識 別 可 能 性)を 満 足 して い る こ とが 前 提 で あ る。 な お,こ. れ に対 し,米 国 基 準(FAS2,par.12)お. よ び 日本 基 準 で は,一 部 の ソ フ トウ ェア を 除 き,. 研 究 開 発 支 出 は研 究 段 階 と開 発 段 階 の 区 分 な く発 生 時 に費 用 処 理 され る㈲。 この よ う にIAS38は,無. 形 資 産 の 当初 認 識 につ い て,便 益 の 発 生 可 能 性 規 準 と測 定 の 信. 頼 性 規 準 と い う2つ の 認 識 規 準 を 満 たす か 否 か を と くに重 視 して い るが,そ の 会 計 処 理 の 内容 と根 拠 を検 討 す る と,そ の 底 流 に は資 産 の 認 識 ・測 定 に お け る 「取 引 ア プ ロー チー 費 用 収 益 観 」 と 「評 価 ア プ ロー チー 資 産 負 債 観 」 を め ぐる議 論 が 存 在 す る こ とが わ か る。 取 引 ア プ ロ ー チ と は,実 際 の 取 引 に も とづ き投 資 支 出額 を 資 産 と して 繰 り延 べ る ア プ ロー チ で あ り,支 出の 繰 り延 べ 処 理 を 正 当づ け るの が 対 応 原 則 で あ る。 そ れ に対 して,評 価 ア プ ロ ー チ は,取 引 や 対 応 概 念 に こだ わ る こ とな く資 産 の 経 済 的 価 値 を 認 識 ・測 定 しよ う とす る ア プ ロ ー チ で あ る㈹。 そ して,IAS38に. 内在 す る取 引 ア プ ロー チ と評 価 ア プ ロー チの 議. 論 は,無 形 資 産 の 認 識 と測 定 に関 して,そ れ ぞ れ 以 下 の よ うな 問 題 を 提 示 す る。 従 来 の 伝 統 的 認 識 観 は,有 形 資 産 を 主 た る対 象 と して 想 定 し,期 間 損 益 計 算 の 適 正 化 と い う 目的 の も と,取 引 ア プ ロ ー チ を採 用 して き た。 こ の認 識 観 の もとで は,IAS38が. 示す. よ う に,単 独 取 得 と企 業 結 合 時 に取 得 され た無 形 資 産 は,外 部 取 引 に よ る もの で あ るか ら と くに制 限 な く認 識 要 件 を 満 た し,自 己創 設 の の れ ん と研 究 局 面 の 無 形 資 産 は,取 引 に よ らな い もの で あ る た め識 別 可 能 で はな く,し たが って 資 産 認 識 で きな い。 こ こ に知 的 資 産 の オ ンバ ラ ンス化 の 限 界 が あ る。 一 方,開 発 局 面 の 自 己創 設 無 形 資 産 は,外 部 との 取 引 に よ らな い もの で あ るが,評 価 ア プ ロ ー チの も と,経 済 的 便 益 の 発 生 可 能 性 の テ ス ト等 を ク リア ー して 経 済 的 価 値 が あ る と認 め られ れ ば,資 産 認 識 が 要 求 され て い る。 これ は,知 的 資 産 の オ ンバ ラ ン ス化 の 可 能 性 を示 す 処 理 で あ ろ う。 しか し,こ こで,IAS38の. 無 形 資産 の認 識 に お い て は,取 引 ア プ ロー チ と評 価 ア プ ロー. チが 混 在 して い る と い う問 題 点 を指 摘 す る こ とが で き る。1つ の 会 計 基 準 の な か で 異 な る 認 識 ア プ ロ ー チが 混 在 す る こ と に よ り,同 一 バ ラ ンス シ ー トに計 上 され る無 形 資 産 の 評 価 属 性 が 結 果 的 に不 統 一 とな り,オ ンバ ラ ン ス され た無 形 資 産 の 質 的 特 性 に関 して 情 報 利 用 者 に誤 解 や 混 乱 を与 え る可 能 性 が あ る。 そ して,そ の よ うな 懸 念 が 大 き くな る よ うで あれ ば,無 形 資 産 の 認 識 を 外 部 取 引 に よ り取 得 され た無 形 資 産 の み に限 定 す るか,も. ㈹FAS2,FAS86お ㈹ 古 賀(2005)78頁. よ び 「研 究 開 発 費 等 に 係 る会 計 基 準 」 参 照。 。 -170(466)一. し くは,.

(17) 知的資産情報開示の現状 と課題(戸 田) 開 発 局 面 か ら生 じた無 形 資 産 の 認 識 要 件 と 同 じよ う に,外 部 取 引 に よ る無 形 資 産 に も,技 術 的 実 行 可 能 性 や 便 益 創 出可 能 性 の テ ス トを 義 務 付 け るべ きで はな いか と思 わ れ る。 ま た,測 定 に 関 して は,取 引 ア プ ロー チで は,認 識 と測 定 は取 引 時 に 同 時 に お こな わ れ, そ の投 資 支 出額 を 繰 り延 べ るべ く取 引 時 の 取 得 原 価 で 測 定 され る こ と と な る。IAS38に お け る単 独 取 得 と企 業 結 合 時 に取 得 され た無 形 資 産 も その 考 え 方 に従 って い る(par.24)。 一 方 ,評 価 ア プ ロ ー チの も とで は,資 産 の 認 識 は測 定 に先 立 って お こな わ れ るた め,そ の 測 定 は取 得 原 価 に こだ わ らず,そ の 資 産 の経 済 的価 値 に基 づ い て な さ れ る べ き で あ る㈲。 しか し,IAS38で. は,開 発 局 面 の 自己創 設 無 形 資 産 は,評 価 ア プ ロー チ に よ る認 識 で あ る. に もか か わ らず,そ の 測 定 は経 済 価 値 に基 づ いて な され る こ と はな く,認 識 要 件 を 最 初 に 満 た した 日以 降 に発 生 す る支 出額 の 合 計 額(す な わ ち原 価)に よ って測 定 さ れ る(par.65)。 例 え ば,開 発 局 面 の 無 形 資 産 に プ ール され た人 件 費 コ ス トは,単 に人 件 費 の 繰 り延 べ 額 で あ って,何. ら無 形 資 産 の 経 済 的 価 値 を あ らわ す もの で はな い。 さ ら に,そ もそ も特 定 の 無. 形 資 産 の 経 済 的 価 値 は,そ れ が 利 用 され る企 業 や 経 営 活 動 の 文 脈 に大 き く左 右 され る もの で あ るか ら,原 価 に よ る画 一 的 な 測 定 の 妥 当性 に は疑 問 が 残 る。 いず れ にせ よ,創 出 され る経 済 的 便 益 の 発 生 可 能 性 が 不 明 確 で あ る と い う無 形 資 産 の 特 性 に起 因 す る資 産 認 識 の 制 限 と,企 業 に お け る無 形 資 産 の 重 要 性 の 増 大 か ら生 じる資 産 認 識 の 拡 大 の 要 請 は,常 に無 形 資 産 を 取 引 ア プ ロ ー チ と評 価 ア プ ロー チの 相 克 に さ らす こ と とな る。 ま た,評 価 ア プ ロー チ に よ って 認 識 され た無 形 資 産 に も原 価 評 価 を 適 用 す る会 計 処 理 は,認 識 と測 定 が 論 理 一一 貫 した もの で あ る と は いえ な い。 この よ う に,無 形 資 産 会 計 基 準 で は単 一 か つ 一 貫 した認 識 ・測 定 ア プ ロー チを 設 定 す る こ とが 困 難 で あ り,こ こ に無 形 資 産 の 会 計 的 認 識 の 矛 盾 と限 界 が 確 認 で き る。. (2)企. 業 結 合 に よ り取 得 さ れ た の れ ん 一 オ ン バ ラ ン ス の 拡 大 傾 向. 企 業 結 合 時 の 会 計 処 理 方 法 に つ い て,FAS141,国 nancialReportingStandard:以. 下,「IFRS」. 際 財 務 報 告 基 準(lnternationalFiと 略 す)3号. お よ び 企 業 会 計 基 準 第21号. は と も に 持 分 プ ー リ ン グ 法 を 認 め ず 取 得 法 ㈹ に 一 本 化 して お り囎,企. ㈹Tollington(2002)(古 ㈹. 賀 監 訳(2004)81頁)を. 企 業 結 合 の 形 態 は パ ー チ ェ ス(買 収)に method)は. ⑳2006年2月. 参照。. 限 ら な い と の 理 由 か ら,従 来 の パ ー チ ェ ス 法(purchase. 取 得 法(acquisitionmethod)と にFASBとIASBに. 業 結 合 日 に お い て,. い う用 語 に変 更 され て い る。 よ っ て 交 わ さ れ た コ ン バ ー ジ ェ ン ス 作 業 に 関 す る 「覚 書 き. (MemorandumofUnderstanding)」(FASBandIASB(2006))に した が った コ ンバ ー ジ ェ ン ス の 結 果,企 業 結 合 に 関 す る 国 際 財 務 報 告 基 準 と 米 国 基 準 の 差 異 の 多 くは 解 消 さ れ た が,取 り 除 か れ て い な い い くつ か の 差 異 が 残 存 して い る 。 詳 し く はFASB(2007a)AppendixGを な お,日. 本 基 準 に 関 し て は,改. 訂 企 業 会 計 基 準 第21号 -171(467)一. が2008年12月. に 公 表 さ れ,国. 参照。 際 会 計 基 準 と/.

(18) 第57巻. 第2号. 取 得 対 価 と 非 支 配 持 分 ⑲6①の 合 計 額 が 識 別 可 能 な(identifiable)受 の 純 額 を 超 過 し た 額 を,の. 入 れ 資 産 と引 受 け負 債. れ ん と し て 認 識 す る こ と を 要 求 し て い る61)。す な わ ち,の. と は,「 企 業 結 合 に お い て 取 得 さ れ た 個 別 に 識 別(individuallyidentified)お て 認 識(separatelyrecognized)で. よ び分 離 し. き な い 他 の 諸 資 産 か ら生 じ る 将 来 の 経 済 的 便 益 を あ ら. わ す 資 産 」 で あ る 励。 そ して,あ itycriterion)と. れん. る 資 産 が 識 別 可 能 か 否 か は,分. 離 可 能 性 基 準(separabil-. 契 約 ・法 的 基 準(contractual-legalcriterion)に. 照 ら して 判 定 さ れ. る ⑱。 こ こ で 注 意 す べ き は,取. 得 対 価 と 非 支 配 持 分 の 合 計 額 と,企. 業結合前の被取得企業の貸. 借 対 照 表 に 認 識 さ れ て い た 資 産 と 負 債 の 公 正 価 値 の 純 額 と の 差 額(こ 呼 ぶ こ と に す る)が,そ. れを企業結合差額 と. の ま ま の れ ん と して 認 識 さ れ る の で は な く,被. 照 表 に は 認 識 さ れ て い な か っ た 資 産 負 債 で あ っ て も,取 して 資 産 負 債 の 認 識 要 件 を 満 た して い れ ば,の て い る 点 で あ る 。 と く に,所. 取得企業の貸借対. 得 時 に 概 念 フ レー ム ワ ー ク に 照 ら. れ ん か ら分 離 して 認 識 す る こ と が 要 求 さ れ. 定 の 認 識 規 準 を 満 たす 識 別 可 能 無 形 資 産 等 はの れ ん か ら分 離. して 認 識 しな け れ ば な らな い こ と を 強 調 して い る 働。 そ して,FAS141とIFRS3で 場 関 連 無 形 資 産(ト. レ ー ドマ ー ク や 非 競 合 契 約 等),顧. 約 に よ ら な い 顧 客 関 係),芸. 術 関 連 無 形 資 産(演. (サ プ ラ イ 契 約 や フ ラ ン チ ャ イ ズ 契 約 等)お. 客 関 連 無 形 資 産(顧. 劇 や 音 楽 作 品 等),契. は,市 客 リ ス トや 契. 約べ 一ス無形 資産. よ び 技 術 べ 一 ス 無 形 資 産(デ. ータベースや製. 法 な ど の 企 業 秘 密 等)が 企 業 結 合 時 の 識 別 可 能 無 形 資 産 と し て 例 示 列 挙 さ れ て お り㊤ ∂,仕 掛 研 究 開 発(in-processR&D:以. 下,「IPR&D」)も. 識 別 可 能 無 形 資 産 と して扱 わ れ て い. る。 こ の よ う に,の. れ ん は 直 接 的 に 認 識 す る こ と が で き ず,企. 能 資 産 負 債 を 取 り 除 い た 残 余(residual)と. 業 結 合 差 額 か ら新 た な 識 別 可. し て 認 識 さ れ る わ け で あ る が6⑤,FAS141と. \の コ ンバ ー ジ ェ ンス の 観 点 か ら会 計 基 準 の 大 幅 な 改 訂 が お こな わ れ て い る。 ⑱. 改 訂 前 企 業 会 計 基 準 第21号 は 持 分 プ ー リ ン グ 法 も 容 認 して い た が,改 グ 法 を 廃 止 し,パ ー チ ェ ス 法 へ の 一 本 化 し て い る 。. ㈹FAS141とIFRS3で trollinginterest)と ⑳. は,従 来 の 少 数 株 主 持 分(minorityinterest)は い う用 語 に変 更 され て い る。. な お,FAS141は,非. 支 配 持 分(少. 数 株 主 持 分)も. 数 株 主 持 分 は 公 正 価 値 で 評 価 せ ず,取. 入 の れ ん 法(purchasegoodwillmethod)を い る。. 採 用 し て お り,IFRS3は. 働FAS141,par.3.j,IFRS3,AppendixA. ㈹FAS141,A19,IFRS3,B31。 よ び 企 業 会 計 基 準21号. ㈲FAS141,A29-56,IFRS3,IE16-44. (5③IFRS3,BC328。 -172(468)一. 得 企 業 持 分 だ けで な 採 用 し て い る が,日. 得 企 業 持 分 相 当 分 だ けの れ ん が 認 識 され る購. (5DIFRS3,par.32,FAS141,par。34.. 励FAS141,par.15,IFRS3,par。13お. 非 支 配 持 分(non-con-. 公 正 価 値 で 評 価 し,取. く非 支 配 持 分 の の れ ん も 認 識 す る 全 部 の れ ん 法(fullgoodwillmethod)を 本 基 準 は,少. 訂 基 準 で は持 分 プ ー リン. パ ラ29。. 両 者 の選 択 適 用 を 認 め て.

(19) 知 的 資 産 情 報 開 示 の 現 状 と課 題(戸 田) IFRS3は,さ. ら に の れ ん の 構 成 要 素 を 分 解 し,概. を 「コ ア の れ ん 」 と 呼 ん で い る)と い る6の。 「コ ア の れ ん 」 と は,被 の 超 過 収 益 力)お. 念 的 に の れ ん で あ る も の(両. そ う で な い も の と に 区 分 して,そ. 基 準 は これ. の 資 産 性 を 検 討 して. 取 得 企 業 の 継 続 企 業 要 素(going-concernelement:企. 業. よ び 企 業 結 合 を 通 じて 期 待 さ れ る シ ナ ジ ー や 便 益 で あ り,そ. れ は訓 練 さ. れ た 労 働 力 や 顧 客 の ロ ー ヤ ル テ ィ等 と い っ た 要 素 か ら 生 じ る も の で あ る か ら鰍,企 的 資 産 に 関 連 す る も の で あ る と い え る 。 そ して,の もの は,被. れ ん の 構 成 要 素 う ち コ アの れ ん 以 外 の. 取 得 企 業 の 未 認 識 の 純 資 産 や 取 得 対 価 の 過 払 い 分 等 で あ り,こ. は の れ ん で は な い が,コ. 業の知. れ ら は概 念 的 に. ア の れ ん と 分 離 して 識 別 ・測 定 が ど う して も 困 難 で あ る 場 合 に,. コ ア の れ ん と 併 せ て の れ ん と して 認 識 さ れ る 結 果 と な る 翻。 こ こ で,FAS141とIFRS3は,企 理 由 を,概 ①. 業 結 合 に よ っ て 生 じ る(コ. ア)の. れんの資産認識 の. 念 フ レ ー ム ワ ー ク の 資 産 定 義 に 照 ら して 次 の よ う に 説 明 して い る 。. 将 来 の 経 済 的 便 益 の 要 件 に つ い て は,「 の れ ん に 関 連 す る 将 来 便 益 は 不 透 明 で あ り, 他 の 多 くの 資 産 に 関 連 す る 便 益 よ り も 不 確 実 で あ る か も しれ な い が,の 将 来 の 経 済 的 便 益 を 提 供 す る 。FASB概. 念 ス テ ー ト メ ン ト6号. さ れ る す べ て の も の は 将 来 の 経 済 的 便 益 を 有 し,こ. れ に は,複. れ ん は一 般 に. に よ る と,一 般 に 売 買 数 ア イ テ ムの. 「一 括 購. 入 」 や 企 業 結 合 に お い て 買 い 手 が 取 得 し対 価 を 支 払 う 意 図 を 持 つ よ う な 個 別 ア イ テ ム も 含 ま れ て い る(ConceptStatement6,par.173)。 と 説 明 して い る 。 つ ま り,第. 」(FAS141,B320,IFRS3,BC320). 三 者 間 の 取 引 で 対 価 が 支 払 わ れ た と い う こ と は,少. な く. と も双 方 が の れ ん に 係 る 将 来 の 経 済 的 便 益 の 存 在 を 認 め て い る と い う こ と で あ る た め,の ②. れ ん は 当 該 要 件 を 満 足 して い る,と. い う論 理 で あ る。. 支 配 の 要 件 に つ い て は,「 例 え ば の れ ん を 生 じ さ せ る 要 素 で あ る 労 働 力 や 顧 客 は 企 業 に よ っ て 支 配 さ れ て い る と は 看 倣 さ れ な い か も しれ な い が,の 業 の 支 配 は,取. 得 企 業 が 被 取 得 企 業 の 方 針 や経 営 を監 督 す る能 力 に よ って 証 明 され. る 」(FAS141,B320,323,IFRS3,BC320,323)と 取 得 企 業 を 支 配 して い る た め,被. して い る 。 つ ま り,取. 過 去 の 取 引 ・事 象 の 要 件 に つ い て は,の. 説 明 して い る の で あ る 。 れ ん は取 得 企 業 に よ る被 取 得 企 業 の 取 得 取. 引 に よ っ て 発 生 す る も の で あ る か ら(lbid.),当. ⑳. 得 企 業 は,被. 取 得 企 業 の 超 過 収 益 力 や 企 業 結 合 に よ る シ ナ ジー と. い っ た の れ ん に 対 して も 支 配 を 有 す る,と ③. れ ん に対 す る取 得 企. 該 要 件 を満 た して い る と して い る。. の れ ん の 要 素 分 解 と コ ア の れ ん に つ い て の 詳 細 は,FAS141,B313-318お -318を 参 照。. (581FRS3,BC321。 (5③Ibid.,BC317. -173(469)一. よ びFRS3,BC313.

(20) 第57巻 こ の よ うな 理 由か ら,FAS141お. 第2号. よ びIFRS3は,企. 業 結 合 に よ り生 じた の れ ん は概 念 フ. レー ム ワ ー クの 資 産 定 義 を 満 たす と説 明 して い るが,そ. こ に は資 産 定 義 の 各 要 件 の 緩 和 傾. 向が み られ る。 まず,① 将 来 の 経 済 的 便 益 の 要 件 の 説 明 に関 して は,の れ ん の 構 成 要 素 の う ち,企 業 結 合 に よ り生 じる シ ナ ジー の 価 値 が プ レ ミア ム と して 取 得 対 価 に含 まれ るの は,取 得 企 業 側 が その 発 現 を期 待 して い るか らで あ るが,実 際 に は企 業 結 合 後 に シ ナ ジー は発 揮 され な い ケ ー ス も多 く,逆 に企 業 結 合 に よ って 業 績 が 低 下 す る こ と も多 々 あ るの が 現 実 で あ る。 さ らに,醍 醐(2007)も. 指 摘 す る よ う に,シ ナ ジ ー生 成 に対 す る取 得 企 業 の 貢 献 分 は 自己 創. 設 の れ ん に相 当す る とみ な され るが,そ の よ うな 自 己創 設 の れ ん も企 業 結 合 時 に認 識 され る の れ ん に混 在 して しま って い る㈹。 そ して② 支 配 の 要 件 に対 す る説 明 に 関 して も,た. し. か に取 得 企 業 は被 取 得 企 業 に対 して 支 配 ・監 督 す る権 利 を 有 す るが,例 え ば企 業 結 合 に反 対 す る優 秀 な 従 業 員 が 企 業 結 合 前 に次 々 と退 社 して い っ た場 合 に は,被 取 得 企 業 の 継 続 企 業 要 素(超 過 収 益 力)は 維 持 で きな いの で はな いか,と. い う疑 問 が 残 る。. さ らに,分 離 す る こ とが で きず にの れ ん に含 まれ た ま まの 非 コ アの れ ん 要 素 は,取 得 対 価 の 測 定 エ ラ ー(過 払 い分)等. に しか す ぎず,場 合 に よ って は,の れ ん の 構 成 要 素 の す べ. て が 非 コ アの れ ん で あ る可 能 性 も あ る。 以 上 の よ うな 疑 問 や 可 能 性 が あ る に もか か わ らず,企 業 結 合 に よ り発 生 す るの れ ん が 費 用 処 理 され ず に積 極 的 に資 産 と して 当初 認 識 され て い る こ と,お よ び コ アの れ ん を 生 成 す る主 な 要 素 は知 的 資 産 で あ る こ とを 勘 案 す る と,か な り緩 や か な ス タ ン スで 知 的 資 産 の オ ンバ ラ ンス化 が 容 認 され て い る と いえ る。 この よ うな 知 的 資 産 オ ンバ ラ ン ス化 に関 す る現 行 基 準 の 緩 や か な 容 認 姿 勢 は,企 業 結 合 に よ って 取 得 す るIPR&Dの いて,よ. 会 計 処 理 の 変 更 にお. り鮮 明 に あ らわ れ て い る。. 企 業 結 合 時 に取 得 す るIPR&Dに. つ い て,現 在 のFAS141,IFRS3お. よ び企 業 会 計 基. 準 第21号 は と も に,当 該 研 究 開 発 が 研 究 段 階 で あ るか 開 発 段 階 で あ るか を 問 わ ず,取 得 時 に資 産 計 上 す る と定 あて い る。 しか しなが ら,改 訂 前FAS141(2007年12月 び改 訂 前 企 業 会 計 基 準 第21号(2008年12月. 改 訂 前)で. 改 訂 前)お. よ. は,通 常 の 研 究 開 発 支 出の 会 計 処 理. が 発 生 時 費 用 処 理 を求 めて い る こ と との 整 合 性 が 重 視 され,企 業 結 合 に際 してIPR&Dに 使 用 され て い る有 形 ・無 形 資 産 に配 分 され た金 額 は,将 来 の 代 替 用 途 が な いか ぎ り取 得 時 に費 用 処 理 す る と さ れ て い た㈹。 つ ま り,米 国 基 準 と 日本 基 準 は,会 計 基 準 の コ ンバ ー. 6①. 醍 醐(2007)21頁. 6DFASB(2001b)(改. 。 訂 前FAS141),par.42お -174(470)一. よ び 「企 業 結 合 に 係 る 会 計 基 準 」 三2(3).

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