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リーダーシップ : フォロワーから見たリーダーシップ

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(1)リーダーシップ フォロワーから見たリーダーシップ. 薄. Ⅰ.はじめに. 会社に入って働き始めると,もちろん能力や 組織の規模などにもよるが,早い人では数年で 部下を持つポジションに就く.部下を持つこと. 羽. として自分は何をしたらいいのか.こうした問 題を考える必要が生じ,これらはリーダーシッ プの問題として扱われてきた. これまでのリーダーシップ研究では,リーダ. は,それまで業務担当者として担当の仕事をし. ーシップはリーダーである管理職の中に備わる 何らかの対人影響力であり,この影響力の差が. ていれば良かったところから,管理職として部. 集団間に業績の格差を生むと考えられてきた.. 下を介して部署の仕事を行う立場になる.この. そしてこの対人影響力の実態をリーダーの資質. ことをいささか単純に述べれば,自分の仕事の 成果は自分の能力次第だったところから,自分. や行動と捉え,既存のリーダーシップ研究では 集団の業績を向上させているミドル・マネジャ. の仕事の成果が大きく部下の仕事の出来具合に 左右されるようになることを意味する(金井,. ーに視点を定め,高い業績につながるミドル・ マネジャーの資質や行動を探ってきた.結果変 数である集団の高い業績と,それを導くリーダ. 2005). 管理業務は,スケジュールを決め,仕事を一 人ひとりに割り振り,納期に間に合うように全. ーの資質や行動といった原因変数間の因果関係 が明らかになれば,今度は因果関係を逆転させ. 体の調整をつけたり,欠勤者が出ればその穴埋. ることができる.つまり,特定の資質を持った. めを探したりと,それまでの業務担当者として. 人物をリーダーに登用したり,特定の行動を行. の仕事とは質的に大きく異なる.また一目でも 早く後輩を一人前にするために仕事のやり方を. えば,集団レベルで高い業績を達成することが. 教えたり,社内の人間関係を知ってもらうため. できるはずである. その後,原因変数と結果変数の間に影響を及. に指導する「後輩の指導」とは異なり,責任も. ぼす調整変数が考慮されるようになった.つま. 業務担当者のときよりも重くなる.. り,調整変数が原因変数であるリーダー行動に. こうした管理職,つまりミドル・マネジャー1). 影響を与えるため,どのような条件下でも常に. として部下を率いる立場になってからは,部下. 高い業績につながる唯一最善のリーダー行動な. を介して集団レベルの業績を上げることが自身. ど存在しない.むしろ状況とリーダー行動の適. の評価基準になる.そのため,部下(フォロワ. 合性によって業績が異なると考えられるように. ー)はどうしたら自分についてきてくれるのか. 集団レベルで高い業績を達成するにはリーダー. なった.これは,特定のリーダーの行動と集団 の業績との関係は,何らかの状況要因との適合.

(2) 136. (752). 横浜国際社会科学研究. 第10巻第6号(2006年2月). 性が高まるにつれ業績が向上していくというこ. アプローチ毎にレビューし,それぞれの発見と. とである.. アプローチが抱える問題点を明らかにする.第. しかし,科学的な分析2)を行ってきたにも関. 4節では,既存研究で試みられてきたアプロー. わらず,リーダーシップ研究で明らかにされて. チの背後に潜むリーダーシップ認識観を明らか. きたリーダーの資質や行動,そして状況との適 合性は期待したような結果を得ることは少なか. にし,その特徴を述べる.そこではフォロワー がリーダーシップを個人レベルで認識する「個. った.こうした原因の1つは,リーダーシップ を分析する際,リーダーその人の中にリーダー. 別フォロワーのリーダーシップ認識」と,フォ. シップが存在するという研究の前提から生じて. ロワー間の相互作用によって集団レベルでリー ダーシップを認識する「フォロワー間のリーダ. いる.第2節で述べるように,リーダーシップ をリーダーであるミドル・マネジャーの中に存. ーシップ認識」の2つのリーダーシップ認識観 が指摘される.第5節では,第3節の問題点を踏. 在していると仮定し,そこに分析の視点を定め. まえ,今後の研究の発展のためにリサーチ・ク. て様々な分析のアプローチを試みるリーダー主 体の視点から,リーダーシップはフォロワーの. エスチョンを示す.第6節では,まとめと今後. 中に存在するという仮定に立つフォロワー主体. の展望を示す. I[.フォロワー主体の研究視点とリーダー主体. の研究視点へと分析の視点の移動を必要とする (薄羽,2005a, 2005b).. の研究視点 この節ではリーダーシップを分析する際にリ. つまり,管理職となって部下を持ったとき,リ ーダーとして何をすればフォロワーがついてきて くれるのか,どうすれば指示通り働いてくれるの. ーダーに視点を置く場合と,フォロワーに硯点 を置く場合では,現象の見え方においてどこが. か,時として指示以上のことをしてくれるのかと. どのように違ってくるのかを示すこととした. いった問題は,フォロワーによるリーダーシップ. い.. 認識に大きく依存することになる3).するとリー. 既存のリーダーシップ研究で主流を占めてき. ダーシップはフォロワーの中で認識されて初め. たのは,リーダーが個人や集団に対して目標に. て存在する,またはフォロワーの中に時間の経. 向けて活動するように働きかける対人影響力を. 過やリーダーとの相互作用とともに認識される. リーダーシップとし,リーダーと称されるミド. ものとして捉え直すことになる.問題意識もフ. ル・マネジャーの中に存在することを前提とし. ォロワーは何に基づいてリーダーシップを認識 するのか,どんなプロセスを経てリーダーシッ. たリーダー主体の研究視点だった(薄羽,2005a,. プがフォロワーの中に形成されてくるのかにな. 2005b).そしてミドル・マネジャーが備えるこ うした何らかの対人影響力の差が,集団間の業. る.. 績の格差につながるという点から分析を行って. 本論文の目的は,リーダーシップを分析する. きた.. 上でフォロワーに分析の視点を定めた既存のリ. その際,集団間で生じる業績格差はリーダー. ーダーシップ研究をレビューし,今後の研究の 方向性を示すことである.以下,第2節ではリ. によって発揮されるリーダーシップの違いにあ 「リーダーの ると考えられてきた.そこでは,. ーダーシップ研究においてリーダーに分析の視 点を定めた場合と,フォロワーに分析の視点を. どんな資質が集団の業績格差につながるのか」, 「リーダーは集団の業績を向上させるために何 「どのような状況要因がリーダー. 定めた場合との違いを説明し,視点の相通を明. をすべきか」,. らかにする.第3節では,フォロワーからリー. の行動の有効性に影響を及ぼすのか」が研究課. ダーシップを分析してきた既存研究を主な研究. 題として議論されてきた..

(3) (753). リーダーシップ(薄羽). しかしながら,リーダー主体の研究視点のみ. 137. では十分に説明ができず,また幾つかの問題点. るべき研究課題も必然と変わってくる.主な研 究課題は「フォロワーがリーダーシップを認識. も考えられる.第1に,現実に人間の情報処理. する基準は何か」. 能力を考えれば,リーダーが様々な状況要因を. ーはリーダーシップを認識するのか」である. またフォロワー主体の研究視点は,次の3つ. 考えて,その時々に最適な行動を選ぶことは難 しい.特に状況は常に変化し続けるため,リー. 「どんなプロセスでフォロワ. ダー行動と状況の適合性から説明を試みるには. の特徴を持っている.第1に,リーダーシップ をリーダーその人の中に求めるのではなく,フ. 限界がある.第2に,研究結果で得られたリー. ォロワー側に求めることになる.そのためフォ. ダーの行動を一方的に行えば集団レベルの高い 業績が達成されるわけではない.フォロワー側. ロワーが主たる研究対象となる.第2に,リー ダーシップが有効となるか否かは,リーダーの. からの働きかけも存在し,むしろ双方向的なや. 行動と状況の適合性ではなくなる.むしろリー. り取りを通じてなされるはずである.第3に,. ダーが所属しているフォロワー及びフォロワー. リーダーシップの"有効性の差4)"として扱わ. 集団の中で,どのようにリーダーシップが発. れてきた質問紙調査の差異は,本当にリーダー. 生・形成されるかに影響を受ける.第3に,棉. シップの有効性の差と言えるのかといった疑問. 互作用を通じてリーダーシップがフォロワーの. である.この有効性の差に関して興味深い研究. 中に認識されるものとなる.これはリーダーが. があり,. フォロワーに対して働きかけを行うが,フォロ. EdenandLeviatan. (1975)は,フォロ. ワーがリーダーシップを評価する際,リーダー についての情報が少ないにも関わらず,リーダ ーの情報が制限されていない他の研究と類似の Meindl 結果が得られたことを報告している. and. Ehrlich. (1987)の行った「強力なリーダー. の存在」, 「専門能力のある従業員」,. 「市場の好. ワーはそうしたリーダーの働きかけに対して何 らかの意味づけをしたり,時としてリーダーの 意図とは異なる解釈をするからである. 次節では,リーダーシップを分析する上で, フォロワーに視点を向けたこれまでの研究では どのようなアプローチが取られ,どんな発見を. 転」,そして「政府の方針転換」が業績の向上. してきたのかを明らかにする.さらにアプロー. につながったという4つのストーリーを被験者. チ毎に抱える問題点を順次示すこととしたい.. に読ませた実験では,他の3つのストーリーよ りも相対的にリーダーの存在を強調したストー. Ⅲ.フォロワーのリーダーシップ認識:既存研 究のアプローチ. リーを高収益,低リスクと評価する傾向がある ことを明らかにしている.この2つの研究結果. リーダーシップ研究において,フォロワーに. は,リーダーシップは必ずしも集団の業績と関 連しているのではなく,フォロワーがリーダー. 分析の硯点を定め,フォロワーから見たリーダ. に対して抱く"イメージの差"となっているこ. ーシップ認識に関する研究は経営学の領域を超 えればかなり多い.リーダーシップ認識に関す. とを示唆している.. る研究領域の全体像を把握するためにも,ここ. こうした問題点を説明するためには,リーダ ーが所属している集団ないしは組織に目を向け る必要がある.つまり,リーダーシップを認識 して影響力を受け入れるフォロワー側に視点を 向けた「フォロワー主体の研究視点」によって 組織や集団の業績の差を検討する必要がある. フォロワーに研究の視点を定めると,議論され. ではあえて経営学の枠にこだわらず,若干なが ら社会学や心理学も含めたレビューを行いた い.. レビューに際しては何を基準に整理するかが 問題になるが,本論文はフォロワーのリーダー シップ認識を研究課題にするため,その認識を 何に求めるのか,そのアプローチ毎に分けて行.

(4) 138. 横浜国際社会科学研究. (754). いたい.そのため本論文では(1)資質, 行動, (3) EQ, (4)状況, (5)情報処理,. 第10巻第6号(2006年2月). (2). Mann. (6). (1959)のレビュー("AReviewofthe. Relationships. between. Personality. and. 社会構成主義の6つのアプローチに分けて行う.. Performance. 以下,アプローチ毎に順次論じていくこととし. Bulletin,Vol.. よう.. た研究結果を用いたメタ分析を行った.. (1)資質によるリーダーシップ認識. は資質とリーダーシップの有効性の間に関係が. リーダー主体の研究視点で行われた初期の研. in Small. Group,". 56, No. 4, pp.. psychological. 2411270)で使用され Mann. 見られないと指摘し,その後のリーダーシップ. 究のように,フォロワー主体の研究視点におい. 研究に大きな影響を与えることになった研究の. ても資質からフォロワーのリーダーシップ認識. 一つだった.しかし,. を説明するアプローチが取られている.リーダ. 男性に典型的か女性に典型的かを表わす「男ら. ー主体の研究硯点では,リーダーの特定の資質 と集団の業績の因果関係を扱ってきたことに根. しさ-女らしさ」,そして「支配性」がり丁ダ. Lordたちのメタ分析では,. の資質と集団の業績の因果関係を見出すことは. ーシップ認識を高めることを指摘している. (2000)の研究は, Judge and Bono 5つの性 格特性とリーダーシップ認識の関係を扱ってい. できなかった.. る.. 本的な問題があった.そのためリーダーの特定. こうした批判から,. (1998). SmitbandFoti. 5つの性格特性は, る「外向性」 「開放性」. Big. Five尺度とも言われ. 「情緒不安定性」. 「誠実. は,リーダーシップを認識させる資質の存在を. 性」そして「調和性」からなる.中西部のコミ. 指摘している.. Smithたちは245名の男子学部生 「知性」,そして「有能感 に対して「支配性」,. ュニティ・リーダーシップ・プログラムに参加 し,上司,部下の質問紙への回答が得られたビ. (望んだ結果を出すために必要なことを上手く. ジネス及び行政のリーダー14名をサンプルに,. 行うことができるという本人の期待)」の測定. 性格特性とリーダーシップ認識の関係を検証し. を行った.このうち分析対象となった160名の. た.このうち「調和性」. 男子学部生を4人グループに分けた.. 1名は, 3つの変数すべてにおいて高い人物が含. 「調 ーダーシップの構成次元と関係しており, 和性」 「外向性」がフォロワーにとってリーダ. められた.グループ毎にロゴを組み立てる作業. ーシップを認識させやすい性格特性となってい. を45分間行わせ,その後メンバー間の評価によ. ることを明らかにしている.. 4人のうち. 「外向性」が変革型リ. リーダーシップ認識にリーダーの性別の違い. って,もう一度同様の作業を行うことになった とき,リーダーとして好ましいメンバーは誰か. が影響を及ぼすことがある.例えば,. を評価してもらった.その結果,. and. 「支配性」,. Taggar. Neubert. (2004)は製造・組み立てに従事す. 「知性」,そして「有能感」の3つの変数のいず. る237名からなる18チームを対象に,インフォ. れも高い人物がリーダーとして選ばれることが. ーマルなリーダーとして認識される人物につい ての研究を行っている.その結果,インフォー. 多かった.この結果はリーダーの特定の資質と. フォロウニのリーダーシップ認識の間に関係が 見出せたことを意味している. またLord, De. Vader,. and. Alliger. (1986)は,. リーダーが備える特定の資質とフォロワーのリ. マルなリーダーとして認識された男性の場合に は, 「誠実さ」, 「感情の安定性」,そして「チー ム内のネットワークの中心的な位置」といった 変数が高かった.一方,女性の場合には, 「全. ーダーシップ認識についてのメタ分析を行って いる.メタ分析とは,統計的に分析が行われた 複数の研究を収集し,異なる角度から比較した. 般的な知性」が高くなるとインフォーマルなリ. り,統合したりする分析を指す.. 定することは,フォロワーが男性のリーダーに. Lordたちは. ーダーとして認識される傾向にあった.男性の 場合には誠実と認識されることや,感情的に安.

(5) (755). リーダーシップ(薄羽). 139. 対して抱く一般的な期待となっており,これら. ックに必要とされる資質が変わることもある.. の変数の高い人物がインフォーマルなリーダー として認識されやすくなる.一方,女性は「全. つまり始めのうちは,リーダーだと思っていた. 般的な知性」が高い人がリーダーとして認識さ. とがありうる.こうした点に疑問が残る.. 人物でも,次第にそうではなかったと気づくこ. れやすいのも,女性の場合には知性が平等主義 の手段として使われることが多いとフォロワー が期待するためである.男性の場合には,知性. (2)行動によるリーダーシップ認識 組織や集団は多くの人々の協働によって成り. が他者を支配するための手段として使われると. 立っている.協働する中で,集団内で何らかの. フォロワーに思われやすく,そうした性別によ る遠いが資質とリーダーシップ認識において見. 活動を行っている人物をリーダーとして認め,. られるとNeubertたちは指摘している.. た研究は以前からも行われてきた.古典的な研. こ・つ. ・び. ]つノ・く した結果は,資質が集団の業績に直接結. そのリーダーの働きかけを受け入れる.こうし 究では,. Hollander. (1974)の特異性一信頼理. のではなく,資質がフォロワーに. 論がある.ある人物が突如として集団や組織の. -ダーシップを認識させやすくなるという意 味で従来とは異なっている.しかしながら,資. 中からリーダーとして選ばれるわけではない. 集団の規範や基準に従う「同調性」と,集団の. 質からリーダーシップ認識を説明するこうした. 主要なタスクに貢献することで,集団にとって. アプローチは,少なからず次のような問題点を 抱えていることを指摘しておきたい.. 有益な人物であるという「有能さ」を示すこと. と E5 I. lつ. ・リ. 第1に,ある資質を持っている人物をリーダ. からフォロワーのリーダーシップ認識が始ま る.この2つに関する行動を行っていく中で,. ーとみなし,その資質を対人影響力として認識 するのであれば,資質を持っていない人は,永. 変革や革新的な活動を行うために必要なメンバ. 遠にリーダーとして認識されないのかという疑. 有能さが集団のメンバーに認識され,メンバー. 問が生じる.第2に,誰もが既存研究で指摘さ. との間に信頼が蓄積された時に,その人物は初. れるような資質を多かれ少なかれ備えているは. めてリーダーとして影響力を発揮することが可. ずである.その資質によってリーダーシップを. 能になる.. ーからの信頼を蓄積していく.そして同調性と. 認識させやすくなるか否かは,程度の問題であ. また,行動とフォロワーのリーダーシップ認. る.つまりメンバーの中である資質が相対的に. 識は最近においても,変革型リーダーシップと. 高いと判断された人がリーダーとして選ばれる ということが考えられ,フォロワーの相対的な. の関係から議論されている.例えば, Charbonneau (2004)は,フォロワーに対して. 認識に大きく左右されることになる.仮にメン. リーダーシップ認識を生じさせる4つのリーダ. バーの間で相対的に資質が高い人がリーダーと. ー行動を検証している.. して認識されるのであれば,全員が特定の資質. 的な説得」,. の高いメンバーによって集団が構成される場合. 「相談」,そして「協働」である5).軍隊におい. や,全員が特定の資質が低いメンバーで集団が 構成される場合のようなメンバー間に差異がな. て少なくとも2名の同僚間評価でリーダーとし. い場合においては,誰もリーダーとして認識さ れないということになるのかという疑問が生じ. 181名による質問紙調査によって検証が行われ た.その結果, 「合理的な説得」と「インスビ. る.第3に,当初からフォロワーがタスクを遂 行する上で必要な資質を理解しているわけでは. レーショナルな主張」を高度に行う人物がリー ダーとして認識されやすいことが明らかになっ. ない.タスクを遂行していくうちに,ダイナミ. ている.. 4つの行動とは「合理 「インスビレーショナルな主張」,. て特定された人物80名をサンプルに,その同僚.

(6) (756). 140. Newcombe. 横浜国際社会科学研究. and. Ashkanasy. (2002)は,リー. 第10巻第6号(2006年2月). のプランニング・スキルを測定後,ランダムに. ダーが行う業績評価内容(ポジティブ/ネガテ. 55グループに分けた.続いてリーダーの持つプ. ィブ)と,リーダーの表情(業績評価内容と表 情の-敦/不一致)が,フォロワーのリーダー. ランニング・スキルに影響を与えると思われる 「タスクの複雑 「メンバーの考え方の多様性」,. シップ認識に与える影響について研究してい. 性」,. る.. Newcombeたちは男性2名,女性2名の計4. 名のプロの役者を雇い,シナリオに沿ってポジ ティブな業績評価フィードバックとネガティブ. 「状況の変動性」が操作された7).各グル. ープには,業績低迷に直面する自動車会社のス トーリーを読んでもらい,再建のためのビジネ. なフィードバックをフォロワーに返す演技を行. ス・プランの策定作業を行わせた.プラン策定 後には,誰が作業中にリーダー的な役割を果た. わせた6). 4人の役者の演技は,それぞれ異なる. していたかなど,質問紙への回答によってデー. 業績評価フィードバックと表情の組み合わせで. タが集められた.. 4本のビデオとして撮影された.これらのビデ オテープを複数の学部生のクラスで合計537名. プランニングが要求されるタスクの複雑性が高 い状況では,配慮行動を取ってもリーダーとし. に見せ,リーダー(役者)がフォロワー(学部. て選ばれる可能性は高まらなかった.むしろタ. 生)に対して行う業績評価の内容と,リーダー. スクの複雑性が高まるほど,プランニング関連. の表情の一致・不一致が,フォロワーのリーダ. の構造作りを行う人がリーダーとなりやすかっ. ーシップ認識(リーダーの脅威や魅力といった 関係)に与える影響の検証が行われた.分析の. た.第2に,メンバーのタスクに関する考え方. 結果,第1に,ポジティブな業績評価フィード. い場合には,他のどんな状況のときよりも,よ り配慮行動を示す人がリーダーとして選ばれる. バックを行うリーダーは,ネガティブな業績評 価フィードバックを行うリーダーよりもフォロ ワーによるリーダーシップ認識の評価が高かっ た.第2に,ポジティブな業績評価をポジティ. Martaたちによれば,第1に,. が多様なグループで,しかも状況の変動性が高. ことが多かった.これは配慮行動がストレスの 多い状況下でメンバーをまとめる方法となって いたためだった.第3に,リーダーのプランニ. ブな表情で返すといった言行一致で示すリーダ. ング・スキルは,プランの質の向上に影響を与. ーの方が,フォロワーによるリーダーシップ認. えるが,リーダーとして選ばれることとは関係. 識の評価が高かった.一方,ネガティブな表情. なかった.これは,フォロワーはリーダーを選. でポジティブな業績評価を行うリーダーは,最 もフォロワーの評価が低かった.これらの結果. ぶ際に,プランニング・スキルの必要性を認識. はリーダーの言語メッセージと表情で表わされ る非言語的メッセージ間の合敦がフォロワーの. ニング・スキルの保有よりも実際の行動を取る 方が,フォロワーのリーダーシップ認識を高め. リーダーシップ認識に影響を与えることを示し. ることを示唆している.. 危機的な状況で自己犠牲行動を取るリーダー. ている.. しかしながら,単に行動のみではリーダーシ ップ認識に対する説明力は乏しい.行動が特定 の状況と合わさることによってフォロワーのリ ーダーシップ認識に影響を及ぼす. Leritz, and Mum ford (2005)は,. することがないためだった.この結果はプラン. Marta,. 195名の学部. は,フォロワーのリーダーシップ認識(カリス マの帰属8)および組織へのコミットメント)を Holladay, Kazama, 岳める. Halverson, and Quiaones. (2004)の研究では,リーダーの自己. 犠牲行動の有無,危機的状況の有無において異. 生を対象に,リーダーの持つプランニング・ス. なる架空の冷凍食品会社に関する4つのストー. キルがフォロワーのリーダーシップ認識に与え. リーが使用された9).学部生とMBA学生147名. る影響を検証している.この実験では,学部生. をサンプルに,. 4つのグループに分け,それぞ.

(7) (757). リーダーシップ(薄羽). 141. れのグループに1つずつ架空の冷凍食品会社の. が有効となるのは,その行動が行われた前後の. ストーリーを読んでもらい,その中で出てきた. 文脈など様々な要因に影響を受けるはずであ. リーダーについてのリーダーシップ評価を行わ. る.. せた.これらを分析した結果,第1に,安定し (のストーリー)の方が,フォロワーのリーダ. (3) EQによるリーダーシップ認識 また最近では心の知能指数を指すEQ. ーに対するカリスマの帰属や組織のコミットメ ントが高かった.第2に,リーダーの自己犠牲. (Emotional lntelligence)から分析を行う研究 が行われるようになっている. 「自分 EQとは,. 行動は,リーダーに対するフォロワーのカリス. 自身及び人間関係を効果的に管理する能力」10),. マの帰属や組織へのコミットメントを高めてい た.第3に,リーダーの自己犠牲行動は,安定. 「感情的な情報を受け入れたり,理解する能力」. した状況と比べて危機的状況の方が,フォロワ. 定義される.. ーによるカリスマの帰属や組織のコミットメン トが高かった.しかし,安定した状況では自己 犠牲行動を行っても,フォロワーの日からリー. 共感)がフォロワーのリーダーシップ認識上で. ダーの個人的な利益のために自己犠牲行動を行. の自主活動チームに分け,約9ケ月間MBAコー. っていると見なされ,カリスマの帰属は高まら. スのプログラムにチームで参加してもらった.. なかった.. 各メンバーのスキルや能力である「共感」. た状況(のストーリー)よりも危機的な状況. 上述してきた一連の研究は,既存のリーダー. (wolff,Pescosolido,. Druskat,. and. Wolffたちは,. EQ. 2002)として (この研究では. 間接的に影響を与えることを指摘している. 382名のフルタイムで仕事を持つMBA学生を48. 知スキル」. 「他のメンバーの視点の理解」. 「認 「他の. なリーダー行動はないということの反省を踏ま. 「集団のタスク調 メンバーの支援/能力開発」 整」については,プログラムが開始されて2週. え,状況との適合性から議論を展開している.. 間の内に測定された.また3ヵ月後には,それ. しかしながらリーダー行動からフォロワーのリ. ぞれのチームの中でリーダーと思われる人物を. ーダーシップ認識を説明しようとするこのアプ ローチも若干の問題点を含んでいる.. 2名選んでもらった.その結果,能力とフォロ. 主体の研究視点で批判されてきた普遍的に有効. 第1に,フォロワーに対してリーダーシップ. ワーのリーダーシップ認識は表1で見られるよ うな相関関係が得られた. Wolffたちはこの結. 認識を高める行動を取っても,それはフォロワ. 果を図1で示されるようなリーダーシップ認識. ーがその行動に気づくか否かに依存している.. モデルとして提示している.. またこのことは同時に,同じリrダーの行動に. 対してフォロワーがどんな意味づけをするかに. は次の通りである.まず始めに,他者の理解を 意味する「共感」が高くなれば,他人のことを. よっても異なり,解釈によっても左右されてし. 理解する上で分析能力を持っているとフォロワ. まう.第2に,リーダニの行動がフォロワーの リーダーシップ認識を高めるのか,それとも状. ーに認識される.そのため他のメンバーの考え や感情,視点を理解してくれる「他のメンバー. 況がフォロワーに対してリー女-シップ認識を. の視点の理解」が高くなる(.20**).また同時. 高めるのかは明らかではない.どちらが主でど. に共感は,タスクに関しても用いられる分析能. ちらが従かば嘩昧である.第3に,複雑な現実. 力と考えられる.つまりメンバーを理解するに. の組織を考えると,実験室実験で得られたよう な統制されたある一部のリーダー行動だけを取. は,メンバーを分析する能力が必要となる.そ. り出して,それがフォロワーのリーダーシップ. タや情報に関して分類パターンを見つけ出す 「認知スキル」にも応用されることになる(.25. 認識を高めるとは思われない.ある特定の行動. Wolffたちの説明. して,その分析能力は無秩序でランダムなデー.

(8) 142. 横浜国際社会科学研究 第10巻第6号(2006年2月). (758). 表1リーダーシップ認識モデルの変数間の相関関係(N-347). 共感 認知スキル. 標準偏差. ー ∩)4. 0 97. 0. 0 54. .. 0 57. .. 23. 0 3ー 0 4ー. 1.00. 0 60 .. 0. 20** 19**. 0 37 .07. インフォーマルなリーダーとして .07. の投票/認識 *. o.5水準で有意. Wolff,. *. Pescosolido,and. *.01水準で有意 Druskat (2002) p. ,. *. ば. *. oo. 7. タ."I. 集団のタスク調整. .」3. 25**. .〇〇ばo. 他のメンバーの支援/能力開発. 共感緋キル′{Q-Oo㌫ の理解 /能力開発 の授票/認織 ′{1b-Oo'z'#集顎スクよ,'1 -I= .00.0-が.I. 他のメンバーの視点の理解. 辛均. 516. l. -ニーー・TT. -+享二二≡≡ T. WolfE, Pescosolido,and. Druskat. (2002),p. 518を一部省略. 図1共感とリーダーシップ認識のプロセス・モデル. **).この「認知スキル」及び「他のメンバー の視点の理解」という2つの分析能力は,他の. 解してくれることがリーダーシップ認識に直接. メンバーを理解する「共感」より由来するため,. が間接的にフォロワーのリーダーシップ認識に. この2つが高くなるとメンバーの支援を行う 「他のメンバーの支援/能力開発」につながる. 影響を及ぼしている.そして見える次元のリー. 結びついたと説明している.この研究は,. EQ. ダー行動を通じてフォロワーの中に直接的にリ. (.27**:.16**).メンバーを支援することは,. ーダーシップを認識させていることを示してい. 共に効果的に作業を行う上での集団の活気づけ. る.. につながり「集団のタスク調整」を向上させる. Kellett, Humphrey,. and Sleeth. (2002)もまた,. ことになる(.12*).既存研究でも指摘されて. 他人の感情を理解したり,他人のことを自分の. きたように,他者の支援を行ってくれる人より. 経験のように理解する「共感11)」と,フォロワ. ち,タスク関連の活動を行う人がリーダーとし. ーが感じる「複雑なタスクに取り組むリーダー の姿勢」がリーダーシップ認識を生じさせるこ. て認識されやすいことからも,. 「インフォーマ. とを指摘している.. Kellettたちは学部生及び院. ルなリーダーとしての投票/認識」に直接的に 影響を与えることになる(.14**).この中でも,. 生168名をランダムに3人グループに分け,. 注意すべきは「他のメンバーの硯点の理解」が,. 階で作業を行わせた.作業1では,. 「インフォーマルなリーダーとしての投票/認. 3人が同じテ. 識」に直接結びついていたことである(.13**).. ーブルで作業するものの,各メンバーは,比較 的複雑性の高いタスク(新製品のマーケテイン. Wolffたちはこの点について,. グなど)か,比較的複雑性の低いタスク(郵便. MBA学生の40%. が米国以外の国籍だったため,他者の視点を理. 2段. ラベルのコピーなど)を24のリストから自由に.

(9) (759). リーダーシップ(薄羽). 選ぶことができ,選んだ作業を40分間行うもの. を与える要因として,. となっている.この研究では個人作業ではあっ. 関する要因」. たが,メンバーを同じテーブルで作業を行わせ. ダーの個人的な能力及び特徴」の3つが得られ. たのも,メンバー同士で誰が複雑性の高いタス. た.. 143. (2)チームで行う複. 「集団の規範に関する要因」. 「リー. 「集団のコンテクストに関する要因」とは,. クを選んだかを見ることができることを狙いと 50分間に したためである.続いて作業2では, (1)作業1の結果につい 渡って3人グループで,. 「集団のコンテクストに. 集団がステークホールダーから唆味なフィ-ド バックを得たとき,リーダーがとまどう集団の. てのチームの報告書作成, 雑なタスクの選択, (3)新製品の企画書やキャ. 感情マネジメントに従事することである.例え. ッチコピー作り,倫理の向上への提案などにつ いてのブレーンストーミングを行わせた.こう した一連の作業の中でリーダーとして各メンバ. コンサートが始まったときに,聴衆の反応がい. ば,セミプロのジャズグループのケースでは,. つもと異なっていた.そのためメンバー間で戸 惑いが生じていた.その時,メンバーの一人の トランペット奏者が独りで聴衆側に歩み寄り,. ーが認識した人物についての質問紙への回答を 求めた.この回答の分析の結果,第1に,共感. 独奏を奏で,いつものような雰囲気に戻すこと. がリーダーシップ認識と正の関係になってお. ができた.. 「集団の規範に関する要因」とは,メンバー. り,フォロワーによるリーダーの共感の評価が 高くなるほど,リーダーシップ認識も高くなっ. が集団内で感情をあらわにすることを認めた. ていった.第2に,複雑なタスクに従事しよう. り,自由に感情を表すことができる規範を作る. とするリーダーほど,フォロワーのリーダーシ. といったリーダーが集団の感情マネジメントに. ップ認識も高くなった.これは複雑なタスクに 従事しているリーダーは,そのタスクをこなす. 従事することを指す.例えば,大学の女性ボー. だけのスキルを備えているとフォロワーは推測. 優勝を思い描いてチーム内で盛り上がるという. し,リーダーシップ認識を高める傾向にあると. 楽観的な雰囲気に満ちていた.しかし,そうし. Kelle仕たちは説明している.. た期待とは裏腹に8チーム中6位に終わり,チー. トクラブのケースでは,競技会が始まる前には. 集団の感情(エモーション)マネジメントを. ムの雰囲気は暗くなり,加えてリーダーとなっ. 効果的に行う人物がリーダーとして認識されや. ていたチームのキャプテンが突然泣き出した.. すいことをPescosolido. 「地元のライバルには勝った」と他のメンバー. にしている.. (2002)の研究は明らか. Pescosolidoは,セミプロのジャズ. たちが励まし始めたときから,チームの雰囲気. グループと大学のボートクラブを対象に,フィ. が好転し始めた.全員が互いに励ましあったこ. ールド調査とインタビュー調査を行った.イン. とが,チーム全体を立ち直らせることとなった.. タビューでは過去6ケ月間で生じたチームにま. これを機にチームでは定期的に経験した出来事. つわる「重大な出来事」について, 重大な出来事につながったのか」,. 「何がその 「その時,誰. が誰に何を行い,何を言ったのか」に質問を限. に対して,個人が自由に感情を表すようになっ た.. 定して行った.また集められたデータはグラウ. そして最後の「リーダーの個人的な能力及び 特徴」は,リーダーの個人的なカリスマと共感. ンデッド・セオリー法12)によって分析された.. の両方を示すことによって集団の感情マネジメ. その結果,集団の中でインフォーマルなリーダ. ントに関与することを意味する.例えば,別の 男子ボートクラブのケースでは,標準体重以下. ーとして選ばれた人々は,メンバーの感情に何 らかの形で影響を及ぼしていることが明らかに なった.そしてこれらのメンバーの感情に影響. の軽量級チームと,背が高くまた腕力もある重 量級のチームがあった.軽量級チームのリーダ.

(10) 144. (760). 横浜国際社会科学研究. 第10巻第6号(2006年2月). な人事部門の仕事において,リーダーである部. -は,条件が違えども重量級のチームを競争相 手と考えることや,レースの重要性をメンバー. 長の行った脱ルーティンな仕事の進め方にフォ. に対して説いて回った.そして相手チームより. ロワーがリーダーシップを認識していることを. も数フィートもリードされているという事実よ. 指摘している.. りも,むしろ数ヶ月前よりも近づいているとい. 一方で,人事部と警察組織というコンテクス トが大きく異なるものの,示唆に富む研究が. う事実をメンバーに訴えた.重量級チームを競 争相手と考えさせたことは,同じ軽量級の他の. Bryman,. Stephens,. and. a Campo. (1996)によっ. 「危機」や「予測不可能性」. チーム以上にメンバーたちを懸命に取り組ませ. て行われている.. ることとなった.加えて楽観的な姿勢や重量級. が伴う比較的ノン・ルーティンな状況では,仕. チームに勝てるといった説得は,メンバーたち. 事の方向性を示したり,資源を仕事に合わせて. が簡単に諦めたくなるときにも活動を持続させ. 配分する「用具的なリーダー行動」に対して,. ることとなった.以上,感情マネジメントに関 する3つのカテゴリーがセミプロのジャズグル. フォロワーがリーダーシップを認識しやすいこ とを指摘している.広域をカバーする大規模な. ープと大学のボートクラブの調査において,デ. 警察署の警察官43名,狭いエリアをカバーする. ータから浮かび上がってきた. EQはその概念的な唆昧さや,測定において 古典的に使用されてきた人間関係指向のリーダ. 小規模警察署の警察官37名,計80名へのインタ. ー行動とオーバーラップがあるといった問題点 もある.ここではそうした細かな問題点よりも,. てコード化し分析が行われた13).そして会話の 中で13次元のリーダー行動と関連する語りを行. アプローチそれ自体の問題点を指摘しておきた. った人数が集計された.その結果,第1に,響 察官たちが優れたリーダーシップとして最も多. い.第1に,仮にEQがフォロワーのリーダーシ. ビュー調査を行い,インタビュー中に出てきた 被験者の会話を13次元のリーダー行動に基づい. ップ認識に影響を与えるとしても,フォロワー の感情はリーダーに影響を受ける以前に,職務. く言及したものは,どうすれば仕事がうまくい. や他のメンバーとの人間関係などの他の要因に よっても影響を受けているとも考えられる.そ. に資源を割り与える「用具的リーダー行動(47 名)」だった.第2に,無能なリーダーシップに. うしたときにリーダーのEQを支援したコンテ. ついては,. クストを抜きにした説明では説得力に欠けてし. が最も言及されていた.. まう.第2に,感情のように合理的に説明のつ. た結果に対して,被験者である警察官は,群集. かないものを扱うとき,感情を左右する判断基 準を伴うはずである.ある部分までは合理的な. の暴動や立てこもりのような状況に遭うため日 常業務以上に指示やコントロール,資源の効果. 説明ができたとしても,別の部分では各個人の. 的な配分に対する「用具的なリーダー行動」の. 性格特性や文化的な特性に左右される.個人の. ニーズが高まるためだと説明している.第3に, 理想のリーダーに関しても, 78名が「用具的な. 内面と外面との相互から検討する必要がある.. くのかの方向性を示し,その課題の達成のため. 「用具的リーダー行動の欠如(31名)」 Brymanたちはこうし. リーダー行動」について言及していた14).現場 (4)状況によるリーダーシップ認識 リーダーシップ認識を状況から説明するアプ. の警察官たちは「危険」と「予測不可能性」を 伴った仕事に就いており,コミュニケーション. ローチは,状況がいかにリーダーシップ認識に 影響を及ぼすのか,その促進要因と阻害要因を. の良さがこの2つの要因を減らしてくれること. 扱ってきた.この分野では例えば,小野(2001). ことがリスクを最小化してくれる方法だと考. の研究は,比較的ルニティンな仕事になりがち. え,ノン・ルーティンな状況下では用具的なリ. になる.そのため絶えずコントロール下にある.

(11) (761). リーダーシップ(薄羽). -ダー行動を取る人物に対してリーダーシップ を認識する傾向にあった. 様々な状況がフォロワーのリーダーシップ認. 145. 596名を対象に -ビス機関101の作業グループ, コンテクスト(組織構造,集団主義,危機)が リーダーシップ認識に与える影響を検証してい. 識を促進するが,最も頻繁に議論されてきたの. る.この研究では被験者に対して業務関連のプ. が危機的状況とリーダーシップ認識である. Pillai (1996)は危機的な状況がフォロワーのリ. ログラムに参加してもらい,それぞれのプログ. ーダーシップ認識を促すことを指摘している. この研究では学部生96名に対して試験を行い,. 問紙調査によって行なわれた.. この試験が成績に反映されることが伝えられ た.実際にはこの試験の結果は,ランダムに半 分の学生に対して低い得点をつけ,残りの半分 「危機的な状. ラムで上司に対するリーダーシップの評価が質 Pillaiたちの発見. は,第1に,有機的な組織構造がリーダーシッ プ認識を促していた.有機的組織は双方向のコ ミュニケーションを促したり,命令というより もアドバイスや集団レベルで相談を行うため,. 況」と「危機的ではない状況(安定した状況)」. リーダーは問題解決上の相互作用に従事する機 会に恵まれていた.そのためフォロワーにとっ. を作るために操作されたものだった.学生たち. て,リーダーシップ認識を促しやすくなってい. はこうした事実は伝えられずに,試験の点数の. た.第2に,集団主義のコンテクストもまたリ. み知らされた.加えて試験の成績に応じて6名. ーダーシップ認識を促していた.集団主義の強 い作業グループは,相互依存や協働,共有に対 する価値観を持っており,フォロワーはそうし. の学生に対しては高得点をつけ,. からなる16のグループに分け,グループ・ディ. スカッションを通じたプレゼンテーションの評 価が,その後の成績評価に反映されることが伝. た価値観を埋め込むリーダーを認めていた.第. えられた.まず始めに各グループでリーダーを. 3に,危機のコンテクストはリーダーシップ認. 選んでもらい,続いてそれぞれのグループに対. 識を高めることにはならなかった.むしろフォ. して企業の倫理上の意思決定に関するケースに ついてのディスカッションを行わせた.ディス. ロワーの間で危機やストレスが高まると,リー ダーのカリスマ性に関する認識を低下させる傾. カッションで決定したことをクラスでプレゼン. 向にあった.但し,これは単に危機がフォロウ. テーションした後,リーダーは別のところに移. ニb7)ニダーシップ認識を低下させるという意. 動させられた.この間メンバーはリーダーにつ. 味ではない.危機的な状況にあるときに,リー. いてのリーダーシップ評価を行った.分析の結 栄,第1に,安定した状況よりも危機的な状況. ダーは大胆で果断な活動を取らない人物だとフ. の方がリーダーの「カリスマ15)」の評価は高か. ーダーが招いたとみなされると,フォロワーの 抱くリーダーシップの判断基準(カリスマ的基. った.第2に,危機的状況の方が安定した状況 よりも測定したカリスマの平均値が高かった. 第3に,危機的な状況,安定した状況とも両方 において取引型リーダーシップ16)の評価に有意. ォロワーにみなされる.また危機それ自体をリ. 準)に合わないものと考え,リーダーシップ認 識が低下することを意味している.. コンテクストが現在の-)二女二に対するフォロ. な差はなかった.こうした結果にPillaiは,フォ. ワーの認識に影響を及ぼすことが既存研究では言. ロワーが危機的状況を体験することでリーダー シップについて考えるきっかけとなり,結果と. われてきたが,コンテクストが次のリー女二の選. して危機的状況では,リーダーの「カリスマ」. 摘している.. がリーダーシップ認識を高めることになると説. ル・プレイングによる実験が行われた.このロ. 明している.. ール・プレイングでは,被験者である学部生た. Pillai and. Meindl. (1998)は,政府系保健サ. 出にも影響を与えることをEmricb. (1999)は指. 58名の学部生をサンプルにロー. ちはユーザー・フレンドリーなコンピュータを.

(12) 146. (762). 横浜国際社会科学研究. 第10巻第6号(2006年2月). 開発するプロジェクトのコーディネーターとし. 状況がない場合には,何がフォロワーに対して. ての役割を担い,新たにプロジェクトのリーダ. リーダーシップ認識を促すのかという疑問が浮. ーの採用を行うという設定になっていた.コー ディネーター役の学部生たちには,これまでチ. かび上がる.危機が去っ.た後には,リーダーヘ のニーズも下がるのであれば,リーダーシップ. ームにいたリーダーに関する情報と,新たに採 用するリーダー候補者について, 32の説明項目. 認識を生じさせる次なる要因は一体何なのか.. が与えられた. 32項目中,その半分の16項目は. ムを通じて仕事がなされるためリーダーシップ. リーダーシップと関連したもの,残り半分の16 項目はリーダーシップと無関連のものである.. は不要となるのか.状況以外で何がフォロワー. 続いて, 58名の学部生中29名は,チームの業績. るのか,こうした点は扱われていない.第2に,. の低迷,コンフリクトの存在,メンバーの低い. 状況もやはりフォロワーの認識次第である.第. モチベーションなどといった,トラブルに直面 した不安定な状況に置かれた集団に責任を負う. 三者から見たときには危機的な状況にあるにも. コーディネーター役が割り当てられた.残りの. に乏しいこともある.外部の人であれば,誰が. 29名の学部生は安定したコンテクストに置かれ た集団に責任を負うコーディネーター役が割り. 見ても倒産は明らかなのに,その会社の内部の. 当てられ,コンテクストの操作が行われた.分. ときには手遅れになっていることも,現実の企. 析の結果,第1に,不安定なコンテクストの集. 業組織の中では少なくない.同様にこのことは,. 団に責任を負うコーディネーターは,安定した. リーダーシップもフォロワーによる認識に大き. コンテクストに置かれた集団に責任を負うコー ディネーターよりも,同じリーダー候補者でも. く左右されることを示している.そのためフォ ロワーの認識構造や認識プロセスを探る必要が. より好意的に評価していた.第2に,不安定な. ある.. さらには危機が去れば,マネジメント・システ. に対してリーダーシップを認識させる要因とな. 関わらず,当事者であるフォロワーは危機意識. 従業員はいつものように業務を行い,気づいた. コンテクストの集団に責任を負うコーディネー ターは,無意識のうちに以前のリーダーが実際 に行っていたリ-ダーシップ関連行動を,リー. (5)情報処理によるリーダーシップ認識 リーダーがある資質やEQを備えていたり,. ダー候補者がより多く行ってくれると思いがち. ある行動を取ることや状況がフォロワーのリー. だった.特に重要なのは,コンテクストがコー. ダーシップ認識を促すことは確かだろうが,そ. ディネーター役である学生のリーダーシップ認. うした資質やEQ,行動,状況はフォロワーに. 識に対して,影響を及ぼしていたことである.. よる認識に大きく左右される.つまり,どれほ. 以上の研究はフォロワーが特定の状況を認識. どリーダーがフォロワーのリーダーシップ認識. した時,その特定の状況がフォロワーに対して. を高めると思われる行動を取っても,また第三. リーダーを探すように心理的に影響を与えるこ. 者の目から危機的な状況に置かれていると見え. とを示している.しかし,状況がリーダーシッ. ても,そうした行動や状況はフォロワー当人の. プ認識を促進するのは確かだが,やはり課題も. 認識に大きく依存している.特に,認識の中で. 残されている.第1に,危機的な状況や特定の. も何らかの変化を起こす要因がなければ通常は. 状況がない場合には,リーダーシップは認識さ. 無意識のうちに処理され,リーダーシップが認. れないということになる.上記の研究結果では. 識されたり,されなかったりする.こうした認. リーダーシップは安定したものではなく,その 時々において生じることを示唆している.する. 識はフォロワーが組織の中に持ち込む(リーダ. と1つの疑問として,危機のない状況や特定の. てくる.この判断基準は研究者によって以下で. ーに対する)個人的な判廟塞毎によって異なっ.

(13) (763). リーダーシップ(薄羽). 147. 述べるような,暗黙のリーダーシップ論,感情. 接し,過去の人間関係から生じる経験や,感情. 転移,帰属プロセス,そして認知プロセスなど,. を現在のリーダーとの人間関係に転移させるこ. 様々な言葉で示される.フォロワーは自らが持. とである.. つ判断基準に基づいて,リーダーに関する情報 を集め,記憶し,思い出したり,他の情報と統. 対して何らかの感情転移,. 合するといった処理によって,リーダーシップ. れに沿って判断していることを指摘している.. を認識することになる.. Maccbyはコンサルティングの経験から感情転 移の種類として, 「父親型」 「母親型」 「兄弟な. Eden. andLeviatan. (1975)は,学部生及び院. Maccobyはフォロワーがリーダーに. Edenたちの言葉で 言えば,暗黙のリーダーシップを持ち込み,そ. 「父親型. 生235名を対象にした調査から,フォロワーは. いしは姉妹型」の3つを指摘している.. 自身の内面にリーダーシップを判断する基準,. の感情転移」は,部下(フォロワー)の心の中. つまり暗黙のリーダーシップ論を抱いており, それに基づいて判断していると論じている.. で上司(リーダー)に対する過大評価が生じ, すすんで命令に従うといった気持ちを生じさせ. Edenたちは架空の食品製造工場に関する説明 を学生たちに行い,そこに出てきた監督者のリ. るものである.また「母親型の感情転移」は, 無条件の愛情を注いでくれる人物としてリーダ. ーダーシップの測定を行わせた.しかしながら この食品製造工場に関する情報はほとんど与え. 「兄弟ないしは姉妹型 ーをみなす転移になる. の感情転移」は,役割やルール,報奨,権威と. られておらず,足りない部分は「自分のイメー ジに基づいて判断するように」と指示が出され. いったもののはっきりしない兄弟姉妹のような 関係を上司に対して抱くことである.このこと. た.. は仕事それ自体において,上司の助けがなくと. Edenたちの主な関心は,通常の質問紙調. 査で行われるような情報が豊かな条件下で得ら. も自分一人や同僚と行うことができ,上司の手. れたリーダーシップの因子構造と,この実験の. 助けを不要と考えてしまうことでもある.. ように情報が少なくフォロワーが抱く暗黙の前. Maccobyによればこうした感情転移は,リーダ. 提に基づいて回答を行う場合にリーダーシップ の因子構造がどう違うかにあった.結果として,. ーが男性であろうと「母親型の感情転移」が生 じることや,逆にリーダーがフォロワーに対し. リーダーに関する情報がほとんどないにも関わ. て何らかの感情転移を生じさせることがあると. らず,フォロワーがリーダーシップの評価を行. 指摘している.そして同じリーダーに対しても. うことができ,しかもその結果がオハイオ州立. フォロワーによって別々の感情転移のタイプも. 研究等で得られた結果と同じ因子構造を持って. 生じる.. いた.このことから,フォロワーはリーダーシ. また認識に至るまでのプロセスも議論されて Calder. (1977)は,フォロワーの中にリ. ップに関して「暗黙のリーダーシップ論」を抱. いる.. いており,それによってリーダーシップの評価. が左右されることを指摘した.. ーダーシップが段階的に認識されることを指摘 している.これは因果関係の帰属プロセスとし. フォロワーが暗黙のうちに抱くリーダーシッ プは3種類に分けられることがMaccoby (2004). て,フォロワー自身がリーダーシップに関して 直接知ることのない段階から,リーダーシップ. によって指摘されている.. を帰属させるまでの中間に存在する4つの段階. MaccobyはFreudが. 患者の精神分析療法を行っていく中で発見した. からなる.第1段階の「観察」では,フォロワ. 「感情転移」の概念をビジネス・シーンに用い て,フォロワーのリーダーシップ認識を説明し. ーが日にする重要なリーダーの行動を観察した り,目に付かない行動に関して推測を行う.疏. ている.感情転移とは,フォロワーがリーダー. く第2段階の「証拠となる行動の受容」では,. のことを自分にとって重要だった人物のように. 実際にフォロワーが目にしたリーダーの行動や.

(14) 148. (764). 横浜国際社会科学研究. 自ら推測した行動を,リーダーシップの証拠と して受け入れたり,拒否したりする.第3段階 の「情報の評価」では,フォロワーがこれまで 集めてきたリーダーシップの証拠となるリーダ ーの行動やその結果と,仮説立てたそれらを比 較することで,リーダーシップの証拠に関する. 第10巻第6号(2006年2月). に渡ってダイナミックに変化するリーダーシッ プ認識モデルを提示している.ここでのコンテ 「組織文化」,. クストとは,. 「リ. 「タスク特性」,. ーダーのパーソナリティ」, 「フォロワーのパー ソナリティ」の4つであり,この4つのコンテク. 情報を評価する.そして第4段階の「バイアス. ストがリーダーシップを認識するフォロワーの 判断基準に影響を与えるものとなる.そしてこ. によるリーダーシップ認識」では,これまでに. れらの要因の相互作用によって変更されること. 形成してきたリーダーシップに関する先入観に. を前提にしたコネクショニスト・モデルを提示. よって,リーダーシップを認識することになる.. している.しかし,. 認識はフォロワーの関心が初めて向けられて 開始されることをCalder. (1977)の帰属プロセ. Lordたちのこの研究は,他. の実証研究で得られたデータからの仮説モデル. スは教えてくれるが,一方で見えないリーダー. の提示にとどまっている. 情報処理アプローチにおける問題点は,第1. の行動に対してフォロワーが推論を行っている. に,フォロワーは暗黙のリーダーシップ論や感. ことも指摘している.これらの推測について I,ordandMaher (1990)は,フォロワーの中に. 情転移,帰属プロセス,認知プロセスなどのリ. リーダーシップが認識される「自動認知プロセ. ーダーについての情報処理のための判断基準を 組織に持ち込むが,そうした判断基準は一度形. ス」と「統制認知プロセス」の2種類のプロセ. 成されると大きく変わらない固定したままであ. スを指摘している.自動認知プロセスとは,フ. ることを想定している.. ォロワーがリーダーのタスク関連の活動を意識 したり,認識のために何らかの努力や推測をす. 指摘するように,どんな要因が既存の判断基準. ることなく,リーダーシップを認識するプロセ. ように再形成されるのかは明らかとなっていな. スになる.もう一方の統制認知プロセスは,フ. い.第2に,認識の前提にはリーダーに対する. ォロワーがリーダーシップを認識しようと意識 したり,認識のために何らかの努力をしたり,. フォロワーの何らかの期待やバイアスが存在し. リーダーの活動に関しての推測をすることによ って,リーダーシップを認識するプロセスにな る.こうした2つの認知プロセスがフォロワー. の中に存在し,それによってリーダーシップが 認識されることを指摘している. 暗黙のリーダーシップ論や感情転移,帰属プ. Lordetal.. (2001)が. に変更を迫るのか,また新たな判断基準がどの. ている.しかしこうした期待やバイアスはフォ ロワー個人だけでは説明できない.フォロワー が参加している集団の影響を受け,リーダーシ ップ認識が形成されると思われる.こうした他 のメンバーとの関係がリーダーシップ認識に影 響を与えるということに対して検討する必要が J・',ら.. ロセス,そして認知プロセスなどは,リーダー. シップを説明する上で,フォロワーがリーダー に関する情報を処理し,因果を分析するための 判断基準となる.初期の研究では,この判断基. (6)社会構成主義的アプローチによるリーダ ーシップの認識 情報処理アプローチに内在するリーダーシッ. 準が形成された後は,その後も固定したものと. プに関する推論は,フォロワーが個人レベルで. して考えられてきた.しかし,最近ではこの判. 行うものであることを既存研究では想定してき. 断基準に変更を迫る要因の研究も行われるよう. た.しかし,組織や集団に個人が所属している. Lord,Brown, になってきている.例えば, HaⅣey,andHall (2001)は時間やコンテクスト. 限り,推論において他のメンバーとの相互作用 の影響を受ける.. Meindl. (1995)は,フォロワ.

(15) リーダーシップ(薄羽). (765). 149. 一間で作られたリーダーのイメージによって, 個人のリーダーシップ認識が生じることを指摘. 学校において既に退職した校長をリーダーに,. している.フォロワーという社会集団内でリー. ットワークがリーダーシップ認識に差異を生じ させるか否かを明らかにするために行われた.. ダーシップが形成されるという意味で,社会構 成主義的アプローチと言える.社会構成主義と は,真実が客観的に存在するものではなく,社 会的に作られる,つまりそこに参加している. そしてその同僚66名を被験者にして,社会的ネ. ここでの社会的ネットワークとは,同僚同士の 仕事関連の付き合いを意味する「タスク・ネッ. 人々によって作られるものが真実であるという. トワーク」と,同僚同士のプライベートな付き 合いを意味する「フレンドシップ・ネットワー. 前提に立つ見解である.. ク」の2つから構成される.これら社会的ネッ. 人々が組織活動の原因や結果を知的にも,感. トワークを特定するために,組織の全メンバー. 情的にも理解しなければならないときに,因果 関係の中の複雑な相互作用を理解するよりも,. の名前の善かれたリストが被験者に配られ,被 験者同士が互いに相手の名前にチェックを入れ. 理解可能で伝達が容易な人間に求めようとす. たものが近接さとして設定された.これら社会. (1987)は,それがリ. る. MeindlandEhrlich. ーダーシップの実態であると述べている. Meindlたちは, 111人のMBA学生をランダムに 4つのグループに分け,それぞれのグループに,. 的ネットワークによってリーダーシップ認識に. どういった違いが生じるのかが分析された.そ の結果,. 「フレンドシップ・ネットワーク」上. 「強力なリーダー」, 「専門知識を持った従業員」,. の近接さは,リーダーシップ認識(カリスマの 帰属)の類似性と関係しており,頻繁に相互接. 「消費者のニーズの変化といった市場の好転」,. 触を行う人々はリーダーに対して似たようなリ. そして「政府の方針の変更」が強調された4つ のストーリーのいずれかを与えた.ストーリー を読んだ4つのグループは,収益性とリスクに. 「タ ーダーシップ認識を抱いていた.一方で, スク・ネットワーク」上の近接さにおいては頻 繁に相互作用を行っても,リーダーに対して似. 対してそれらに寄与した要因の評価を行うこと. たようなリーダーシップ認識を生じさせること. が求められた.その結果,収益性とリスクにお. にはならなかった.この結果は,. いて,強力なリーダーによるリーダーシップを 強調したストーリーを読んだグループは,他の. ップ・ネットワーク」がリーダーシップに関す る認識上で類似性を生じさせることを示してい. 3つのストーリーを読んだグループよりも,収 益性の評価が高く,またリスクの評価が低かっ. る.. た.加えて同じ業績であっても,リーダーシッ プによってその業績を説明したストーリーは,. 「フレンドシ. 2つ目の実験では,ビジネスコースの基礎講 座に参加している3つのクラスの学生計138名に 対して,教員のリーダーシップに関する長期に. 他のストーリーと比べてリーダーシップを高く. 渡るフィールド調査が行われた.この基礎講座. 評価しがちだった.. は3つあり,それぞれ異なる教員(A,. またPastor, Meindl. and. Mayo. (2002)は,フ. B,. が担当している.質問紙調査は講座が始まって. ォロワー間で構成されている社会的ネットワー クがリーダーシップ認識,さらには組織内への. 第4週目,第10週目,第15週目と合計3回に分け. リーダーシップ認識の伝播に重要な役割を果た. 会的ネットワークの特定と教員のリーダーシッ. していることを指摘している.. Pastorたちの研 究はメンバー間のネットワークと,リーダーシ. プ評価が行われた.. ップ認識・伝播の関係を明らかにするために2 つの実験を行っている. 1つ目の実験は,警察. 社会的ネットワーク(タスク・ネットワーク,. て行われ,実験1と同様の方法で学生同士の社. 分析の結果,第1に,最初の実験と同様に,. フレンドシップ・ネットワーク)の近接さが高. C).

(16) 150. 横浜国際社会科学研究. (766). 第10巻第6号(2006年2月). い場合,つまりフォロワー同士が頻繁に接触す. らかにされていない.フォロワー間に何らかの. る場合には,フォロワーが抱くリーダーシップ. 同質的なリーダーシップを生じさせると思われ. 認識に類似性ないしは均質性を生じさせてい. るフレンドシップ・ネットワークの特徴や要因. た.特に授業以外の学生間のプライベートな接 触を指す「フレンドシップ・ネットワーク」が. があると思われるが,こうした点は残された課. 高いときに,リーダーに対する認識の類似性を 生じさせていた.. 第2に,社会的ネットワークの近接さは,時 間の経過とともにリーダーシップ認識(カリス. 題と言える.. Ⅳ.アプローチの背後にある「個別フォロワー のリーダーシップ認識」と「フォロワー間 のリーダーシップ認識」 前節までにレビューしてきたフォロワー主体. マの帰属)を収赦させるように影響を与えてい 「フレンドシップ・ネットワーク」 た.中でも,. の研究視点による既存のリーダーシップ研究. では,時間の経過とともにリーダーシップ認識. は,同じフォロワーの視点からでもリーダーシ. の類似性に収赦が見受けられた.これはフォロ. ップ認識において,大きく2つに分けることが EQ,状況,情報 1つは,資質,行動,. ワーが参加する社会的ネットワークの中で,他. できる.. のフォロワーと相互に接触を続けるうちに,当 初抱いていたリーダーシップ認識を変えてい. 処理アプローチで見たようにリーダーシップを. 普,フォロワーの間でリーダーに対する認識の. 独で行うというものである.ここでは「個別フ. 判断が簿似化・均質化していくことを意味して. ォロワーのリーダーシップ認識」と呼ぶことと. いる.しかし「タスク・ネットワーク」は,義 期の相互作用を通じてもリーダーシップ認識に. したい.. 収欽が見られなかった.これらはフォロワー間. したように,フォロワーがリーダーシップを認. のインフォーマルな相互作用の中でリーダーシ. 識するのは,フォロワーが所属する集団や他の. ップが認識されるという社会的プロセスの存在 を示唆している.. メンバーによって影響を受け,フォロワー間で. 社会構成主義的アプローチにもまた,いくつ. 認識するのは,あくまでもフォロワー個人が単. もう1つは,社会構成主義的アプローチで示. ● ●. ●. ●. ●. 認識するというものである.ここでは「フォロ ワー間のリーダーシップ認識」と呼ぶこととし. かの課題も残されている.第1に,既存の社会. たい.以下これらのリーダーシップ認識観につ. 構成主義的アプローチにみるリーダーシップ研. いて述べていくこととしたい.. 究は,フォロワー集団内の相互作用がリーダー. ●. リーダーシップ認識に関する実証研究の多く. シップ認識に影響を与えることを明らかにして. は,フォロワーが個人レベルでリーダーシップ. いるが,集団間のリーダーシップ認識の遠いが. を認識する「個別フォロワーのリーダーシップ. 明らかにされていない.つまり,同じリーダー. 認識」という次元で捉えてきた.そのためフォ. の下に,インフォ-マルな複数の集団が存在す. ロワーがリーダーシップを認識する特定の個別 要因(資質,行動, EQ,状況,情報処理)を. るはずであり,そうした集団Aと集団Bでは, pastoretal.. (2002)の言葉を借りれば,フレン. ドシップ・ネットワークが異なるはずである.. 探ってきた.しかもそれぞれの個別要因におい ても,資質の中でもどの資質が,また行動の中. そうしたネットワークの違いがリーダーシップ. でもどの行動に対してフォロワーがリーダーシ. 認識に異なる影響をもたらすと思われる.そう した点は着手されずに残されている.第2に,. ップを認識するのか,フォロワーはどんな情報 処理メカニズムによってリーダーシップを認識. なぜ集団内で1つのリーダーシップ認識へと収. するのか等から,フォロワーのリーダーシップ. 赦していくのか,その理由や収欽プロセスは明. 認識を扱ってきた.つまり,フォロワーが個々.

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