病理的背景をもつ精神遅滞児の発達特性の様相 : ダウン症候群幼児の事例を中心として
9
0
0
全文
(2) . 病理的背景をもつ精神遅滞児の発達特性の様相 - ダウン症候群幼児の事例 を中心として -. 後. 1. 藤. 守り小笠原. 詠. 子. 問題の所在. 北海道における 障害児保育の動向をみると, 幼稚園, 保育所に受 け入れられて いる 障害 児 は, 年々増加の傾 向にあり, さらに, その在園期間も長期 化してきている ことが指摘されて きている ) ) 85( ) ) 85(b c 9 98 0 81 978 97 (後藤;1 , このため, 幼稚園, 保育所での , 19 , 19 ,1 ,1 , 19 , 1985(a 視されて きて いる. 表1 ますます重 げる意味でも が障害 する指導効果をあ 児に対 指導のあり方 , は, 障害児保育の動向を明らかにするために, われわれ が資料を集積したものを整理したものの- 部である が, 表から明らかなように, いずれの調査年度においても, 精神遅滞, 情緒障害, 言語障 害の3つの障害種別に分類される幼児が全体の約8割を占めていること が指摘される. 言語障害に 分類された幼児のうち, ことばの発達のおくれの子 ども (言語発達遅滞児) の場合, その遅れの背 景に, 精神遅滞や情緒障害の問題をもつ子どもも考えられるの で, 精神遅滞, 情緒障害の種別に分 類される幼児の割合はもっと高いこと が推測される. これらの障害種別の中でも, 精神遅滞の占め. る割合は極めて高い, 特に, 保育所においては精神遅滞児の受 け入れ数 が急速に増加の方向にあ 5%が精神遅滞児で占められて り, 昭和58年度では保育所で受 け入れている 全障害児のうち, 45. いる, これらの子 どもたちのもつ精神遅滞の背景にはさま ざまな負の要因 が関与しており, 一様で はない が, その中でも比較的, 病理的背景の明らかな ダウン症候群の幼児の占める割合 がかなり高 いこと が明らかにされている. このことは, 障害児保育にかかわる保育関係者がダウン症候群の幼 児と, 保育のかかわりをもつ機会 が, 今後ますます多くなることを意味しており, 本症例に関する 深い理解が求められている.. 表1 障害種別による入園幼児数. 誌濠 逮,響{視覚障害 幼稚園. 聴覚障害 肢体不自由 精神遅滞 巨言 甜降青 情緒障害 そ の 他. 昭・48. 9( 8 ) 7 ,. 4( 3. 4 ). 昭・53. 1 ) 5( 6 ,. ) 4( 1. 3. 昭・58. 保育所. ( ) 内は%. 計. 26.7 ) 3 25(21,6) 31( ) 31 9 7( .. ) 116(100,0) 5( 4 .3. 2 1 4 ) 105(34.5) ) 93( ) 65( 2 9( 9,5 3 0, 6 .. 3( 1 ) 304(100,0) .0. 4 3 ) 5( ,. 4 ) 523(100.0) 4 15( 2 ) 1 2 9 ) 54(10.3) 143(27.3) 125(23.9) 148(28.3) 23( 9 5( , , . 4 ) 6( ,6. 1 26 0 ) 4( 3 ) 131(100.0) ) 29( ) 40(30.5) 34( 1 9 2 2. 1 3( . , .9. 昭・48. ) 5( 3 8 .. 昭・53. ) 2( 33 9 4( 1 4 4 ) 19( ) 9 3( 3 4.3 ) 44(16.2) 9 ) 12( 7 . .0 .5 .. 昭・58. ) 4( 0 8 ,. ) 9( 1.9. ) 271(100.0) 2 7( ,6. 4 ) 476(100.0) ) 94(19.7) 35( 7 17 6 1 ) 216(45.4) 84( 34( 7 , . , 117.
(3) . 後藤 守・小笠原詠子. ダウ ン症候群は染色体異常という病理的背景をもっ た1つの疾患である 医学 心理学の分野で . , の研究も多く, 保育担当者にとってもなじみのある障害であるが 障害児保育の分野では 保育経 , , 験の中で断片的にダウン症児の発達の様相を把えるにと どま っており その意味ではその事例の域 , を越えるま でには至 っていない, この問題 の解決の方向のひと つ として ここ では ダウ ン症児の , , 個々の指導事例を位 置づ ける枠組を提供すること を目的にし その第一段階として 保育所に入所 , , しているダウン症児 に関する発達検査や生育歴 に関する資料を詳細に分析する中で これまでダウ , ン症児の特性として指摘されてきたことが らを検証 していきたい, また ダウ ン症候群の幼児が , , 他の障害をもつ幼児と比較して, どのような発達特性をも っているかを類型 的視点から資料を分析 し, その様相を明らか にしていきたい,. 11. 方. 法. ( 1 ) 対象児群の構成 本研究で分析の対象となった幼児は札幌市 内の保育所に在園しているダウン症候群の幼児35名 と合併症を伴 っていない精神遅滞の幼児36名 で いずれの幼児も児童相 談所と医師による診断が ,. なされている. ダウ ン症候群児群 (以下, D群という) の資料収集時の年齢は2歳3ヵ月か ら5歳 , 平均年齢は3歳6ヵ月 である. 一方, 非ダウン症候群 児群 (以下, ND群と いう) は比較対照群として, 合併症等の病理的背景の直接認められない障害幼 児から構成されてい. 5 ヵ月 の範囲にあり. る, 資料収集時の年齢 は2歳7ヵ月 から5歳9ヵ月 の範囲にあり 平均年齢3歳1 0ヵ月 である, , ( 2 ) 調査資料の構成. 資料は対象児の発達の様子を明らかにするため に, 次のような項目から構成さ れている. { 1 )心理 判定, 医学的診断の結果,( 2 )発達検査の成績, ( 3 )保育所での行動観察資料, ( 4 )専門機関での治療・ 訓練の状況, ( 5 )生育歴, { )家族の状況 6. 本論文ではこれらの項目のうち,( 2 )発達検査の成績, ( )生育歴の項目, の資料を中心に分析を進 5 める, ここでは遠城寺式乳幼児分析的発達検査 が用いられている, また 生育歴では妊娠中 出産 , , 時の異常の有無, 出生時の体重, 首のすわりの時期 話しはじめの時期 歩きはじめの時期 病歴 , , , について分析を加えること にする, ( 3 ) 分析方法 資料は全て, ダウ ン症候群児群 (D群) の生育歴上の特徴的傾向や発達特性を明らかにするため に, 対照群 (その他の障害児) と比較し, 分析 が進 められる. 発達検査の成績 に関する分析ではそ れぞれの発達尺 度別 に比較分析を進め, あ わせて 尺度 間の ば らつ きと各尺度 か ら成る発達 プロ フィ ールの様相を明らかにするため に最大差の算定と プロフィ ールの類型を次のような手順で決定. する. { ) 最大差の算定:遠 城寺式乳幼児分析的発達検査の6 つの尺度のそれぞれの成績のうち 最も i , 高い発達指数 (以下, DQという) を示した尺度と最も低い成績の尺度との差 により算定する 算 . 定 は全て発達指数をもと に行なわれる, ( ) 発達類型の分類 i i それぞれの子 どもの発達特 性の様相を明らかにす るために 次のような手順で類型化が行なわれ , 118.
(4) . 病理的背景をもつ精神遅滞児の発達特性の様相 る.. 全尺度のDQの数値から平均を算定し, それぞれの尺度の成績を プロフィ ール化した 図にそ のDQの平均値の線を書き入れ, プロフィ ールの凹凸の様子がわかるよう にする. さらに, 平均部 ①. 分に幅をもたせるために, DQの平均値に±5を加え, その数値の線を図1のように書き入れる, 図1 発達類型の分類図. : 淫溌 運動機能 特性群 関係行動 特性群. ←DQO. 義 -5 値. 十5. DQ,。. 移 動 運 動 手 の 運 動. ” ). (). ←う. 二 ( ). Gり. ラ. ←適)ー密封. ( 口 )+鉾 り B型. 基本的生活習慣 対 人 関 係 発. 語. 言 語 理 解. 発達類型. ィ謝 繁灘 (. ② 6つの発達尺度のうち, 移動運動, 手の運動, 基本的生活習慣の3つの尺度を便宜的にひと つにま とめ, 運動機能特性群とし, 対人関係, 発語, 言語理解の3つの尺度を関係行動特性群とし. てひとつにまとめ, これらふたつの特性群の間に図1のように境界線を書き入れる, ③ 以上のような手順で分割すると図のような形で6つのブロック が作れるわ けである. この6 ブロックの組み合わせから, 次の5つの基本型が決定される, ( a ) 運動機能優位型 (図の◎と( 二 )の ブロックの数値が最も多いもの, 以下, M型とよぶ. ) ブ b ( ) 部分突出型 (図の”)と( 二 )の ロ ックの数値が最も多いもの. 以下, Du型とよぶ. ). ( c ) 中心均衡型 (図の( )と的の ブロックの数値が最も多いもの, 平均 値士5線上のもの は全て 口 ブ ( )と的の ロ ックに入れ算定される. 以下, B型とよぶ, ) 口 d ( ) 部分陥没型 (図の◎と⑳の ブロ ックの数値が最も多いもの, 以下, Dd型とよぶ. ) ( e ) 関係行動優位型 (図の”)と㈹のブロックの数値が最も多いもの, 以下, R型とよぶ, ). 以上の6つの基本型以外に基本型の数値が同数最大の場合がある, この場合, 両者の特性を生か す形で, たとえばMoB型というように複合型の形で分類する, 以上が定型の プロフィ ールについ. ての説明である が, この類型化で処理しきれないプロフィ ールは全て不定型とする. 尚, それぞれ の類型のもつ意味について は結果と考察のところで分析結果を説明する中でふれることにする,. 1 1 1 結果と考察 1 ( ) 生育歴の特記事項に関する分析 表2は, ダウン症候群の幼児群と, ダウ ン症候群以外の合併症などの病理的背景のない 障害児群 の妊娠中と出産時における異常の有無について調べたものである. x2検定を行なっ た結果, 両群. の間に有意な差 はみられず, 妊娠中および出産時にお ける異常の有無は, 両群において違いはない と い え る,. 表3は, 両群における生下時体重の比較分析結果についてまとめたものである, x2検定の結果, 119.
(5) . 後藤 守・小笠原詠子. 表2 妊娠中・出産時の異常の有無. ( 〕 内は%. 異常の有無 常の有無 \\-\ 異 \ 分析対象. 異常な し. 妊娠時の み 常 異. D.(ダウン症候群児群). ) 13( 37.1. ) 3( 8 .6. N.D,(非ダウン症候群児群). 23( 63 9 ) .. 0. 妊娠時・出産時 時 の み 妊娠時 ・出産時 出産時のみ 常. 異. とも に 異 常. 不. 14( 40 ) .0. 4( 11, 4). ) 1( 2. 9) 35( 100 .0. 9( 25 ) .0. ) 4( 11.1. 0. 36( 100, 0 ). 表3 両群における生下時体重の比較分析結果 時体重( ) g \\一生1a. 2検定 ×. 計. 明. ( ) 内は% 2検定 x. 計. 0~24 99. 2500~2999. 30 00~3499. 3500以上. 不. D.(ダウン症候群児群). ) 8( 22.9. ) 16( 45. 7. 0 2 ) 7( 0.. 3(8. 6 ). 1( 2 ) .9. 35( 1 00.0 ). N.D.(非ダウン症候群児群). ) 2(5.6. ) 12( 33. 3. 33. 3 ) 12(. ) 9( 25.0. ) 1( 2,8. ) 36( 100 .0. 分析対象. N.S.. 明. 8 4 4 8 7 5 , d f=3 P〈0 0 5 .. 5%水準で両群の間には有意な差が認められた, 一般的 に ダウン症候群 の幼児は, 同年齢の幼児に 比べて小柄であると経験的にもいわれてし・る が, このことは生下時においても同様に指摘され得. る, つまり, この表からダウン症候群の子 どもの方 が, 非 ダウン症候群の障害児よりも小柄に生ま 8名)の幼児が2,500g れてきていることがわかる, 特に, ダウン症候群児の場合, 全体の22.9%(. 未満の未熟児の範囲にあることなどは注目してよいであろう, 表4は, 両群における生育歴に関する調査項目の結果を分析したものである, ここでは, 両群の 「歩き始めた時期」 と 「話し始めた時期」 についてま とめられている. 「歩き始めた時期」 について は, x2検定の結果, 両群のあいだに0.5%水準で有意な差 がみ られた. 表4から明らかなように, 非ダウン症候群児群のほとんどは, 1 8ヵ月 以前に歩行を開始して おり, その分布は一般健常児と. かなり近似しているように思われるのに対して, ダウン症候群児群の方は, 全体の77.1% ( 27名) の幼児 が19ヵ月 以降になってやっ と歩行を開始している. 生下時の体重に関する分析とあわせて 考えると, ダウ ン症候群児の場合, 身体的発達が非ダウン症候群の障害児と比べて遅れがちにある と い う こ と が で き る,. 一方, 「話し始めの時期」 についても同様にx2検定を行なったが, 有意な差 はみられなかった, 但し, 話し始めの時期に関しての度数の分布をみると, 両群とも全体に発現の時期が後方にずれて. いることが指摘される, 一般 に, 歩き始めの時期と話し始めの時期は, ほ ぼ一 致すると経験的にいわれているが, 両群の. それぞれの歩き始めの時期と話し始めの時期を相対的にみてみる と, 両群ともに歩き始めの時期と 話し始めの時期がかならずしも対応した関係になっていないこと がわかる. たとえを, ダウン症候 群児群の場合は, 歩き始めが遅れる傾向があるので, 話し始めも同様におくれることが予想される 表4 生育歴に関する調査項目の分析結果. 画面 検 歩き始め た 時 期 話し始め た 時 期. 120. 獅瀦夏 旨 D.(ダウン症候群児群). 感. ( ) 内は%. 生後0~ 13 ~ 18 19 カ 月 12 カ 月 カ 月 以 後 0. 20 ) 27(77.1) 7( .0. N,D.(非ダウン症候群児群) 11(30.6) 17(47.2). 8( 22 ) ,2. その他・. 計. 2検定 x. 1( 2. 9 ). 35(100.0 ). 0. 36(100.0). x2=25.4448 df=2 P<0.005. 不 ・. 明. D.. 6( 17 ) 10(28.6) 15(42,9) .1. 4( 11 ) 35(100,0) .4. N.D.. 1 ) 7( 9. 4. 19. 4 ) 36(100.0) 7(. 9( 2 5 ) 13(36.1) .0. N.S..
(6) . 病理的背景をもつ精神遅滞児の発達特性の様相. が, 表4の 結 果 か ら み る と, 生 後19ヵ 月 以 後 に 歩 き 始 め た ダ ウ ン 症 候 群 児 は35名 中27名 5名 9ヵ月 以後に話し始めたダウン症候群児は35名中1 ( 77.1%) となっているのに対して, 生後1 42,9%)となっている, このように, 一般的に子どもの発達において歩き始めた時期と話し始めた (. 時期は対応するといわれているのに対して, 障害をもつ幼児の場合はかならずしも対応した様相が み られておらず, 身体的発達とこと ばの発達のア ンバ ランスな発達の様相 がうきぼり にされてい る. しかし, これはあくまでも相対的にこれらの発達的変数を見た上でのことで, ダウ ン症候群の 子どもは, こと ばが遅れやすい傾向をも っていると一 般にいわれている指摘はあたっている, 臨床 的にみても, 構音の明瞭度や言語的表現力 などにおいて, こと ばの指導の必要性を強く感じさせる. 症例であることはまち がいない, そのような押えをした上で, あらためて資料をみてみると, ダウ ン症候群の幼児は小柄に生まれてくる傾向や病弱で風邪をひきやすく, 歩きはじめも遅い子どもに しては話し始めの時期が相対的にみて早いという傾向は, ダウン症候群児群のひとつの特徴的傾向 として捉えてよいように思われる. このことは, 対人関係の問題と深いかかわりを持 っていると思. われるので, 対人関係の発達の様相とあわせて捉えることも必要と思われる. 次節では, これらの こともふま えた上で, ダウン症候群の子どもの発達の様相を発達検査の成績を分析するなかで明ら か に して い き た い,. ( 2 ) 発達検査各領域ごとの成績による分析 表5は, 両群に遠城寺式乳幼児分析的発達検査を行なった結果をまとめたものである, 遠城寺式 乳幼児分析 的発達検査 は, 「移 動運動」 , 「対人関 係」 , 「発語」 , , 「手の 運動」 , 「基本 的 生活習慣」 「言語理解」の6 検査項目よりなっている. この検査では, 分析的に発達をみているため, 全体の発 達指数はでていない, 表5の資料では, 「全項目の平均」 の数値をのせてある が, これはわれわれ が発達の大まかな水準を捉 えるために便宜的に全尺度のDQの平均をと って み たものである, これ らの項目に対して x2検定をした結果, 両群のあいだで有意差があ ったのは 「移動運動」 と 「対人関. 係」 の二項目で, 他の項目では有意差はみられなかっ た. 「移動運動」 の項目で有意差 がみられた のは, 前節の表4の 「歩き始めた時期」 の結果とも対応しており, ダウ ン症候群児の移動運動の発 達が他の精神遅滞児よりも遅れ がちであることを示している, 「対人関係」 の項目に関する両群の. 成績の分布傾向をみると, ダウン症候群児の方が右よりの分布を示しており, DQ76以上 の幼児 が全体の40%に達している. このことは, ダウン症候群 の子 どもたちが他 の精神遅滞児群の子 ど もたちよりも対人関係 が良いことを示していると見てよいであろう,. この遠城寺式乳幼児分析的発達検査の結果を総合的にみてみると, ダウン症候群児の場合, 身体 的発育が遅滞し がちなのと対応して, 移動運動の能力も他の精神遅滞児に比 べて低いこと がわか る, また, 「手の運動」 と 「基本的生活習慣」 では, x2検定の結果, 両群の間に有意差 が認められて いないが, これらの項目の成績の分布状況を見ると, 移動運動の項目の成績とほ ぼ同様の分布状況. を示している. すなわち, ダウン症候群児において は, この 「移動運動」 ,「手の運動」 ,「基本的生活 習慣」 の三項目において全般的に発達の低さを示しており, ダウン症候群児のかかえる発達上の課 題ともなっていると思われる. 一方, 「対人関係」 , 「言語理解」 の三項目においては, 「対人関係」 の項目で有意差 が認 , 「発語」. められ, ダウン症候群児群の対人関係のよさ が示さ れた, ダウン症候群児は一般に, 「愛嬬 があり, 活発で, 人なつ っこい」 とよく言われるが, この発達検査の分析でも対人関係の良好さが裏付けら れたわけである, しかしながら, 「発語」 と 「言語理解」 ということばの発達に関する二項目では, 両群の間に有意な差はみられなかった, すなわち, これらの結果からダウン症候群児群の場合, 対. 121.
(7) . 後藤 守・小笠原詠子. 表5 両群における遠城寺式乳幼児分析的発達検査結果. 声耐 移動運動. 手の運動. 基 本 的. 生活習慣. 対人関係. 発. 語. 言語理解. 全項目の 平 均. 分 析爺 \ご. 計. 2検定 x. 2. 35. 14. 18. 36. x2=17.9020 df=3 P<0.005. 7. 24. 4. 35. 0. 7. 21. 8. 36. D.. 0. 4. 23. 8. 35. N.D.. 0. 4. 16. 16. 36. D,. 0. 3. 18. 14. 35. N.D,. I. 11. 22. 2. 36. D.. 0. 21. 14. 0. 35. N.D.. 5. 17. 14. 0. 36. D.. 0. 13. 20. 2. 35. N.D.. 2. 18. 15. I. 36. D.. 0. 8. 23. 4. 35. N.D.. 0. 6. 29. I. 36. 0~25. 26~50. 51~75. D.(ダウン症候群児群). I. 9. 23. N.D.(非ダウン症候群児群). 0. 4. D,. 0. N.D.. 76以上. N.S.. N.S. x2=14.9606 df;3 P<0.005. N.S.. N.S.. N.S.. 人関係が良好でありながらこ とばがそれにともなって発達していないことが指摘される. ことばの 発達においては, その発達基盤として対人関係を充実させていくことが重要であることを多く の臨. 床家は指摘するわ けである が, ダウン症候群児の場合は対人関係の不安定さを背景にもつ情緒障害 児等とは異なり, この対人関係の充実がす ぐにことばの発達へとむす びついていないこと が課題と してあげられよう, こ の 点を十分押えた上でダウン症候群児のこと ばの指導の方法を検討する必要 があろう.. ( 3 ) 発達類型的視 点からの分析結果 表6は, 遠城寺式乳幼児分析的発達検査項 目間の最大差についてまとめたものである. 最大差と は, すでに方法のところでふれたように, それぞれの障害児にお ける本発達検査の6検査項目の最 高発達指数と最低発達指数 の差 である, 表6は, その最大差を15き ざみで集計し, 作表したもの である, 両群の度数分布に対して x2検定を行なった結果, 5%水準で有意差がみとめられた. 両群 を比較すると, ダウン症候群児群の場合, 非ダウン症候群児群よりも最大差が小さく, ダウン症候 群児は6検査項目間での発達の ば らつきが少ないことがわかる. さ らに, この6検査項目の発達指数の関係を発達類型 におきかえて整理すると表7のよう にな. る. 表7は, 両群の発達検査の結果をわれわれの作成した 発達類型の枠組にそ って分類した結果を 集計したものであ る, x2検定を行なった結果, 両群の間には5%水準で有意差がみとめられた. こ. の両群の間の差は, 非ダウン症候群児群が基本型のM型 (運動機能優位型) 優位であるのに対し, ダウン症候群児群は基本型のM型 (運動機能優位型) とともに基本型のB型 (中心均衡型) が多く 122.
(8) . 病理的背景をもつ精神遅滞児の発達特性の様相. 表6 遠域寺式乳幼児分析的発達検査項目間の最大差. ( ) 内は%. 最大差 \ 分析対豪 ~\\. 0 ~ 15. 16 ~ 30. 31 ~ 45. 46 以 上. 計. 2検定 x. D.(ダウン症候群児群). 1( 2 ) ,9. 17(48,6). 16( 4 ) 5. 7. 1(2, 9 ). ) 35(100.0. N,D.(非ダウン症候群児群). 1( ) 2 .8. 8( 2 2, 2 ). 19(52.8). ) 8( 2 2, 2. ) 36(100.0. x2=8.92942 df=3 P<0,05. 衷7 遠城寺式乳幼児分析的発達検査項日にもとずく発達類型. ミミ (ダウン症候群シ D, 巳群). l o. N.D. (非ダウン症候群皇群). 2 6. M. 基. 本. Du. B. 定. 型. 型. 複. Dd. 1 lワ f t← 0 ^ U Q U. 0. R. 合. 不定型. 型. M,蘭 M・B M・IM R・Du R・B. 計. 2検定 x 2=1 9 8 3 3 9 x , f=1 d 0. UR. l. l. 3. 3. 4. l. 4. 3 5. 2. l. 3. 0. 0. 0. l. 3 6. P<0 5 0 ,. みられることより生じているとい える, 表7の度数の分布状況をみると, 非 ダウン症候群 児群 は 36名中2 6名 が基本型 のM型 ということで, 72%の子どもが運動機能の発達 が優位な発達的様相を もっている, この結果は, 生育歴の分析結果とも対応した結果といえるだろう. これに対して, ダ ウン症候群児群の特徴はむしろ, 基本型のB型 (中心均衡型) にある. 最大差が小さいことなどと あわせ考えると, 各領域の発達に ばらつき が少なく, 運動機能面をも含めて全体的に遅滞が生じて いることがわかる, 類型的には, 健常児のまんべんなく発達している型と同型と考えられ, 発達水 準をぬきにすれば, 基本的な発達の様相は健常児のそれと同様の様相を呈しているとみることがで きる, ただ, 健常児と比べ, 時間がかかって発達すると考えられる. むしろ問題なのは, 全般的に 遅れをもっということから, 指導の焦 点をしぼりきれないという指導上のむずかしさがある. そこ では, 発達全般にかかわったすそ野の広い指導が要求されている, いいかえれ ば, 時間はかかるが いずれはあるところまで発達していくとも考えられ, いかにその遅滞を少なくしていくかというこ. とが指導の焦点となろう, 幼稚園, 保育所では現在, いわゆる統合保育の実践的取組が進み, さま ざまな障害種別の子 どもたちが受け入れられている, それらの子どもたちは, 障害の原因がそれぞ れ異なっていることから, 異なる障害特性を示しているように見られ がち であるが, 発達臨床的立 場からみれば, 発達遅滞児という点では共通していると考えること ができる, その意味では, ダウ. ン症候群の幼児に対する理解を深め, 有効な指導の手だてを検討することは, すべての障害児に対 する指導の基本を考える上で重要であると思われる, 各類型の特徴から障害児の問題を見てみると, 次のようなこと がいえるのではないだろうか,. まず, 今回の対照群となっ た非ダウン症候群の幼児のようなM型の幼児は相対的に見て、 関係行 動系 (対人関係, 発語, 言語理解) の成績より, 運動機能系 (移動運動, 手の運動, 基本的生活習. 慣) の成績の方 が高い幼児である. M型の幼児の場合, 活動の大きさ, 範囲の広さの割に関係行動 系の比重が軽く, 活動の質の深まりに課題を残すといった問題をもつ. これに対してR型の幼児の場合, その類型の特徴から対人関係, 言語関係の成績の高い活動がと. れる幼児であることから, 集団場面での活動や指導者のかかわりを受 けとめ得る素地を形成してい る可能性が高いこと が推定される, 関係的視点から見た場合, 子どものもつ障害による問題は他者 ◆るものと考えられる. したがって、 その障害児がどのような他者 との相互交渉のなかで軽減されう や環境とかかわるかによって子どものもつ問題性は大きく違 ってくるように思われる, また, その. 障害児がどの程度の関係行動 が できるかによ って, 他者との接点の度合 は変わってくると思われ 123.
(9) . 後藤 守・小笠原詠子. る, 発達類型的にいえ ば, R型(関係行動優位型)の発達類型に属する 子 どもは, 程度の差はあれ, 好ましい方向の発達基盤を持っていると言えるであろう, 今回, 分析の中心となったダウン症候群. 児群の場合, このR型の発達類型をも つもの は1名 のみ であるが, R型の複合型である R・Du 型 (関係行動優位部分突出型) とR・B型 (関係行動優位中心均衡型) の幼児 が5名おり, R型への発 展的移行の可能性をもつ幼児がいることは重要である, ダウ ン症候群の子どもの発達類型がR型へ 移行するためには, R型の複合型を生み出す原動因となっ た 「対人関係」 の側面を足 がかりとした 関係行動の広がりが重要なものとなろう,. あとがき 本論文は, われわれが進めてきているいわゆる統合保育に関する研究の取組の一環として進めて きているフィ ール ドスタ ディ の中で得られた資料の一部をまとめたものである, 論文の構成を後藤 が担 当し, 小笠原が執筆を担当した.. 引用文献 1 ( ) 後藤 守・水岡路代・斉藤美智代・山崎晃資・三宅和夫:障害をもつ幼児の保育の実態と指導方法に関する基 礎的研究(1) 97 8 , 札幌市における障害児保育の実態分析を通して. 北海道教育大学紀要, 1 , (第一部 c)第29 巻 第 1 号, 189‐199 .. ( 2 ) 後藤 守:北海道における障害児保育の動向と課題(1) , 幼稚園における保育の実態に関する分析を中心とし て, 北海道教育大学僻地教育研究, 19 (a) 79 第2 6巻第1号 -6 7 . , , 57 { 3 ) 後藤 守;北海道における障害児保育の動向と課題(1 1) 北海道教育大学僻地教育研究 98 0 , ,1 , 第27巻第1 号, 77‐88 ,. ( 4 ) 後藤 守・後藤恵美子:心身障害児の保育に関する発達臨床心理学的接近, 北海道私学教育研究会, 1 9 81 ,研 究紀要第55号, 1 -44 , ( ) 後藤 守・小笠原詠 子:統合保育の動向. 北海道教 育大学紀要, 1 5 9 85(a) , (第一 部 c) 第35巻第 2 号, 101-114 ,. ( 6 ) 後藤 守・小笠原詠 子:北海道郡 部にお ける障害児保育の動向と課題. 北海道教育大学僻地 教育研究, 1985(b) . , 第 39 号 第1 号, 101-111. ( 7 ) 後藤 守・小笠原詠子・井上栄子:統合保育の動向(1 1 ) , 主として精神遅滞児の事例を中心として, 北海道教 育大学紀要, 1 9 ) ( 第一部 ) 85( c 第3 6巻第1号 2 1 2 1 1 c 0 - . , , (後藤 守・本学教授 札幌分校, 小笠原詠子・本学非常勤講師). 124.
(10)
関連したドキュメント
本章では,現在の中国における障害のある人び
式目おいて「清十即ついぜん」は伝統的な流れの中にあり、その ㈲
教育・保育における合理的配慮
ところで、 2016年の相模原市障害者殺傷事件をきっかけに、 政府
在宅の病児や 自宅など病院・療育施設以 通年 病児や障 在宅の病児や 障害児に遊び 外で療養している病児や障 (月2回程度) 害児の自
既存の精神障害者通所施設の適応は、摂食障害者の繊細な感受性と病理の複雑さから通 所を継続することが難しくなることが多く、
イ小学校1~3年生 の兄・姉を有する ウ情緒障害児短期 治療施設通所部に 入所又は児童発達 支援若しくは医療型 児童発達支援を利
なお、保育所についてはもう一つの視点として、横軸を「園児一人あたりの芝生