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市民科学による大阪府のオオクビキレガイの生息調査, 並びに分布の現況

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緒  言

 オオクビキレガイ Rumina decollata (Linnaeus, 1758)は地中海沿岸を原産とするアフリカマイマ イ科 Achatinidae(以前はオカクチキレガイ科ともされてきた)の陸産貝類である(Fig. 1)。日本 では 1980 年代後半に北九州市で初めて確認され,以降西日本を中心に分布を広げる外来生物であ * Corresponding author: [email protected]

DOI: http://doi.org/10.18941/venus.78.3-4_105

市民科学による大阪府のオオクビキレガイの生息調査,

並びに分布の現況

石田 惣

1

*

1大阪市立自然史博物館

A Citizen Science Survey of the Alien Land Snail

Rumina decollata in Osaka Prefecture

– the Methodology and the Resulting Picture of Distribution

So Ishida

1

*

1

Osaka Museum of Natural History, Nagai Park, Osaka 546-0034, Japan

Abstract: Citizen science is a powerful way to survey the distribution of alien species in a broader

area and is effective in promoting public awareness. I conducted a citizen science project to survey the distribution of the alien Decollate Snail Rumina decollata in Osaka, central Honshu, Japan. This species has spread over the Prefecture in recent years. As a first step I set up ‘train station survey’ in which each volunteer selects a train station in Osaka and looks for the snail on foot for 1 hour within a 1-km radius from the station. This survey revealed that the snail inhabits mainly the Senboku area (the northern part of southern Osaka). The next step aimed to investigate in greater detail the snail’s distribution in the Senboku area using the following methods: 1) Grid survey: each volunteer selects a focal grid (conforming to the third-order-unit grid defined by the Statistics Bureau of Japan, ca. 1 km square) and looks for the snail within the grid for 1 hour. 2) Gathering observations from residents: fliers are handed out to municipal elementary school children and library visitors in the Senboku area, or a social networking service is used to gather snail observations from the residents. Integration of the results of these surveys revealed that the Decollate Snail occurred in fifty-one third-order-unit grids in Osaka Prefecture at the end of November 2019. Information from residents indicated that the snail had been introduced between 2000 and 2010 in Osaka and that one probable dispersal route was via gardening or agricultural materials such as soil or seedlings. The train station survey is an effective way to screen a high-density area. Observations were provided continuously for four months by residents who had found out about this project from the fliers distributed to the elementary school children. This suggests that fliers in schools may be effective in collecting observations of alien species.

Keywords: citizen science, invasive alien species, decollate snail, geographic distribution,

museum education program

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る。現在までに千葉県(松隈,2008),愛知県(守谷,2014;川瀬・今泉,2016;木村,2017), 大阪府(石田,2011;柏尾・他,2017;大阪府環境農林水産部農政室,2018),和歌山県(江川・ 玉田,2004),兵庫県(兵庫県農政環境部環境創造局自然環境課,2011),岡山県(福田・江田, 2014;岡山県病害虫防除所,2016),広島県(広島県西部農業技術指導所,2016),山口県(増野, 1992, 2001, 2008, 2018, 2019;保阪,1996),愛媛県(西条自然学校,2013),福岡県(湊・魚住, 1991;奥村・三宅,1993;魚住,1996, 1998;山﨑,2003a, 2003b;松隈・他,2005;松隈,2005, 2007;松隈・武田,2007),佐賀県(松隈・武田,2009),熊本県(松隈・武田,2007),大分県 (松隈・武田,2009)で生息が確認されている。本種は農業被害が知られており,軟弱野菜(岡山 県病害虫防除所,2016;広島県西部農業技術指導所,2016;大阪府環境農林水産部農政室,2018) のほか,根菜類や収穫段階での梅の実への食害(松隈・武田,2009)も指摘されている。また, ウスカワマイマイ(奥村・三宅,1993;福田・江田,2014)など他の陸産貝類を捕食することか ら,移入地によっては在来陸貝への影響も懸念される。これらの影響から,植物防疫法の検疫有 害動物(‘オカクチキレガイ科’ として本種が該当),及び外来生物法の生態系被害防止外来種(総 合対策外来種)に指定されている。  大阪府では 2010 年に堺市の埋立地で初めて確認された(石田,2011)。以降,府南部を中心に 複数箇所で確認されており(柏尾・他,2017),現在分布の拡大期にあると考えられる。現時点で の詳細な分布状況を把握することは,その拡大過程を知る手がかりになり,今後の同種の防除対 策に有効な情報となる可能性がある。  外来生物の分布把握には,市民参加による調査,すなわち市民科学が近年活用されるようになっ

Fig. 1. Rumina decollata. A. Adult shell, Hannan City, Osaka. OMNH-Mo 39079. B. Juvenile shell, Nishi-ku, Sakai

City, Osaka. OMNH-Mo 39069. (Bar = 1 cm) C. Living adult, Sakai No. 7-3 Reclaimed Land, Osaka. (Scale = 1 mm). Numbers prefixed with OMNH-Mo are registration numbers of the molluscan collection of the Osaka Museum of Natural History.

オオクビキレガイ.A:成貝,大阪府阪南市産,OMNH-Mo 39079.B:幼貝,大阪府堺市西区産, OMNH-Mo 39069.C:生時,大阪府堺市 堺 7-3 区埋立地産.番号は大阪市立自然史博物館の標本登録番 号.

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てきた(Delaney et al., 2008; Kadoya et al., 2009; Walther & Kampen, 2017; Morii & Nakano, 2017; 大澤,2018)。市民科学は,広範囲かつ大量の生物多様性情報を収集することに長けている (Silvertown, 2009; Dickinson et al., 2010)。市民科学の調査方法を設計するうえで,参加者の探索や 同定能力の水準を保つことは重要である(Penrose & Call, 1995; Darwall & Dulvy, 1996; Newman et

al., 2003)。成長したオオクビキレガイは殻頂が欠け落ちるなど,特徴的な形態をしており,少な くとも西日本の平野部で出現する陸産貝類とは容易に識別しうる。また,比較的大型のため見つ けやすい。必要な研修プログラムを組み合わせれば,オオクビキレガイの分布把握に市民科学を 適用することは有効であると考えられる。  ただ,オオクビキレガイは大阪府では畑や河川敷,公園など,様々な場所に出現しており,比 較的開けた環境以外に共通する景観要素がない。そのため,大阪府に限定したとしても,潜在的 な生息可能域はあまりに広大である。市民科学的手法で分布調査を行うとすれば,市民が気軽に 参加しやすく,かつ到達点が見えるような方法を工夫する必要がある。  そこで本研究では,調査を二段階に分けて行った。第一段階として,鉄道駅を中心に一定範囲・ 一定努力量で探索するという手法を考えた。鉄道駅は人口密度に応じた粗密はあるものの,都市 の平野部に広く点在する特徴を持つ。鉄道駅を拠点とすることで,本種の生息域のスクリーニン グを期待できる。また,駅を基準とすることで調査済みの地点がわかりやすい,車を使わずに調 査に参加できる,調査の到達点が見えやすい,などのメリットもある。駅を調査単位とする手法 は,関東や関西で行われている鉄道駅でのツバメ営巣調査(渡辺,2013;Osawa, 2015;大澤・和 田,2016)を参考にしたものであり,いずれも広範囲での調査や市民の参加のしやすさなどの利 点が指摘されている。本研究では 2018 年から 2019 年にかけて本手法の調査を行い,まず府内で の分布のアウトラインを把握することを試みた。  続いて調査の第二段階として,前段階の調査で比較的生息密度が高いとわかった地域(泉北地 域)を対象に,重点的な調査を行うことにした。この段階での調査として以下の 2 つの方法を用 いた。1 つは対象地域を基準地域メッシュ(約 1 km 四方)で分割し,市民の協力を得てメッシュ 毎に一定努力量の調査を行うという方法である。もう 1 つは,対象地域の小学校や図書館等に情 報提供を呼びかけるチラシを配布し,住民から生息情報を集めるという方法である。この過程で はさらにウェブや SNS 等を用いて広く情報を収集することも試みた。  本論文では,これらの一連の市民科学的調査により,大阪府で判明したオオクビキレガイの移 入経路や分布状況を報告するとともに,これらの手法の利点や課題についても議論する。

材料と方法

鉄道駅調査  鉄道駅調査は 2018 年 4 月から 2019 年 10 月まで行った。方法は,調査者が大阪府内の任意の鉄 道駅を選び,駅から概ね半径 1 km の範囲を 1 人で 1 時間探索することとした(Fig. 2)。オオクビ キレガイを見つけた場合は標本を採集するとともに,発見地点を記録してもらった。探索後,調 査者には(1)調査日,(2)調査駅,(3)オオクビキレガイの発見の有無,(4)発見した場合はそ の地点,を報告してもらった。国土交通省国土政策局の国土数値情報「鉄道データ」によると, 2018年 12 月 31 日時点での大阪府内の旅客鉄道・軌道の駅数は 589 駅である(Fig. 3A)。  調査は,主に「大阪市立自然史博物館外来生物調査プロジェクト Project A」に登録しているメ ンバー(2019 年時点の登録者数 82 名)に呼びかけて参加を募った。本プロジェクトは 2015 年か ら 2019 年にかけて行ったもので,主に大阪市立自然史博物館友の会会員から参加登録者を募り, 植物,哺乳類,鳥類,魚類,昆虫,貝類など分類群ごとにテーマを設定して,大阪府及び近隣府 県での外来生物の分布調査を行ったものである(石田・他,2020)。鉄道駅調査では参加者の調査

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Fig. 2. Schema of train station survey.

鉄道駅調査の方法の概略図.

Fig. 3. A. Results of the train station survey. Symbols denote all train stations in Osaka. Blue: stations surveyed by

volunteers where the decollate snail was not found. Red: stations surveyed with the snail found around them. White: station unsurveyed. B. Area of grid survey and districts where observations of the snail were gathered from residents. Black-frame grids (conform to third-order unit grid defined by Statistics Bureau of Japan, latitude length: 30 sec. and longitude length: 45 sec., ca. 1-km square) denote the targets, and blue denotes surveys by volunteers (no decollate snail was found by this method). Pale blue: districts where fliers were distributed to all elementary school children (Takaishi, Izumi-Otsu, and Izumi City, 36 schools, ca. 17,900 children). Pink: District that distributed fliers to municipal library visitors (Sakai City, 14 libraries).

A. 鉄道駅調査の結果.シンボルは大阪府下の鉄道駅を示す.青は調査をしたがその周辺でオオクビキレ ガイは見つからなかった駅,赤は調査した結果見つかった駅,白は未調査の駅を示す.B. メッシュ調査 と,住民からの情報募集調査を行った地域.黒枠は対象となった基準地域メッシュ,青はそのうち調査さ れたメッシュを示す(この調査ではメッシュ内でオオクビキレガイは見つからなかった).水色は全小学 校児童にチラシを配布した市(高石市,泉大津市,和泉市),ピンクは図書館でチラシを配布した市(堺 市).

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技術を向上させるため,参加希望者を対象に,調査期間中計 4 回(2018 年 5 月と 6 月に各 1 回, 2019年 6 月に 2 回),オオクビキレガイの探索と同定の研修を大阪府内で行った(Fig. 4)。また, 一連の調査を紹介するウェブサイト(「電車に乗ってオオクビキレガイを探そう」,石田 惣, https://sites.google.com/site/ookubikiregai/,2020 年 4 月 1 日閲覧)を立ち上げ,調査方法,調査済み の駅や発見の有無を随時掲載・更新し,調査参加者に進行状況がわかるようにした。 メッシュ調査  2018 年末までの鉄道駅調査で泉北地域(大阪府堺市・高石市・泉大津市・和泉市を中心とする 地域)に比較的広範囲に分布することが判明した。そこで,この地域を基準地域メッシュ(約 1 km四方)で分割し,各メッシュを分担して調査することで,より精細な分布情報を得ることを試 みた。調査は 2019 年 4 月から同年 10 月まで行った。対象地域は堺市(堺区,北区,西区,東区, 中区),高石市(全市),泉大津市(全市),和泉市(阪和自動車道より西側)とし,該当するメッ シュ数は 183 である(Fig. 3B)。鉄道駅調査と同様に,調査は前述の外来生物調査プロジェクト のメンバーに参加を呼びかけた。調査者は自分で選んだメッシュについて,1 メッシュあたり 1 人で 1 時間探索することとした。調査後,調査者には(1)調査日,(2)調査メッシュ,(3)オオ クビキレガイの発見の有無,(4)発見した場合はその地点,を報告してもらった。また,前述の ウェブサイトで調査済みのメッシュや発見の有無を随時公表した。メッシュ調査の参加者向け研 修は,2019 年 6 月に行った鉄道駅調査研修と兼ねて行った。

Fig. 4. Training of volunteers for collection and identification of the decollate snail. Sakai City, Osaka, 9 June 2019.

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住民への情報提供依頼  泉北地域を中心とする住民からオオクビキレガイの生息情報を提供してもらうため,2019 年に Fig. 5のような A4 サイズのチラシを作成した。チラシではオオクビキレガイの生時の写真と形 態,類似種との識別点,生態に関する情報を載せるとともに,見つけた場合は写真を撮影し,著 者に対して場所情報とともにメール等で送ってもらうこととし,その連絡先を掲載した。提供さ れる生息場所の地点情報は情報提供者の生活圏と重複する可能性があり,これらの情報の取り扱 いには慎重さが求められる。そのため,情報提供者の氏名は本人の承諾のない限り公表しないこ と,生息地点情報は原則としてピンポイントでは公開せず,基準地域メッシュを想定した 1 km 四 方程度のメッシュマップ(または同等の情報解像度)で公開することとした(ただし,公共用地 での分布情報は公開する可能性があるとした)。2019 年 7 月,教育委員会から了解の得られた高 石市,泉大津市,和泉市の全市立小学校に対し,全校児童への本チラシの配布を依頼した。3 市 での合計小学校数は 36 校で,在籍児童数は約 17,900 名であった。また,同じチラシ計約 5,000 部 を堺市立図書館(計 14 館),大阪市立自然史博物館(大阪市東住吉区),西宮市貝類館(兵庫県西 宮市),きしわだ自然資料館(大阪府岸和田市)等の館内に配架し,2019 年 10 月頃まで来館者に 配布した。  さらに,2019 年 4 月以降,著者の Twitter アカウント(@soishida)で断続的に情報募集を告知 した。また,調査活動について 2019 年 8 月に朝日新聞の取材を受け,2019 年 8 月 14 日に同紙デ ジタル版(「外来カタツムリ,いたらメールを 気軽な生物調査いかが」,朝日新聞デジタル, https://digital.asahi.com/articles/ASM875JQXM87PLBJ005.html, 2020年 4 月 1 日閲覧)に記事として 掲載された(紙面での掲載はなかった)。これらを見た一般の市民からの情報提供を受け付けるた め,前述のウェブサイトにメールなどの連絡先を記述しておき,受付窓口とした。この窓口はチ ラシに掲載したものと同じである。

Fig. 5. Flier image asking residents to provide observations of the decollate snail (face and back).

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 なお,情報募集を告知する媒体の効果を測るため,オオクビキレガイの生息情報提供があった 際,こちらから情報提供者に対して情報募集を知ったきっかけを尋ねた。また,生息状況や環境, 見られるようになった時期などの情報が付け加えられている場合は,それらを記録するとともに, 必要に応じてこちらから詳細の追加確認を行った。 地図データ  本論文に示す地図は,国土交通省国土政策局の国土数値情報「行政区域データ(2019 年 1 月 1 日時点)」及び「鉄道データ(2018 年 12 月 31 日時点)」を著者が加工して作成した。加工には QGIS (ver.3.10.4)を使用した。

結  果

鉄道駅調査  鉄道駅調査には 13 名が参加し,大阪府内ののべ 150 駅を調査した(この人数・駅数には著者自 身によるものを含む。また人数には調査研修のみの参加者は含まない)。うち 10 駅は調査が 2 回 以上重複しており,調査駅の実数は 139 駅であった。報告された駅に兵庫県内の駅が 3 駅,京都 府内の駅が 1 駅あったが,上記の駅数にこれらの数は含めていない(いずれもオオクビキレガイ は未発見)。  Fig. 3A に調査駅と結果を示す。駅の近傍でオオクビキレガイが発見されたのは 20 駅であった。 調査の結果,泉北地域の広い範囲,及び大阪市阿倍野区や東大阪市東部からも生息が報告された。 また,この調査では北摂地域(淀川以北)や泉南地域(岸和田市以南)の駅近傍では発見されな かった。 メッシュ調査  メッシュ調査には 7 名が参加し,合計 9 メッシュを調査した(この人数・メッシュ数には著者 自身によるものを含む。また人数には調査研修のみの参加者は含まない)。Fig. 3B に結果を示す。 この調査ではオオクビキレガイを発見したという報告はなかった。 住民からの情報提供  2019 年 7 月のチラシ配布開始から同年 11 月末までに,著者宛にオオクビキレガイを見つけた とする情報提供は 54 件あった。10 月下旬に泉大津市内の同じ公園から 2 件の情報提供があった が,これはその公園で一緒に遊んでいた複数の小学生から別々に情報提供されたものだったため, 1件とみなした。件数の内訳を Table 1 に示す。オオクビキレガイと確認できたのは 44 件で,残 りの 10 件は確定できなかった(2 件)か,別種の誤認(8 件)であった。誤認していたのはアズ キガイ Pupinella rufa (Sowerby, 1864),オカモノアラガイ科 Succineidae,ホソオカチョウジ Allopeas

Table 1. Number of the decollate snail observations from residents in Osaka, other Prefectures, and an

unknown region during the survey period (July to November 2019).

地域別にみた住民からの「オオクビキレガイ」の報告件数(2019 年 7 月から 11 月まで). Osaka

Pref. Other Pref. Unknown region Total Confirmed as Rumina decollata 39 5 0 44 Misidentified as another species or indentification unaccomplished 5 4 1 10

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pyrgula (Schmacker & Böttger, 1891),コハクガイ科 Zonitidae,ナミコギセル Euphaedusa tau (Böttger, 1877),キセルガイ科 Clausiliidae,ナミマイマイ Euhadra sandai communis Pilsbry, 1928 で

あった。オオクビキレガイ 44 件のうち 39 件は写真または標本により本種と確認した。残りの 5 件は電話による情報提供で,形態や生息状況の聞き取りにより本種と判断した。地域別の件数内 訳は Table 1 の通りである。大阪府外からのオオクビキレガイの情報は埼玉県ふじみ野市川崎,千 葉県松戸市新松戸,京都府木津川市相楽,兵庫県伊丹市緑ヶ丘,福岡県遠賀郡芦屋町からの 5 件 であった。  オオクビキレガイの生息環境についての情報を分類すると,住宅の庭・花壇・植え込み(府内 11件/府外 2 件),路上・側溝(同 8 件/1 件),貸し農園(同 5 件/1 件),公園(同 4 件/0 件), 校庭(同 2 件/0 件),畑(同 1 件/0 件),その他・不明(同 8 件/1 件)であった。生息を認識 した時期について,大阪府内での言及は「今年初めて」「昨年(2018 年)」「2,3 年前」「3 年ほど 前」「何年か前」「数年前」となっていた。また,農業資材を扱う店で入手した腐葉土に入ってい た可能性や,ホームセンターで購入した鉢植えの花の土に入っていた,貸し農園の土の入れ替え 後に見られるようになった,などの証言があった(いずれも大阪府内)。  オオクビキレガイの情報募集を知ったきっかけ毎の件数と,その情報提供があった日を Fig. 6 に示す(以下の結果にはオオクビキレガイと確認されたものと,未確定・誤認が含まれる)。全提 供件数 54 件のうち回答は 47 件で得られ,小学校でもらったチラシが 21 件で最も多く,次いでそ れ以外の施設でもらったチラシが 10 件で,チラシは全体の半数(57%)を占めた。小学校でのチ ラシ配布は 2019 年 7 月の 1 度だけだが,情報提供は 11 月下旬まで続いた。その他,自身で検索 して調査ウェブサイトに行き着いたケースが 5 件,SNS で知ったのが 4 件,ウェブ版の新聞記事 で知ったのが 3 件,その他(大阪市立自然史博物館友の会会員からの直接の情報提供,または知 人から情報募集を聞いた)が 4 件であった。 大阪府での分布状況  一連の調査で得られた情報を反映させた,大阪府での 2019 年 11 月末時点でのオオクビキレガ イの分布を Fig. 7 に示す。鉄道駅調査により 22 メッシュ,住民からの情報提供(チラシの配布以 前の情報提供を含む)により 37 メッシュでの生息が判明した。うち 10 メッシュでは鉄道駅調査・ 住民情報提供の両方で生息が確認された。石田(2011)で報告された堺 7-3 区埋立地での 2 メッ

Fig. 6. Dates of provision of decollate snail observations from residents. Dates are shown for each source from

which the residents acquired the information about the survey project. Black circles denote that two or three records were received on the same day. Numerals on the right axis denote the total numbers of observations provided. Arrow indicates the date when the web news about this project was released (the Asahi Shimbun Digital, 14 August 2019). 住民からの情報提供があった日を,住民が本調査活動を知った媒体別に示す.●は同じ日に 2 または 3 件 の情報提供があったことを,右軸の数値は各件数の合計を示す.矢印は朝日新聞デジタルに本調査活動を 紹介する記事が掲載された日(2019 年 8 月 14 日).

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Fig. 7. Integrated result of the occurrence of the decollate snail Rumina decollata in Osaka Prefecture. Each grid

conforms to the third-order unit grid. TSS, grid where the snail was found by train station survey; RO, grid where residents provided observations; TSS + RO, grid containing both types of record. Literature record is an occurrence report from before this project (two grids from Sakai No. 7-3 Reclaimed Land, by Ishida 2011).

大阪府でオオクビキレガイが見つかった地点(基準地域メッシュによる).本研究の結果と過去の文献記 録(Literature record)を統合して示す.TSS は鉄道駅調査で見つかったメッシュ,RO は住民から情報提 供があったメッシュ,TSS + RO はその両方の記録があったメッシュを示す.本研究ではカバーしていな い地点の文献記録として,堺 7-3 区埋立地の 2 メッシュ(石田,2011)を併せて示す.

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シュを合わせると,大阪府内では主に南部の合計 51 メッシュで生息していることが判明した。

考  察

 本研究の開始前より,大阪府内では複数地点で生息することがわかっていたが,分布の広がり は明らかでなかった。今回の一連の調査により,特に泉北地域で広範囲に生息することが判明し た。また,大阪府内での生息微環境や,移入時期・経路に関する情報もある程度得ることができ た。さらに,広く情報募集をする過程で大阪府以外での生息情報も得られた。特に京都府木津川 市相楽と埼玉県ふじみ野市川崎での記録は,著者の知る限りそれぞれの府県から初めての報告と 考えられる。以下に詳しく議論を進める。 大阪府における移入時期と拡散経路  外来生物が孤立,または不連続な分布を示す場合,現地での聞き取り等による情報収集によっ て移入の時期や方法が判明することがある(例えば:増永・他,2005;高野・他,2016)。まず, 今回の調査では大阪府への移入時期についてある程度の推測情報が得られた。住民からの情報提 供によれば,住民がオオクビキレガイを認識した時期は古くて「数年前」であった。大阪府の陸 産貝類相をまとめた松村(2001)は,リストの作成のために集中的に調査をした 1997∼99 年時点 では府内でオオクビキレガイを確認していない。大阪府への最初の移入は 2000 年代以降とみて矛 盾はないものと思われる。ちなみに,府内では 2010 年に堺市の埋立地(堺 7-3 区)で見つかった のが最初の記録であるが,ここで実際に移入したのは 2004∼06 年頃と推定されており,その経路 は覆土が疑われている(石田,2011)。覆土の由来については記録がないため,大阪府の住民居住 圏で見つかっている個体群と同一の起源かどうかは不明である。  本調査の結果,泉北地域では広範囲に生息することがわかった。その範囲は,基準地域メッシュ の個数で評価すると分布範囲の最長辺で 10 km 程度に及ぶことがわかる。オオクビキレガイが自 力拡散する速度は降水条件や植生環境にもよるものの,北アメリカの例では 33.3 ないし 80 m/ 年(Fisher et al., 1980; Tupen & Roth, 2001)と見積もられている。仮に 80 m/年としても,半径

5 kmの範囲を数年で自力拡散することは考えにくい。現在の分布状況に至る経緯を説明するに は,複数箇所への移入や他力的な要因での拡散を想定すべきである。  住民からの情報提供では,園芸用土や苗に実際に混入,もしくはその可能性を強く示唆する証 言があった。本研究より前になされた府内での聞き取りでも,園芸用の土に伴って移入したこと を伺わせる例があった(柏尾・他,2017)。また,今回の調査では府内での生息環境として住宅の 庭・花壇・植え込みが最も多く,次いで路上・側溝,貸し農園,公園と続いていることからも, 府内では園芸資材への随伴により移入・拡散していることが示唆される。同様の例は他県でもす でに指摘されており(松隈・武田,2009;増野,2008),オオクビキレガイの拡散経路として典型 的なものと考えられる。  松隈・他(2005)及び松隈・武田(2009)は,人為的な移動が起きていることを前提として, 福岡県での本種の拡散速度を 3∼4 km/年と見積もっている。泉北地域で類推される拡散速度は, 福岡県での観測例と大きな食い違いはなさそうである。この速度スケールは,今後他の地域に移 入した場合の拡散予測の参考になり得ると考えられる。  なお,園芸資材への随伴以外の拡散経路の可能性も棄却されない。福田・江田(2014)は本種 が用水路などで流されて拡散する可能性を指摘し,松隈・武田(2009)は雨天時に道路や排水溝 に這い出した本種が斜面で流される様子を観察している。泉北地域でも水路を介した拡散の可能 性はあり得る。また,今のところ大阪府で具体的な観察例はないが,福田・江田(2014)は鳥が くわえて運搬する可能性も挙げている。興味深い仮説であり,今後の検討課題である。

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市民科学的手法とその効果  本研究では複数の市民科学的手法を段階的に用いることにより,オオクビキレガイの生息及び 分布に関する情報を得た。まず鉄道駅調査により計 20 駅の近傍での生息が判明し,特に泉北地域 での広範囲な生息状況をつかんだ。また,東大阪市東部での生息は,この調査により初めて判明 した。大阪市阿倍野区での生息情報はすでに柏尾・他(2017)で報告があったが,本調査でも改 めて確認された。鉄道駅を中心として探索する方法は,分布域をスクリーニングして検出する手 法として有効であると考えられる。  一方,この手法には課題もある。駅を中心として調査範囲を設定するため,路線が少ない,ま たは駅間距離が長い郊外では調査対象にならないエリアが生じる。逆に人口密集地では路線が増 え,駅間距離も短くなり,隣接する駅どうしで調査範囲が重複しやすくなる。駅を単位とするこ とで調査努力を広範に分散させる効果はあるが,対象地域内での面積あたりの努力量は均一では ないことに注意する必要がある。また,調査範囲内に生息していてもそれを見つけ出せるとは限 らない。実際に 1 つの駅で 1 回目の調査では見つからず,2 回目の調査で見つかったケースもあっ た。発見されなかった駅の近傍でも未定着とは限らないことに注意しなければならない。  基準地域メッシュを単位として調査する方法は,対象地域での調査努力を均一にする究極の方 法である。今回は第二段階の調査としてこの手法を試みた。しかし,鉄道駅調査よりも参加者数 は少なく,結果として調査できたメッシュ数は 9 にとどまった。実施期間が短かったこともある が,最も大きなハードルは調査メッシュへのアクセスだったと考えられる。鉄道駅調査は例えば 自宅に近い駅を選んだり,どこかへの移動の折りに途中下車して調査することもできる。メッシュ 調査は対象となった泉北地域の近傍に住む人でなければ,調査メッシュへのアクセスに時間がか かってしまう。このことが参加人数の増えなかった大きな理由であろう。  住民に情報提供を呼びかける手法は,チラシ配布地域に伴う場所の偏りは当然あるものの,分 布情報の収集としては一定の成果があった。寄せられた情報のうち 2 割程度に誤同定があったが, オオクビキレガイと確認できる 44 件の分布情報が得られた。全体では,小学校で配布したチラシ に基づく情報提供が 54 件中 21 件を占めた。件数の多さは配布枚数の相対的な多さによると考え られるが,1 度だけの配布にも関わらず,調査活動が 4 ヶ月間も連続的に意識されているのは注 目に値する。学校から配布されたチラシは保護者も目を通すことが多く,家族でその情報が共有 されやすいのかもしれない。さらに,チラシが家庭内で保存される可能性もある。これらの効果 により,調査活動に対する認識が持続するのかもしれない。実際には各学校に同じデザインのポ スターも配布したため,それが校内で掲示されることにより,認識の持続を助けた可能性もある。 いずれにしても,このような生物の分布調査を行う上で,対象地域の学校でのチラシ配布を柱と する手法は高い効果を持つと考えられる。大澤(2018)は,参加する年齢層に応じて使いやすい 調査ツールを提供することが市民科学において重要であると指摘している。同定方法などを紙の 印刷物で提供することは,結果的にこのような低年齢層に適したアプローチでもあったのだろう。 ただし,児童・生徒にも探索や同定が容易であること,調査に危険が伴わないこと,協力を呼び かけることについて教育委員会や各学校の協力が得られること,チラシの印刷費用を確保できる こと,等の条件をクリアすることが必要である。  チラシの効果の持続性に対して,ウェブ版の新聞記事に基づく情報提供が 3 件で,最長でも 2 ヶ 月後(情報入手先不明に含まれていると仮定しても 2 ヶ月半程度)であったことは対照的である。 ウェブ上の情報は日々更新され,急速に埋没していくことを示唆している。これはおそらく SNS でも同様だろう。つまり,ウェブを活用する場合は調査活動の情報発信を継続して行うことが必 須となる。一方,ウェブを介した情報発信は地理的に離れた地域にも拡散する特性がある(大澤, 2018;石田,2019)。大阪府外からの情報提供 9 件のうち,SNS をきっかけとしたものは 2 件, ウェブ版新聞記事は 1 件であった。広範囲に生息情報を集めたい場合には,ウェブの活用は当然

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ながら第一の選択肢となるであろう。また,SNS は調査の主宰者と参加者,参加者と参加者と いった双方向のコミュニケーションを可能にする(大澤,2018;石田,2019)。今回のように同定 結果を情報提供者に伝えたり,情報提供者から生息環境をヒアリングしたりするうえで,SNS は そのやりとりを極めてスムーズにしたという利点は強調されておかねばならない。

 Morii & Nakano (2017)は,北海道でのマダラコウラナメクジ Limax maximus (Linnaeus, 1758) の分布情報を市民から募ったことを報告しているが,地元紙での紙面掲載後,約 8 ヶ月間で 32 件 の情報提供があったとしている。提供件数は掲載後 2∼3 週間程度で急減しているものの,紙媒体 での周知は認識が持続しやすい可能性があるのかもしれない。この点はさらに詳しい分析が必要 である。 オオクビキレガイの影響と今後の方策  オオクビキレガイが及ぼす影響として,農業被害と生態系への影響が挙げられる。前述のよう に本種は野菜への被害が大きい。大阪府の泉南地域では各種作物の作付面積が比較的大きく,今 後,北接する泉北地域からの拡散に注意する必要がある。また,生態系への影響として在来陸貝 の捕食が懸念される。本種が分布するのは比較的乾燥した環境であり,陸産貝類の種数・個体数 はもともと少ないことから,在来個体群への影響は小さいように思われる。しかし,大阪府の場 合は平野部であっても丘陵地や社寺林では陸産貝類の多様度が高く,希少種が生息するところも ある(松村,2001)。このような環境にオオクビキレガイが進出する可能性には十分注意しなけれ ばならず,対策を検討しておく必要がある。  本調査では,大阪府の北部ではオオクビキレガイは発見されなかった。前述したように,これ は調査が及ばずに見つかっていないだけの可能性もある。ホームセンターで売られる鉢植えなど は,当然のことながら仕入れ品の流通網が広域に及ぶはずである。府北部においても,潜在的な 移入リスクを抱えていることには少なくとも留意すべきである。  現在のところ,本種は植物防疫法による検疫有害動物,また外来生物法でも生態系被害防止外 来種の指定にとどまっており,国内の移動については実質的に規制を受けない。本種の拡散を抑 制するための法的な対策には限界がある。移入と拡散を抑制し,分布拡大に伴う影響を最小限に していくために,現状で取り得る方策は普及啓発活動である。例えば早期の段階で移入に気づけ ば,完全駆除は難しくとも増殖を抑え,結果として拡散速度を下げる効果が期待できるかもしれ ない。社会的な理解は行政施策につながる可能性もある。市民科学によるモニタリング活動は, 普及啓発とともに分布状況を把握する機能を併せ持つ。冒頭でも述べたように,対策を立てるた めの基礎情報として分布の把握は重要である。本研究で判明した課題を改善しつつ,今後も継続 的な展開が必要であろう。 謝  辞  本研究の一連の調査では以下の方に参加もしくは情報提供を頂いた:石塚美登里,犬伏エルリッヒ健太 郎,犬伏エルリッヒ麻美子,Sven Martin Ehrlich,岩崎教子,宇田川 真,大古場 正,緒方,河村政広, 木村栄一朗,黒川蒼真,黒川 学,里見 修,下村晴美,高垣正樹,谷田一三,中尾健太朗,中尾 茂, 中条武司,中塚一貴,西山綺音,二瓶和男,菱井忠夫,平井祥之(高石市立羽衣小学校),弘岡和子,堀  建太郎,堀 行志郎,増田静子,三宅規子,味谷真輔,山下雄史,山本かおり,吉川和宏,和田 岳,綿 谷,@mikeusa_jp,その他 34 名の匿名希望の方(敬称略)。チラシ配布では高石市,泉大津市,和泉市の 各教育委員会及び各市立小学校,堺市立図書館,並びにきしわだ自然資料館の柏尾 翔学芸員,西宮市貝 類館の渡部哲也研究員にご協力頂いた。朝日新聞社の杉浦奈実記者には本調査を取材・記事化して頂い た。本稿英文の校閲はフィラデルフィア自然科学アカデミーコレクションマネージャーの華路門ポール氏 の手を煩わせた。また,匿名の査読者 2 名の方には本稿に対して大変有益なコメントを頂いた。記してお 礼申し上げる。本研究は JSPS 科研費(JP17H02027)の成果である。

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Fig. 1. Rumina decollata. A. Adult shell, Hannan City, Osaka. OMNH-Mo 39079. B. Juvenile shell, Nishi-ku, Sakai  City, Osaka
Fig. 2. Schema of train station survey.
Fig. 4. Training of volunteers for collection and identification of the decollate snail
Fig. 5. Flier image asking residents to provide observations of the decollate snail (face and back).
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参照

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