• 検索結果がありません。

東日本大震災後に造成された海岸防災林生育基盤盛土上に出現した植物相および植生

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "東日本大震災後に造成された海岸防災林生育基盤盛土上に出現した植物相および植生"

Copied!
15
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)保全生態学研究 (Japanese Journal of Conservation Ecology) 25 : 249-263 (2020) J-STAGE Advance published date: November 10, 2020 https://doi.org/10.18960/hozen.2009. 調査報告. 東日本大震災後に造成された海岸防災林生育基盤盛土上に 出現した植物相および植生 曲渕 詩織1・山ノ内 崇志2・黒沢 高秀2,* 1. 福島大学共生システム理工学研究科 2 福島大学共生システム理工学類. Investigating the flora and vegetation of a coastal forest soon after mounding and afforestation following the Great East Japan Earthquake Shiori Mabuchi1, Takashi Yamanouchi2 and Takahide Kurosawa2,* 1. Graduate School of Symbiotic Systems Science and Technology, Fukushima University 2. Faculty of Symbiotic Systems Science, Fukushima University. 要旨:東北地方太平洋岸域の海岸林は東日本大震災で大きな被害を受け、現在、かつてない規模で山砂の搬入と盛土 を伴う海岸防災林再生事業が進められている。生物多様性の劣化が懸念されるが、復旧事業直後の生物多様性に関す る研究は乏しい。本研究では松川浦に面した砂洲である福島県相馬市磯部大洲において、施工直後の生育基盤盛土上 の植物相と植生を調査した。造成完了から 3 年以内で、植樹した翌年の生育基盤盛土上は、植被率が低く裸地に近い 相観で、出現率が高かった植物の多くは一般に二次遷移の初期に出現するとされる夏緑性一年草や夏緑性多年草で あった。木本は少なく高木性種はクロマツだけであり、海岸生植物は 3 種類で被度も低かった。帰化植物は侵略的外 来生物を含め 23 種類(帰化率約 40%)であったが、被度は低かった。出現した維管束植物 58 種類には震災前から 林内や路傍で確認されていた種類が多く、生育基盤盛土の材料は砂岩由来で散布体に乏しいと推測されることから、 これらは近隣から侵入したものが多いと思われた。本研究の対象地は限られたものであり、広大な復旧事業地の全域 にわたる生物多様性の研究と知見の集積が望まれる。   キーワード:海岸生植物、帰化植物、生物多様性、復旧事業、福島県相馬市松川浦 Abstract: We investigated the flora and vegetation of a coastal sandbar forest in Honshu, Japan, soon after mounding and afforestation as part of infrastructure reconstruction following the Great East Japan Earthquake. Our objective was to estimate plant diversity following these management practices. The mounds at the study site were characterised by low vegetation and high bare-soil cover, and were dominated by annual or perennial herbs associated with early secondary succession. We found a small number of woody plants and only one tree species, Pinus thunbergii. Three coastal plant species were found, all of which had low rates of cover. Approximately 40% of all recorded taxa were naturalised species (23 taxa), all of which also had low rates of cover. In total, we recorded 58 vascular plant taxa, many of which had been reported from the coastal forest or roadside areas on the sandbar prior to the earthquake. However, the mounding materials comprising sand obtained from sandstone in the adjacent hills probably contained few buried seeds. We suggest that many of the taxa we observed had been transported from neighbouring areas. Since this study was limited to a small area, we suggest that further work is needed to understand fully the effects of the infrastructure reconstruction activities, such as mounding, that were used across eastern Japan following the earthquake. Keywords: coastal plant species, Matsukawa-ura Lagoon, naturalised species, plant diversity, vegetation cover * 〒 960-1296 福島市金谷川 1 福島大学共生システム理工学類 Faculty of Symbiotic Systems Science, Fukushima University, 1 Kanayagawa, Fukushima 960-1296, Japan e-mail: [email protected] 2020 年 3 月 5 日受付、2020 年 5 月 29 日受理、2020 年 11 月 10 日早期公開(J-STAGE). 249.

(2) 曲渕詩織・山ノ内崇志・黒沢高秀. 図 1.宮城県仙台湾南部海岸から福島県相双地域における海岸防災林再生事業地と福島県相馬市磯部大洲に おける大洲国有林内の調査範囲の位置図。図 a の黒枠は b の範囲を、図 b の白線部は海岸防災林再生事業地、 白枠は図 c の範囲を、図 c の黒枠は図 3 の位置、黒丸は調査範囲の位置を示す。. 確保することで津波に対して根返りしにくくすること、. はじめに. 津波の到達距離や浸水深の低減を図るため林帯を幅.  東北地方太平洋沿岸の海岸・平野部は、2011 年 3 月. 200 m 以上とすることを目標としている。この実現のた. に発生した東日本大震災の津波により大きな被害を受け. めに、200 m 以上の幅で地下水位から 2 - 3 m の高さに. た。海岸林では津波により樹木が倒伏、折損、流亡し(田. なるよう生育基盤盛土を行い、主としてクロマツ Pinus. 村 2012;坂本 2012;渡部ほか 2014;富田ほか 2014;. thunbergii Parl. の苗を植林することが望ましいとされた. Sakamoto 2016)、残った樹木も浸水のため樹勢衰退や枯. (東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会. 死が生じ(中村ほか 2012)、特に宮城県仙台湾沿岸から. 2012;村上 2014;平成 26 年度森林・林業白書 http://. 福島県相双地域では高木層がほぼ壊滅状態になった(趙. www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/26hakusyo/zenbun.. ほか 2013;鎌形ほか 2013;環境省自然環境局生物多様. html、2019 年 1 月 14 日参照)。この事業の概略図を図 2. 性センター 2014)。津波によって海岸林の高木が消失し. に示す。この事業は震災以前から海岸林であった場所だ. たことで、海岸林が担っていた防風・防潮・飛砂の防止. けでなく沿岸平野部のほぼ全域におよび(仙台湾沿岸海. および防災などの機能が失われた。これらの諸機能を回. 岸防災林の復旧における生物多様性保全対策について. 復させるため、現在、宮城県仙台湾沿岸から福島県相双. http://www.rinya.maff.go.jp/tohoku/koho/saigaijoho/pdf/. 地域まで約 80 km にわたる沿岸域において(図 1a, b)、. shiryou1.pdf、2019 年 1 月 13 日参照)、2020 年度までの. 林野庁や各県の森林関係の部署によって海岸防災林が整. 完了をめざすとしている(平成 29 年度森林・林業白書. 備されつつある(村上 2017;黒沢 2020)。林野庁が設置. http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/29hakusyo/. した検討会による指針では、樹木の根系の健全な成長を. zenbun.html、2019 年 1 月 13 日参照)。 250.

(3) 海岸防災林盛土上の植物相と植生. 図 2.福島県相馬市の大洲国有林海岸防災林再生事業の概略図。.  これらの海岸防災林再生事業では、世界でも類をみな. 容物の検討から復旧事業により生息環境が劣化した可能. い規模で、きわめて短期間のうちに海岸地形および植生. 性が示されているのみである。植生については、環境省. が改変される。これまでの海岸林の造成は、垣根により. 自然環境局生物多様性センター(2015, 2016)の植生図. 飛砂を堆積させてクロマツを植えるという半ば自然の営. で海岸防災林再生事業地が「造成地」と判読されている. 力を利用した手法であった(太田 2012;佐々木ほか. ほか、高槻ほか(2018)において裸地との表現があるが、. 2013)。これに対し、海岸防災林再生事業では、目的と. 詳細は記されていない。. する植栽基盤を形成するのにこれまでの方法では砂が不.  造成や植林の直後の時点で、生育基盤盛土上にはどの. 足するため、山砂を用いた人為的な盛土が行われる(森. ような植物が生育し、どのような植生が成立しているの. 林総合研究所東北支所 2016) 。生育基盤盛土の主材料に. であろうか。海岸林では一般にハリエンジュ Robinia. は、近隣の丘陵の未固結の砂質堆積物から切り出された. pseudoacacia L. などの外来植物による影響が懸念されて. 鉱物質土壌(以下、 「山砂」と称する)が使用される(村. いるが(林田 2012)、そのような帰化植物が繁茂しては. 上 2015; 小 野 ほ か 2016; 森 林 総 合 研 究 所 東 北 支 所. いないであろうか。山砂を用いた生育基盤盛土が海岸生. 2016)。このような手法による施工はこれまでに例がな. 植物の代替生育地として機能してはいないだろうか。植. く、山砂中に含まれる細粒分や重機による締固めの影響. 林したクロマツ以外に、将来的に林を形成してゆく木本. で、透水不良となり盛土の表面に水が溜まる、土壌の堅. 植物を含む津波以前の海岸林に見られた植物は生育して. 密化により苗木の植え付けに支障が出るなど、想定され. いるのであろうか。これらの問いに答えることは、この. ていなかった問題が生じている(小野ほか 2016, 2020;. ような大規模な海岸防災林再生事業の影響を評価し、よ. 森林総合研究所東北支所 2016;篠宮ほか 2016)。また、. りよい事業の在り方を検討する上で重要である。本研究. 震災前には海岸林、田畑、集落が存在し、震災直後には. では生育基盤盛土の造成完了から 3 年以内で、植樹した. 地盤沈下などの影響で湿地が形成されるなど、沿岸域に. 翌年の 2016 年中に植物相調査と植生調査を行った。ま. は多様な立地環境が存在した(環境省自然環境局生物多. た、同所において震災前と震災直後に行われた植物相調. 様性センター 2014;黒沢 2014;Kurosawa 2016) 。しかし、. 査のデータを活用し、震災前、震災直後、海岸防災林再. 沿岸域の大部分で事業によって一様に山砂で盛土されて. 生事業後の植物相を比較しその変化を明らかにするとと. クロマツが植林され、多様な立地は失われて画一的な環. もに、生育基盤盛土上に生育する植物の由来について考. 境になりつつある。これにより既存の生物相や植生が失. 察した。. われ、生物多様性が大きく変化することが懸念される(永 幡 2012;平吹 2014;富田ほか 2014;西廣ほか 2014;黒. 方 法. 沢 2014, 2016;西廣 2015;Kurosawa 2016)。  海岸防災林再生事業に関しては、造林育種の観点から. 調査地概要. 生育基盤盛土の土壌物性などが研究されている(小野ほ.  調査地は福島県相馬市磯部大洲松川浦に位置する(図. か 2016;森林総合研究所東北支所 2016)。しかし、生物. 1c)。大洲の大部分では、2011 年の東日本大震災前には. 多様性に関する研究はほとんど行われておらず、高槻ほ. 植林に由来するクロマツの高木、ヤマザクラ Cerasus. か(2018)によるタヌキ Nyctereutes procyonoides の糞内. jamasakura (Siebold ex Koidz.) H.Ohba やオオバイボタ 251.

(4) 曲渕詩織・山ノ内崇志・黒沢高秀 2012)、残った樹木もその後ほとんどは葉が褐変して枯 死した(図 3b;村上 2014;薄葉ほか 2015)。海岸林が 壊滅した跡地には、地盤沈下の影響もあって各所に湿地 が形成された(薄葉ほか 2015;渡邉・黒沢 2015)。2012 年度より防潮堤および海岸防災林の復旧事業が開始され (黒沢 2014, 2020)、大洲の国有林部分の多くでは 2013 年度中に山砂の搬入が完了し(村上 2014)、2014 年の夏 ごろまでに生育基盤盛土の整地、2014 年度中に防風柵 と静砂垣の設置が完了した。また、2014 年 10 月付けで 関東森林管理局より海岸防災林の植樹および継続的な保 育のボランティア活動を行う団体の公募が行われ、これ に基づいて地元の環境 NPO などが植樹およびその後の 管理を 行っ ている( 例えば、 はぜ っ子 倶楽部ブ ログ http://hazekkoclub.blog.jp/archives/cat_826715.html、2018 年 11 月 12 日確認)。保育は、植樹されたクロマツ苗が 根付いて雑草や灌木の背丈を越えるまでの 5 - 10 年程度 の間行うことが予定されている。  調査範囲は大洲国有林の南端、汀線から約 280 m 内陸 側に位置する 0.45 ha の区画とした(図 3c)。緯度は 37 度 46 分 47 - 50 秒、経度は 140 度 59 分 03 - 07 秒、調査 地全体が生育基盤盛土上に位置し、標高は約 3 m である。 調査範囲は静砂垣によって長方形の小区画に区分されて いる。東側と西側には静砂垣より高い防風柵があり、周 囲にはわずかに日陰地ができていたが、そのほかには陰 をつくるような高い構造物はない(図 2)。調査範囲で は 2015 年 4 月 29 日にクロマツのコンテナ苗が植樹され た。調査時の確認では植栽間隔は約 1.5 m の等間隔であ り、樹高は約 0.5 - 1 m であった(図 4)。なお、植樹直 前の観察では、生育基盤盛土の整地から間もないことも あり植物の生育はごく少なく、植樹時にはこれに加え一. 図 3.震災前から海岸防災林再生事業による生育基盤盛土の造 成完了後までの調査範囲とその周辺の変遷。a、震災前(2010 年 9 月 21 日撮影)。b、震災直後(2011 年 3 月 12 日撮影)。 c、海岸防災林再生事業による生育基盤盛土の造成完了後 (2015 年 11 月 12 日撮影)。白枠は調査範囲を示し、図 c の 破線は希少種保全エリアの保存区域(渡邉・黒沢 2015)を 示す。衛星写真はいずれも Google Earth(Google LLC.)よ り取得した。. 通り目に付く植物の除去が行われた。植樹後の 2016 年 内にはセイタカアワダチソウ Solidago altissima L. とヒメ ムカシヨモギ Erigeron canadensis L. を対象とした駆除作 業が行われたが、除草した量などは記録されていない。 ほかの盛土を伴う海岸防災林再生事業地では、重機によ る踏圧や降雨にともなう土膜の形成によって透水不良が 報告されているが(小野ほか 2016)、本調査範囲でも同 様に降雨時やその直後には半分以上の面積が冠水して. Ligustrum ovalifolium Hassk. などの亜高木、ヒサカキ. いた。. Eurya japonica Thunb. var. japonica やテリハノイバラ.  調査範囲から汀線までの間には、津波後に新造された. Rosa luciae Rochebr. et Franch. ex Crèp. などの低木を伴う. コンクリート平張り被覆工で高さ 7.2 m の防潮堤がある. 海岸林が成立していた(図 3a;杉山ほか 2005;薄葉ほ. (黒沢 2020)。震災前からあった防潮堤の内陸側は津波. か 2015)。大洲においても、震災の際に多くの樹木は津. が防潮堤を越流する際に洗堀され(西・林 2012)、ヨシ. 波により根返り、幹折れして流失し(野堀 2011;坂本. Phragmites australis (Cav.) Trin. ex Steud. やコウキヤガラ 252.

(5) 海岸防災林盛土上の植物相と植生 2015 年 12 月 28 日版)に従った。証拠標本は福島大学 貴重資料保管室(FKSE)に保管した。 植生調査  調査は 2016 年 9 月 21 日に行った。5 × 5 m の方形区 を 14 個設置した。方形区の位置は GPS(Pokenavi mini 12 Channel, Garmin)で記録した。群落において最も高 い植物の高さを植生高とし、方形区内のすべての維管束 植物と、種類ごとのパーセント被度(以下、被度とする) を記録した。1%に満たないものは+として記録した。 個々の種類の生育は非常にまばらで被度も小さく、相互 の重なりはほとんど認められなかったため、植被率は全 図 4.調査地の相観(方形区 No. 9、2016 年 9 月 21 日撮影)。 植栽されたクロマツが点在することを除き、全体に植被率 が低く裸地に近い状態である。. 種類の被度の合算として求めた。その際、被度が+の植 物を 0.5%に読みかえた。調査時には、調査日の 4 日前 から調査日にかけて連続して降雨があり、調査時には地 表が冠水していたため、冠水の有無も記録した。. Bolboschoenus koshevnikovii (Litv. ex Zinger) A.E.Kozhevn..  植生調査での出現率が 20%を超えた植物に関して、. などが生える湿地が成立したが(図 3b)、そうした湿地. 種子の重さ、大きさ、毛の束の有無、散布様式について. は調査の前年の 2015 年中には山砂で埋め立てられた。. 浅井(2015)を参照するとともに、これに掲載されてい. 津波後にも砂浜にはハマヒルガオ Calystegia soldanella. ない植物に関しては現地あるいは標本で確認を行った。. (L.) R.Br. やコウボウムギ Carex kobomugi Ohwi などから. ここでいう毛の束とは、種髪、冠毛、小穂の基毛等を総. なる砂丘植生が見られたが(湯澤 2013)、復旧事業開始. 称したものである。. 後には防潮堤より海側には消波ブロック設置のための仮 設道路が敷かれ、調査当時には砂丘植生はほとんど見ら. データ処理. れなかった。調査範囲の西側は道路に面しており、路傍.  震災前の植物相を記録した情報として、細越ほか. にはオニウシノケグサ Lolium arundinaceum (Schreb.). (2005)および黒沢ほか(2015)の証拠標本を含む松川. Darbysh. などが生育していた。道路より内陸側の区画で. 浦の大洲で 2000 - 2010 年の間に採集された福島大学貴. は生育基盤盛土は完成しておらず、ヨシ、ヒロハホウキ. 重資料保管室収蔵の維管束植物標本と、福島県生活環境. ギク Symphyotrichum subulatum (Michx.) G.L.Nesom var.. 部自然保護グループ(2005)の植生調査の素表から大洲. squamatum (Spreng.) S.D.Sundb.、イガガヤツリ Cyperus. で確認された植物をリストアップした。震災直後の植物. polystachyos Rottb. など湿地生植物の生育環境となって. 相の情報として、Kurosawa(2016)および江田ほか(未. いた。なお、調査範囲から約 250 m 離れた場所には、東. 発表)の調査で 2011 年に採集され福島大学貴重資料保. 日本大震災後に生じた干潟や塩性湿地を保全するために. 管室に保管されている維管束植物標本と、未採集である. 設けられた希少種保全エリア保存区域(鈴木 2015;渡邉・. が目視で確認された植物(黒沢 未発表)をリストアッ. 黒沢 2015)がある(図 3c)。. プした。これら震災前および直後の調査範囲は、本研究 の調査範囲を含む大洲地域全体が対象となっているな. 植物相調査. ど、調査方法やデータの質も異なる。そのため本研究で.  盛土および植林直後の植物相の調査として、2016 年 4. 確認された植物が震災前および直後に大洲地域に確認さ. 月 23 日から 10 月 18 日までの間に 9 回、調査範囲内に. れていたか否かの観点から比較を行い、生育基盤盛土上. 生育する維管束植物を確認した。調査は 2 人以上で行い、. に出現した植物の由来を推定する際の参考にした。. 調査範囲内をくまなく踏査し、確認された維管束植物を.  記録された植物の生活型を、Iwatsuki et al.(1995a,. 採集・記録した。同定は主に清水(2003)および大橋ほ. 1995b, 2001, 2006, 2016)、長田(1993)、浅井(2015)を. か(2015–2017)を用いて行い、学名は YList(米倉・梶. 参考にし、一部は現地での野外観察により、常緑高木、. 田「BG Plants 和名 - 学名インデックス」http://ylist.info、. 落葉高木、常緑低木、落葉低木、常緑多年草、夏緑性多. 253.

(6) 曲渕詩織・山ノ内崇志・黒沢高秀 年草、夏緑性一年草、冬緑性一年草に区分した。海岸生. 1 雑種の維管束植物が確認された。うち 18 種類はキク科、. 植物は澤田ほか(2007)の掲載種類とした。記録された. 13 種類はイネ科で、これら両者で過半を占めた(表 1)。. 種類の大洲周辺における生育環境として、細越ほか. 保護上重要な植物は確認されなかった。出現した植物で. (2005)の震災前における大洲での記録を採用した。こ. 多く見られた生育型は、夏緑性多年草 15 種類(25.9%)、 冬緑性一年草 15 種類(25.9%)、夏緑性一年草 12 種類. の時、「アカマツ林」と「クロマツ林」は「マツ植林」. としてまとめ、 「ヨシ湿地」と「湿地植生」は「湿地植生」 (20.7%)、常緑多年草 11 種類(19.0%)であった(表 1)。 に統一した。また、イガガヤツリの生育環境は「二次草. 低木は 3 種類、高木と冬緑多年草はそれぞれ 1 種類で少. 地」および「湿地植生」と記録されていたが、当時の観. なかった。なお、クロマツは植栽されたもののほかに、. 察(黒沢 未発表)に基づき塩性湿地も加えた。複数の. 近隣の成木から散布された種子に由来すると思われる実. 生育環境が記録されている植物はそれぞれの環境で計上. 生 も 確 認 さ れ た。 海 岸 生 植 物 は コ ウ ボ ウ シ バ Carex. した。帰化植物の判断は YList を基本とし、一般に史前. pumila Thunb.、ハマアオスゲ Carex fibrillosa Franch. et. 帰化とされている植物(清水 2003)をここから除いた。. Sav.、マルバアカザ Chenopodium acuminatum Willd. の 3. また、在来種と帰化種の雑種とされる種類は帰化として. 種類が確認された。確認された植物のうち、24 種類が. 扱 っ た。 保 護 上 重 要な 植 物は、 環 境省 レ ッド リス ト. 帰化植物であり(表 1)、全種類に占める帰化植物の割. 2019(https://www.env.go.jp/press/files/jp/110615.pdf、2019. 合(帰化率)は 41.4%であった。また、このうち侵略的. 年 12 月 27 日参照、以下環境省 RL2019)、ふくしまレッ. 外来植物はシンテッポウユリ Lilium x formolongo Hort.、. ドリスト(2018 年版)(https://www.pref.fukushima.lg.jp/. メリケンカルカヤ Andropogon virginicus L.、オニウシノ. uploaded/attachment/320175.pdf、2019 年 12 月 27 日参照、. ケグサ、コマツヨイグサ Oenothera laciniata Hill、アメ. 以下福島県 RL2018)の掲載植物とした。特定外来生物. リカセンダングサ Bidens frondosa L.、セイタカアワダチ. (https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list.html、2019. ソウ Solidago altissima L.、セイヨウタンポポ Taraxacum. 年 1 月 4 日確認)および我が国の生態系等に被害を及ぼ. officinale Weber ex F.H.Wigg. の 7 種類であった。特定外. すおそれのある外来種リスト(生態系被害防止外来種リ. 来生物は確認されなかった。. スト)(https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/iaslist..  本研究で確認された 58 種類のうち、48 種類(82.8%). html、2016 年 3 月 2 日確認)に掲載された植物を侵略. は震災前にも大洲で確認されていた植物であった(表. 的外来植物とした。. 1)。津波以前には確認されていなかった種類のうち、3.  植生調査のデータについては、得られた被度から自然. 種類(5.2%)が震災直後から新たに確認された植物、7. 対数を用いた Shannon の多様度指数(H’)、均等度指数(J=. 種類(12.1%)が復旧事業後に新たに出現した植物であ. H’/ln S)、Simpson の 多 様 度 指 数(1/D)、 均 等 度 指 数. った(表 1)。復旧事業後に出現した 7 種類のうち 5 種. (D/S)を求めた。H’ と D は以下のように算出した(佐々. 類が帰化植物であり、生育型では 4 種類が冬緑性一年草. 木ほか 2015):. であった。震災前に確認されていた生育環境別にみると、 マツ植林で確認されていた植物は 39 種類、路傍 24 種類、 二次草地 13 種類、砂丘植生 8 種類、湿地植生 6 種類、. (1). 塩性湿地 3 種類、不明 2 種類であった。 植生. (2).  植生調査で得られた結果を表 2 に示す。各方形区では 植栽されたクロマツを含めてそれぞれ 5 - 21 種類が記録. ここで、S は方形区内の種類数、p i は種類 i の被度にお. され、平均種類数 ± 標準偏差は 13.4 ± 4.7 種類であった. ける相対優占度である。. (表 2) 。植被率は 5.5 - 15.5%、平均 10.46 ± 3.39%であ った。植被率に蘚苔類は含まれていないが、これらもほ. 結 果. とんど地表を覆っていなかった。帰化植物のみを積算し. 植物相. た場合、その植被率は 0 - 5.5%であった。.  生育基盤盛土の造成完了から 3 年以内で、植樹した翌.  記録された植物のほとんどは草本であり、中でも夏緑. 年の 2016 年に行った植物相調査において、56 種 1 変種. 性一年草は出現率が高く、メヒシバ Digitaria ciliaris 254.

(7) 和名と学名 シダ植物 Pteridophyta トクサ科 Equisetaceae スギナ Equisetum arvense L. 裸子植物 Gymnospermae マツ科 Pinaceae * クロマツ Pinus thunbergii Parl.(植栽,一部は自生) 被子植物 Angiospermae 単子葉植物 Monocots ユリ科 Liliaceae * シンテッポウユリ Lilium x formolongo Hort.(帰化) ラン科 Orchidaceae ネジバナ Spiranthes sinensis (Pers.) Ames var. amoena (M.Bieb.) H.Hara ツユクサ科 Commelinaceae ツユクサ Commelina communis L. イグサ科 Juncaceae タチコウガイゼキショウ Juncus krameri Franch. et Sav. カヤツリグサ科 Cyperaceae ハマアオスゲ Carex fibrillosa Franch. et Sav. コウボウシバ Carex pumila Thunb. ヒメクグ Cyperus brevifolius (Rottb.) Hassk. var. leiolepis (Franch. et Sav.) T.Koyama * ユメノシマガヤツリ Cyperus congestus Vahl(帰化) イガガヤツリ Cyperus polystachyos Rottb. イネ科 Poaceae * メリケンカルカヤ Andropogon virginicus L.(帰化) トダシバ(広義)Arundinella hirta (Thunb.) Tanaka メヒシバ Digitaria ciliaris (Retz.) Koeler アキメヒシバ Digitaria violascens Link イヌビエ Echinochloa crus-galli (L.) P.Beauv. var. crus-galli * コスズメガヤ Eragrostis minor Host(帰化) チガヤ Imperata cylindrica (L.) Raeusch. var. koenigii (Retz.) Pilg. ススキ Miscanthus sinensis Andersson スズメノヒエ Paspalum thunbergii Kunth ex Steud. ヨシ Phragmites australis (Cav.) Trin. ex Steud. ヒエガエリ Polypogon fugax Nees ex Steud. * オニウシノケグサ Schedonorus phoenix (Scop.) Holub(帰化) キンエノコロ Setaria pumila (Poir.) Roem. et Schult. 真正双子葉植物 Eudicots ブドウ科 Vitaceae ノブドウ Ampelopsis glandulosa (Wall.) Momiy. var. heterophylla (Thunb.) Momiy.. 255 93576. 93566 93563 93567 & 93554 93555 93556 93569 93562 93573 93561 93578 93565 93582 93519. ●. ●. 常緑多年草(8). 93570. 落葉低木(8). ●. 夏緑性一年草(1,6). 93522. ● ● ● ● − ● ● ● ● ● ● ● ●. ●. 常緑多年草(1). 93526. 夏緑多年草(1) 夏緑多年草(8) 夏緑性一年草(1,7) 夏緑性一年草(1,7) 夏緑性一年草(1,7) 夏緑性一年草(1,7) 夏緑多年草(1) 夏緑多年草(1) 夏緑多年草(1) 夏緑多年草(1) 冬緑性一年草(1) 常緑多年草(8) 夏緑性一年草(1,7). ●. 常緑多年草(1). 93574. ● ● ● − ●. ●. 常緑高木(2). 93551. 夏緑多年草(8) 夏緑多年草(8) 夏緑多年草(1) 夏緑多年草(8) 夏緑多年草(8). ●. 夏緑多年草(1,2). 93560. 93564 93559 93553 93577 93518. 震災前. 生活形(判断根拠). 証拠標本番号. ●. − ● ● ● ● ● ● ● ● ● − ● −. ● ● ● − ●. −. ●. −. −. ●. ●. マツ植林. 路傍 砂丘植生,二次草地,マツ植林,路傍 二次草地,マツ植林,路傍 マツ植林 塩性湿地,湿地植生 マツ植林,路傍 マツ植林,路傍 マツ植林,路傍. 路傍 湿地植生,マツ植林 マツ植林,路傍 不明. 二次草地,湿地植生,塩性湿地. 砂丘植生,二次草地,マツ植林 砂丘植生,二次草地,マツ植林 路傍. 湿地植生. マツ植林. マツ植林,路傍. 不明. 二次草地,マツ植林. マツ植林,路傍. 震災直後 震災前の生育環境. 表 1.福島県相馬市大洲で海岸防災林復旧事業による盛土と植栽の直後の 2016 年に行われた植物相調査で確認された維管束植物。自生ではない植物には和名の前に * を付し,学 名の後に帰化や植栽の別を記した。証拠標本番号は、福島大学貴重資料保管室植物標本室 FKSE のシート番号。生活型の右の数値は、それぞれ以下が出典であることを示す:1, 浅井(2015);2,Iwatsuki et al.(1995a);3,Iwatsuki et al.(1995b);4,Iwatsuki et al.(2001);5,Iwatsuki et al.(2006);6,Iwatsuki et al.(2016);7,長田(1993);8,野外観 察による。震災前・震災直後の欄は、黒丸がそれぞれの時期に記録があることを示す。震災前の大洲での生育環境は細越ほか(2005)によるが、一部変更したものがある(本 文参照)。. 海岸防災林盛土上の植物相と植生.

(8) マメ科 Fabaceae ツクシハギ Lespedeza homoloba Nakai ネコハギ Lespedeza pilosa (Thunb.) Siebold et Zucc. * シロツメクサ Trifolium repens L.(帰化) バラ科 Rosaceae テリハノイバラ Rosa luciae Rochebr. et Franch. ex Crèp. カタバミ科 Oxalidaceae * オッタチカタバミ Oxalis dillenii Jacq.(帰化) アカバナ科 Onagraceae * メマツヨイグサ Oenothera biennis L.(帰化) * コマツヨイグサ Oenothera laciniata Hill(帰化) アブラナ科 Brassicaceae スカシタゴボウ Rorippa palustris (L.) Besser タデ科 Polygonaceae オオイヌタデ Persicaria lapathifolia (L.) Delarbre var. lapathifolia ナデシコ科 Caryophyllaceae * オランダミミナグサ Cerastium glomeratum Thuill.(帰化) * ウスベニツメクサ Spergularia rubra (L.) J. et C.Presl(帰化) ヒユ科 Amaranthaceae マルバアカザ Chenopodium acuminatum Willd. サクラソウ科 Primulaceae オカトラノオ Lysimachia clethroides Duby コナスビ Lysimachia japonica Thunb. オオバコ科 Plantaginaceae オオバコ Plantago asiatica L. キク科 Asteraceae ヨモギ Artemisia indica Willd. var. maximowiczii (Nakai) H.Hara * アメリカセンダングサ Bidens frondosa L.(帰化) * コセンダングサ Bidens pilosa L. var. pilosa(帰化) * ヒメムカシヨモギ Erigeron canadensis L.(帰化) * ハルジオン Erigeron philadelphicus L.(帰化) * オオアレチノギク Erigeron sumatrensis Retz.(帰化) チチコグサ Euchiton japonicus (Thunb.) Anderb. * ウラジロチチコグサ Gamochaeta coarctata (Willd.) Kerguélen(帰化) キツネアザミ Hemisteptia lyrata (Bunge) Fisch. et C.A.Mey. ハハコグサ Pseudognaphalium affine (D.Don) Anderb. * セイタカハハコグサ Pseudognaphalium luteoalbum (L.) Hilliard et B.L.Burtt(帰化) * ノボロギク Senecio vulgaris L.(帰化) * セイタカアワダチソウ Solidago altissima L.(帰化) * オニノゲシ Sonchus asper (L.) Hill(帰化) * ヒロハホウキギク Symphyotrichum subulatum (Michx.) G.L.Nesom var. squamatum (Spreng.) S.D.Sundberg(帰化) * ホウキギク Symphyotrichum subulatum (Michx.) G.L.Nesom var. subulatum(帰化) * セイヨウタンポポ Taraxacum officinale Weber ex F.H.Wigg.(帰化) アカオニタビラコ Youngia japonica (L.) DC. subsp. elstonii (Hochr.) Babcock et Stebb.. 表 1.つづき. ● − ●. ● ● − − ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● − ● − − ● − ● ● ● − ● ● ●. 冬緑性一年草(1,4) 冬緑性一年草(1) 冬緑性一年草(1) 夏緑性一年草(1,5) 冬緑性一年草(1,5) 冬緑性一年草(8) 夏緑性一年草(5) 夏緑多年草(8) 常緑多年草(8) 常緑多年草(1) 夏緑多年草(1) 夏緑性一年草(1) 夏緑性一年草(1,3) 冬緑性一年草(1) 冬緑多年草(1) 夏緑性一年草(1,3) 常緑多年草(1) 冬緑性一年草(1) 冬緑性一年草(1,3) 冬緑性一年草(1) 冬緑性一年草(8) 冬緑性一年草(1) 常緑多年草(1) 冬緑性一年草(1) 夏緑性一年草(1) 夏緑性一年草(8) 常緑多年草(1) 冬緑性一年草(1). 93530 93531. 93523 93529 & 93558 93525 93571 93557 93549 93581. 256 93572 93539 93540 93543 & 93546 93537 93544 93552 93548 93527 93536 93534 & 93535 93547 93538 93542 93521 93520 93580 & 93545 93541. 93550 & 93568. ●. 常緑多年草(1). 93533. ● ● − − ● − − − − − − ● ● ● − − ● −. ●. − −. ●. ●. ● ●. −. ●. ●. 落葉低木(4). 93575. − − ●. − ● ●. 落葉低木(8) 夏緑多年草(1) 常緑多年草(8). 93532 93579 & 93524 93528. 砂丘植生,二次草地,マツ植林 マツ植林,路傍 湿地植生,マツ植林,路傍. マツ植林,路傍 二次草地,湿地植生,マツ植林,路傍 マツ植林. マツ植林. マツ植林. マツ植林,路傍 マツ植林 マツ植林,路傍 砂丘植生,二次草地,マツ植林 マツ植林,路傍. マツ植林,路傍. マツ植林 マツ植林. 二次草地,塩性湿地,マツ植林. マツ植林,路傍 マツ植林,路傍. 砂丘植生,二次草地,マツ植林,路傍 砂丘植生,二次草地,路傍. 砂丘植生,マツ植林. 二次草地,マツ植林. マツ植林 マツ植林,路傍. 曲渕詩織・山ノ内崇志・黒沢高秀.

(9) 方形区番号 冠水の有無 植生高(cm) 植被率(%) 構成種類数 S  うちキク科種類数  うちイネ科種類数 帰化植物の植被率(%) Shannon の多様度指数 H' Simpson の多様度指数 1/D Shannon の均等度指数 J Simpson の均等度指数 D/S 和名 クロマツ(植栽) P メヒシバ P アキメヒシバ イガガヤツリ * A ヒメムカシヨモギ * A ヒロハホウキギク P ヨシ P イヌビエ A ヨモギ * A セイタカアワダチソウ * P コスズメガヤ * コマツヨイグサ * メマツヨイグサ * A セイヨウタンポポ P キンエノコロ * A オニノゲシ コウボウシバ * A コセンダングサ A チチコグサ * A オオアレチノギク P ネズミノオ P ススキ スギナ * シロツメクサ A ハハコグサ ツクシハギ オカトラノオ P トダシバ * A ハルジオン P スズメノヒエ スカシタゴボウ オオバコ ツユクサ * A ホウキギク カタバミ ネコハギ ミヤコグサ P チガヤ マルバアカザ 2 有 70 13.0 16 6 6 3.0 2.41 7.19 0.87 0.45 4 + + + + + 2 + ・ + ・ ・ ・ + + + ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ + ・ ・ + + ・ ・ ・ ・ ・ ・ + ・ ・. 1 有 70 8.5 10 4 4 2.0 2.10 6.72 0.91 0.67 2 2 1 ・ + + + + + ・ ・ ・ + ・ ・ + ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・. 3 + + + ・ ・ ・ + ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・. 3 有 40 5.5 5 0 3 0.0 1.16 2.28 0.72 0.46 3 + ・ + ・ ・ + ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ + ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ +. 4 有 75 5.5 6 0 3 0.0 1.42 2.95 0.79 0.49 3 + + + + + ・ + ・ ・ + + ・ ・ ・ + + ・ ・ + ・ + ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ + + ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・. 5 有 45 10.0 15 4 6 3.0 2.46 8.00 0.91 0.53 5 + 1 + 1 + + + ・ ・ ・ + ・ ・ ・ + + ・ ・ ・ ・ + ・ ・ + ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ + + ・ ・ ・. 6 有 80 13.0 15 4 5 2.5 2.27 5.63 0.84 0.38 4 + 1 + 1 + + ・ + ・ + + ・ + ・ ・ ・ ・ ・ ・ + ・ ・ ・ ・ ・ + + ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・. 7 無 75 11.5 14 4 6 3.0 2.29 6.37 0.87 0.46 4 1 1 + 1 + + ・ + + + + + + + ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ + + ・ ・ ・ + ・ ・ ・ + + ・ ・ ・ ・ ・ ・. 8 無 75 14.5 19 5 6 4.5 2.65 9.24 0.90 0.49 4 1 1 + + + ・ + 1 + + ・ + + ・ ・ + + + + + ・ ・ + + + + ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・. 9 無 80 15.5 21 9 5 4.5 2.76 10.33 0.91 0.49 4 2 1 + 1 + ・ ・ + + + + + ・ ・ ・ ・ + + + ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ + ・ ・ ・ ・ + ・ ・ ・ ・ ・. 10 無 70 14.0 16 9 3 5.5 2.44 7.84 0.88 0.49 3 + + + + + + + + + ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ + ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・. 11 有 95 8.0 11 4 4 1.5 2.10 5.57 0.88 0.51 3 + + + + + + + + + + ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・. 12 有 70 8.0 11 4 5 2.0 2.10 5.57 0.88 0.51 3 + + + + + + + ・ + + + ・ ・ + ・ + + + ・ + + 1 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ + ・. 13 有 75 12.5 19 5 9 3.0 2.73 10.97 0.93 0.58 3 + + + + + ・ ・ ・ ・ ・ + + + ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・. 14 有 75 7.0 9 3 2 2.5 1.87 4.46 0.85 0.50. 出現率(%)学名 Pinus thunbergii 100.0 Digitaria ciliaris 100.0 Digitaria violascens 92.9 Cyperus polystachyos 92.9 Erigeron canadensis 85.7 Symphyotrichum subulatum var. squamatum 85.7 Phragmites australis 64.3 Echinochloa crus-galli var. crus-galli 64.3 Artemisia indica var. maximowiczii 50.0 Solidago altissima 50.0 Eragrostis minor 50.0 Oenothera laciniata 50.0 Oenothera biennis 35.7 Taraxacum officinale 35.7 Setaria pumila 28.6 Sonchus asper 28.6 Carex pumila 28.6 Bidens pilosa var. pilosa 21.4 Euchiton japonicus 21.4 Erigeron sumatrensis 21.4 Sporobolus fertilis 21.4 Miscanthus sinensis 21.4 Equisetum arvense 14.3 Trifolium repens 14.3 Pseudognaphalium affine 14.3 Lespedeza homoloba 14.3 Lysimachia clethroides 14.3 Arundinella hirta 14.3 Erigeron philadelphicus 14.3 Paspalum thunbergii 14.3 Rorippa palustris 14.3 Plantago asiatica 7.1 Commelina communis 7.1 Symphyotrichum subulatum var. subulatum 7.1 Oxalis corniculata 7.1 Lespedeza pilosa 7.1 Lotus corniculatus var. japonicus 7.1 Imperata cylindrica var. koenigii 7.1 Chenopodium acuminatum 7.1. 71.1 (± 13.8) 10.46(± 3.39) 13.4 (± 4.7) 4.4 (± 2.5) 4.8 (± 1.7) 2.64(± 1.50) 2.20(± 0.48) 6.65(± 2.44) 0.87(± 0.05) 0.50(± 0.06). 平均(± 標準偏差). 表 2.福島県相馬市磯部字大洲で東日本大震災後に造成された海岸防災林の植生組成表。調査日はすべて 2016 年 9 月 21 日。各種類の行にある数値はパーセント被度であり、+ は 1% 未満を示す。和名の左の * は帰化植物、A はキク科、P はイネ科であることを示す。構成種類数、多様度指数、均等度指数の算出の際はクロマツの植栽と実生を合わせて 1 種 類として扱った。. 海岸防災林盛土上の植物相と植生. 257.

(10) 曲渕詩織・山ノ内崇志・黒沢高秀 表 3.植生調査で出現率が 20%を超える植物における種子の重さ、大きさ、毛の束の有無と散布様式。和名に*があるものは帰化 植物を示す。種子の重さ、大きさ、毛の束の有無と散布様式は浅井(2015)によるが、** については著者らの観察による。 和名. 種子. 学名. 毛の束の有無. 散布様式. 千粒重(g) 大きさ(mm). メヒシバ. Digitaria ciliaris. 0.620. 2.0. なし. 重力. アキメヒシバ. Digitaria violascens. 0.250. 1.0. なし. 重力. イガガヤツリ. Cyperus polystachyos. −. −. なし **. −. * ヒメムカシヨモギ. Erigeron canadensis. 0.029. 1.5. あり. 風. * ヒロハホウキギク. Symphyotrichum subulatum var. squamatum. 0.110. 2.0. あり. 風. ヨシ. Phragmites australis. 0.510. 2.0. あり. 風. イヌビエ. Echinochloa crus-galli var. crus-galli. 1.600. 4.0. なし. 重力・水. Artemisia indica var. maximowiczii. 0.120. 1.5-1.8. なし. 重力. * セイタカアワダチソウ. ヨモギ. Solidago altissima. 0.074. 3.0-3.5. あり. 風. * コスズメガヤ. Eragrostis minor. 0.045. 0.4. なし. 重力. * コマツヨイグサ. Oenothera laciniata. 0.470. 1.0-1.8. なし. 重力. * メマツヨイグサ. Oenothera biennis. 0.200-0.700. 1.1-2.0. なし. 風. * セイヨウタンポポ. Taraxacum officinale. 0.360. 3.0-3.5. あり. 風. Setaria pumila. 1.200. 2.1-2.3. なし. 重力. Sonchus asper. 0.410. 2.5-3.0. あり. 風. Carex pumila. −. −. なし **. −. 1.400. 10.0. なし. 重力・付着. キンエノコロ * オニノゲシ コウボウシバ * コセンダングサ チチコグサ * オオアレチノギク. Bidens pilosa var. pilosa Euchiton japonicus. 0.022. 0.8-1.0. あり. 風. Erigeron sumatrensis. 0.034. 1.0-1.3. あり. 風. −. −. なし **. −. 0.560. 2.0. あり. 風. ネズミノオ. Sporobolus fertilis. ススキ. Miscanthus sinensis. (Retz.) Koeler は 14 方 形 区 す べ て で、 ア キ メ ヒ シ バ. 差 0.05)、Simpson の均等度指数は平均 0.50(標準偏差. Digitaria violascens Link とイガガヤツリは 13 方形区で、. 0.06)であった。. ヒロハホウキギクとヒメムカシヨモギは 12 方形区で確 認された。また、キク科植物とイネ科植物は各方形区あ たりの平均でそれぞれ 4.4 種類、4.8 種類が記録され、. 考 察 盛土および植林直後に成立した植生. いずれの方形区でも出現種類数の過半を占めた。  被度が高いのは植栽されたクロマツの 2 - 5%であり、.  海岸防災林再生事業による造成完了から 3 年以内で、. それ以外の種類で被度が 2%を超えるものはなかった。. 植樹した翌年の生育基盤盛土上の調査範囲では、58 種.  出現率が 20%を超えた植物は 21 種類で、うち重力散. 類の植物の生育が確認された(表 1)。植被率は 5.5 -. 布が 8 種類、風散布が 10 種類、不明が 3 種類であった. 15.5%と低く、裸地に近い状態であった(図 4、表 2)。. (表 3)。風散布のうち 8 種類は毛の束を持つ植物であっ. 出現率が高かったメヒシバ、アキメヒシバ、ヒメムカシ. た。海岸生植物(コウボウシバ、マルバアカザ)の出現. ヨモギはいずれも夏緑性一年草で、休耕地や埋立地など. 頻度は低く、被度も 0.5%と低かった。一方で帰化植物. の一年目に繁茂し、セイタカアワダチソウはその数年後. の被度は 0.5 - 1%と概して低かったが、出現頻度につい. に繁茂する植物として一般的に知られている(沼田・岩. てはヒメムカシヨモギやヒロハホウキギクのように高い. 瀬 1975)。わずかにコウボウシバなど海岸生植物も見ら. 種類も見られた。. れるものの、生育基盤盛土上の植生は全体として休耕地.  Shannon の多様度指数は平均 2.20(標準偏差 0.48)、. や埋立地などにおける二次遷移の初期と類似した状態だ. Simpson の多様度指数は平均 6.65(標準偏差 2.44)であ. と考えられる。調査範囲の生育基盤盛土ではしばしば冠. った(表 2)。Shannon の均等度指数は平均 0.87(標準偏. 水が確認され(表 2)、ヨシ、イヌビエ、タチコウガイ 258.

(11) 海岸防災林盛土上の植物相と植生 ゼキショウなどの湿地生植物も見られたが、生育量は少. エリア保存区域内ではハリエンジュの駆除のための地盤. なく、植生調査では出現しないか、出現しても被度が低. の切り下げなどの対策も行われた(渡邉・黒沢 2015)。. かった。植栽されたクロマツを除きいずれの種類も被度. しかしながら、地下水位から 2.9 m の高さまで生育基盤. は低く、結果として均等度指数が高かった。種類数が少. 盛土がなされた本研究の調査範囲(約 0.45 ha)では、. ない割に多様度指数が比較的高かったのも、同様の理由. これら木本性の侵略的外来種は確認されなかった (表 1)。これは元の土壌が生育基盤盛土の下に深く埋も. によると考えられる(表 2)。  調査範囲周辺で別途に行った観察では、大洲の海岸防. れ、かつ盛土材料の山砂中には種子が含まれず、隣接地. 災林再生事業地では広くこのような植生が成立していた. からの再侵入もなかったためと思われる。. (黒沢・曲渕 未発表)。このことは 2015 年撮影の衛星画.  以上より、造成完了から 3 年以内で、植樹した翌年の. 像(図 2c)からも確認できる。既存文献に見られる海. 生育基盤盛土上では、種組成の面では海岸生の在来種の. 岸防災林再生事業の施工直後の画像(たとえば、遠座ほ. 大幅な減少と帰化種の増加などの生物多様性の劣化が進. か 2014;西廣ほか 2014;村上 2014, 2015, 2017;小野ほ. んでいるが、植被率の面では帰化種の影響は限定的だと. か 2016;森林総合研究所東北支所 2016;菊池 2017)から、. 考えられた。ただし、調査範囲とその周辺ではセイタカ. 大洲以外の海岸防災林再生事業地でも同様の景観であっ. アワダチソウとヒメムカシヨモギの一部の駆除が行われ. たことが伺える。盛土を伴う海岸防災林再生事業地では、. ていることから、帰化植物の植被率については過小評価. 少なくとも植林直後には、本調査地と同様な景観が広く. された可能性がある。. みられるものと考えられる。ただし、構成種等は地域や.  生育基盤盛土上はいまだ裸地に近い状態であり、今後. 環境、地表の処理や除草などの管理方法により異なる可. も新たな植物の侵入・定着が起こりうる状態であると考. 能性があるため、海岸防災林再生事業地全体の状況を. えられる。今後の外来種のふるまいについて継続的に. 知るためには、より多くの場所での調査が必要だと思. モニタリングし、適切に対処することが必要だと考え. われる。. られる。. 帰化植物の繁茂状況. 海岸生植物の生育状況.  調査範囲の植物相調査では帰化植物は 23 種類が確認.  本調査範囲における植物相調査では海岸生植物は 3 種. され、侵略的外来生物も 7 種類が確認された。帰化率は. 類しか確認されず、植生調査においても被度が低かった. 41.4%であった。調査地が位置する相馬市全体の植物相. (表 2)。確認された 3 種類のうち、コウボウシバ、マル. では帰化率は 15.1%(黒沢・湯澤 2015)、震災前の松川. バアカザの 2 種類が砂浜・砂丘・礫浜を生育地とする植. 浦の帰化率は 15.2%(杉山ほか 2005)であり、海岸防. 物であった(澤田ほか 2007)。調査範囲では冠水が確認. 災林再生事業後の生育基盤盛土上ではそれらより帰化率. されたが、塩性湿地に生育する植物で確認されたのはイ. が高かった。一般に、帰化植物には環境が破壊された空. ガガヤツリのみであった。海岸生植物は震災前の大洲で. き地などに繁茂する種類が多く、そのような環境では帰. 35 種類、震災直後の 2011 年には 21 種類が確認されて. 化率が高いとされ(清水 2003)、福島県内でも公園や宅. いたが(黒沢ほか 未発表)、調査範囲ではほとんどの種. 地 造 成 地 な ど で 高 い 傾 向 が 確 認 さ れ て い る( 樋 口. 類が確認されなかった。. 1988)。調査範囲は裸地に近い相観の植生であり、その.  生育基盤盛土上は、植被率が低く開放的な環境であっ. ような環境であることを反映して帰化率が高いものと思. たが、造成 3 年以内の時点では海岸生植物の生育場所と. われる。. しての機能は限定的であった。この原因として、調査範.  植生調査においても帰化植物の確認種数は多かった. 囲から砂浜まで防潮堤を挟んで約 190 m あるうえ、防潮. が、その積算被度は最大でも 5.5%であった(表 2)。津. 堤復旧事業の影響で砂浜の砂丘植生がほとんど消失した. 波被害を受けた海岸林では、海岸林においてしばしば侵. ことにより散布体の供給が限定的であった可能性と、海. 略的にふるまうことが知られているハリエンジュやイタ. 岸防災林の生育基盤盛土が砂丘植生の植物の生育環境と. チハギ Amorpha fruticosa L.(崎尾 2009;林田 2012)の. してあまり適していなかった可能性が考えられた。. 繁 茂 が 報 告 さ れ て い る( 富 田 ほ か 2014; 菅 野 ほ か 2014;渡邉・黒沢 2015;曲渕ほか 2017)。この傾向は生. 生育基盤盛土上に出現した植物の由来. 育基盤盛土の施工以前の大洲でも確認され、希少種保全.  生育基盤盛土に使用された山砂は丘陵地の砂質堆積物 259.

(12) 曲渕詩織・山ノ内崇志・黒沢高秀 を切り出したものとされており(村上 2015)、埋土種子. 岸防災林でその後も高い優占度で生残しているなど、各. をはじめとする散布体や栄養繁殖体に極めて乏しいと推. 地域の生態系や自然植生の攪乱を極力抑え、かつ地域性. 定される。このことは、生育基盤盛土上に植被率の低い. 苗木の生産体制が整っているという生物多様性と生態系. 景観が形成された一因であると考えられる。もしそうで. サービス向上の観点から、植林樹種として望ましい広葉. あれば、本研究の植物相調査により造成後 3 年以内、植. 樹 9 種類を選定している。海岸防災林再生事業に限らず、. 林翌年の時点で確認された 50 種類を超える維管束植物. 津波被災地各地で行われている山砂を用いた造成地での. はどのように侵入したのであろうか。これらの植物の侵. 植林に用いる広葉樹種を選定する際には、高橋・高橋. 入経路として、(1)山砂に混入しての侵入、(2)コンテ. (2017)が示した生物多様性と生態系サービス向上の観. ナ苗で用いられる土壌に伴う侵入、(3)出入りする人・. 点からだけではなく、このような過酷な環境での定着や. 車両に付着しての非意図的な侵入、(4)風散布や動物散. 成長が可能かどうかの観点での検討も必要と考えられる。. 布などによる侵入が考えられる。(1)については上述の 通り相対的な重要性は低いと考えられる。また現地観察. 海岸防災林造成の生物多様性に関する研究と知見の集積. では、植樹されたクロマツの根元だけに植生が集中する. の必要性. などの(2)を示唆する証拠もあまり観察されなかった(図.  本研究では、造成完了から 3 年以内で、植樹した翌年. 4)。海岸防災林再生事業直後に確認された植物には、震. の海岸防災林造成地において、1)植栽されたクロマツ. 災前にマツ植林や路傍で確認されていた種類や、近隣の. が点在することを除き全体に植被率が低く裸地に近い状. 路傍にも多く見られる種類が多かったことから、(3)お. 態であること、2)帰化植物の種類は多いが被度は低く、. よび(4)の経路が可能性として考えられる。さらに、. 現時点での影響は顕著ではないこと、3)海岸生植物は. 植生調査で出現頻度が高かった植物には風散布植物が多. 種類数が少なく植被率も低く、そのままでは代替生育地. かったことから(表 3)、特に(4)の経路の影響が大き. としての機能は低いとみられること、4)木本、特に高. いと思われる。. 木性の種の侵入が限定的であることが明らかになった。 1)や 2)には植栽前の除草や植栽後の特定の帰化植物. 被災前の海岸林構成木本種との違いと今後の植生遷移へ. の一部個体の除草が影響した可能性もあるものの、それ. の影響. らすべてに影響する要因として、盛土材である山砂に種.  本研究の植物相調査では、海岸防災林再生事業地の生. 子などの混入が乏しいことや生育基盤盛土が広面積にわ. 育基盤盛土上において、植栽されたクロマツ以外の木本. たることが考えられた。植栽されたクロマツの苗の活着. 植物としてノブドウ Ampelopsis glandulosa (Wall.) Momiy.. や成長に重機による土の締固めやそれに伴う透水性の低. var. heterophylla (Thunb.) Momiy.、ツクシハギ Lespedeza. 下が悪影響を与えていることが示唆されており(小野. homoloba Nakai、テリハノイバラが確認された。これら. 2017;小野ほか 2020)、このことによる影響もあるかも. は震災前の松川浦のクロマツ林を構成する種類ではあっ. しれない。. たが(細越ほか 2005)、いずれも低木であって海岸林の.  海岸防災林再生事業で造成された生育基盤盛土上の植. 高木層を形成する種類ではない。津波以前の大洲のクロ. 物相や植生は詳細な報告が乏しく、これらの傾向がほか. マツ林にはアカマツ Pinus densiflora Siebold et Zucc.、ヤ. の場所でも広く当てはまるかどうかについては慎重に検. マザクラ、エノキ Celtis sinensis Pers. が混生していたが. 討する必要がある。生育基盤盛土上に出現した種類には、. (福島県生活環境部自然保護グループ 2005)、調査時点. 周囲からの風散布などによって侵入したと推定される種. では樹冠を構成するような高木性広葉樹の侵入は確認さ. 類が多く、散布体の供給源となる路傍や湿地、砂丘植生、. れず(表 1)、現時点で得られる結果からは、クロマツ. 植生保護区など周辺環境の特徴やそれらからの距離によ. 以外の樹種を含む海岸林が自然に成立する兆しは見いだ. り、生育基盤盛土上に成立する植生が多少とも異なる可. せなかった。. 能性がある。.  海岸防災林の構成樹種について、海岸防災林再生のガ.  盛土を伴った海岸防災林は、現在仙台湾沿岸の広い範. イドラインでは松食い虫被害防止の観点から広葉樹を含. 囲に造成され、この地域の海岸で最も大きな面積を占め. む多様な樹種を植林することが提案されている(東日本. る主要な環境となっている。大規模で類例をみない海岸. 大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会 2012)。. 環境の人為的改変に対応し、海岸植生や海岸生植物を含. また、高橋・高橋(2017)はこれを受けて、被災した海. む沿岸域の自然環境を保全するために、科学的なデータ 260.

(13) 海岸防災林盛土上の植物相と植生 に基づく合理的・生産的な議論をしていく段階に来てい ると思われる。そのためにも、海岸防災林造成の生物多 様性に関する研究と知見の集積が望まれる。. 謝 辞  NPO 法人はぜっ子倶楽部の新妻香織代表および会員 の方々には、調査地を提供していただいた。また、福島 大学共生システム理工学研究科の猪瀬礼璃菜氏、人間発 達文化研究科の後藤柚香氏、共生システム理工学類の薄 井創太氏、古田悠真氏、岡田花音氏、宇都宮大学教育学 部の曲渕愛理沙氏には野外調査を手伝っていただいた。 匿名の査読者には多岐にわたり有益なご指摘をいただい た。これらの方々に感謝いたします。本研究は国有林や 保安林内での植物の採取に関する届出受理書や同意書 (28 相農林第 1436 号、28 磐管第 313 号)を得て行われた。 本研究は公益財団法人自然保護助成基金第 29 期(2018 年度)プロ・ナトゥーラ・ファンド助成、平成 28 年度 福島大学学内競争資金個人研究助成、および JSPS 科研 費 18H04146 を受けて行われた。また、本研究の一部は 福島大学うつくしまふくしま未来支援センターの事業と して行われた。. 引用文献 浅井 元朗 (2015) 植調雑草大鑑. 全国農村教育協会, 東京 福島県生活環境部自然保護グループ (編) (2005) 重要湿 地松川浦総合調査報告書. 福島県生活環境部自然保護 グループ, 福島 林田 光祐 (2012) 海岸域の生物多様性を考慮した海岸林 の再生. 水利科学, 56(3):28-38 東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討 会 (2012) 「今後における海岸防災林の再生につ いて」 http://www.rinya.maff.go.jp/j/tisan/tisan/pdf/ kaiganbousairinsaisyuuhoukoku.pdf, 2019年1月14日確認 樋口 利雄 (1988) 福島市における帰化植物について (1). フロラ福島, (6):1-8 平吹 喜彦 (2014) 特集にあたって 砂浜海岸エコトー ンモニタリングがとらえ始めた植生の応答とレ ジリエンス. 保全生態学研究, 19:159-161. https://doi. org/10.18960/hozen.19.2_159 細越 啓, 北岡 文美代, 坪井 恭子, 黒沢 高秀, 杉山 廣雄 (2005) 松川浦の植物目録. (福島県生活環境部自然保護 グループ 編) 重要湿地松川浦総合調査報告書, 155-197. 福島県生活環境部自然保護グループ, 福島 Iwatsuki K, Boufford DE, Ohba H (eds.) (2001) Flora of Japan vol. IIb, Angiospermae Dicotyledoneae Archichlamydeae (b). Kodansha, Tokyo 261. Iwatsuki K, Boufford DE, Ohba H (eds.) (2006) Flora of Japan vol. IIa, Angiospermae Dicotyledoneae Archichlamydeae (a). Kodansha, Tokyo Iwatsuki K, Boufford DE, Ohba H (eds.) (2016) Flora of Japan vol. IVb, Angiospermae Monocotyledoneae (b). Kodansha, Tokyo Iwatsuki K, Yamazaki T, Boufford DE, Ohba H (eds.) (1995a) Flora of Japan vol. I, Pteridophyta and Gymnospermae. Kodansha, Tokyo Iwatsuki K, Yamazaki T, Boufford DE, Ohba H (eds.) (1995b) Flora of Japan vol. IIIb, Angiospermae Dicotyledoneae Sympetalae (b). Kodansha, Tokyo 鎌形 哲稔, 赤松 幸生, 原 慶太郎, 富田 瑞樹, 平吹 喜彦 (2013) デジタル航空写真とLiDARを用いた東日本大 震災被災地モニタリング 仙台湾岸の海岸林を対象 として. 景観生態学, 18:29-34. https://doi.org/10.5738/ jale.18.29 環境省自然環境局生物多様性センター (編) (2014) 平成 25年度東北地方太平洋沿岸地域植生・湿地変化状況 等調査 調査報告書. 環境省自然環境局生物多様性セン ター, 富士吉田 環境省自然環境局生物多様性センター (編) (2015) 平成 26年度東北地方太平洋沿岸地域植生・海域等調査 調 査報告書. 環境省自然環境局生物多様性センター, 富 士吉田 環境省自然環境局生物多様性センター (編) (2016) 平成 27年度東北地方太平洋沿岸地域植生・海域等調査 調 査報告書. 環境省自然環境局生物多様性センター, 富 士吉田 菅野 洋, 平吹 喜彦, 杉山 多喜子, 富田 瑞樹, 原 慶太郎 (2014) 巨大津波直後の海岸林に生じた多様な立地の植 生の変化: 3 年間の記録. 保全生態学研究, 19:201-220. https://doi.org/10.18960/hozen.19.2_201 菊池 慶子 (2017) 仙台湾岸における防災林の植林史 宮城 県名取市海岸部を中心に. 東北学院大学論集 歴史と文 化, (55):9-41 黒沢 高秀 (2014) 東日本大震災前後の福島県の海岸の植 生と植物相の変化および植生や植物多様性の保全の状 況. 植生情報, (18):70-80 黒沢 高秀 (2016) 津波被災地で行われている復旧・復興 事業と保全. (日本生態学会東北地区会 編) 生態学が語 る東日本大震災 自然界に何が起きたのか, 164-170. 文 一総合出版, 東京 Kurosawa T (2016) Plant diversity and considerations for conservation of it in infrastructure reconstruction planning after the Great East Japan Earthquake and Tsunami of 2011. In: Urabe J, Nakashizuka T (eds), Ecological Impacts of Tsunamis on Coastal Ecosystems. Lessons from the Great East Japan Earthquake. Ecological Research Monographs, 311-335. Springer Japan, Tokyo. https://doi. org/10.1007/978-4-431-56448-5_19 黒沢 高秀 (2020) 東日本大震災の福島県内津波被災地で 行われている復旧・復興事業と生物多様性保全の取り.

(14) 曲渕詩織・山ノ内崇志・黒沢高秀 組み. 福島大学地域創造, 31(2):87-97 黒沢 高秀, 根本 秀一, 葛西 英明, 湯澤 陽一, 薄葉 満, 菅野 修三, 伊賀 和子, 渡部 秀哉, 首藤 光太郎 (2015) 相馬市 維管束植物目録. (相馬市史編さん委員会・相馬市教育 委員会生涯学習部生涯学習課市史編さん室 編) 相馬市 史第8巻特別編I自然 別冊資料集 動植物目録, 24-118. 福島県相馬市, 相馬 黒沢 高秀, 湯澤 陽一 (2015) 相馬市の植物相概要. (相馬市 史編さん委員会・相馬市教育委員会生涯学習部生涯学 習課市史編さん室 編) 相馬市史第8巻特別編I自然, 424429. 福島県相馬市, 相馬 曲渕 詩織, 渡邉 祐紀, 黒沢 高秀 (2017) 東日本大震災の復 旧事業の際に生物多様性の保全のために福島県北部の 海岸に設置された保護区の植物相と植生. 福島大学地 域創造, 29(1):103-142 村上 卓也 (2014) 東日本大震災で被災した海岸防災林 の復旧対策の取組. 水利科学, 58(5):1-11. https://doi. org/10.20820/suirikagaku.58.5_1 村上 卓也 (2015) 盛土を伴う海岸防災林復旧工事と植栽 までの手順. 日本緑化工学会誌, 41:341-343. https://doi. org/10.7211/jjsrt.41.341 村上 卓也 (2017) 仙台湾地区における東日本大震災から の海岸防災林復旧の取組み. 水利科学, 60(6):105-125. https://doi.org/10.20820/suirikagaku.60.6_105 永幡 嘉之 (2012) 巨大津波は生態系をどう変えたか. 講 談社, 東京 中村 克典, 小谷 英司, 小野 賢二 (2012) 津波被害を受けた 海岸林における樹木の衰弱・枯死. 森林科学, 66:7-12. https://doi.org/10.11519/jjsk.66.0_7 西 隆一郎, Manu J, Jansen T, 林 健太郎 (2012) 津波によ る第I砂丘部および海岸保全構造物背後の洗堀地形に ついて. 土木学会論文集B3 (海洋開発), 68:I_198-I_203. https://doi.org/10.2208/jscejoe.68.I_198 西廣 淳 (2015) 災害復興事業と生物多様性保全. 国際交通 安全学会誌, 39:248-255 西廣 淳, 原 慶太郎, 平吹 喜彦 (2014) 大規模災害からの 復興事業と生物多様性保全: 仙台湾南部海岸域の教訓. 保全生態学研究, 19:221-226. https://doi.org/10.18960/ hozen.19.2_221 野堀 嘉裕 (2011) 特別セッション「東北地方の森林・ 林業における東日本大震災の被害の現状と復興へ の取組み」. 東北森林科学会誌, 16:44-49. https://doi. org/10.18982/tjfs.16.2_44 沼田 真, 岩瀬 徹 (1975) 図説日本の植生. 朝倉書店, 東京 大橋 広好, 門田 裕一, 木原 浩, 邑田 仁, 米倉 浩司 (編) (2015-2017) 改訂新版日本の野生植物1-5. 平凡社, 東京 太田 猛彦 (2012) 海岸林形成の歴史. 水利科学, 56(3):2-13. https://doi.org/10.20820/suirikagaku.56.3_2 小野 賢二 (2017) 高田松原の再生に向けた取組 津波 に対して粘り強い海岸林造成のために. 岩手の林業, (714):6-7 小野 賢二, 今矢 明宏, 高梨 清美, 坂本 知己 (2016) 海 岸防災林復旧・再生事業における生育基盤盛土の現. 状 事業着手初期の未耕起盛土の物理性および盛土へ の各種耕起工が土壌硬度鉛直分布に及ぼす効果の評 価. 森林総合研究所研究報告, 15(3):65-78. https://doi. org/10.20756/ffpri.15.3_65 小野 賢二, 野口 宏典, 村上尚徳 (2020) 人工生育基盤を巡 るこれまでの状況と課題 津波被災海岸防災林再生の 現場から. 森林技術, (936):10-13 遠座 なつみ, 石田 糸絵, 富田 瑞樹, 原 慶太郎, 平吹 喜彦, 西廣 淳 (2014) 津波を受けた海岸林における環境不均 質性と植物の種多様性. 保全生態学研究, 19:177-188. https://doi.org/10.18960/hozen.19.2_177 長田 武正 (1993) 増補日本イネ科植物図譜. 平凡社, 東京 坂本 知己 (2012) 津波によって被災した海岸林の再生に むけて. 水利科学, 56(3):39-61. https://doi.org/10.20820/ suirikagaku.56.3_39 Sakamoto T (2016) Regeneration of damaged coastal forests caused by the Great East Japan Earthquake and Tsunami. In: Urabe J, Nakashizuka T (eds), Ecological Impacts of Tsunamis on Coastal Ecosystems. Lessons from the Great East Japan Earthquake. Ecological Research Monographs, 337-359. Springer Japan, Tokyo. https://doi. org/10.1007/978-4-431-56448-5_20 崎尾 均 (編) (2009) ニセアカシアの生態学 外来樹の歴 史・利用・生態とその管理. 文一総合出版, 東京 佐々木 寧, 田中 規夫, 坂本 知己 (2013) 津波と海岸林 バ イオシールドの減災効果. 共立出版, 東京 佐々木 雄大, 小山 明日香, 小柳 知代, 古川 拓哉, 内田 圭 (2015) 植物群集の構造と多様性の解析. 共立出版, 東京 澤田 佳宏, 中西 弘樹, 押田 佳子, 服部 保 (2007) 日本の海 岸植物チェックリスト. 人と自然, (17):85-101 清水 建美 (編) (2003) 日本の帰化植物. 平凡社, 東京 篠宮 佳樹, 今矢 明宏, 高梨 清美, 坂本 知己 (2016) 水溜ま りが生じた生育基盤盛土の物理性 海岸防災林再生事 業初期に造成された盛土の事例. 森林総合研究所研究 報告, 15:151-159. https://doi.org/10.20756/ffpri.15.4_151 森林総合研究所東北支所 (編) (2016) 海岸林造成技術の 高度化に向けて. 森林総合研究所東北支所, 盛岡 杉山 廣雄, 細越 啓, 北岡 文美代, 坪井 恭子, 黒沢 高秀 (2005) 植物 (松川浦周辺及び浦内の島の植物相及び植 生). (福島県生活環境部自然保護グループ 編) 重要湿地 松川浦総合調査報告書, 31-53. 福島県生活環境部自然 保護グループ, 福島 鈴木 明 (2015) 福島県における海岸防災林の復旧・再生 について. 日本緑化工学会誌, 41:344-345. https://doi. org/10.7211/jjsrt.41.344 高橋 一秋, 高橋 香織 (2017) 東日本大震災後の海岸防災 林再生のための広葉樹種選定に関する提案 生物多様 性と生態系サービスの向上を目指して. 保全生態学研 究, 22:391-399. https://doi.org/10.18960/hozen.22.2_391 高槻 成紀, 岩田 翠, 平泉 秀樹, 平吹 喜彦 (2018) 仙台の海 岸に生息するタヌキの食性 東北地方太平洋沖地震・ 津波後に復帰し復興事業で生息地が改変された事例. 保全生態学研究, 23:155-165. https://doi.org/10.18960/. 262.

(15) 海岸防災林盛土上の植物相と植生 洋沖地震津波による仙台平野の海岸林被害と地下水深 度及び立木サイズとの関係. 海岸林学会誌, 13:7-14 渡邉 祐紀, 黒沢 高秀 (2015) 東日本大震災により福島県 相馬市松川浦に生じた干潟や塩性湿地に設けられた保 護区の植物相および植生. 福島大学地域創造, 27(1):6792 湯澤 陽一 (2013) 2011年東日本大震災による津波が福島 県の海浜植物に与えた影響について. 植物地理・分類 研究, 61:1-14 趙 憶, 富田 瑞樹, 原 慶太郎 (2013) SPOT 衛星データを用 いた仙台沿岸域における震災前後の景観変化の解析. 自然環境復元研究, 6:43-49. hozen.23.1_155 田村 浩喜 (2012) 仙台平野の海岸林における根返り被害. 森林科学, 66:3-6. https://doi.org/10.11519/jjsk.66.0_3 富田 瑞樹, 平吹 喜彦, 菅野 洋, 原 慶太郎 (2014) 低頻度 大規模攪乱としての巨大津波が海岸林の樹木群集に 与えた影響. 保全生態学研究, 19:163-176. https://doi. org/10.18960/hozen.19.2_163 薄葉 満, 黒沢 高秀, 湯澤 陽一 (2015) 松川浦の植生と植 物. (相馬市史編さん委員会・相馬市教育委員会生涯学 習部生涯学習課市史編さん室 編) 相馬市史第8巻特別 編I自然, 352-376. 福島県相馬市, 相馬 渡部 公一, 海老名 寛, 古川 和史, 堀米 英明, 大築 和彦, 上 野 満, 宮下 智弘, 坂本 知己 (2014) 2011年東北地方太平. 263.

(16)

参照

関連したドキュメント

A characterization of polynomials of degree ≤ 21 that are strict sums of seventh powers is given in Section 3.. In Section 4, using the general descent process described in [1],

後援を賜りました内閣府・総務省・外務省・文部科学省・厚生労働省・国土交通省、そし

〜 3日 4日 9日 14日 4日 20日 21日 25日 28日 23日 16日 18日 4月 4月 4月 7月 8月 9月 9月 9月 9月 12月 1月

 プログラムの内容としては、①各センターからの報 告・組織のあり方 ②被害者支援の原点を考える ③事例 を通して ④最近の法律等 ⑤関係機関との連携

東京都環境局では、平成 23 年 3 月の東日本大震災を契機とし、その後平成 24 年 4 月に出された都 の新たな被害想定を踏まえ、

大正13年 3月20日 大正 4年 3月20日 大正 4年 5月18日 大正10年10月10日 大正10年12月 7日 大正13年 1月 8日 大正13年 6月27日 大正13年 1月 8日 大正14年 7月17日 大正15年

4/6~12 4/13~19 4/20~26 4/27~5/3 5/4~10 5/11~17 5/18~24 5/25~31 平日 昼 平日 夜. 土日 昼

4-8 Apply by air (minimum 10 gal/A), by ground or by chemigation when disease is first detected and reapply at 14 to 21 day intervals. For optimum control of rust, use the