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音楽療法におけるICT活用に関する実践的研究

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Academic year: 2021

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音楽療法におけるICT活用に関する実践的研究

著者

一ノ瀬 智子

雑誌名

教育情報学研究

16

ページ

125-126

発行年

2017-12-25

URL

http://hdl.handle.net/10097/00123153

(2)

本論文においては音楽療法における ICT 活用 について 新しいアプローチとしての可能性を考 察するために,⑴高齢者,⑵障害児,⑶身体障 害者と,幅広い年齢層とにおける音楽療法の対 象者に対してバリアフリー電子楽器 Cymis(Cyber Musical Instrument with Score,以下 Cymis) による 演奏を適用して実践的研究を行い,その有効性お よび有用性を明らかにすることにより,ICT を活 用した新たな音楽療法の手法を構築することを目 的とした. Cymis は,誰でも,簡単に,かつ練習によって 上達して達成感を味わえるように開発された楽器 であり,楽譜データを内蔵していることと,様々 なインターフェースによって,演奏者の能力や障 害等に合わせて,柔軟に演奏方法を設定できるこ とが特徴である(図1).

音楽療法における ICT 活用に関する実践的研究

東北大学大学院教育情報学教育部 一ノ瀬智子 学位授与年月日:平成29年3月24日 主査:東北大学大学院教育情報学研究部 教授 渡部 信一 副査:東北大学大学院教育情報学研究部 教授 熊井 正之 副査:東北大学大学院教育情報学研究部 准教授 佐藤 克美 図1 Cymisの構成(Akazawa 2013) ⑴高齢者のための音楽療法:Cymis 合奏システム 導入の試み 音楽の正規の教育を受けた経験のない高齢者 でも,合奏を楽しむことができるような新たな システムとして Cymis 合奏システム開発し,地 域高齢者のための音楽活動に導入した.5名の高 齢者に Cymis を演奏してもらったところ,高齢 者でも容易に演奏をできることが明らかになっ た.また,Cymis 合奏システムにおいて使われた ガイド表示は初心者が合奏を演奏するために有用 であり,実際のテンポと理想のテンポの差に関す るデータにより,上達の程度や苦手な箇所や演奏 の傾向を評価することが可能であった.さらに全 参加者が合奏を楽しみ,研究協力後も Cymis 演 奏に参加したいとアンケートにて回答したことか ら,高齢者でも合奏を楽しめるシステムであるこ とが確認された.これらのことから,Cymis によ る合奏が,高齢者のための音楽療法において有用 である可能性が示唆された. 図2 高齢者によるCymisでの合奏 教育情報学研究 第16号(2017)

Educational Informatics Research, 2017, No.16, 125-126

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⑵自閉症スペクトラム児への音楽療法:Cymis と Kinect によるシステム導入の試み  自閉症スペクトラム児(以下,ASD 児)を対象 とした音楽療法における,Cymis とゲームデバイ ス Kinect を組み合わせたシステム(以下,Cymis & Kinect)は,ASD 児が自発的に音楽活動に参加 し,視覚,聴覚,身体への気付きの統合を促進す ることを目的として開発された.

Cymis & Kinect は,一定の動作を Kinect が認識 することにより Cymis で楽曲を演奏できるシス テムである(図3).定型発達児と ASD 児に適用 を試みた結果,いずれの対象にも適用が可能であ ることが明らかとなった.親しみのある曲を好み の動きによって演奏することが,ASD 児にとっ て,運動による音楽演奏の課題への取り組みや, ペアで協調的に運動するために有効な動機付けと なることが明らかになった.また,動きに伴って 画面上に自らの姿が映るビデオ映像が,課題への 取り組みの意欲につながることが示された. 本研究より得られたデータは,今後の,ASD 児への音楽療法への実証的研究と実践に適用でき る可能性が示された.

図3 Cymis & Kinectを演奏するASD児 ⑶身体障害者への音楽療法:Cymis 演奏が QOL に及ぼす影響 Cymis を演奏することが,重度の身体障害者が QOL(Quolity of Life)の維持,向上に及ぼす影響 について,アクセシビリティー,演奏における上 達,心理的効果,ケアプランに取り入れている理 由という観点から調査した.その結果,調査対 象である施設の利用者の多くが,Cymis 演奏を楽 しみながら継続していること,さらに Cymis 演 奏が心理的にも好影響を及ぼし,QOL の向上に おいて有効であることが示された.また利用者の コメント等から,自ら楽器を演奏するという行為 は,Cymis がなければ不可能であったことであり, まさに人生の質を高めるという点において画期的 な意味合いをもつものであることが明らかになっ た. 以上の実践的研究により,バリアフリー電子楽 器 Cymis によって,従来の音楽療法の方法では 困難なことが,可能となることが明らかになった. さらに ICT の活用により,音楽を楽しみ,対象 者の関心や動機を促し,達成感を味わい,さらに は QOL を高めるなどの効果を期待できることが 明らかになった.この基盤にあるのは,「自分自 身が主体となって演奏していることが実感でき る」こと,かつある程度の努力で「上達を感じる ことができる」ことである.すなわち,音楽療法 における ICT 活用において主体的,自律的に演 奏することができ,上達を感じられるような使い 方をすることにより,有効性および有用性を高め られるといえる. 本論文では,音楽療法における新たな方法の一 つとして Cymis を適用してその有効性ならびに 有用性を明らかにすることを通して,ICT を活用 した新たな音楽療法の手法を示すことができたと 考える. 音楽療法におけるICT活用に関する実践的研究 - 126 -

参照

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