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セイヨウミツバチの女王蜂と働き蜂の警報フェロモン

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HoneybeeScience(1996)

セイ ヨウ ミツバ チの女王蜂 と働 き蜂 の警報 フェロモ ン

Yaac

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e

r

. 女王蜂の警報 フ ェロモ ン

ミソバチの社会は基本的に単女王制である. どの齢で も複数の女王蜂を一つのコロニーに王 に入れずに共存 させようとして も,相互 に攻 撃 し合 って失敗に終わる.複数の女王蜂 による 多王群 は,隔王板などで物理的に女王蜂を隔離 した場合に成立する(Farrar,1953など)が, 隔離 しない場合は,女王蜂同士が最後の 1頭に なるまで戟いを続 ける.未交尾の女王蜂は交尾 済 の もの よ り攻 撃 的 で あ る (Darchen and Lensky,1963).

女王蜂 自身の攻撃性のはかに,実験条件下で も自然条件下で も他の女王蜂の排除には働 き蜂 が主要な役割を果たす.一つのコロニーに複数 の女王蜂の存在が許 されるのは,分蜂の時期だ けである (Darchenand Lensky,1962).相 互の攻撃ができないように女王蜂の大顎や刺針 に手を加え, うま くコロニーに導入 したとして ち, 1頭以外のすべての女王蜂 は,働 き蜂の蜂 球形成 によって 4週間か ら6週間後 には排除 されて しまう (Lensky eta1.,1970). 一般 に,女王蜂 の大顎腺 由来 の フェロモ ン は,女王蜂に対す る働 き蜂の攻撃行動 に影響す ると信 じられている (Gary, 1962;Yadava andSmith,1991a).ところが,女王蜂の相互 認知だけでな く,働 き蜂の示す女王蜂への攻撃 行動 (蜂球形成)には,刺針部あるいはその付 近か ら発せ られる揮発性物質が関与 しているら しい.

働 き蜂の コシェブニコビ腺 (Koshewnikow gland,WKG;本誌p.119区11参照)は警報 フ ェ ロ モ ンを 分 泌 す る (Grandperrin and

Cassier,1983;MauchampandGrandperrin,

1982)が,女王蜂のコシェブニコビ腺 (QKG) の機能 はそれと異 なる.Butlerand Simpson (1965)は,QKGが働 き蜂 に対する喚覚的に非 特異的な誘引活性を持っ としているが,それに 関 して十分な証明はなされていない.女王蜂に 対する働 き蜂の攻撃時には,蜂球に包 まれた女 王蜂 は繁 に刺針室を開 き,刺針 と付属突起を 突 き出す.蜂球に参加 している働 き蜂 は, この 刺 針 付 属 突 起 に誘 引 さ れ, そ れ を紙 め る (Robinson,1984).また,働 き蜂 は女王蜂の頭 部よりも腹部の方によ く誘引され, このことは おそ らく背板腺およびコシェブニコビ腺の分泌 物が原因であると思われ る (DeHazaneta1.,

1989). 女王蜂のフェロモ ン様分泌物には,次のよう な効果があると考え られ る. (a)2頭の女王蜂 の攻撃行動を活性化 し,一般的には出会 ったど ちらか一方の死を招 く.(b)分蜂期以外では, 導入 された女王蜂,あるいは巣内の複数の女王 蜂 の うちの 1頭 に対す る働 き蜂 の蜂球形成 を 引 き起 こす.働 き蜂の蜂球形成行動 は 「ス トレ スフェロモ ン」仮説 によって説明される.すな わち,攻撃を受けた女王蜂はその女王蜂 自身に 対する蜂球形成および自己の死を招 く 「ス トレ ス フ ェ ロモ ン」 を分 泌 す る (Yadava and Smith,1971b;1971C).しか しなが ら

,

「ス ト レスフェロモ ン」がどの分泌腺か ら分泌 される のか, またその化学的成分が何なのかについて はまだわか っていない. QKGおよびWKGの抽 出物が働 き蜂のどの ような反応を引 き出すのか, QKG処理を施 し た 「疑似女王蜂 (PQ)」 に対す る働 き蜂の蜂球

(2)

蓑 1疑似女王蜂 (PQ)に対する働き蜂の行動 処理区 1 処理区 2 対照区 1 PQ+T+ PQ+T+ PQ+T+ 2pIQKG 2/上lWKG 2pIEtOH 対唄区2 PQ+T 通常 の興奮 触角での接触 攻撃行動 (麹,肢,その他の部位を噛む) 蜂球形成 蜂球形成時間 (分) 蜂球への参加働 き蜂数 + +

*

蜂球に参加 した働 き蜂の行動:押す,引っ張る,辺や肢をっかむ,超,肢その他を噛む,なめる **PQ-疑似女王蜂,T-胸部のペイントマーク,QKG-女王蜂のコシェブニコビ腺のエタノール抽出物, WKG-働 き蜂のコシェプニコビ腺のエタノール抽出物,EtOH-エタノール 形成 につ いて研究 を行 った. この実験 で,疑似 女 王蜂 と してQKG抽 出物 を塗布 した働 き蜂 を 用 いたの は,女王蜂 の大顎腺,ふ節腺 (Cassier et a1.,1991), 背板腺 (De Hazan et a1., 1989)か らの フ ェロモ ン様 分 泌物 に よ る効 果 を除外す るためで あ る. QKG成分 の分析 には ガス クロマ トグ ラフィー質量 分析 (GC-MS) 法 を用 いた. 働 き蜂 によ るPQに対 す る蜂球形 成 の観察 は,Lenskyetal.(1991)に したが っ て ガ ラス製観察巣箱 を用 いて行 った.

1

. QKG

あ るいは

WKG

を塗布 した

PQ に対 す る働 き蜂 の 反 応 QKGを塗布 した場合, 導 入 したすべての疑 似女 王蜂 (PQ)は巣 内の働 き蜂 にす ぐに取 り囲 まれ, 15-35頭 の働 き蜂 によ る密 な蜂球 が形 成 された (表 1),蜂球 は5-10分間継続 し,そ の後 も約2頑 の働 き蜂 が残 った.その後約4分 で残 って いた蜂 はPQか ら離 れ た. 蜂球 に参加 して いた働 き蜂 は, PQの麹 や肢 をっかむ, か む, 引 っぼ るとい った攻撃 的 な行動 を示 した. 働 き蜂 の中 には,触角 で触 れ る,舐 め るとい っ た非攻 撃 的 な行動 を とる もの もいた.10頭 の PQの うち,7頭 は蜂球 に取 り込 まれ た.2頭 は 導 入後 に激 しく攻撃 され たが,働 き蜂 によ る密 な蜂球形成 は起 こ らなか った.残 りの

1

頭 は働 き蜂 の攻撃 を受 けた後,巣箱 か ら逃 げ出す こと に成功 して飛 び去 った.蜂球 によ る攻撃 を受 け た9頭 の中で, 死亡 したPQはなか った.蜂球 が解散 した後,PQは動 き回 る ことはで きたが, た いて いの場合,麹 に損傷 を受 けて いた. WKGを塗布 した場 合 は,導入後す ぐに ,6-8頑 の働 き蜂 がPQに近寄 り,PQを押 し,針 を 刺 す と きと同様 に腹部 を曲 げた.一方,他 の働 き蜂 はPQに触 角 で触 れ ただ けでその場 を去 っ た.巣 内の働 き蜂 によ る攻撃行動 は継続 的で は な く, PQに近 づ いて は引 き下 が った. この特 異 な行動 は

1

.

0

-

1

.

5

分間継 続 した. 対照区 と して 白いペイ ン トでマー ク しただ け のPQは, 巣 内で働 き蜂 の関心 を ま った く引か なか った. 白いペ イ ン トに加 え, さ らに2plの エ タノールを塗布 したPQは,約5頭 の働 き蜂 によ って約30秒 間念入 りに調 べ られ, 触 角で 触 れ られ た. ガ スクロマ トグラフ ィー質量(GC-MS)分析 の結果, 分子量112か ら604までの,28種類 の 化 合 物 が 兄 い 出 さ れ た. これ らの 化 合 物 (C8

H

l6-C

H

88) に は,有機 酸, アル コール,飽 和 お よび不飽和炭化水素 が含 まれて いた. これ らの化合物 は,働 き蜂 の コ シェブニ コ ビ腺 が生 成 す る警報 フェロモ ンには一 つ も含 まれて いな い (MauchampandGrandperrin,1982). 我 々 は,QKGを塗布 して 「疑似女王蜂」と し た働 き蜂 を用 い,女王蜂 に対 して引 き起 こされ るの と同様 の蜂球 を疑似女 王蜂 に対 して形成 さ せ る ことがで きた.疑似女 王蜂 に用 いた働 き蜂

(3)

は,試験 に用いた働 き蜂 と同 じコロニーか ら取 り出 したので,導入 した働 き蜂 または女王蜂に 対する攻撃行動の原因 となり得 るよそ者の匂 い による影響 は排除されている. WKG抽出物を塗布 した働 き蜂 に対す る巣内 の働 き蜂の攻撃的な反応 は,門番が侵入 しよう とす る他のコロニーの働 き蜂に対 して警報 フェ ロモ ンを出 しなが らとる行動に似ていた. しか し, この反応 は女王蜂に対 して蜂球を形成する ときの行動パ ターンとは異 なっていた. 我々は,蜂球に覆われた女王蜂の例に記 した ように,QKG処理 した疑似女王蜂 に対する攻 撃的または非攻撃的な行動をい くつか観察 した (YadabaandSmith,1971C).QKG処理 した 疑似女王蜂に対する蜂球形成 は,疑似女王蜂を 観察巣箱へ導入 した後 ほとんどす ぐに起 こった が,女 王蜂 を導 入 した場 合 で は,Robinson (1984) の報告によれば,蜂球の形成 までには 8.5分を要する. さらに, 蜂球形成後の持続時 間 は,無処理の女王蜂 (58分,DeHazan et a1., 1989) に比べて疑似女王蜂では短 い (7 分).これ らの差 は,撫処理の女王蜂では,分泌 腺か ら持続的に分泌物を生成 し棚状膜か ら放出 しているのに対 して,疑似女王蜂である働 き蜂 では,体表か らエタノール抽出物が速 い速度で 揮散す るためによると思われる. QKG分泌物 は 2頭の女王蜂が互 いを認知す ることと,その後の殺 し合いにおいて重要 な役 割を果たすと推測 される.女王蜂の刺針室を塞 ぐか,触角をワックスで覆 うかの両方,または いずれかの処理を行 うと,女王蜂 はお互 いを認 知 で きず 殺 し合 わ な い (Lensky et a1., 1970). さらに,女王蜂の背板腺 と刺針室をパ ラフィンで塞 ぐと,働 き蜂に対する誘引活性を 変化 させることもできる (De Hazan et a1., 1989). 棒状膜 に放出されるQKG由来のフェロモ ン 様分泌物 は,働 き蜂が警報 フェロモ ンに対 して 示す特徴的な行動パ ター ンを解発 しなかった. この分泌物 は 「自殺」 フェロモ ンとで も言 うべ き働 きをもっており, したが って各 コロニー内 の単 女 王 制維持 に役 立 っ.過 剰 な女 王 蜂 や QKG抽出物 を塗布 した疑似女王蜂 は蜂球形成 の対象 となり, コロニーか ら排除される. WKGおよび QKGに含 まれるフェロモ ンの 成分組成 は, まった く異 なる.QKG抽出物 に は,働 き蜂の警報 フェロモ ン成分(玉ocheta1., 1962;Picketteta1.,1982;Freeeta1.,1988) はひとっ も検出されなか った.

大顎腺 (Gary,1962;Yadavaand Smith,

1971a) や背板腺などか ら分泌 される他の女王 蜂 フェロモ ンが,QKG分泌物 と共力的に作用 す る可能性 も否定できない (未発表).

Ⅱ. 働 き蜂の警報 フ ェロモ ン

働 き蜂 は,巣を襲 い,花蜜や蜂蜜,花粉,蜂 児あるいは蜂 自身を盗み出そうとする多 くの侵 入者か ら, 自分達のコロニーを守 る. そのため の防衛 システムは, コロニーが生 き残 るために 必 要 不 可 欠 で あ る (Lensky et a1.,1995; Winston,1987).巣の入 り口にいる門番 は,入 ろうとするすべての蜂を途中で止め,触角を使 って念入 りに調べる.彼等 は,侵入者および他 のコロニーか らの盗蜂を,匂 いとその他の手が か りを使 って識別す ることができる.蜂の体に ついているコロニーに特異的な匂 いは,ある程 度 は遺伝的に決まってお り,また一部 は集めた 餌 の 性 質 に よ る (Hyams, 1988;Crance, 1990). 侵入者 に襲われたとき,門番はある特徴的な 行動を示 し, それは 「警戒段階」

,

「活性化段 階」

,

「誘引段階」,そ して 「絶頂段階」の4段階 (CollinsandBlum,1983)に分類で きる.響 戒 と絶頂の間では,門番 は刺針室を開けて刺針 を突 き出すか刺針行動の結果 として警報 フェロ モ ンを放出する.刺針部に付随す る分泌腺で生 成 した警報 フェロモ ンにより侵入者 はマークさ れ,その結果,他の働 き蜂が誘引されて連続的 に刺針が起 こる.刺針行動 は刺針対象が暗い色 を していたり,ざらざ らした表面 をもっていた り,動 きが あ る とよ り激 し くな る (Farrar, 1953). 働 き蜂が侵入者を刺 し,針が働 き蜂の体か ら 外れた後,針 は毒を送 り出 しなが らさらに深 く

(4)

(A) 図 1 巣門前で門番蜂に特定の匂いに対する反応を 調べる装置 Lenskyetal(1995)を改変 (A)気流を用いる方法 左のポンプで送風 し左右の送風管か ら匂いを 巣門送る通常,右側は対牌区として空気だけを 送る (B)巣門前の都城 漸下 した溶媒に溶いたフェロモンを

下 (直径 2cm)し,右側には溶媒だけを同 じような鼠 滴下 して巣門の働き蜂の反応を調べる 侵入 し続 ける. それ と同時 に,警報 フェロモ ン を発 して他の働 き蜂 を動 員 し,警戒 を促す. 働 き蜂 の警報 フェロモ ンは,大顎腺 が分泌す る 2-へブ タノ ン (2-H)と刺針部 に付属す る分 泌腺 由来 の他 の化 合物 か らな る といわれて い る. あ るコロニーの示す防衛行動 の強 さは,働 き 蜂 の齢 および コロニーの勢 い, さ らに遺伝的要 莱,気象条件 によ り影響 され る (DeHazanet a1.,1989).防衛反応 の強 さは,巣 の入 り口にい る個 々の働 き蜂, あ るいは働 き蜂 の グループの 行動 を調 べ るよ うな試験 に よ って評 価 で きる (DeHazaneta1.,1989;Blum,1992).最近 我 々は,警報 フェロモ ンの揮 発性成分 のみを使 って,実験室 内の個体毎 の, または観察巣箱 内 や巣門 にいるグループの働 き蜂 に刺激 を与 え る よ う な 実 験 装 置 と生 物 試 験 法 を 開 発 し た (Cassiereta1.,1991;1994,図 1). 門番 と外勤蜂 は大 顎腺 に2-H を生成 し, こ の物質 は2つの フェロモ ン作用 を示す. (a)刺針部 の示す効果 よ りは低 い ものの,響 戒行動 を解発す る (BochandShearer.,1967;

Bochetal,1970;Maschwitz,1964;Shearer andBoch,1965). (b)コシェブニ コ ビ腺 か ら主 に分泌 され る酢 酸 イ ソア ミル (DeHazan eta1.,1989;Free andSimpson,1968)と同程度 の刺針行動 を解 発す る. ところが,2-H は刺針部か ら分泌 され る警報 フェロモ ンの1/20か ら 1/70の効力 しか な い.2-H は外勤蜂 に対 してあ る程度 の忌避活性 も示す (BochandShearer,1967;Melksham eta1.,1988;Simpson,1966).実際,アル ファ ル ファの花 に2-Hを処理 す ると,短期 間 の忌 避 が観察 された (Rietheta1.,1986). 我 々 は,警報 フェ ロモ ンと しての2-Hの役 割 を検討 した (Valleteta1.,1991). 1. 日齢 と仕事 に伴 う

2-H

量の変化 2-H は出房 中 の働 き蜂 の大 胡腺 の ヘ ッ ドス ペースガス中か ら検 出 された (- ッ ドスペース 当た り0.1pl,Valleteta1..1991).その量 は幼 若 ホルモ ンⅢ (CassierandLensky,1991)と 同様 に,加齢 とともに増加 し,門番および外勤 蜂 で ピー クに適 した (ヘ ッ ドスペース当た り7 〝1).以前 の報告 で は

, 2

-

H

の分泌 は羽化後

2

か ら3週 間経過 してか ら始 ま るとされて いた

(Bochand Shearer, 1967;Crewe, 1976; Crewe and Hastings,1976;Kalmus and Ribbands,1952). この相違 は次 の点 が原因で あると思 われ る. すなわち, これ までの報告 で は, 破砕 した頭部 を溶媒 で抽 出 して

2-

H

を得 て いるのに対 して,我 々 は溶媒 を使 わず,切除 して磨砕 した大顎腺か ら出 る揮 発性成分 を含む ヘ ッ ドスペースガスを用 いてGLC分析 を行 っ たのであ る. イ タ リア ン品種, アフ リカ蜂化 ミツバチ, そ して それ らの交雑種 の攻 撃性 と

2

-

H

の量 との 間 に正 の相関があ るとの報告 があ る (Kalmus and Ribbands,1952).我 々の分析 では

,

「お とな しい」 イ タ リア ン種 の コロニーか ら採取 し た働 き蜂 と

,

「荒 い」 雑種 (Apis mellifera ligusticaxA.m.syn'aca)の コロニーか ら得

た働 き蜂 との間 に,2-H量 の有意 な差 はなか っ た. さ らに,南 アフ リカ産 のA.m.adansonii

(5)

量 は同程度であった (Crewe and Hastings, 1976). 品種が異なる蜂の防衛行動の強 さと, 大顎腺か ら分泌 され る 2-H の量 は関連 がない と思われる. 2. 2-Hの 警 報 フ ェ ロモ ンお よ び餌 場 マ ー キ ング フ ェロモ ンと しての役割 2-H は一般的 に警報 フェロモ ンであると考 え られているが,我々の結果はこの考えを支持 しなか った.2-Hの刺針部か ら放出される警報 フェロモ ンに対す る共力作用(Tel-Zur,1993) も無視で きるものであった.一方,門番および 外勤蜂 は 2-Hを忌避す る.例えば,2-Hを処理 したワックス製の花には,外勤峰に対す る短期 間の忌避効果を持っ. したが って,2-H は 「餌 場 マーキングフェロモ ン」 として作用す ると思 われる. これ らの結果により,以前の,および 最近の報告を確かめることができた (Free et a1.,1985;Giufraand Nunez,1992ほか).

3.

刺 針部 と付属 腺 機械的な,そ して化学的な防御器官 として効 果的に機能す る刺針部 は第7節 の背板 と腹板 の間の刺針室の中にある. いくつかの分泌腺 と 器官が働 き蜂の刺針郡に接続 していて,そこか ら警報 とコロニー防御に使 う匂 いのブレンドが 生成 される(Winston,1987).毒腺,毒蛮およ びデュフォー腺が フェロモ ンを生成するとの報 告 はない (Blum,1992).方形基板の上部に位 置 す る コ シ ェ ブ ニ コ ビ 腺 は, 淋 状 腰

(Mauchamp and Grandperrin, 1982; Maschwitz,1964)に蓄積 される智報 フェロモ

ンの分泌 (Blum,1992;CassierandLensky,

1992)に関与 している.この膜 は刺針を突 き出 したときに放出されるフェロモ ンの重要なブレ ン ドを行 う部位であるに も関わ らず,攻撃 され た蜂に非常 に特徴的なこの化学 シグナルの分泌 源 となることに関 してはこの膜 に対する認識 は 末だ定着 していない (Blum,1992).その他の 分泌腺 も刺針か ら放出される等報 フェロモ ンの 生成 に関わ っている. 働 き蜂の刺針部抽出部 か ら

,40

種類以上 の 化合物が同定 され, 6種の主成分は警戒行動を 解発す る (Collinsand Blum,1983;Blum,

1992;Rietheta1.,1986).ところが, コシェ ブニコビ腺だけが少な くとも警報 フェロモン成 分のい くつかを生成することが明 らかとなった (GrandperrinandCassier,1983).刺針部の 様々な部分を使 って門番を刺激 し,門番の示 し た防御反応の強 さ (警戒,誘引,刺針)を調べ たところ,以下の順で弱 くなることがわか った (Valleteta1.,1991). 針全体 >楯状膜 >刺針付属突起 >毒腺および 毒嚢 >毒 >コシェブニコビ腺>Dufour腺

4.

警報 フ ェロモ ンの分 泌 お よび その分布 に関連 す る分 泌腺 お よび器 官

4.

1

.

コシェブ二コビ腺 WKGとQKGの フェロモ ンの成分組成 はま った く異なる.MauchampandGrandperrin (1982)によると,溶媒を使わずにWKGの揮 発性成分をガスクロマ トグラフィで分析 した結 果,酢酸 イソア ミル, イソア ミルアルコール, 酢酸 へキシル, ノナノール,酢酸ベ ンジル,ベ ンジルアルコールが検出された. 4.2.刺針付属突起 コシェブ二コビ腺の揮発性成分によって起 こ る防御行動の強 さは,付属突起 による反応より もず っと弱い,付属突起 とコシェプニコビ腺の 両方か ら放出される揮発性成分は,動員活性を もってお り, したが って共力作用があると思わ れる.付属突起か ら分泌 される揮発性成分 と, 棟状膜の表面 に蓄積 され る物質が同一の化合物 であるかどうかは,現在検討中である.実験室 内で個々の働 き蜂による刺針行動 は,棟状膜あ るいは付属突起で刺激 したときのみに見 られ, その他の分泌腺 または器官で刺激 して も見 られ なか った.巣門において門番を刺激 した場合で も同 様 の結 果 が得 られ た (Cassier et a1., 1994;TeトZur,1993). 4.3 赫状膜 巣の入 り口にいる門番 に,棟状膜由来の揮発 性成分を与え,門番の誘引,警戒,刺針行動を 観察 した. その結果 は Cassierand Lensky

(6)

(奉誌p.118-124)に示 した. 試験 した器官の中で,頼状膜の揮発性成分 が 門番 に対 して最 も強 い防衛反応 を起 こさせ た (Lensky etal,1991). 頼状膜 の表面 に存在す る分泌物 には,酢酸 イ ソア ミル, イソア ミルアルコール,酢酸 へキ シ ル, ノナノ-ル,酢酸 ベ ンジル,ベ ンジルアル コ ー ル が 含 ま れ て い た (Mauchamp and Grandperrin,1982).錬状膜 (第9背板)は付 属突起 に直接っなが っていて,針の基部の周囲 を取 り囲んでいる.耕状膜 は, クチクラの陥入 お よび無数 に分裂 した とげに厚 く覆 われて い て,蒸散面積 を非常 に大 きくしている.棟状膜 は, ほかの場所で分泌 されその表面 に蓄積 され た警報 フェロモ ンを放出す るプラッ トホームの 役割を している. (著者 の住所 は下記参照 翻訳 松山 茂) 主な引用文献

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