父親のワーク・ライフ・バランスと夫婦関係、家族
の精神的健康および家族機能との関連 : 児童期の
子どもをもつ家庭における検討
著者
尾形 和男
雑誌名
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇
巻
20
ページ
99-112
発行年
2020-12-01
URL
http://id.nii.ac.jp/1354/00001328/
となっており主要先進国の中でも一番短い時 間となっている(内閣府, 2018)。このような 状況にある現在、我が国の子育ては母親に とって孤独で子育てしづらい環境にあると いっても過言ではない。 父親の家庭関与は視点を変えればワーク・ ライフ・バランス(以下WLB)に関わる問 題そのものである。つまり、家庭関与と仕事 関与の両立の在り方を問う問題であり、WLB の問題を扱っていることと同義である。WLB は仕事を抱える親の生き方の問題でもあり、 質の高い生活を送るための方法の一つにも繋 がる。家庭と仕事への関わりのあり方は夫婦 関係の良し悪しにも影響し、そのことがさら に家族成員の精神的健康にも影響をもたらす はじめに 近年、女性の社会進出に伴い男性の役割の 在り方が改めて問われ始めており、男性の子 育てを始めとする家庭関与の必要性が今まで 以上に叫ばれるようになっている。 現在の男性の家庭関与はどのような状況で あろうか。子ども・子育てビジョン(2010年 閣議決定)に照らしてみると、2008年男性の 育児休業取得率は1.23%であり2017年には 10 % 目 標 を 掲 げ て い る も の の2018年 現 在 6.16%に留まっている(厚生労働省, 2019)。 一方、男性の6歳未満児を持つ家事・育児関 与時間については2017年に1日2時間30分の 目標を掲げているものの、現実は1時間23分
家族の精神的健康および家族機能との関連
─ 児童期の子どもをもつ家庭における検討 ─
Relationships Between the Work-life Balance of Fathers,
Marital Relations, Family Mental Health, and Family Function
A Study in Families with Children during Childhood
尾 形 和 男
OGATA, Kazuo 児童期の子どもを養育している家庭の父親のワーク・ライフ・バランスのあり方が家 族の夫婦関係、家族成員のストレス、家族機能形成に及ぼす影響について、共働き家庭 と専業主婦家庭について分析検討した。その結果、両家族共に父親が家庭関与を中心と した生活形態をとる場合に、夫婦関係が良好であり、家族成員のストレスも低く、更に 健康な家族機能形成も確認された。 キーワード : 父親のワーク・ライフ・バランス、児童期、夫婦関係、家族の精神的健康、家族機能 Key words : work-life balance of father, childhood, marital relations, family mental health, family function親のストレスを介して子育てに影響を及ぼし、 しかも子どもの発達に影響することは先行研 究によって示されている(尾形・宮下, 1999; 尾形・宮下・福田, 2005)。 一方、夫婦関係のあり方が時間かけて家族 のあり方(家族機能)を形成していくことも 指摘されている。例えば夫婦で家庭内の問題 を話し合いながら解決して行く場合は民主的 な家族になっていくが、一方が話し合いによ らずに親が一方的に決定して行く場合には権 威的な家族としての特徴を形成していくこと になる。しかも、この家族機能は家族成員の 行動にも影響をもたらすことも指摘されてお り(尾形, 2006)、父親の家族のあり方に及ぼ す影響は大きいものがある。以上のことは、 父 親 のWLBと て の み 論 じ る こ と は で き ず、 共に生活する母親の生活の在り方にも影響を もたらす問題でもある。育児不安(牧野, 1983:大日向, 1988など)、多重役割(戸肥・ 広沢・田中, 1990:福丸, 2000など)、家事分 担の不公平感(岩間, 1997:諸井, 1996など) の問題、結婚生活の不満(柏木・数井・大野, 1996)に関わる問題でもある。このことに関 連して、稲葉(2005)は妻のストレス軽減の ためには夫の精神的支えが必要であると指摘 している。 以上の視点に基づき本研究では、子育てに 負担のかかる児童期の子育てに当たっている 父親の生活の在り方が家族成員に及ぼす影響 について検討する。特に、専業主婦家庭と共 働き家庭では母親の就業の有無も関連するた めに、両家族形態の比較を行う。その際、夫 婦関係、父親自身のストレス、母親のストレ ス、子どものストレス、家族機能について検 討を加え、より望ましいWLBのあり方を探 ることを目的とする。 のであり(尾形・坂西・福田・森下, 2014)、 まさに家族全体の問題ともいえる。 さて、WLBに関してみると、生活の主体 である家族の各ライフステージにはそれぞれ の生活の仕方が存在する。このことについて、 望月(1980)は各ステージには家族の発達課 題があるとしている。それによると、各ライ フステージには対社会との関係の中に家族と して取らなければならない課題があり、それ は役割の配分・遂行、夫婦関係の再調整など を含む。特に子どもが幼少期において、子育 てと仕事の分担調整を通し夫婦は多くのエネ ルギーを使うことになるが、そのことが夫婦 関係にも影響を及ぼすことが指摘されている (例えば、加藤, 2004;小泉・菅原・前川・北 村, 2003;森下, 2014;尾形・坂西・福田・森 下, 2014)。さらに子育て期は小学校から高校 までの年齢の幅のある子どもを育てている時 期であるが、幼児期は子どもの身辺の世話を 中心とする子育てと家庭関与が中心であり、 小学校段階では子どもが家庭内に関わるよう にもなり、親としての新たな対応が求められ るようになる。学校であった出来事について の相談やアドバイス、進学のことについて子 どもや夫婦で話し合ったりなど生活スタイル が新しくなって行くのであり、夫婦役割変化、 親子関係の変化など親としての家庭関与のあ り方が変化してくる。これに関連し、望月 (1980)はライフステージの「学童期」に求 められる親の役割の配分・遂行として「子の 成長による親役割の再検討」「子の家庭役割 への参加」「夫婦関係の再調整」「余暇時間の 設計」「家族の生活時間の調整」「妻の就業に よる役割分担の調整」を取り上げている。 また、父親のWLBに関して、父親の家庭 関与は夫婦関係の在り方に影響し、それが母
結果 1.調査協力者の基本的属性 本調査では418世帯のデータが得られたが、 夫婦が揃っている家庭386世帯、単身家庭31 世帯、不明1世帯であり、本研究の目的に沿っ て夫婦が揃っている386世帯を分析の対象と した。 親の職業について父親では会社員が61.6%、 公務員10.4%、自営業10.1%、教員1.0%、そ の他8.3%であった(無回答8.6%)。年齢につ いては、20歳代2.1%、30歳代37.6%、40歳代 52.8%、50歳代4.9%、60歳代0.5%であり全 体の平均年齢は36.35歳(SD=6.38)であっ た(無回答2.1%)。母親はパートタイムが一 番多く44.6%、次いで専業主婦34.7%、会社 員6.7%、教員4.9%、公務員2.8%、その他6.0% であった(無回答0.3%)。年齢は20歳代2.6%、 30歳 代52.3 %、40歳 代41.5 %、50歳 代1.6 %、 60歳代0.3%であり、全体の平均年齢は34.35 歳(SD=5.89)であった(無回答1.7%)。また、 子 ど も の 平 均 年 齢 は9.33歳、 性 別 は 男 児 50.5%、女児46.7%であった(無回答2.8%)。 2.質問紙の構造化 本研究で使用した質問紙がどのような構造 から成っているのかを明らかにするために構 造化を図った。 (1) 父親のWLB 父親のWLBを調べるために、専業主婦家 庭、共働き家庭の両家族形態をまとめ質問紙 について因子分析(最尤法、Promax回転) を行った(以下(2)~(6)の質問紙につ いても同様の手続きを取った)。因子負荷量 の絶対値.35以上を基準に4因子20項目を採 方法 【調査協力者】東京都、千葉県、愛知県に在 住の児童をもつ家庭の母親および父親。 【調査期間および手続き】2011年9月から 2012年3月にかけて、各地域の小学校の協力 のもと小学校を通して児童の保護者に調査用 紙を配布した。実施に当たり、趣旨説明と個 人情報の保護などについて説明し協力して頂 ける家庭に配布した。回収は、小学校との相 談から郵送と小学校を通しての回収と2通り の方法で行った。いずれの方法においても回 収用の封筒を用意し、父親用・母親用の各調 査票を個別の封筒に入れ、回収用封筒にまと めて提出するよう求めた。 【調査内容】 1.調査協力者の属性。協力者の属性として ①母親および父親の年齢と職業、②家族 構成③子どもの年齢及び性別を尋ねた。 2.WLBの状態(22項目)。仕事-家庭間の バランスの現状、余暇時間の使用、地域 との関わりについて父親および母親に尋 ねた。尺度は尾形(2010)を参考に構成 した。 3.夫婦関係(20項目)。夫婦間の関係につ いて、諸井(1996)を参考に構成した。 4.父親、母親、子どものストレス状態(20 項 目 )。 清 水・ 今 栄(1981) のSTATE-TRAITANXIETY INVENTORY 日 本 語 版 を参考に構成した。 5.家族機能を測定する質問紙(20項目)。 Bloom(1985)を基にして、15領域のう ち4領域(結合性、表現性、権威的、民 主的)を用いた。 上記2~5の質問紙の回答は5段階評定で ある。
(3)妻のストレス 妻のストレスを測定する質問紙については2 因子20項目を採用した。第1因子は「現在の ストレス」、第2因子は「ストレスの感じや す さ 」 と 命 名 し た。 α 係 数 は そ れ ぞ れ、.901、.892と高い信頼性を有しているこ とが確認された(Table3)。 (4)夫の見る夫婦関係 夫の見る夫婦関係を調べる調査用紙につい ては4因子20項目を採用した。第1因子は「夫 婦のコミュニケーション」、第2因子は「安 定した夫婦関係」、第3因子は「妻への要望」、 第4因子は「「相互の信頼」と命名した。また、 用した。第1因子は「仕事中心の生活」、第 2因子は「「家族との交流」、第3因子は「余 暇活動の活用」、第4因子は「近隣への関わり」 と命名した。第1因子から第4因子のα係数 は順に、.807、.765、.748、.780でありいずれ も高い信頼性が確認された(Table1)。 (2)妻の見る夫婦関係 妻の見る夫婦関係を調べる調査用紙につい ては2因子20項目を採用した。第1因子は「満 足感」、第2因子は「夫への要望」、また、第 1 因 子 と 第 2 因 子 の α 係 数 は そ れ ぞ れ.931、.781であり高い信頼性を有している ことが示された(Table2)。 Table1 父親のワーク・ライフ・バランスについての因子分析結果(最尤法、Promax回転後)
項 目 Fac1 Fac2 Fac3 Fac4
仕事中心の生活(α= .807) 12. 私は仕事がうまく行っているときは、表情に出やすい .758 .061 .058 -.026 11. 私は仕事が順調なとき、家族とよく話をする .748 .161 -.053 .018 13. 私は仕事の話をするとき、生き生きとしていると思う .689 -.029 -.155 .086 10. 私は休暇のときでも仕事のことが頭から離れないことがある .607 -.075 .056 -.044 8. 私は家族と話をするとき、仕事のことが多い .587 -.207 -.074 .001 9 私は仕事のことで悩んだり喜んだりしている .471 .026 .169 .007 家族との交流(α= .765) 3. 私は休暇のとき、家族のみんなを誘って出かけることがある .054 .705 .031 -.086 1. 私は休暇のとき、妻と一緒にいる時間を大事にしている .030 .667 -.011 .009 2. 私は家族と食事をするとき、仕事のことだけでなくいろいろな話をしている -.019 .629 -.091 -.040 6. 私は休暇のとき、家族とかかわらず、一人でのんびりしていることがある * .087 -.561 .161 -.091 4. 私は子どもの将来のことについてよく相談にのる .026 .535 .009 .046 19. 時間を作って妻と旅行などに行きたいと思う .083 .484 .239 .007 5. 私は忙しくて家族との会話が少ない * .214 -.383 -.044 -.095 余暇時間の活用(α= .748) 21. 自分の趣味など時間をとってゆっくりと楽しむのが好きだ -.026 .025 .862 -.084 20. 時間を作って、自分が楽しめることをしたいと思う .007 .091 .772 -.011 14. 私は時間があるときは、自分の趣味を行うことがある -.049 -.008 .511 .080 15. 日曜日などは自分の時間を作って楽しむ .022 -.275 .493 .132 近隣への関わり(α= .780) 16. 町会など近隣の仕事に関わるのは楽しい .940 .034 .053 .940 17. 町会など近隣の仕事に関わるのはおっくうである * -.726 -.018 .043 -.726 22. 休日など地域との関わりが多い方だ .582 -.004 .054 .582 因子間相関 Fac1 Fac2 .037 Fac3 .318 .021 Fac4 .103 .087 -.022 *逆点項目
数は、.901、.871であり、いずれも高い信頼 性が確認された(Table6)。 (7)家族機能 家族機能を測定する質問紙については4領 域(各5項目)を用いた。各領域の質問項目 は次に示す。 ①結合性(「私の家族では、お互いに助け合っ たり元気づけあうことがよくある」「私の家 族は一体感を持っている」など)。 ②表現性(「家族のみんなは、思ったことを 自由に話す」「何か問題が起こっても、家族 で話し合ってみんなで解決する」など)。 ③権威的(「私の家族では、親が重要な決定 を行うことがある」「私の家族では、規則を 破ると厳しく罰する」など)。 第1因子から第4因子のα係数はそれぞ れ.922、.908、.781、.765であり高い信頼性を 有していることが示された(Table4)。 (5)夫のストレス 夫のストレスを測定する質問紙についは2 因子20項目を採用した。第1因子は「ストレ スの感じやすさ」、第2因子は「現在のスト レス」と命名した。第1因子と第2因子それ ぞれのα係数は.880、.855であつた(Table5)。 (6)子どものストレス 子どものストレスを測定する質問紙につい ては2因子19項目を採用した。第1因子は「ス トレスの感じやすさ」、第2因子は「現在の ストレス」と命名した。またそれぞれのα係 Table2 妻の見る夫婦関係についての因子分析結果(最尤法、Promax回転後) 項 目 Fac1 Fac2 満足感(α= .931) 9. 夫との関係によって、私は幸福である .915 -.027 7. 私と夫の関係は、非常に安定している .901 -.036 11. 私は夫婦関係のあらゆるものを思い浮かべると、幸福だと思う .876 -.055 6. 私たちは、申し分のない結婚生活を送っている .869 -.067 8. 私たちの夫婦関係は、強固である .868 .008 13. 夫婦でお互いを思いやっている .859 -.017 14. 私が悩んでいるとき夫は相談相手になってくれる .831 -.014 10. 私は、まるで自分と夫が同じチームの一員のようであると、ほんとうに感じている .825 -.071 2. 夫にはいろいろな話ができる .793 .048 12. 夫は夫婦の会話を大切にしている .787 .002 19. 私は夫を尊敬している .780 .090 3. 私は夫とは何でも話ができる .742 .043 5. 私は夫から受け入れられている .730 .100 20. 私は夫とできるだけ一緒に出かけたり、旅行がしたい .716 .076 1. 私は夫と納得の行くまで話をすることが良くある .678 .058 4. 夫には頼みたいことがあっても何となく言い出しにくい * -.392 .0238 夫への要望(α= .781) 16. 夫には家庭や家族のことについてできるだけ関心を持ってほしい .022 .803 17. 夫には私の話を良く聞いてほしい .072 .794 18. 夫には今以上にかかわりを持ってほしい -.225 .685 15. 夫には私の考えを受け入れて尊重してほしい .120 .615 相関係数 Fac1 Fac2 .316 *逆点項目
関与型」「仕事中心型」「家庭・近隣交流型」 とした。「仕事中心型」は家庭関与と近隣関 与が他のクラスターよりも低く、家庭関与が 低いことが指摘できる。また、「家庭・近隣交 流与型」は家庭関与と近隣関与が他のクラス ターよりも一番高く家庭と近隣との関わりを 中心とした生活の特徴が示されている。 (9)父親のWLBが、夫婦関係、夫婦と子ど ものストレス、家族機能形成に及ぼす 影響について 父親のWLBの状況が家族にどのような影 響をもたらしているのかを明らかにするため にWLBを独立変数、夫婦関係、夫婦と子ど ものストレス、家族機能を従属変数とする一 元配置分散分析を行った。ここでは専業主婦 家庭と共働き家庭ぞれぞれに関して事前に多 変量検定内の分散共分析行列の等質性の検定 ④民主的(「家族のメンバーは、生活の決ま りを共に作ってきた」「家族のメンバーは、 問題解決にあたって、意見を出して解決しよ うとする」など)。①~④の各5項目のα係 数は順に、.839、.876、.655、754であり、安 定性が確認された。 (8)父親のWLBの状況 父親のWLBについて、(1)で抽出された 4因子(「仕事中心の生活」「家族との交流」「余 暇活動の活用」「近隣との関わり」)を基にク ラスター分析(平方ユークリッド距離、Ward 法)を実施した。デンドログラムを参考にし て、解釈可能な3クラスターを採用した。各 クラスターの特徴を明確にするためにWLB の下位尺度得点をZ得点に変換しクラスター ごとに示したものがFigure1である。それぞ れの特徴に基づいて、「仕事・家庭・余暇時間 Table3 妻のストレスについての因子分析結果(最尤法、Promax回転後) 項 目 Fac1 Fac2 現在のストレス(α= .901) 7. 私はイライラしている .876 -.100 6. 私はピリピリしている .876 -.083 2. 私は安心している * -.717 .080 9. 私はリラックスしている * -.688 .005 8. 私はなにかしら緊張している .685 .063 4. 私は不安である .660 .113 5. 私は気分がよい * -.642 .016 1. 私は平静である * -.570 .031 3. 私は何かまずいことが起こりそうで心配である .555 .166 ストレスの感じやすさ(α= .892) 15. 実際には大したこともないことが気になってしかたがない .006 .844 14. 私は困難なことが重なると圧倒されてしまう -.092 .830 18. 私はささいなことに思いわずらうことがある .013 .829 16. 私は物事を難しく考える傾向がある -.016 .823 19. 私はひどくがっかりしたときには気分転換ができない .095 .659 13. 私はすぐに決心がつかず迷いやすい -.050 .639 20. 身近な問題を考えるとひどく緊張し混乱する .270 .552 17. 私はやっかいなことは避けて通ろうとする -.124 .493 11. 私は疲れやすい .083 .389 因子相関 Fac1 Fac2 .648 *逆点項目
夫婦関係」でも同様に3クラスター間に有意 差が確認された(F(2, 229)=29.37, p<.001)。 多重比較の結果、クラスターⅠとⅢはクラス ターⅡよりも優位に高いことが確認された。 また「妻への要望」でも3クラスター間に有 意 差 が 示 さ れ た(F(2, 227)=3.34, p<.05) ので多重比較行ったところクラスターⅠがク ラスターⅢよりも優位に高い傾向のあること が示された。さらに「相互の信頼」について も3クラスター間に有意差が確認された(F (2, 226)=26.60, p<.001)ので多重比較を行っ たところクラスターⅠとⅢはクラスターⅡよ りも優位に高いことが示された。以上のよう に、父親のみる夫婦関係については肯定的な を行ったところ、共働き家庭が5%水準、専 業主婦家庭が1%水準の有意差が確認され従 属変数の等質性が保障されないので、両家族 形態共に従属変数を一括投入し分析を行った。 ここでは共働き家庭と専業主婦家庭別々に 結果を示す。 ①共働き家庭 Table7に示すように、父親のみる夫婦関 係の「コミュニケーション」では3クラスター 間に有意差が確認された(F(2, 227)=29.79, p<.001)。多重比較(Bonferroni、以下同様) の結果クラスターⅠとⅢはクラスターⅡより も優位に高いことが確認された。「安定した Table4 夫の見る夫婦関係についての因子分析結果(最尤法、Promax回転後)
項 目 Fac1 Fac2 Fac3 Fac4
夫婦のコミュニケーション(α= .922) 12. 夫は夫婦の会話を大切にしている .855 -.100 -.073 -.010 11. 私は夫婦関係のあらゆるものを思い浮かべると、幸福だと思う .829 .157 -.035 -.153 13. 夫婦でお互いを思いやっている .807 .074 -.018 -.003 19. 私は夫を尊敬している .774 -.057 -.044 .001 20. 私は夫とできるだけ一緒に出かけたり、旅行がしたい .717 -.024 .146 -.019 14. 私が悩んでいるとき夫は相談相手になってくれる .677 -.051 -.038 .206 10. 私は、まるで自分と夫が同じチームの一員のようであると、ほんとうに感じている .596 .127 .005 .046 9. 夫との関係によって、私は幸福である .548 .388 -.005 -.001 安定した夫婦関係(α= .908) 7. 私と夫の関係は、非常に安定している .090 .831 .035 .038 8. 私たちの夫婦関係は、強固である .304 .607 .005 .024 6. 私たちは、申し分のない結婚生活を送っている .262 .588 .070 .032 5. 私は夫から受け入れられている .273 .531 -.040 .083 妻への要望(α= .781) 17. 夫には私の話を良く聞いてほしい -.021 -.058 .919 .035 16. 夫には家庭や家族のことについてできるだけ関心を持ってほしい -.103 .156 .729 -.037 15. 夫には私の考えを受け入れて尊重してほしい .112 -.093 .592 .103 18. 夫には今以上にかかわりを持ってほしい -.026 .010 .576 -.133 相互の信頼(α= .765) 2. 夫にはいろいろな話ができる .151 .039 -.002 .818 3. 私は夫とは何でも話ができる .188 .007 -.026 .758 4. 夫には頼みたいことがあっても何となく言い出しにくい * .311 -.376 .108 -.446 1. 私は夫と納得の行くまで話をすることが良くある .241 -.007 .113 .397 相関係数 Fac1 Fac2 .711 Fac3 .292 .152 Fac4 .676 .469 .189 *逆点項目
Table5 夫のストレスについての因子分析結果(最尤法、Promax回転後) Table6 子どものストレスについての因子分析結果(最尤法、Promax回転後) 項 目 Fac1 Fac2 ストレスの感じやすさ(α= .880) 14. 私は困難なことが重なると圧倒されてしまう .832 -.147 13. 私はすぐに決心がつかず迷いやすい 795 -169 18. 私はささいなことに思いわずらうことがある .741 .028 15. 実際には大したこともないことが気になってしかたがない .723 .057 20. 身近な問題を考えるとひどく緊張し混乱する .673 .104 16. 私は物事を難しく考える傾向がある .659 .033 17. 私はやっかいなことは避けて通ろうとする .640 -.265 19. 私はひどくがっかりしたときには気分転換ができない .631 .130 10. 私は心配事が多い .359 .337 12. 私は他の人と同じくらい幸せであったならと思う .358 .121 現在のストレス(α= .855) 2. 私は安心している * .093 -.754 9. 私はリラックスしている * .157 -.734 1. 私は平静である * .189 -.688 5. 私は気分がよい * .110 -.640 7. 私はイライラしている .122 .607 6. 私はピリピリしている .043 .607 4. 私は不安である .304 .471 8. 私はなにかしら緊張している .260 .461 3. 私は何かまずいことが起こりそうで心配である .299 .388 因子相関 Fac1 Fac2 .569 *逆点項目 項 目 Fac1 Fac2 ストレスの感じやすさ(α= .901) 15. 実際には大したこともないことが気になってしかたがない .857 -.067 18. 子どもはささいなことに思いわずらうことがある .805 -.020 16. 子どもは物事を難しく考える傾向がある .792 -.018 14. 子どもは困難なことが重なると圧倒されてしまう .769 -.098 20. 身近な問題を考えるとひどく緊張し混乱する .735 .055 19. 子どもはひどくがっかりしたときには気分転換ができない .590 .047 10 子どもは心配事が多い .564 .202 13. 子どもはすぐに決心がつかず迷いやすい .545 -.015 3. 子どもは何かまずいことが起こりそうで心配である .417 .318 17. 子どもはやっかいなことは避けて通ろうとする .402 .041 11. 子どもは疲れやすい .382 .209 現在のストレス(α= .871) 6. 子どもはピリピリしている -.153 .990 7. 子どもはイライラしている -.149 .986 8. 子どもはなにかしら緊張している .264 .514 2. 子どもは安心している * -.138 -.496 5. 子どもは気分がよい * .009 -.473 1. 子どもは平静である * -.116 -.465 9. 子どもはリラックスしている * -.108 -.461 4. 子どもは不安である .335 .402 因子相関 Fac1 Fac2 .589 *逆点項目
Ⅲよりも高い傾向があることが示された。こ のように、母親のみる夫婦関係の「満足感」 は「仕事・家庭・余暇時間関与型」と「家庭・ 近隣交流型」の生活形態において強くみられ ることが示された。 母親のストレスについては「現在のストレ ス」にのみ有意な差が確認され(F(2, 223) =4.91, p<.01)、多重比較の結果「仕事中心型」 が「仕事・家庭・余暇時間関与型」よりも有 意に高いことが確認された。子どものストレ スについては「ストレスの感じやすさ」「現 在のストレス」ともにクラスター間の有意差 は確認されなかった。 さらに家族機能についてみると、全ての家 族機能においてクラスター間の有意差が確認 された。多重比較の結果「結合性」について は(F(2, 226)=11.16, p<.001)であり、ク ラスターⅠとⅢはクラスターⅡよりも有意に 高いことが示された。「表現性」については(F (2, 226)=8.89, p<.001)であり、クラスター ⅠはクラスターⅡ、Ⅲよりも有意に高く、さ らにクラスターⅢはクラスターⅡよりも有意 に高いことが示された。「権威的」について は(F(2, 226)=4.97, p<.01)であり、クラ 夫婦関係についての意識は「仕事・家庭・余 暇時間関与型」と「家庭・近隣交流型」が「仕 事中心型」よりも優位に高いことが示され、 家庭中心の関わりを主体としたWLBが良好 な夫婦関係意識を形成していることが示され ている。 また、父親のストレスについてみると「ス トレスの感じやすさ」に関して、3クラスター 間に有意差が確認された(F(2, 226)=5.72, p<.01)。多重比較の結果クラスターⅡがⅢよ りも有意に高いことが示された。「現在のス トレス」についても3クラスター間に有意差 がみられ(F(2, 224)=7.45, p<.01)、多重比 較の結果クラスターⅡはⅢよりも有意に高く、 しかもクラスターⅠよりも有意に高い傾向が 示された。以上のように、父親のストレスは 「仕事中心型」において強く生じていること が確認された。 次に母親のみる夫婦関係については、「満足 感」において3クラスター間に有意な差が確 認 さ れ た の で(F(2, 224)=21.56, p<.001) 多重比較を行ったところ、クラスターⅠとⅢ はクラスターⅡよりも有意に高いことが確認 された。さらに、クラスターⅠはクラスター Figure1 父親のワーク・ライフ・バランス ‐1 ‐0.8 ‐0.6 ‐0.4 ‐0.2 0 Z 0.2 0.4 0.6 0.8 仕事関与 家庭関与 余暇時間 近隣 仕事・家庭・余暇時間関与型 仕事中心型 家庭・近隣交流型
多重比較の結果、クラスターⅠとⅢはクラス ターⅡよりも優位に高いことが確認された。 また「妻への要望」でも3クラスター間に有 意 差 が 示 さ れ た(F(2, 124)=3.09, p<.05) ので多重比較行ったところクラスターⅠがク ラスターⅢよりも優位に高いことが示された。 さらに「相互の信頼」についても3クラスター 間に有意差が確認された(F(2, 123)=14.01, p<.001)ので多重比較を行ったところクラス ターⅠとⅢはクラスターⅡよりも有意に高い ことが示された。以上のように、父親のみる 夫婦関係については肯定的な夫婦関係につい ての意識は「仕事・家庭・余暇時間関与型」 と「家庭・近隣交流型」が「仕事中心型」よ りも有意に高いことが示され、家庭中心の関 わりを主体とした生活形態が良好な夫婦関係 意識を形成していることが示されている。 父親のストレスについては、「ストレスの感 じやすさ」について3クラスター間に有意差 の傾向があることが示されたので(F(2, スターⅠはクラスターⅡよりも有意に高く、 クラスターⅢよりも高い傾向が確認された。 さらに「民主的」については(F(2, 224)=9.80, p<.001)であり、クラスターⅠとⅢはクラス ターⅡよりも有意に高いことが示された。以 上のように、家族機能形成に関しては「仕事・ 家庭・余暇時間関与型」と「家庭・近隣交流 型」の生活形態が「仕事中心型」よりも、健 全な家族機能形成に強く関わっていることが 示されたといえる。 ②専業主婦家庭 Table8に示すように、父親のみる夫婦関 係の「コミュニケーション」では3クラスター 間に有意差が確認された(F(2, 124)=19.84, p<.001)。多重比較(Bonferroni、以下同様) の結果クラスターⅠとⅢはクラスターⅡより も優位に高いことが確認された。「安定した 夫婦関係」でも同様に3クラスター間に有意 差が確認された(F(2, 125)=10.09, p<.001)。 Table7 父親のワーク・ライフ・バランスのタイプ間の夫婦関係の認識、 家族成員の精神的健康、家族機能の平均値の比較(共働き家庭) Ⅰ . 仕事・家庭・ 余暇時間関与型 Ⅱ . 仕事中心型 Ⅲ . 家庭・近隣交流型 M(SD)N M(SD)N M(SD)N F検定 多重比較(Bonferroni) 父親 (夫婦関係についての認識) コミュニケーション 4.24(.64)73 3.46(.74)91 4.01(.59)66 F(2,227)=29.79*** Ⅰ・Ⅲ>Ⅱ*** 安定した夫婦関係 4.13(.71)74 3.29(.79)91 3.91(.71)67 F(2,229)=29.37*** Ⅰ・Ⅲ>Ⅱ*** 妻への要望 3.45(.92)74 3.18(.68)90 3.13(.78)66 F(2,227)=3.34* Ⅰ>Ⅲ† 相互の信頼 3.89(.66)74 3.11(.69)90 3.65(.77)65 F(2,226)=26.60*** Ⅰ・Ⅲ>Ⅱ*** (ストレス) ストレスの感じやすさ 2.78(.72)73 2.89(.68)90 2.52(.71)66 F(2,226)=5.72** Ⅱ>Ⅲ** 現在のストレス 2.54(.67)71 2.78(.59)90 2.40(.62)66 F(2,224)=7.45** Ⅱ>Ⅲ**, Ⅱ>Ⅰ† 母親 (夫婦関係についての認識) 満足感 3.98(.72)73 3.17(.86)89 3.69(.81)65 F(2,224)=21.56*** Ⅰ・Ⅲ>Ⅱ***,Ⅰ>Ⅲ† 夫への要望 3.88(.69)73 3.66(.82)88 3.79(.69)67 F(2,225)=1.72 (ストレス) ストレスの感じやすさ 2.95(.69)72 3.07(.79)87 3.00(.84)65 F(2,221)=.502 現在のストレス 2.55(.65)72 2.90(.72)88 2.77(.76)66 F(2,223)=4.91** Ⅱ>Ⅰ** 子ども (ストレス) ストレスの感じやすさ 2.58(.74)71 2.64(.73)91 2.67(.66)66 F(2,225)=.31 現在のストレス 2.15(.65)73 2.32(.64)90 2.31(.65)66 F(2,226)=1.74 家族機能 結合性 4.26(.61)74 3.56(.67)90 4.07(.59)67 F(2,226)=11.16*** Ⅰ・Ⅲ>Ⅱ*** 表現性 3.93(.56)73 3.27(.67)90 3.60(.74)66 F(2,226)=8.89*** Ⅰ>Ⅱ***,Ⅰ>Ⅲ**,Ⅲ>Ⅱ** 権威的 3.23(.64)74 2.92(.64)89 2.99(.66)66 F(2,226)=4.97** Ⅰ>Ⅱ**,Ⅰ>Ⅲ† 民主的 3.50(.57)73 3.08(.62)89 3.32(.65)65 F(2,224)=9.80*** Ⅰ>Ⅱ***,Ⅲ>Ⅱ* ***p<.001 **p<.01 *p<.05 † p<.10
ストレス」においてのみ3クラスター間の有 意差が確認されたので(F(2, 120)=3.85, p<.05)、多重比較を行ったところクラスター ⅡがクラスターⅢよりも有意に高いことが確 認された。つまり夫が仕事中心の生活形態の 場合に家庭と近隣との交流を図る場合以上に 妻のストレスが高いことが示された。子ども のストレスについては「現在のストレス」に おいて3クラスター間の有意な差の傾向が確 認されたので(F(2, 125)=3.02, p<.10)、多 重比較を行ったところ、クラスターⅡがクラ スターⅢよりも有意に高いことが確認された。 つまり父親が仕事中心の生活形態の場合に家 庭と近隣との交流を図る場合以上に子どもの ストレスが高いことが示された。 さらに、家族機能についてみた場合「権威 的」を除き他のすべての家族機能において3 クラスター間に有意差が確認された。「結合 性」 (F(2, 126)=17.43, p<.001)の多重比較 ではクラスターⅠ、ⅢはクラスターⅡよりも 125)=2.99, p<.10)、多重比較を行ったとこ ろクラスターⅠがクラスターⅢよりも有意に 高い傾向のあることが確認された。また「現 在のストレス」については3クラスター間の 有意差が確認され(F(2, 124)=5.43, p<.01)、 多重比較を行ったところクラスターⅠとⅡと もにクラスターⅢよりも有意に高いことが示 された。この結果から、父親の抱くストレス は「仕事・家庭・余暇時間関与型」とⅡ「仕 事中心型」において「家庭・近隣交流型」よ りも強く生じていることが示されたといえる。 次に母親のみる夫婦関係については「満足 感」において3クラスター間に有意差が確認 されたので(F(2, 124)=18.13, p<.001)多 重比較を行ったところ、クラスターⅠとⅢは クラスターⅡよりも有意に高いことが確認さ れた。このことから、母親のみる夫婦関係は 夫の家庭関与を中心とする生活形態の場合に 満足感が高いことが示されたといえる。 また、母親のストレスについては「現在の Table8 父親のワーク・ライフ・バランスのタイプ間の夫婦関係の認識、 家族成員の精神的健康、家族機能の平均値の比較(専業主婦家庭) Ⅰ . 仕事・家庭・ 余暇時間関与型 Ⅱ . 仕事中心型 Ⅲ . 家庭・近隣交流型 M(SD)N M(SD)N M(SD)N F検定 多重比較(Bonferroni) 父親 (夫婦関係についての認識) コミュニケーション 4.23(.64)54 3.50(.67)41 4.30(.57)32 F(2,124)=19.84*** Ⅰ・Ⅲ>Ⅱ*** 安定した夫婦関係 3.93(.75)54 3.46(.79)41 3.91(.71)67 F(2,125)=10.09*** Ⅰ>Ⅱ**,Ⅲ>Ⅱ*** 妻への要望 3.55(.79)54 3.15(.81)40 3.30(.87)33 F(2,124)=3.09* Ⅰ>Ⅲ* 相互の信頼 3.78(.75)53 3.13(.54)41 3.80(.58)32 F(2,123)=14.01*** Ⅰ・Ⅲ>Ⅱ*** (ストレス) ストレスの感じやすさ 2.80(.77)54 2.78(.60)42 2.43(..82)32 F(2,125)=2.99† Ⅰ>Ⅲ† 現在のストレス 2.67(.61)54 2.64(.53)41 2.25(.70)32 F(2,124)=5.43** Ⅰ>Ⅲ**,Ⅱ>Ⅲ* 母親 (夫婦関係についての認識) 満足感 3.93(.70)53 3.31(.67)42 4.21(.66)32 F(2,124)=18.13*** Ⅰ・Ⅲ>Ⅱ*** 夫への要望 3.85(.75)54 3.59(.83)42 3.76(.85)31 F(2,124)=1.26 (ストレス) ストレスの感じやすさ 3.03(.81)53 3.22(.69)40 3.00(.87)32 F(2,122)=.89 現在のストレス 2.65(.60)53 2.92(.62)39 2.52(.70)31 F(2,120)=3.85* Ⅱ>Ⅲ* 子ども (ストレス) ストレスの感じやすさ 2.66(.64)52 2.71(.69)40 2.60(.84)33 F(2,122)=.22 現在のストレス 2.20(.61)54 2.37(.67)41 2.01(.59)33 F(2,125)=3.02† Ⅱ>Ⅲ* 家族機能 結合性 4.23(.55)54 3.63(.74)42 4.35(.40)33 F(2,126)=17.43*** Ⅰ・Ⅲ>Ⅱ*** 表現性 3.96(.62)54 3.19(.65)42 4.01(.57)33 F(2,126)=23.30*** Ⅰ・Ⅲ>Ⅱ*** 権威的 3.22(.60)54 2.91(.69)42 3.02(.61)33 F(2,126)=2.91† Ⅰ>Ⅱ† 民主的 3.54(.64)54 3.17(.57)41 3.43(.57)32 F(2,124)=4.61* Ⅰ>Ⅱ* ***p<.001 **p<.01 *p<.05 † p<.10
ことは共働き家庭の場合と同様に、この時期 の子育てに中心となって関わっていると考え られる母親にとって、相談相手としての父親 が不可欠であり、子育てなどを中心とする夫 婦間の関わりやコミュニケーションにより夫 婦相互の理解が深まり、その結果として良好 な夫婦関係が形成されていくものと思われる。 これに関して、小学生から高校生にかけて子 育てをしている親の意識について、子どもの 勉強や進学、しつけ、性格や癖についての不 安や悩を持つ親が多く、その相談相手として 夫婦をはじめとして家族の者が中心となって いるとの指摘がある(厚生労働省, 2006)。ま た、子どもが小学校入学後中学校、高校と徐々 に友達関係が増えていく過程において、いろ いろと生じる問題について相談する相手が母 親中心であり(内閣府, 2010)、母親にかかる 負担は大きいと思われる。しかも小学校段階 において父親よりも母親へ相談する子が多い ことも指摘されている(下開, 2008)。した がって母親が父親との間で子育てに関する話 をしたり相談したりすることは子育てを進め るうえで重要なことである。本研究では父親 が家庭関与を主とした生活形態をとる場合に 夫婦間のお互いの満足感が高いことが示され たが、妻が夫と共有した認識を持つことが妻 の 良 好 な 家 庭 生活を支えるとしたStreich, Casper, & Salvaggio(2008)の指摘や夫婦のコ ミュニケーションが夫婦関係の満足度を増加 させる山口(2007)という指摘を支持するも のである。 また、妻に対する要望が両家族形態ともに みられたが、これは仕事・家庭・余暇時間な ど多面的に関わっている場合であり、父親と して家庭や子育てに目が行き届かないことも 多いために母親に託すということからもいろ 有意に高く、「表現性」(F(2, 126)=23.30, p<.001)の多重比較でもクラスターⅠ、Ⅲは クラスターⅡよりも有意に高かった。「民主 的」(F(2, 124)=4.61, p<.05)ではクラスター ⅠがクラスターⅡよりも有意に高いことが確 認された。一方、「権威的」では3クラスター 間の有意差の傾向が確認され(F(2, 126)= 2.91, p<.10)、多重比較の結果クラスターⅠ がクラスターⅡよりも高い傾向があることが 示された。以上のように、「仕事・家庭・余暇 時間関与型」と「家庭・近隣交流型」が「仕 事中心型」よりも有意に高いことが示され、 家庭中心の関わりを主体とした生活形態が健 全な家族機能を形成していることが示された。 考察 児童期の子育てにあたっている父親の生活 形態が、夫婦関係の在り方、夫自身と妻と子 どものストレス、家族機能形成にどのような 影響をもたらすのか共働き家庭と専業主婦家 庭の家族形態の比較をしながら検討を加えた。 まず夫婦相互にみる夫婦関係に関して、共 働き家庭の肯定的な夫婦関係についての父親 の意識(「コミュニケーション」「安定した夫 婦関係」「相互の信頼」)と母親の意識(「満 足感」)は、父親が家庭中心の関わりを主体 とした生活形態を形成している場合に示され た。この結果は母親も仕事に関わっているこ とから、少なくとも子どもの教育や躾のこと について夫婦で話し合う時間が求められるこ とも多々あると推測される。同様に専業主婦 家庭については父親のみる夫婦関係では「コ ミュニケーション」「安定した夫婦関係」「妻 への要望」「相互の信頼」全てにわたり父親 が家庭関与を中心とした生活形態を維持して いる場合に存在することが理解できる。この
いろな要請が生じているものと考えられる。 ストレスについては両家族異なる結果が得 られている。共働き家庭では父親と母親のみ にみられており、父親の場合仕事で生じるス トレスがスピオーバーとして出現していると も考えられる一方で、家庭での生活や近隣と の関りがストレス軽減に相乗効果をもたらし ているとも推測される。また母親の場合、父 親の仕事で抱えるストレスが間接的に母親自 身のストレスの原因にもなっていると考えら れる。これは、父親が仕事に関わり過ぎると、 家庭内の子育て問題や家事など殆どのことを 母親が自分一人でこなさなくてはならず、母 親のストレス発生に繋がっているとも考えら れる。専業主婦家庭では、多面的に関わる父 親にストレスが生じやすく、母親と子どもは 父親が仕事中心の場合に生じやすくなってお り、父親が母親の子育てなどの相談相手に なったり会話に応じたりする必要性や、子ど もとの関わりの必要性があることが示されて いるものと考えられる。 さらに、家族機能では両家族形態共通して 全ての機能に関して家庭を中心として仕事や 余暇時間を活用するバランスの取れた生活形 態において「結合性」「表現性」「民主的」な どの健全な家族機能が強く形成されているこ とが理解できる。これは父親の仕事と家庭生 活、余暇時間の活用あるいは近隣との交流な ど幅広く関与する生活形態の場合、良好な夫 婦関係が形成され、夫婦のストレスも低く家 族としてのまとまりや結束が強まる条件が揃 いやすいためだと考えられる。しかも、「権威 的」においてもクラスターⅠが強く影響して おり、家庭生活、仕事、地域との交流など全 判的に関わる父親の生き方が家族としての一 つの強い軸として存在し、またそれが父親の 家族の長としての発言力や影響力を増してい るのではないだろうか。 以上のように、両家族形態に共通して指摘 できることは、父親が家庭関与を中心として 仕事や余暇時間の活用、あるいは近隣との交 流を持つ場合に仕事中心の生活形態を取って いる場合以上に良好な夫婦関係が形成され、 それは夫婦相互のストレス軽減にもつながり、 更には子どものストレス軽減にも繋がること である。また、同様の父親の生活形態は家族 機能形成においても健全な家族機能形成に影 響していることが確認された。本研究では特 にライフステージの児童期の子育てにあたっ ている時期に焦点をあてたが、父親の子育て に向けた夫婦間の意見の調整、協力などのコ ミュニケーションを中心とした生活形態が望 ましいWLBのあり方を示していると考えら れる。 引用文献
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