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理科教育におけるデータ解釈の機能とその阻害要因

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Academic year: 2021

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著者

宮本 直樹

雑誌名

宮崎国際大学教育学部紀要 教育科学論集

1

ページ

36-46

発行年

2014-12

URL

http://id.nii.ac.jp/1106/00000458/

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理科教育におけるデータ解釈の機能とその阻害要因

宮本 直樹

【要約 】 本研 究で は, デー タ 解釈指 導法 の基 礎的 ・ 実践的 知見 を得 るた め ,科学 論に おけ るデ ータ解 釈の 機能 を踏 ま え, 理 科教 育に おけ る データ 解釈 の機 能と そ の阻害 要因 を明 らか にした 。そ の結 果, 理 科教育 にお ける デー タ 解釈の 機能 とは ,図 表 やグラ フの デー タか ら知識 を創 出し ,科 学 的探究 を繰 り返 す源 と なるこ と, さら に , ミ スコン セプ ショ ン, 科学的 探究 の前 段階 の 軽視, 帰納 的推 論の 飛 躍とい った こと がデ ー タ解釈 の阻 害要 因と なるこ とが 明ら かと な った。 【キー ワー ド】 データ解釈,機能,阻害要因 1 序 科学 的探 究に おい て ,デー タ解 釈は 主要 な 位置を 占め る。 それ は ,科学 的探 究の 成功 の鍵を 握り ,科 学的 探 究を 価 値付 ける から で ある( 例え ば,Kuhn & Pearsall, 2000)。 また,Harlen(1999)は,生涯学習の視点から「証拠の発見や評価,解釈のスキルをと りわけ ,必 要と し, 学 習は学 校教 育(formal education)で終わるのではなく,生きて いる間 中,続く。」と 述べ,生涯,デー タ解 釈は重 要な 学習 スキ ル の1つであるとしてい る。PISA 2015 DRAFT SCIENCE FRANEWORKでは,科学的リテラシーに要求される 能力の1つとして「データと証拠の解釈を科学的に行う能力」を掲げ,( OECD, 2013a: 9)「データの分析と解釈,そして適切な結論を書く。」( OECD, 2013a:16)と明示 してい る。PISA 2012でも同様である(OECD, 2013b)。一方,TIMSS 2011のScience Frameworkの認知領域・応用において「情報の解釈:科学概念や原理を踏まえて関連の ある文 章, 表や グラ フ の情報 を解 釈す る。 」 ,認知 領域 ・推 論に お いて「 結論 を書 く: データ のパ ター ンを 見 つけ, デー タの 傾向 を 述べ, 要約 する ,デ ー タや与 えら れた 情報 (デー タ) を付 け加 え ,推定 する 。」 と示 さ れてい る (Mullis, Martin, Ruddock, O'Sullivan, & Preuschoff, 2009:82-87)。さらに,科学的探究では,生徒に期待する5 つの側 面の1つとして,「データの分析,解釈」が明記されている(Mullis, et al., 2009: 88-90)。このように,データ解釈は,理科教育において重視されているにもかかわらず, 日本の 児童 ・生 徒の デ ータ解 釈能 力は 十分 と は言え ない (例 えば , 文部科 学省 ・国 立教 育政策 研究 所 ,2012a,2012b)。況してや,データ解釈能力を育成する指導法も十分に 確立さ れて いる わけ で はない 。 この よう な状 況下 で は,日 本の 児童 ・生 徒 のデー タ解 釈能 力の 育 成にと って 困難 にな

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- 37 - ること は自 明で ある 。 従って , デ ータ 解釈 に 関して 基礎 的・ 実践 的 知見を 得る こと は, 日本の 児童 ・生 徒の デ ータ解 釈能 力育 成す る ために 必要 不可 欠で あ る。 その デー タ解 釈に 関 する基 礎的 ・実 践的 研 究は僅 かに 存在 する だ けであ る。 例え ば, 宮本・大 髙(2012)は現代版プロセス・スキルの指導資料を分析 し,データ解釈指導法 の基礎 的知 見を 述べ て いる。さら に,宮本(2014a),宮本(2014b)では,仮説とデー タ解釈 の関 連に つい て の実践 的知 見を 述べ て いる。 とこ ろが ,上 述し た 研究は , プ ロセ ス・ ス キルの デー タ解 釈か ら データ 解釈 指導 法の 基礎的 知見 や仮 説と デ ータ解 釈の 関連 につ い ての実 践的 知見 を論 じ ている もの の, 理科 教育に おけ るデ ータ 解 釈の機 能と その 阻害 要 因から デー タ解 釈指 導 法の基 礎的 ・実 践的 知見を 論じ てい るわ け ではな い。 そこ で, 本研 究で は , デー タ解 釈指 導法 の 基礎的 ・実 践的 知見 を 得るた め, 科学 論に おける デー タ解 釈の 機 能を踏 まえ , 理 科教 育 におけ るデ ータ 解釈 の 機能と その 阻害 要因 を明ら かに する 。 論の 手順 は, まず , 理科教 育に 影響 を及 ぼ す科学 論に おけ るデ ー タ解釈 の機 能に つい て論じ ,次 に, 科学 論 におけ るデ ータ 解釈 の 機能を 踏ま えて ,理 科 教育に おけ るデ ータ 解釈の 機能 につ いて 論 じる。 さら に, この デ ータ解 釈の 機能 を阻 害 する要 因に つい て論 じる。 最後 に, まと め として , デ ータ 解釈 指 導法の 基礎 的・ 実践 的 知見を 論じ る。 2 科 学 論 に お け る デ ー タ 解 釈 の 機 能 理科 教育 に影 響を 及 ぼす科 学論 に依 拠し , データ 解釈 の機 能に つ いて論 じる 。科 学論 論者で あるZiman,Popper,Schwabの3人はそれぞれ解釈,換言すれば,データ解釈に ついて 次の よう に論 じ ている 。ま ず,Ziman(1985)は,「科学は,基本的に人間の知 覚能力 ,認 識能 力, 識 別能力 ,解 釈力 に依 存 してい る。 」「 科学 的 知識と いう もの は, もとも と法 則, モデ ル ,論理 学, 公式 ,仮 説 ,解釈 など とい う要 素 からな る多 次元 のネ ットワ ーク であ る。 」 と論じ てい る。 この よ うに, デー タ解 釈は , 科学の 主軸 をな し, 図1 データ解釈までの過程

(出典 :Bowen, G. M., Roth, W., M. (2005). Data and graph interpretation practices among preservice science teachers, Journal of Research in Science Teaching, 42(10), 1063-1088より転記。)

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- 38 - 知識の 創出 に必 要な 機 能を有 して いる 。次 に ,Popper(2001)は,「観察およびそれ以 上に観 察言 明と 実験 結 果の言 明は ,つ ねに 観 察され た諸 事実 の解 釈 であり ,理 論の 光に 照らさ れた 解釈 であ る 。」と 論じ てい る。 こ のよう に, デー タ解 釈 は,観 察・ 実験 結果 の言明 と関 連し ,機 能 してい る。 さら に,Schwab(1962:14)は,「探究を通じて得 られた 知識 は, 単に 事 実の知 識で はな くて , 解釈さ れた 事実 の知 識 である 。」 とし ,科 学的探 究で 生成 され た 知識は 解釈 が関 与し た ものと して いる 。ま た ,Schwab(1962: 74)は,「得られたデータはなぜ問題に対して適切であったのか,実際に得られたデー タがな ぜ求 めた デー タ とちが った のか ,デ ー タの解 釈が 正当 であ る のはな ぜか 。」 と科 学論文 作成 上で も,問 題,デ ータ ,解 釈間 の関 係を述 べて いる 。加 え て,Bowen and Roth はLatourの科学論1)に 依拠し てデ ータ ,表,グラフ ,デ ータ 解釈 ま での過 程を 図1のよう に捉え ,「 物理 現象 は 連続的 な図 表・ グラ フ 等(inscription)を通じて変換される。こ の図表 ・グ ラフ 等(inscription)とは,地図,一覧表,表,合計,平均,グラフ,方程 式のよ うに 再表 現さ れ たもの の複 雑さ が順 序 立って 増加 する こと を 含んで いる 。」 と論 じてい る。図1より,科学において,データ解釈は,狭義的に図表やグラフのデータを読 み取り ,数 式を 表現 す る機能 を有 して いる と 言える 。小 ・中 学校 理 科にお いて 等式 を表 現する 機会 は少 ない が ,等式 を表 現す るま で の過程 がデ ータ 解釈 と 言えよ う。 こ れ ら を 踏ま え る と , 科 学 論 に おけ る デ ー タ 解 釈 は , 科学 に と っ て , 主 要 な 位置 を 占 め る こ と は 無論 , 異 議 を 唱 え る 余 地は な い が , デ ー タ ( 観察 ・ 実 験 結 果 の 言 明 )と 関 連 し , 知 識 の 創出 に は 必 要 不 可 欠 な 機能 を 有 し て い る と 言 える 。 換 言 す れ ば , 観 察・ 実 験 結 果 と し て のデ ー タ を 図 表 や グ ラ フに 変 換 し , こ の 図 表 やグ ラ フ か ら 数 式 と い った 知 識 を創出 する 機能 を有 し ている 。 3 理 科 教 育 に おけ るデ ー タ 解 釈 の 機 能 科 学 論 に お け る デー タ 解 釈 の 機能 を 踏 ま え , 理 科 教 育に お け る デ ー タ 解 釈 の機 能 に つ いて論 じる 。 降 旗 (1976)は,「探究学習では,具体的事象からデータを集めることがねらいでは な く , デ ー タを こ え て そ の 背 後 に 横た わ っ て い る 法 則 や 抽象 概 念 を 認 識 さ せ る こと を め ざ す 。 観 察 した 事 象 や そ こ か ら 収 集さ れ た デ ー タ な ど の 情報 を ど う 解 釈 し , ど う説 明 す るのか に指 導の 究極 の ねらい があ る。」と述 べ ている 。つま り ,広 義 的には 自然 現象 の解 釈 , 換 言 す れば 科 学 的 探 究 , そ の もの で あ る 。 こ の 科 学 的探 究 に お け る デ ー タ 解釈 を 端 的に表 現し た Schwab を紹介しておこう 2)。Schwab(1964:38-39)は,科学の方法を 次の 7 つの段階(① 問題の形成,② 可能な解決のためのデータの収集,③ 問題の再形 成,④ 問題解決に必要なデータの決定,⑤ データを得るための実験計画,⑥ 実験の遂 行とそ こか らデ ータ の 獲得 ,⑦ データ解釈)に分けている。これは,探究におけるデー タ解釈 を探 究過 程の 終 着地点 と位 置付 けて い るよう に見 える 。し か し,Schwab(1964: 32-34)は,「問題の感受,仮説の形成,仮説の検証計画の作成,計画の実施,データか らの結 論の 記述 の 5 段階のうち,誤解を招き易いのは,最後のデータからの結論の記述 に 関 わ る 段 階で あ っ て , あ た か も 『探 究 の 営 み が 終 わ っ た』 と か 『 真 理 を 得 た 』と い う

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- 39 - 印 象 を 与 え やす い と い う の で あ る 。探 究 の 観 点 か ら み れ ば, 真 理 を 得 て 営 み は 終了 し た の で は な く ,一 時 的 な 停 滞 状 態 に すぎ な い 。 結 論 を 得 た とい う の は , 単 に , デ ータ 解 釈 に す ぎ な い 。つ ま り , 再 び 異 な っ たデ ー タ を 選 び , 異 な った 解 釈 を 加 え る な ら ば, つ ぎ の新た な問 題や 探究 に 突入す る。」と し,探究 におけ るデ ータ 解釈 は 探究の 最終 過程 では な く , 新 た な疑 問 や 解 決 で き な か った こ と に 対 す る 指 針 とな る と し て い る 。 つ まり , デ ー タ 解 釈 は ,次 の 新 た な 科 学 的 探 究を 遂 行 す る 機 能 を 有 して い る 。 こ れ に 相 応 する か の ように ,Roth・Roychoudhury(1993)は,12 歳の生徒を対象とし,14 ヶ月もの期間 に も お よ ぶ 探 究 授 業(open-inquiry laboratory)を行った。その結果,データ分析と解釈 す る ス キ ル は促 進 し た と 報 告 し て いる 。 換 言 す れ ば , デ ータ 解 釈 は , 次 の 新 た な科 学 的 探 究 の 遂 行 源と な る 機 能 を 有 す る 。そ の 結 果 , デ ー タ 解 釈が 再 構 成 さ れ , デ ー タ解 釈 が 促進し たと 言え るの で はない だろ うか 。 先 述 し た 科学 論 に お け る デ ー タ 解釈 の 機 能 を 踏 ま え れ ば, 理 科 教 育 に お け る デー タ 解 釈 の 機 能 と は, 図 表 や グ ラ フ の デ ータ か ら 知 識 を 創 出 し ,科 学 的 探 究 を 繰 り 返 す源 と な ると言 える であ ろう 。 とこ ろが ,こ のデ ー タ解釈 の機 能を 阻害 す る要因 が論 じら れて い る。 4 デ ー タ 解 釈 の阻 害要 因 Champagne・Gunstone・Klopfer(1985)は,「物理学の授業を正式に受ける以前か ら , 生 徒 は 現実 世 界 の 出 来 事 に 関 する 知 識 を も ち 合 わ せ てお り , そ れ ら が 彼 ら を独 自 な 解釈へ と導 いて いる 。」,Strike・Posner(1985)は,「人があるコンセプションにコ ミ ッ ト す る のは , そ れ が 経 験 を 解 釈し , 問 題 を 解 く の に 役立 ち , 場 合 に よ っ て は, 精 神 的ある いは 情緒 的欲 求 を満た すの を助 ける か らであ る 」,Johansson・Marton・Svensson (1985)は,「コンセプションとは,何かを見るときの一つの見方であり,個人とある 現 象 と の 間 の一 つ の 質 的 な 関 係 で ある 。 そ し て , コ ン セ プシ ョ ン は 目 に 見 え る もの で は な く て , 反 省に よ っ て 主 題 化 さ れ ない か ぎ り 口 に 出 さ れ ず, 暗 示 さ れ た り , あ るい は 仮 定 さ れ た り する に 留 ま る も の で あ る。 こ の 意 味 に お い て ,コ ン セ プ シ ョ ン は 単 に解 釈 の カテゴ リー であ り,私た ちはそ れに よっ て私 た ちの身 の回 りの 世界 を 理解す るの であ る。」 と述べ るよ うに 児童・生徒の 既有 知識 やミ ス コンセ プシ ョン と解 釈 の関係 を示 して いる 。 こ の 児 童 ・ 生徒 が 授 業 で 表 出 す る 既有 の 知 識 や ミ ス コ ン セプ シ ョ ン は , 誤 っ た 思考 に 児 童 ・ 生 徒 を 導く 場 合 が あ り , ま た ,児 童 が 日 常 生 活 の 中 で獲 得 し た コ ン セ プ シ ョン が , 正 規 の 科 学 的概 念 の 理 解 を 困 難 に する こ と が あ る と 指 摘 され て い る ( 米 国 学 術 研究 推 進 会 議 ,2004:248)。さらに,児童・生徒のコンセプションは系統的ではなく断片的で あ り , 教 師 や科 学 者 が 望 ん で い る よう な 首 尾 一 貫 し た 理 論を 形 成 で き な い 。 そ して , 児 童 は 統 合 さ れた 理 論 を も っ て い る 訳で は な く , 「 ミ ニ 理 論」 の 集 ま り を も っ て いる だ け であ り(Hodoson,1998),児童・生徒の自然科学についての知識の多くが,教師が苦 労 し て 教 え た 内 容 よ り も , 児 童 自 身 の 思 考 に よ り 導 か れ る こ と が 多 く (Freyberg・ Osborne,1985),子どもなりの理論や自然科学について,児童・生徒にとって都合よ く 解 釈 さ れ るこ と が 多 い 。 ま た , 「ミ ス コ ン セ プ シ ョ ン が問 題 解 決 を 阻 害 す る 重要 な 要

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- 40 - 因とな って いる 。」と 大髙(1992)が指摘するように,問題解決や探究過程においてミ ス コ ン セ プ ショ ン は 探 究 的 な 学 習 にお け る デ ー タ 解 釈 の 阻害 要 因 と な り , 児 童 ・生 徒 が 見 通 し や 目 的意 識 を も っ て 観 察 ・ 実験 を 行 っ て も , 教 師 が望 む よ う な 理 解 ( 正 規の 科 学 概念の 形成 )を 得る こ とがで きな い状 況を つ くり出 して いる 。こ れ に関し て,宮本(2011) は,小 学校 第5学年の児童を対象とした振り子実験において,データ解釈時にミスコンセ プ シ ョ ン が 表 出 し , 正 規 の デ ー タ 解 釈 が 阻 害 さ れ た こ と を 報 告 し て い る 。 ま た , Shepardson(1999)は,小学校4年生を対象とし,電気回路の接続による電球点灯に関 す る 子 ど も の実 験 予 測 , 検 証 過 程 を調 査 し た 。 そ の 結 果 ,「 知 識 の 再 構 築 , 概 念変 容 の 重 要 な 側 面 は , 子 ど も た ち の 理 解 の 特 性 と , デ ー タ 解 釈 の た め の 枠 組 み (Framework) の 理 解 と の 結び つ き 方 に よ る 。 」 「挑 戦 す る 子 ど も の 理 解の 程 度 は , デ ー タ 解 釈に 対 す る 枠 組 み (Framework)の特異性,一貫性,統一性に依存している。 」と述べている。 つ ま り , デ ータ 解 釈 は 子 ど も た ち がも つ 一 貫 性 や 統 一 性 のあ る 枠 組 み に 依 存 す るた め , こ の 枠 組 み が 科 学 的 に 正 規 な 見 方 (aspect)でなければ,誤ったデータ解釈をしてしま う 。 さ ら に ,Schwab(1962:49,70)は「主題に関するデータやデータ解釈は個々の 概 念 化 に よ って 異 な っ て い る 」 「 デー タ に 関 し て は 解 釈 の上 で 選 択 可 能 の 余 地 があ る 」 と い う よ う に科 学 の 研 究 内 容 に よ って 解 釈 の 仕 方 が 変 化 し, 多 様 な 解 釈 が な さ れる こ と も 指 摘 し て いる 。 同 様 に 児 童 ・ 生 徒が 行 う 科 学 的 探 究 に おい て も 多 様 な デ ー タ 解釈 が さ れ , 教 師 の ねら い と す る デ ー タ 解 釈に そ ぐ わ な い 場 合 も 生じ る 。 ま た , 「 既 有 知識 に 基 づ い て 新 し い知 識 の 獲 得 が な さ れ るこ と を 仮 定 す る 『 構 成主 義 学 習 論 』 で は , 教師 は 新 し い 知 識 を 直接 的 に 教 え る べ き で はな く , 生 徒 た ち 自 身 で知 識 を 構 成 さ せ る べ きで あ る という 誤概 念」(米 国 学術研 究推 進会 議,2004:11)を教師に生じさせるため,科学的 で な い デ ー タ解 釈 を 引 き 起 こ す 可 能性 が あ る 。 こ の よ う に構 成 主 義 学 習 論 の 立 場か ら す る と , 児 童 ・生 徒 任 せ に な り , 多 様で 科 学 的 で な い 解 釈 がな さ れ る 場 合 が あ り ,多 様 な 解 釈 が 正 規 の科 学 的 な 解 釈 を 阻 害 する 側 面 を も ち 合 わ せ てい る 。 よ っ て , 児 童 ・生 徒 の ミ ス コ ン セ プシ ョ ン , ミ ニ 理 論 , 解釈 の 枠 組 み , 解 釈 の 多様 性 を 意 識 さ せ , こ れら を 取 り除く こと がデ ータ 解 釈指導 には 必要 であ ろ う。 一方 で, 小学 校学 習 指導要 領( 文部 科学 省 ,2008a)では,「見通しをもって」,中 学校学 習指 導要 領( 文 部科学 省,2008b)では,「目的意識をもって」という文言が明 記され ,観 察・ 実験 を 遂行す るた め, 探究 可 能な問 い, 仮説 設定 , 観察・ 実験 の検 証法 の考案 ,結 果の 予想 と いった 前段 階を 重視 し ている 。こ の前 段階 を 重視す るこ とに よっ て,観 察・実験 が理 論負 荷的に なり ,観 察・実験 後のデ ータ 解釈 を促 進 する効 果が ある 。 このこ とに つい てHanson(2000a)は,「解釈と呼ばれているもの,すなわち〈として 見る〉 こと と〈 こと を 見る〉 こと が, 〈見 る 〉とい う概 念そ のも の の中に 組み 込ま れて いるか らで ある 。そ う でない 場合 ,例 えば , 研究活 動に おい ては , 解釈と は わ れわ れが 視覚状 況に もち こま ね ばなら ぬ何 もの なの か である 。」 と理 論負 荷 的な解 釈に つい て述 べてい る。 この こと か ら,「 解釈 」は 観察 ・ 実験と 密接 な関 係が あ る。そ れに もか かわ らず, 多く の授 業は , 理論負 荷的 な観 察・ 実 験では ない こと が多 い 。その 一因 は, 教科 書に見 られ るレ シピ 的 な観察・ 実験 手順 の記 述によ るた めで ある 。岩間(2000)は「高

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- 41 - 等学校 で使 用さ れて い る教科 書の 多く は ,『探 究活動 』を掲 載し てい るにも かか わら ず, 一般に 課題 の提 示だ け ではな く, 目的 ,準 備 ,方法 ,結 果, 考察 な どの項 目が まと めら れてお り, 中で も実 験 の準備 や 方 法は 詳細 に 記され てい る。 生徒 に とって ,探 究活 動が 制限さ れる だけ でな く ,生徒 の思 考も 制限 す る可能 性が 高く ,創 造 的な探 究活 動を 保証 してい ない 。」 と教 科 書が解 説書 ,料 理本 の レシピ 的な 存在 にな っ ている こと を指 摘し ている 。小 ・中 学校 の 教科書 も同 様に 科学 的 な探究 学習 の手 順が 示 されて おり ,児 童・ 生徒主 体の 探究 活動 は 保証さ れて いる とは 言 い難い 。ま た, 探究 の 前段階 につ いて ,小 林(2007)は「中学生の探究的な学習の前段階の仮説設定能力が低い」ことを,綱川( 2006) は「理 科教 師は 実験 ・ 観察前 に予 想を 行わ せ ている が, 生徒 は予 想 を行う こと に困 難を 感じ, 予想 を立 てる こ とがで きず ,『 予想 』 場面の 活動 が十 分達 成 されて いな い。 」こ とを指 摘し てい る。 科 学的探 究の 前段 階が こ のよう な状 態で は, 観 察・実 験後 のデ ータ 解釈は ,前 段階 から 大 きな影 響を 受け る。 つ まり, 「見 通し 」や 「 目的意 識」 をも つこ とがで きな いま ま科 学 的探究 が進 み, デー タ 解釈を 行っ てし まう 。 換言す れば ,科 学的 な探究 学習 の前 段階 の 軽視は デー タ解 釈を 低 次にし てし まう 。こ れ に関し て, 十分 な仮 説設定 を行 わな いた め か,Kanari・Millar(2004)は,「多くの生徒はデータ解釈にか なり困 難を もっ てい た 。その 理由 は, 生徒 は 証拠に 反し ても 最初 に 立てた 仮説 にこ だわ る傾向 を示 すか らで あ る。」 と述 べて いる 。 また ,吉 本(1967:34)は,理科教育の立場から「帰納的方法も非常に多く用いられ るが, その 場合 にも 個 々のい くつ かの 事実 か ら一般 化す ると きの 段 階には 必ず 飛躍 があ る。」 と指 摘し ,デ ー タから 一般 的法 則や き まりの 導出 まで には 飛 躍が存 在す ると 述べ ている 。つま り,帰納 的推論 の飛 躍3)が ある と論じ てい る 。こ れに ついて ,例え ば,小学 校第6学年の梃子の釣り合いの数式表現導出では,梃子が釣り合った状態の時の右と左 の 腕の長 さと おも りの 重 さを表 に記 入す る。 そ の後, 右と 左, それ ぞ れ腕の 長さ とお もり の重さ を掛 けた もの が 等しく なる 数式 を導 く が,こ の過 程に おい て データ (測 定値 )と 釣り合 いの 数式 表現 と の間に 帰納 的な 飛躍 が 生じ, デー タ解 釈を 困 難にし てい る現 状が あると 推察 でき る 。吉 本(1967:50)は「帰納的思考は最後の一般法則提出の段階にお いて必 ず仮 説的 飛躍 を 行う。 すな わち 帰納 の 基にな るの は個 々の 有 限個の 事実 であ り, その有 限個 の事 実に 共 通に成 り立 つ法 則を 推 定し, 見い だし て, そ れまで の経 験の 範囲 をこえ た普 遍的 法則 へ と変化 させ るか ら で , この普 遍化 され た法 則 は一般 には 無限 個の 個々の 事実 を記 述す る ことに なる から であ る 。した がっ て帰 納さ れ た法則 や記 述は この 場合仮 説的 性格 をも つ 。そし てそ の仮 説が 成 り立つ か否 かは ,演 繹 ・検証 の手 続き を経 て,必 要な ら修 正さ れ なけれ ばな らな い。 」 と指摘 し, 一般 化し た ものが 仮説 的側 面を もって いる ため ,こ の 仮説が 帰納 的推 論の 飛 躍の一 因に もな ると 言 える。 科学 論に おい て,Hanson(1992)は「帰納とは,理論を出発点として,それがどの程度事実と合う かを調 べる こと であ る 。帰納 はい かな る着 想 をも創 造す るこ とは あ り得な い。 そ れ は演 繹と同 じで ある 。科 学 上の着 想は すべ てア ブ ダクシ ョン の道 をた ど って現 れる 。ア ブダ クショ ンは ,事 実の 検 討と, 事実 を説 明す る 理論の 構築 とか らな る 。もし われ われ が事 物を理 解で きる と言 う なら, それ はそ んな 風 でしか あり えな い, と いうの がア ブダ クシ

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- 42 - ョンの 唯一 の正 当化 法 である 。演 繹は ,何 か がそう あら ねば なら な い,と 証明 する もの であり ,帰 納は ,何 も のかが 実際 にそ う機 能 すると いう こと を示 す もので あり ,ア ブダ クショ ンは ,何 かが そ うある 可能 性が ある , という こと を提 示す る もので ある に過 ぎな い。」と 指摘し ,村上 (1980)は「帰納主義が,現実の科学の歴史の推移に適用できな いばか りで なく ,科 学 の研究 に携 わる 人び と が直面 する 現場 で実 際 に起こ って いる こと にも適 用で きな いこ と は,明 らか であ る。」 ,さら に,村 上(2002)は,「一般に,科 学の方 法論 を論 ずる と き,科 学が 『経 験』 と いう形 容詞 付き で, つ まり『 経験 科学 』と いう語 で呼 ばれ るこ と からも 判る よう に, 経 験的現 象か ら帰 納さ れ た体系 であ る, とい う前提 から 出発 する こ とが多 い。 理論 が, 単 なる経 験の 帰納 であ る と考え るほ どナ イー ヴでな いに して も, た とえば ,仮 説演 繹の よ うに, 仮説 を全 面に 押 し出す よう な考 え方 であっ ても ,現 象の 客 観性と 一般 性は 前提 と されて いる よう に思 わ れる。 そし て, こう した一 般的 な考 え方 が ,ベー コン 以来 の『 実 験哲学 』の 方法 論を , 下敷き にし てい るこ とは,明ら かで ある 。」という よう に述 べて い ること から ,科 学で も 帰納は 懐疑 を含 み, 問題点 を抱 えて いる 。 そのた め科 学論 の思 想 を強く 受け る理 科教 育 におい ても ,帰 納的 推論は デー タ解 釈に 影 響を及 ぼし てい ると 推 測でき る。 まと める と ,帰納 的推 論の 飛躍 はデー タ解 釈を 困難 に してし まう 。加え て ,デ ータ導 出か らデ ータ 解 釈する 際 ,つ まり , 帰納的 に一 般化 する 際 の条件 ,統 計, 確 率 が 考慮さ れて いな いこ と に関し ても 問題 があ ると言 える 。Hanson(2000b)はデータから帰納的に法則やきまりを一般化する際,こ の一般 化し た法 則や き まりが どの ぐら いの 確 率(統 計的 に) で起 こ りえる のか とい う議 論をす る場 がな いこ と を指摘 して いる 。小 ・ 中学生 に統 計的 意味 を 含む法 則や きま りを 導くこ とは 困難 であ る が,梃 子の 数式 表現 や オーム の法 則が 成り 立 つ際, 条件 を踏 まえ ること が重 要で ある 。 例えば ,梃 子の 数式 表 現では ,梃 子の 腕が 均 質な棒 であ るこ と, オーム の法 則で は, 熱 の影響 を受 ける 際の オ ームの 法則 の適 用範 囲 の限界 ,内 部抵 抗等 である 。鷹野・ 堀(1999)の研究では,太さの不均一な棒を用いた天秤の支点の位置を 問う問 題を 出し ,小 学 校4年生,国立大学工学部及び教育学部 1年生に実施した。この結 果から ,工 学部 の生 徒 がモー メン トの 理解 が できて いな い状 況は , 条件で ある 「太 さの 不均一 な棒 」を 踏ま え た授業 が当 時十 分に 行 われて いな かっ たこ と に起因 する と論 じて いる。 この こと から , 帰納的 に一 般化 する 際 ,適用 範囲 の限 界等 の 条件を 考慮 させ デー タを指 導す るこ とも 必 要であ る。 これ を克 服 する指 導と して ,太 さ が不均 一な 棒を 使用 した小 熊(2005)の実践や2次元てこを開発・使用した小池・小松田・鴨下・永沼・高 津戸(2014)の実践が挙げられる。 総括 する と, デー タ 解釈の 阻害 要因 とし て ,ミス コン セプ ショ ン ・子ど もの 理論 の存 在や多 様性 がデ ータ 解 釈時に 表出 して しま う こと, 科学 的探 究の 前 段階の 軽視 はデ ータ 解釈を 低次 にし てし ま うこと ,帰納 的推 論の 飛躍は デー タ解 釈を 困 難にし てし まう こと , が明ら かと なっ た。

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- 43 - 5 結 語 本研 究で は, デー タ 解釈指 導法 の基 礎的 ・ 実践的 知見 を得 るた め ,科学 論に おけ るデ ータ解 釈の 機能 を踏 ま え, 理 科教 育に おけ る データ 解釈 の機 能と そ の阻害 要因 を 明 らか にした 。そ の結 果, 理 科教育 にお ける デー タ 解釈の 機能 とは ,図 表 やグラ フの デー タか ら知識 を創 出し ,科 学 的探究 を繰 り返 す源 と なるこ と, ミス コン セ プショ ン, 科学 的探 究の前 段階 の軽 視, 帰 納的推 論の 飛躍 とい っ たこと がデ ータ 解釈 の 阻害要 因と なる こと が明ら かと なっ た。 以上 を踏 まえ ,デ ー タ解釈 指導 法の 基礎 的 ・実践 的知 見と して , 科学的 探究 時に 上述 したデ ータ 解釈 の機 能 と阻害 要因 を教 師が 踏 まえて 指導 を行 うこ と が, 日 本の 児童 ・生 徒のデ ータ 解釈 能力 育 成する ため に 求 めら れ る。 さら に, デー タ解 釈 指導法 を確 立す るた め に基礎 的・ 実践 的知 見 を蓄積 する 必要 があ る。 附 記 本論 文は ,平 成19年度筑波大学大学院修士課程教育研究科提出の修士論文「小学校理 科にお ける 児童 の探 究 能力の 育成 に関 する 研 究 ─データ解釈に着目して─」の一部を大 幅に加 筆, 修正 した も のであ る。 註 1) Latour の科学論は,「ブルーノ,川﨑勝・高田紀代志訳(1999)『科学が作られてい るとき —人類学的考察— 』産業図書.」が詳しい。 2) 「石﨑 友規(2012)「 シュワブの探究学習論 における安定的探究(Stable Enquiry) の特質 」『 日本 科学 教 育学会 研究 会研 究報 告 』, 第 26 巻,5 号,11-14.」を参照し た。 3) 帰納的推論の飛躍とは,一般に有限個の観察データでわかったと思われることがらを, 何の根 拠も なく 無限 個 の事例 に拡 張し てあ て はめる ,そ の理 論的 な 飛躍の こと であ る。 「村上 陽一 郎(2005)『新しい科学論』講談社,43.」 引 用 文 献 米国学 術研 究推 進会 議 ,森敏 昭・ 秋田 喜代 美 監訳(2004)『授業を変える─認知心理学 のさら なる 挑戦 』北 大 路書房.

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参照

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