氏 名 風間 文智 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 医 学 ) 学 位 記 番 号 医工博 4 甲 第 135 号 学 位 授 与 年 月 日 平成26年3月20日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 先進医療科学専攻
学 位 論 文 題 名 Soluble CLEC-2 generation upon platelet activation and its measurement in plasma by ELISA: implication for a biomarker of in vivo platelet activation
(可溶化CLEC-2は血小板活性化により生成され、ELISA法にてヒ ト血漿で測定できる:生体内血小板活性化マーカーへの応用に向 けて) 論 文 審 査 委 員 委員長 教 授 松田 兼一 委 員 准教授 百澤 明 委 員 講 師 岩尾 憲明
学位論文内容の要旨
(研究の目的) 血小板は止血以外に心筋梗塞や脳卒中でも重要な役割をしている。また血小板活性化は血栓症のリ スクや抗血小板療法の指標としても使用することができる。β-TG や PF4 は血小板活性化の指標と して使用されるが採血手技や検体処理、ヘパリン投与状態によって影響を受ける。そのため新しい血 小板活性化マーカーが待たれている。 血小板膜タンパクのいくつかは活性化に伴い切り離されるが CLEC-2 では明らかではなかった。 CLEC-2 は新規の C-type レクチンスーパーファミリーに属する血小板活性化レセプターであり、生 体内リガンドはポドプラニンである。CLEC-2 はヒト末梢血中では血小板だけに発現しており、 CLEC-2 の切り離しは体内での血小板活性化マーカーとしての可能性がある。本研究では血小板活性 化に伴い可溶化CLEC-2 には 2 種類あること、さらに可溶化 CLEC-2 の ELISA 測定系を構築する ことを検討した。(方法・結果)
1.CLEC-2 のリガンドであるロドサイチン(蛇毒)によって血小板活性化に伴う可溶化 CLEC-2 が生じるか検討した。ロドサイチンと血小板を反応させ、2回の遠心分離とウエスタンブロット法に より 25kDa と 32/40kDa の分画が得られた。それぞれプロテアーゼにより切断された CLEC-2 (25kDa)と血小板マイクロパーティクル上に存在するインタクトな状態の CLEC-2(32/40kDa) であり、可溶化CLEC-2 はこの 2 種類からなると考えられた。
2.可溶化 CLEC-2 を検出するために抗 CLEC-2 モノクロナール抗体を用いたサンドイッチ ELISA 測定系を構築した。検出系の最適化を行い、可溶化リコンビナント CLEC-2 細胞外ドメイン 0.1~10ng/ml を用いて検量線を得た。測定系の直線性、添加回収試験は良好であった。 3.可溶化 CLEC-2 の測定において各種抗凝固剤の影響を調べた。抗血小板溶液(クエン酸、テ オフィリン、アデノシン、ジピリダモールを含む溶液;CTAD)、EDTA、クエン酸を用いて検討し たところ、抗凝固剤による差は見られなかった。これに対してPF4, β-TG 測定では、EDTA、クエ ン酸採血では、専用CATD 採血管に 20G 針で駆血帯なしで採血した場合に比べて異常高値を示した。 そのため測定には日常よく使用されるEDTA を使用することとした。採血量、遠心条件では 2ml 採 血、3000 回転、10 分遠心において血漿中の残存血小板が少なく、良好な測定結果を示したため最終 的にEDTA2ml 採血し 3000 回転、10 分間遠心して得た血漿を使用することとした。 4.構築したELISA 測定系により血小板活性化にともなう可溶化 CLEC-2 の増加を検出すること ができた。次に切断されたCLEC-2 とマイクロパーティクル上のインタクト CLEC-2 の両方を検出 できるか検討し、この2タイプのCLEC-2 の測定ができることを確認した。 5. 血小板活性化マーカーとして従来使用されている PF4、β-TG と可溶化 CLEC-2 との相関を 求めた結果、強い相関を認め、可溶化 CLEC-2 は血小板活性化マーカーとして使用可能と考えられ た 6.健常人ボランティア 32 名から EDTA2ml 真空採血管、21 ゲージ採血針、駆血帯を使用し て採血を行い 3000 回転、10 分遠心した検体を用いて可溶化 CLEC-2 を測定した。その結果 74± 35pg/ml となった。一方血清では平均値は 550 pg/ml であった。 (考察、結論) 可溶化 CLEC-2 は血小板活性化に伴い生成され、生体内血小板活性化マーカーとして使用できる のではないかと考え、ELISA 測定系を構築し、その検証を行った。その結果検出感度、精確性、再 現性とも良好であり、また検体の取り扱いの容易さから臨床検査として使用できる可能性がある。 可溶化GPVI(血小板上コラーゲン受容体)も活性化マーカーとして研究されているが、脳梗塞患 者で上昇するという報告がある反面、急性冠症候群患者では低下するとの報告がある。後者はプラー ク破裂後に露出したコラーゲンに可溶化 GPVI が粘着するためではないかと推測されている。 CLEC-2 はコラーゲンに結合しないため、このような矛盾は生じないと考えられる。また、可溶化 GPVI にはマイクロパーティクル上に存在するインタクトな状態の可溶化 GPVI は存在せず、切断タ イプが主であると報告されている。インタクトタイプな可溶化 CLEC-2 は分子量が大きいため、生 体内に長くとどまり、検出に有利に働く可能性もある。
論文審査結果の要旨
1.学位論文研究テーマの学術的意義 心筋梗塞や脳卒中の発症メカニズムに血小板の活性化が深く関与している。そこで血小板の活性化 の程度を知ることで、血栓症発症のリスク軽減や最適な抗血小板療法を行うことが可能となると考え る。現在β-TG や PF4 は血小板活性化のマーカーとして使用されるが、採血手技や検体処理、ヘパ リン投与状態によって影響を受ける。そのため新しい血小板活性化マーカーの登場が待たれている。今回、新しい血小板活性化マーカーとして CLEC-2 に着目し、血栓症発症のリスク軽減や最適な 抗血小板療法に応用可能か検討した。CLEC-2 は C-type レクチンスーパーファミリーに属する血小 板活性化レセプターであり、生体内リガンドはポドプラニンである。CLEC-2 はヒト末梢血中では血 小板だけに発現しており、血小板活性に伴い切り離され、血小板活性化マーカーとなる可能性がある。 また CLEC-2 は分子量が大きいため、生体内に長くとどまり、検出に有利に働く可能性もある。本 研究では血小板活性化に伴い切り離される可溶化 CLEC-2(sCLEC-2)には 2 種類あること、さら にsCLEC-2 の ELISA 測定系の構築が可能であることを見出し、その検証を行った。その結果、今 回開発されたELISA 測定系の検出感度、精確性、再現性とも良好であり、また検体の取り扱いの容 易さから臨床検査として使用できる可能性があると結論された。 2.学位論文及び研究の問題点、争点、新しい視点等 問題点:問題点としてはまずsCLEC-2 の切断機序が不明な点、次に測定に時間がかかりすぎること、 さらにsCLEC-2 にはマイクロパーティクル上に存在する sCLEC-2 と遊離型の shed CLEC-2 がある がこの2 種類の sCLEC-2 の存在意義が不明瞭である点が挙げられた。また 2 種類の sCLEC-2 の測 定方法が確立されておらず今後の課題とされた。 争点及び新しい視点:争点及び新しい視点としては sCLEC-2 の総量と臨床症状の関係、2 種類の sCLEC-2 の比と臨床症状の関係について議論がなされ、臨床検体を用いたさらなる検討が必要とさ れた。 3.実験及びデータの信頼性 実験は適正に施行されており、実験及びデータの信頼性は高いと判断された。 4.学位論文の改善点等 本論文は新しい血小板活性化マーカーの発見及びELISA 測定系に関する論文で、完成度の高い学 位論文であり、改善すべき点については特に認められなかった。