正方形の等積三角形分割 : 付値体の理論の応用として
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(2) とがわかる.しかし奇数個の等面積の三角形に分割しよ. このように本論文では,やや高度な数学の内容を扱い. うとすると,試行錯誤を繰り返してもなかなか見つから. ながらも,高校の数学の内容との関係性も意識し,さら. ないことがわかり,この問いの答えは「できない」と直. に最終的なテーマでは素朴な問題と意外性のある証明. 感的に予想することはできる.. を扱うこととなった.. その予想が正しいことは,2進付値を用いて,組み. さらに,本論文の当初のテーマでは正方形の分割を考. 合わせ論的手法を利用し証明することができる.もう. えたが,本論文の最後では,正方形に限らず他の四角形. 少し詳しく述べると,まず正方形8を座標平面上の. ではどうなるのかを自らの探究活動として考察し,台形. [0,11×[O,11と考え,その正方形8を等面積で重なり. の分割などについて一定の結果を得た.しかし,もっと. 合わない奇数個の三角形に分割できたと仮定する.そし. 一般的な四角形においてどうなるのかなど,興味深い問. て,その三角形の頂点の座標をQに付加した体をKと. 題も残されている.. し,いわゆる2進付値をK上に延長した付値Uを考え る.このとき,正方形を分割した図において,その分割. 囲内の頂点を座標の付値の値によって3つのタイプに. 3 論文の構成. 分類し,分割囲内のある種の線分の個数の偶奇性を調べ. 第1章では,本論文での問題提起と,本論文を読み. ることで,上記の予想が証明できる.. 進めるにあたり,必要となる基本的な定義や定理を述. しかし,その証明のなかで,Kに2進付値を延長で. べる.. きることは自明ではない.そのことの証明には次に挙げ. 第2章では,QからQに実数を有限個付加した体へ. るいろいろな内容の理解が必要である.. の拡大は,純超越拡大と代数拡大の2段階の拡大に分. 1つ目としてはr体論」である.特にQからKへの. けることができること’. 体の拡大を扱うことになる.その申で,超越拡大,代数. 付値が延長できることを示す.. 拡大,多項式の既約性等の基本的な体論に関わる内容が. 第3章では,まず有理数体Qからコーシー列を利用. 必要である.. しRを構成すること(完備化)について述べ,これを. 2つ目の内容としては,r付値論」である.一番身近. 一般の付値体でも行うことができることを述べる.. な付値としては,中学校・高等学校で習う絶対値が挙げ. 第4章では,まずヘンゼルの補題について述べる.次. られるが,本論文では2進付値(非アルキメデス的付. に,付値の値を順序付き乗法群まで拡張することで,体. 値)を取り扱う.この2進付値は本来有理数体Q上で. の付値と付値環のあいだに対応があることを示す.そし. 定義されるが,今回の証明のためには上記で述べたよう. て,付値体Kが完備である場合には,Kの有限次代数. にもっと大きな体K上へ延長を行う必要がある.2進. 拡大にKの付値が延長できることを,ヘンゼルの補題. 付値や非アルキメデス的付値は高校の内容を超えるも. と付値環を用いて示した.このことから,有理数体Q. のであるが,整数論など大学以後の代数学では重要な意. に実数の元を有限個付加した体へ2進付値が延長でき. 義をもつものである.. ることが示される.. 3つ目としては,r体の完備化」である.高校では有. 最後に第5章では,主定理となる「正方形は,同じ面. 理数から実数へ数の体系を広げる際,極めて感覚的な説. 積で,重なり合わない奇数個の三角形に分割することが. 明しかできないが,実数体Rは,有理数体Qと絶対値. できない」ことの証明を述べ,正方形ではなく,平行四. から完備化という手法により構成される.そしてその手. 辺形や台形の分割についても考察結果を述べた.. 述べ,Qの純超越拡大に2進. 法は,一般の体と乗法付値においても適用できるもので ある.. 実際には,体の完備化を用いて,2進付値の延長が示 されていく.そしてその過程で,rヘンゼルの補題」など. 主任指導教員 清中 裕明. 付値体の理論の中でも重要な内容をいくつか取り扱う.. 指導教員清中裕明.
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