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正方形の等積三角形分割 : 付値体の理論の応用として

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Academic year: 2021

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(1)正方形の等積三角形分割 付値体の理論の応用として               教科内容・方法開発専攻.               認識形成系教育コース.               M11153E               正 法 院 和 彦. 1 研究の目的. この問題はFred Richmamが1965年にJohn Thomas に質問しており,1967年に未解決問題の一つとして.  私は現在,中学校・高等学校の教師をしており,新し い学習指導要領にも提示されているように,教科書の枠 を越え,生徒たちがより数学の世界を楽しむ課題研究的 な内容を授業で展開していきたいと考えている.また,. 現在の勤務校がスーパーサイエンスハイスクール指定 校に認可されており,生徒たちが自らテーマを考え,研 究するといった活動も行っている.その生徒たちの研究 活動において,その研究テーマを生徒たちが考えるとき のアドバイスや,研究内容の手助けを少しでもしていき たいと強く思っている、そのためには,いろいろな数学 的発想や発展的な内容を私自身が理解し,身につけてい かなくてはならない.また,自分自身が探究活動をして いくことの楽しさを味わい,それを生徒たちに伝えてい くことが大切であると感じている..  そのことを踏まえた研究テーマはいろいろあるが,そ の中でも興味がある内容で,かつ,自分自身が苦手であ. る内容を研究したいと考えた.今の生徒は少しでも苦 手意識をもつと,すぐに諦めたり,投げ出したりしてし まう傾向がある、その生徒の気持ちを理解し,そして,. 自分の苦手意識をも克服することにもつながると考え たからである..  また,研究内容を決める際に,誰にでもわかるような テーマ設定をしようと考えた.その理由は,生徒や数学 の教師だけではなく,いろいろな人に少しでも自分の研 究テーマを理解してもらい,ともにそのテーマについて. rthis MONTHLY」という文献に提示されたものであ るが,内容をみて分かるように,誰にでも理解ができ, 考えることができるような極めて素朴な問題である、.  そしてこの問題は,1970年にPau1Monskyのわずか 3ぺ一ジほどの論文で,完全に解決されている.しかし 論文の短さとは裏腹に,その内容は代数学の付値体の理 論を極めて意外な方法で応用するもので,その理解には 代数学の相当な知識を必要としつつ,その証明の核心部 分は組合せ論的な巧妙性を持ち合わせている.  実際,このテーマを研究していく過程で,後に研究の. 内容で述べるが,体論や多項式などの高等学校での数 学に関わる内容が含まれていた.また,実数の構成や, 収束の精密な理解に関わる内容も含まれており,高等学 校で習う内容ではないが,高等学校数学の背景にあるこ とをきちんと学ぶことができる内容であった.それに加 え,高等学校数学を超えた内容として,付値論も深く関 わっている.そのため,自分自身の視野を広げ,今後の 授業で奥深い内容を取り扱う手助けとなった.  また,このテーマは単純な感じがするが,いろいろな. 拡張ができる.例えば,第5章で述べるが,正方形以外 の四角形にしてはどうなのか,立方体にするとどうなる. のか,4次元にするとどうなるのかなどいろいろな発展 が考えられる教材となっている.そのため,今後の自分. 自身の探求活動としてさらに研究を進めていくことが できると考え,この研究テーマに定めた1. 考え,楽しんで欲しいと思ったからである..  以上のことを踏まえ,設定した研究テーマは,以下の ようなものである、. 2 研究の内容. 正方形は,同じ面積で,重なり合わない奇数.  本論文で主として扱う問題は上記の研究の目的でも. 個の三角形に分割することができるか.. 述べたが,実際に具体例を考えれば,等面積の偶数個の. 三角形に正方形を分割することは極めて容易であるこ.

(2) とがわかる.しかし奇数個の等面積の三角形に分割しよ.  このように本論文では,やや高度な数学の内容を扱い. うとすると,試行錯誤を繰り返してもなかなか見つから. ながらも,高校の数学の内容との関係性も意識し,さら. ないことがわかり,この問いの答えは「できない」と直. に最終的なテーマでは素朴な問題と意外性のある証明. 感的に予想することはできる.. を扱うこととなった..  その予想が正しいことは,2進付値を用いて,組み.  さらに,本論文の当初のテーマでは正方形の分割を考. 合わせ論的手法を利用し証明することができる.もう. えたが,本論文の最後では,正方形に限らず他の四角形. 少し詳しく述べると,まず正方形8を座標平面上の. ではどうなるのかを自らの探究活動として考察し,台形. [0,11×[O,11と考え,その正方形8を等面積で重なり. の分割などについて一定の結果を得た.しかし,もっと. 合わない奇数個の三角形に分割できたと仮定する.そし. 一般的な四角形においてどうなるのかなど,興味深い問. て,その三角形の頂点の座標をQに付加した体をKと. 題も残されている.. し,いわゆる2進付値をK上に延長した付値Uを考え る.このとき,正方形を分割した図において,その分割. 囲内の頂点を座標の付値の値によって3つのタイプに. 3 論文の構成. 分類し,分割囲内のある種の線分の個数の偶奇性を調べ.  第1章では,本論文での問題提起と,本論文を読み. ることで,上記の予想が証明できる.. 進めるにあたり,必要となる基本的な定義や定理を述.  しかし,その証明のなかで,Kに2進付値を延長で. べる.. きることは自明ではない.そのことの証明には次に挙げ.  第2章では,QからQに実数を有限個付加した体へ. るいろいろな内容の理解が必要である.. の拡大は,純超越拡大と代数拡大の2段階の拡大に分.  1つ目としてはr体論」である.特にQからKへの. けることができること’. 体の拡大を扱うことになる.その申で,超越拡大,代数. 付値が延長できることを示す.. 拡大,多項式の既約性等の基本的な体論に関わる内容が.  第3章では,まず有理数体Qからコーシー列を利用. 必要である.. しRを構成すること(完備化)について述べ,これを.  2つ目の内容としては,r付値論」である.一番身近. 一般の付値体でも行うことができることを述べる.. な付値としては,中学校・高等学校で習う絶対値が挙げ.  第4章では,まずヘンゼルの補題について述べる.次. られるが,本論文では2進付値(非アルキメデス的付. に,付値の値を順序付き乗法群まで拡張することで,体. 値)を取り扱う.この2進付値は本来有理数体Q上で. の付値と付値環のあいだに対応があることを示す.そし. 定義されるが,今回の証明のためには上記で述べたよう. て,付値体Kが完備である場合には,Kの有限次代数. にもっと大きな体K上へ延長を行う必要がある.2進. 拡大にKの付値が延長できることを,ヘンゼルの補題. 付値や非アルキメデス的付値は高校の内容を超えるも. と付値環を用いて示した.このことから,有理数体Q. のであるが,整数論など大学以後の代数学では重要な意. に実数の元を有限個付加した体へ2進付値が延長でき. 義をもつものである.. ることが示される..  3つ目としては,r体の完備化」である.高校では有.  最後に第5章では,主定理となる「正方形は,同じ面. 理数から実数へ数の体系を広げる際,極めて感覚的な説. 積で,重なり合わない奇数個の三角形に分割することが. 明しかできないが,実数体Rは,有理数体Qと絶対値. できない」ことの証明を述べ,正方形ではなく,平行四. から完備化という手法により構成される.そしてその手. 辺形や台形の分割についても考察結果を述べた.. 述べ,Qの純超越拡大に2進. 法は,一般の体と乗法付値においても適用できるもので ある..  実際には,体の完備化を用いて,2進付値の延長が示 されていく.そしてその過程で,rヘンゼルの補題」など. 主任指導教員 清中 裕明. 付値体の理論の中でも重要な内容をいくつか取り扱う.. 指導教員清中裕明.

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