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「共同的な学び」による文学作品の読み -主体的な学習意欲の育成-

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(1)Title. 「共同的な学び」による文学作品の読み −主体的な学習意欲の育成−. Author(s). 吉光寺, 勝己; 本橋, 幸康. Citation. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第44号: 79-87. Issue Date. 2012-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/6865. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 釧路論集 -北海道教育大学釧路校研究紀要-第44号(平成24年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.44(2012):79-87. 「共同的な学び」による文学作品の読み -主体的な学習意欲の育成- 吉光寺 勝 己1・本 橋 幸 康2 1. 北海道教育庁. 2. 北海道教育大学釧路校. Cultivating Voluntary Motive for Reading a literature by Cooperative Learning Katsuki KIKKOJI1 and Yukiyasu MOTOHASHI2 1 2. Hokkaido Education Bureau. Department of School Education, Kushiro Campus, Hokkaido University of Education. 要 旨 本稿は,生徒の主体的な学習意欲を育成するために,文学的文章教材において「共同的な学び」による授業を展開して いくことが有効であることを述べるものである。 教育出版2年生の教科書より「夏の葬列」 , 同3年生の教科書より「ウミガメと少年」を教材として用いた実践を中心に, 言語活動を効果的に設定することによって, 「共同的な学び」による授業を展開し,単元の目標の達成や指導事項の定着 に結びつく方略を示す。. はじめに. 調査(2000年)と比較して,成績中位層が減り,低位層が. 稿者(吉光寺)は,2009年の「釧路論集」 (北海道教育. 増加しているなど成績分布の分散が拡大していること,な. 大学釧路校研究紀要)にて, 「協同的な学びによる文学教. どの低下傾向が見られた。」※5と述べられているように,. 材の効果的な授業展開について」と題して発表を行った※. 近年,我が国では社会的にも児童生徒の国語力の低下が取. 1。そこでは,国語科の授業において「文学作品の授業で. り沙汰されている。また,同答申では「学習や将来の生活. は,何をどう教えたらいいのか。 」と,多くの授業者が悩. に対して無気力であったり,不安を感じたりしている子ど. んでいるという実態を踏まえ, 学習者が本来持っている「読. もが増加」※6しているとも述べられていることから,児. みの力」を生かして読みを深めさせるための方略を論じて. 童生徒の主体的な学習意欲の低下が大きな課題であること. いる。. がわかる。学校教育においては,こうした問題点の改善を. 本稿では,「共同的な学び」を手立てとした授業展開に. 目指すことが求められていることから,平成20年3月に告. おいて,文学的文章教材を扱う際の理論的補強および再検. 示された『中学校学習指導要領』改訂の趣旨では,柱の一. 討を行う。教材としては,教育出版3年生の教科書に所収. つとして,「学習意欲の向上」が挙げられた。また,教育. されている教材「ウミガメと少年」※2を取り上げ,その. 課程編成の一般方針では, 「言語活動の充実」を規定して. 授業展開を再検討するとともに, 同教科書2年生所収の「夏. いる。つまり,学校教育全体における国語力の伸張が急務. の葬列」※3についても併せて検討し,文学的文章教材の. であり, 国語科にはその中核をなす役割が期待されている。. 授業における「共同的な学び」の効果について論じる。. また,稿者(吉光寺)の勤務校※7における生徒の実態 から, 「比較的学力は高いが学習意欲が低い」という生徒 が年々増加している傾向が見られたことから,ここ数年. Ⅰ 研究の課題と背景 平 成20年 の 中 教 審 答 申 ※ 4 に お い て, 「 平 成15年. 来, 「協同的な学び」や学習意欲の向上を目指した授業改. (2003年)に実施された国際的な学力調査(OECDの. 善を行ってきたという経緯がある。このような学習者の特. PISA調査及びIEAのTIMSS調査)の結果からは,我が国. 徴として,学んだことを活用して自分の考えを持つという. の子どもたちの学力は,全体としては国際的に上位にある. ことが苦手であるという傾向が,テストやワークシートの. ものの,読解力や記述式問題に課題があること,PISA調. 記述あるいは授業中の発言から見て取れる。そのような傾. 査の読解力の習熟度レベル別の生徒の割合において,前回. 向の学習者にとって,「学び」とは「記憶」であり,学ぶ. - 79 -.

(3) 吉光寺 勝 己・本 橋 幸 康 ことの喜びとはテストの点数が上がることに他ならないこ. しばしば「客観的に読む」ということを,私を滅して逐. とから,学習は苦役であり,当然のことながら学習意欲も. 語的に読むことだと誤解している学習者や授業者がいる。. 低い者が多い。. しかし,その誤解は,学習者の解釈や理解を阻害している。. こうした時代や社会の要請および生徒の実態から,学習. また,学習者の主体的な学習意欲も減退する。いわゆる 「行. 者の「主体的な学習意欲の育成」の視点で研究を始めた。. 間を読む力」が発揮され,理解につながるためには,必ず. なお,中学校国語科における学習意欲に関する先行研究は. 読者のスキーマ※10が介在する必要がある。. 僅少であることからも,本研究は意義あるものである。. 逐語主義的な授業を行いながら,授業者は「行間を読む」 という言葉のもと,無自覚にあるいは乱暴に経験的反応を. Ⅱ 研究の基底. 学習者に要求してはいないだろうか。ここにこそ,授業者. 学習者が主体的に教材と向き合い,意欲的に学習を進め. が言語活動を中心とした「手立て」を講じる必要がある。. ていく上で,「共同的な学び」を手立てとした授業づくり. 読者(学習者)が「テクストに参入し,それと交わる. が有効だと考える。. ことには様々な主観的経験が伴うことになる。」※11とリ. とりわけ,文学的文章教材を扱う際には, 「これからの. チャード・ビーチが述べているように,「行間を読む」た. 時代に求められる国語力について」 (文化審議会答申,平. めには,学習者のスキーマすなわちレディネスに依拠する. 成16年2月)の中で述べられているような「感じる力」が. ことになる。このことを無視すれば授業は成立せず,逆. 重要である。また,本答申では「感じる力」を, 「相手の. にこのことを意識してこそ授業者のもつ学習内容というス. 気持ちや文学作品の内容・表現,自然や人間に関する事実. キーマへとつながる。. などを感じ取ったり,感動したりできる情緒力である」と. では,学習者が「自分」を認知するためにはどうしたら. 定義している。. いいか。その方略は様々あると考えられるが,他者との相. 文学作品を読む際,逐語的な読みだけでは作品を知るこ. 関の中におくことが,容易に「自分」を認識するための手. とはできても,必ずしも作品の理解にはつながらない。作. 立てとなる。他の学習者のスキーマを感じることで,自分. 品を理解する(味わう・鑑賞する)ためには,そこに作品. のスキーマを認知することができるという点において, 「共. と向き合う「自分」が存在しなければならない。すなわ. 同的な学び」は有効であると考える。. ち,学習者が文学教材と向き合うとき, 「自分」という存. このように,主体的な学習意欲は, 「共同的な学び」の. 在を媒介として理解しているということを外すことはでき. 中で醸成されやすい。一斉教授型の授業では,学習者が 「自. ない。. 分」を認知しづらく,「頑張って読んでも,わからない。 」. 本文中の使用語彙の意味をすべて知っているにも関わら. という状態が生じやすい。ゆえに稿者(吉光寺)は,授業. ず理解できないという学習者は,多くの場合,逐語主義的. の展開の中に,多く「共同的な学び」を手立てとして講じ. な読みの足し算によって理解につながるものと誤解してい. てきた。. る。授業において,理解につながる読みを学習者に導くた. 以下,教育出版2年生の教科書より「夏の葬列」 ,同3. めには,学習者が主体的に「自分」を作品に介在させる学. 年生の教科書より「ウミガメと少年」を教材として用いた. 習意欲が持てる授業展開にすることが欠かせない。. 実践から報告する。. リチャード・ビーチは 「教師のための読者反応理論入門」 において,反応に関する五つのパースペクティヴとして,. Ⅲ 手立てとしての言語活動の設定. 次の各反応理論について論じている。※8. 「共同的な学び」となり得るような言語活動をいかに設 定するかについては,主体的な学習意欲の育成に大きく関. ・テクスト志向 textual. わるところであることから,学習者の実態を十分把握した. ・経験的 experiential. 上で,それに応じた適切な「手立てとしての言語活動」を. ・心理学的 psychological. 設定する必要がある。生徒の実態を踏まえ,以下のように. ・社会的 social. 設定した。. ・文化研究的 cultural. . その中の心理学的反応理論※9において,ハリー・ブラ ウディとアラン・パーヴィスによる研究として次の4つの 認知方略について述べている。 ・逐語主義者 Literalists ・連想主義者 Associationists ・解釈主義者 Construers ・分析主義者 Analogizers. - 80 -.

(4) 「共同的な学び」による文学作品の読み くという言語活動を取り入れている。このことにより,逐 語による読みの状態から分析的な読みを経てきた学習者の 読みが,主体的な解釈の段階に入ることになる。 【第5時】 (資料1参照) 前時に作成した「手紙」の内容を交流することを通して 叙述に立ち返り,町を訪れる前後での主人公の心情がどの ように変わったのかをとらえ,作品の理解につなげた。作 Ⅳ 授業の実際①. 成した「手紙」は,各学習者自身の解釈・理解の結晶であ. 1 叙述を読み解こう「夏の葬列」. り,その交流は相互評価をともなってそれぞれの学習者の. 【第1時】. 読みに影響を与えていた。. まず,「夏の葬列」を一読し,初発の感想を書かせる。. 最後に,初発の感想と,一連の学習を終えた後での感想. これは,最終時に書かせる感想と比較させるために書かせ. とを比較し,自身の感想の相違や深まりに,学習者が気づ. ておくものである。単元の終末において,学習者は自分の. くことのできる場面を設けた。. 読みの深まりや作品の理解を認知することとなる。なお, 生徒の実態や単元に包含させる他のねらい,または年間指. 本単元では, 「読みの深まり」をより意識して捉えられ. 導計画上の位置づけに応じて,必ずしも授業者による範読. るようにするために,「感想A(初発)」と「感想B(最終. ではなく,学習者自身による黙読を選択するのも効果的で. 時) 」の記述を比較しやすいように,ワークシートを作成. ある。. した。また,その深まりを,各自が書いた「ヒロ子さんへ. 次に,主な登場人物について確認したり,時代背景をと. の手紙」に求めることとした。ヒロ子さんの立場から手紙. らえ,場面ごとに段落番号を打つ作業を行うなどして,逐. を書くためには,作品を咀嚼しなければならない。各自咀. 語による確認をするとともに,次の授業展開に備える。学. 嚼して「手紙」として論理を再構築し表現したものを使っ. 力下位層の学習者のためにも,外せない過程ではあるが,. て,改めて作品の叙述に返る。その際, 「共同的な学び」 が,. これについても年間の指導計画に応じて,学習意欲の低下. さらなる深い読みの一助となった。. を招かぬようマンネリ化させないことを心がける必要があ る。. 2 物語の展開を批評しよう「ウミガメと少年」. . 【第1時】. 【第2時】. 「ウミガメと少年」は,終末部分に「わかりにくさ」が. 本時においては,作品の構成を大まかにとらえ,各大段. 残る展開となっている。本文を読む前にそのことを生徒に. 落のもつ意味(役割)について気づかせたい。このことに. 提示することによって,作品に対する興味・関心を持たせ,. ついても, 「共同的な学び」のもと,考えさせたい。. 「本文を読むことの必要感」を持たせた。生徒は意欲的に. 今回は,疎開先での出来事について,主人公とヒロ子さ. 作品を読み進めていき,どのような「わかりにくさ」があっ. んの行動や心情について,状況を踏まえて説明することを. たかをワークシートに記述し,各自が感じた「わかりにく. 課題として提示した。叙述の工夫を追究し,状況の説明に. さ」を共有化した。. 生かすことを補助発問として加え,グループ討議が活性化. . し,より主体的な学習意欲をもって学習できるよう心掛け. 【第2時】. た。. 前時に分かりにくいと感じた根拠を,共有した結果を踏. . まえてワークシートに記述し,それについても共有化す. 【第3時】. る。このとき生徒は,本文中に根拠を求めるという必要感. 本時においても,分析的な読みは続く。前時で作品の構. を持って,作品を精読する。実際に,生徒は非常に意欲的. 成を大まかにとらえているため,本時では各大段落の時系. に作品を読み込んでいた。その後,根拠を含め,改めてグ. 列を確認し,現在の主人公の視点で主人公の足跡をたどら. ループで共有した。このとき,互いに班員が根拠として挙. せた。. げた妥当性を確認して指摘していた。それを受け,終末部. また,叙述や記号・符号等,小説全般にわたって効果的. 分の展開について,各自で「仮説」を立てた。. に用いられている表現上の工夫についても話し合わせ,そ. . の効果を感じ取ることのできる展開とした。. 【第3時】 (資料2参照). . 前時に立てた「仮説」を班内で説明し,質疑応答を行う。. 【第4時】. それを踏まえて,物語の終末について,根拠とともにワー. 本時は,前時までの学習を踏まえ,主人公の視点に立っ. クシートに記入する。このとき,生徒は,班員の読みを「批. て,町を離れた直後の心境で「ヒロ子さんへの手紙」を書. 評」している。また,最終的に想定した結末を発表し,論. - 81 -.

(5) 吉光寺 勝 己・本 橋 幸 康 旨が通るか否かを確認する。 【第4時】 物語の終末部分について, 「誰が読んでもわかるように」 というコンセプトで実際に書いてみた。前時において共有 しているので,自分の読みを形にしたいという動機が生じ. また,生徒同士が互いの「読み」を評価しながら,楽し. ている。書き終わったら班内で回し読みをし,顕著なもの. んで,あるいは意欲的に学習事項の習得に励むことができ. については全体の場で紹介した。たとえ読みが他人と違っ. たことが伺える結果となった。また,統制群の学級におい. ても,その違う者同士が互いに「自分の読みが班員に受け. ても,授業の中で扱った「手紙文」を,相互批評の形では. 入れられている。 」 という感触のもとに書き進めたので, 「書. ないが複数の手紙文を全体の場で交流している。このこと. きあがったら,読んでほしい。 」という気持ちが生じて,. から,グループでの「共同的な学び」の形態をとったほう. 意欲化につながったものと考える。. が,スキーマ概念が機能しやすいことがわかった。 . 学習者は「ウミガメと少年」という作品そのものについ て話し合ったほか,作品に対する各自の「読み」について も互いに批評し合い,少年(哲夫)とウミガメとの関係, そしてその関係が織りなす展開の妙について活発な意見交 流が見られた。「批評」を言語活動の軸に据えて意見交流 を行うことによって,読みが深まると同時に読みの幅も広 げることができた。 Ⅴ 学習意欲の傾向 1 叙述を読み解こう「夏の葬列」から 本単元では,「共同的な学び」による主体的な学習意欲 の検証として,次のような方法をとった。 ① 第4時まで同一の授業展開であった2学級の最終. 2 物語の展開を批評しよう「ウミガメと少年」の単元か ら. 時の授業だけを別の展開とし, 「共同的な学び」を 手立てとして講じる学級(実験群)と, 「共同的な. 本単元では, 「共同的な学び」による主体的な学習意欲. 学び」を手立てとして講じないクラス(統制群)を. の検証として,次のような方法をとった。. 設定する。 ② Q分類簡便法※12による動因効果指数の学級平均. ① Q分類簡便法による動因効果指数を用いて,第1時の 指数を意欲の喚起ととらえ,学習意欲層別に数値を確. 値を比較する。. 認した。なお,その数値が,そもそもの学習成績によ る教科の得意不得意やそれにともなう好き嫌いに影響. なお,具体的な授業展開の差異は次のとおりである。. しないように,学習成績層M層の生徒についての数値 を検証に用いた。. 実験群 班員が書いた手紙文の内容のすべてを,グルー プ内で批評するという「共同的な学び」となる. ② Q分類簡便法による動因効果指数を用いて,第1時か ら第4時(最終時)までの各時間の数値の推移から,. 活動を取り入れる。 統制群 何通かの手紙文を,全体の場で授業者が紹介す. 学習意欲の持続と強化を検証した。なお,こちらにつ. る。作品の叙述に立ち返って考える活動は個別. いても前述の理由から,学習成績層M層の生徒につい ての数値を検証に用いた。. に行う。. ③ 指導事項の定着については,単元前後にプレテストと このように,情意面の差異に着目した測定を要するた. ポストテストを行い,その定着を確かめた。仮に定着. め,Q分類簡便法による動因効果指数で比較,検証した。. が不十分であるとすれば,そもそも上記①や②の検証. その結果, 表1のように, 「共同的な学び」 (4人の小グルー. は意味をなさなくなるからである。. プによる,相互の批評活動)を取り入れて行った実験群の 学級では,比較的高い動因効果指数を示したと同時に, 「読. (1)学習意欲の喚起について 図1は,学習成績M層の生徒について,学習意欲層差別. みの深まり」に対する自己評価の平均数値(4段階評価) も,実験群の学級の方が高かった。. に本単元(4時間扱い)の動因効果指数の単位時間ごとの. - 82 -.

(6) 「共同的な学び」による文学作品の読み 推移をグラフ化したものである。第1時の指数を意欲の喚. また,単元「物語の展開を批評しよう(教材:ウミガメ. 起と捉え,おおむね指数60以上※14となることをねらい授. と少年) 」については,最終時に使用したワークシートか. 業改善を行った。具体的には,単元開始時にこれまで以上. ら,学習者の手による創作の部分を転記した。. に詳細かつ丁寧に単元の見通しを持たせたことにより,も. なお,以下に転記したワークシートの記述については,. ともと学習意欲の低い層の生徒の学習意欲も喚起すること. いずれも学習成績層でM層に位置する学習者のワークシー. ができた。. トから抜粋したものである。. (2)学習意欲の持続と強化について. 1 叙述を読み解こう「夏の葬列」から. 「共同的な学び」の授業展開とし,それが生きる発問を. 【第1時(初発の感想)】. 工夫して授業改善を図った結果,学習意欲が持続するとい. 彼は,ずっとあの夏のことで追いつめられていたと思っ. う結果を得ることができた。図1で明らかなように,学習. た。ヒロ子さんを突きとばしてしまった。. 意欲の低い層では,第3時に意欲の低下が見られたが,第. . 4時では持ち直している。逆に学習意欲の高い層は,第3. 【第5時(終末の感想)】. 時に意欲の上昇が見られたことから,比較的意欲の高い層. 二つの殺人を犯してしまった彼の行為は決して許される. に効果のある手立て(課題)のときは意欲の低い層には効. ものではないけれど,この傷を自分の中に埋葬して,ヒロ. 果が薄いことも明らかになった。一方,第1時から第4時. 子さんへの償いの気持ちと共に一生背負って生きていくこ. を通して,学習意欲が強化したと考えられるほどの数値の. とで,この記憶を自分の現在から追放し,過去の中に封印. 上昇は見られず,この点についてはさらなる改善が必要で. してしまおうとしていた頃の彼とは違う。ヒロ子さんとヒ. あると考える。. ロ子さんのお母さんは天国で少しでも自分のしたことを償 いたいという彼の気持ちを受け取って,もう許しているの ではないかと思った。. (3)指導事項の定着について 単元前後に行ったプレテストとポストテストについて は,過去の公立高等学校入学試験問題における文学的文章. この生徒は,単元を通しての評価欄に, 「最初は彼がひ. の読み取りに関する設問から出題した。内容的には,登場. どい人だと思ったが,深く学習してから上のような(筆者. 人物の人物像の捉え方が展開の解釈に大きく関わるもので. 注:ワークシートの上部の枠に感想を記入する部分があ. あり,今回の指導事項の定着を確認できる問題であった。. る。その部分に記述したようにという意味。)感想に変わっ. その結果,100点満点換算で平均10.7点上昇しており,当. た。 」と記述しており,主体的な学習意欲をもって学習を. 該指導事項の定着や向上を図ることができたことを確認で. 進めることができたことが確認できた。. きた。 2 物語の展開を批評しよう「ウミガメと少年」から 第四時に「私が考える,結末の文章」として,物語の終 末部分の創作をワークシートに書かせた。次に示すのは, 実際にある学習者が創作した一例である。 あったかい,海の水が甘い。 少年は,産まれるはずだった十数個の命を守り抜けな かった自分が悔しかった。この海の底まで行けば,あの 命を取り戻せるような気がした。または,あのガマでう ずくまっている意味を失ってしまったのかもしれない。 どちらにしても,ウミガメの命をうばってしまったこ とに変わりはなかった。少年は,人間同士の殺し合いば かり繰り広げられていた世界を生きることを,ついにあ きらめた。海の深い青の奥に,おじいさんとおばあさん Ⅵ 学習者の反応. が見えた。自分を呼んでいる。と,少年は思った。ほか. 学習意欲が主体的であるかどうかについては,学習者の. にも日本兵が何人か見えた。そして最後に見えたのは,. 具体的な記述から判断することとする。. 十数匹の子ウミガメだった。. 単元「叙述を読み解こう(教材:夏の葬列) 」については,. ああ,やっぱり会えた。少年が手をのばす。でももう. 第1時に使用したワークシートの初発の感想欄と,最終時. 遅かった。気づいてしまった。この海でみたものはすべ. に使用したワークシートの終末の感想欄の記述から転記し. て,少年が失ったもの。つまり手をのばした先には,あ. た。. ともどりのできないもう一つの世界が広がっている。少. - 83 -.

(7) 吉光寺 勝 己・本 橋 幸 康 年が一番おそれていたもの。しかし,もうこわくはあり. 身につけるべき力の定着に結び付けることができた。. ません。少年は流れに身をまかせ,闇にとけていきまし. 授業者は,逐語主義的な授業を行いながら, 「行間を読. た。フッと,目の前の明かりが消えました。そして,浜. む」という言葉のもと,無自覚にあるいは乱暴に経験的反. では新しい命が生まれていました。少年が砂の中からと. 応の諸過程※17を学習者に要求してはいないだろうか。常. りそこねていた卵がふ化したのでした。. に授業を振り返り,授業者が言語活動を中心とした効果的. 大きなウミガメがやってきました。この海は消えてい. な「手立て」を講じて日々授業改善を重ねる必要がある。. く命と生まれていく命を,どこの海よりも見ていまし. 今後も、 「共同的な学び」による学習意欲の育成について、. た。. 実践報告から考察を進めていきたい。. 最終的に,学習者は主体的に読みを深めており,自分の. ※本稿は、北海道教育庁吉光寺勝己の北海道教育大学附属. 表現した文章を,他の学習者に読んでもらえることを期待. 釧路中学校(教諭)での実践理論と授業報告をまとめたも. してワークシートに記述していた。. のである。北海道教育大学釧路校本橋幸康(准教授)は、 研究授業の構想から関わり、授業参観での生徒の様子や. おわりに. ワークシートの分析および論文の構成等について研究助言. ハリー・ブラウディとアラン・パーヴィスによる研究と. を行った。. してリチャード・ビーチが挙げた4つの認知方略※15を, 主義としてどれか一つに絞った指導法に固執するのではな く,「逐語」・「連想」 ・ 「解釈」 ・ 「分析」を意図的に単元の 指導過程や年間の指導計画上に位置付けていくことが望ま しいものと考える。その際,一般的には次の順序による指 導過程を組むのが妥当である。 ①逐語 ②分析 ③解釈 (④連想) 授業者側からの適切な発問や指示がなければ,学習者は 各々逐語主義的あるいは連想主義的というように,学習者 自身の思考パターンで教材にアプローチすることであろ う。逐語主義者は, 「ほとんど解釈を行っていない」※16 とリチャード・ビーチが述べているように,学習者を教材 の理解に導くための効果的な手立てを講じるのは授業者の 責務である。 今回の研究を通して, 「主体的な学習意欲」を育成する ことで, 学び合いの中から読みを深め, 学習者に「気づき」 を促すことができた。文学的文章において,主題や深部の 内容にまで踏み込んだ理解を促すためには,前提として語 句そのものや構造の理解が不可欠である。特に本稿で提示 した両教材には,極めて効果的に使われているものの一読 して全生徒が理解できるには及ばない表現が数多くある。 そうした語句の確認を経て初めて, 「主体的な読み」が可 能となる。その意味で,逐語的な読みは必要だ。しかし, その上で,いかにレトリックを読み解き核心に迫るかが課 題となる。そこが説明的文章とは異なる点であり,読み味 わうことそのものを学習活動として設定し, 「共同的な学 び」を設定することで効果的に学習者に「気づき」を促し たい。 主題を含む論理の再構築 (手紙文の作成やリライト) に至るまでの確認の段階で,明確に課題を与えることで, 「共同的な学び」の中から生徒に「気づき」を促す学習活 動が可能となる。それは,いわば「主体的な読み」を行う ための手だてである。本稿で論じた双方の単元では,主題 を含む論理を再構築し, 「共同的な学び」の展開を経て,. - 84 -.

(8) 「共同的な学び」による文学作品の読み 【引用・参考文献】. 注 ※1 吉光寺勝己・比良輝夫,協同的な学びによる文学. 1 リチャード・ビーチ,山元隆春訳,教師のための読者 反応入門,渓水社,1998. 教材の効果的な授業展開について,釧路論集(北海 道教育大学釧路校研究紀要)Vol.41,PP.239-246,. 2 吉光寺勝己・比良輝夫,協同的な学びによる文学教材 の効果的な授業展開について,釧路論集(北海道教育. 2009. 大学釧路校研究紀要)Vol.41,2009. ※2 木下順二・加藤周一ほか,伝え合う言葉,中学国語. 3 木下順二・加藤周一ほか,伝え合う言葉,中学国語2,. 3,教育出版,PP.34-49,2010. 教育出版,2010. ※3 木下順二・加藤周一ほか,伝え合う言葉,中学国語. 4 木下順二・加藤周一ほか,伝え合う言葉,中学国語3,. 2,教育出版,PP.38-47,2010. 教育出版,2010. ※4 中央教育審議会「幼稚園,小学校,中学校,高等学 校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善につい. 5 中央教育審議会「幼稚園,小学校,中学校,高等学校 及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について. て(答申) 」 ,2008. (答申)」,2008. ※5 前掲書4,PP.12-13. 6 文部科学省,中学校学習指導要領(平成20年3月) ,. ※6 前掲書4,P.15. 文部科学省,2008. ※7 北海道教育大学附属釧路中学校 ※8 リチャード・ビーチ,山元隆春訳,教師のための読. 7 北海道教育大学附属釧路小学校・中学校研究紀要, 2007. 者反応入門,渓水社,P.13,1998. 8 北海道教育大学附属釧路小学校・中学校研究紀要,. ※9 前掲書8,P.80. 2009. ※10 前掲書8,P.134 ※11 前掲書8,P.81. 9 北海道教育大学附属釧路小学校・中学校研究紀要2011. ※12 北海道教育大学附属釧路中学校では, 『Q-分類簡便. 10 西川純,学び合いの仕組みと不思議,東洋館出版社, 2002. 法』という質問紙法による調査(自己評価)を行っ ている。これは,動因効果測定のための一つの方法. 11 桜井茂男,学習意欲の心理学,誠信書房,1997. であり,一単位時間の授業における学習意欲を数値. 12 佐藤学,教師たちの挑戦―授業を創る・学びが変わる, 2003. として測定できるように,同校が開発したものであ る。15項目の短文のうち,自分の感想に似ている文. 13 神戸大学附属住吉中学校・神戸大学附属中等教育学校,. を5項目選ぶ。算出法より得られた値で,講じた手. 生徒と創る協同学習―授業が変わる・学びが変わる,. 立ての有効性を判定することができる。. 明治図書出版,2009. ※13 学習者がワークシートに記入した数値(4段階評 価)を集計した平均値。 ※14 参考:類似の単元におけるQ分類簡便法による通常 授業の動因効果指数は,平均 46.7である。 (2010年 9月6日測定) ※15 前掲書8,P.139 ※16 前掲書8,P.139. - 85 -.

(9) 吉光寺 勝 己・本 橋 幸 康. - 86 -.

(10) 「共同的な学び」による文学作品の読み. - 87 -.

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参照

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