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競争力指数 (すぐに役立つ開発指標の話 第11回)

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競争力指数 (すぐに役立つ開発指標の話 第11回)

著者

野上 裕生

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

182

ページ

50-51

発行年

2010-11

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004385

(2)

50

アジ研ワールド・トレンド No.182 (2010. 11) ●競争力への期待と関心   「 競 争 力 」 は 注 目 さ れ て い る 概念である。たとえば世界経済 フ ォ ー ラ ム( World Economic Forum ) は 世 界 各 国 の 統 計 指 標 を使って国の競争力順位を公表 している。世界経済フォーラム の報告書は競争力指標を様々な データから作成している。その 中には実業界のリーダーに対す る各国の競争環境の現状に関す る質問調査の回答を集計した指 標と一人当たりGDP(購買力 平価で調整したもの)との統計 的関係を世界各国のデータで検 証したものもある。これに対し て ラ ル( Sanjaya Lall ) は 次 の ような問題を指摘している。世 界経済フォーラムのような競争 力指標は経済学の伝統的な概念 である「比較優位」の経済モデ ルに沿っていない。また競争力 指標と一人当たりGDPとの間 で統計的に有意な関係があって も、それは競争力指標→一人当 たりGDPではなく一人当たり GDP→競争力指標という因果 関係を示しているとも解釈でき る(金融市場やインフラ全般の 質に関する項目は経済発展で改 善 す る か ら )。 ま た 企 業 経 営 者 への質問が経済全体の客観的な 状態を示すとは限らないので経 済の客観的な指標も利用すべき だろう。このように批判をして はいるが、ラルは企業の活動を 左右する経済環境に注目するこ と自体はよい問題設定だと評価 している。 ●実質実効為替レート   競 争 力 のも う ひ と つ の 指 標 は 実 質 為 替 レ ー ト で あ る 。 こ れ は 為 替 レ ー ト を 自 国 と 外国 の 物 価 水 準 の 比 率 で 調 整 し た 価 格 競 争 力 の 指 標 で あ る 。 ( 実 質 為 替 レー ト= 為 替 レー ト× 外 国 物 価 自 国 物 価)。   実際の貿易で重要なのはドル だけでなく、貿易相手国と自国 の 通 貨 の 為 替 レ ー ト で あ る か ら、貿易相手国の通貨を輸出入 額で加重平均した実効為替レー ト ( eff ec tiv e e xc ha ng e r ate も 重 要 な 輸 出 競 争 力 指 標 で あ る。 表 1と図 1は世界銀行の 『世 界開発指標』に掲載されている 実質実効為替レートである。こ れは主な貿易相手国の通貨を加 重平均した名目実効為替レート を実質化したもので、先進国で は単位労働費用が、また途上国 では消費者物価指数がデフレー ターに使われている。様々な通 貨の加重平均を使うので基準年 ( こ の 表 で は 一 九 九 五 年 ) で 指 数化されており、二〇〇〇年の 値 が 一 〇 〇 を 下 回 っ て い た ら、 その国の通貨の実質価値は相対 的に低下し、その分、その国の 輸出競争力は向上したと考えら れ る。 た だ、 『 世 界 開 発 指 標 』 では国際比較可能な統計を使っ て計算している関係で、この指 標の解釈は慎重にしてほしいと 断っている。 ●顕示比較優位指数   もうひとつ、国際競争力を見 る上で重要なのは比較優位の指 標である。経済学では国々の間 で相互利益があるから貿易が起 こると考えるので、世界市場で のシェアを取り合うという意味 での競争力ではなく、自国が相 対的に得意な財の生産と輸出に

すぐに役立つ開発指標の話

第11回

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野上裕生

表1 実質実効為替レートの事例 (2000、1995=100) 中国 107.6 日本 95.6 シンガポール 95.5 オーストラリア 94.5 パキスタン 93.6 フィリピン 89.8 マレーシア 86.6 ニュージーランド 83.3

(出所)World Bank [2002] World Development Indicators 2002, Washington D.C. World Bank pp. 300-303.

中国 日本 シンガポ ール オース トラリアキスタンフィリピ ン マレー シア ニュージ ーランド 120 100 80 60 40 20 0

(出所)World Bank [2002] World Development Indicators 2002, Washington D.C. World Bank pp. 300-303.

図1 実質実効為替レートの事例 (2000,1995=100)

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アジ研ワールド・トレンド No.182 (2010. 11) 特化すること(比較優位)の方 が重要である。というのは自国 の世界市場でのシェアを拡大だ けでは自国の利益は他国の損失 になるだけで世界全体では得に はならず、また輸出は自国が生 産で不得意なものを輸入できる ためにあるからである。そこで 自国が相対的に得意な分野を知 ることができれば最適な貿易パ タ ー ン を 決 め る に も 有 益 な の で、現実の貿易統計に示された 比 較 優 位 ( Re ve ale d C om pa rat ive Advantage : RCA ) 指 標 が 作 成 さ れ て き た( 「 基 本 公 式 」) 。 現 実の貿易統計ではある国がある 製造業品を輸出して別の製造業 品 を 輸 入 す る こ と も 多 い の で、 製造業品輸出―製造業品輸入= 純輸出を使うという工夫が必要 で あ る (「 基 本 公 式   RC A_ 2 」 参 照 )。 表 2と 図 2は 工 業 製 品 の 競争力に関する指標として工業 製品とハイテク製品の輸出シェ アとを示している。 このうち 「ハ イテク製品」はR&D集約度の 高 い 航 空 機 や コ ン ピ ュ ー タ ー、 科学器具のほか、外国企業の国 際的な活動が関わることの多い 電気機器等が含まれるので、こ れがマレーシアやフィリピンの 高 い 値 を 示 し て い る よ う で あ る。このことから、実際の貿易 パターンから比較優位を推定す る こ と は 容 易 な こ と で は な く、 産業・貿易政策立案のためには いろいろな情報を活用した方が よい。 ( の が み   ひ ろ き / ア ジ ア 経 済 研 究 所 開 発 研 究 セ ン タ ー ) 《参考文献》   R C Aに つ い て は Balance, R o b e rt R . 1 9 8 8 . “T ra d e performance as an Indicators of co m p ar at iv e ad va n ta g e ”, i n D av id G re en aw ay ed . E co no m ic Development and International Trade, Macmillan, pp. 6-24.   実 質為替レートは西川俊作編[一 九 九 五 ]『 経 済 学 と フ ァ イ ナ ン ス』東洋経済新報社の解説を参 照した。 R C A指数の問題点は 熊 倉 正 修[ 二 〇 〇 九 ]「 顕 示 比 較 優 位 指 数 と 比 較 優 位 の 逆 転 」 『 経 済 学 雑 誌 』 第 一 一 〇 巻、 第 二号、一 — 三八ページ。   世界経済フォーラムの報告書 は Po rte r, M ich ae l E ., e t a l. [2 00 5] Th e G lo b al C om p et itiv en es s Re p or t 2 00 5-20 06 , P alg ra ve Macmillan ( デ ー タ を 中 心 に し て再編集した日本語版はマイケ ル ・ ポーター『国の競争力』 (鈴 木立哉他訳) ファーストプレス、 二〇〇六年)などがある。世界 経済フォーラムの競争力指標へ の ラ ル の 批 判 は Lall, Sanjaya [2 0 0 1 ] “C o m p e tit iv e n e ss in d ic e s a n d D e v e lo p in g C o u n tr ie s: A n e co n o m ic e va lu at io n o f th e G lo b al C o m p et iti ve n es s R ep o rt ”, W or ld D ev elo pm en t, Vo lu m e 29, No. 9, pp. 1501-1525 が 詳 し い。 基本公式 比較優位(RCA)の指標 Xijは第i国の第j財の輸出額。Ximは第i国の製造業品輸出額。Xwjは世界の第j財 輸出額、Xwmは世界の製造業品輸出額。Mijは第i国の第j財の輸入額とする。 RCA_1= Xij X wj Xim Xwm = 第i国の第j財輸出の世界貿易額に占める比率 世界製造業品輸出に占める第i国製造業輸出シェア RCA_2= Xij-Mij Xij+Mij = 第i国の第j財の貿易収支 第i国の第j財の輸出と輸入の合計 (出所)世界銀行『世界開発報告2008』(田村勝省訳)一 灯舎、2008年、374-375ページ(原著はWorld Bank [2007]

World Development Report 2008: Agriculture for

Development)。 100 80 60 40 20 0 工業品輸出(対商品輸出比、%2005年) 日本 中国 韓国 バ ン グ ラ デ シ ュ フ ィ リ ピ ン パ キス タ ン タ イ マレ ー シ ア イ ン ド ス リ ラ ン カ ブ ラ ジ ル ベ トナ ム イ ン ドネシ ア ロ シ ア 80 70 60 50 40 30 20 10 0 ハイテク輸出(対工業品輸出比、%2005年) 日本 中国 韓国 バ ン グ ラ デ シ ュ フ ィ リ ピ ン パ キス タ ン タ イ マレ ー シ ア イ ン ド ス リ ラ ン カ ブ ラ ジ ル ベ トナ ム イ ン ドネシ ア ロ シ ア 図2 工業製品の貿易指標 表2 工業製品の貿易指標 工業品輸出 (対商品輸出 比、% 2005年) ハイテク輸出 (対工業品輸出 比、% 2005年) 日本 92 22 中国 92 31 韓国 91 32 バングラデシュ 90 0 フィリピン 89 71 パキスタン 82 2 タイ 77 27 マレーシア 75 55 インド 70 5 スリランカ 70 1 ブラジル 54 13 ベトナム 53 6 インドネシア 47 16 ロシア 19 8 (出所)世界銀行『世界開発報告2008』(田村勝省訳)一灯舎、2008年、 374-375ページ(原著はWorld Bank [2007] World Development Report 2008: Agriculture for Development)。

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