• 検索結果がありません。

<アートギャラリー>漆器のデザイン--「hana」シリーズ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "<アートギャラリー>漆器のデザイン--「hana」シリーズ"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)文学・芸術・文化/第 22 巻第 1 号/ 2010.9. アートギャラリー. 漆器のデザイン   「hana」シリーズ 岡 本 清 文 漆器は英語でJAPANと呼ばれるほど、日本の代表的な伝統工芸の一つである。 漆は古くから、堅牢で美麗な仕上げ材として、また強力な接着剤、防水剤として、 建築から仏像、膳や椀に至るまで幅広く利用され、我々の暮らしを支えてきたが、 近代化に沿って生活スタイルが大きく変化するとともに、プラスチック樹脂を代表 とする様々な新素材の登場によって、現代の日常空間からは随分遠ざかってしまっ た。高度成長期に普及したカラフルで軽やかなプラスチック製品は、安価な上に耐 久性もあり取扱い易く、瞬く間にテーブルウェアの主役になった。 しかし近年若い層を中心に、インテリアに対する意識や感性が洗練されてゆくに つれ、家具やステーショナリー、食器類など、住空間を構成する様々な身の回り品 における素材やデザインへのこだわりが高まって、もはや大量生産された安価なプ ラスチック製のコップが食卓に並ぶことは少なくなった。 とはいえ陶磁器類に比べると、まだまだ漆器は気軽に使えるものではなく、今日 多くの人が抱く漆器のイメージは、高級で繊細、晴れの場(正月や茶会など)のみ で使う特殊なもの。日常品というよりは美術品に近い扱いを受けているようであ る。実際、本漆の食器を所有し、しかもそれを日常的に使っている家庭は希少であ ろう。 本来は日用の食器であった漆器を、今日のような高級品に仕立て上げた背景に は、バブル期に展開された百貨店を中心とした企画販売の影響がある。螺鈿や蒔絵 を施した座卓や衝立のセットが何百万(時には一千万円を超える)という金額で売 られ、実際に飛ぶように売れたという。その代表的な本拠地となったのが輪島であ り、「輪島塗」は高級漆器の代名詞となった。輪島では従来から丁寧な工程を経た 良質の漆器を生産していたが、技術力を高級志向の装飾性に傾注していった結果、 漆器を普段使いから鑑賞用の美術品に押上げた。このブランディングはある意味で は成功であったが、バブル消滅以降の厳しい経済状況においては、あまりにも特化 した消費ターゲットに縛られて、身動きできない状況に苦戦している。 その輪島にて、漆器本来の伝統を、何とか現代の暮らしに再び生かそうと、新し い発想と展開で現代的な漆器を作り出している工房がある。地元出身である若手の デザイナー兼プロデューサー桐本泰一氏が率いる『輪島キリモト』である。代代木 地屋であった実家の木工所を、総合的な漆器プロデュース工房に転換した。キリモ トの漆器は様々な雑誌メディアなどで取り上げられ、わざわざ東京から輪島漆器を 買いに来る若い女性も珍しくない。精力的な桐本氏のチャレンジに加わるべく、今 回新しいシリーズのデザインを手掛けた。. −42−. ( 167 ).

(2) 漆器のデザイン−「hana」シリーズ. ( 168 ). −41−.  岡本.

(3) 文学・芸術・文化/第 22 巻第 1 号/ 2010.9. 最初に商品化した器は3種。背の高い器はビールやワイン、中サイズの碗型は、 ウィスキーや向付け用、小サイズの器は、猪口や突き出し、香辛料入れ等、それぞ れ多目的に使うことを想定している。 大23,000円、中16,000円、小13,000円という価格設定であり、5客揃いでは高額に なるので、1客、もしくはペアで購入するべく、ターゲットは若いカップルか独身 の男性をイメージしてデザインした。丸みとシャープなカットラインを組み合わ せ、モダンインテリアの空間にフィットする「カッコいい」食器として、自分のた めにプレゼントしたくなるようなモノと位置づけした。 シリーズのタイトル「hana」は、器を裏返した時、5角のカット形状がちょう ど花びらのように見えることからネーミングした。バックシャンといって、すぐれ た椅子のデザインは後姿が美しいように、裏の表情にも美がある器を考えた。客を 迎える際にテーブルにそっと伏せて置かれたり、あるいは使用後に洗って伏せたと き、花の姿が現れる。カットグラスをイメージしてデザインしているが、同時に木 地椀には古くから亀甲削りという技法がある。その伝統技法の新しい展開として発 想した。 仕上げに関しては、桐本氏が考案した「蒔地」という下地材を混入した固い漆仕 上げで、従来の漆器では不可能であった金属スプーンの使用ができる。同様の仕上 げでできた漆のカレー皿はキリモトのヒット商品である。このように日常使いがで きることは、漆の魅力を伝える上で大切な前提となる。 工芸作家ではなく、デザイナー(建築家)としての視点でクラフトとコラボレー ションする方法は、今後ますます増えるであろう。. −40−. ( 169 ).

(4) 漆器のデザイン−「hana」シリーズ. ( 170 ). −39−.  岡本.

(5) 文学・芸術・文化/第 22 巻第 1 号/ 2010.9. −38−. ( 171 ).

(6) 漆器のデザイン−「hana」シリーズ. ( 172 ). −37−.  岡本.

(7) 文学・芸術・文化/第 22 巻第 1 号/ 2010.9. 裏側のデザインに美がある。器を伏せると大小様々な花が咲く。. −36−. ( 173 ).

(8) 漆器のデザイン−「hana」シリーズ.  岡本. 販売の状況 東京玉川高島屋。日本橋三越にもキリモトのブースがある。. ( 174 ). −35−.

(9)

参照

関連したドキュメント

9.ATR-IR 分析 (Attenuated total reflectance-Infrared analysis)  螺鈿香箱の製作に使用された漆の種類を明らかに

器形や装飾技法、それにデザインにも大きな変化が現れる。素地は耐火度と可塑性の強い  

2 本会の英文名は、Japan Federation of Construction Contractors

日本の生活習慣・伝統文化に触れ,日本語の理解を深める

式目おいて「清十即ついぜん」は伝統的な流れの中にあり、その ㈲

その次の段階は、研磨した面を下向きにして顕微鏡 観察用スライドグラスに同種のエポキシ樹脂で付着 させ、さらにこれを

ここで融合とは,バンカーが伝統的なエリートである土地貴族のライフスタ

を塗っている。大粒の顔料の成分を SEM-EDS で調 査した結果、水銀 (Hg) と硫黄 (S) を検出したこと からみて水銀朱 (HgS)