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<判例研究>過失犯における訴因変更の必要性--最二決平成15年2月20日判時1820号149頁

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(1)過失泡における訴因変更の必要性. 過失犯における訴因変更の必要 a性 一一最二決平成 1 5年 2月2 0日判時 1 8 2 0号 1 4 9頁一一. 辻. 本. 典. 央. 事実の概要. 本件は,過失犯において公訴事実と異なる事実を認定する際の訴因変更 の必要性,及びそれが必要的である場合の裁判所の訴国変更命令の義務性 が問題となった事例である O 事実の詳縮は,以下のとおりである。 本件公訴事実は,被告人は, I 前方左右を注視し,進路の安全を確認して 進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,蔀方注視を欠いたま ま護然進行した過失J,こより,自車を対向車線に進出させ,対向してきた 大型トラックに正面錆突させた結果,自車の同乗者三名 i こ傷害を負わせ 0年 1 1月 248未公子日)は,検 た,というものである O 一審(広島地判平成 1. 察官が主張する過失の前提となる運転慈様,すなわち被告人の接見ないし 居眠り運転の蓋然性が肯定できず,仮に居眠り運転があったとしても,こ れのみでは事故に至る態様として疑問があり,被告人が居眠りをしておら ず劫手席同乗者から運転妨害があったとの被告人の弁解を虚偽として排斥 できないから,本件事故をもたらした対向車線進出という不註意な運転が 被告人の前方不注視という注意義務に違反した過失運転そのものであると の事実関係自体を認定することができず,検察官が主張する被告人の前方 不注視句進路の安全不確認という過失に関しては,合理的疑いを容れない 3 1 3(9 8 )一.

(2) 近 畿 大 学 法 学 第5 4 巻第 3号. 程度に証明されたとはいえないと判示ふ無罪判決を下した。これに対. 9日判持 1 8 2 0号 1 5 2頁)は,被告人の し,控訴審(広島高判平成立年 8月 2 弁解を容れた一審の事実認定 i こは誤りがあるとしつつ,公訴事実を前提と する摂り無罪とした判断自体は正当であるとしたが,被告人の過失を適切 にとらえた訴因に変更すれば有罪となることが明らかで、あり,本件は相当 重大な罪に該当することに鑑みると,裁判所には検察官に対し訴茜変更を 促し又誌命ずる義務があり,これをすることなく直ちに無罪判決をした点 に審理不尽の違法があるとして一審判決を破棄した上で,控訴審で交換的 に変更された訴因(被告人には, I 黄色のセンターラインを含む進路前方 を注携し,自車が対向車隷にはみ出さないようハンドルを握持して,自車 の進路である道路左側部分を進行すべき業務上の注意義務があるところ, 被告人 i こは,右注意義務に違長してハンドルを右方向に転把し,対向車線. J との事実)に基づいて 内に自車をはみ出させて進行した過失があ[る J 邑判し,脊罪判決を下した。被告人側が上告したが,最高裁は,以下のよ うに判示し,訴因変更の必要性及びそれに伴う訴因変更命令義務に関する 原判決合判断 i こ誤りがあるとしつつ,原判決を破棄しなければ著しく正義 に反するとはいえないとして,上告を棄却した。. 決定要旨. 「原判決が認定した過失は,被告人が『進路前方を注視せず,ハンドル を右方向に転把して進行した』というものであるが,これは,被告人が 『進路前方を注視せず,進路の安全を確認しなかった Jという検察官の当初 の訴因における過失の態様を菊充訂正したにとどまるものであって,これ を認定するためには,必ずしも訴因変更の手続を経ることを要するもので はないというべきである O したがって,上記の過失を認定するためには訴. -3 1 4(9 7)-.

(3) 過失犯における訴盟変更の必要性. 冨変更の手続を要するとの前提 i こ立って,第一審裁判j 所には,検察官に対 し訴因変更を促し又はこれを命ずる義務があり,これをすることなく直ち に無罪の判決をしたことに,判決に影響を及ぼすべき審理不尽の違法があ るとした原判決の判断は,法令の解釈を誤ったものといわざるを得な~. ¥0. しかしながら,記録によれば,原判決は,第一審判決に事実誤認があると 判断した限りにおいては正当であり,こむ事実誤認は判決に影響を及ぼす こせよ第一審は破棄を免れないも ものと解するのが正当で為って,いずれ i のというべきである O したがって,原判決に法令違反はあるものの,原判 決が第一審判決を破棄して有罪判決を言い渡した結論自体は正当であっ て,原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められない。 J. 研 究. L 訴罷変更の必要性 本件は,一審及び控訴審と上告審との鵠で,訴国変更の必要性に関する 暫断が分かれた。まず,この点から検討する O ( 1 ) 訴因変更の必要性に関する一般的基準 従来,審判対象は検察官が主張する具体的事実たる訴罰であり,訴因の 本質は法律構成ではなく事実記載の側冨にあるという理解を前提に(1)訴 国変更の必要性という開題について,特に被告人の防御という観点からこ れを一般的・抽象的に判断するか〈抽象的防衛説)又は公判審理における 具体的訪御の態議を考恵するか(具体的訪御説〉という点において,見解 の対立が見られた。この問題について,最高裁は,当初, I 審理の経過に鑑. F 璃事訴訟法 J1 3 1頁(19 5 8年,有斐閣)など 自口守-r 刑事訴訟 法・第 4版 補 正 版 J( 2 0 0 6年,弘文堂) 3 1 3頁 i , ま r 訴因対象説からは,訴菌は犯. ( 1 ) 平野龍一. O. 罪事実そむものを記載したものとなる(事実記載説(通説) ) J として,訴国対 象説と事実記載設は必然的関採にあるものと理解する。. 3 1 5(9 6).

(4) 近 畿 大 学 法 学 第5 4巻第 3号. み被告人の訪禦に実雲的な不利益を生ずる虞れがないものと認めるとき j には訴因変更を要しないとしていたが(最判昭和 2 9年 1月2 1日荊集 8巻 1. 号7 1頁),その後,具体的な審理経過の観点を捨象して判断するという額向 が見られるようになった(最判昭和 3 6年 6月1 3日飛集 1 5巻 6号 9 6 1貰,最判. 1年 7丹 2 6日刑集2 0巻 昭和 4. s 号7 1 1頁)。それゆえ,. この時期,最高裁判例. の立場は具体的防御説から抽象的防鶴説へ移行したと分析されていた汽 もっとも,最決昭和 5 5年 3月 4B刑 集 3 4巻 3号 8 9頁では,酒酔い運転罪の 訴習に対して活気帯び運転罪でお認定が問題となった事例について,該二 つの事実の一般的・抽象的比較に加えて,. r 本件i こおいては運転開始誌の. 飲酒量,飲酒の状況等ひいて運転当時の身体内のアルコール保有量の点に つき被告人の防禦は尽されていることが記録上明らかで、あるから」訴菌変 更を要しないと判断された。この決定を踏まえて,具体的防御説の観点は 実務上依然として捨てられて泣いないという分析も見られた民. 3年 4月1 1日刑集 5 5巻 3号 1 2 7頁 以上の展開を経て,最高裁は,最決平成 1 (殺人共同正犯における実行仔為者について訴菌と異なる実行者の認定が 問題となった事例〉において,この訴菌変更の必要性という問題について 一定の明確な基準を示した。それによると,訴因の拘束力が及ぶ範囲,す なわち事実の変化に伴って訴国変更手続が必要的となる範囲は,訴因が有 する審判対象の画定という機能に鑑みて,罪となるべき事実の特定にとっ て不可欠である要素に張られる。それ以外の要素については,被告人の訪 御という観点から一般的に重要といえる事項に関しては,原則として訴国 変更手続を要するが,具体的審理経過における被告人の拐御態議から被告 人にとって不意打ちとならず,かつ認定される事実が訴因の事実よりも不 ( 2 ) 小泉祐康「訴因の変更」熊谷他編『公判法体系豆Jl 2 5 1, 2 5 9頁(19 7 5年,百本. 評論社) 0. ( 3 ) 大谷重人 f 特 解JJ f I J 訴法百選第?綾 1 0 0頁(19 9 8 年 ) 。.

(5) 退失犯における訴菌変更の必要性. 利益とならない場合には,例外的に訴因変更を要しない (4)。 最決平成 1 3年により訴因変更の必要性という問題について最高裁として 明確な基準が示されたことから,今後. i 匪裂の事例について右基準との整 合性が関われることになった。もちろん,最高裁の示す基準は依然として 検討の余地を残すものであるが紛,本件の検討にあたり,裁判実務におけ. 3年の判軒を前 る位置付けを確認するという意味から,基本的に最決平成 1. 。. 提として論を進める。 過失犯(道路交通業過事伊Dにおける訴因変更の必要性. 1.前出最決平成 1 3年で示された訴因変更の必要性に関するー設的基準. は,当然ながら,過失把においても妥当するものでなければな§な ~\o. もっとも,従来から,訴因変更の必要性という問題は,過失犯の領域にお いて特に顕著に現われ,議論を難解かっ護雑なものにしてきた。例えば, 石井一正紛は,過失犯において訴因変更の必要性が特に難解・複雑なもの となる原因として,交通事故の一連の過程のどの時点にどむような過失を とらえるかということ自体困難かっ微妙な詩題であること,過失犯の訴因 として詞をどの程震特定して記載すれば足りるかが故意犯に比べて匿難で あること,この問題の解決に際して訴国変更の必要性に関する一般的基準 の定立だけではあまり意味がなくこれを適足する具体的方法こそが重要で あること,を挙げている。 最決平成 1 3年で示された一般的基準が過失犯の領域でどのように適用さ れるべきかを検討するためには,まず,過失犯において審判対象の画定と いう観点から,いかなる要素が罪となるべき事実の特定にとって不可欠な. ( 4 ) 辻本典央「訴匿の研究一一『訴因変更の必要性』について 号1 3 1頁 ( 2 0 0 5年〉。 { 日. J近 法 5 3 巻1. 辻本・言言語注(4) r r 訴因変更の必要性』について J1 4 7頁 G. ( 6 ) 石井一正「過失犯における訴因変更一一轄例の総合的訴究 -. 1 6頁 0975 年 ) 。 317(9 4)一. J判 評 2 0 2号.

(6) 近 畿 大 学 法 学 第5 4巻第 3号. ものであるかが探求されなければならない。本稿では,過失犯の領域で訴 因変更の必要性が問題となった事例の分析を通じて,右問題を検討してみ fこ~. ¥0. 1 1 .. 過失犯の領域において訴因変更の必要性が問題となる事現は,以下. のように類型化することができる(九 ( i ) 訴因事実と認定事実とむ閣で事故の状況が全く異なるという場合に は,これに応じて過失の態様も異なってくるため,訴因変更が必要的とな るO 例えば,. I 濡れた乾をよく拭かずに履いていたため,一時穿止の状態か. ら発進するにあたりアクセルとクラッチペダルを踏んだ際足を滑らせてク ラッチペダルから左足を踏み i まずした退失jという訴因に対し,. I 交差点前. で一時停止中む他車の後に進行接近する際ブレーキをかけるのを遅れた過 失Jを認定する場合(最判昭和 4 6年 5月2 2日荊集2 5巻 4号 5 8 8頁〉や,. I 酒. に酔い注意力が散漫になったのであるから運転を断念すべきであるのに自 車の運転を爵始し,的確な前方注視ができないまま漫然進行した過失j と いう訴因に対し,. I自車を運転進行中,路上に仰臥していた被害者を発見し. て一旦停止し,下車して同人を道路左端に移し再び発進した欝,右被害者 の動静に注意し前方を注視しながら進行することを怠った過失」を認定す る場合〈最判昭和 4 6年 1 1月268集芳U 1 8 2号 1 6 3頁)が,こむ類型にあたる O もっとも,事故の状況に一部会い違いがあるに過ぎない場合は,必ずしも 訴菌変更が必要とはされていない G 例えば,最決昭和 6 3年 1 0月2 4日7 詩集4 2 巻 8号 1 0 7 9頁では, I 降雨によって路面が湿潤したという事実と,在灰の粉. 塵が蕗面に堆積凝冨したところに訴からの降雨で路面が湿潤したという事 実は,いずれも路面の滑ちやすい原因と程度に関するものであって,被告. 問. 中 野 呂 義 則 「 訴 因 変 更 の 要 否J u"刑事訴訟法の争点・第 3絞I J120, 12 1頁. ( 2 0 0 2年,有斐頭),三井誠「過失泡の訴菌 Ju"璃事訴訟法の争点I J128頁 0979 年,有斐閣)。. 3 1 8(9 3).

(7) 過失犯における訴霞変更の必要 註 4. 人に速度調節という注意義務を課す根拠となる具体的事実と考えられる」 として,訴因変更は不要であると判断されている。 ( i i ) 訴因事実と認定事実との関で事故の状況誌同じでも,過失を捉える. 時点が異なるために注意義務の内容が異なり,過失の態諜に変更が生じる. r. 場合,訴因変更が必要的となる O 例えば. 軽四輪乗用自動車を運転した被 告人において被害者との罷に安全な間隔を保たないでその右側を進行しよ. r. うとした点に被告人の過失が存する j という訴因に対し. 被告人が運転開 始前,酒に酔ってすでに正常な運転をすることができない状態にあったこ と ,. したがって,右自動車の運転を敢えて開始しこれを中止することなく. 継続した点に被告人の過失が存する j と認定する場合(仙台高判昭和 4 3年. 7月1 8日高璃集 2 1巻 4号 2 8 1頁)や. r 左折時点におけるいわゆる並進後続. r. する被害者に対する安全確認義務違反j という訴菌に対し. それより以前 の時点すなわち被告人が先行する被害者を認めた擦の,その時点において 被告人には減速,徐行,道路左鎖寄に進行する義務j に対する違反を認定 する場合(大抜高判昭和 4 4 年 3月 108半日時 5 5 9号 8 5頁)が,この類型にあ たる O. ω 訴因事実とは態様の異なる他の過失を重畳的又は詳存的に認定する こ掲げられた過失と本質的に異なるときに 場合において,該過失が訴因 i 2 ),対向車と離合 誌,訴菌変更を要する O 伊jえば, r(1).接行義務違反. (. の際の安全間罷保持義務違反j という訴冨に対し,さらに r ( 3 ),急激な制 動措量の避止義務違反Jを付加して認定する場合(大阪高判昭和 4 6年 5月. r 左後方より進行する車再に対する安全確 認義務違反という過失Jという訴因に対し, r 法定合図義務違反Jを付加 2 8日高知j集 2 4巻 2号 3 7 4夏〉や,. 6年 1 0月 2 8日判タ 2 7 6号 3 7 2頁〉が, この して認定する場合(東京高判昭和4 速平 7号 1 2 4夏 類型にあたる。もっとも,大阪高判平成 7年 3月288高知j では,アクセルペダルをブレーキペダルと間違えて搭み込んだ過失という. -3 1 9(9 2).

(8) 近 畿 大 学 法 学 第5 4巻第. 3号. 訴菌に対し,確実に幸Ij動をしないという過失をも付加して認定する場合, 汀確実に制動をしないという過失』というのは,. r ペダルの踏み題違いの過. 失 j というのと同じく,公訴事実にいう『ブレーキの確実操作運転義務』 違反そのものであって,いずれもブレーキ操作の誤りに変わりがなく,過 失の態様を異にするものではな l ' J と判示の上,訴国変更の手続は必要で はないと判断されている O 紛. 単に注意義務を尽くす手段・方法が訴国と認定事実との間で異なる. に過ぎない場合は,同一態、様の過失の内部における事実む変化 i こ過ぎず, 訴茜変更は不要とされる O 調えば, た過失j という訴因に対し,. r 急告Ij動措置と左に避譲の措置をとっ. r 待速約 3 0キロメールで進行した過失j を認. 定する場合がこの類型にあたるが,日、ずれも注意義務としては対向車輔 との離合の擦における安全通行,事故訪止義務を示し,その内容として速 度の調節と急激な制動,避譲措置をさけることを指摘しているのであっ て,再者の掲げる注意義務に異なるところはな Lリとむ理由で訴因変更詰. 4 年同月 2 2日判持5 9 3号 1 0 3 不 要 で あ る と 判 断 さ れ て い る ( 東 京 高 特 昭 和4 頁 〉 。 ( v ) 訴因事実と認定事実との間で因果系列に相違がある場合,訴因変更. が必要である O 例えば,. r 被告人の運転する車再の左後車輸による蝶過」と. いう訴因に対し, I 後続自動車による被害者の磯過j という事実を認定する. 2年 4月2 5日判時4 9 0号7 6頁〉や, I 被告人車の衝突の 場合(大阪高判昭和 4 後,本件現場を通行中む他の車両もまた被害者に衝突し,その結果,被害 者が受傷,死亡したものとして被告人の過失責任を詞う」という訴因に対 被告人車の衝突のみによって被害者が受傷,死亡したもの J と認定 し , I する場合(東京高判昭和 5 4年 2月. s日高荊集32巻 l号 l頁)がこの類型に. あたる O 1 1 1 .. 以上のような事例の分析から,過失犯の訴因となりうる要素とし - 3 2 0(9 1).

(9) 過失犯における訴冨変更の必要性. て,①詮意義務の発生根拠となる具体的状況,②注意義務の内容,@注意 義務違反の具体的意様,の三点、が想定される門学説上,右要素のどこま でが過失犯の訴冒として拘束力を有するか,換言すると審判対象の酉定の 譲点から必須のもりであり,訴因事実と異なる事実を認定するためには訴 国変更が必要的となるの辻どこまでかという点について,争いがある O 第 一説は, (じ②③の全てが訴国としての拘束力を有すると理解する。この見 解の論者である佐野昭一舗は,その理由として,. r 過失犯が注意義務ないし. その義務違反行為を中心として論じられるようになった現在,碕充された 構成要件としての注意義務岳体が,訴因の記載として欠くべからざるもの として扱われることは当擦である,……過失犯の或立を充足させるための 記述としては, [①②③]にまでおよぶ必要がある」と述べている。第二 説は,①③のみが訴因として拘束力を有し,② i まそこに含まれないとする O この見解の論者である井戸田侃 0 0 )は,その理由として,. r 注意義務の記載. 辻,罰条,罪名を補充する性格を有するものであるから,詮意義務の内容 についてむ記載なくしても,事実記載により,いかなる注意義務違震を問 題にしているかについて疑いもなく一義的に明白な場合には,特にその記 載を必ずしも要しないと考えることができょう J と述べている。最後に, 磁. 石井・前掲注( 6 )r 過失犯における訴因変更 J1 6夏など。. 紛 佐 野 詔 一 「 過 失 の 構 成 と 訴 国 j 判タ 2 6 2号 2 2 8頁 0971年)。詞旨,朝間智幸 f 業務上過失致死傷の問題点J遠 藤 嬬 F 実務法律捧系第 4巻・交通事故・改訂 版 J9 6頁 0978年,青林書院新社),高木典雄「自動車による業務上〈重)過失. 致死欝事件における過失の認定について j司法研究報告書 2 1輯 2号 2 5 8頁 0970 年 ) 。 鍛井戸田侃「注意義務と罪となるべき事実・訴因 Ji IB搾憲郎薄士還震祝賀・過 失犯包)異体的問題Jl 3 0 6夏 ( 1 9 6 6年,有斐寵)。なお,平野・前掲詮(1)1i璃事訴. r. 訟法J1 3 4頁注(1)は, 過失犯では,必ずしも,どういう注意義務があったかを 記載する必要誌なく『漫怒と j という記載で足りる場合もあろう o 官頭陳述で, 事実の内容は詳結に述べられるのであるから,起訴状の記載は,ごく龍単で足 ,と述べている。これに反対する晃解として,高話卓爾「過失 りると思われる J. 5 5号 4 3頁 0966年〉。 犯と訴因 j ジュリ 3 -3 2 1(9 0).

(10) 近 畿 大 学 法 学 第5 4巻第 3号. 第三設は,@のみが訴因としての拘束力を有するとする。この見解の論者 である小泉祐康的は,その理由として,. r 訴因等に記載される①②は,犯罪. の日時・場所として訴因を持定するための部分と,@の過失行為の内容と なる部分とに解消させて考えるのが妥当であろう O 訴因変更の要否の問題 としては,①②の梧違を独立に論じる必要はなく,舎の過失の態様の変更 の開題として論ずれば足りるということである」と述べている O この問題について,最高裁は,前出最決昭和 6 3年において,. r 過失犯に関. し,一定の注意義務を課す根拠となる具体的事実については,たとえそれ が公訴事実中に記載されたとしても,訴因としての拘束力が認語られるも のではないから,右事実が公訴事実中に一旦は記載されながちその後訴因 変更の手続を経て撤毘されたとしても,被告人の防禦権を不当に侵害する ものでない根仏右事実を認定することに違法はな ~\J と判示し,少なく. とも①は訴毘としての拘束力を持たないと判断した。それゆえ,論理的に は,第三説と最も親和的であるといえよう O 本決定も,. r 原判決が認定した. 過失は,被告人が「進路前方を注視せず,ハンドルを右方向に転把して進 行した j というものであるが,これは,被告人が『進路前方を注視せず, 進路の安全を確認しなかった』という検察官の当初の訴因における過失の 態様を補充訂正したにとどまるものであって,これを認定するためには, 必ずしも訴因変更の手続を経ることを要するものではな Lリと判示してい る点を見ると,被告人の運転中の居眠りという事情と,現場の道路状況か らたとえ被告人が前方注視を欠いていたとしてもハンドんを右方向に屈転 させることなく握持していれば事故が発生しなかったとする事常とは,い ずれも過失の前提となる事実にすぎず,訴菌変更を要しないと判断したも 的 小 泉 ・ 前 掲 詮( 2 )I 訴医の変更J2 6 1真。同旨,鈴木勝利「訴因の変更」荒木編 F 荊事裁判実務体系第 5巻Jl 2 7 1頁(19 9 0年,青林書読)),毛利靖光「訴因変更 む要否」平野・松是編 F 新実例刑事訴訟法 I T J I( 19 9 8 年,青林書読) 4 7頁 。. 3 2 2(8 9)一.

(11) 過失犯における訴因変更の必要性. のであり,それゆえ,最決昭和お年と同様の枠組みで判断したものと分析 できる O で誌,このような判新は妥当なものであろうか。とりわけ,訴因変更の 必要性に関して一般的基準を示した前出最決平成 1 3年との関係が問題とな るG まず,①詮意義務の発生根拠となる具体的状況は,少なくとも過失を 「客観的注意義務一一結果の発生に対する客観的な予見義務と呂避義務 ーーに反するもの j と理解するならば Q 2 ) 過失犯という講或要件の罪とな るべき事実の特定にとって必ずしも不可欠の要素であるということはでき な L、また,②注意義務の内容誌,いわば過失犯の法律構成というべきも のであり,事実記載面を訴因の本震ととらえる事実記載説からは,やはり 訴因の本質部分,つまり訴因としての持束力を認められるべき要素ではな いということになるであろう O 従って,最決平成 1 3年を前提とするなら ば,過失犯の嶺域において如何なる要素について訴因変更を要するかとい う問題は,理論島には,③のみを捕捉する第三説が妥当ということになる であろう。①及び②の要素は,最決平成 1 3年で示されたいわば第二段階, すなわち,被告人の訪錦の観点からのみ訴因変更の必要性が問題となるに 過ぎな t ' 0 もっとも,このような考え方について,次のような問題点が指捕される べきである。第一に,確かに,舎の要素は法律構成であり,事実記載説を 前提とする隈り,訴国として「過失J(あるいは「漫然と」的と記載され ていれば足りるかに思われる O しかし,過失犯は,いわば関かれた構成要 件として理解され,どのような事実が③の要素に該当するかという問題 は,故意犯の場合とは異なり一義的に決定されうるものではなく,具体斡 状況 ζ おいて舎の要素と関係付けられて決定されるべきものである。つま Q 2 ) 団藤重光『璃法網要総論・第 3版 J3 3 3頁 ( 1 9 9 0 年,部文社) 0 Q 3 ) 平野・前掲注(1) r 刑事訴訟法J1 3 4 頁詮(1)。 - 3 2 3(8 8 )一.

(12) 近 畿 大 学 法 学 第5 4巻第 3号. り,@の事実が特定されるためには,その前提として@の要素自体の特定 が必要となる O それゆえ,場合によっては,. 1 過失」という抽象的レベル. では一致するが,それを具体化した注意義務の内容というレベルにおいて 本質的な差異が生じた場合には,訴因変更が必要的となりうるのではない だろうか。第二に,僚に本件で問題となった事実が訴習としての拘束力を 認められない類型のものであったとしても,最決平成 1 3年によると,さら. 、. に被告人の防御む観点から訴因変更の必要性が関われなければならな L. さらにいずれにせよこのような判断枠組は,最決平成 1 3年の見解,つま り訴菌の拘束力が認められる範国をもっぱら審判対象の画定の観点、から導 1 識別説 J ) を前提とするものであるが,このような見解自体が自 く晃解 (. 明であるというわけではなく,例えば,被告人の防衛の観点、を訴菌変更の 必要性の判断にとって本質的なものと捉える克解 ( 1防錦権説j鈍)を前提 にすると,①の要素も一定程震〈場合によっては全面的に)訴因としての 拘束力を持ちうるものと理解すべきように思われる。 以上から,本決定の訴菌変更の必要性 i こ関する結論は, 1 過失の慈様を補 充訂正したにとどまるもの j という判示部分を見ると,③の要素において 本質的変化はないとの判断を前提としており,理論的には従来からの判断 と一貫するものと分析できる。しかし,①及び舎の要素も③の要素との関 連性が強く認められる場合に誌訴因としての拘束力を有する場合もあると の観点を加味して考嘉するならば,当初の公訴事実において控訴審が認め た事実を認定するには訴因変更を必要としないと判断した点には疑問があ るO すなわち,本件において被告人に課されていた注意義務は,公訴事実 に記載された進路前方の注視という義務に加えて,控訴審で変更(追加〉 されたハンドルを握持して進路を遵守するという義務であり,控訴審は, 具体的道路状況〈控訴審の認定によると,. 1 本件事故現場は,アスフアル. 綿 三 井 誠 『 璃 事 手 続 法 宣 J1 6 4頁 ( 2 0 0 3年,有斐毘)。. -3 2 4(8 7)一.

(13) 過失犯における諒菌変更の必要性. ト舗装された平坦な直諌道蕗であり,本件事故当時,路面は乾燥し,また, 路面又は被告人車に荷らかの異常があったことをうかがわせる証拠は何ら 存しない J ) からは居怒り運転による前方注視義務違反があったとしても 本件の事故に必ずしも結びつかず,ハンドルを握持して進路を遵守すると いう義務に違反して右方向に転回させたという過失によって初めて被告人 の問責が可能になると判断したむで、ある O すなわち,一審では,被告人の 居眠り運転に加えて,同乗者による運転妨害も争点となっており,仮に居 眠り等による前方不注視があったとしてもそのことだけで事故につながっ たわけではないことも理由として無罪判決が下され,窪訴審は,右判断で 示された注意義務と過失態様との本賞的関連性を前提として,いわば在意 義務の内容というレベルにまで訴因としての拘束力を認め,訴国変更を必 要的と判断したのである倍。 このようにして,最決平成 1 3年を前提にしても,どのような事実が審判 こ不可欠な事項であり,そむことから訴因としての拘束力を認 対象の確定 i められるべきかという問題は,特に過失犯において困難な問題をもたら い詰述石井の指摘がはからずも妥当することとなる。もっとも,被告人 の訪御という譲点からは,一審での審理状況から理解されるように,ハン ドルを握持するという注意義務は本質的な観点であり,また少なくとも, 最決平成 1 3年が示す第二段階,つまり被告人の防御の観点から訴因変更が 要求される事拠であったというべきではないだろうか紛)。 旬. 開田 i 克典「本件判解j 法セミ 5 8 7号 1 1 9頁 ( 2 0 0 3年〉は,(1)の要素と③の要素 との因果性の問題であるとして,訴因変更の必要性を主張する。. U S ) 早野暁「本件判研」新報 1 1 1巻 3=4号 4 4 1頁 ( 2 0 0 4 年〉は,具体的防御説の 立場から,本件で開題となった事実は被告人艇から公判段階で持ち出されたも のであり,防衛の保韓という点において訴因変更は不要とされる事例であった と主張する。また,松虫龍彦 f 本件判評」環刑 5 9号 9 1頁 ( 2 0 0 4 年〉は,被告人 への告知という観点から本件は訴菌変更を必要としない事例である,と分析す る 。. 3 2 5(8 6).

(14) 近 畿 大 学 法 学 第5 4巻第 3号. 2 . 訴因変更勧告・命令の義務性 こ,本件では,控訴審において,訴因事実と異なる事実を認定するた 次i めに泣訴因変更が必要的であるとの理解を前提 i こ,本件は相当重大な罪に 該当する事案であり,訴国変更をすれば被告人が有罪となるべきことが明 らかで、あったことから,原裁判所には検察官に対し f 訴茜変更を促し又は これを命ずる義務j が諜せられていたと判断された。他方,上告審では, 前述のとおりそもそも訴因変更を必要的であるとした判新自体が誤りであ るとされたことから,裁判所の訴因変更勧告又辻命令の義務性誌,直接の 争点とはならなかった。前述のとおり,本件は訴国変更が必要的である (少なくとも被告人の防衛の観点に着巨する張りで〉との判簡は妥当であっ たと解されることから,訴冨変更動告・命令の義務性という問題につい て,若干の検討を行っておく. O. 最高裁は,裁判所の訴因変更勧告・命令の義務性という問題について, 当初,否定的晃解を示していた(最判昭和 3 3年 5月 初 日 璃 集 1 2巻 7号 1 4 1 6 頁〉。しかし,その後,最決昭和4 3年 1 1丹 2 6日刑集2 2巻 1 2号 1 3 5 2頁では,殺 人罪の訴因について殺害の故意は認めるれないもりの被害者の死亡結果に 関して被告人に重過失が認められるという事例について, i 審理の経過に かんがみ,これを重過失致死の訴因に変更すれば有罪であることが証拠上 明らかであり,. しかも,その罪が重過失によって人命を奪うという相当重. 大なものであるような場合には,例外的に,検察官に対し,訴菌変更手続 を促しまたはこれを命ずべき義務があるものと解するのが椙当である j と 判示し,例外的にではあるが,裁判所には一定の範囲で訴菌変更を命令し 又は勧告する義務が存することが認められた。もっとも,さらにその後, 最判昭和 5 8年 9月 68璃 集 3 7巻 7号 9 3 0頁では,現場共謀による共同正犯 こ対し事前共謀による共同正犯を認定することが問題となった事例 の訴因 i について, i 第一審裁判所としては,検察官に対し前記のような求釈明に. -3 2 6(8 5).

(15) 過 失d sにおける訴因変更の必要性. よって事実上訴因変更を促したことによりその訴訟法上の義務を尽くした ものというべきであり,さらに進んで‘,検察官に対し,訴因変更を命じ又 はこれを積極的に淀すなどの措置に出るまでの義務を有するものではな いj と判示されたことから,最高裁判例は訴国変更命令を命令そのものか ら勧告ないし示唆にまで希薄化しているとの分析が見られる開。 実体的真実発見の観点. OfIJ訴法 1条)からは,被告人 D 有罪を確保する. 方向でむ裁判所の義務を一切否定することは妥当ではないが,しかし, I 権 力抑制機関Jたる地位をも存する裁判所の立場からは,基本的に,訴因 「勧告j 義務にとどめられるべきであろう民その上で,前出最決昭和 4 3年 を前提としても,本件は,被害者が傷害にとどまっていることから,そも そも例外を認めるだげの重大な事件であるといえるかは徴妙であるが錨, 問題の事実について一審と控訴審で評鍾が分かれている点を見ると,有罪 の明白性という要件が瀧たされるかという点には疑問が残る民. まとめ. 以上,本件は,前述(研究 1)のとおり,過失犯における訴国変更の必 要性が主な争点となった事案で為る G 訴菌変更の必要性という問題に関し ては,過失犯に際しでも,最決平成 1 3年で示された一般的基準とむ整合性 間. 同部泰昌「訴因変更命令JIr荊事訴訟法の争点・薪版Jl 1 4 6夏 ( 1 9 9 1年,有斐 閣),田宮裕『刑事訴訟法・新版Jl 2 1 0頁 ( 1 9 9 6年)。. Q 8 ) 鈴木茂掘 F 刑事訴訟法・改訂版Jl 1 2 2頁(19 9 0年,青林書院〉。なお,最決昭 3年では,一審において裁判長から検察官に対し訴因変更の示唆ないし鎮告 和4 が行われていた。 鱒. r. 松田・前掲注Q 6 ) 本件判評J9 4頁 l ま,法定璃だけでなく具体的事情に着目す べきであるとし,三名の重傷者が発生し,うちー名は瀕死む重傷であったとい う点かち,本件は重大性が肯定できる事担i であると主張する。. 働 安 村 勉 「 本 件 判 解j 平 成 1 5年重辛U 1 9 4夏 ( 2 0 0 4 年〉。. 3 2 7(8 4)一.

(16) 近 畿 大 学 法 学 第5 4巻第 3号. が輪討されなければならな L、もっとも,本決定は,最決平成 1 3年との関 係が明確に判示されて辻おらず,過失犯の訴因について祷綴化・体系北さ せるという課題は残されたままである O また,その際には,実体飛法上の 過失犯理論との整合性も意識されなければならない。そのような考察は, 膨大な判例の整理及び分析を含め,より詳細な検討を行うことを必要とす 。 王 るG 本稿で得§れた視点を基に,今後の課題としておきた L. ( 2 0 0 6年 8丹説稿〉. *本稿 i , ま. 2 0 0 4 年 2月2 8自に需催された剤事判伊i 研究会(於・同志社大学〉での報. 告をまとめたものである O. 3 2 8(8 3)一.

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参照

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