冷温水槽の汚染に対するオゾン水の安全性と有効性
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(2) こすことが懸念される。. レフタレート(polyethymene terephthalate:PET)は. 今回、このオゾン水を冷温水槽の循環水に使用すれ. 泉工医科工業社製 HPO-23H-CP とメドトロニック社製. ば安全に感染を防止できるのではないかと考え、非結. BB811、ステンレススチール(stainless steel:SS)は. 核性抗酸菌への消毒効果と各社人工肺熱交換器部分の. テルモ社製 CX-FX15E と JMS 社製 JK-MOXACFLCF、. 材料劣化について検証したので報告する。. ポリウレタン(polyuretane:PU)はリヴァノバ社製 050702J を使用した。13L のオゾン水を人工肺の冷温. Ⅱ.方 法. 水ポートに接続し 10L/min で灌流させた(図 2) 。臨. 1.オゾン水の生成と濃度. 床における使用時間は、人工肺の添付文書に記載され. オゾン水の生成はオゾンアソシア社製オゾンマイク. た性能評価を実施している 6 時間と仮定した。材料劣. ロフロートを使用した(図 1) 。オゾンマイクロフロー. 化の安全マージンを考慮し 6 時間灌流を 3 回行った後、. トはバケツ等に貯めた水道水に浸し運転することでオ. リークテストを行った。リークテストは人工肺の血液. ゾン水を作成できる。2L の水道水に対し 30 分間運転. 回路および熱交換水回路に水道水を満たし、添付文書. し 5 分毎に濃度を測定した。また、作成後のオゾン濃. 記載の耐用圧力を 6 時間かけ、目視で水漏れの有無を. 度の経時変化を確認するため 30 分間運転後の濃度が. 確認した。その後、熱交換器部分を切り開き走査型電. 0mg/L となるまで毎分測定した。オゾン濃度測定はア. 子顕微鏡(SEM)にて 30 倍、100 倍、300 倍の条件で. イ電子工業社製オゾン水濃度計 AOM-05 を使用した。. 表面を観察した。比較のため水道水を使用し同様の試. 2.消毒効果. 験を行った。. 非結核性抗酸菌に汚染された水(汚染水)の消毒に. Ⅲ.結 果. 何倍量のオゾン水が必要となるかを確認するため、汚 染水をオゾン水で希釈し培養を行った。実験用の非結. 1.オゾン水の生成. 核性抗酸菌は、MGIT 法および小川法による培養で非. 生成時の濃度変化を図 3 に示す。オゾンフロートの. 結核性抗酸菌の汚染が確認された当センターの冷温水. 運転開始から 20 分で 3.5mg/L まで上昇し以降 30 分ま. 槽より採取し使用した。オゾン水による 100 倍希釈. で変化は見られなかった。運転停止後 5 分で 2mg/L ま. (汚染水:オゾン水=0.5mL:49.5mL) 、10 倍希釈(5. で低下し、31 分で 0mg/L となった(図 4)。. mL:45mL) 、2 倍希釈(25mL:25mL)溶液を作成し、. 2.消毒効果. MGIT 法および小川法にて 6 週間培養した。希釈によ. オゾン水と RO 水の培養結果について表 1 に示す。. る検出感度への影響を確認するため、RO 水にて同様. 2 倍希釈で培養は陽性であったが、10 倍希釈と 100 倍. の条件で希釈し培養した。. 希釈では陰性であった。RO 水による希釈では全ての. 3.人工肺材料への影響. 検体で陽性で、希釈による結果への影響は見られなか. 対象として、熱交換器部分の材質がポリエチレンテ. った。. 人工肺. オゾン水 13L 図 1 オゾンマイクロフロート. 322. ローラ―ポンプ 10L/min. 図 2 実験用回路. 体外循環技術 Vol.47 No.4 2020.
(3) Jpn J Extra-Corporeal Technology 47(4),2020. (mg/L) 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0. オゾン濃度 0. 5. 10. 15. 20. 25. 30(min). 図 3 生成時オゾン濃度変化. (mg/L) 4 3.5. オゾン濃度. 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0. 0. 5. 10. 15. 20. 25. 30(min). 図 4 生成後オゾン濃度変化. 表 1 培養結果 希釈水. 希釈倍数. MGIT 法. 小川法. 総合判定. オゾン水. 2 倍. +. -. +. 10 倍. -. -. -. 100 倍. -. -. -. 2 倍. +. -. +. 10 倍. +. -. +. 100 倍. +. -. +. RO 水 . Ⅳ.考 察. 3.人工肺材料への影響 リークテストの結果を表 2 に示す。すべての人工肺. 冷温水槽は各社から販売されており、循環水の交換. で水漏れは見られなかった。SEM 観察結果を図 5 に. 頻度や管理方法は様々である。日本体外循環技術医学. 示す。JK-MOXACFLCF は構造上の問題から切り開け. 会は使用毎の排水・乾燥を推奨しているが冷温水槽の. ず観察できなかったが、観察したすべての熱交換器表. 構造上の問題から完全に乾燥させることは困難であり、. 面において劣化による外観変化は見られなかった。. 残った水分により細菌が繁殖する。使用毎に次亜塩素 酸ナトリウム等で消毒を行うことが理想的であるが、. 体外循環技術 Vol.47 No.4 2020. 323.
(4) 表 2 リークテスト結果 素材. 耐用圧力. 水漏れ. MERA/HPO-23H-CP. 人工肺. PET. 2,250mmHg. -. MEDTRONIC/BB811. PET. 1,550mmHg. -. TERUMO/CX-FX-15E. SS. 1,470mmHg. -. JMS/JK-MOXACFLCF. SS. 952mmHg. -. LIVANOVA/050702J. PU. 1,500mmHg. -. (a)オゾン水灌流後. (b)水道水灌流後 図 5-1 電子顕微鏡観察結果(HPO-23H-CP). (a)オゾン水灌流後. (b)水道水灌流後 図 5-2 電子顕微鏡観察結果(BB811). 324. 体外循環技術 Vol.47 No.4 2020.
(5) Jpn J Extra-Corporeal Technology 47(4),2020. (a)オゾン水灌流後. (b)水道水灌流後 図 5-3 電子顕微鏡観察結果(CX-FX-15E). (a)オゾン水灌流後. (b)水道水灌流後 図 5-4 電子顕微鏡観察結果(050702J). 消毒に適切な封入時間と残留薬剤の除去のため十分な. 対する殺菌効果が報告されている 13)。またレジオネラ. すすぎ作業が必要であり、臨床使用の合間に行うのは. においても 0.005mg/L のオゾン水で 99.99%殺菌が可. 困難である。オゾン水は消毒液として 2mg/L という低. 能とされており 11)、他の消毒液と比較しても強力な殺. 濃度において黄色ブドウ球菌、MRSA、大腸菌、O-157、. 菌力を有していると言えることから、熱交換の循環水. サルモネラ菌、セラチア菌、緑膿菌、腸炎ビブリオに. に使用することで安全に汚染を防止できるのではない. 体外循環技術 Vol.47 No.4 2020. 325.
(6) かと考えた。今回、オゾン水作成に使用したマイクロ. ●参考文献 1) Sommerstein R, Rüegg C, Sax H, et al:Transmission of. フロートでは 3.5mg/L のオゾン水が作成可能であっ. Mycobacterium chimaera from Heater-Cooler Units dur-. た。生体への安全性について、ウサギを使用した急性. ing Cardiac Surgery despite an Ultraclean Air Ventilation. 毒性実験では 20mg/L のオゾン水の 1mL の点眼、100. System. Emerg Infect Dis, 22(6);1008-1013, 2016. 2) Kohler P, Kuster SP, Hasse B, et al:Healthcare-associat-. mL の経口投与、20mL の腹腔内注射、3mL の筋肉注. ed prosthetic heart valve, aortic vascular graft, and dis-. 射による肉眼所見、各組織学的所見に異常は認められ. seminated Mycobacterium chimaera infections subsequent. ていない。また 4mg/L のオゾン水の 1mL の点眼、10. to open heart surgery. Eur Heart J, 36(40);2745-2753,. mL の腹腔内注射、2mL の筋肉注射を毎日 1 回、4 週. 2015. 3) Tompkins LS, Roessleret BJ, Cohen ML, et al.:Legionella. 間継続による亜急性毒性実験でも、肉眼所見、各組織. prosthetic-valve endocarditis. N Engl J Med, 318(9);. 学所見に異常は認められていない 12)。院内感染予防の. 530-535, 1988.. ため 4mg/L のオゾン水を用いた 15 秒間の手指洗浄の. 4) Phillips MS, von Reyn CF:Nosocomial infections due to. 研究においてもオゾン水による刺激はほとんど認めら. nontuberculous mycobacteria. Clin Infect Dis, 33(8); 1363-1374, 2001.. れず頻回の使用でも手荒れが少ないと報告されてお. 5) Nagpal A, Wentinkvet JE, Tosh PK, et al.:A cluster of. り 10)、3.5mg/L のオゾン水は医療者の安全性が高いと. Mycobacterium wolinskyi surgical site infections at an. 考える。今回の検討で汚染水に対して 9 倍以上の使用. academic medical center. Infect Control Hosp Epidemiol, 35(9);1169-1175, 2014.. により非結核性抗酸菌に対する消毒効果が確認できた。. 6) Achermann Y, Rössle M, Hasse B, et al.:Prosthetic valve. 冷温水槽における排水不能の水は 1%と推定されるた. endocarditis and bloodstream infection due to Mycobacte-. め 14)、臨床使用後に排水し、次回使用時にオゾン水を. rium chimaera. J Clin Microbiol, 51(6);1769-1773, 2013.. 循環水として補充することで清潔に使用することがで. 7) Sax H, Bloemberg G, Weberal R, et al.:Prolonged outbreak of Mycobacterium chimaera infection after open-. きると考える。また、オゾン水作成から 31 分で 0mg/. chest heart surgery. Clin Infect Dis, 61(1);67-75, 2015.. L となるためすすぎ作業は不要で、薬剤の残留がなく. 8) Centers for Disease Control and Prevention:Emergency. 安全に使用できる。一方で、オゾン水の使用において. preparedness and response, HAN00397,13 October 2016.. は構造材料の耐オゾン性を評価することが必要である。. 27 July 2020.. 熱交換器部分の材質が PET、SS、PU の人工肺におい. 9) 日本体外循環技術医学会安全対策委員会.手術室における. て、臨床使用の条件で材料劣化は見られなかった。し. 冷温水槽など水路回路を備える装置の衛生管理,医療機器・. かし、臨床使用するには熱交換器用カプラ、冷温水供. 安全管理情報 No.16,平成 27 年 1 月.. 給チューブ、冷温水槽等の耐オゾン性も確認しなけれ ばならないが、冷温水槽は各社から販売されており内 部構成部品の材料も様々で、耐オゾン性については 個々で評価する必要がある。今後、オゾン耐性素材に. http://jasect.sakura.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2018/ 08/anzenseij-youhou-16.pdf, Accessed 9 November 2020.. 10) 赤堀幸男,村上篤司,星 昭二.オゾン水の殺菌効果と院 内感染予防への応用,日集中医誌,7(1);3-10,2000. 11) 中室克彦,土井 均,枝川亜希子,ほか:低濃度オゾン水 の Legionella に 対 す る 殺 菌 効 果. 防 菌 防 黴 誌,37(6);. よる冷温水槽が開発されればオゾン水を臨床使用でき る可能性が示唆された。. https://emergency.cdc.gov/han/han00397.asp, Accessed. 407-412,2009. 12) 星 昭二,桜井 譲,北川 敏,ほか.オゾン水による急 性、 亜 急 性 毒 性 実 験. 静 岡 済 生 会 総 合 病 院 医 学 雑 誌,. Ⅴ.結 語. 1996;28,29-40.. 体外循環における熱交換の循環水にオゾン水を用い ることで、冷温水槽の汚染に起因する感染の原因とな. 13) 塩田剛太郎:環境分野におけるオゾン利用の実際.医療・ 環境オゾン研究,増刊 3 号:72-78,2007. 14) 岡田ひとみ,百瀬直樹,山口敦司,ほか:アデノシン三リ. る非結核性抗酸菌の消毒が可能であった。PET、SS、. ン酸測定を用いた冷温水槽の循環水の腐敗評価―実用的な 冷温水槽の水管理方法―.体外循環技術,44(2);88-93,. PU の人工肺についてオゾン耐性を確認できたが、臨. 2017.. 床使用にはオゾン耐性素材を用いた冷温水槽でなけれ ばならないため、各社製品での検討が必要である。. . 本稿のすべての著者には規定された COI はない。. 326. 体外循環技術 Vol.47 No.4 2020. 【2018 年グラント助成研究】.
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