Scoring of PD-L1 expression intensity on
pulmonary adenocarcinomas and the correlations
with clinicopathological factors.
その他の言語のタイ
トル
肺腺がんにおけるPD-L1発現強度の半定量的解析と
臨床病理学的所見の関連について
ハイセン ガン ニ オケル PD-L1 ハツゲン キョウ
ド ノ ハン テイリョウ テキ カイセキ ト リンシ
ョウ ビョウリ ガク テキ ショケン ノ カンレン
ニ ツイテ
著者
五十嵐 知之
発行年
2017-03-10
URL
http://hdl.handle.net/10422/00012254
氏
名 五十嵐 知之
学
位
の
種
類 博士(医学)
学
位
記
番
号 博士甲第765号
学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項
学 位 授 与 年 月 日 平成29年 3月10日
学 位 論 文 題 目 Scoring of PD-L1 expression intensity on pulmonary
adenocarcinomas
and
the
correlations
with
clinicopathological factors
(肺腺がんにおける PD-L1 発現強度の半定量的解析と臨床病
理学的所見の関連について)
審
査
委
員 主査 教授 縣 保年
副査 教授 村田 喜代史
副査 教授 九嶋 亮治
別 紙 様 式
3
(課程博士 •論文博士共用)論 文 内 容 要 旨
0
整理番号・ ,ハ
7 7 2
(ふ り が な ) 匕が,ら上t
も,民 名 五 十 嵐 知 之
学位論文題目
Scoring of PD-L1 expression intensity on pulmonary
adenocarcinomas and the correlations with clinicopathological
factors
【目的】
が ん 細 胞 は
Programmed cell deathligand'l (P D -L 1 )
を發現し、細 胞 傷 害 性T
リ ン パ 球 (C T L )
上 のProgrammed cell death-1 ( P D - 1 )
と結合することで、C T L
に ア ナジ ーを 誘導し 、生体の免疫監視機構から逃避している。PD-L1/PD-1
経 路 は 、が んの治療標的とし て関心を 集めて いる が、非 小 細 胞 肺 が ん に お け るPD-L1
発現の臨 床 病理 学的 意 義 は未だ 不明確であ る。 本 研 究 で は 、免 疫 組 織化学 染 色(IHC)
におけるPD-L1
発 現 の 新た な評価方法 を開発 し 、肺 線 が ん に お け るPD-L1
発現の臨床病理学 的意義を明らかにする。 【方 法 】2008
年~2013
年 に 滋 賀 医 科 大 学 医 学 部 附 属 病 院 呼 吸 器 外 科 で 根 治 術 を 施 行 し た 肺 腺 が ん106
例 の 切 除 組 織 検 体 を 用 い てPD-L1
のIH C
を施行した。臨床病理学的所 見は診療録より 収 集した。 本研究は滋賀医科大学倫理審査委員会の承認を受けた。 肺 腺 が ん に 対 す るPD-L1
のIH C
予 備実 験で 、肺 胞 マ ク ロ フ ァ ー ジ(A M s )
は常にPD -L1
を高発現していたため、A M s
のPD-L1
染 色 強 度 を 、IH C
における内在性の 陽性コントロールとした。 また、が ん 細 胞 のPD-L1
染色強度は細胞ごとに不均一で あったことから、組 織 切 片 内 の 個 々 の が ん 細 胞 のPD-L1
染 色 強 度 をA M s
と比較して4
段 階 (0 :
陰性、1 :
弱 陽 性[AM s
より低い染色強度]、2 :
中等度陽性[A M s
と同等の 染色強度]、3 :
強 陽 性[AM s
より高い染色強度])に分類し、観 察 し た 視 野 全 体 のPD-L1
染色強度を以下の 式で半定量 化した 。H
スコア(0
〜3 0 0 > 0 X
陰性細胞の割合(
%)+ lX
PD-L1
弱 陽 性細胞 の 割合(
%)+2 X PD-L1
中等度陽性細胞の割合(
%)+3 X P D L 1
強陽性 細 胞 の 割 合 (%)。組 織 切 片 全 体 を200
倍 の視 野で 顕鏡 し、任 意 の3
視 野 に お け るH
ス コアの平均を、 そ の 症 例 のPD-L1
発現スコアとした。 臨床病理学的所見との関連に つ い て は 、Mann-
びte st
で 、無 再 発 生 存 期 間 はKaplan-Meier
曲線を作成したうえLog rank
検 定で統計 学的解 析を行 っ た 。 (備考) 1 . 論文内容要旨は、研 究 の 目 的 •方 法 •結 果 •考 察 •結 論 の 順 に記 載 し 、2 千字 程度でタイプ等を用いて印字すること。 2 . ※ 印 の 欄 に は 記入しないこと。別 紙 様 式
3
の2
(課程博士 • 論文博士共用) (続紙) 【結 果 】 患 者 背 景 は 、平 均 年 齢66.0
歳 、喫 煙 者6 2
例 (5 8 .5 % )
、組織亜型は乳頭型腺がん が3 8
例 (3 5 .8 % )
と最多で、EGFR
遺 伝 子 変 異 は34.9%
に認めた。肺 線 が ん のPD-L1
発 現 ス コ ア は 、 中 央 値 が52.3 (0.1
〜273. 3 )
で、 リ ン パ 管 浸 潤 (冉0 .0 3 2 )
、低分化 度 (P = 0 .0 2 2 )
と相関した。EGFR
遺伝子変異や他の臨床病理学的因子との相関は認 めなかった。 予 後 情 報 の 得 ら れ た9 4
症 例 の検 討で 、高PD-L1
発 現 群 は 低PD-L1
発 現 群 に 比 較 し て 手 術 後 の 無 再 発 生 存 期 間 が 有 意 に 短 か っ た (高PD-L1
発 現 群r s
低PD-L1
発現群= 2 4.1
ヶ月 f s36.4
ヶ月,P = 0.03 5)
。 【考 察 】 非 小 細 胞 肺 が ん に お け るPD-L1
発 現 の 臨床病理学的意義に関しては、未だ一定の 見解を得られていない。そ の背景 に は 、IH C
において使用する試薬や組織検体の取り 扱 い の 違 い 、陽 性 •陰 性 コ ン ト ロ ー ル が 設 定 さ れ て い な い 、PD-L1
発現の評価のため の手技が標準化されていないことが要因として考えられる。 本研 究 では、A M s
がPD -L1
を 高 発 現 し て い る こ と に 着g
し、A M s
の 発 現 強 度 をPD-L1
発現の内在性の 陽性コントロールとした。A M s
と 比 較 し て が ん 細 胞 のPD-L1
発現強度を段階的に評 価 す る こ と は 、使用する抗体による 染 色 性 の 違 い に影 響 を受け ず に、評価が可能とな る。 また、IH C
後 のPD-L1
陽 性細胞の計湖こ、 自動画像解析ソフトを用いる研究も あるが、A M s
もPD-L1
陽性細胞として計測される可能性があるため注意を促したい。IH C
で のPD-L1
発 現 強 度 は 、同一切片内でも部位や細胞間で不均一であることは、 組織マイクロアレイや内視鏡下生検 によ る微 小検 体を 用い た場 合、そ の 症 例 のPD-L1
発現強度を反映しない可能性がある。 従 っ て 、本 研 究 の よ う にwhole section
を用い る方 がPD-L1
発現強度の適切な評価が可能と考えた。また 、他 の研究 の 多くは 、PD-L1
陽性症例の定義として:PD-L1
陽 性 の が ん 細 胞 の 割 合 (5%
〜5 0 % )
を用いているが、Cut o ff
値 の設定に明確な根拠は示されていない。本 研 究 で 行 っ たPD-L1
の半定量的 評 価 方 法 は 、 が ん 細 胞 に お け るPD-L1
発現の特性を考慮した適切な評価方法である と考えられた。 【結 論 】IH C
に お け る 肺 腺 が ん のPD-L1
発 現 の 評 価 法 は 、A M s
のPD-L1
発現強度を陽性 コントロールとした半定量的評価方法が、 が ん 細 胞 に け るP D L 1
発現の特性を踏ま えていると考えられた。本 評 価 方 法 に よ り 、肺 腺 が ん のPD-L1
発 現 強 度 は 悪 性 度 (低 分化及びリンパ管浸潤) と関連しており、高P D -L1
発現群にお い て、手術後の無再 発生存期 間 が 有 意 に 短 !/、ことが示された。学位論文審査の結果の要旨
整 理 番 号 772 氏 名 五 十 嵐知之論 文 審 査 委 員
(学位論文審査の結果の要旨) (明 朝 体1 1ポイント、6 0 0 字以内で作成のこと。 )
が ん 細 胞 はProgrammed ce]1 death ligand-1 (PD-Ll)を発現し、細 胞 傷 害 性T リ ン パ 球(CTし)
上 のProgrammed cell death-1 (PD-1)と 結 合 す る こ と でC T Lを不応答化し、生体の免疫監視
機 構 か ら 逃 避 し て い る 。PD-L1/PD-1経路はがん治療標的とし て 注 目 さ れ て い る が 、非小細胞肺 が ん のPD-L1発 現 に 関 す る 評 価 方法や臨床病理学的意義は不明確である。 本 研 究 で は 、肺がん 細 胞 のPD-L1発 現 形 態 の 特 徴 を 踏 ま え た 解 析 方 法 を 開 発 し 、PD-L1発現の臨床病理学的意義を 明らかにした。 1) PD-L1の発現 は 、肺 が ん 組 織 内 で 不 均 一 で あ る が 、肺 胞 マ ク ロ フ ァ ー ジ(AMs)はPD-L1を恒 常 的 に 発 現 す る こ と を 見 出した。 2) A M sのPD-L1発 現 強 度 を 内 部 陽 性 コ ン ト ロ ー ル と し 、肺 が ん 細 胞 のPD-L1染色強度を半定 量 的 に ス コア化する評価方法を開発した。 3) 上 記 方 法 を 用 い て 、非 小 細 胞 肺 が ん に お け るPD-L1発 現 は 肺 が ん の 悪 性 度 (リン パ 管 侵 襲 • 低 分 化 度 )と関連し、PD-L1高 発 現 群 で 術 後 無 再 発 生 存 期 間 が 不 良 で あ ることを 示した。 本 論 文 は 、非 小 細 胞 肺 が ん に お け るPD-L1発 現 の 新 た な 評 価 方 法 を 開 発 し 、PD-L1発現の臨 床 病 理 学 的 意 義 に つ い て 新 し い 知 見 を 与 え た も の で あ り 、最終試験として論文内容に関連した 試 問 を 受 け 合 格 し た の で 、博 士 (医学) の学位論文に値するものと認 め られた。 ( 総 字 数 5 9 7字) (平 成2 9年 1月 2 3日 )