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第2章 必修教科等の研究 04 理科 科学的な思考力を高める理科学習 : 原子,分子の見える化学変化の学習」・「視点の移動を生かした力学教材の開発」の実践より

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Academic year: 2021

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理科

科学的な思考力を高める理科学習

-「原子,分子の見える化学変化の学習 ・ 視点の移動を生かした力学教材の開発」の実践より-」「 澤田一彦・保木康宏 本論の要旨 生徒が実験をするとき,まず,経験や新たな体験をもとに結果を予想させる。これは,問題解決の見 , 。 。 , 通しを立てることであり 実験に対する目的意識が生まれてくる 次に実験結果を考察する このとき 生徒は情報を整理して,数量的にとらえたり,モデル化したり,比較・分類したりして,規則性に気づ いたり,他の自然現象と結びつけて帰納的に推論する。次に,類似の発展的な課題に取り組むときに, , 。 , , 生徒は思考実験を行い 演繹的に推論する 生徒が帰納的に推論したり 演繹的に推論したりするとき 科学的な思考力が高まるのである。 科学的な思考力を高めるための授業のスタイルを考案し 「化学変化と原子分子」と「運動の規則性」, における授業実践において,その効果を検証した。その結果,生徒が内面に問いかけつつ,活気のある 授業が実現し,この授業スタイルの良さが認められた。 科学的思考力,帰納的推論,演繹的推論,化学変化と原子分子,運動の規則性 キーワード 1.はじめに 生徒がその瞬間を見逃すまいと顔をのぞかせ,まさ に,全員が一点を見つめている。そして実験。生徒の顔 は晴れ晴れとし,口々に何かの独り言をつぶやいてい る。私たちは,生徒の表情に感動し,生徒の中で何かが 変わったと実感した。もう一度,生徒のあの顔が見たい -。それ以来,あの授業・あの実験が何故あれほどまで に大きな効果をもたらしたのかを問いかけつつ,今日の 授業はこれでよかったのだろうかと振り返る日々から,こ れまでとは異なる授業のスタイルを創りあげた。本稿は, 「科学的思考力を高めること」に主眼を置いた新しい授 業のスタイルを実践を通じて検証するものである。 2.授業のスタイルについて 新しい授業のスタイルは,1時間にただ1つの学習課 題を設け,課題に関して,①概念(pre-conception)の引 き出し②概念と課題の結合③予想と討論④観察実験⑤ 帰納的推論⑥考察と定着⑦演繹的推論というサイクル を環るものである。(第1図) A~D 第1図 A具体的事象 経験・体験 ①・② 帰納的推論 演繹的推論 B D 仮説・予想 思考実験・発展 ③・④・⑤ ⑦ 概念・法則 C ⑥ 科 学 的 思 考 力 このサイクルは,1分野・2分野を問わずに毎時間くり 返すことが可能であり,次に何をするのかを生徒に理解 させることによって,授業を活性化できる。 このスタイルを創りだしたこだわりは次の4つである。 私たちは,生徒の既存の認識様式を新しい認識様 A 式に転換することがいかに難しいか経験してきてい る。それは教師が生徒に予想や仮説を立てさせるこ となく,教師の引いたレールの上を走らせ,準備周 到な実験によって教科書と同じ結果を導き出し,「わ かったか」と念を押してきた結果である。生徒の内 的矛盾が生まれ,その矛盾を克服すべく予想や仮説 が立てられ,それを検証するのが観察実験である。 観察実験の回数を増やしたからといって,生徒の B 基礎的な科学概念が形成されるとは限らない。何を 学ばせるのかを明らかにして,そのための観察実験 に,どのような材料を,いつ,どのように提示する かや,教師のゆさぶりの言葉がけ,観察実験の配列 の中に,多くの重要な要素が隠されている。 実験ブームのように外発的な興味づけをおこなう C だけの観察実験は,次には何をしてくれるのだろう という受け身な態度を助長する。生徒が内面に問い かけ納得したものには,読み物を読んだり,物づく りをする中で豊かに肉づけされなければならない。 概念や法則を導いただけで,それを使いこなす場 D 面がなければ,科学は役に立たないつまらないもの となってしまう。思考実験による理解の広がりにも 日常生活とのつながりが潜んでいる。

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3.実践事例1 物質の成り立ち「水の合成」 本単元は,化学変化についての観察,実験を通し て,化合,分解などにおける物質の変化について理 解させるとともに,これらの事象を原子,分子のモ デルと関連付けてみる見方や考え方を養うことをね らいとする 「事象を原子,分子のモデルと関連付。 けてみる見方を養う」ために,化学変化を現象とし てとらえる見方と,ミクロな原子のふるまいとして とらえる見方を切り換えながら概念づくりを図るよ うに構成した。目標は第2図のように整理した。 (1) についてA 生徒は,前時の内容をふりかえることができる理 , 。 , 科通信を 始業までに手に入れて着席する 内容は 前時の討論の様子や関係するオリジナルの4コマ漫 画である。授業の始まりに復習をだらだらとおこな うのは親切なように見えて,実は自己満足でしかな い。理科通信(第3図)を用いて,短時間に既習事 項を思い起こさせ,とぎれないように興味や関心を 喚起した。 第 3 図 理 科 通 信 学習課題は,強烈な動機に支えられて授業の最後 まで首尾一貫として流れ続ける意識である。ただ示 すだけではなく,生徒の概念意識から自発的に生み 出されたかのように,課題を練りあげる過程を設け る (第4図)。 自然事象 pre-conception 現象 既習事項 導入 理科通信 演示 第4図 学習課題を練りあげる過程 本時の導入(演示)では,チューブに入れた水素 に点火すると燃えるか予想させて実験を行った。(第 5図)多くの生徒は安易に燃えると考え,期待はず れの結果と「酸素がないから」という当たり前の理 由に悔しがり,緊張感が増した。 第5図 水素の燃焼装置 (2) についてB 学習課題はただ1つ設けるため,授業内容の縮図 となる。課題は黒板の青い枠内に書き,最終的な授 業のまとめは赤い枠内に書くことにしている。課題 は,生徒にとって解決可能であり,しかも適度に難 しくなければならない。やりがいのある課題であっ ても,単元全体で段階的に理解がすすんでいくよう な課題の配列が必要である。つまり,単元全体でど のような力をつけさせたいのかを明らかにしてから 各時間の課題を作成する。認識と探求の過程に即し た観察実験群と,具体化した課題群は次頁に示す。 課 題 意 識 第2図 内容と到達目標の関係図

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物質の成り立ち (全8時間) 水上置換で,この物質の気体を集めることが できるだろうか。 ・はじめに出る気体は空気であることを知る。 ・物質の融点や水溶性に着目して予想する。 ・ナフタレンの状態変化を観察する。 ・常温で固体であり,状態変化する物質の気体 を水上置換法で集めることはできない。 割り箸を加熱すると化学変化するだろうか。 ・酸化銀の熱分解を観察する。 ・延展性,電気伝導,金属光沢,水上置換で捕 集できることから状態変化でないこと知る。 ・加熱したときの割り箸の変化を予想する。 ・実験で,化学変化した証拠を確認する。 加熱するとわりばしは,化学変化して別の物 質に変化した。 ふくらし粉を入れたホットケーキがふくらん だ。ホットケーキをふくませた気体は何か。 , 。 ・粉は 炭酸水素ナトリウムであることを知る ・ふくらませたのが気体ではないかと予想し, 気体は何か調べる。 ・残った物質がすでに炭酸水素ナトリウムでは ないことを確認する。 炭酸水素ナトリウムは二酸化炭素(気体)と 水と炭酸ナトリウムに化学変化<分解>した。 水は電気で分解すると,2種類の気体がでて くる。何と何がでてきたのだろうか。 ・水は高温にしないと分解しないことを知る。 ・水に少量の電流を流すと,酸素と水素に分解 することを実験を通して知る。 ・電気分解では水素:酸素=2:1の体積比で あることを観察する。 水を電気分解すると,水素と酸素が2:1の 割合ででてくる。 水を分解すると水素が酸素の2倍でてくる訳 をモデルで説明しよう。 ・水を酸素原子と水素原子のモデルで表す。 ・原子はそれ以上分けられないことを知る。 ・原子は種類によって,結合する場所や数が決 まっていて,様々な物質ができることを知る。 ・他の物質のモデルも知る。 , 。 ・分子の表し方を理解し カードゲームをする 水分子は酸素原子1個と水素原子2個からな り,分解すると水素の量が酸素の2倍になる。 鉄と硫黄の混合物と化合物の違いを粒子モデ ルで説明しよう。 ・鉄と硫黄の混合物を分けてみる。 ・化合物をモデルで説明し,分けられない理由 を考える。 ・混合物と化合物の性質の違いを実験を通して 確認する。 化合物はもととは性質の異なる別な物質であ る。 Fe+S→FeS , 。 木炭を燃やすと 木炭はなくなってしまった このときの変化をモデルで説明しよう。 ・風船が必要な理由を知る。 ・二酸化炭素ができるのではないか予想する。 ・モデルで説明し,石灰水で確認する。 ・木炭が燃焼して二酸化炭素になる変化を化学 反応式で表す。 木炭(炭素)は酸素と結合して,二酸化炭素 2 2 になったのだ。 C+O →CO 酸素と水素を1:1の割合で燃焼させた。あ 。 ( ) とに残った気体は何か 本時 ・分子モデルから,残った気体を予想する。 ・検証実験し,確認する。 ・化学反応式で表す。 水素と酸素は2:1で化合して水ができるの で酸素が余った。 2H +O →2H O2 2 2 生徒が内面に問いかけつつ,活気のある授業を目 指して,授業での支援の方向を誤らない羅針盤を設 けた (第6図)他の意見を参考にすることは奨励。 , 。 すべきであるが 班で考えるさせるのは避けている 班で意見を集約すれば貴重な意見が失われてしまう ので,一人ひとりの意見を学級に反映させてから, グループに集約して討論にうつるようにしているか らである。班は観察実験の操作を手際よくおこなう 最少人数で行うが,動機がはっきりした生徒は,驚 くほど手際よく短時間で観察実験をおこなう。 第6図 支援の羅針盤

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(3) についてC 生徒が内面に問いかけ納得したものは,授業を振 り返って丁寧にまとめをたり,読み物を読んだり, ときには,物づくりをして定着を図っている。それ は,言葉として理解を深める,文字から理解を深め る,手作業から理解を深めるのどのタイプの生徒で あっても,しっかりと理解させたいと願うからであ る。本単元では,まとめと日常生活と関連させたオ リジナルの読み物を毎時間配布した (第7図)。 第7図 毎回配布する読み物 本時のもの (4) についてD 授業で明らかになったものを使って,新しいこと を考えるときに科学の有効性が明らかになる。本時 では,水素と酸素が過不足なく化合する水素と酸素 の比を確認して,生じる水について考えさせた。実 験は,学級全員で1本のチューブを持って2:1の 割合の混合気体に点火して確認した (第8図 。他。 ) には,水素と酸素が3:1の場合などの発展が考え られる。 第8図 2:1の混合気体に点火する場面 (4)授業の効果検証 本時の授業に関して,授業後に無記名のアンケー ト調査を行った。アンケートは 「これからの授業, をよりよいものにするために,今日の授業をふりか えってあなた自身の取り組みについて質問に答えて ください」という内容である。項目は,①課題を明 確にして取り組めたか,②授業に集中して取り組め たか,③他の人を参考にして考えを深めることがで きたか,④充実感や達成感を持つことができたかで ある。結果,第9図に示すように,充実感や達成感 の項目④に対して,とくに良い評価が得られた。驚 くべきことは,27人が全項目にオール5をつけてい ることである。このように良い評価が得られた理由 を自由記述から考察してみる。 第9図 本時のアンケート結果 ○他の人の意見もしっかりと聞き,そこから深く考 えていった。実験で仮説をたてて行った。 ○他の人の意見を聞いて自分の考えとの違いを学習 した。 ○自分の考えをしっかりと持って人の意見を聞くこ とでさらに考えを深めることができた。実験も自分 から進んで取り組むことができたので良かった。 ○人の意見を聞き,それを受け入れて自分の力につ 。 , 。 けた ノートをよくとり 授業を残せるようにした ○自分の考えたこと以外にいろいろ意見が出て1つ の課題に対してとても細かく考えることができた。 ○他の人の意見を聞いて,自分の意見との共通点や 違いを考えることをがんばりました。 ○今日の課題について予想が3つもあがり,自分の 予想以外にも納得できる予想が出てきてとてもびっ くりしました。そしてその予想に対し,友達同士考 え合ってそれについて反論を考えたりしました。最 終的に自分の予想は間違っていたけれど,実際に実 験をしてみて納得できたのでよかったです。 これらのことから,この授業のスタイルは,生徒 が互いに学びあい,高めあうことによって充実感や 達成感を生みだすものといえる。一連の学習課題に よって,化学変化では全く違う物質ができること, 粒子には分解するものがあること,粒子の中には原 子が含まれていることに気づかせ,化合の実験を通 して,原子のやりとりを考察させ,絶えず使いなが ら理解を深めさせることに成功したといえる。今後 も,化学変化の現象を常に原子の目で見る態度を感 得させたいと考える。学習指導案は第10図の通り。 5できた 4 2 1 ① ② ③ ④ 37 1 34 3 1 34 4 32 6 0 5 10 15 20 25 30 35 40 人数 4段階評定 アンケート項目

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第10図 本時の学習指導案 1)残った気体の正体について意欲的に推論しようとすることができる。 【関心・意欲・態度】 ( (2)反応した後にできる物質を分子モデルで見いだすことができる。 【科学的な思考】 (3)反応した後の気体量を正確に観察したり,気体の正体を確かめることができる。 【技能・表現】 , 。 【 】 (4)水分子ができたとき 酸素分子の余分ができた理由を理解することができる 知識・理解

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4.実践事例2「視点の移動を生かした力学教材の 開発」の実践より (1)はじめに 学習指導要領には「運動の規則性」について、 「物体の運動やエネルギーに関する観察,実験を通 して,物体の運動の規則性やエネルギーの基礎につ いて理解させるとともに,日常生活と関連付けて運 動とエネルギーの初歩的な見方や考え方を養う。」 と記されている。 「運動の規則性」の単元を指導する際には、抵抗 の大きな普段の生活の中で感じることのできる力 学概念から抵抗の小さい世界での力学概念を形成 させることの難しさを感じていた。そこで、運動の 規則性の単元構成について考えてみた。 (2)生徒の実態より 「物体の運動」について考えるとき、投げられた ボール、走る自動車、振り子、落下する物体など、 子どもたちにとってきわめて身近な現象である。し かし、これらを「運動の規則性」という見方をする と、少しやっかいである。子どもたちの日常的な「力 と運動」の関係は、抵抗がきわめて大きな地上にお ける「押したり引いたりして生ずる運動」の中で培 われてきており、力をはたらかせると動き、はたら かせるのをやめると止まるという「日常的な経験を そのまま法則化」したものが多くの子どもたちに共 通した概念となっている。実際、「ピッチャーがキ ャッチャーに投げたボールは、ボールの進行方向に 力がはたらいていると思いますか」という問いには 多くの子どもたちが「はたらいている」と答えた。 つまり、「ものが動くときはその方向に力ははたら いている」というような誤概念(miss-conception) をいつの間にかしっかりと身につけてしまってい るのである。すでに1年生で力学の基礎を学習した にもかかわらず、誤った日常的な常識が日常体験に よって強化されてしまっているのである。 以上のことから、本単元では、私たちが、普段の 生活の中で感じる「力∝速さという古代のアリスト テレス的力学観」を脱して、「力は動く方向を変え 速さを変化させる」という「力∝加速度というガリ レイ・ニュートン的力学観」を子どもたちに形成さ せるために、素朴な概念と自然事象の対決場面を授 業の中に構成することによって、子どもたちに揺さ ぶりをかけて、パラダイムの修正をおこない、ガリ レイ・ニュートン的な力学観を身につけさせたいと 考えた。 また、本単元は、目で見えない力を物体の運動な どで間接的に認識しながら学習を進めていくため、 より確かな認識をするために、予想したり、友だち の考えを交流したり、子どもたちの意志決定の場を 観察・実験の前に設けて、観察・実験から得られる 事実を大切にした学習を設定したいと考えた。 (3)単元構成のねらい まずは、身近な速さの測定を通して、より実態に 即した変化する「速さ」に気づかせたい。数学で繰 り返し計算している「平均の速さ(距離を時間で割 る)」は、現実の世界ではあまりない。記録タイマ ーという道具の使い方の学習を通じて、刻々と変化 する速さを瞬間・平均という2つの観点から理解さ せ、速さ=単位時間の移動距離という運動の重要な 要素の概念形成を行う。 その後、物体に一定の力を加え続けたとき、物体 の速さがどんどん増していくことを体感させ、斜面 を下る運動でも継続してはたらく重力を意識させ て、加速度運動の指導を行う。さらに、斜面から水 平面に台車が進んだときには、重力は抗力とつりあ って合力がゼロとなって等速直線運動に変わるこ とを確認する。このような学習を通じて、外部から はたらく力を意識しながら運動を見る視点を身に つけさせたい。 次に慣性および、物体に力がはたらくと運動の様 子が変わることを指導する。慣性および慣性の法則 は、大変難解なものの1つである。外部から力を加 えなければ、その物体の運動はどうなるか。これを 明らかにすることはすなわち慣性の法則をあきら かにすることである。しかし重力のある場所で、摩 擦力をなくせない場所で実験するのは難しい。そこ で、力を加え続ける時間を短くすることで力積がゼ ロに近づく原理を用いて、ダルマ落としなどの静止 の実験を行う。また、運動している物体がいつまで も止まらない工夫を考えさせて、大滑車を用い可能 な範囲で摩擦力を小さくする実験を行い、力がはた らかない場合の運動(等速直線運動)を理解させる。 エネルギーの学習では、いろいろな形をとるエネ ルギーをとらえる1つの手がかりは「仕事」である ことを指導する。そこで目に見えて分かりやすい位 置エネルギーや運動エネルギーについて、成した仕 事の大小を手がかりにエネルギーの大きさを感じ させたい。その後、熱、電気、光、音などのいろい ろなエネルギーの存在を多くの実験を通じて実感 させるようにする。引き続いてジェットコースター や振り子を題材にエネルギーの移り変わりに気づ かせる。最後にエネルギー保存の法則を知らせ、多 くの場合は最後に熱エネルギーになってしまうこ とを確認する。それらの大小を認識させるために、 力学的エネルギーと熱量などの内部エネルギーと の変換効率についても体感させたい。

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(4)単元構成 具体的な単元構成を以下に示す。 「力と運動の変化」 第1次 スタートからゴールまでは何メートルあ るだろう。 ・一定時間に移動した距離を表したグラ フをもとに、総移動距離を求める。 ・グラフの面積が移動距離になることに 気づき、平均の速さや瞬間の速さにつ いても理解する。 第2次 自分の歩く速さを分析してみよう。 ・記録タイマーの使い方を理解し、自分 に記録テープを取り付け、歩く速さを 記録する。 ・歩く速さが一定ではないことに気づ く。 第3次 斜面を下る台車の運動を分析しよう。 ・力がはたらき続けるときに、台車は加 速していることに気づく。 ・斜面を下る台車が加速し続けるのは、 加速度に関係していることを理解す る。 第4次 糸に等間隔につけたビー玉を上から落と すと、どのように落ちるのか。 ・斜面を下る台車の運動から、最も急な 斜面が 90°、つまり落下であること に気づく。 ・ビー玉はだんだん間隔が詰まるように 落ちることを理解する。 第5次 机との間にはたらく摩擦をどうすればな くせるだろう。 ・摩擦をなくす方法を考え、その中で物 体がどのような運動をするのかを理 解する。 第6次 滑車に取りつけたおもりの運動を考えよ う。 ・本授業については、今年度の研究発表 大会で公開したので、その指導案(表 1)を掲載する。 「物質とエネルギー」 第1次 台車に手を触れないで動かしてみよう。 ・台車に触れずに動かす方法を考えさ せ、エネルギーについて感覚的に導入 していく。 ・考えた方法が何のエネルギーを利用し ているかを説明させる。 ・いろいろなエネルギーを理解する。 図1:デジカメの連写機能を用いた運動の分析 (単元「力と運動」の第6次で使用) 第2次 2倍の高さの斜面から球を落として物体 にぶつけると、物体が動かされる距離も2 倍になるだろうか。 ・2倍の高さになると速さも2倍になる か予想してから速さは√2倍になる ことを確認する。 ・2倍の高さから球を落とすと、物体の 動かされる距離が2倍になるか予想 して、実験をしてグラフ化し、検証す る。(班別実験) 第3次 同じ高さの斜面から2倍の質量の球を落 として物体にぶつけると、物体が動かされ る距離も2倍になるだろうか。 ・2倍の質量の球を同じ高さから落と と、速さも2倍になるか予想してから 速さは同じになることを確認する。 (同着を調べる実験) ・2倍の質量の球を落とすと、物体の動 かされる距離が2倍になるか予想し て、実験をしてグラフ化し、検証する。 (班別実験) 第4次 2種類のコースで球を落としたとき、反対 側でより高くのぼるのは、どちらのコース だろうか。 ・斜面には高さと、勾配と長さに違い があるものを用いて、生徒に予想させ る。 ・実験によって検証したあと、振り子を 用いた実験を行う。

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第 5 次 基 準 面 で は 位 置エネルギーが0になる のに、反対側で球が上り続 けられるのはなぜだろう か。 ・位置エネルギーが減るにつ れて、速さが増えるので、 位置エネルギーが速さに 変わったことに気づく。 ・速い物体はエネルギーを蓄 えていることを理解する。 第6次 発電機を2個つな ぎ、Aの発電機を回すと電 気エネルギーが発生し、B の運動エネルギーになる。 Aを10 回転させるとBも 10 回転するだろうか。 ・話し合いの中で予想をさせ てから実験を行う。 ・減少した分のエネルギーの 行き先を理解する。 第7次 豆電球をつないだ ら、つながないときとくら べてハンドルの手ごたえ が重くなった。では、ワッ ト数の大きな豆電球にか えると手ごたえ はもっと重くなるだろう か。 (5)研究授業の参会者より 今年度、研究発表大会にて「慣性の法則」の授業 を公開させていただいた。参会者からはたくさんの 感想やご意見をいただき、感謝している。 ・縦方向の慣性の法則は良かったと思います。横か ら縦へつなげるために,この授業のように生徒の 学びを支援することが重要だと思いました。 ・はじめの演示実験は,力のつりあいの復習内容を ふくみつつ,生徒の予想を裏切り,「何でやろ?」 「わたしもやってみたい!」という興味づけを行 うもので,ダイナミックな導入が良かったです。 ・教材に工夫があり,ひとり一人に声かけされてい るのが良かったです。 ・導入で目的意識が高められていましたが,そのた めに,後半の時間がなくなってしまったので,も っと討論だけで進めても良かったのではないで しょうか。おもりはゆっくり進むのに止まらない という現象がとても興味を引くものだと思いま す。その分,教師実験だけで検証しても良かった のではと思いました。 ・グループで話し合う時間があっても良いのではな いかと思いました。 ・デジカメ撮影時の背景や向き,印刷物の連写の順 番がわかりにくく,実験方法の説明不足を感じま した。 (6)おわりに 研究発表大会で公開させていただいた慣性の法 則の実践では、慣性による等速直線運動は水平だと いうイメージが強いだろうと思い,垂直の実験装置 をつくり,生徒におどろきや発見が生まれるように 工夫した。また、何か新しい授業の切り口をつくり たいという思いを持ち,デジカメの連写機能を利用 し、今後さらに工夫ができればと考えている。 表1:「慣性の法則」指導案の一部 学習内容・活動 指導・支援事項 導 入 1.壁面に取り付けられた滑 車 と 滑 車 上 の 電 車 に お い て、重さのバランスがくず れると電車が動き出すこと を確認する。 ○電車の動きを予想して 発表する。 ①すべての生徒が見やすい位置に示すように配慮す る。 ②消しゴムなど、重さの変化の少なそうなものを用い る。 展 開 2.本時の課題を知る。 3.課題に対して結果を予想 する。 4.意見を交流する。 5.実験を行い確認する。 6.結果を発表する。 7.演示実験で確認する。 8.慣性について知る。 ○本時は滑車上の電車の 動きを探ることであるこ とを知る。 ○自分の考えをノートに 書く。 ・加速していく。 ・減速して止まる。 ・一定の速度で進む。 ○考えを黒板に書く。 ○意見を聞く。 ○自分の賛成する意見を 決める。 ○疑問点をはっきりさせ る。 ○実験で確認する。 1.片方だけにおもりをつ るす。 2.両側におもりをつる し、指ではじく。 3.デジカメで記録する。 4.結果を分析する。 ○結果を発表する。 ○演示実験を見て、確認す る。 ○慣性についての説明を 聞く。 ③結果を強調し、おもりを押す強さにはこだわらない。 ④黒板の「本時の課題」欄に板書する。 ⑤机間支援して、自分の考えを思い切って書いてみる ように促す。 ⑥できた生徒から点検する。 ⑦考えた理由を書くように促す。 ⑧何人かを指名して黒板に書かせ、書き終わったら発 表内容を考えておくように指示する。 ⑨同じ説どうしを合体させる。 ⑩自分の考えと同じだと思うものに手を挙げさせる。 ⑪考え中やその他の意見も発表させる。 ⑫デジカメの使い方を指導する。 ⑬机間指導をおこない、正しく実験をおこなえている かを確認する。 ⑭実験して分かったことをノートに整理させる。 ○指名して結果を発表させる。 ⑮すべての生徒が見やすい位置に示すように配慮す る。 ○黒板の「科学用語」の欄に板書する。 まと め 9.本時のまとめ ⑯黒板の「まとめ」の欄に板書する。 発展 10.動き出した車からボー ルを落としたときの、ボー ル の 運 動 に つ い て 予 想 す る。 ○ボールの運動を予想す る。 ○結果を確認する。 ⑰横方向と垂直方向の運動に分けて考えさせるように する。 ○時間があればプリントを配布する。 2 つの滑車を通してつるされた重さの等しいおもりの片側を軽く引くと、引かれたおもりはその後どのよ うな運動をすると思いますか。 動き出したおもりには外から力がはたらいていないので、等速直線運動をし続ける。

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