Ear Res Jpn Morphological Sutudy of the Effect of acute Hypertension and Hypotension on the Permeability of Blood Vessels of vestibular Organs

Ear Res Jpn 16 105

前庭血管 の透過性 に関す る形態学 的研 究

香川医大耳鼻 科 ○ 阪 上 雅 史 ・ 久 保 武 ・ 酒 井 俊 一 大 阪大耳鼻 科 佐 野 光 仁 ・ 原 田 保 ・ 松 永 亨

Morphological Sutudy of the Effect of acute Hypertension and Hypotension on the Permeability of Blood Vessels of vestibular Organs M.Sakagami*, M.Sano**, T.Harada**, T.Matsunaga**, T.Kubo* and S.Sakai*

*Department of Otolaryngology

, Kagawa Medical College **Department of Otolaryngology

, Osaka University Medical School

The effect

of acute

hypertension

and hypotension

on blood

vessels

of the

vestibular

organs

were

studied

electron

microscopically

with

the

tracer

method

of horseradish

peroxidase(HRP).

Acute

hypertension

was

induced

by i.v.

infusion

of methoxamine

chloride(Mexan),

and acute

hypotension

by i.v.

infusion

of trimetaphan

camsilate(Arfonad).

In both

acute

hyper-

and hypotensive

experiments,

there

was no extravasation

of

HRP from

capillaries

in sacculus,

utriculus

and semicircular

canals,

despite

the

presence

of some labelled

pinocytotic

vesicles.

The

endothelial

cells

were

intact,

and no HRP penetration

occured

through

endothelial

tight

junctions.

These

findings

suggest

that

the

capillary

of the

vestibularorgans

is of

the

ordinary

brain

capillary

type.

And,

moreover,

comparison

between

capillary

permeability

of vestibular

organs

and that

of cochlea

will

be discussed.

は じ め に 前 庭 血管 の 形 態 学 的 研 究 につ い て は,SEMに よ る 血管 鋳 型 観 察 の 報 告 が あ るが,1)2)血 管 透 過 性 に 関 す る 報 告 は殆 ん ど な い 。 今 回,我 々 は,horseradish peroxidase(HRP)を トレー サ ー と して,通 常 状 態 ・急 性 高 血 圧 状 態 ・急 性 低 血 圧 状 態 に お け る前 庭 血 管,特 に 感 覚 上 皮 下 の 毛 細 血 管 の 透 過 性 を 光 顕 及 び 電 顕 レベ ル で 検 討 し,蝸 牛 血 管 の 透 過 性 の 実 験3)4)5)6) と比 較 した 。 実 験 方 法 13匹 のPreyer耳 介 反 射 鋭 敏 な 雄Wistar系 ラ ッ ト(300g 前 後)を 用 い た 。 ペ ン トバ ル ビタ ー ル 腹 腔 麻 酔 後,左 大 腿 動 静 脈 及 び右 大 腿 静 脈 に カ ニ ュ ー レを 留 置 し,左 大 腿 動 脈 よ り 平 均 動 脈 圧 を 記 録 した 。 急 性 高 血 圧(6匹)は,α 刺 激 物 質 methoxamine chloride(Mexan)0.1-0.3mg/kgを 自動 注 入 装 置 で 左 大 腿 静 脈 に注 入 して 作 製 した 。 血 圧 上 昇 後,HRP (Sigma,TypeII)25,000単 位 を 右 大 腿 静 脈 に 注 入 し,数 分 後 左 心 室 よ りカ コ ジ ル 酸 緩 衝2%g lutaraldehyde・1% parafolmaldehyde,pH7.3で 灌 流 固 定 し た(Fig.1-a)。 急 性 低 血 圧(5匹)は,神 経 節 遮 断 剤trimetaphan camsilate (Artonad)を10-15mg/kg注 入 して 作 製 し,血 圧 下 降 後, HRP投 与 及 び 灌 流 固 定 を行 った(Fig.1-b)。 通 常 状 態 と し て,HRPの み を2匹 に 注 入 し 固 定 した 。DAB反 応 は 既 報3) の如 く行 い,後 固 定 ・脱 水 ・抱 埋 ・薄 切 ・染 色 の 後,H-600 型 電 子 顕 微 鏡 で 観 察 した 。 光 顕 に は,厚 さ2μ の エ ポ ン切 片 を 用 い,無 染 色 で 観 察 した。 実 験 結 果 Mexan注 入 に よ り 平 均 動 脈 圧 は 急 激 に 上 昇 し,そ の 血 圧 差 は約70mmHgで あ っ た(Fig.1-a,Table.1)。 ま た,Ar-fonad注 入 に よ り平 均 動 脈 圧 は 急 激 に下 降 し,そ の 血 圧 差 は 約55mmHgで あ っ た(Fig.1-b,Table.2)。 (i)光 顕:通 常 状 態 で は,灌 流 さ れず に 残 っ た赤 血 球 に一 部DAB反 応 が み られ た が,球 形 嚢(Fig.2-a)・ 卵 形 嚢(Fig.

3-a)・ 三 半 規 管 膨 大 部(Fig.4-a)の 感 覚 上 皮 下 の 毛 細 血 管 及 び そ の 周 囲 に は反 応 物 質 は 観 察 で き なか った 。 急 性 高 血 圧 群 に お い て も,球 形 嚢(Fig.2-b)・ 卵 形 嚢(Fig. 3-b)・ 三 半規 管 膨 大 部(Fig.4-b)の 上 皮 下 毛 細 血 管 及 び そ の 周 囲 に は ト レー サ ー は認 め られ な か っ た。 急 性 低 血 圧 群 の球 形 嚢(Fig.2-c)・ 卵 形 嚢(Fig.3-c)・ 三 半 規 管 膨 大 部(Fig.4-c)に お い て も,同 様 の 結 果 で あ っ た 。 (ii)電 顕:以 下 の 所 見 は,通 常 状 態 ・急 性 高 血 圧 状 態 ・急 性 低 血 圧 状 態 に共 通 で あ った 。 (1)血 管 周 囲 の基 底 膜 は,反 応 物 質 で 染 ま って い な か っ た(三 半 規 管(Fig.5)・ 卵 形 嚢(Fig.7)・ 球 形 嚢(Fig.8))

(2)血 管 内 皮 細 胞 に は,HRPを 含 ん だ 飲 小 胞 が 散 見 さ れ た(Fig.6)。

か った(Fig.6)。 (4)感 覚 上 皮 細 胞 ・支 持 細 胞 は,障 害 さ れ て い な か っ た (Fig.5,7,8)。 考 按 本 実 験 で は,通 常 状 態 に お い て,球 形 嚢 ・卵 形 嚢 ・三 半 規 管 の感 覚 上 皮 下 の 毛 細 血 管 内 皮 細 胞 は連 続 して お り,静 注 さ れ たHRPを 血 管 外 に 漏 出 さ せ な か った 。 内 皮 細 胞 実 質 内 に はHRPを 含 ん だ 飲 小 胞 が み られ,内 皮 細 胞 間 のtight jun-ctionは ト レー サ ー を 含 ん で い な か っ た 。 以 上 の所 見 よ り, 前 庭 毛 細 血 管 は 脳 型毛 細 血 管 に属 す る と言 え る 。 我 々 の今 ま で の 報告 を 参 考 にす る と,内 耳 に お い て,血 管 条 毛 細 血 管 は 筋 肉 型 毛 細 血 管3)で あ り,蝸 牛 血 管 叢6)と 内 リンパ 嚢 の 毛 細 血 管 は 有 窓 型 毛 細 血 管 で あ り,前 庭 も含 め て 内 耳 の 残 りの 部 位 の 毛 細 血 管 は脳 型 毛 細 血 管 で あ る と考 え ら れ る 。 急 性 高 血 圧 負 荷 群 に お い て,前 庭 毛 細 血管 内 皮 細 胞 は 破 壊 を受 け ず,血 管 外 に ト レー サ ー を 漏 出 さ せ な か っ た 。 脳 にお い て も,急 性 高 血 圧 負 荷 時 毛 細 血 管 か らはHRPが 漏 出 し な い と報 告 さ れ て い る の で,7)8)脳 型 で あ る前 庭 毛 細 血 管 も透 過 性 が 充 進 しな か っ た と 推 測 され る 。一 方,脳 の平 滑 筋 を 有 す る細 動 脈 レベ ル で は 急 性 高 血 圧 時HRPを 漏 出 さ せ る も の が あ る の で,7)8)内 耳 に お い て も,骨 組 織 に 囲 ま れ て い る 困 難 さが あ る もの の,細 動 脈 レベ ル まで 今後 検 討 して いか ね ば な ら な い 。 急 性 低 血 圧 負 荷 実 験 は,脳 や 他 の 組 織 で は 見 当 た らな いが 前 庭 と同 じ脳 型 毛 細 血 管 で あ る ラセ ン靱帯 毛 細 血 管 の 透 過 性 が 亢 進 しな い 事5)と 同 じ現 象 で あ る と 考 え られ る。 本 実 験 と 蝸 牛 に お け る 実 験4)5)よ り,急 性 高 血 圧 ・急 性 低 血 圧 時,HRP(分 子 量 約40.000)の 様 なmacromoleculeの 透 過 性 の 亢 進 す る の は 血 管 条 毛 細 血 管 で あ る。 一 方,血 管 条 周 囲 は,辺 縁 細 胞 間 及 び 基 底 細 胞 間 の 強 固 なtight junction で 結 合 して お り,血 管 条 の外 へHRPは 漏 出 し な い 。 それ 故, 急 激 な 血 圧 変 動 時,HRPレ ベ ル のmacromoleculeは 内 リ ン パ へ 漏 出 しな い と言 え る 。 しか し,イ オ ン レベ ルで は 内 リ ン パ,外 リ ンパ のNa+,K+が 変 動 す る9)と い う 報 告 もあ り, 急 激 な 血 圧 変 動 が リ ンパ 液 に何 ら か の 影 響 を 与 え て い る可 能 性 は 考 え られ る。 参 考 文 献 1)吉 岡 達 生,他:前 庭 微 小 循 環 の 血 管 構 築 ―SEM観 察 ― Ear Res Jpn15:113-115,1984 2)桝 谷 治 彦,他:前 庭 微 細 血 管 の 観 察Ear Res Jpn15: 116-118,1984

3) Sakagami M, Matsunaga T and Hashimoto PH: Fine

structure and permeability of capillaries in the stria

vascularis and spiral ligament of the inner ear of the

guinea pig. Cell tissue Res 226: 511-522, 1982.

4) Sakagami M. Sano M and Matsunaga T: Ultrastructural

(Stockh) 97: 57-61, 1984.

5) Sakagami M, Sano M, Tamaki H and Matsunaga T:

Increased capillary permeability of the stria vascularis

to HRP, induced by experimental acute hypotension in

rats. Acta Otolaryngol (Stockh) 98: 53-60, 1984.

6)阪 上,他:蝸 牛 軸 内 血 管 の 透 過 性 ―cochlear plexusを

中 心 と し て ―Ear Res Jpn15:57-60,1984

7) Wstergaard E, Van Deurs B and Brondsted ME:

In-creased vesicular transfer of horseradish peroxidase

across cerebral endothelium, evoked by acute

hyper-tension. Acta Neuropath (Berl) 37: 141-152, 1977.

8) Nagy Z, Mathieson G and Huttner I: Blood-brain

barrier opening to horseradish peroxidase on acute

hypertension. Acta Neuropath (Berl) 48: 45-53, 1979.

9)宮 本 浩 明,他:内 耳 液 イオ ン組 成 に 対 す る実 験 的 急 性 高

血 圧 の 影 響(第2報)― 内 リ ンパ 液 に対 す る 影 響 ― Ear Res Jpn14:230-231,1983

Figure Legends

Fig. 1. The arterial mean blood pressure (MBP) is

monitor-ed from the left femoral artery during experiments

and mesured in mmHg. (a) The diagram shows an

acute hypertensive experiment of the infusion of

Mexan. The blood pressure under non-experimental

conditions was stable, and then intravenous infusion

of Mexan (M) resulted in abrupt rise in MBP.

HRP mark indicates i.v. injection of the tracer.

Five minutes later, vascular perfusion (Fix) was

started. (b) An hypotensive experiment of the

infusion of Arfonad. Infusion of Arfonad (A)

resulted in decrease in blood pressure.

Fig. 2.-8.

Microscopic demonstration of benzidine reaction after intravenous infusion of tracer. The reaction

product in vascular lumen is often washed out by the perfused fixatives.

Fig. 2. Light micrograph of cross sections, 2ƒÊm thick of

saccculus (no stain).

(a) control group. X48

(b) acute hypertensive group. X51 (c) acute hypotensive group. X52

Fig. 3. Light micrographs of cross sections of utriculus (no stain).

(a) control group. X55

(b) acute hypertensive froup. X26 (c) acute hypotensive group. X32

Fig. 4. Light micrographs of cross sections of ampullae of semicircular canals (no stain).

Ear Res Jpn 16 107

(c) acute hypotensive group. X32

Fig. 5. Electron micrograph of capillaries beneath sensory

epithelial cells of the semicircular canal in control

experiment. No reaction product was found in the

perivasular space.

Hl, hair cell type 1; SC, supporting cell;

L, capillary lumen. X2,200

Fig. 6. Higher magnification of part of capillary wall of the

semicircular canal in the acute hypertensive

ex-periment. The tracer is attached to the luminal

surface of the endothelium (e) and is seen in some

pinocytotic vesicles. However, the perivascular

basement membrane (bin) is unstained with HRP.

Interendothelial cleft dose not contain the reaction

product. Arrowheads indicate fusions of tight

junc-tions. L, capillary lumen, X38,500.

Fig. 7. Capillary under sensory epithelial cells of the

utric-ulus in the acute hypertensive experiment. No

reac-tion product is observed in the perivascular space.

Hl, hair cell type 1; H2, hair cell type 2; SC,

sup-porting cell; L, capillary lumen. X3,200.

Fig. 8. Capillary beneath sensory epithelial cells of the

sacculus in the acute hypotensive experiment. HRP

cannot be detected outside the capillary lumen (L).

Hl, hair cell type 1; H2, hair cell type 2; SC,

sup-porting cell. X2,200.

質 問 松 原 浄(岡 山大) 内 リンパ 嚢 周 辺 血 管 につ い て は ど う か。 応 答 阪 上 雅 史(香 川 医 大) 内 リ ンパ 嚢 の 有 窓 型 毛 細 血 管 に っ い て は 現在 検 討 中で あ る。 質 問 大 村 正 樹(京 都 大) 1)血 圧 が きれ い に 保 た れ,変 化 して い る が,麻 酔 剤 の 種 類, 投 与 量 は ど うだ っ た か 。 2)血 管 条 の 血 管 は,提 示 さ れ た4つ の 型 の ど れ に相 当 す る と考 え るか 。 応 答 阪 上 雅 史(香 川医 大) 1)麻 酔 はpentobarbitalso∼4omg/kgを 腹 腔 投 与 した 。 筋 弛 緩 剤 は使 って い な い。 2)血 管 条 毛 細 血 管 は 以 前 に報 告 した よ う に,形 能 学 上 筋 肉 型 毛 細 血 管 に 類 似 して い る と思 わ れ る 。 質 問 渡 辺 建 介(東 医 歯 大) 灌 流 固定 を し な けれ ば 血 管 条 血 管 に は 多 数 の 辺 縁 ヒ ダが 認 め られ る の に,灌 流 す る と認 め られ な い の は ど う して か 。 応 答 阪 上 雅 史(香 川 医 大) 灌 流 固定 す る と,血 管 径 が 拡 大 す るの で,辺 縁 ヒ ダは 少 な くな る。

(1)_a

(1)_b

Fig. 1

Table 1

MBP = mean blood pressure

Table 2

MBP = mean blood pressure

2a

3a 4a

2b

3b

4b

Ear Res Jpn16 109

5

₆