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2008年度久保ゼミセミナーペーパー最終稿

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共和党穏健派の衰退と現状

1

―連邦議員と組織的基盤を中心に―

東京大学公共政策大学院

2 年

大隈 護

はじめに―Endangered Species としての共和党穏健派2 現在のアメリカ政治は共和・民主両党のイデオロギー的対立が激化していると言われる。 その対立は何も二大政党間だけの話ではなく、それぞれの政党内部においても党の主導権 をめぐって熾烈なイデオロギー的対立が起こっている。共和党においては、1960 年代から 台頭してきた保守派と冷戦期においては共和党の主流であった穏健派の対立が激しく、そ の様子が報道されることもしばしばである。 1960 年代ころまでの共和党は、北東部のニューイングランド地域や中西部を基盤にし、 エスタブリッシュメントを中心とした政党であり、そうした穏健派が数の上でも政策の面 でも党の中心にいた。しかし、1960 年代から始まったさまざまな運動により、保守派が共 和党内でその勢力を拡大させた。1994 年の中間選挙で大量の共和党議員が連邦議会に送り 込まれ、共和党は 40 年ぶりに上下両院において多数党としての地位を取り戻した。ただ、 その内実は、共和党「保守派」多数議会であり、共和党内部の主導権は保守派に奪われ、 かつて優勢だった共和党穏健派はその勢力を大きく減退させている。イデオロギー的対立 があるといっても、多くの場合、保守派の勝利に終わっているのが現状であると言えよう。 本稿は、穏健派自身の戦略的失敗、穏健派を取り巻く環境や政治的変化、穏健派を支え る組織的基盤の特徴などからそうした共和党穏健派の衰退の原因とその現状を分析するこ とを目的とする。そして、穏健派の衰退が共和党にとって、そしてアメリカ政治全体にお いてどのような含意を持つのかということも考えてみたい。穏健派の衰退は、保守派の台 頭の裏返しとして描かれることが多く、それ自体を中心として扱った研究はあまり見られ ないため、本稿の意義は十分にあると思われる。 以下ではまず、先行研究を概観する。次に、イデオロギーを中心にして、共和党穏健派 とは何かという点について考える。そして第3 節では、2000 年代を中心とした連邦議会議 員選挙における穏健派の状況を見て、第 4 節において実際の議員の事例を取り上げる。さ らに、第 5 節では、穏健派衰退の原因として指摘されることの多い組織的基盤のありよう 1 紙面の都合上、本稿中に指示した資料は論文集には掲載していない。実際の資料についてはホームペー ジにアップされる予定の論文で参照されたい。 2 本稿では共和党穏健派と呼ぶときに、主として連邦議会議員を念頭に置いている。

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を尐し踏み込んで考察し、それらすべてを踏まえ、第 6 節において共和党穏健派衰退の原 因をまとめ、最後に結論についての含意を提示する。 1. 先行研究の概観 本稿の問題意識に対して、先行研究として役に立つのは、Nicol C. Rae による共和党穏健 派の衰退に着目した研究3Douglas L. Koopman による共和党下院議員のイデオロギー分 析を行った研究4であろう。Koopman の研究は、共和党下院議員をイデオロギーや立法活 動などの指標によって7 つのイデオロギー集団(factions)に分け、共和党内部における政 治や穏健派の衰退と保守派の台頭を各種データに基づいて分析している。その中では、本 稿の分析対象である穏健派についても言及されている5。この研究では、共和党下院議員を イデオロギーそのものや政策志向か選挙区志向かなどによって細分化しており、それはそ れで有用だと思うが、彼も著書の中で触れているように、多くのPatrician が立場を変え、 細分化するのが難しくなっているし6、またのちに述べるように組織的基盤という観点から は、保守派はその組織を連合化・制度化させることで、一つの大きなまとまりになって穏 健派の対抗勢力となっており、保守派対穏健派という構図が当てはまりやすい。結局のと ころ、穏健派の全体的な流れを見るには、まとめて考察する方がよいと判断した。 Koopman の研究が、共和党全体の研究であったのに対し、Rae の研究は、より本稿の問 題意識に直結している。Rae は、穏健派の衰退を説明するには、共和党保守派の勢力拡大 の反射というだけでなく、共和党穏健派自身の戦略的欠陥にも注目する必要があると述べ ている。そして、穏健派が衰退した根本原因として、1960 年代から 80 年代におけるアメ リカの政治的アリーナの変革を理解できなかったことを挙げ7、具体的には、穏健派にとっ ての新たな政治的組織がつくられていないこと、イデオロギー的一貫性があいまいである こと、エリートの方ばかりを向いて現状維持に甘んじていたことなどを批判的に論じてい る。一方で、Rae の著作は、その出版が 1989 年ということもあり、共和党が多数党の地位 を獲得した1990 年代や保守勢力が大きな影響力を誇った G・W・ブッシュ政権期における 共和党穏健派については、当然ながら書かれていない。

まとまった研究というわけではないが、 のちに出てくる Republican Main Street

Partnership(RMSP)のメンバーという観点から下院における共和党穏健派のイデオロギ

ー的特徴を浮かび上がらせた論文が 2007 年に出されている8。穏健派の衰退という点から

3 Nicol C. Rae, The Decline and Fall of Liberal Republicans: 1952 to the Present (New York: Oxford

University Press, 1989).

4 Douglas L. Koopman, Hostile Takeover: The House Republican Party, 1980-1995 (Lanham: Rowman

& Littlefield, 1996).

5 本稿では、Koopman の言うイデオロギー集団のうち、Moderates、Patricians、Placeholders を、共和

党穏健派として扱うことにする。

6 Patrician は Moderate に近くなっているとして、この 2 つをまとめて穏健派のイデオロギー集団と扱う

のが良いだろうと述べている。Koopman, Hostile Takeover, p.91.

7 Rae, The Decline and Fall of Liberal Republicans, p.203.

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ではなく、穏健派のイデオロギーがいかにその他の議員と違うかということを立証してい る。 こうしたいくつかの共和党穏健派の研究を下敷きにしながら、以下では近年の共和党穏 健派をより深く考察していこう。 2. 共和党穏健派とは何か (1)今日の穏健派のイデオロギーと政策 共和党穏健派とは何か。他のイデオロギー集団と同様、そのすべてを特徴付けることは 困難だが、ここでは理念型としての穏健派の特徴を考える9。まず穏健派は、議員において は投票行動が中道に位置する。共和党穏健派議員は共和党全体よりもリベラルであり、議 会全体より保守的であると考えられる。また、イデオロギーの内容として、財政的には保 守派と変わらない志向を持つものも多いが、一方で、同性愛者の権利や中絶などの女性の 権利に賛同し、環境保護に熱心であり、外交的には国際協調主義を信奉するという特徴が ある。社会問題や外交政策についてはリベラルでありながら、財政においては保守派と協 力することができるというのが今日の穏健派の特徴としてまとめられるだろう10。その結果、 穏健派はしばしば、共和党の方向性として、社会問題などでは多様性を保ちつつ、共和党 全体がまとまれるような争点(主に経済分野や強力な国防力など)に集中するべきだと主 張する11 穏健派すべてを網羅したわけではないが、のちに出てくるRMSP のメンバーとその他の 共和党下院議員(保守派が多くを占めると考えてよい)とのイデオロギーや投票行動の違 いを明らかにした論文によると、RMSP のメンバーの傾向が多くの共和党下院議員とは明 らかに異なり、政党支持は相対的に低く、イデオロギー的には、特に社会問題の分野でよ りリベラルである様子が見て取れる(資料1 から 4 を参照)1213 (2)穏健派議員の地域的特徴 穏健派には明らかな地域的特徴がある。共和党保守派が南部や西部山岳州といった地域

The Forum, Volume 5, Issue 2, Article 4 (The Berkeley Electronic Press, 2007).

9 ここであげる特徴は、主にKoopman, Hostile Takeover, p.106; Lucas and Deutchman, “The Ideology of

Moderate Republicans in the House.”を参照した。

10 Robin Kolodny, “Moderate Success: Majority Status and the Changing Nature of Factionalism,” in

Nicol C. Rae and Colton C. Campbell ed., New Majority or Old Minority?: The Impact of Republicans on Congress (Lanham: Rowman and Littlefield Publishers, 1999), p.155.

11 Charles F. Bass, “Who's the RINO now?” The Washington Times, January 8, 2008. 12 Lucas and Deutchman, “The Ideology of Moderate Republicans in the House.”

13 資料3 において、Concord Coalition と National Taxpayers Union の評価では、RMSP のメンバーで

あるかどうかによって有意な差が出ていない。これは、これらの団体が掲げる財政責任や政府支出の抑制 という点に関しては、穏健派と保守派においてそれほど違いがないことを示している。穏健派の財政面に おけるこの特徴が、彼らが民主党ではなく、共和党に居続ける一つの理由だと考えられる。

また、共和党穏健派は、民主党よりも党の理想によりコミットしていることも指摘されている。Kolodny, “Moderate Success.” p.155.

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的基盤を持つのと同様に、共和党穏健派はニューイングランド(New England)、中部大西 洋(Mid-Atlantic)、中西部(Midwest)の各地域をその牙城としている。穏健派の地盤と なる地域からの共和党議員の数は減尐してきていると言われるが、ここ20 年間を中心に議 席の推移を示した資料 5 からも分かるように、今日に至るまでその傾向は継続している。 ニューイングランド地域で議席自体の減尐傾向が顕著であり、中部大西洋においては、議 席自体は微減であるものの、共和党全体におけるパーセンテージは減尐している。また、 RMSP メンバーを地域別に振り分けてみると(資料 6 参照)、3 地域でメンバーである上下 両院議員の半分以上を占めている。 3. 連邦議会選挙における共和党穏健派 (1)大統領選挙と連邦議会選挙 保守派の台頭が、大統領選挙という政治の頂点部分から始まったように、穏健派の衰退 も大統領選挙から訪れることとなった。1976 年にフォードとレーガンが共和党大統領候補 の座をめぐって戦ったときまでにはもう、共和党穏健派の存在は大統領候補選出過程の政 治において実質的に消え去っていた。このとき、穏健派はフォードのもとに結集したが、 政党の草の根レベルにおいて穏健派の存在がなかったために、フォードはレーガンと対抗 するためには保守派に向かざるをえなくなった。これは、その後の大統領候補選出におい ても見られるパターンである14。G・H・W・ブッシュ大統領は、レーガンの忠実な部下で あったからこそ、保守派の反対を和らげることができたし、その保守派が嫌う増税によっ て2 期目を勝ち取ることができなかった。G・W・ブッシュ大統領は、父の教訓を胸に徹底 して保守派を頼ることによって2 期 8 年にわたって大統領職に就くことができた。2008 年 大統領選挙も、議員時代は穏健派の代表的人物だったマケイン候補が、共和党内の保守派 の支持を集めるような政策に傾いたと言われる。草の根レベルでの保守派の台頭と予備選 挙による大統領候補の選出という2 つの要因により、大統領選挙における共和党穏健派は、 その力を失ったということができよう。 他方、1990 年代初頭までの研究においては、大統領選挙以外の部分、つまり上下両院に おける連邦議会議員や州知事などのレベルにおいて共和党穏健派は消え去っていないと指 摘されていた15。この指摘が1990 年代半ばから現在までにおいても妥当しているのかにつ いて、ここでは、連邦議会議員に限定して考えてみたい。 もちろん、全国規模で行われる大統領選挙と違い、連邦議会選挙においてはそれぞれの 選挙区事情がある。穏健派が強い選挙区は、保守的政策を打ち出していては勝てないよう な土地柄である。したがって、穏健派に対する一定の需要があり、その存在は消えにくい ということができる。しかし、前述のように連邦議会レベルにおいても共和党穏健派の衰

14 Nicol C. Rae, “Moderates lost and found: centrists in the Conservative and Republican Parties,” in

Andrew Adonis and Tim Hames ed., A Conservative Revolution? The Thatcher-Reagan decade in perspective (Manchester and New York: Manchester University Press, 1994), p.206.

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退は着実に進んでいる。穏健派に有利な風が吹いていると思われた最近の選挙を含めても その流れは変わっていない。そこには様々な要因が考えられる。 (2)予備選挙と穏健派の敗退 まず、予備選挙の影響である。特に2000 年代になってから穏健派議員が強い選挙区の予 備選挙において保守派候補が参戦してくるようになった。象徴的だったのは、直近2008 年 選挙において、メリーランド州選出のWayne Gilchrest 下院議員が予備選挙において、保

守派、特にClub for Growth の支持を受けた候補に敗れた出来事であろう。保守派候補は

共和党内の予備選挙においては、自慢の組織力を動員し、穏健派と互角の戦いを見せる一 方で、一般選挙になると、やはり選挙区そのものが保守派には不利であり、穏健派が勝利 したり、Gilchrest の選挙区の例では、予備選挙で勝った保守派候補は、一般選挙で民主党 候補に負けたりしている。必ずしも穏健派の敗北にはつながらないものの、こうした例か ら分かるように、予備選挙は大統領選挙同様、共和党穏健派議員の衰退に大きな影響を与 えていると言えよう。かつてオレゴン州共和党の穏健派であったCraig L. Berkman は、「穏 健派にとっての問題は、いくつかの州では投票率が下がっており、それによって宗教保守 派の予備選挙で持つ影響力が増幅されていることだ」と、保守派の組織化と予備選挙の影 響について述べていた16。その問題意識が現実のものとなって顕在化している。 (3)共和党のイメージと穏健派への影響 保守化した共和党に対する評価、G・W・ブッシュ大統領に対する評価が、彼らとは違う 投票行動やイデオロギーを持つ穏健派議員に負の影響を及ぼすこともある。2002 年にイラ クへの武力行使決議に反対投票を行い、2008 年大統領選挙では民主党候補のバラク・オバ マ氏への支持を表明したジム・リーチ(Jim Leach)前下院議員は、2006 年中間選挙で民 主党候補に敗れた。リーチの選挙区民は、「私たちは彼を尊敬してはいるけれども、彼の政 党所属のために今年は彼に投票しない」と述べ、またアイオワシティの小説家は、「彼はい いやつだし、正直で、よくやっていると思う。でも彼はいまだに共和党員じゃないか」と 語っている17。リーチが共和党所属であるということが、彼の実際のイデオロギーや行動が 多くの保守的な共和党議員とは異なるにもかかわらず、リーチへの評価を決定させたと言 える。リーチを破った民主党議員は「共和党はこの数十年にわたってリーチの位置から離 れ続けてきた。共和党を中道へ戻すという彼の主張はもはや信用できなくなったのだ」と 述べている18また、2006 年に引退を表明したシャーウッド・ボラート(Sherwood Boehlert) 議員に関連して、彼の選挙区の後継となった民主党のMichael Arcuri は、ボラートの業績 を賞賛しながらも、「彼の穏健な考え方は、保守的共和党議員に支配された議会において無

16 James A. Barnes, “Rightward March?” National Journal, August 6, 1994.

17 Zachary A. Goldfarb, “Democratic Wave in Congress Further Erodes Moderation in GOP,” The

Washington Post, December 7, 2006.

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視されてきた」と指摘していた19。さらに、引退を決めた穏健派Jim Walsh の後継として 立候補したDale Sweetland は、「共和党穏健派が苦戦を強いられているのは、一つには保 守的共和党員と一緒くたにされたためだ」と述べ、その影響を避けようと必死になった20 上院議員に目を向けてみると、2006 年中間選挙では、再選を狙った Lincoln Chafee 前上 院議員の敗北があった。Chafee は、中道の投票行動を見せ、しばしばブッシュ大統領の政 策に反対していたにもかかわらず、民主党側から不人気の大統領やイラク戦争(Chafee は 共和党上院議員で唯一武力行使決議に反対した)と結び付けられた。また、2002 年選挙に おいては大統領の支援を求めていた何人かの穏健派議員が、2008 年選挙を前にして、急速 にブッシュ大統領と距離を置き始めた。そのような選挙戦略をとったとしても、民主党側 は、彼ら穏健派がブッシュ大統領の政策に協力してきたこと、共和党のアジェンダを支持 していることを宣伝したり、確固たる信念もなく、その時々の優位な風になびかれる日和 見主義者だと批判したりする21。こうして、最近の共和党に対する低い評価は、多くの穏健 派議員を苦しめている。 (4)民主党との競合と穏健派の敗退 近年、民主党は意識的に北東部での選挙に力を入れ、政治資金の面でも共和党に迫って いる例が見られる。この点については、穏健派議員の例と組織的基盤の部分で触れてみた いと思う。 4. 穏健派議員の事例―引退と落選の原因 この節では、穏健派の衰退の原因を考えるひとつの材料として、2 人の穏健派議員の引退 と落選を例にとってみたい。 (1)予備選挙と引退がもたらす穏健派の衰退―シャーウッド・ボラート前下院議員 シャーウッド・ボラート氏は、1982 年に初当選し、2006 年に引退表明をするまで、選挙 区は変わりながらもニューヨーク州選出の下院議員であった。ニューヨーク州は歴史的に 共和党の州であり、例えば、かつて共和党穏健派の重鎮であったネルソン・ロックフェラ ーはニューヨーク州知事であった。ボラートは、科学委員会と運輸・インフラ委員会にお いて活躍し、特に環境保護に熱心であり、共和党穏健派のリーダー格であった。忠実な共 和党員ではあったが、共和党指導部とは予算や環境問題において意見を異にすることが多 かった。絶滅危惧種保護法を緩和する試みや北極圏野生生物保護区における掘削を可能に する立法に反対したこともあった。また労働組合とも友好的であり、最低賃金の上昇を支

19 Josh Kurtz and Ben Pershing, “Boehlert Hangs Up His Spikes,” Roll Call, March 20, 2006. 20 Ben Pershing, “Across the Northeast, GOP's Hold Lessens; Party's Decline Could Worsen as More

Areas Lean Democratic,” The Washington Post, August 18, 2008.

21 Kirk Victor, “Separation Anxiety,” National Journal, February 9, 2008. ここで出てきている上院議員

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持し、政治資金の面でも労働組合からの献金が目立つ(資料7 参照)。

資料 9 に、ボラート議員の選挙成績をまとめてみた。一般選挙においては余裕で勝利し

ているが、2000 年代に入ってから立て続けに予備選挙において苦戦を強いられた。2000

年の予備選挙ではDavid Vickers 候補が、27,000 ドルの支出しかしていないにもかかわら

ず、43%の票を得ている。また 2002 年、2004 年の選挙では David Walrath 候補がボラー トを脅かした。2002 年選挙では Walrath 候補が Conservative Party の指名を獲得し、ボ ラートが共和党の指名を獲得しない限り、一般選挙に出ることができない状態まで追い込

んだ22。2004 年にも Walrath は予備選挙に出たが、共和党指導部がボラート側につき、元

下院議長ギングリッチはClub for Growthに対しWalrath を支持しないよう要請した。2004

年の予備選挙は、2000、2002 年を含む 3 回の予備選挙のうち、59%対 40%とボラートが挑 戦者に最も差をつけた選挙となった。 共和党指導部の応援も得たボラートだったが、2006 年に下院議員からの引退表明をし、 穏健派にとって大きな衝撃を与えた。ボラートの引退の背景をいくつか指摘してみよう。 彼は引退発表前年の2005 年 9 月に心臓のパイパス手術を受け、高齢による健康上の問題を 抱えていた。また 6 年の任期制限により、これ以上、科学委員会の委員長を続けることは できなかった。予備選挙において保守派から対抗を受けていることが引退の引き金になっ たかどうかは、十分には分からないが、2004 年選挙後に、予備選挙での挑戦者たちについ て、「私は最終的には彼らが退場してしまうことを望んでいる」と述べた。予備選挙はとも かくとしても、選挙に出て負ける可能性は低い中で引退を決めたことになる。 (2)民主党がもたらす穏健派への脅威―クリストファー・シェイズ下院議員 クリストファー・シェイズ(Christopher Shays)氏は、コネチカット州選出の下院議員 生活22 年のベテラン穏健派共和党議員である。民主党支持が広がる選挙区23において、彼 は、選挙資金改革や中絶の権利、銃規制や胚性幹細胞研究を支持するなど、保守的な共和 党指導部と立場を異にすることで、当選を果たしてきた。しかし近年になって、シェイズ はブッシュ大統領と共和党指導部を安易に支持してきたと批判する民主党候補から、2004 年選挙では4 ポイント、2006 年中間選挙24ではわずか3 ポイント差まで迫られた。シェイ ズの得票率を示した資料10 からも分かるように、彼の得票率は 2008 年に向かってじりじ りと下がり続けていた。そして今回の 2008 年選挙では、オバマ人気も背に、民主党側は、 22 2000 年予備選挙と同じように、選挙戦を通じて Boehlert は 100 万ドルを使った一方で、Walrath は 9 万9 千ドルの支出しかなかったにもかかわらず、53%対 47%の接戦となった。 232004 年大統領選挙において民主党のケリー候補が勝利し、かつ 2008 年選挙で民主党が議席を獲得した 選挙区が3 つあるが、シェイズの落選したコネチカット州第 4 選挙区はそのひとつであった。また 2000 年大統領選挙はゴア候補53%対ブッシュ候補 43%、2004 年選挙はケリー候補 52%対ブッシュ候補 46%と 大統領レベルにおいては民主党が強い選挙区である。当該選挙区は、自身が育ったG・H・W・ブッシュ 元大統領が1988、1992 両年の大統領選挙で多数を取った場所であるが、先に示したように 2000、2004 年の大統領選挙ではG・W・ブッシュ大統領は敗北している。 24 この選挙で、シェイズはイラク戦争を支持した責任を追及された。

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シェイズをブッシュ大統領の経済政策とリンクさせ、ついに勝利したのである25 シェイズが敗北した理由はいくつか考えられる26。まず、穏健派の地盤であった北東部に おいて、ブッシュ大統領の不人気がきわまり、それが北東部の共和党候補と結び付けられ たことである。実際、投票所における有権者のインタビューでは、2004 年選挙からのブッ シュ大統領支持が急速に下降し、民主党支持者が増加した。シェイズはまさにそうした影 響を受けたと言える。また、民主党側の猛烈な対抗があった。元ゴールドマンサックスの 幹部であった2008 年選挙の民主党候補は、シェイズが集めた政治資金約 330 万ドルに匹敵

する300 万ドルをかき集め、さらに、National Republican Congressional Committee が、

主に資金の不足から一円も出すことができなかった一方で、Democratic Congressional Campaign Committee は、この選挙に 130 万ドルをつぎ込み、党を挙げて支援した。 シェイズの選挙における特徴は、党内指名獲得は、党大会や無競争の予備選挙により、 一度も脅かされることはなかったが、一般選挙における民主党候補との対立が年々激しく なっていったということだ(資料 11 参照)。シェイズの例から、保守的共和党と結びつけ られることや民主党からの攻勢が、いかに共和党穏健派議員にとって脅威であるかが分か るだろう。 5. 共和党穏健派の組織的基盤-保守派や民主党との比較を交えて (1)穏健派を支える組織 保守派の台頭を支えた原動力が保守の組織づくりであったことと対照して、穏健派の衰 退の原因として、その組織的基盤27の弱さが指摘される。穏健派の組織的基盤の特徴は何だ ろうか。それを考えるのがこの節である。

穏健派全体の組織としては、Republican Main Street Partnership(RMSP)、Republican

Leadership Council、Republican Youth Majority、Tuesday Group PAC などが存在する。

また単一争点的な組織としては、環境保護を掲げる Republicans for Environmental

Protection、同性愛者や女性の権利を支持する Log Cabin Republicans、Republican Majority for Choice、Republicans for Choice がある。穏健派のシンクタンクとして、The Ripon Society が 1960 年代には繁栄した28 ここでは、本稿の議論に必要な組織RMSP について尐し詳しく紹介したい。かつて穏健 派の基盤としては、Ripon Society が紹介されるくらいで、他に特徴的な組織はほとんどな かったといってよい。しかし、穏健派は、1994 年の中間選挙において保守派が勢力を伸ば 25 選挙登録者数でも、民主党が共和党を上回っていた。2008 年 10 月 28 日時点のデータによると、コネ チカット州第4 選挙区では、民主党 151,814 対共和党 107,672 となっていた。State of Connecticut, Secretary of the State のホームページ<http://www.ct.gov/sots/site/default.asp>を参照。

26 Raymond Hernandez, “Northeast Republicans Lose Precious Ground in Washington,” The New

York Times, November 5, 2008 を参照。

27 ここでは、組織的基盤とは選挙動員組織、メディアやシンクタンクなど穏健派を支えるような組織を幅

広く指すことにする。

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したことに危機感を抱いた。その危機感に応じて意識的に作られたのが RMSP である。 RMSP は 1997 年に Amo Houghton が、Tuesday Group と呼ばれる穏健派共和党下院議員 を、穏健な考えを持つ外部の協力者と結びつけるために始めたものであり、1998 年に正式 に結成されている。その使命として、共和党内において思慮深い指導部を発展させ、中道 の価値を共有する個人、組織と連携することを掲げ、財政的保守の議員から構成されるこ とが強調されている。税制上の 501(c)(4)団体であり、メンバーの再選を応援したり同様の 考えを持った候補者を支援したりするための PAC を持つ。RMSP-PAC は順調に獲得資金 量を増やし続けており(資料 12 参照)、穏健派の組織的基盤としては成功した組織であろ う29。穏健派にとってはひとつの大きな革新であったが、RMSP の献金増加は、Club for Growth など保守的団体による攻勢から穏健派議員を守るという受動的な面が強く、それ自 体が積極的に基盤を拡大しているわけではない。また、保守派の団体と比較するとまだま だ規模は小さいと言わざるを得ず、かつて60 人を超す議員を抱えていたこの団体も穏健派 議員の衰退に伴い、現在は上下両院議員合わせて37 人にまで減尐している。 (2)組織的基盤の連合化・制度化の弱さと保守派からの対抗 宗教保守派の争点は、1980 年代後半までは中絶や個人の生活様式、教育における宗教的 価値の尊重といったいくつかの国内問題に限定されていた30。それはつまり、他の政策分野、 たとえば経済や安全保障分野では必ず保守的でなければならない理由はなかったというこ とを意味する。それが、経済や安全保障における保守的な集団と結びつく機会が与えられ ることによって、保守の運動は彼らを他の政策分野においても保守に「引き込む」ことを 可能とし、共和党保守派に強力な草の根の支持基盤をもたらすことになった31。こうしたつ ながりが穏健派の側でも見られるのか。たとえば、先に挙げた穏健派の組織のホームペー ジには、すべてではないがお互いのホームページへのリンクが載せられている。また、2004

年選挙に向けた党綱領をめぐる議論の中で、Log Cabin Republican、Republicans for Choice、Republican Youth Majority という 3 つの組織が、綱領に党の統一という項目を設

けるよう要求した32。お互いの存在は知っていて、アドホックに何か行うことはあるようだ

が、しかし、それが保守派の組織のように連合化・制度化されているとまで言い切ること はできない。

さらに、穏健派団体に対して、同じ党内から対抗を受けることもある。たとえば、先述

のRMSP は、保守的団体 Club for Growth と、予備選挙やテレビ広告33など多くの場面で

29 David S. Broder, “Moderates With New Muscle,” The Washington Post, April 20, 2003. 30 Koopman, Hostile Takeover, p.70.

31 共和党保守派の組織的基盤の連合化、制度化全般については、久保文明「共和党の変容と外交政策への

含意」久保文明編著『G・W・ブッシュ政権とアメリカの保守勢力―共和党の分析―』日本国際問題研究 所、2003 年を参照。

32 Log Cabin Republicans, Republicans for Choice, Republican Youth Majority, “Coalition of

Mainstream Republican Groups Calls for Party Unity Plank in GOP Platform”, August 16, 2004.

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対立している。 (3)民主党との支持基盤の競合 穏健派が支持する政策は、民主党の政策と重なることが多い。そのため、組織や政治資 金のレベルにおいて民主党との競合が起こる。それはしばしば、共和党穏健派の不利な方 向に働いている。たとえば資料13 では、環境保護団体との競合の様子を示している。環境 保護団体から資金を受けるのは、共和党では多くが穏健派議員になるが、民主党もまた環 境保護を推進しており、その資金量は共和党へのそれを圧倒している。また、穏健派が賛 同する中絶や女性の権利などの社会問題においても競合する。共和党保守派は、プロライ フ系団体からの資金を受けるが、それらの団体からの資金量自体は、プロチョイス系団体 の資金量の2 分の 1 ほどである。しかし、プロチョイス系団体による資金はその多くが穏 健派と同じような政策をとる民主党へと流れ、結果的に、共和党だけで比べると、プロラ イフ系団体の資金が、プロチョイス系団体の資金の4 倍にも上っている(資料 14 参照)。 民主党と同じような政策であるがゆえに、共和党穏健派は民主党との支持基盤の競合を 生み出し、資金集めの面で相対的に不利な状況に陥っている。 6. 共和党穏健派衰退の原因 簡単ではあるが、共和党穏健派の特徴についていくつかの側面から考察してきた。この 節では、これらを踏まえて共和党穏健派が衰退している原因についてまとめてみたい。 (1)組織的基盤の脆弱さ 前節において、共和党穏健派の組織的基盤の様子を見たが、成功していない組織化も多 くある。たとえば、1993 年初頭に社会問題における共和党の保守化への対抗勢力としてつ

くられた Republican Majority Coalition(RMC)は、その創始者の一人である上院議員

Arlen Specter が認めるように、「RMC は多くのことを成し遂げていない」「我々は組織化

のために計画を練り始めたが、後に続く行動が十分ではない」という状況であった。Specter

はまた、宗教保守と同じように、草の根の共和党穏健派の人々に対しその時間とエネルギ

ーを注ぐよう動員することは、「ほとんど不可能である」とまで述べている34

また、2008 年選挙についての記事の中で、David Brooks は、「穏健派共和党員を支持す

る、穏健なClub for Growth はない」と述べ、保守派との違いを鋭く指摘している35。今も

なおこのような指摘がなされるということは、穏健派の衰退の原因が組織的基盤の脆弱さ にあることを示している。保守派からの対抗や民主党との支持基盤の競合が、穏健派の組 織的強さを相対的に減尐させている。

Have Tax-Cutting Ax to Grind With One Another,” The New York Times, April 24, 2003 を参照。

34 Barnes, “Rightward March?”

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さらに、穏健派には、それを支えるメディアやシンクタンクといった政策立案・伝達機 能がほとんど備わっていないことも指摘できるだろう。 (2)穏健派というイデオロギー? イデオロギー集団としての穏健派は、特定のイデオロギーに固執しない。彼らは、現在 の流れに対し漸進的な変化を好む。保守派とも協力するし、場合によっては超党派的な行 動を起こすこともしばしばである。かつて穏健派のJohn Chafee は、「我々はお互いが対決 するためにここ(連邦議会)に来たのではない。この国のために建設的な立法に前向きに 取り組むために送り込まれたのだ」と述べたことがある36。RMSP の議長である Charles Bass は、「イデオロギーは科学や進歩に勝つことはできず、議員の職にある者は結果を出す 義務があるという教訓」を自らが敗北した2006 年中間選挙から導いている37。またボラー トは、第110 議会(2007-2008)に向けた発言の中で、「右と左の分裂をなくすべきだ。赤 や青、保守やリベラルといった間違ったラベルは消さなければならない。これらの人為的 な障壁はしばしば立法活動を遅らせ、その機能を停止させてきた」としてイデオロギー的 対立からの変革を求めた38。彼らに共通するのは、ともすると党を分断するかもしれない自 らのイデオロギーを実現することではなく、むしろ議員としての立法活動に責任を持つべ きだという姿である。 この姿勢は、多くのイデオロギー集団やどちらの政党とも協調できる非常に有利な立場 ではあるが、昨今のイデオロギー対立が激しい中においては、そのアドバンテージは急速 に消え去る。特定のイデオロギーがないことは、選挙においては他のイデオロギーとの差 別化を図れないことでアピール力を欠如させ、他のイデオロギー集団と同じだとみなされ てしまった。さらに、多くの問題において多様性を容認する姿勢であるからこそ、特定の 支持のまとまり、つまり組織的基盤を作ることができないことにもつながっている可能性 がある。 また、穏健派のイデオロギー的まとまりは、他の共和党議員に比べると弱いことが示さ れている。先に紹介したRMSP メンバーのイデオロギー研究において、RMSP メンバーの 標準偏差は、他の議員のそれよりも大きく、一つのイデオロギー集団としての純化はそれ ほど進んでいないことが示されている(資料1 から 4 を参照)。穏健派といっても保守派よ り幅のある集団だということに注意しなければならない。 (3)共和党の変化と穏健派の引退 共和党穏健派は、1994 年の中間選挙以後における共和党多数議会においてその恩恵も受 けてきた。と同時に、共和党への評価が下がるとそれが主流派ではない穏健派にも影響し、

36 Graeme Browning, “GOP Go-Betweens,” National Journal, January 25, 1997. 37 Charles F. Bass, “How to put GOP back in power,” The Boston Globe, April 7, 2007.

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民主党と最も競合している選挙区にいる彼らが、その影響を最も受けることになった。 予備選挙における共和党保守派との競争も、穏健派を苦しめている。しかし、その結果、 保守派が共和党の候補となっても、一般選挙においては、選挙区の性格から、保守派が勝 つことは難しく、結局は民主党に議席を譲ることとなってしまい、共和党全体の衰退にも つながっている。 さらに、引退による穏健派議員の衰退も深刻だ。新たな穏健派議員が後を埋めれば問題 はないが、その後、異なった考えを持つ共和党議員や民主党の議席となっていることが穏 健派衰退に拍車をかけている。1994 年の中間選挙では、共和党に傾きつつあった選挙区の 16 人の民主党議員が再選を目指さず、そのすべてが共和党の議席となり、共和党の勝利に 大きく貢献した39。2006、2008 両年は、再選を目指さない穏健派共和党議員の議席の多く が民主党のものとなり、まさに攻守を逆にした現象が起こっている。例えば、RMSP メン バーのなかで2008 年選挙に出馬せず、空白となった 10 の選挙区のうち、6 つが民主党の 議席に転換した。 (4)民主党との競合 選挙においても、組織においても、民主党との競合問題は、穏健派を苦しめる一つの大 きな原因である。穏健派議員が当選する地域は、同時に民主党議員の当選可能性が高い地 域でもあるし、期待される政策も似たようなものが並ぶ。2006 年の選挙戦略で、民主党は 候補者の立場が党の考えに沿わない人でも、州や選挙区の状況に対し望ましい人であれば 候補者として採用し、共和党穏健派議員の選挙区に集中的な攻勢をかけている。そもそも の競争条件が保守派の選挙区より厳しい場所で穏健派は戦わなければならない。 おわりに―政治的再編成の荒波と共和党全体への影響 共和党穏健派議員の相次ぐ敗北や彼らを支える組織的基盤の脆弱さに見られるように、 共和党穏健派の衰退はかつてないほど進み、その流れに歯止めがかかる様子は今のところ 見られない。本稿の最後に、彼らの衰退がアメリカ政治においてどのような意味を持つの かということを考えておわりとしたい。 2008 年選挙において、シェイズ議員が落選したことで、かつて穏健派の牙城であったニ ューイングランド地域からは共和党下院議員が一人もいなくなった。共和党の長い歴史の 中で、北東部は共和党の強さを象徴する場所であったがゆえに、そこでの共和党下院議員 の撤退もまた、象徴的な意味を持つ。70、80 年代に南部の民主党において起こっていた変 化の共和党版を、我々は今北東部において見ているとも言える。つまりは、共和・民主両 党の支持地域の特徴がさらに純化されるということであり、共和党において穏健派が存在 する余地を狭め、1960 年代から始まったイデオロギーを軸にした政治的再編成がいっそう 強化され、固定化されるということであろう。

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彼らの衰退はまた、共和党が多数党としての地位を再び回復できるかどうかという点に 大きな課題を投げかけている。穏健派議員の多くは、共和党が多数党に返り咲くには穏健 な有権者や無党派層に支持を拡大しなければならないと主張しているが、一方で、穏健派 の衰退は止まらず、党内はますます保守的純化が進み、穏健派の主張はより聞き入れられ なくなっている。Koopman の分類したもっともリベラルな共和党下院議員 Patrician が Moderate に移っていったように、議会の中では、近年の穏健派もますます保守的イデオロ ギーに傾き、党内はより右に、より保守的になっている。代わって、中道部分は民主党が 支配しようとしている40。保守的色彩を強め、さらに穏健派がいなくなったからといって、 すなわち共和党が多数を取れないということにはならないし、保守派の支持がなければ共

和党が多数をとれないのは明らかである。保守で統一されれば、RMSP と Club for Growth

のような党内での対立が消え、一丸となって民主党に立ち向かえるのかもしれない。しか し、尐なくともこれまで穏健派が議席を維持してきた地域で共和党の存在は確実に消え続 けている。引退したり、敗北したりした穏健派共和党議員の選挙区は、多くが民主党の議 席に変わっているのが現状である41。多数を回復するには、この穴をどのようにして埋める のかという課題がなお残る。 共和党穏健派が将来どのような道をたどることになるのか、ここで予測することは難し いし、その意図もないが、今後とも彼らを分析することは、共和党の変化やアメリカ政治 全体の再編成をより重層的に理解するために意義のある作業であることだけは言えるであ ろう。

40 Richard E. Cohen and Brian Friel, “The New Center,” National Journal, March 7, 2008 の指摘から

は、2006 年選挙により民主党はより穏健な、あるいは保守的な議員を取り込み、より多様性を帯びた一方 で、穏健派が衰退した共和党のイデオロギー的純化がより強化されているとも言える。

41 E. J. Dionne, Jr.は、共和党がニューイングランドや中部大西洋、中西部の各地域において穏健派共和

党員を失えば、もはや多数をとれないことを2006 年選挙は示したと述べている。E. J. Dionne Jr., “Can the GOP Find Its Center?” The Washington Post, November 28, 2006.

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参照

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