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子供 をもつ壮年期女性の乳癌発病後の役割意識の変化

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(1)

岡大医短紀要, 7:189‑199,1996 BullSchHealthSci,OkayamaUniv

(原 著)

子供 をもつ壮年期女性の乳癌発病後の役割意識の変化

前 田真 紀 子 佐 藤扉豊子1)

要 約

アイデンティティの確立 していない子供 をもつ壮年期女性の乳癌発病後の役割意識の変化 を,病者役 割の受け入れ と母親役割意識に焦点 を当てて,質的帰納的に分析 した。役割意識の変化 は,母親役割意 識 と病者役割意識の関係か ら

6

群 に分類 され,母親役割意識内容 に特徴があ り,群 によって乳癌の もた らす意味が異なった。乳癌の もた らす意味は,母親役割葛藤群 では母親 としての 自己を脅かす もの,母 親役割拡大群 では母親役割維持のために克服す るもの,母親役割 目覚め群 では母親役割の中に取 り込み 共存す るもの,母親役割成長群 では母親 としての成長 を促すチャンス となるもの, 自己改革群 では自己 自身の生 き方 を問 うもの,変化 な し群 では簡単に乗 り越 えられ るものであった。 また病者役割の受け入 れに葛藤 を有す る母親役割意識は,葛藤の特徴か ら,母親役割の強要 による葛藤,代替不可能 な母親役 割の脅か しによる葛藤,乳房喪失による葛藤,子供‑の悪影響 による葛藤,死 を自覚 した母親役割の葛 藤の

5

つの葛藤 を有す る母親役割意識に分類 された。

以上か ら,子供 を持つ乳癌患者に対す る看護のあ り方は, 1)病状 を正 しく認識す るための援助, 2)忠 者の役割意識 を考慮 した援助

,3 )

外来通院時の積極的働 きかけの

3

点 を重視す る必要がある。

キーワー ド:役割意識,母親役割,病者役割,壮年期乳癌患者

は じ め に

人間は生涯にわたって発達 を遂げ心理的社会的 に統合 されてい くと考 えたエ リクソン1・2)は,人生 を

8

つに区分 し連続的漸成的な心理社会的発達段 階 を提唱 した。 そ して人生の各段階で達成すべ き

目標 である基本的信頼, 自律性, 自発性,勤勉性, アイデンティティ,親密性,生殖性, 自我の完全 性 といった発達課題 を,段階的かつ最適時に達成 してい くことが, その人の円満 な人格 の発達 と人 生に対す る充足感 をもた らす と考 えた。 この うち 壮年期 は,親密性 を経 て生殖性 を達成す る時期3)

にある。つ ま り社会人 として 自立 し配偶者 を選択 して新 しい家族 を形成 した個 人が,親役割 を通 し て子供 と交流 をもつ など,次世代の確立 と指導に 深い関心 を寄せ育むことによって生殖性 を達成 し

岡山大学医療技術短期大学部 1)千葉大学看護学部

てい く段階である。 したが って壮年期女性 は,母 親,秦,娘,市民,職業人など, 多 くの役割のレ パー トリー を持つが,母親役割 は発達課題 を達成 す るための中心的な役割 である。 この母親役割は

「児の保育におけ る衣食住 を整 え,所属や愛情の 欲求 を満 た し,価値観念や生活習慣 を形成 し,千 供 の社会化 の基礎 を作 ることで,子供の人間形成 や成長発達 の基礎 を作 ること」4)と定義 され, よ り 実質的,情緒的役割が期待 されてお り,アイデン ティティの確立 していない子供 に とっては豊かな 成長発達 を遂 げ るため に欠 くこ との で きない も の5)とされ る。

アイデンティティの確立 していない子供 をもつ 壮年期女性 は,乳癌 を発病す ると,発病前か ら持 つ役割の レパー トリーの中に病者役割 を受け入れ

‑ 1 8 9‑

(2)

統合 してい くこ と,つ ま り役割移行 と役割修得6) が求め られ る。病者役割は, 日常の役割義務か ら 免 除 され回復 を望 み他 者 に援助 を求 め るこ と7・8)

であるが,発病前か ら持つ役割の免除は発達課題 の達成 との関連が深いために容易 ではない。 した がって,子供 を持つ壮年期女性が発達課題の達成 を妨 げ られ ることな く病者役割 を受け入れ られ る ように援助す ることは,壮年期女性の

Qual i t yof Li f e

(QOL)を高め るため に必要 で あ る と同時 に,健全 な成長発達 に母親の存在が必要 な子供へ の悪影響 を少 な くす るために も重要である。近年, 疾患 をもつ成人の親役割 について も注 目され るよ

うになった9)が,発病後の母親役割意識の変化 に 焦点 を当てた研究はない。

青年期以降の人間では, 自らを対象化 して捉 え 直 し自分 自身の存在の意味や価値 を自分 な りに明 確化す る対 日的 自己意識 を持 ち, その うち社会的 な自己は役割 を通 して意識 され る10)と考 え られて いるo そこで,子供 を持つ壮年期女性は,発達課 題 を達成す るための中心的役割である母親役割意 識 と, それに関連の深い妻 ・娘 ・対社会的 自己の 役割意識,役割に影響 されない 自己自身 をもち, この意識 を通 して 自己を対象化 していると考 えら れ,乳癌の発病はこれ らの役割意識に影響 を及ぼ す と考 える

本研究の 目的は,乳癌 を発病 したアイデンティ ティの確立 していない子供 を持つ壮年期女性の, 乳癌発病後の役割意識の変化 を,病者役割の受け 入れ と母親役割意識に焦点 を当てて明 らかにす る ことと,病者役割の受け入れに葛藤 を有す る母親 役割意識の特徴 を明 らかにす ることであ り, その 結果か ら子供 をもつ壮年期乳癌患者への看護のあ

り方 を検討す ることである。

研 究 方 法

1.

対象

1 8

歳 以下の子供 を持 つ壮年期乳 癌 患者 で,病 名 ・病状の告知 を受けてお り,研究参加 に同意の 得 られ る者。

2.用語の定義

1)母親役割意識 :児の保育におけ る衣食住 を

整 え所属や愛情の欲求 を満 た し,価値観念や生活 習慣 を形成 し子供の社会化 の基礎 を作 ることによ って,子供の人間形成や成長発達 の基礎 を作 り, 子供 を巣立たせ ることを母親役割 といい, この母 親役割 をもつ もの としての 自己意識 を母親役割意 識 とい うQ

2

)病者役割意識 :病状 を正 しく認識 し, 日常 の役割義務 か ら免除 され, 回復 を望み他者に援助 を求め ることを病者役割 といい, この病者役割 を もつ もの としての 自己意識 を病者役割意識 とい う。

3.

調査方法

半構成質問紙 を用 いた面接調査 を2病院の乳癌 専 門外来で行 い,逐語銀 を作成 し資料 とす る。

調査 内容 は,(丑病名 ・病状の認識,②体調,③ 気掛か り,④母親 としての思い とその変化,⑤母 親役刻 (実施,心掛け,希望,代替不可能 など),

⑥子供への説明 と子供 の認識,子供の様子,(診夫 の様子,(参サポー トな どについてである。

4.

分析方法

分析方法は,乳癌発病後の時間経過 に伴 う役割 意識の変化 内容 をケー ス毎に抽 出す る個別分析 と, 病者役割の受け入れに伴 う役割意識の変化及び病 者役割の受け入れに葛藤 を有す る母親役割意識に ついての全体分析 であ る。

1)個別分析

(丑面接 内容 を時間経過 に沿 って整理す る。

(塾面接 内容か ら対象が意識 した過去 ・現在 ・未 来にわたる出来事 を抜 き出 し,時間軸 を作成 す る。

③乳癌 を知覚 した時の状況及び体調 を取 り出 し, 時間軸に沿 って乳癌の知覚 内容 を対象の言葉

(単語か又は一文章) で抽出す る。

④抽 出 した知覚 内容毎 に,乳痛の知覚 によって 導かれた意識内容 を抽 出す る。

⑤乳癌 を治すための対処 についての意識内容 を 時間軸 に沿 って抽出す る。

(む重要他者 を時間軸に沿 って抜 き出す。

(診重要他者に対す る対象の認識 (重要他者 に対 す る認識 と重要他者の対象に対す る認識) を 抽出す る。

⑧重要他者に対す る認識によって導かれた意識

(3)

子供をもつ壮年期女性の乳癌発病後の役割意識の変化

内容 を全て抽出す る。

⑨④⑤⑧ で抽出した意識 内容 を,病者役割,母 親役割, 自己自身,対社会的 自己の役割,秦 の役割,娘の役割のそれぞれの役割意識に分 け る。

⑲時間軸に沿 って乳癌の知覚 内容,重要他者に 対す る認識及び役割意識 を整理 し,乳癌発病 後の時間経過 に伴 う役割意識の変化 内容 を抽 出す る。

⑪母親役割意識について全デー タか ら詳細に抽 出す る。

2

)全体分析

(1)病者役割の受け入れに伴 う役割意識の変化 の分 析 :

① ケース毎の役割意識の変化 内容か ら,現在 (面 接時点)での母親役割意識 と病者役割意識 と の関係が同 じ傾 向にあるもの をひ とまとめに

して群 に分類す る。

②群毎に,ア)乳癌 をどの ように知覚 しそれ を どの役割意識で どの ように受け とめ るのか, イ)病者役割 をどの ように うけいれ るのか, ウ)病者役割の受け入れに伴 って役割意識が どの ように変化す るのかの視点で役割意識の 変化 内容 を分析 し,時間経過 に伴 う役割意識 の変化の特徴 を抽 出す る。

③群毎 に,母親役割意識内容 の特徴 を抽 出す る。

④群毎に,役割意識の変化及び母親役割意識の 特徴 を命名す る。

(9群毎 に,闘病期 間,病状,家族形態,子供 の 年齢性別,サポー トの有無などの特性に共通 す る特徴があれば,抽出す る。

(2)病者役割の受け入れに葛藤 を有す る母親役割意 識の分析 :

個別分析 で,母親役割意識 との葛藤 を経て病 者役割 を受け入れたケースを分析の対象 とす る。

(彰対象 となったケー スの役割意識の変化 内容か ら,葛藤 を有す る母親役割意識 と, その意識 とつなが りのある乳癌の知覚 内容,重要他者 に対す る認識,病者役割意識 を一緒に抜 き出 す (葛藤 を有す る意識内容)0

(卦葛藤 を有す る意識内容 を,葛藤の内容 が類似

す るもの をひ とまとめに して群 に分類す る。

③群毎 に, ア)発病前か らもつ母親役割意識は どの ような ものか, イ)乳癌の知覚 内容 を母 親役割意識で どの ように受け とめ るのか,ウ) 病者役割 の受け入れに伴い どの ような葛藤が 生 じるのか,エ)葛藤発現後の母親役割意識 は どの ような ものかの視点で分析 し,病者役 割の受け入れに葛藤 を有す る母親役割意識の 特徴 を抽出す る。

④群毎 に,葛藤発現後の母親役割意識内容 を, 現在 (面接時点)葛藤 中の もの と葛藤緩和 し た ものに分 け る。

G)群毎 に,葛藤発現後の母親役割意識内容 を, 葛藤 中の もの と葛藤緩和 した もので比較 し, 葛藤緩和 の特徴 を抽出す る。

(む葛藤の特徴か ら,母親役割意識 を命名す る。

結 果

1.

対象の概要

対象は

1 5

名 で平均年齢

4 0. 3

( SD±4. 5 )

,定職 あ り

6

名,無職 ・パー トタイマ

ー 9

名であった。

術式は,全員乳房切断術 で,転移 のあるものは7 名,転移 な し

8

名 で,術後月数 は

3‑4 8

カ月であ

ったQ夫の平均年齢は

4 2. 3

( SD±4. 5 )

1

名死 亡 していた。子供 は現在

2‑2 2

歳の

2 8

名 で,乳幼 児

5

名,小学生

8

名, 中学生

5

名,高校生以上

1 0

名 で,男子

1 2

名,女子

1 6

名 であった。家族構成は 核家族

1 2

名,母子 1名,義父母 との同居

2

名 であ

った。対象の概要 は表1に示す。

2.

役割意識の変化

子供 を持つ壮年期女性の乳癌発病後の役割意識 の変化 は,母親役割意識 と病者役割意識の関係か ら6つの特徴 ある群 に分け られ,特徴か ら母親役 割葛藤群,母親役割拡大群,母親役割 目覚め群, 母親役割成長群, 自己改革群,変化 な し群 と命名

された。結果は表2に示す。

1)母親役割葛藤群 :

母親役割葛藤群 (ケー ス

A,B,C)

は,乳癌 を死ぬか もしれない脅威 と知覚 し, それ を母親役 割意識で受 け止め,『健康 に気 をつけ ようと思 うけ

‑ 191‑

(4)

1 対象 の概要

ケース年齢 子供の年齢 (性別)夫 の年 齢 (職 業 ) 家族形態 衝後月数病状(病期,治療,その他)

A 38な し 8(F) 7(F) 37(自営業 ) 核家族 Patey手術 8 Ⅰ期

B 43看護婦 18(M) 死亡 母 子 Patey手術(児玉変法) 8 部分切除後再発再手術

C 42な し 14(F) 5(F) 43(会社 員 ) 核家族 左::PAuatcehyin手術,closs手術 26 異時性両側乳癌 D 42な し 16(M)13(F) 46(全社 貞) 核家族 Auchincloss手術 24 局所再 発再 手術

E 42中学教 師 16(F)15(M) 44(公務 月 ) 同居 (義父)Auchincloss手術 45 上リンノ嘱転移放射線治療中 F 33農 業 7(M) 5(F) 37(農 業 ) 同居(義父母)拡大根治的乳房切断術 48 全身骨転移MSコンチン内胴 G 33な し 6(M) 4(F)・37(医学記 者 ) 核家族 Patey手術 27 Ⅰ期

H 41学校給 食調理月 10(M) 40(自営業 ) 核家族 Patey手術(児玉変法) 18 Ⅰ期

Ⅰ 39パー トタイマー 12(M) 9(M) 39(公務 員) 核家族 patey手術 8 Ⅰ期 化 学療 法 中

J 33医療助 手 2(F) 37(デザイン) 核家族 Patey手術 3 0期 K 48な し 22(M)21(F)17(M)51(公務 員) 核家族 Auchincloss手術 7 Ⅰ期 L 38音楽家 ll(M) 8(F) 41(社 長 室長 )核 家族 Patey手術 17 Ⅰ期

M 43な し 21(F)17(班)46(会社 員) 核 家族 Auchincloss手術 25 Ⅰ期 N 43な し 17(F)15(F) 48(会社 員) 核家族 Auchincloss手術 4 Ⅰ期

れ ど子供 に振 り回される, こんな生活 していてい いのか不安 になるし母親 としで情けない』 と母親

…病者役割意識間に葛藤 を生 じ, また 『親 と離れ て嘱息 を治す方が良いか,今一緒にいて愛情 を注 いだ方が良いか,後何年生 きられ るか と思 うと悩 んで決め られない』 と母親役割意識内に葛藤 を生

じていた。

母親役割意識内容 は個別性が強 ぐ悩みの中で定 まらないのが特徴 であった0

2)母親役割拡大群 :

母親役割拡大群 (ケースD, E, F,G)は, 乳癌 を死ぬか もしれない脅威 と知覚 し,母親役割 意識の 「子供 を残 して死ねない」で受 け止め,母 親役割意識 との葛藤 を経 て病者役割 を受け入れた。

そ して 『まだ切羽詰 まっていないか ら子供 に心配 をかけないほ うがいいので普通に生活す る,特別 なことをす ると私 も疲れ る, もうだめだ と思 った ら子供 に遺書 を残 さない といけない と思 っている けれ ど‑』 と,死 までには時間があるとの知覚か ら母親役割 と病者役割 を区別 して意識 した。

母親役割意識内容 は,『今 はまだで きる状態だか ら,子供 に してやれることは何 で もしよう,子供

のために少 しで も長 く生 きていてや りたいか ら自 分 の体 を労 ろ う』 など死の 自覚か ら子供 にできる 限 りのことをす るとい う母親役割 を持続す るため に,病者役割 をとることが特徴 で,母親役割意識 が拡大 した。

この

4

ケースの闘病期 間は

2

〜4

年間 と比較 的長 く, 4名 中 3名 に再発又は転移が見 られた。

3

)母親役割 目覚め群 :

母親役割 目覚め群 (ケー スH, I) は,乳癌 を 死の脅威 と知覚 し,母親 ・妻 ・村社会的 自己の役 割意識で 「自分 のこ としか考 えられない」 と受け 止め,『自分 がいつ死んで もいいように仕事 の後釜 と子供 の世話 を自分 の都合解釈 で決め,貯金通帳 の置 き場所や親戚 との交際 につ いて夫 に説明 し た』 と,発病前か ら持つ役割 を調整す ることで病 者役割 を受け入れ,『最悪の場合死ぬか もしれない と子供 に伝 え,子供 に協力 を依頼す る』や, 『障害 者の気持 ちを分 かって欲 しいか ら一つ しか無い乳 房 を子供 に見せ る』のよ うに,母親役割 と病者役 割 を結び付けて意識 した。

母親役割意識内容 は,『自分 の死後の子供の養育 を実母 に頼む』や 『私がいな くて も困 らないよう

(5)

子供 をもつ壮年期女性の乳癌発病後の役割意識の変化

2 病者役割の受け入れに伴 う役割意識の変化及び母親役割意識内容の特徴

ケース 乳癌の知覚内容 知 覚 内 容 を受け とめた 受け とめの 病者役割の役 割 意 書 内脊 受け入れ方 役割意識の変化内容 母親役割意識内容の特徴 役割意識の変化分類 A 死の脅威 母親 ケース毎に 母親‑病者役割意 (葛藤中) ・個別性が強い 母親役割葛藤

CB (死ぬかもしれない) 異なる 識間又は母親役割意識内の葛藤 ・悩みの中で定 まらない 群

D 死の脅威 母親 子供を残 し 母親‑病者役割意 (乳癌の知覚 ;死ま ・今,子供にできる限 り 母親役割拡大 E (死ぬかも て死ねない 識間の葛藤を経て でには時間がある) のことをする 群

F

G しれない) 母親役割と病者役割を区別して意識した ・母親役割を持続するために病者役割をとる

H 死の脅威 ・母親 自分のこと 発病前か ら持つ役 母親役割 と病者役 ・母親の死後,子供が困 母親役割 目覚

Ⅰ (死ぬかも ・妻 しか考えら 割を調整 して 割 を結び付けて意 らないように子供又は周 め群

しれない) ・対社会的自己 れない 識 した ・母親の病気から子供が国の大人に働きかける学び成長するように子供に働 きかける

J 体調不良 対社会的自 やろうと思 村社会的自己‑柄 母親 .妻の役割意 母子間の心理的距離の 母親役割成長

K 脅威ではな 己 つてもでき 者役割意識間の葛 識が変化 した 調整 群

しー ない 藤を経て (した)葛藤が変化 を促

L 死の脅威 自己自身 時間が限ら 葛藤 を経験せずに 自己自身を拡大さ 母親役割意識はほとん 自己改革群

M (死ぬかもしれない) れている せた ど希薄

引け目を感じる 意識間の葛藤を経て自己自身‑病者役割 せた自己自身を縮小 さ

N 脅威ではな 母親 考えてもし 役割の調整も葛藤 すべての役割意識 発病前からの母親役割 変化なし群

に, 子供 に家事 を教 え る』 な ど, 母 親 の死 後 子供 が 困 らな い よ うに子供 か 周 囲 の大 人 に働 きか け る こ と と, 『母 親 の病 気 か ら命 の尊 さ を学 ん で ほ し い』 な ど母 親 の病 気 か ら子供 が 学 び成 長 す る よ う に働 きか け るこ とが特徴 で, 発 病 後新 しい母 親 役 割 に 目覚 め た。

4)母 親 役 割 成 長群 :

母 親 役 割 成 長群 (ケー ス J, K)は, 乳 癌 を体 調 不 良 と知 覚 し, 対社 会 的 自己の役 割 意 識 で 「仕 事 をや ろ う と思 って もで きな い」 と受 け 止 め, 対 社 会 的 自己 との葛 藤 を経 て病 者役 割 を受 け 入 れ た。

そ して葛 藤 が生 じた時 に 『夫 が仕 事 を辞 め て もい い よ と言 って くれ た』 こ とに支 え られ, 家 族 の思 いや りに気づ き,『夫 に対 して奮 った とこ ろが 無 く な り, 子供 に対 して 自分 の都 合 で叱 るこ とが な く ス キ ン シ ップ を大 切 にす る よ うに な っ た』 と意 識

した。 また別 の ケー ス で は, 葛 藤 が生 じた時 の子

供 の様 子 を見 て 『も う母 親 は必要 じゃ な い』 と子 供 が 自立 し母 親 か ら巣 立 って い る こ とに気づ き,

『母 親 だか ら といつ まで も子供 にか まい過 ぎる と 子供 の 負 担 に な る, や る こ とはや っ たん だ か らこ れ か らは 自分 の 人生 を楽 し も う, 結 局 は夫 と生 き て い く, 夫 の 良 さが 見 えて きた』 な ど, 対 社 会 的 自己 と病 者役 割 意 識 間 の葛 藤 が母 親 ・妻 の役 割 意 識 を変 化 させ た。

母 親 役 割 意 識 内容 は, 幼 児 を もつ母 親 で は母 子 間 の心理 的 距離 を近 づ け, 高校 生 以上 の子供 を持 つ母 親 で は心 理 的 距離 を遠 ざけ るな ど, 子供 の発 達 段 階 に応 じた母 子 間 の心 理 的 距離 の調 整 が特 徴 で, 母 親 と して成 長 した。

この2ケー ス は, 闘病 期 間 ・病 期 が3カ 月 ・0 期

, 7

カ 月

Ⅰ期 で あ り, 闘病 期 間 が短 く予 後 の

良 い者 で あ った。

5

) 自己改 革群 :

‑ 1 9 3‑

(6)

自己改革群 (ケースL,M)は,乳癌 を死ぬか もしれない脅威 と知覚 し, 自己自身で 「時間が限 られている」 と受け止め,葛藤 を経験せずに病者 役割 を受け入れ, 『病気 になって神や周囲に感謝 し,限 られた時間の中で 自分が何 をすべ きか考 え る』と自己自身を拡大 させ, 『病気は私 自身の問題 だか ら母親 としては関係 ない』 と意識 した。

一方,乳癌の脅威 を自己自身で 「引け 目を感 じ る」と受け止め,葛藤 を経て,『何 もせずに家で凄 ているのが一番 いい と思 う』 と自己自身 を縮小 さ せ,『主婦 として家のことは心配だけれ ど母親 とし ては何 も変わ らない』 と意識 した ものがあった。

母親役割意識内容 は,『子供 を持て余 していて何 を考 えているのか分か らない,母親 としてす るこ とは特にない,元気に学校 にいってほ しいだけ』

など発病前 と変 わ らずほ とん ど希薄をことが特徴 であった。

6

)変化 な し群 :

変化 な し群 (ケースN, 0)は,乳癌が脅威 で も体調不良で もな くこれ を母親役割意識で 「考 え て も仕方がない」と受け止め, 『私の人生の転機 は 子供が障害児 と分かって落 ち込んではい上が って きた時点で,手術後は何 も変 わっていない,子供 のために長生 きしてや らない といけないので料理 には気 をつけている』 と良 くなるために 自然に病 者役割 を受け入れ,再発時は 「また対処すれば良 い」 と認識 し,全ての役割意識が変化 しなかった。

母親役割意識内容 は,『親 として監督す るが子供 の意志や考 えを尊重す る,子供 に親 として悪 いモ デルは示 さない,夫に娘の気持 ちをとりなす,女 親 として相談に乗 る』や, 『障害 をもつ子供 ととも に生活す る,障害 をもつ子供 のために他 の子供 の 人生 を縛 らない』など,発病前か らの母親役割意 識が持続す ることが特徴 であった。

3.

病者役割の受け入れに葛藤 を有す る母親役割 意識

母親役割意識 との葛藤 を経て病者役割 を受け入 れた ものは,母親役割葛藤群,母親役割拡大群 に 含 まれ る

7

ケースであ り, この

7

ケース を分析 し た。病者役割の受け入れに葛藤 を有す る母親役割

意識は,葛藤の内容 の違 いか ら

5

群 に分類で き, 葛藤緩和 に特徴が見 られた。 この

5

群 は葛藤の特 徴か ら,母親役割の強要 による葛藤 を有す る母親 役割意識,代替不可能 な母親役割の脅か しによる 葛藤 を有す る母親役割意識,乳房喪失に よる葛藤 を有す る母親役割意識,子供‑の悪影響 に よる葛 藤 を有す る母親役割意識,死 を自覚 した母親役割 の葛藤 を有す る母親役割意識 と命名 された。結果 は表

3

に示す。

1)母親役割の強要 による葛藤 を有す る母親役 劃意議 :

日常的な子供 の身の回 りの世話 とい う母親役割 意識 をもち,治療が必要 または体調不良 と知覚 し た者は,「休みたいが休めない,子供 に振 り回され る」 と受け とめ,母親役割 を強要 され病者役割が とれないことか ら,母親一病者役割意識間に葛藤 を生 じた。葛藤後の母親役割意識内容 は,周囲の 大人の援助か子供の成長 によって実質的 日常的な 母親役割が軽減 し病者役割 をとれ るようになる, 又は病者役割が とれず体調不良が強 まって も子供 の 日常的な世話 を優先す ることであった。 そ して 病者役割 をとるために子供の 自立 を促すか,子供 に働 きかけ られず子供の成長 を待 ち望む事 であっ た。

葛藤は母親役割の軽減 と病者役割の遂行 を意識 す ることで緩和 され ることが特徴 であった。

2

)代替不可能 な母親役割の脅か しによる葛藤 を有す る母親役割意識 :

母親の存在 その ものが子供 の精神 的発達 に不可 欠で, これだけは母親である自分以外の誰に も代 替不可能 とす る母親役割意識 をもち,乳癌 を死の 脅威 と知覚 した者 は,「子供 を残 して死ねない,心 もとない」 と受け とめた。 そ して代替不可能 な母 親役割が死によって中断され ることか ら,母親一 病者役割意識間に葛藤 を生 じた。葛藤後の母親役 割意識は,母親 としての 自分 の存在の大 きさの再 認識 と今普通に子育 てで きることへの感謝,死 ま でには時間があるとの知覚か ら,現在の子供 との ふれあいを重視 し病気の影響 を受けない本来の母 親役割 を十分 に とること,母親役割 を継続 させ る ために病者役割 をとる又は現在の母親役割 を重視

(7)

子 供 を もつ 壮 年 期 女 性 の 乳 癌 発 病 後 の 役 割 意 識 の 変 化

3 病 者 役 割 の 受 け 入 れ に葛 藤 を有 す る母 親 役 割 意 識

発病前からもつ

母親役割意識内容 乳癌の知覚内容 母親役割意義での受けとめの内容 葛藤の内容 葛藤後の母親役割意識内容 葛藤援和の特徴 葛藤 を有する母親役割意識分類 (ケース) 子供の身の回 り 治療が必 休みたい 体調不良で休息をとりた ・病者役割 よりも母親役割 を優 ・母親役割の軽 母親役割の強要による葛 の世話 を日常的 が休めな い又は治療に専念 したい 先す る 藤 を有する母親役割意識 にする 体調不良 が,母親役割 を強要 され, ・母親役割が軽減 し,病者役割 ・病者役割の遂 (A,CX,F,G)

子供に振り回され 母親‑病者役割意識同に葛藤が生 じる ・病者役割 をとるために子供のが とれるようになる自立 を促す又は成長 を待 ち望

子供の精神的発 死の脅威 子供 を残 代替不可能な母親役割が ・母親役割の重要性 を再認識 し, ・死 までには時 代替不可能な母親役割の 達に母親の存在 して死ね 死によって中断され るこ 今普通に子育てできることに 間があると知 脅か しによる葛藤 を有す

が不可欠で代替 ない とか ら,母親‑病者役割 感謝す る る母親役割意識

不可能 心 もとな 意識間に葛藤が生 じる ・(・母親役割の継続のために病者覚か ら)子供 との現在 の 自然役割をとる,又は母親役割 を重視 し病者役割が とれないなふ れあいを重視する死 までには時間が あ るの知 ・母親役割 と病病気の影響 を受けない母親役割重視者役割 を区別して意識 し, (C,D,E,F,G)

子供は母親‑乳 治療のた 母親 =乳 治療に伴 う乳房喪失のた ・乳房喪失は子供のために生 き ・母親 としての 乳房喪失による葛藤 を有 房のイメー ジを め乳房切 房のイメ めに母親のイメー ジが壌 る代償 と考 える 価値の転換 す る母親役割意識

もつ 断が必要 ‑ ジが壊 れ 母親‑病者役割意識 ・子供の反応が怖 くて見せ られ ・子供の肯定的 (AX,C乳 G)

れた 間に葛藤が生 じる ・(ないより)でなかつた と意識す る子供の肯定 的反応の認識 に乳房喪失 は大 したこ と 反応の認識

子供に悪影響 を 母親の発 自分 のせ 予期せず,母親の乳癌発 ・母親又は病者 としての 自覚が ・子供 との体験 子供への悪影響による葛 与えた くない 病が子供 病が子供に悪影響 を及ぼ 促 され,母親 としてのあ り方 の共有 と子供 藤 を有す る母親役割意識

にも影響 子供に申 したことか ら,母親‑柄 を考える の精神的成長 (B,D,G)

した し訳ない 者役割意識間に葛藤が生じる ・(より)と意識す る子供の精神 的成長の認識 に子供 と共 に乗 り越 えた の認識

子供の病気 を治 死の脅威 乳癌でな 死の 自覚によ‑り、現在 を ・母親の死後の子供に とって景 葛藤中のため不 死 を自覚 した母親役割の したい ければ‑ 重視 した母親役割か母親 も重要なことを判断基準 とし 葛藤 を有す る母親役割意 子供の看病 をし 番いい方 の死後の子供 を重視 した て,母親役割の優先順位 を決

し過 ぎて病者役割が とれないことであった。

葛藤は死 までには時間があると知覚す ることと, 母親役割 と病者役割 を区別 して意識 し病気の影響

を受けない現在の母親役割 を重視す るこ とで緩和 す るのが特徴 であった。

3

)乳房喪失 に よる葛藤 を有 す る母親役 割 意 識 :

子供 は母親 ‑乳房 のイメー ジをもつ とい う母親 役割意識 をもち,乳癌 を治すために乳房切断が必 要 と知覚 した者は,「母親 ‑乳房のイメー ジが壊れ

注) ※は現在 葛藤 中の ケー ス を示 す

た」 と受け とめ,母親一病者役割意識間に葛藤 を 生 じた。葛藤後の母親役割意識は,乳房喪失は子 供 の為 に生 きてい く代償 と考 えること,子供 の反 応が 怖 くて乳房 を見せ られない と意識す ること, 夫の働 きかけで早期 に子供 に創部 を見せ,子供 の 肯定的な反応が得 られたことで乳房喪失は大 した

ことではなか った と意識す るこ とであった。

葛藤は母親 としての価値 の転換 と子供の肯定的 な反応 を認識す ることによ り緩和す ることが特徴 であった。

‑ 1 9 5‑

(8)

4

)子供への悪影響 による葛藤 を有す る母親役 割意識 :

子供 に悪影響 を与 えた くない とい う母親役割意 識 をもち,母親の発病が子供 に も影響 した と知覚 した者は, 「(子供‑の影響 は) 自分 のせ い,子供 に申し訳ない」 と受け とめ,予期せず母親の発病 が子供 に影響 したことか ら母親‑病者役割意識間 に葛藤が生 じたo葛藤後の母親役割意識は,母親 としての 自覚が促 され子供 の前で動揺 を押 さえた り,病者 としての 自覚が促 され死 を自覚 した母親 役割 を意識す るな ど,母親又は病者 としての 自覚 か ら母親 としてのあ り方 を考 えるこ とと,母親の 発病 を通 して子供が精神的に成長 したことに気づ き,子供 とつ らさを分かち合 い共に困難 を乗 り越 えた と意識す ることであったQ

葛藤は子供 との体験の共有 と子供 の精神的成長 を認識す ることによって緩和す るこ とが特徴 であ った。

5

)死 を自覚 した母親役割の葛藤 を有す る母親 役割意識 :

子供が慢性疾患 をもち子供の病気 を治 したい, 子供の看病 をしたい とい う母親役割意識 をもち, 乳癌 を死の脅威 と知覚 した者は,「乳癌 でなければ 一番 いい方法が選べ たのに」 と受け とめ,母親の 死後子供が困 らないように母親が元気 な内に母親 か ら離 して子供の病気 を治すか, いつ まで生 きら れ るか分か らないので今 しっか りと子供 とふれ合 うか,死 を自覚 した母親役割意識同士 (母親役割 意識内)の葛藤が生 じた。葛藤後の母親役割意識 は,母親の死後子供が一番かわいそ うなことは何 か を判断基準に母親役割の優先順位 を決め ようと す ることであった。

葛藤緩和の特徴 は,葛藤中のため不明であった。

考 察

1.子供 を持つ壮年期女性が乳癌 を発病す るとい うこと

アイデンティティの確立 していない子供 を持つ 壮年期女性の乳癌発病後の役割意識の変化 は,柄 者役割の受け入れ方 と母親役割意識の特徴か ら

6

群 に分類 され, また病者役割の受け入れに葛藤 を

有す る母親役割意識はその葛藤の特徴か ら5群 に 分類 された。 これは子供 をもつ壮年期女性が,乳 癌の発病 を個別の体験 として意識 していることを 示 してお り,乳癌 によって もた らされ る意味 も同

じではない と考 え られ る。

つ ま り,良 くなるために 自然に病者役割 を受け 入れ今 まで と変わる事 な く母親役割 をしっか りと 果 た した変化 なし群 では,乳癌 は母親 として簡単

に乗 り越 えられた ものであった と言える。乳癌の 脅威 を自己自身で受け とめた 自己改革群 では,発 病前 と変 わ らず母親役割意識が希薄であったこと か ら,乳癌は 自己 自身の生 き方 を問い直す もので あった と言える。比較的予後良好で乳癌が死の脅 威ではないが体調不調で仕事がで きず,対社会 の 役割意識に葛藤 を生 じた母親役割成長群 では,葛 藤 によって家族の存在 についての関心が高 ま り, 母親 ・妻 としてのあ り方 を再考 した。つ ま りこの 群 では乳痛が母親 としての成長 を促 すチャンス と なっていた と言 える。死の脅威 を自分 の もつ全 て の役割意識で受け とめ,病気 を受け入れ闘 うため の準備 に全力 を注いだ母親役割 目覚め群 では,柄 気 をもった母親 として積極的に子供 に働 きかけ る と同時に子供 の前で も病者役割 をとり, また母親 の病気 を子供 の成長の材料 とした。つ ま りこの群 では乳癌 は母親役割の中に取 り込み共存す るもの であった と言える。母親 としての意識が強い母親 役割葛藤群 と母親役割拡大群 では,発病後母親役 割の遂行が難 しい と意識 し葛藤 を生 じたことか ら, 乳癌が母親 としての 自己を脅かす もの となった と 考 えられ る。発病前に どの ような母親役割意識 を もっていたかによって様々な葛藤 を生 じたが, 中 で も子供の豊かな人間形成にはたった一人の母親 である自分 の存在が絶対不可欠だが 自分 の死 は子 供か らそれ を奪 うと意識す ることに よる葛藤は, 情緒的苦痛が強 く長期 間続いた。 そ して比較的病 状の重い母親役割拡大群 に特徴 的に見 られた。 こ の葛藤 を持つ者は,病気の影響 を受けない今 まで どお りの母親 として,今子供 とふれあ うこ とに全 力 を注 ぎ, それ を維持す るために病者役割 をとる ことで葛藤 を緩和 させ た。 この ことか ら母親役割 拡大群 では,乳癌 は母親役割維持 のために克服す

(9)

子供 をもつ壮年期女性の乳癌発病後の役割意識の変化

るものであった と考 えられ る。

以上,子供 を持つ壮年期女性に乳癌が もた らす 意味は,個人の知覚 と置かれた状況によって異 な り,母親役割葛藤群 では母親 としての 自己を脅か す もの,母親役割拡大群 では母親役割維持 のため に克服す るもの,母親役割 目覚め群 では母親役割 の中に取 り込み共存す るもの,母親役割成長群 で は母親 としての成長 を促すチャンス となるもの, 自己改革群 では自己自身の生 き方 を問 うもの,餐 化 な し群 では簡単 に乗 り越 えられ るもの と言える。

乳癌の発病 は,子供 を持つ壮年期女性 に母親 とし てのあ り方,つ ま り発病後の人生 を母親 として ど のように生 きるか を熟考 させ ることか ら,必ず し も発達課題 の達成 を妨 げ るものではな く母親 とし ての成長 を促す ものになると考 えられ る

2.

子供 をもつ壮年期乳癌患者への看護のあ り方 1)病状 を正 しく認識す るための援助

病気 をもつ人が人 として尊重 され るためには, その人 らしい生 を全 うで きるように生 を支 えるこ とが重要である11)。それは生命や生活,人生,生 き 方などに幸福 と満足 を感 じ調和 (‑‑モニー)が 保 たれ ること,つ ま り

QOL

が高 まるこ と12)であ る。 このように,人がその人 らしい生 を全 うす る には, 自分が何者であ りどの ように生 きたいのか を熟慮す る必要がある。子供 をもつ壮年期女性 も また,乳癌の発病 によって,母親 .自己自身 とし ての生 き方 を問い直 していた。 したが って, 自分 の病状 を正 しく認識す ることは, 自らの役割意識 を明確 に し発達課題の達成 を促す ことに役立 ち, ひいては残 された時間の母親の

QOL

を高め るこ とにつ なが る。 このためには,病状 を正 しく認識 できるように病状についての十分 な説明が第‑ に 必要 なこととなる。

2

)患者の役割意識 を考慮 した援助

発病後の人生 を母親 として どのように生 きるか は,その個人に もたらされ る乳癌 の意味によって 異なる。つ ま り発病前か らもつ役割意識や その関 心の強さ,乳癌 をどの ように受け とめ るか,重要 他者である子供の反応な どに影響 されて役割意識 が変化 していたことか ら,個々人の役割意識 を考

慮 した働 きかけが必要 である。

(1)アセスメン トのあ りかた

母親役割成長群 に見 とめ られ るように比較的予 後良好 で体調不良の強い者は,短期 間の内に母親 としての成長が促 され,母親役割葛藤群,母親役 割拡大群,母親役割 目覚め群 に見 とめ られ るよう に乳癌 による死の脅威 を母親役割意識で受け止め た者は,死 を自覚 した母親 としての生 き方 を再考 した。 これは発病時の体調 と予後の受け とめの内 容が発病後の母親 としての生 き方に影響 を及ぼす ことを示 してお り, したが って体調 と予後の受け とめの内容 を綿密にアセスメン トす る必要が強調 され る。 また重要他者である子供 の反応によって, 母親‑病者役割意識間の葛藤が生 じた り葛藤が緩 和 され ることか ら,子供 の反応につ いて も十分 に アセスメン トす る必要がある。

(2)母親役割意識の葛藤 を緩和す るための働 きかけ 母親役割意識が強 く母親一病者役割意識間の葛 藤が持続す ると,病者役割 を母親役割の手段 と考 えるようになるため,早期 に葛藤 を緩和す るよう な働 きかけが必要 となる。 また発病前に どの よう な母親役割意識 をもち乳癌 をどのように受け とめ るかによって様々な葛藤が生 じるので,母親役割 意識について十分 にアセスメン トす る。

a)病者役割が十分 に とれない者への援助 子供が小 さ く日常的に身の回 りの世話が必要 な 場合 で,周囲か ら十分 な援助が得 られない時,病 者役割 よ りも母親役割 を優先す ることか ら体調不 良が強 まるとい う悪循環が起 こるO そのため,育 児環境 を整備 して実質的 日常的な母親役割 を軽減 し,治療 に専念 した り必要 に応 じて休息 をとるな どの病者役割が とれ るように配慮す る必要がある。

地域社会 での噂や好奇の視線に耐 え艶い と認識 し ている場合 は,近所や母親仲 間に発病 を伏せ てい ることも多いため,地域社会か らの援助 は受け難 い状況にあったo Lたが って家族 内のサ ポー ト体 制が不十分 な場合 は,公的サー ビスや民間の‑ル パーに関す る情報提供 を積極的 に行 った り,子供 が小学生以上の場合 は子供 の 自立 を促すなど夫 を 含めてサポー ト体制 を検討 してい く。

b)母親の存在 その ものが不可欠だが,死によ

‑ 1 9 7‑

(10)

ってそれが脅か されると考 える者‑の援助 母親 である自分 の存在 その ものが子供の豊かな 人間形成 に絶対不可欠だが死によってそれが脅か され ると考 える者は,病状の比較的重い者に多 く 見 られた。そ して心理的苦悩が強 くそれが長期 間 持続す ることか ら,病者役割 を母親 として生 きる ための手段 と考 えるようにな り,母親役割 を重視

し過 ぎることか ら病者役割が とれな くなることも あった。 このような母親への援助のあ り方は,早 期 に葛藤緩和 をすすめ,主体的な病者役割が とれ

るようにす ることである。

その援助の第

1

は,「まだ時間がある」と知覚 し た者が病者役割 と母親役割 を切 り離 し,病気に影 響 されない母親役割 を今十分 に果たす と意識す る ことで葛藤 を緩和 したことか ら,体調の回復 を実 感 でき母親 として子供 とふれあえる時間はまだ比 較的多 くあると認識できるように働 きかける。中 で も,ケース

C

の ように子供の 日常的な世話が必 要だが,周囲か らの援助が十分 でな く子供 の 自立 を促す こともで きない者では,病者 として体 をい たわることよ りも子供の世話 とい う母親役割 を優 先せ ざるを得ず,体調不良や予後 に対す る不安が 強 まった。そのために,死 までに時間があると実 感できず,今子供 と十分 にふれあっているとい う 実感 ももてないために,母親 としての情けなさが 強 まった。 この ような者に対 しては,十分 な休息

と安心 して病者役割が とれ る環境 を早急に整備 し, 体調の良好 さを実感す ることで,死 までに子供 と 十分 にふれあえる時間 も体力 もあることを意識で

きる様 に働 きかけ ることが特 に重要 である。

第2に,残 され る子供の不傾 きだけではな く, 子供が生来 もつ 自然治癒力

( na t ur alr e s i l i e nc y)

や子供 が 自分 で対処 し克服 して い く能 力

( s e l f ‑ r i g ht )

ヱ3

)

に も積極 的に 目を向け られ るように働 き かけ,子供 のその能力 を高め るために今母親 とし て何がで きるのか を共に考 えてい く。

3

に,葛藤に伴 う心理的苦悩が強いことか ら, 感情や思いを表出できる場 を作 り良 き理解者 とな

り,葛藤緩和 に働 きかけ る。

(3)発病後, 自己の生 き方 を追求す る者に対す る援 助

乳癌発病後, 自己 自身の生 き方 を追求す る患者 に対 しては,母親の死後の子供‑ の影響 を最小限 にす ることが必要であ り,母子関係 と子供‑の影 響 を十分 にアセスメン トす る。 そ して,母親の発 病が子供 に与える影響や子供 の発達課題 の達成に 当たっての母親の重要性 について,母親 自身が理 解 し子供 の発達段階に応 じた母親役割が遂行 でき

るように調整 を行 うo

( 4 )

葛藤 を生 じるこ とな く病者役割 を受け入れ る者 に対す る援助

ケース

B

の ように,発病 当初乳癌 を死の脅威で も体調不良で もない と受け とめた もので も,母親 の病気が子供 に影響 を及ぼ した場合には母親一病 者役割意識間に葛藤 を生 じ,結果的に死の脅威 を 知覚す るようになった。変化 な し群や母親役割 目 覚め群 の ように葛藤 を生 じるこ とな く病者役割 を 受け入れ うま く適応 している者 で も,子供 に悪影 響 を及ぼ した場合 には母親 としての葛藤 を生 じる 可能性があるこ とか ら,特 に経過 に注 目して見守 ってい く。

3

)外来通院時の積極的働 きかけ

大谷 ら14)の指摘 と同様,働 きかけの時期 は入院 期 間中だけでは不十分 である。現在乳癌の治療 は 第‑選択 として手術療法が行 われ,入院期 間 も1 カ月以内 と短 い。 そのため役割意識の変化 は,入 院期 間中よ りも入院期 間前・後に多 く見 られた。つ ま り入院前は外来で告知 をうけて動揺 し, また入 院にむけての準備 が必要 なこ とか ら役割意識の変 化が起 こ りやす い。入院中は手術が明確 を 目標 と な り手術 に対す る関心が高 まるが,退 院後 は再 発 ・転移や死の脅威が増 し, また病気 をもって生 きることが現実 となる。 したがって,外来通院時 の積極的な働 きかけは,役割意識の変化が在宅療 養 中に促進 され ることか ら,特 に必要 である。

終 わ り に

本研究の対象の闘病期 間は最長

4 8

カ月であった こ とか ら

, 5

年生存率 の比較的良い乳癌患者の役 割意識の変化 を長期 にわたって理解す るのには限 界がある。今後 は対象 を闘病期 間

5

年以上の もの に も広げ,子供 をもつ壮年期患者の役割意識の変

(11)

子供 をもつ壮年期女性の乳癌発病後の役割意識の変化

を広 く説明 してい くことが必要 と考 えられる。

研究に快 く参加 して くださいました,闘病 中の お母 さん方に心か ら感謝 申し上げます。 また研究 の場 を提供 して くださいました病院の主治医,看 護部長,外来婦長,スタッフの皆様に御礼 申し上 げます。

文 献

1)高旗正人,費岐幸治,住 岡英毅編著 :人間発達の社会 学.アカデ ミア出版会,京都.109‑131,1991.

2)Ne wma nBM a n dNe wma nPR:

生涯発達心理学‑

エ リクソンによる人間の一生 とその可能性.川島書店, 東京.17‑21,1983.

3)

Ra mb oBJ:

適応者議論‑ ロイ看護論 に よるアセス メン トと実践.

HBJ

出版局,東京.311‑329,1991. 4)近藤潤子 :母性 の概 念 看護

MOOK N

α21 母性 と

看護.金原出版株式会社,東京.1,1986.

5)大西誠一郎編 :親子関係の心理.金子書房,東京.3‑ 7,1971.

6)

Me l e i sAI

:役割理論 と看護研 究.看護研究20:54‑

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7)

WuR:

病気 と患者の行動.医歯薬出版株式会社,東 京.187‑217,1987.

8)Ra mb oBJ

:適応看護論‑ ロイ看護論 によるアセスメ ン トと実践.

HBJ

出版局,東京.118‑134,1991. 9)新道幸恵 :日本看護診断研究会 ・第1回学術集会報告

看護診断 :親役割の変調.看護研究25:35‑41,1992. 10)梶 田叡‑ :自己意識の心理学,東京大学出版会,東京.

2‑12,1980.

ll)小 島操子 :生 を支 える. ター ミナルケア4 :365‑367, 1994.

め ざして.朝倉書店,東京.89‑93,1990.

13)

Le wi sFM, El l i s o nESa n dWo o d sNF: Th el mp a c t o fBr e a s tCa n c e ro nt h ef a mi l y . S e mi n a r si n On c o l o g yNu r s i n g

1:206‑213,1985.

14)大谷英子,松木光子,越村利恵 :がん患者の

Qu a l i t yo f Li f e( QOL)

と臨床看護の方 向性.がん看護1:16‑

22,1996.

Cha nge si nr ol epe r c e pt i o nf o rbr e as tc anc e rpat i e nt swi t hc hi l dr e n

Maki koMAEDAa ndRe i koSAT

O l)

Abs t r ac t

Thi ss t udye xa mi ne dt hec hange si nr ol epe r c e pt i one xpe r i e nc e dbybr e as tc anc e rpat i e nt swi t h c hi l dr e n,a nal yz i ngho w t he ya c c e pt e dt he ms e l ve sasas i c kpe r s ona ndho w t he ype r c e i ve dt he m‑

s e l ve sa samo t he r . Da t awe r ec ol l e c t e dbyani nt e r vi e wand anal yz e dbyqual i t a t i vea ndi nduc t i ve me t hods .Fi ndi ngs howe ds i xt ype so fc hange si nr ol epe r c e pt i on,Wi t he ac ht ypec ont ai ni nga par t i c ul a rme a ni ngf o rt hepat i e nt s . Fi vet ype sofma t e r nalr ol epe r c e pt i o nwe r eal s of ound s pe c i f i c al l yf o rt hemo t he r ss uf f e r i ngc o nf l i c t si nac c e pt i ngt he i rs i ckr ol e.The s ef i ndi ngsi ndi c a t e t ha tnur s e ss houl dt akeduec ons i de r a t i o nwhe npr o vi di ngade qua t ec ar et ot he i rbr e as tc anc e r pa t i e nt s .

Ke ywor ds:r ol epe r c e pt i on,ma t e r nalr ol e ,s i c kr ol e ,br e a s tc a nc e rpat i e nt s Sc ho o lo fHe a l t hSc i e n c e s ,Oka ya maUn i v e r s i t y

1)Sc ho o lo fn u r s i n g,Chi baUn i ve r s i t y

‑ 1 9 9‑

参照

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