16章 社会階層・文化
社会階層
1 社会階層と消費者行動 2 社会階層
3 社会階層とは?
4 社会階層を決定するものは何?
5 社会階層を測定する
6 社会階級は変化しているか?
7 社会階級セグメントへのマーケティング 代行的1節閑暇と行儀作法
8 ハビトゥス
• 貧乏の定義を「食う為に労働しているとして,その 労働をちょっとでも中断して,ヤレ景色を愛でるの 衣服を繕うのと己の為の行為をしたら,もう食えな くなっちまうほどの状態」とすれば,現在(いま)
の日本人はほとんど貧乏人であろう。
ヤレ「ディズニーランドに子供をつれて行かねば 駄目」だの,「ハワイにも,温泉にも」「ガキにピ アノを習わせろ」の,「塾に」のと,これらをしな いと生きているということにならず,その為に働く
,労働する,というのだから,現代人は貧乏人であ ろう。携帯電話で話している奴なんざァ,貧乏人の 最たるものだ。奴等ぁ,あれを経済の尖兵と思って いるのだろうが……。
(立川談志『新釈落語噺』中公文庫 p100, 1999 年
,元は 1995 年)
セグメンテーション
• マーケット・セグメンテーション 市 場細分化
• 人口統計学(デモグラフィック要因)
• 経済学的
• 使用状況
0.1.地域
• 地域によって消費者行動は違ってくる。何が売れ るのか調べればもっとも単純なレベルのことがわ かる。売れないものがあると,それだけ市場があ ると考えるのか(米国型),市場がないと考える か(英国型)によってその後の行動は大きく違っ てくる。 食料品や家事雑貨に関する
都道府県庁所在市別ランキング 家計調査 平成
15 年~ 17 年平均
0.2.富
英国における富の所有状況
• 人口割合 富の割合(いずれも累 積)
• 最富裕層上位 1% 18%
5% 38%
10% 53%
25% 75%
50% 94%
• アンソニー・ギデンズ『社会学 改訂新版』而立書房
(じりつ) 1993 表より (1989)p228
日本の金融個人資産
• 朝日新聞 2004 年 10 月 16 日記事
• 金融個人資産 1400 兆円一人平均 1100 万円(日銀推計)
– 4人家族で 4400万円
– 預貯金 (744.6 兆円), 保険・年金準備金(395.6 兆円 ), 株式・出資金
(121.6 兆円), 株式以外の証券 (70.2 兆円), 現金 (40.0 兆円 ), 未収・未払 い (23.9 兆円 ), その他 (29.6 兆円 )
• 人口の上位 1 %( 126 万人)が全体の3割( 440 兆円)を保 有。1人平均3億5千万円 (メリルリンチ日本証券推計)
• 上場企業のオーナー経営者の自社株保有額は上位 5000 人で計 7兆円、1人平均 140 億円(メリルリンチ日本証券推計)。
• 家計調査からすると4千万円以上貯蓄の世帯主の 2/3 が 60 歳 以上。– 一人平均を日銀 1100 万円、総務省 540 万円と倍の違いがある。預金な
ど大半は 1.7 倍だが、株式・株式投資だけが 3.25倍となっている。
2.社会階層とは?
• 類似の価値、ライフスタイル、興味、行動を 共有している個人または家族をカテゴリー化 できる社会のなかの相対的に永続し均質の部 分と定義できる。
• クラスの成員は地位グループとしてあるライ フスタイルを期待される。
3.1 不平等システム 土地-不動産システム 3.2 社会階層変数
宗教・家族・教育・経済・政治・法律
8
世界各国の中流意識(林知己夫『数字からみた日本人のこころ』徳間書店 1995 p53 )
3.社会階層を決定するも のは何?
• (1) 職業 (2) 成績
(3) 相互作用
(4) 所有
(5) 価値指向性
(6) クラス意識
0 20 40 60 80 100 120
下位 中位 上位 全体
72.3
97.4
119.5
97.5
47.2
68.7
102.5
73.6
1979年 1997年
, 2001
社会階層グループ別 高校外での学習時間(刈谷 論座1月
0 10 20 30 40 50 60
37
28.4
24.8 51.3
43.1
33.5
1979年 1997年
, 2001)
社会階層グループ別 落第しない程度成績でよい率(刈谷
0 10 20 30 40 50
下位 中位 上位
40.2 42.3 43.1
34.5 34.9
44.4
現在志向 将来志向
)
階層別 自分にはすぐれたところがあると現在志向率 (刈谷
%
生活分野
ごとの「社会階層の差がある」
と思う率(かっこ内は「大変ある」の数字)博報堂生活総合研究所 (2002 調査)
1 位 92.1% ( 59.7% )住まい
2 位 82.7% ( 33.7% )国内旅行で泊まる旅館・ホテル 3 位 79.7% ( 49.3% )ブランドもののファッション 4 位 79.5% ( 37.0% )外国旅行で泊まるホテル
5 位 75.9% ( 30.7% )住まいのある地域
6 位 75.3% ( 27.1% )外食での食堂・レストラン 7 位 71.8% ( 30.7% )自宅で使っている自動車 8 位 69.6% ( 23.0% )日常の衣生活
9 位 69.6% ( 26.6% )大学
10 位 60.8% ( 15.9% )言葉づかい(とくに敬語)
11 位 60.3% ( 16.2% )小中学校
12 位 60.0% ( 14.0% )家族の交友関係
• 樋口美雄ほか『日本の所得格差と社会 階層』日本評論社 (2003) 所収の
• 関沢英彦「消費の現場と階層意識」に
詳しい解説がある。
地位の結晶化
• 中央公論 2000 年 11 月号 論争「不平等 社会か日本?」 盛山和夫,佐藤俊樹 6 社会階級は変化しているか?
ssm 調査参照のこと(社会階級の大きさ)
• 地位の測定 SSM 調査
– (1) 単一項目
職業 日本の SSM 調査 – (2) 多項目
日本の場合 SSM 調査
– (3) 郵便番号コード 日本も番号が細分化され
地位の結晶化?
• (2000 年調査の東大生の家庭の平均年収は 1016
万円,東京大学学生生活実態調査 2000 年,日 本経済新聞 ,2002 年 7 月 22 日による,男子学生 平均 989 万円,女子学生平均 1115 万円,年収 950 万円以上 55.3% , 1550 万円以上 10.4 %)
*戦後しばらくは、大学は比較的開かれた場で
あったが、今は、いい大学は金持ちに開かれて
いるといっていいだろう。
7 社会階級セグメントへの マーケティング
• ヴェブレン『有閑階級の理論』岩波文 庫,ちくま学芸文庫
• 衒示的浪費の法則
• conspicuous 衒示的=顕示的,みせびら
かし等
衒示的浪費の法則 の基本的構え
《保守主義》
《男らしさ:武勇》
《幸運を信ずる心・宗教》
衒示的浪費の法則
(1) 衒示的閑暇 《趣味の金銭的基準》《
衒示的閑暇としての礼儀作法 》( 第3章 衒示 的閑暇)
(2) 衒示的消費
(3) 代行的閑暇(妻や子供)
(4) 代行的消費
(5) 制作本能(本物志向)
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ヴェブレン『有閑階級の理論』のま とめ
(0) 富を所有することは、尊敬されるための確固とした基盤を獲得 することである。
(1) (野蛮以降の)人間は金持ちであることをひけらかしたがる。
(2) 金持ちであることをひけらかすのは
(a) 閑のあることを示す。=>顕示的(衒示的、みせびら かし)閑暇
(b) もの、金で示す。 =>顕示的消費 の2つの方法が基本である。
(3) 顕示的閑暇は働かなくていい時間がたっぷりあることを示す。
礼儀作法、政治、軍事、宗教、スポーツ、学問などにあら われる。 政治、軍事、宗教、スポーツ、学問は職業としても有閑階 級のものである。
それらができるということも閑暇であることを示している
。
(4) 顕示的消費は顕示的閑暇に比べ直接的に金を持っ ていることを示す。
(5) より、金持ちになると、本人以外に家族、召使な どが閑暇である状態を示すこともある。《代行的有 閑階級》の《代行的閑暇》である。
(6) 同様に、《代行的有閑階級》の《代行的消費》も ある。
(7) 《代行的有閑階級》であるかどうかは、気を使わ なければならない主人がいるかどうかでわかる。例 えば、妻が《代行的》ならば、なんらかの意味で主 人への服従を示す行動をする( ex. 帰宅時間にはほ ぼ家にいるようにする)。主人というよりも《家》
全体に対する《代行》である場合も増えている。
22
(8) 階級を下るとすぐに、顕示的閑暇はなくなる。
(9) 中層階級の下層では、主人の顕示的閑暇がないのに、代行的閑暇
(と代行的消費)がある場合がある。《皮肉な現象》
(10) 代行的閑暇のほうが上の階級でなくなり、代行的消費がずっと下ま である。
(11) 見せびらかしの消費はまず主人になくなり、子供、最後に妻が残る。
(12) 都市化が進み、都市間の流動性が高まると、顕示的閑暇よりも、顕 示的消費のほうが多く見られるようになる。それは、付き合いが浅 くなり、貯蓄があるとか教養があるとかは見えにくくなり、直接わ かる顕示的消費で示すことになる。たとえば、「おごり」などは、
お金を持ってることを示す簡単な例である。
(13) 「制作本能」によって、無駄はいけないことだという考えが生じる。
そのため閑を示す、顕示的閑暇はあまり好まれなくなる。(これは
、産業革命以後の風潮ともいえるが、中層階級のもっている価値観 ともいえる)
(14) 精神的な幸福を与える無駄で虚栄の支 出は不可欠である。
(15) 社会階級の一つ上の階級の(消費の)
慣習を真似る。
(15') もし、階級の区別がはっきりしない
社会では、名声や世間的体面の基準、消
費の標準はすべて最高の社会的金銭的階
級の慣習、思考習慣の模倣となる。
《趣味の金銭的基準》
(1) 普通は世間のことを気にして消費している。
(a) 確立された世間の習慣に従う
(b) それはおかしいとの忠告や批判は避ける
(c) 時間や労力の使い方が世間の基準にあうようにする (d) 消費する財貨の種類(製品クラス)、分量、等級
(ブランド)が世間の基準にあうようにする
(2) 世間の基準に従った贅沢は、人の目につくものについては 当然だが、下着などの目につかないものでも贅沢がある。
(3) 世間の基準に従うようにする顕示的浪費は、世間の目によ ってどんどん絞られていき、ある一定の基準が生じて、つ いには正統的な消費の基準となる。
(4) このように生じた慣例の発達は、経済生活に直接影響する だけでなく、その他の行動に対しても、間接的な影響を及 ぼす。つまり、何がいいか、何が悪いかについての習慣的 な見方にも影響する。名誉ある浪費の基準が、直接、間接 に義務の感覚、美の感覚、有用性の感覚、敬神(信心)や 儀式の感覚、真理の科学的感覚にも影響する。
次の本も参考にせよ
ジュリエット B. ショア(森岡孝二監訳) 2000. 『浪費 するアメリカ人-なぜ要らないものまでほしがるか』岩波 書店
基準が隣人や同じ階層ではなく,上のレベル(中の上もしく はテレビにでてくる人たち)になっている。そして,服装
「大学」を例にとって、考えて みよう。
(1) 大学に行く人たちは、代行的閑暇を示していると言える。
(大学名そのものが重要なら、代行的消費)
(2) お勉強も、代行的閑暇において行うものである。
(3) ある程度、上のものの価値観に従うのも、躾の一つのタイプ である。これは典型的な代行的閑暇。
(4) ヨリ上層の階級のものは、 (3) をしっかりし、主人の価値観に 従うようになっているので、お勉強をする態度も形成されてい る。
(5) しかも、上層ほど、お勉強自体にもいろんな方法を使うこと ができる。例えば、家庭教師、塾、参考書、学習用品など。
(代行的閑暇と代行的消費)
(6) さらに、いろんな所にいったり、経験を積む機会も多いので
、知識を総合化しやすい。(代行的閑暇)
(7)(2) ~ (6) によって、上層のほうが「お勉強」をよくする。
下層の場合
(8) 下層のほうは、(とくに妻がパートで働いている場合な ど)親は自分のことで手一杯であり、しつけをしっかりし ない。しつけらしいことをいっても、それは回数も少なく
、丁寧でない。(代行的閑暇、顕示的閑暇がない)
(9) 下層の方は、それゆえ勉強をしたり、自分の興味を伸ばす よりも、時間を潰している子供が多い。(代行的閑暇では ない、単なる閑)
(10) 金がある場合は塾に行かせているが、塾ならどこでもい いという決め方をしていたりする。(代行的閑暇または代 行的消費)
(11) 学校では、言葉を聞いたり、本を読んだりする学習が重要 だが、どちらもあまり身に付いていない。(代行的閑暇)
(13) 大学にはいいところにいく機会も少ない。都会の学校へも行 かせることができない(金銭的理由)。それでも大学にいか せることもある(代行的閑暇)。
(14) 大学にいっても、したらいいという代行的閑暇的活動もしく は顕示的閑暇の活動はせず、ただ、友人と話をしたりする程 度の、暇つぶしレベルの活動しかしない。本来の代行的閑暇 は、勉学、スポーツ、芸術などの活動に参加することであろ う。ますます、知的レベル、教養レベル、人間の幅がせばま る。そのほかに、クラブ活動での部長など人間関係的な面で のレベルをあげることも代行的閑暇になるだろうが、そうい うことをなるべく避けるのが、意欲の低い人たちである。
(15) このように、低い層の親は、学校でしつけをやると思って いるようであるが、学校でするのは集団活動で必要なレベル のしつけである。大学ではしつけはしないものだと考えない 親もいる。(日本では勘違いの親はかなり広く分布している。
説明してもわからない場合はかなり下のほうといっていいだ ろう。)
•
*ヴェブレンの有閑階級の理論は有閑階
級だけの理論ではなく、広くすべての
階級に言及した理論である。現在、相対
的にレベルが上がってきた日本にとっ
て、重要な社会の見方を提供している。
顕示的閑暇の例
• (1) 長い髪の毛 → 働かなくてもいい
よ
(2) 長い爪 → 〃
代行的閑暇と行儀作法 p52-
とはいえ、礼儀作法は、それを行うものにとっても、それを見 ているものにとっても、このような固有の効用をもっているけ れども、しかし、礼節の本来的な正しさについてのこのような 感じは、行儀作法や躾けの流行の直接の根拠にすぎない。
その究極の経済的根拠は、それなくしては作法が得られないよう な閑暇、すなわち時間や労力の非生産的使用の名誉ある性格の なかに求められるべきである。よい作法や知識は長きにわたっ てつづけられる習熟によってはじめて出来上がるものである。
洗練された趣味、作法、および生活習慣は、上流家族の絶好の証 拠である。なんとなれば、よい躾けというものは、時間、熱心
、費用などが必要であり、したがって時間なり精力なりが、仕 事で手一杯になっているものは、それをりっぱに身につけるこ とができないからである。よい作法を知っているということは
、育ちのよい人の生活のうち、まわりの人の目の前で行われな い部分が、なんら利得の効果をもたない手芸を身につけるため
つまり作法の価値は、それが有閑生活の証拠
物件であるということのなかにある。それ
ゆえに、反対にいうと、閑暇は金銭的名声
をうるための因習(あらためられずに続い
ている古い習慣)的な手段であるから、誰
でも多少とも金銭的に見苦しくない生活を
望むものにとっては、ある程度、行儀作法
に通ずることが必須のことである。
.... 逆にいえば、収益その他、直接に有用な目的にはまったく 役立たない儀礼にひじょうに練達しており、またそのよう に、ひじょうに習熟している証拠が明白であればあるほど
、それらのものの獲得にともなう時間や物量の消費はます ます大きくなり、また、それにともなう名声はますます大 きくなる。
したがって、よい行儀作法に練達しようとする競争のもとで は、礼節の習慣を涵養(だんだんにやしない育てること)
するのに多くの労苦が払われることになる。かくして、礼 節の細目が発達して包括的な規律を形作るようになり、名 声の点で人から後ろ指をさされまいとするものはすべて、
これに従うことが必要となる。従ってまた他方では、礼節 がそれから派生するこのような衒示的閑暇は、しだいに、
立ち居振る舞いについての労苦の多い訓練とか、いかなる 消費品目が上品であり、いかなるものが、それらのものを 消費する上品なやり方であるかについての趣味や区別にか
34
これに関連して注目に値することは、抜け目のない 模倣なり、組織的な訓練なりによって、 ... 作り出 すことができるという可能性が ... 教養ある階級を 任意に作り出すのに重要な意味を持つようになっ たことである。 ... けっこう多くの家族なり家系な りの場合に、良家の生まれの一足飛びの進化が達 成される。 ...
そればかりでなく、上品な消費の品目なり仕方な りにかんする最近の儀礼的な公認基準に対する適 度の合致の程度というものがある。これらの点の 理想に対する合致の程度の、人々の間の格差は、
互いに比較することができる。そして、人々は、
行儀作法なり、育ちなりのなりの累進的な度盛り
(どもり:温度計などの、度数を示す目盛り)に
従って、ある程度まで正確かつ効果的に格づけさ
れ、部類分けされることもできよう。 ...
• 渡辺和博とタラコプロダクション『金魂巻』
主婦の友社 (1984) → ちくま文庫(絶版)
• ○ 金、○び
• ポール・ファッセル『階級 平等社会アメリ − カのタブー』光文社文庫
• どのようなものをもつか
• (1) 衣服 (2) 家具 (3) レジャー
8 ハビトゥス
• ブルデュー『ディスタンクシオン Ⅰ
・Ⅱ』藤原書店
• その解説
• 石井洋二郎『差異と欲望』藤原書店
• 趣味と階級
「正統性」(石井 p.53 )
• 「自分にとって親しみ深いモデル」との日常的接 触を通して獲得された文化資本は、いかにも貴族
にふさわしい「良い趣味(ボン・グー)」を構成 することになるのだが、ここで確認しておかな ければならないのは、良い趣味なるものの正統
性はなんら客観的根拠に裏打ちされたものではなく、あくまでも文化的階級闘争の(一時的な)
結果として、勝者である支配階級が敗者である被 支配階級に「押しつけ」、かつ被支配階級によっ
て誤認=承認された、恣意的な表象にすぎないと
いうことだ。(註.ラルフローレン)
• p76
• したがって3階級への分割は主とし て経済資本(収入によって測定され る)と文化資本(学歴や消費行動によ って測定される)を合わせた「資本の 総量」によって規定されることになる
。
• 生活条件の集合を大まかに種別する基 本的な差異は、経済資本、文化資本、
それに社会的関係資本も加えて、実際
に利用しうる手段や力の総体としての
資本の総量に由来するものである。さ
まざまな階級(そして階級内集団)は
こうして、経済資本においても文化資
本においても最も恵まれたものからこ
れら両方に貧しいものにまで分かれて
ゆくことになる。
40
• たとえば支配階級の最上部に位置する自由業
の人々は、一般に「収入も学歴も高く、支配階
級(自由業または上級管理職)の出身である率
がきわめて高く (52.9%) 、物質的な財であれ文化
的財であれ大量に享受し大量に消費する」のに
たいして、中間階級の下層部に位置する事務労
働者(事務員と商店員をまとめた総称)の人々
は、一般に「学歴が低く、庶民階級または中間
階級出身であるケースが多く、財を享受する量
も消費する量もきわめて少ない」。こうした対
立は、庶民階級に属する熟練工や単能工、さら
には「最も低収入であり、学歴もなく、そのほ
とんどが庶民階級の出身である」単純労働者や
農業労働者と自由業とのあいだでは、もっと顕
著になるであろう。
経済資本と文化資本の割合が
「資産構造」
• 資本量大・経済資本優位 大工業実業家や大商人
• 資本量大・つりあい型 自由業、私企業および公 企業・官庁管理職 , 上級技術者
• 資本量大・文化資本優位 高等・中等教育教授、
芸術制作者
• 資本量中・経済資本優位 職人や小商人
• つりあい型 その他
• 文化資本優位 文化媒介者や小学校教員
• 資本量小・経済資本優位 自営農
• その他は資本量の大小で職工長→熟練工→単純労
経済資本優位
文化資本優位 つりあい型
資本 量大
高等・中等教 育教授、芸術 制作者
自由業、私企業 および公企業・
官庁管理職 上級, 技術者
大工業実業家 や大商人
資本 量中
職人や小商人 その他
職工長
↓
熟練工
↓ 単純労働者・
農業労働者 文化媒介者や小
学校教員
資本 量小
自営農
• 支配階級:工業実業家、大商人、公企業・官庁管 理職、私企業管理職、中等教育教授、高等教育教 授、上級技術者、芸術制作者、自由業
•
• 中間階級:職人、小商人、事務員、商店員、販売 系一般管理職、事務系一般管理職、一般技術員、
小学校教員、秘書、医療保険サービス従事者、
工芸職人、文化媒介者
• 庶民階級:単純耕作者、農業労働者、自営農、単
純労働者、単能工、熟練工、職工長、家庭使用人
趣味と高等教育
• 社会的位置
• ↓
• 階級的ハビトゥス
• ↓
• 個人的ハビトゥス
• ↓
• 慣習行動
• ↓
• ライフスタイル
正当的趣味/中間的趣味/大衆的趣味
• 音楽
• <正当的趣味>平均律クラヴィーア曲集、フ ーガの技法、左手のための協奏曲
• <中間的趣味>ラプソディインブルー , ハン ガリー狂詩曲
• <大衆的趣味>美しき青きドナウ、ラ・トラ
ヴィアータ、アルルの女
絵画
• ゴヤ/ユトリロ、ビュッフェ、ルノア ール、ゴッホ
• その他、写真
ゴヤ (1801-1803, スペイン ロココ、ロマ
48
ユトリロ (1939) Debray à Montmart
re
小沢雅子『新「階層消費」の時 代』日本経済新聞社 (1985) (朝
日新聞社文庫)
• ストックを持っているものと持ってい
ないもので階層の違いがあり消費スタ
イルの違いがあるという指摘がある。
電通総研『「豊熟」消費』日 本経済新聞社 (1989)
• 電通は階層とはいっていないが金持ち層 をターゲットにした分析をしている。
• この本でもストックリッチの余裕度が他 と違っていることがわかる。もうひとつ 普通のレベルなのにやたら消費しまくる 一群の人がいることである。
• バブル期の調査。
電通総研『新ぜいたく主義宣 言 − クオリティ確信派の誕 生』日本経済新聞社 (1994)
• マーケットを考えると金持ち層にター
ゲットを当てた方がいいことはわかっ
ている。
• 経済学の「価格弾力性」にも注意する こと。
• 家計調査等でかならず品目別データが
でている。
階級・階層についての 最近の参考文献
• 「中央公論」編集部編『論争・中流崩壊』中公新書ラ クレ (2001)
• 2000年にまきおこった中流・不平等の論文
・記事をまとめたもの
• 佐藤俊樹『不平等社会日本』中公新書 (2000)
• 原純輔・盛山和夫『社会階層−豊かさの中の不平等』
東京大学出版会 (1999)
• 『日本の階層システム』1〜6 東京大学出版会 (2000)
• 樋口美雄ほか『日本の所得格差と社会階層』日本評論 社 (2003)
2節 文化
• 【文化/文明】 culture/civilization
• 用法は国によって違う。ドイツでは Kultur が精神文化
、 Zivilization が物質文明を意味し、前者を高く後者を
低く見る傾向がある。
• これに対して英米では culture は生活様式 (way of life) の 意味。その中で特に高度のものを文明とよぶが、その 基準は固有の文字を持つことなどがあげられる。
• 日本の場合には、戦前はドイツ流の使い方、程度の高 いものに限って用いた(文化人、文化住宅等)が、戦 後は英米流の使用がひろがり、高低に限らず生活様式 をさすようになり、特に文化人類学では、もっぱらこ の用法である(縄文式文化、ピグミーの文化など)。
• 知恵蔵 1992
1 文化的価値
• (1) 多文化マーケットにおけるマーケティ
ング
– 日本単一 ?
– 北米 カナダ・米国・メキシコ
• (2) 北米文化
– 1992年 EC
– 北アメリカマーケティング圏
2 文化とはなにか
• 自己と空間の感覚
• コミュニケーションと言語
• 衣服と外見
• 食べ物と食習慣
• 時間と時間意識
• 関係(家族、組織、政府など)
• 価値と規範
• 信念と態度
• 精神過程と学習
• 仕事習慣と実践
文化とは?(北山 , 2002?)
• 素朴理論、イメージ、スクリプト、世 界観といったシンボル資源のプール
– 民族、宗教など、ある一定の歴史の一時点
、あるいは、集団の公の言説、監修、維持 を構成し、
– 歴史的に形作られ、受け継がれ – 各集団に系統的に分布し、
– 各集団内では、不均一に分布している。
• (1) 価値
– 価値は共有された信念または個人に内面化された集 団規範
– 規範は個々の成員のための行動規則に関するその集 団の合意としてある信念。
• (2) マクロ文化
– 社会全体または市民の大多数にあてはまる価値・シ ンボルのセット
• (3) ミクロ文化
– 宗教、民族、その他下位分割の価値・シンボルの セット
3 いつ人は自分の価値を獲得す
• (1) 社会化 るか?
• (2) 文化は学習される
• (3) 文化は教え込まれる
• (4) 文化は社会を満足させる反応に報酬を与え
る
• (5) 文化は適応的
4 文化はいかに消費者行動 に影響を与えるか
• (1) なぜひとは製品を買うか
– 消費者は製品を買って、機能、形式、意味
を得る。
(a) 機能
• 洗濯機 − 衣服を綺麗にする
• 食べ物 栄養になる −
– 期待が充たされたならば、消費者満足が高くなり、
ロイヤルティが生じる
• 洗濯機
– ヨーロッパ文化 高能率、高負担1000ドル以上 ドイツの MIEL
– 北米 失敗→数百ドル、高い品質を望まない – 引っ越しが多くて、修理のレベルがよくない – →簡便なものを選ぶ
– →使い捨て :壊れたり、引っ越しには捨てる
• 文化的文脈が製品の機能の意味を決める。
• 清潔とは何か。
(b) 形式
• 寿司 日本は生 北米は生はだめ
• 前面洗濯機 ヨーロッパはいいが、米
国はだめ
(c) 意味の象徴
• ほうれん草は「力」と結びついている。
• 食べ物は慣習的行動と結びついている。
– 正月 雑煮 こどもの日 − − 柏餅
• →記号論・製品の記号論
• クリスマスの意味づけ
• →構成主義
(2) 消費の構造
• よい教育、健康 よいコンピュータ、
よい音楽
(3) 個人の意思決定
• 金持ち・貧乏人 価格
• 値切り交渉 文化による
• 不満・満足の表明 そば屋の出前
(4) コミュニケーションと消 費のイデオロギー
• テレビ番組
• SECULAR 世俗的消費 うらみ・ね
たみ
• SACRED 聖なる消費 愛・栄光・統
合 技術的に作られた物財に興味がな
い
5 核的価値がどのようにマ
ーケティングに影響するか
69
北山忍「文化・自己・幸福感」実験社会心理学 , 43
課題 独立 協調
個人レベル 自尊心 関係性
影響 調整
primary control secondary cotrol
達成 (失敗)回避
関係レベル 関係性の選択 割り当てられた関係性の維 持
相互の自尊心の維持 相互の困難の回復
(賞賛) (互助、思いやり)
関係性の更新 対人的責任の維持 社会レベル プロテスタントの倫
理 仏教
メリット (機会の
均等) 年功 (分け前平等主義)
米国の価値
• 物質的よさ→物質主義,清潔さ
• 2値的価値
• 仕事は遊びより重要
• 時は金なり
• 努力、楽観主義、起業家精神
• 自然の征服
• 平等主義 達成の機会均等
• 博愛主義
日本の価値
• 形中心
– 道(剣道、柔道、華道、スポーツのフォーム重視)
– 員数主義(数さえあっていればいい)
• 結果の平等
• 恥の文化 (vs 罪の文化 )
• うちーそと
• こどもは無垢
– 赤ちゃん殿下 – 過保護文化
– おたく文化・永遠のこども
• 流れに従う(新奇性) 丸山眞男
• http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/books/2001_1.html#
バーンステインの仮説
• 言語生活が精密コード(行動の統制よ りも精密な理解を与えるための説明的 発話)的な家庭に育った子どもは熟慮 的になり、それが学校教育への適応に もプラスにはたらくので、… p23
社会階層説
東洋『日本人のしつけと教育』
東京大学出版会 1994
• ところが同じ時期の日本では、大部分の人は地域と 地域社会に代々結ばれて、勝手に職業や住み処を移す ことはできなかった。したがって日本では、同じ地域 社会の人との結びつきは運命的で、しかもその結びつ きが制度化された隣保組織によって、さらに補強され ていた。このような組織の中では、どうしても、誰か が特別な利益を得れば誰かがその分損をするというゼ ロサム原理がはたらくので、突出への抑制が必要にな る。衝突を回避し横並びを心がけるのは、こういう状 況のもとで必要なことだった。しきたりの尊重も、入 り組んだ社会関係をスムーズに動かす知恵でもあった。
「分け前的平等主義」 アメリ カ「規範的平等主義」
• そこで問題にされているカテゴリーに関して同一カ テゴリーに属するならば、平等な分け前が保証され るべきだという暗黙の前提に立つ。
例.同じ日本人なのに、同じ大学生なのに、同じ年 度に入社した社員なのに
同時に、カテゴリーが違えば平等でなくても仕方が ないという暗黙の容認を含む。
アメリカ「規範的平等主義」
ひとりひとりの人権の保障という考えに立った平等 思想は、まず権利やルールを平等にし、その上で公 正な競争を期待する。
日本人の特徴
• 日本には、分け前的平等主義と規範的平等主 義の両方が働いている。
• 「自発的役割人間」
選択の限られた状況を受容することで、役割 が個人のアイデンティティの中に組み込まれ 自発化する。
• 「分に応ずる」「らしく(たとえば学生らし
く)あれ」「忠孝」
• 日本の行動規範-人との関係や人への配慮を 重視し、役割への忠実性を求め、自己主張を 抑制する傾向
• 米国の行動規範-個人としての諸資質をでき
るだけ充分に発揮することを重視し、個人と
しての一貫性と信頼性を求め、自己主張を励
ます傾向をもった
いい子アイデンティティ の 違い
• 日本型:共生型いい子像 暖かい人間 関係、きまり・しつけ、自己犠牲の精 神
• 米国型:独立型いい子像 公平・公正
・自由・平等、自立心・自己責任、主
張、意志
気持ち主義(日本)
• 人の気持ちを重視し、従って気持ちを 知ろう、読もうとする傾向。
例.ドキュメント、事件
->先回り配慮
いうことを聞かせるためにあげ る根拠の日米比較
• 日本(%) 米国
(%) 親としての権威 18 << 50
規則 15 16
気持ち 22 >> 7
結果 37 >> 23
その他 8 4
母親の発達期待
•
日本(%) 米国
(%)
•
学校教科的能力
1.241.36
従順 2.16 >> 1.97
行儀
2.49 >2.30 感情の制御 2.49 >> 2.08
身の回りのことの自立 2.02 >> 1.86
社会的能力
1.86 << 2.18 言語的自己主張 1.73 << 2.17日本の教育ママ
• 「教師」の役を演ずるのでない。教材を 与え、塾に通わせ、家庭教師を雇い、勉強 を励まし、遊んでしまわないように監視し
、トレーナー、そして悪くすると鞭撻役を 演じる。
滲み込み型 教えない母親(日本)→環境 は豊かに 文字環境
(米国:教え込み型)
日本
• 学習者が自分の興味や生活的な必要によって行 う自発的な活動の中での偶発学習や試行錯誤と 尊敬や愛情の対象となる親や教師や先輩のやり 方を身につけようとする模倣(モデリング)と
、それを何回も繰り返えしてそれに習熟する努 力とが、滲み込み型の学習を担う。 p116
滲み込みは接触伝達だから、「一緒にいる」こ
とが重要になる。→ベタベタする
教え込み(指示型)
• 教え込み(指示型)は、組織的・論理的に構成することが できるから、明確な目標を達成するのにはより効率的であ る。かつ、ただ形の上でできるようにするだけでなく、
どうしてそうなるのかという仕組みに入り込んで教える ことができる。近代社会が要求する知識や技能を教えるの に、教え込みモデルが主となるのは当然である。
問題:その論理性や効率性が、思考や行動に対するコン トロールを効かせ過ぎるということがある。教育は未知の 未来に対して備えるという一面をもつから、たとい現在の 最善のものであっても、そこにあまりきっちりとはめ込 んではいけない。…いつでも「はみ出し」の可能性を残し ておく必要がある。コントロールが効きすぎると、はみ 出しがむずかしくなる。
権威の高い方から低い方に流れ、学習者の受身性がモデ ルに組み込まれる
道徳意識
• 律法主義(欧米) vs 気持ち主義(日本)
•
法によって公正を求めることを目的とする「裁判 所モデル」
• 共感的に支え合おうとする「家族共生モデル」