富山大学

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シンポジウム・講演会 人文学部公開講座 教員の著書 大学院での教育 地域貢献 平成29年度にむけて

富山大学

人 文学部・ 人 文科学研究科

研究活動報告

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 人文学部では、哲学・歴史・文学に代表される人文学の基礎研究をはじめ、心理学や社会学のように現代 社会の諸問題を扱う応用的な研究もされています。また、地域の特性を活かした東アジア研究も盛んにおこ なわれており、近年その比重は大きくなっています。

 ここ数年、学部の方針としてシンポジウムを開催し、研究者交流を活性化することを一つの柱にしていま す。今年度は5つの国際シンポジウムを含め9つのシンポジウムと4つの講演会(うち 1 つの演者は海外 からの研究者)を人文学部の教員が開催しました。このうち 10 件は東アジア研究にかかわるものです。学 部としての取組の成果が上がってきていることから、本誌でご紹介させていただくことにいたしました。

 今後も毎年、テーマを決めて東アジア関係の国際シンポジウムを開催し、成果を本としてまとめていく予 定です。東アジアとしていますが、昨今の東南アジアへ向けられている深い関心にも鑑み、東南アジアも含 めた広い意味での東アジア研究の拠点形成を行いたいと考えております。本学部は、平成 27 年度にベトナム・

ハノイ国家大学外国語大学と部局間学術交流協定を締結しましたが、今年度は同校と外国人留学生指定校推 薦制度に関する覚書を締結し絆を深めました。また、新たにベトナム社会科学院漢喃研究院と学術交流協定 を締結しました。

 人文学部は、富山県を中心とした北陸地域の東アジア研究の拠点となりたいと考えています。また地域の 皆さまに研究の成果を還元するために、今年度から人文学部として公開講座も始めました。また教員それぞ れが知見を活かして、各種公開講座や講演会の講師をつとめたり、自治体や関係機関の委員として地域に貢 献しています。

 今後も地域に貢献する人文学部として、その使命を果たしていく所存でございます。皆様からのご提案や ご助言を心よりお待ちしています。

人文科学研究科長・人文学部長

大工原 ちなみ

富山大学人文学部・

人文科学研究科研究活動 報告 刊行にあたって

ハノイ外国語大学での指定校推薦覚書締結 ベトナム社会科学院漢喃研究院との協定締結

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 講演では、まず、日本語は、しばしば聞かれる日本語特殊 説に反して、言語類型論的に見ればきわめて普通の言語であ ることが、音韻体系や語順などを例に紹介された。次に、こ の日本語の類型論的位置づけに関する近年の知見を推し進 め、World  Atlas  of  Linguistics  Structures (Dryer  and  Haspelmath  2009) に基づき 201 言語の 450 の類型論的 フィーチャーを分析対象に、多重対応分析 (MCA) をおこ ない、フィーチャーと言語の相互関連性を統計学的に分析し た氏の最新の成果(Whitman and Ono 2016)が紹介され た。最後に、この統計学的分析の結果、日本語は東北アジア やチベット・ビルマ語族の主要部後置型言語ともっとも近い と考えられると結論づけられた。

 最新の統計学的手法を駆使し、日本語を「東アジア」の中

で捉えなおすという斬新な切り口と先進的な研究成果は、言語学、日本語学、日本語教育を学ぶ学生、他言 語専攻の学生、学内教員さらには学外からの一般市民の参加者にも大きな感銘を与えた。なお、今回は、本 講演会が、人文学部の研究の中心的柱にすえられている「東アジア研究」の一環であることに鑑み、「東ア ジア研究プロジェクト・シリーズ2」とした。

開催日時 2016年7月22日(金) 16:30 〜 18:10 会  場 富山大学人文学部1階大会議室

参加者数 学内外合計50名

講 演 者 ジョン・B・ホイットマン氏(コーネル大学教授)

富山大学人文学部 第5回言語学公開講演会(東アジア研究プロジェクトシリーズ2)

日本語に「もっとも近い」言語はどういう言語か

−言語類型論的親戚の抽出を通して−

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 人文学部ではかねてより富山県立山町と連携し、子どもた ちの健全育成に関して心理学の立場から地域貢献を行ってお り、その一環として、公開研究会・特別講演会を開催した。

 公開研究会では、立山町の小中学校における不登校予防を 支援する仕組みづくりに関して、本学部心理学の教員が提案 し、町教育委員会とともに推進してきた、『見守りの〈協働〉

を学校文化に根づかせる取り組み』が、実践事例として発表 された。児童生徒の欠席状況を学校や関係機関で共有し、そ の傾向や対策などを小中学校管理職がチームとなって話し合 う、独自の見守りシステムをとっていることの意義が確認さ れた。心理学の観点から支援体制を整備している点が、関係 者のみならず一般市民の参加者にも大きな感銘を与え、活発 な議論が行われた。

 特別講演会では、東京学芸大学の小林正幸教授を迎え、「チームで行う支援とは」とのテーマで、不登校 予防に向けての全国的取組みの例や成功の秘訣等が豊富に紹介された。

開催日時 2016年8月3日(水) 13:00 〜 17:00 会  場 富山大学五福キャンパス共通教育棟C21教室 参加者数 富山県内外より計300名

不登校予防に活かすチームでの支援

富山大学人文学部主催 公開研究会・特別講演会

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    マカオ、香港に生まれ、上海で發展をとげた Chinese  pidgin  English、いわゆる「洋涇浜英語」はピジ ン言語として有名だが、清代、露清交易の中心地キャフタで山西商人とロシア商人のあいだに用いられたロ シア語をベースとする一種のピジン、「キャフタ貿易言語(Kyakhta  trade  pidgin)」は、ほとんど知られ ていない。山西商人が用いた言語マニュアルによって、この言語の歴史的背景と特質を概観する。

開催日時 2016年8月3日(水) 14:00 〜 16:00 会  場 富山大学人文学部 1階 大会議室

講 演 者 高田時雄氏(復旦大学歴史学系教授)

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キャフタ貿易言語−北方のピジン

富山大学人文学部 中国言語文化講演会

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ラフカディオ・ハーン研究の新たな試み

−ヨーロッパ・アメリカ・日本をつなぐもの−

富山大学ヘルン研究会主催2016年度第1回国際シンポジウム

開催日時 2016年9月17日(土)  14:00 〜 16:00 会  場 富山大学人文学部3階 第6講義室

報 告 者 Rodger Williamson(北九州市立大学)、濱田明(熊本大学)、廣松勲(法政大学)、中島淑恵(富山大学)

 2016 年9月 17 日(土)、「ラフカディオ・ハーン研究の新たな試み−ヨーロッパ・アメリカ・日本をつ なぐもの−」として、富山大学人文学部第6講義室にて開催された。まず、北九州大学教授のロジャー・ウィ リアムソンが、「ヴァージニア大学のラフカディオ・ハーン関連資料」の表題で発表を行った。同大学のハー ン関連資料は、世界最大のコレクションであり、今後資料としての活用が望まれるものが多い。とりわけハー ンのメモ書きにはフランス語のものもあるので、研究者は英語とフランス語の双方を理解しながら研究にあ たるべきだとして今後の研究協力体制の方向性を示唆した。熊本大学の濱田明は、「ハーンが教えたフラン ス文学」として、東京帝国大学でのハーンの英文学講義の中で、ハーンが英文学と対比させる形でしばしば 仏文学に言及しており、当時の日本における仏文学紹介としては最初期のものであることが説明された。ま た、ハーンのそれは同時代文学についての独自の見解が披露されている点が特徴的であることが紹介された。

法政大学の廣松勲は、「マルティニックのラフカディオ・ハーン:イナ・セゼールによる再話文学」として、

かの地ではハーンの影響が今日に至るまで続いていることを説明し、ハーンの元家政婦が1人称でハーンの 思い出を語るという再話文学を紹介した。中島淑恵は、「ヘルン文庫書き込み調査からわかること−『ギリ シア詞華集』を中心に−」として、ヘルン文庫所蔵のフランス語版『ギリシア詞華集』の中に書き込みがあ ることを紹介、その箇所がハーンの作品や講義にどのように反映されているかを示した。

 本国際シンポジウムは、富山大学ヘルン(小泉八雲)研究会の活動の一環として、研究成果の公表のため に行われたものであり、本年度学長裁量経費および科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究 16K13215)の交 付によるものである。聴衆はおよそ 30 名。続く質疑では若手研究者による活発な議論が行われた。

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 2015 年に実施された大規模な学術調査の結果、北陸4県(新 潟・富山・石川・福井)では、多様な性的指向・性自認の組 み合わせや性(セクシュアリティ)の多様性について義務教 育期間中に子どもに教えること、および身近に性的マイノリ ティ(いわゆる LGBT)の人々が暮らしていることについて、

全国 11 地域の中で最も「抵抗感がある」と答えた人の割合 が高かったことが判明した。現在の日本の小中学校では「一 定の年齢に達すると『誰もが』異性を好きになる」と教えら れていることもあり、性的マイノリティの子どもたち(人口 比5〜7%と推計される)は深刻な「生きづらさ」を抱えな

がら孤立してしまう傾向が高いと指摘されている。そこで、小中学校の学習指導要領が改訂される 10 年に 1度の機会でもある 2016 年に、性的指向・性自認の多様性を念頭に置いた教育や学校の環境づくりの実践、

周囲の大人の寄り添い方について、いまだ「抵抗感」の強い地方都市でこそ考える場を設けようと、このシ ンポジウムが開催される運びとなった。

 渡辺氏からは、これまでの研究成果に基づいて実践されている中学校での教育の様子が紹介され、

「『LGBT』や『性的マイノリティ』について」学ぶのではなく、多数派・少数派の別を問わず全員が「いろ いろな性」をもつ当事者であることに気付き、自分自身や多様な生き方をしている人々について学ぶことの 重要性が指摘された。また遠藤氏からは、当事者 を意図せず傷つけた経験から支援者となった人の 実例を挙げ、特に子どもたちが抱える生きづらさ に関しては、マジョリティ側、とりわけ「周囲の 大人たち」が率先してさまざまなことを学び考え ようとする姿勢こそが状況を改善していく重要な 鍵となることが指摘された。こうした報告をふま えての質疑応答の中では、現行の制度の中で取り 組める小学校低学年向けの教育のあり方や子ども への接し方について、来場していた県内の教育関 係者や医療関係者からも活発な質問や意見が出さ れ、非常に充実した議論を行うことができた。

開催日時 2016年9月18日(日) 13:30 〜 16:30 会  場 富山大学人文学部 3階 第6講義室

参加者数 学内外合計約25名

報告・討論 渡辺大輔氏(埼玉大学基盤教育センター准教授)、

      遠藤まめた氏(やっぱ愛ダホ! idaho-net.代表)

報告・司会 林夏生(富山大学人文学部准教授)

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「いろいろな性」を富山の子どもたちと学ぶ:

先生・親・地域社会に今できること

富山大学人文学部公開シンポジウム

(8)

開催日時 2016年9月29日(木) 10:30 〜 14:30 会  場 富山大学人文学部3階 第6講義室

講 演 者 Ⅰ. 難波江仁美(神戸市外国語大学教授)、Ⅱ. 遠田勝(神戸大学教授)

 2016 年 9 月 29 日(木)、わが国を代表するハーン研究者として名高い、神戸市外国語大学の難波江仁美 と神戸大学の遠田勝による講演会が行われた。難波江の講演は、「ラフカディオ・ハーンのアメリカ−色・音・

味覚のジャーナリズム−」として、ハーンがシンシナティおよびニューオリンズで執筆していた新聞記事の 原典にあたり、未だ署名記事を書けない記者の時代から、のちの文学作品に継承されてゆくような文体が確 立されてゆく様子が丹念に紹介された。また、当時のアメリカにおけるマスコミの状況や文壇との関係につ いても言及があった。遠田の講演は、「小泉八雲と日本の民話−口承と書承の不思議な交流−」として、い かにも日本の再話文学の様相を呈している「むじな」に登場する「のっぺらぼう」が、実は我が国の文学の 中では淵源をたどることが出来ないことを紹介し、「雪女」と同じく、「むじな」もまたハーンによる自由な 創作の可能性が高いことを示唆した。

 本講演会は、富山大学ヘルン(小泉八雲)研究会の活動の一環として、研究交流の活性化と研究成果の公 表 の た め に 行 わ れ た も の で あ り、 本 年 度 学 長 裁 量 経 費 お よ び 科 学 研 究 費 補 助 金( 挑 戦 的 萌 芽 研 究 16K13215)の交付によるものである。聴衆はおよそ 20 名。続く質疑では若手研究者による活発な議論が 行われた。

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Ⅰ. ラフカディオ・ハーンのアメリカ

−色・音・味覚のジャーナリズム−

Ⅱ. 小泉八雲と日本の民話

−口承と書承の不思議な交流−

富山大学ヘルン研究会主催2016年度第1回講演会

(9)

 北朝鮮脱出後、現在韓国で執筆活動を行っている3名(イ・

ジミョン、ト・ミョンハク、ソル・ソンア)及び韓国の国文 学研究者(パン・ミンホ)1名によって、「脱北者」による 記録文学の現状と課題についてそれぞれ 30 分程度の講演が 行われた。各講演毎に、オーガナイザーの人文学部和田とも 美から、脱北者の韓国における文学活動の現状について問題 提起をし、各講演者と討論を行った。また来場者からの質問 を受け付け、和田とも美の通訳を介して講演者と直接的な対 話を行う機会を提供した。最後に来場者も含めた総合討論を 行ない、講演者と来場者が直接的な対話をし、全体の論議の 流れを和田とも美が調節した。

 脱北者自身の話を、韓国内ではない第三国である日本で直 接聞くことによって、韓国内では公にしにくい率直な意見を 聞くことができた。脱北者たちは北側で、韓国内とは全く異 なった文学的経験をしながら成長して来た。その為、韓国定 着後に文学活動を行う際に、韓国の文学に対して強い違和感 を持たざるを得ない。韓国の読者に受入れられる題材や手法 を通じて北朝鮮の現状について訴えることの困難や、北朝鮮 問題に縛られずより幅広い作品を創作したい希望について率 直な考えが聞かれた。また受け入れる韓国文壇も、全く異な る文学的背景を持った脱北者の文学作品について、とまどい を感じていることも明らかになった。この問題は亡命や難民、

移民とその定着の問題として、欧米でも広く見られる問題と 相通ずるものである。

(なおこのシンポジウムは、文部科学省平成 28 年度科学技 術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシ アティブ(特色型)」による富山大学「女性研究者による国 際シンポジウム企画・開催助成金」を受けて開催されたもの である。)

開催日時 2016年10月1日(土) 14:00 〜 18:00 会  場 富山国際会議場 205会議室

参加者数 学内外合計20名

講 演 者 イ・ジミョン、ト・ミョンハク、ソル・ソンア、

      方珉昊(パン・ミンホ)

オーガナイザー 和田とも美

北朝鮮脱出者の文学活動と韓国文壇

−「脱北者」による記録文学の現状と課題−

富山大学人文学部国際シンポジウム

(10)

 2011 年に法政大学大学院の坂本光司研究室が発表した「47 都道府県の幸福度に関する研究成果」では、

幸福度ランキングの1位は福井県、2位は富山県、そして3位は石川県という結果であった。また、日本総 合研究所による「全 47 都道府県幸福度ランキング」の 2016 年度版でも、福井県は 2014 年度に引き続き 1位、富山県は5位から3位、そして石川県は6位から5位へとランクアップし、北陸3県が上位に位置し ている。

 いずれのランキングも、社会経済統計のデータを利用して順位をつけたものであり、主観的経験としての 幸福を調査したものではない。また、幸福度ランキングの上位であることと実感としての幸福度との乖離を どう埋めるかが重要な課題として認識されてもいる。そのため、これらの結果は幸福の一側面を表している に過ぎないのかもしれないが、富山県、福井県、石川県に住む人々が、ある意味で幸福であることを示して いると言える。

 シンポジウムはまず、富山県在住の竹ノ山先生から、地域の中から見た地域の幸福という視点でお話して いただいた。続いて、富山県出身の小杉先生から、地域の外から見た地域の幸福という視点でお話していた だいた。最後に、内田先生に文化心理学の見地から学術的に地域の幸福についてお話していただいた。

 3名の先生方に提供していただいた話題を基に、経済的豊かさや労働・住環境と幸福との関係、幸福につ いての主観的データと客観的データとの関係、さらには幸福の多義性や個人の幸福感と地域全体の幸福との 一体性などについて、フロアの来場者とのディスカッションが行われ、研究として幸福を扱うことの困難さ と同時に、研究分野としての発展可能性が示された。

開催日時 2016年11月19日(土) 13:30 〜 16:30 会  場 富山大学人文学部3階 第6講義室

話題提供 竹ノ山圭二郎氏(富山福祉短期大学)「高度差4000mの幸福:ニッポン的 富山人 と富山型福祉」

      小杉素子氏(静岡大学)「ふるさとの内と外:幸福感はどこから来るのか」

      内田由紀子氏(京都大学)「地域の幸福とは何か:文化心理学からの考察」

司会・企画 黒川光流(富山大学)

幸福感の社会心理学−富山県、福井県、

石川県に住む人々の幸福感はなぜ高い?!−

日本社会心理学会第60回公開シンポジウム

(11)

開催日時 2016年11月26日(土) 13:00 〜 17:00 会  場 富山大学人文学部3階 第6講義室

参加者数 学内外合計25名

報 告 者  窪添慶文(お茶の水大学名誉教授)、

      熊本 崇(東北大学名誉教授)、

      宮崎聖明(北海道大学大学院文学研究科専門研究員)、

      水盛涼一(宮城学院女子大学学芸学部非常勤講師)

司  会 徳永洋介(富山大学人文学部教授)、

      矢野正隆(東京大学経済学部助教)

 習近平政権が現下の最重要課題の一つとして掲げる「虎 もハエも叩く」政策が官界の綱紀粛正にあることからも分 かるとおり、官僚制をめぐる矛盾の解消は中国社会にとっ て吃緊の政治的テーマであると言ってよい。そもそも中国 の官僚制は始皇帝の中国統一と専制国家の登場にともない その原型を整えたが、それまでの封建制の遺制は容易に払 拭されず、官僚組織内に蔓延る「二重の君臣関係」が皇帝 による一元的な統治をながく制約し続けた。これに対して、

隋唐帝国の成立はこうした桎梏を取り払い、宋代以降の「君主独裁制」を実質的に準備したものの、一元的 な官僚支配の完成は、皮肉にも中国政治の恒常的な低迷をもたらした。こうした官僚制度をめぐる明暗は皇 帝政治を清算しある種の近代化を成し遂げた現代中国においてすら払拭しきれず、官僚制の腐敗は今もなお 重大な政治問題となり続けているわけである。

 本シンポジウムでは、こうした事実認識をふまえ「君主独裁制」が文字どおり現実のものとなる唐代から 清代に至る時代の官僚制の構造と特質を検討するものであり、とりわけ唐の玄宗朝に編纂された『六典』の 成立と受容に関わる問題に焦点を合わせたのも、この書物の内容が官僚制とその運用に関する基本理念とし て中国専制国家が終焉を迎えるまで絶大な影響力を持ち続けたからにほかならない。もとより議論の内容は 報告者の専門分野を反映して多岐にわたるものとなったが、そのなかで『六典』が構想した官僚制のあり方 が各時代の要請に応じてそのつど読み替えを加えられ新たな生命力を与えられたばかりでなく、その際には 決まって異民族政権の介在が重要な役割を果たしていることが改めて浮き彫りになった。このことは中国文 化の持続性とは実は異文化との相剋・緊張を通じて保たれてきた事実を官僚制の側面から改めて明らかにす るものにほかならない。

 以上は過去 6 年にわたり続けてきた中国史に関する研究シンポジウムの一環をなすものであるが、今回 の企画では学界の第一線で活躍する多数の研究者にとどまらず、新たな展開として他大学の大学院生が複数 参加して議論に加わってくれた。これは人文科学研究科における大学間交流という点でもささやかながら一 つの成果と言えるだろう。

中国専制国家と官僚制

−「六典」的世界の形成と変容

富山大学人文学部シンポジウム

(12)

 漢字文化圏におけるこの 100 年は、言語・文化の点から見ると、それまで埋もれていた新資料・新事実 の発見と、それらを「学」として確立して行く時代であった。甲骨文字、敦煌文献、訓点資料、韓国釈読口 訣・点吐口訣資料、ベトナム漢文訓読現象の発見や、訓点語学会、韓国口訣学会、喃遺産保存財団の設立な ど。特に近年は情報通信技術が飛躍的に発展し、漢字文化圏におけるこれらの言語・文化資料や「学」を大 規模かつ短時間で見渡せるようになった。一方で、これらを相互に比較・分析したり、実際に手に取る「文 字」そのものを情報通信技術でどのように処理していくのかということは、いまだ十分であるとは言えず、「漢 字文化圏の 100 年」に続く「+」に託せられた重要な課題である。

 本シンポジウムは、漢字文化圏の言語・文化研究を長年進めてきた富山大学人文学部と、ベトナムの漢字・

字喃文献の整理・研究を行ってきたベトナム社会科学院漢喃研究所とが連携することで、このような課題に 立ち向かっていく出発点となることを目ざして企画したものであり、この成果を踏まえて両機関は 2017 年 3月に学術交流協定を締結した。

(本シンポジウムは富山大学人文学部教育研究基盤経費(傾斜配分経費)による)

開催日時 2016年11月27日(日) 9:30 〜 16:00 会  場 富山大学人文学部3階 第4講義室 参加者数 23名(パネリストを含む)

パネリスト

グエン・トゥアン・クオン(ベトナム社会科学院漢喃研究所・所長)

「ベトナム古典文献における漢字・チュノム文字双存現象」

チン・チュン・ズオン(同研究所拓本研究室・副室長)

「漢・喃語辞典における型と特徴について」

グエン・ティ・オワイン(同研究所・准教授)

「ベトナムの漢文訓読からみた『日本霊異記』」

高田智和(国立国語研究所・准教授)

「東アジアの文字と文字コード」

通訳・コメンテーター 清水政明(大阪大学・准教授)

司  会 小助川貞次(富山大学人文学部・教授)

漢字文化圏の100年+

富山大学人文学部国際シンポジウム

(13)

 「LGBT」という言葉は今や多くのメディアにとりあげら れるようになったが、当事者が直面する社会的課題にはいま だ容易ならざるものも多い。そこで今回のシンポジウムでは、

日本と韓国、都市と地方の現実を多角的に比較する事で、そ れぞれに残されている深刻な問題の現状と、ありうべき「変 化」のための課題を論じた。

 日高氏による報告では、これまで全国のゲイ・バイセクシュ アル男性を対象に実施されてきた豊富な調査データをもと に、富山では特に「結婚へのプレッシャー」「カミングアウ トに関すること」「家を継ぐこと」に対するストレスを感じ る割合が全国に比べて多い、という傾向が指摘された。また、

学校教育でいまだに性的マイノリティの存在が不可視化されたまま、当事者の自尊感情が深刻ないじめや孤 立を通じて傷つく状態が続いており、このことが当事者のメンタルヘルスに及ぼすネガティブな影響につい ても言及があった。

 林報告では、日本や韓国、台湾といった東アジアの諸地域において、形はちがえどそれぞれに性的マイノ リティに対する「ヘイト」行為があることを示し、カミングアウトした当事者のみならず、当事者を支援す る活動にたずさわる人々も周囲から孤立してしまうリスクが存在することを示した。

 韓国からこのシンポジウムのため来日されたイ・スンヒョン氏からは、韓国における根深い社会的偏見や 反同性愛の主張を強める保守系キリスト教団体の行動についての紹介につづき、そうした環境の中であれば こそ性的マイノリティを支援する団体が徐々に連帯を 強めていった過程や、当事者の子を持つ親の会の積極 的な取り組みについてなど、詳細な報告が行われた。

このような韓国の民間支援団体に関する紹介が行われ たのは日本で初めてのことであり、このシンポジウム をより意義深く貴重なものとすることができた。

開催日時 2016年12月10日(土) 14:30 〜 18:00 会  場 富山大学人文学部 3階 第6講義室

参加者数 約60名

報告・討論 日高庸晴氏(宝塚大学看護学部教授)、

      イ・スンヒョン氏(韓国レインボー財団理事)

報告・司会 林夏生(富山大学人文学部准教授)

性的マイノリティ(LGBT)をとりまく 社会的環境に『変化』は起きているのか?

富山大学人文学部公開国際シンポジウム

(14)

 日本語は、使用人口で言えば、世界第8位の大規 模言語であるが、国連の公用語でもなく、その地位は、

我が国の国力に比べてなお低い。国際社会において、

日本と日本人の存在を高めるカギは、日本語のプレ ゼンスを高めることにかかっている。

 本シンポジウムは、これまで実施してきた3回の 国際シンポジウム:① 2011 年1月8日(日)富山 大学人文学部国際シンポジウム「多言語化する「地

方」」、② 2013 年 12 月8日(土)富山大学人文学部国際シンポジウム「世界のなかの日本 世界のなかの 日本語」、③ 2014 年 12 月7日(日)富山大学人文学部国際シンポジウム「東南アジアにおける教育拠点 の形成と人文学的「知」の応用」をもとに、留学生や移動労働者を送り出す側のアジアの研究者と受入社会 の側にいる日本の研究者とが、「日本語」に注目し、その教育の現状や交流に関する分析をおこなった。そ して、その習得によって、国家や地域、民族や文化に対するまなざしがどのように変容するのか。

 ・日本語を学ぶきっかけとその時期

 ・日本語を学ぶことで日本への関心はどのように変化するのか。

 ・日本への関心が高まることで、来日や留学の動機がどのように変化するのか。

 ・来日して日本を深く知れば、日本が、日本人が好きになるのか。

といった観点から、外国人留学生を数多く受け入れる日本の大学や研究機関に所属する研究者として、留学 生と共に幸せになるには、今、われわれは何を考え、なすべきであるのかについて、言語学や日本語教育学、

社会言語学や文化人類学といった学術分野の専門性をもとに、その課題と解決にむけ、国内外の著名な研究 者を招聘し、各分野の専門的見地から広く討議した。

開催日時 2016年12月17日(土) 13:00 〜 17:30 会  場 富山大学人文学部 3階 第6講義室

東アジア社会の日本語、そして日本

−日本語のプレゼンス向上と日本観の変容−

富山大学人文学部国際シンポジウム

(15)

開催日時 2017年2月11日(土)・12日(日)

会  場 富山大学人文学部3階 第6講義室

 2017 年 2 月 11 日(土)・12 日(日)の両日、ラフカディオ・ハーン研究シンポジウムが行われた。こ れは、富山大学ヘルン(小泉八雲)研究会の活動の一環として、研究交流の活性化と研究成果の公表のため に行われたものであり、本年度学長裁量経費、科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究 16K13215)、学部傾斜 配分経費の交付を受け、附属図書館のとの連携のもとに実施された。聴衆はのべ 100 名を超え、県内だけ でなく日本各地から若手の研究者の聴講が数多く見られた。このことは、本研究会の活動がハーン研究の拠 点の一つとして全国的に認知されつつあることを示している。

 まず西が「多言語的なアメリカとハーン」という表題で基調講演を行い、ハーン研究には多言語多文化的 な視点を持つことが重要であることが指摘された。難波江と結城はそれぞれ、ハーンの小説『チタ』につい て、クレオール小説としての読みや「海」をテーマにした分析を紹介した。長岡は、ハーンの作品の中の異 質なるものについて具体例を示しながら説明を行った。廣松は、ハーン作品のクレオール文学へのその深い 影響について言及がなされた。中島は、ニューオリンズ時代にすでにハーンが日本に関心を示していたこと、

やがてギリシアと対比されることによって、日本がハーンにとって特に関心を寄せる対象となっていったこ とを示した。水野は、シンシナティ時代の無署名記事をハーンのものと同定する方法について提案がなされ た。また今回は、熊本地震復興を願って今後の研究協力体制を強化するため、熊本大学の研究者を招聘した。

西川がまず「ハーンの言語観と英語教育」として基調講演を行い、池田はハーン作品の特徴である「ひとり であること」について作品中の具体例を交えながら紹介を行い、濱田はハーンが熊本時代に深い影響を受け た「柔術」の紹介について分析を行った。このほか、西田谷が八雲作品の初等教育における扱いの変遷につ いて紹介を行い、小谷が、後年の日本作家におけるボードレールの扱いについてハーンの影響を探った。最 後の全体討論では、これまでの研究成果と今後の研究体制の強化のために活発な議論がなされた。

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ラフカディオ・ハーン研究シンポジウム

富山大学ヘルン研究会・富山大学人文学部・富山大学附属図書館共催

(16)

「人文学が解き明かす富山」 (全7回)

平成28年度富山大学人文学部公開講座

(17)

 富山大学人文学部には、伝統的な哲学・歴史・文学に加えて心理学や社会文化、国際文化等さまざまな角 度から研究している教員がいます。その人文知を人文学部の学生だけでなく広く地元の方々と分かち合うた めに、平成 28 年度の秋から人文学部として公開講座を始めました。

 平成 28 年度の人文学部公開講座では、最新の研究成果を地域の皆さまに紹介し、人文科学が解き明かす 富山の魅力を味わっていただきたく、富山の歴史、ことば、文学、地理など様々な角度から研究し、その多 様かつ知られざる魅力の発掘に取り組んでいる研究者が7回シリーズで講演しました。

 平成 29 年春には、「人文学で読み解く世界の文化」というテーマで5回シリーズの公開講座を企画して おります(25 〜 26 ページ参照)。どうぞお気軽にご参加ください。人文学部講座は県民カレッジとも連携 しています。

〈参加者の声(アンケート結果より抜粋)〉

「  とても分かりやすく、お話に引き込まれ1時間半があっという間に過ぎました。楽しくいろいろなこと がわかりステキな時間でした。ありがとうございました。」

「  各地にいかれての調査を基にした、先生の深い研究のお話を聞かせてもらい、なるほどと思える時間を 過ごさせてもらいました。やはり研究は地道な調査と想像力が大事なのだと感じました。有意義な時間 をあたえてもらい、ありがとうございました。」

「  興味深い内容でした。面白かったです。細かな資料も有難うございました。」

「  言葉と人物の流れ、交易の結びつきがわかり面白かった。」

「  楽しそうに話されるので、私も楽しく聞きました。知らないことばかりで少し視野が広くなったような…」

「  先生と聴衆の方のディスカッションがおもしろかった。」

「  せっかく多種多分野で研究されていらっしゃる先生たちが多いのですから、その種の講座を月1〜2回、

定期的に開講されてはいかがでしょうか?」

「  よい企画だと思います。もっと大々的に宣伝されたら良いと思います。友人から聞き、HP を確認して 申し込みました。郵送、FAX ではなく、HP での登録あるいはメールでの申込ならもっとよかったと思 います。」

会  場 富山大学人文学部1番講義室・4番講義室・6番講義室 参加者数 138名(延べ人数)

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教員の著書(単著)

小野直子

医療化するアメリ カ−身体管理の20 世紀−

平体由美・小野直子 / 共編著

彩流社 2017 年 3 月

佐藤裕

ルールリテラシー

−共働のための技術 佐藤裕 / 著 新曜社 2016 年 4 月

磯部祐子・森賀一惠 富山文学の黎明(一)

漢 文 小 説『垖洲 餘 珠』(巻上)を読む 磯部祐子・森賀一惠 / 著

桂書房 2016 年 3 月

南祐三

ナチス・ドイツと フランス右翼

− パ リ の 週 刊 紙

『ジュ・スイ・パル トゥ』によるコラボ ラシオン−

南祐三 / 著 彩流社 2015 年 6 月

赤尾千波

アメリカ映画に見 る黒人ステレオタ イプ

『国民の創生』か 『アバター』まで 赤尾千波 / 著 富山大学出版会 2015 年 3 月

呉羽長 源氏物語の 創作過程の研究 呉羽長 / 著 新典社 2014 年 10 月

磯部祐子 江戸の笑い

−漢文で熟した富 山の文化

磯部祐子 / 著 桂書房刊 2012 年 4 月

中井精一

都市言語の形成と 地域特性

中井精一 / 著 和泉書院 2012 年 3 月

中澤敦夫 ロシア古文鑑賞 ハンドブック 中澤敦夫 / 著 群像社 2011 年 11 月

伊藤智樹

セルフヘルプ・グ ループの自己物語 論−アルコホリズム と死別体験を例に 伊藤智樹 / 著 ハーベスト社 2009 年 10 月

呉人惠

コリャーク言語 民族誌

呉人惠 / 著 北海道大学出版会 2009 年 2 月

佐藤裕 差別論

−偏見理論批判 佐藤裕 / 著 明石書店 2005 年 12 月

入江幸二 スウェーデン 絶対王政研究 入江幸二 / 著 知泉書館 2005 年 12 月

中澤敦夫 ロシア詩鑑賞 ハンドブック 中澤敦夫 / 著 群像社 2005 年 5 月 呉人惠 探検言語学

−ことばの森に分 け入る

呉人徳司・呉人惠 /

北海道大学出版会 2014 年 4 月

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教員の著書(共著、その他)

小谷瑛輔

テクスト分析入門

−小説を分析的に 読むための実践ガ イド

松本和也 / 編 ひつじ書房 2016 年 10 月

黒川光流

心理学をまじめに 考える方法 キ ー ス・E・ ス タ ノ ヴィッチ / 著 金坂弥起 / 翻訳 2016 年 7 月

安藤智子 基礎から学ぶ 音声学講義 加藤重広・安藤智子 / 共著

研究社 2016 年 7 月

徳永洋介 中国近世史 内藤湖南 / 著 徳永洋介 / 解説・校

岩波文庫 2015 年 7 月

武田昭文

ロシア・フォルマ リズム

−言語・メディア・

知覚

貝澤哉・野中進・

中村唯史 / 編著 せりか書房 2012 年 9 月

大野圭介

『楚辞』と楚文化の 総合的研究

『楚辞』と楚文化の 総合的研究」編集委 員会 / 編

大野圭介 / 主編 汲古書院 2014 年 2 月

伊藤智樹

ピア・サポートの 社 会 学 −ALS、 認 知症介護、依存症、

自死遺児、犯罪被 害者の物語を聴く 伊藤智樹 / 編著 晃洋書房 2013 年 11 月

中井精一

都市と周縁のこと ば−紀伊半島沿岸 グロットグラム 中井精一 / 共編著 和泉書院 2013 年 5 月

鈴木晃志郎 役に立つ地理学 伊藤修一・有馬貴之・

駒木伸比古・林琢也・

鈴木晃志郎 / 編著 古今書院 2012 年 4 月

藤田秀樹

英米文学を読み継 ぐ−歴史・階級・ジェ ンダ ー・エスニシ ティの視点から−

新英米文学会 / 編 開文社出版 2012 年 3 月

大西宏治 遊びの力

大村璋子・大西宏治・

齋藤啓子・首藤万千 子・関戸明子 / 編著 萌文社

2009 年 7 月

熊谷隆之 鎌倉時代の 権力と制度 上横手雅敬 / 編 思文閣出版 2008 年 9 月

大工原ちなみ ソール・ベロー研究

−人間像と生き方 の探求

日本ソール・ベロー 協会 / 編

半田拓也 / 監修 大阪教育図書 2007 年 6 月

田村俊介 中世王朝物語

『白露』詳注 中島正二・田村俊介 / 著

笠間書院 2006 年 1 月

大西宏治 エコ地図を つくろう

寺本潔・大西宏治・

長谷川有機子 / 編著 黎明書房

2005 年 8 月

(20)

 富山大学大学院人文科学研究科では、多様で複雑な社 会や文化の諸相を総合的に把握し、個々の学生の関心に きめ細かく対応できるよう、柔軟な指導体制をとってい ます。現行の人文科学専攻の 15 の教育研究分野は、大 別して方法論や一般理論の深化・発展を重視する分野と 地域に密着した研究を重視する分野からなります。さら に異なる分野間の連携・協力を明確にし円滑な教育・研 究を可能にするために、文献や資料を主要な研究の素材 とする思想・歴史文化領域、実験やフィールドワークを 研究手法として重視する行動・社会領域、言語や文学を 研究対象とする言語文化領域という3つの領域に分けて います。院生は特定の分野に属して指導教員(正)の研 究指導を受けるとともに、他分野から指導教員(副)を 選ぶことで、物事を幅広い視点から考察できるようにも 配慮されています。

 常勤の社会人入学者など、様々な理由から2年間で修 了することが困難な院生には、授業の昼夜開講制や最長 4年までの在学を認める長期履修制度が認められていま す。また、将来、教壇に立つことを前提に行われるティー チング・アシスタント制度もあります。さらに研究発表 の場として、毎年2月に「研究成果報告会」を開催し、

口頭発表や他分野の教員や院生との質疑応答を通じて研

鑽を積むことができるだけでなく、毎年秋に刊行される『人文科学研究科論集』に論考や研究ノートを掲載 する機会も保証されており、研究活動を支援する仕組みは充実しています。

人文科学研究科での教育

秋田県田辺市での方言調査

中国ハルビン理工大学での日本語実習

人文科学研究科の構成

(21)

平成 28 年度(2016)

陳 衍豊  (哲学・人間学) 「  アリストテレスの幸福論における二つの生き方の関係−幸福の単一性と複 数性について−」

増百 範之  (歴史文化)  「宇多上皇の研究」

佐藤 美月  (日本言語文化) 「『枕草子』随想的章段の研究」

何 珊珊  (日本言語文化) 「日本語の造語について」

鄭 暁彤  (日本言語文化) 「日中授受表現の対照研究」

平成 27 年度(2015)

高野 靖彦  (歴史文化)  「近世中後期における地方霊山の変容」

島田 章代  (人文地理)  「  高齢者の社会空間に関する一考察−自然環境が異なる二つの地域の比較から−」

栄多谷 祥子 (文化人類学)  「盆踊りの変容−富山県富山市無形文化財『さんさい踊り』を事例に−」

谷内田 千尋 (言語学)  「依頼メールの機能的要素の分析−日本人学生と中国人留学生のメールの比較−」

小野 祥子  (日本言語文化) 「『源氏物語』における明石の君の造形的意義について−その草子地に着目して−」

平成 26 年度(2014)

李 宋誠  (国際文化論)  「張愛玲論−『金鎖記』を中心に−」

山中 江里子 (言語学)  「  韓国人・中国人 日本語学習者の助詞使用 −ゼロ助詞、対象を表す格助詞

『を』を中心に−」

中城 寿美子 (日本言語文化) 「『源氏物語』の主題の深化に関する研究−女君の道心のあり方に注目して−」

時 麗  (日本言語文化) 「日本のマンガの言語学的研究」

松ケ平 なつみ  (日本言語文化) 「地域社会における配慮表現」

陳 琳  (日本言語文化) 「言語景観から見えること−都市に見られる言語景観の特徴と問題点−」

邵 磊  (中国・朝鮮言語文化)  「江戸時代の『和習』意識について」

修士論文題目一覧

富山大学大学院人文科学研究科論集 大学院研究成果報告会

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松ヶ平なつみ(2014 年修了)

 私は、現在、ベトナムハノイにあるハノイ外国語大学日本言語学部で日本語を教える外国人教師として勤 務しています。

 私は富山大学人文学部に入学した頃から、身近な人びとの暮らしやことばに関心があって、日本各地へ出 かけ、方言のフィールドワークに取り組むうちにその関心は、日本語や日本語を教えることに向いていきま した。3年生の時は、研究室の先輩であった伊東奈穂(2011 年修了)が、勤務するハルビン師範大学へ留 学し、中国語を学ぶとともにそこで日本語教育のお手伝いをした経験が、大学院進学につながりました。

 人文科学研究科では、中学、高校の教員や公務員を目指す人、専門分野の研究を深める目的で入学する人、

また協定校を中心とした外国人留学生などさまざまな目的やタイプの大学院生が在籍しています。そしてそ れらに対応するために、国際シンポジウムや学会などが頻繁に開催され、最新の研究成果や学界動向につい て知る機会が数多く設けられています。

 恵まれた環境で、さまざまな体験をし、多くの人びと数多く学んだことが、現在のハノイでの仕事を充実 したものにしていると思っています。

世界で活躍する、人文科学研究科修了生 

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教員氏名 業務内容 相手方

赤尾 千波 「スコーラ講座」講師 (株)まちづくりとやま

伊藤 智樹

「難病患者在宅療養応援員フォローアップ研修会」講 師,「難病相談支援センターの役割」調査研究検討会講 師,難病・高次脳機能障害ピアサポート研修会講師,

難病対策講演会・シンポジウム講師,難病ピア・サポー ター養成研修会講師,ピアサポーター養成講座講師

特定非営利活動法人 岐阜県難病団体連絡 協議会,脳研究所,石川県リハビリテーショ ンセンター,社会福祉法人 富山県社会福 祉協議会,群馬県難病相談支援センター

磯部 祐子 漢文書訓読(事業協力),三紅会第30回記念大会講演会 講師

浅野総一郎資料展示館帰望郷館,三紅会(詩 吟の会)

大西 宏治

「射水市防災士連絡協議会」アドバイザー及び総会講演 会講師,「平成27年度富山県婦人防火クラブ連絡協議 会総会」講演会講師,職員談話会講師,第42回技術士 全国大会「全国防災連絡会議」講演会講師,平成27年度 自主防災組織組織化研修会講師,平成27年度富山県私 学教育研修会講師,平成27年度防災教育指導者講習会 講師,北陸G空間×ICT街づくり推進セミナー講師

射水市防災士連絡協議会設立準備委員会,

富山県婦人防火クラブ連絡協議会,富山地 方気象台,公益社団法人 日本技術士会  防災支援委員会,富山県知事政策局,富山 県私立中学高等学校協会,富山県教育委員 会,総務省北陸総合通信局

大西 宏治

富山市民大学講師

富山のまちのこれからと未来

富山市教育委員会(富山市民大学)

鈴木晃志郎 富山のまちのこれからと未来 高橋 浩二 日本と朝鮮半島の歴史と文化 鈴木 信昭 日本と朝鮮半島の歴史と文化 鈴木 景二 日本と朝鮮半島の歴史と文化 熊谷 隆之 日本の歴史

徳永 洋介 中国史に学ぶ

大西 宏治 文学講座講師 若者にとっての地方と都会

−山内マリコ作品を通して富山を考える−

高志の国文学館 小谷 瑛輔 文学としての松本清張

大工原ちなみ 死への旅路−ホロコースト文学を通じて−

中井 精一 富山県方言と京・大阪のことば

喜田 裕子

立山区域PTA連合会研修会講師,富山市教育センター 研修会講師,家庭裁判所調査官研修講師,平成27年度 学校カウンセリング講座(事例研究コース)講師,平成 27年度学校カウンセリング講座(チーム支援コース)講 師,若手教員研修(初任者研修会)・新規採用教職員研 修会講師

立山区域PTA連合会,富山市教育センター,

富山家庭裁判所,富山県総合教育センター

黒川 光流 「認定看護管理者教育課程ファーストレベル」・グルー

プマネジメント研修会講師 公益社団法人 富山県看護協会 大工原ちなみ 富山県公立小中学校女性校長会第2回全体研修会講師 富山県公立小中学校女性校長会

高橋 浩二 富山市考古資料館特別講演会講師,ふるさと発見講座 講師

富山市考古資料館,富山県民生涯学習カ レッジ 新川地区センター

中井 精一 高岡市生涯学習センター講座講師 高岡市教育委員会

林  夏生

  SmartCafé「生きづらさ」を考えるシリーズ第1回「日 本の性的少数者(LGBTs)の『生きづらさ』と、今大学 ができること」講師

富山大学男女共同参画推進室

自治体等の公開講座・講演会等講師(平成27年度)

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教員氏名 業務内容 相手方 中井 精一 「総合的な学習の時間」講師 砺波市立出町中学校 喜田 裕子 「富山東高等学校PTA全体研修会」講師 富山県立富山東高等学校 鈴木 景二 高校生郷土史・日本史学習研修会講師 富山県教育委員会

喜田 裕子 進路講演会講師 富山県立富山中部高等学校

呉羽  長 探究科学科「課題研究」講師 富山県立富山高等学校 小助川貞次・鈴木 景二 探究科学科「課題研究」指導・助言 富山県立高岡高等学校

野澤 豊一 探究科学科「探究講演会」講師 富山県立富山中部高等学校 熊谷 隆之・呉羽  長・恒川 正巳 探究科学科「発展探究」「課題研究発表会」講師 富山県立富山中部高等学校 鈴木 信昭・阿部 美規・鈴木 景二・

中井 精一・林  夏生 平成27年度「大学・病院等連携講座Ⅱ」講師 富山県立高岡南高等学校

高校との連携事業(平成27年度)

教員氏名 兼業の種類 業務内容 相手方

伊藤 智樹 アドバイザー

VHO-net(ヘルスケア関連団体ネットワーキング の会)主催会議アドバイザー、患者会支援事業相談 委員会委員

ファイザー・ホールディン グズ合同会社、アステラス 製薬(株)

伊藤 智樹 講師 高次脳機能障害者ピアサポート事業講師 富山県高次脳機能障害支援 センター

大西 宏治 委員、委員会委員

地理教育分科会地図/GIS教育小委員会委員、地理 空間情報の活用推進に関する北陸地方産学官連絡 会議委員

日本学術会議、国土交通省 国土地理院 北陸地方測量

大西 宏治 審査員 「平成27年度公益社団法人日本測量協会北陸支部空 間情報技術事例発表会」審査

公益社団法人

日本測量協会北陸支部 大西 宏治 コーディネーター 青少年育成支援機関に関するブロック連携会議

コーディネーター 内閣府

呉人  恵 委員 人間文化研究機構総合人間文化研究推進センター

運営委員会委員・国立国語研究所運営会議委員 人間文化研究機構 鈴木晃志郎 委員 地理空間情報の活用推進に関する北陸地方産学官

連絡会議委員

国土交通省国土地理院 北陸地方測量部

林  夏生 委員長 富山県地域年金事業運営調整会議委員 日本年金機構 富山年金事 務所

松﨑 一平 委員会委員 富山県弁護士会常置委員会委員 富山県弁護士会

関係機関の委員等(平成27年度)

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