発行日 2013-12-30 引用 , 49(3): 709-731 著者 , ; SATO, Hironao タイトル (2)

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(1)

タイトル 差止請求訴訟の諸相(2) 著者 佐藤, 弘直; SATO, Hironao

引用 北海学園大学法学研究, 49(3): 709‑731

発行日 2013‑12‑30

(2)

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研 究ノ ー ト

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差 止 請 求 訴 訟 の 諸 相

佐 藤 弘 直

二 事例 2

︵ 6

| 9

︶ 1 事実 事例 2 は

︑ 大阪 高 等 裁 判 所平 成 二 二 年三 月 二 六 日

14

判決

︵ 原 審 京都 地 方 裁 判 所平 成 二 一 年九 月 三

〇 日

15

判決

︶ の 事 案で あ る︒

北研 49(3・ )

(3)

a 当 事 者 原告 は 適 格 消費 者 団 体 特 定非 営 利 活 動法 人 京 都 消 費者 契 約 ネ ット ワ ー ク

︑ 被告 は 不 動 産賃 貸 業 お よ び不 動 産 管 理業 を 目的 と す る 事業 者 株 式 会 社長 栄 で あ る︒ b 契 約 条項 定額 補 修 分 担金 条 項 1 消 費 者 は︑ 目 的 建 物 退去 後 の 賃 貸借 開 始 時 の 新装 状 態 へ の回 復 費 用 の 一部 負 担 金 とし て

︑ 定 額 補修 分 担 金 を被 告 会 社 に 対し 支 払 う

︒ 2 当 該 消 費者 は

︑ 被 告 会社 に 対 し

︑定 額 補 修 分 担金 の 返 還 を︑ 入 居 期 間 の長 短 に か かわ ら ず

︑ 請 求で き な い

︒ 3 被 告 会 社は

︑ 当 該 消 費者 に 対 し

︑定 額 補 修 分 担金 以 外 に 目的 建 物 の 修 理・ 回 復 費 用の 負 担 を 求 める こ と は でき な い

︒ た だし

︑ 当 該 消 費者 の 故 意 又は 重 過 失 に よる 同 建 物 の損 傷 及 び 改 造に つ い て は除 く

︒ c 参 照 条文 消費 者 契 約 法第 一

〇 条 d 概 要

︵原 審 判 決

︶ 原告 団 体 が

︑被 告 会 社 に 対し

︑ 定 額 補修 分 担 金 条 項が 消 費 者 契約 法 一

〇 条 に反 し て 無 効で あ る と し て︑ 消 費 者 との 間 で建 物 賃 貸 借契 約 を 締 結 し︑ ま たは 合 意 更 新す る に 際 し

︑定 額 補修 分 担 金 条項 を 含 む 意 思表 示 を す るこ と の 差 止 め︑

北研 49(3・ )

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定 額補 修 分 担 金条 項 が 記 載 され た 契 約 書用 紙 の 破 棄

︑被 告 会 社 の従 業 員 ら に 対し 上 記 意 思表 示 を 行 う ため の 事 務 を行 わ ない こ と お よび 前 記 契 約 書用 紙 を 破 棄す べ き こ と の指 示 な ど の措 置 を 求 め

︑平 成 二

〇 年三 月 二 五 日

︑京 都 地 方 裁判 所 に訴 え を 提 起し た

︒ 京都 地 方 裁 判所 は

︑ 平 成 二一 年 九 月 三〇 日

︑ 以 下 のと お り 原 告団 体 の 請 求 のう ち 定 額 補修 分 担 金 条 項を 含 む 意 思表 示 をす る こ と の差 止 め な ど の一 部 を 認 容し た

︒ 定額 補 修 分 担金 条 項 が 消 費者 契 約 法 一〇 条 に 反 す るか に つ い て︒ 同 条 の 前段 要 件 に つ いて は

︑民 法 に よ れ ば︑ 賃借 人 は︑ 賃 貸 借 契約 が 終 了 し た場 合 に

︑ 賃 借 物 件 を 原状 に 回 復 して 賃 貸 人 に 返還 す る 義 務が あ る

︒ 賃貸 借 契 約 は︑ 賃 借人 に よ る 賃借 物 件 の 使 用と そ の 対 価と し て の 賃 料の 支 払 を 内容 と す る も ので あ り

︑ 賃借 物 件 の 損 耗の 発 生 は

︑賃 貸 借契 約 の 性 質上 当 然 に 予 定さ れ て い る

︒ し た が って

︑ 建 物 の賃 貸 借 契 約 にお い て

︑ 通常 損 耗 の 原 状回 復 費 用 は︑ 使 用収 益 の 対 価た る 賃 料 に 含ま れ て い る か ら

︑ 原 則と し て

︑ 賃 貸人 の 負 担 であ る

︒ 定 額 補修 分 担 金 条項 に お い て は︑ 賃 借人 で あ る 消費 者 が 賃 貸 借 契 約締 結 時 に

︑賃 貸 借 開 始 時の 新 装 状 態へ の 回 復 費 用の 一 部 負 担金 と し て

︑ 定 額 補修 分 担金 を 支 払 うこ と と さ れ てお り

︑ ほ かに 通 常 損 耗 の原 状 回 復 費用 が 定 額 補 修分 担 金 に 含ま れ な い と の条 項 も な いか ら

︑定 額 補 修 分担 金 条 項 に は︑ 通 常 損 耗分 の 原 状 回 復費 用 が 含 まれ て い る

︒故 意 ま たは 重 過 失 に よる 賃 借 物 件の 損 耗・ 改 造費 用 に つ いて は

︑ 別 途 賃借 人 で あ る消 費 者 に 請 求で き る こ と︑ お よ び い った ん 支 払 った 定 額 補 修 分担 金 の 返 還を 請 求で き な い こと が 定 め ら れて い る こ とか ら す る と

︑消 費 者 の 軽過 失 に よ る 損耗 の 原 状 回復 費 用 が 支 払っ た 定 額 補修 分 担金 の 額 に 満た な い 場 合 には

︑ 消 費 者は 本 来 負 担 しな く て も よい 通 常 損 耗 の原 状 回 復 費用 を 負 担 さ せら れ る こ とと

16

な る︒

相 当 額 の通 常 損 耗 の発 生 が 不 可 避的 で あ る から

︑ 定 額 補修 分 担 金 条 項は

︑ 民 法 の規 定 の 適 用 によ る 場 合 に比 し て賃 借 人 で ある 消 費 者 の 義務 を 加 重 する 条 項 で あ る︒

北研 49(3・ )

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消費 者 契 約 法一

〇 条 後 段 要件 に つ い て︒ こ の 後 段 要件 に 該 当 する か ど う か は 消 費 者 契約 法 一 条 の 趣旨 に 照 ら し︑ 契 約条 項 の 内 容の み な ら ず

︑契 約 当 事 者の 有 す る 情 報の 質 や 量 およ び 交 渉 力 の格 差 の 程 度等 諸 般 の 事 情を 総 合 的 に考 慮 して

判 断 すべ き で あ る

︒定 額 補 修 分担 金 条 項 に よる と 賃 借 人で あ る 消 費 者の 軽 過 失 によ る 損 耗 の 原状 回 復 費 用が 定 額補 修 分 担 金の 額 を 超 え る場 合 に は

︑消 費 者 は そ の差 額 の 支 払い を 免 除 さ れる か ら

︑ この 場 合 に は 消費 者 の 利 益に な る︒ し か し

︑軽 過 失 に よ る損 耗 の 原 状回 復 費 用 が 定額 補 修 分 担金 の 額 に 満 たな い 場 合 には

︑ 消 費 者 は本 来 負 担 しな く ても よ い 通 常損 耗 の 原 状 回復 費 用 を 負担 す る こ と とな る

︒ 契 約当 事 者 の 有 する 情 報 の 質や 量 に つ い てみ る と

︑ 被告 会 社は

︑ 建 物 賃貸 借

︑ マ ンシ ョ ン 管 理

︑運 営 等 を 業と し

︑ 建 物 の修 繕 に 関 する 知 識 や 情 報が 豊 富 で ある こ と

︑ 定額 補 修分 担 金 額 の明 確 な 算 定 基準 は な く

︑被 告 会 社 が 賃 借 物 件 ごと に 賃 借 人 の特 性

︑ 賃 貸物 件 の 広 さ

︑設 備

・ 素 材の 損 傷の し や す さ︑ 契 約 期 間

︑用 法 な ど の諸 要 素 を 総 合的 に 考 慮 し て 退 去 時 の原 状 回 復 費用 を 予 想 し てい た

︒ ま た︑ 被 告会 社 は

︑ 賃借 人 で あ る 消費 者 に 対 し︑ 建 物 賃 貸 借契 約 の 締 結時 に 定 額 補 修分 担 金 に つい て

︑ 退 去 時に お い て 入居 時 と同 様 の 新 装状 態 に 回 復 する こ と が 必要 で あ っ て

︑そ の 一 部 とし て 定 額 補 修分 担 金 を 負担 し て も ら うと の 説 明 をし て いた

︒ 一 方 消費 者 は

︑ 被 告会 社 か ら 一般 的 に 生 じ る原 状 回 復 費用 の 種 別 と 額︑ 消 費 者 の軽 過 失 に よ る原 状 回 復 費用 が 定額 補 修 分 担金 の 額 に 満 たな い 場 合 には 本 来 負 担 しな く て も よい 通 常 損 耗 部分 の 原 状 回復 費 用 を 負 担す る こ と にな る など 定 額 補 修分 担 金 条 項 につ い て の 有 利 な 点

︑ 不利 な 点 を 判断 す る た め に必 要 な 情 報 を 提 供 さ れて い な い

︒消 費 者は

︑ 定 額 補修 分 担 金 の 額が 自 己 に 有利 か 不 利 か を判 断 す る のに 十 分 な 情 報な く し て 定額 補 修 分 担 金条 項 に 合 意す る こと が 多 く なり

︑ 消 費 者 と被 告 会 社 との 間 に

︑ 顕 著な 情 報 の 質お よ び 量 の 格差 が 存 在 する

︒ し た が って 定 額 補 修分 担 金は

︑ そ の 額よ っ て は 消 費者 に 有 利 とな る こ と が 観念 的 に は あり 得 る と し ても

︑ 現 実 にそ の よ う な 場合 が あ る とは 窺 えず

︑ 定 額 補修 分 担 金 の 額の 設 定 方 法や 消 費 者 と 被告 会 社 と の情 報 の 格 差 を考 慮 す る と︑ 定 額 補 修 分担 金 条 項 は︑

北研 49(3・ )

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基 本的 に

︑ 信 義則 に 反 し て 消費 者 を 一 方的 に 害 す る 条項 で あ る

︒ 定額 補 修 分 担金 の 額 が

︑ 賃借 人 で あ る消 費 者 の 軽 過失 に よ っ て生 じ る 損 耗 の原 状 回 復 費用 を 下 回 る 場合 と そ う でな い 場合 が あ る

︒こ の よ う な 定額 補 修 分 担金 条 項 を 一 律に 差 止 め るこ と が で き るか に つ い ては

︑ 消 費 者 にと っ て 有 利な 条 項と な る こ とも あ り 得 る が︑ こ れ ま で消 費 者 の 利 益に な る 態 様で

︑ 定 額 補 修分 担 金 条 項が 運 用 さ れ てお ら ず

︑ 今後 も

︑被 告 会 社 にお い て 消 費者 契 約 法 一〇 条 に 反 す る態 様 で 定 額補 修 分 担 金 条項 が 運 用 され る も の と 考え ざ る を 得 な いか ら

︑ そ の額 を 問 わ ず一 律 に 定 額補 修 分 担 金条 項 の 使 用 差止 め を 認 める こ と が で きる

︒ 被告 会 社 の 従業 員 ら に 対 し定 額 補 修 分担 金 条 項 を 含む 契 約 の 申込 み ま た は 承諾 の 意 思 表示 を 行 う た めの 事 務 を 行わ な いこ と の 指 示を 求 め る 請 求に つ い て は︑ 被 告 会 社 にお い て す べ き指 示 の 義 務内 容 が 一 義 的に 明 ら か にさ れ て お ら ず︑ 請 求の 特 定 を 欠く

︒ 平成 二 一 年 一〇 月 九 日 に 被告 会 社 が

︑平 成 二 一 年 一〇 月 一 三 日に 原 告 団 体 が︑ そ れ ぞ れの 敗 訴 部 分 のす べ て を 不服 と して

︑ 大 阪 高等 裁 判 所 に 控訴 し た

︒ 2 判旨 大阪 高 等 裁 判所 は

︑ 平 成 二二 年 三 月 二六 日

︑ 以 下 のと お り 原 告団 体 の 控 訴 を棄 却 し

︑ 被告 会 社 の 控 訴に つ い て は︑ 原 審が 却 下 し た原 告 団 体 の 請求 は 適 法 では あ る が 理 由が な い と して 原 判 決 を 変更 し て 原 告団 体 の 請 求 を棄 却 し

︑ その 余 の被 告 会 社 の控 訴 を 棄 却 した

︒ 定額 補 修 分 担金 条 項 が 消 費者 契 約 法 一〇 条 に 反 す るか に つ い て︑ 原 審 の 判 断を 是 認 す ると と も に 理 由を 加 え た

︒被 告 会社 が 主 張 する 定 額 補 修 分担 金 条 項 の紛 争 回 避 機 能は

︑ 定 額 補修 分 担 金 の 額が 現 実 に 賃借 人 で あ る 消費 者 に 有 利に

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な るよ う に 定 めら れ る こ と はほ と ん ど な く

︑ 本 来 賃貸 人 で あ る被 告 会 社 が 負 担 す べ き通 常 損 耗 に 対す る 原 状 回復 費 用を

︑ 定 額 補修 分 担 金 条 項に よ っ て

︑消 費 者 に 定 額で 負 担 さ せて

︑ 消 費 者 から 被 告 会 社に 対 し て

︑ 通常 損 耗 に 対す る 原状 回 復 費 用の 返 還 を 巡 る紛 争 を 事 実上 回 避

︵ 断 念︶ す る と いう

︑ も っ ぱ ら被 告 会 社 に 有 利 と な る紛 争 回 避 機能 に すぎ な い

︒ また

︑ 原 審 が却 下 し た 被 告会 社 の 従 業員 ら に 対 す る定 額 補 修 分担 金 条 項 を 含む 契 約 の 申込 み ま た は 承諾 の 意 思 表示 を 行う た め の 事務 を 行 わ な いと の 指 示 を求 め る 請 求 につ い て は

︑被 告 会社 の す べ き 指示 が

︑ 事 業 者 の 労働 者 に 対 する 労 働義 務 遂 行 に際 し て の 指 揮命 令 権 に 基づ く 業 務 上 の指 示 を 意 味す る も の で ある

か ら

︑従 業 員 一 七 七名 ほ ど の 事業 規 模の 被 告 会 社に お い て は

︑上 記 指 示 を記 載 し た 各 従業 員 に 対 する 書 面 の 配 布も し く は 社内 メ ー ル の 送信 な ど に よっ て 行わ れ る べ きこ と は 当 然 予想

し う るか ら

︑ こ の よう な 作 為 を求 め た と し ても

︑ そ の 履行 に つ い て 判別 で き な いこ と はな い の で

︑請 求 自体 の 特 定 性に 欠 け る 点 はな く

︑請 求 は 適法 で あ る

︒し かし

︑被 告 会 社は 平 成 一 九年 七 月 以 降 に︑ 定 額補 修 分 担 金条 項 を 含 む 賃貸 借 契 約 の締 結 を 廃 止 し︑ 二 年 近 くも の 間 定 額 補修 分 担 金 条項 を 使 用 し てい な い こ とか ら

︑同 条 項 を 含む 契 約 の 申 込み ま た は その 承 諾 の 意 思表 示 を し ない こ と を 従 業員 ら に も 周知 徹 底 し た と認 め ら れ るの で

︑新 た に 従 業員 ら に 指 示 して

︑ 今 後 同条 項 を 含 む 契約 の 申 込 みま た は そ の 承諾 の 意 思 表示 を 行 わ し める こ と が ない 限 り︑ 上 記 意 思表 示 を 行 う ため の 事 務 を行 わ な い こ との 指 示 を 命ず る 必 要 性 は認 め ら れ ない

︒ 3 感想 a 事 例 2 の判 決 は

︑ 消 費者 契 約 法 一〇 条 の 適 用 の可 否 に つ いて の 判 断 に あた り

︑ ま ず同 条 の 前 段 要件 で あ る 民 法

︑商 法 そ の 他の 法 律 の 公 の秩 序 に 関 しな い 規 定 が適 用 さ れ た場 合 と 比 較 して

︑ 定 額 補修 分 担 金 条 項が 消 費 者 の権

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利 を制 限 す る こと と な る か

︑ま た は 消 費者 の 義 務 を 加重 す る こ とと な っ て い るか を 検 討 する

︒ そ し て 後段 要 件 で ある 当該 条 項 が 消 費者 の 権 利 を制 限 し

︑ 又 は消 費 者 の 義務 を 加 重 し︑ 定 額 補 修 分担 金 条 項 が民 法 第 一 条 第二 項 に 規 定す る 基本 原 則 す なわ ち 信 義 則 に 反 し て 消費 者 の 利 益 を一 方 的 に 害す る こ と とな る 規 定 かを 検 討 す る

︒ b 前 段 要 件の 当 否 に あ たり 定 額 補 修分 担 金 条 項 が比 較 対 象 とな る 民 法 等 の任 意 規 定 にな い 事 項 で ある か ら

︑ 比較 対 象と な る 任 意規 定 の な い 定額 補 修 分 担金 条 項 に 消 費者 契 約 法 一〇 条 の 適 用 があ る か と いう 問 題 が 生 まれ る

︒ 消 費者 契 約法 一

〇 条 が︑

民 法

︑ 商法 そ の 他 の 法律 の 公 の 秩序 に 関 し な い規 定 の 適 用に よ る 場 合 と 規 定 さ れ てい る の で ある か ら︑ 文 理 上 は 民 法

︑ 商 法そ の 他 の 法律 の 公 の 秩 序に 関 し な い規 定 が な い場 合 に は

︑消 費 者 契 約 法一

〇 条 の 適用 は ない と 解 す るこ と に な る

︒こ れに 対 し

︑明 文 の 規定 の み な らず

︑確 立 し た 判例

︑判 例 に よっ て 承 認 され て い る 準 則︑ 学 説上 確 立 し た原 則 な ど を 含め て 広 く 解す る 見 解 が

17

ある

︒ 国 民 生活 審 議 会 消 費者 政 策 部 会消 費 者 契 約 法評 価 検 討 委員 会 も同 様 の 見 解に

18

立 つ

︒ 判 例に つ い て みる と

︑ 最 高 裁判 所 は 更 新料 条 項 の 有 効性 が 争 わ れた 事 例 に お いて

︑ 消 費 者契 約 法一

〇 条 前 段の

任意 規 定 に は

︑ 明文 の 規 定 のみ な ら ず

︑ 一般 的 な 法 理等 も 含 ま れ る と の 理 解 を明 示 し て

19

い る︒ c 定 額 補 修分 担 金 条 項 にお い て

︑ 消費 者 契 約 法 第一

〇 条 後 段の 要 件 で あ る信 義 則 に 反す る 程 度 に 消費 者 の 利 益を 一 方的 に 害 す る規 定 と は ど のよ う な 規 定を い う の で あろ う か

︒ 本 物 件 は︑ 快 適な 住 生 活 を送 る 上 で 必 要と 思 わ れ る室 内 改装 を し て おり ま す

︒ そ のた め に 掛 かる 費 用 を 分 担し

︵ 頭 書 記載 の 定 額 補 修分 担 金

︶ 賃借 人 に 負 担 して 頂 い て おり ま す︒ 尚

︑ 乙 の故 意 又 は 重 過失 に よ る 損傷 の 補 修

・ 改造 の 場 合 を除 き

︑ 退 去 時に 追 加 費 用を 頂 く こ と はあ り ま せ ん︒ と の定 額 補 修 分担 金 条 項 が 消費 者 契 約 法一

〇 条 に 該 当す る か 否 かが 判 断 さ れ た判 例 を み てみ よ う

︒ 京都 地 方 裁 判所 平 成 二

〇 年四 月 三

〇 日

20

判 決 は

︑ 定 額補 修 分 担 金条 項 が 消 費 者契 約 法 一

〇条 に 該 当 し

︑無 効 で あ ると し た︒ すな わ ち

︑定 額 補 修分 担 金 条 項に は

︑ 回 復 費用 が 分 担 金 を下 回 る 場 合や

︑回 復 費 用か ら 通 常 損 耗に つ い て の原

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状 回復 費 用 を 控除 し た 金 額 が分 担 金 を 下回 る 場 合 に は 賃 借 人 にそ の 控 除 後 の金 額 を 返 還す る 旨 が 規 定さ れ て い ない か ら︑ こ の よ うな 場 合

︑ 賃借 人 は

︑ 差 額の 定 額 補 修分 担 金 の 返 還を 求 め る こと が で き な い︒

定 額 補 修分 担 金 条 項に 基 づい て 賃 料 と別 に 負 担 す る 分 担 金 額は 一 般 的 に 生じ る 軽 過 失損 耗 部 分 に 要す る 回 復 費用 を 踏 ま え たう え で 算 定さ れ るべ き で あ る︒

賃 貸 人 は︑ 当 該 物 件も し く は 同 種物 件 の 修 繕経 験 を 有 す るの が 通 常 であ り

︑ そ の 経験 の 蓄 積 によ り 通常 修 繕 費 用に ど の 程 度 要す る か の 情報 を 持 ち

︑ 計算 を す る こと が 可 能 で ある

︒ 他 方

︑消 費 者 で あ る賃 借 人 は

︑通 常

︑自 ら 賃 借 物件 の 修 繕 を する な ど の 経験 は な く

︑ 一 般 的 に 賃 貸人 が 有 す るよ う な 上 記 情報 を 有 す ると は 考 え 難 い︒ 賃借 人 が 負 担 する 同 分 担 金額 は 賃 貸 人 が有 し て い る上 記 情 報 を 基に 設 定 す るの が 一 般 的 であ る と 考 えら れ る と こ ろ︑ 賃 借人 と な ろ うと す る 者 が 同情 報 を 持 ち合 わ せ な い まま 賃 貸 人 との 間 で 分 担 金額 の 程 度

・内 容 に つ い て交 渉 す る こと は 難し く

︑ 仮 に交 渉 で き た とし て も そ の実 効 性 が 担 保さ れ て い ると は 考 え 難 い︒ 以 上 の 事実 を 踏 ま え ると

︑ 賃 貸 人が 賃 借人 に 負 担 させ る べ き 分 担金 額 を 一 方的 に 決 定 し てい る

︒定 額補 修 分 担 金 条項 に お い て軽 過 失 損 耗 部分 の 回 復 費用 を 一六 万 円 と 定額 に 設 定 し てい る と こ ろ︑ 形 式 的 に 見る と

︑ 軽 過失 損 耗 部 分 が一 六 万 円 を超 え た 場 合 には 賃 借 人 に利 益 とな る 余 地 があ る

︒ し か し︑ 実 質 的 に賃 借 人 に 利 益が あ る と いう た め に は 結果 的 に 発 生し た 軽 過 失 損耗 部 分 の 回復 費 用が 一 六 万 円よ り 多 額 で あっ た と い う特 段 の 事 情 のな い 限 り 難し い

︒ 少 な くと も 定 め られ た 分 担 金 一六 万 円 が 一 般 的に 生 じ る 軽過 失 損 耗 部 分の 回 復 費 用額 と 同 額 程 度で あ る こ とが 必 要 で あ る︒

分 担 金 額が 月 額 賃 料の 約 二 쐚五 倍程 度 に定 め ら れ

︑賃 借 人 に 軽 過失 が あ っ て︑ 軽 過 失 損 耗が 発 生 す るこ と は 通 常 それ ほ ど 多 くな く

︑ 一 般 的に そ の 回 復費 用 が月 額 賃 料 の二 쐚五 倍 で ある と 考 え る こと は で き ない

︒定 額 補 修分 担 金 条 項 は賃 借 人 で ある 消 費 者 に とっ て 有 利 であ る とま で は い えず

︑ か え って

︑ 賃 借 人 に月 額 賃 料 の約 二 쐚五 倍 の回 復 費 用 を 一方 的 に 支 払わ せ る も の で︑ し か も その 額 の妥 当 性 に つい て 消 費 者 に判 断 す る 情報 が な い

︒定 額 補 修 分 担金 条 項 に より 賃 借 人 は

︑ 退 去 時 に おけ る 原 状 回復

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費 用を め ぐ る 紛争 リ ス ク を減 少 さ せ るこ と が で き ると も 考 え られ る が

︑ こ のよ う な 紛争 リ ス ク 減 少の メ リ ッ トは 賃 借人 だ け で はな く

︑ 賃 貸 人も 同 様 に 享受 し て い る

︒ 賃 貸 人 も享 受 す る メ リッ ト を 発 生さ せ る た め に賃 借 人 の みが 通 常損 耗 部 分 の回 復 費 用 を 含む 分 担 金 を負 担 す る こ とは 不 当 で ある

︒ こ れ らを 総 合 す る と︑ 定 額 補 修分 担 金 条 項 は︑ 民 法第 一 条 第 二項 に 規 定 す る基 本 原 則 に反 し 消 費 者 の利 益 を 一 方的 に 害 す る もの で あ る

︒ 次に

︑ 京 都 地方 裁 判 所 平 成二

〇 年 七 月二 四 日

21

判 決 をみ て み よ う︒ こ の 判 決 は︑ 定 額 補 修分 担 金 条 項 が消 費 者 契 約法 一

〇条 に 該 当 し︑ 無 効 で あ ると し た

︒ すな わ ち

︑ 賃 貸人

︵ 事 業 者︶ は

︑定 額 補 修 分 担金 の 額 を

︑あ る 賃 借 人︵ 消 費 者︶ と の関 係 で は 結 果 的 に は 不利 益 を 受 ける 可 能 性 は ある が

︑ 他 の賃 借 人 と の 関係 で は 結 果的 に は 利 益 を受 け る 可 能性 が あり

︑ 賃 貸 業全 体 と し て は採 算 が と れる よ う に 設定 す る こ と が可 能 で あ る︒ 他 方

︑ 賃 借人 は

︑ 賃 貸借 契 約 締 結の 時 点で は 支 払 義務 は な く

︑ 退去 時 に も 支払 義 務 は な いか も 知 れ ない

定 額 補 修分 担 金 を 賃貸 借 契 約 締 結の 時 点 で 支払 わ され る う え

︑定 額 補 修 分 担金 の 額 に つ い ては 賃 貸 人 の 定め る も の に従 う ほ か な く︑ 丁寧 に 使 用 す ると か

︑ 入 居期 間 が短 い︵ 通 常 の 使 用を し て い る 限り

︑ 軽 過 失損 耗 の 程 度 は入 居 期 間 の長 短 に 比 例 する

︒︶ な ど の 事 情 をも っ て

︑ 賃貸 人 との 交 渉 に よっ て 定 額 補 修分 担 金 の 額が

変 更 さ れる 余 地 が ある と は 考 え られ な い

︒ 退去 時 に 重 過失 損 耗 が な く︑ 軽 過 失 損 耗 の 回 復 費 用 の 金 額 が 定 額 補 修 分 担 金 額 を 上 回 った 場 合︑ 定 額 補 修 分 担 金 の ほ か に 追 加 負 担 が な い こ と に よ って 利 益 を 受け る 可 能 性 もあ る

︒ 反 面︑ 重 過 失 損 耗が な く

︑ 軽過 失 損 耗 の 回復 費 用 の 金額 が 定 額 補 修分 担 金 の 額を 下 回っ た 場 合

︑支 払 う 必 要 のな か っ た 金員 を 支 払 っ た結 果 と な る︒ こ の よ う に結 果 的 に 利益 ま た は 不 利益 が 生 じ るの は

︑個 々 の 賃 借人 に と っ ては 退 去 時 の 一回 限 り の こと で あ り

︑し か も それ は 退 去 時 にな ら な い とわ か ら な い から

︑ 予 め 不利 益 の 生 じる リ ス ク を 他に 転 嫁 し たり

︑ 分 散 す るこ と は で きな い

︒ 定 額補 修 分 担 金の 額︵ 二五 万 円

︶は

︑ 本 件賃 貸 借契 約 の 締 結に 当 た っ て

︑賃 貸 人が 経 営 上 の観 点 に 基 づ いて 予 め 決 定し た も の で ある が

︑ そ の 具 体 的な 算 定 根 拠は

北研 49(3・ )

(11)

明 らか で な く

︑賃 借 人 で あ る消 費 者 に はこ の 金 額 の 適否 を 判 断 する こ と は 不 可能 で あ る う え

︑ 賃 貸 人で あ る 事 業者 と 交 渉 して そ の 金 額の 変 更 を 求 める こ と が でき た と も 考 えら れ な い

︒ 消 費 者が 本 件 賃 貸借 契 約 締 結 時に 定 額 補 修分 担 金条 項 の 説 明を 受 け た と して も

︑ 消 費者 に は 定 額 補修 分 担 金 条項 を 承 諾 し て 賃 貸 借 契約 を 締 結 す るか し な い かの 選 択肢 し か な かっ た

︒し た が っ て定 額 補 修 分 担金 条 項 は

︑民 法 一条 二 項 に 規 定す る 基 本 原則 に 反 し て 賃借 人 の 利 益を 一 方的 に 害 す るも の で あ る

︒ d 定 額 補 修分 担 金 条 項 と同 じ よ う に建 物 賃 貸 借 契約 締 結 に あた り

︑ 契 約 当事 者 間 で 結ば れ る 条 項 には

︑ 自 然 損耗 等 によ る 原 状 回復 費 用 を 賃 料と は 別 に 貸借 人 が 負 担 する 内 容 の いわ ゆ る 敷 引 金条 項 が あ る︒ 契 約 締 結 時に 賃 借 人 が賃 貸 人に 差 し 入 れた 一 時 金 の うち 一 定 額 を賃 貸 借 契 約 終了 時 に 賃 貸人 が 取 得 す ると す る 敷 引金 条 項 が 消 費者 契 約 法 一〇 条 に該 当 す る か否 か が 判 断 され た 判 例 をみ て み

22

よ う

︒ 最高 裁 判 所 平成 二 三 年 三 月二 四 日

23

判 決は

︑ 原 則 と して

︑ 敷 引 金条 項 が 消 費 者契 約 法 一

〇条 に 該 当 す るも の で は ない と

24

した

︒ す な わち

︑ 敷 金 の 性質 を 有 す る保 証 金 の う ち一 定 額 を 控除 し

︑ 賃 貸 借契 約 終 了 時に こ れ を 賃 貸人 が 取 得 する 旨 のい わ ゆ る 敷引 金 条 項 が 賃貸 借 契 約 に付 さ れ

︑ 賃 貸人 が 取 得 する こ と に な る敷 引 金 の 額 に つ い て 契約 書 に 明 示さ れ てい る 場 合 には

︑ 賃 借 人 は︑ 賃 料 の 額に 加 え

︑ 敷 引金 の 額 に つい て も 明 確 に認 識 し た 上で 契 約 を 締 結す る の で あっ て

︑賃 借 人 の 負担 に つ い て は明 確 に 合 意さ れ て い る

︒ 賃 借物 件 の 損 耗 の発 生 は

︑ 賃貸 借 契 約 の 本 質 上当 然 に 予 定さ れ てい る も の であ る か ら

︑ 賃借 人 は

︑ 特約 の な い 限 り︑ 通 常 損 耗等 に つ い て の原 状 回 復 義務 を 負 わ ず

︑し た が っ て通 常 損耗 等 の 補 修費 用 を 負 担 する 義 務 を 負わ な い

︒ こ のよ う な 民 法上 の 規 律 を 前提 と し

︑ 当該 条 項 が 通 常損 耗 等 の 補修 費 用を 賃 借 人 に負 担 さ せ る 趣旨 を 含 ん でい る も の で ある 場 合

︑ 民法 上 負 担 す るこ と の な い通 常 損 耗 等 の補 修 費 用 を賃 借 人に 負 担 さ せる 条 項 で あ るか ら

︑ 任 意規 定 の 適 用 によ る 場 合 に比 し

︑ 消 費 者で あ る 賃 借人 の 義 務 を 加重 す る 条 項で

北研 49(3・ )

(12)

あ る︒ 賃 料 に は︑ 通 常

︑ 通 常損 耗 等 の 補修 費 用 が 含 まれ て い る とす る こ と が 任意 規 定 に よる も の で あ ると し て も

︑通 常 損耗 等 の 補 修費 用 に 充 て るた め に 敷 引金 の 額 が 契 約書 に 明 示 され て い る 場 合は

︑ 賃 料 に通 常 損 耗 等 の補 修 費 用 が含 ま れて い な い と解 す る の が 相当 で あ っ て︑ 敷 引 金 条 項に よ っ て 賃借 人 は

︑ 通 常損 耗 等 の 補修 費 用 を 二 重に 負 担 す るも の では な い

︒ また

︑ 通 常 損 耗等 の 補 修 費用 に 充 て る ため に 賃 貸 人が 取 得 す る 金員 を 賃 貸 借契 約 の 条 項 に具 体 的 に 明示 す るこ と は

︑ 通常 損 耗 等 の 補修 の 要 否 やそ の 費 用 の 額を め ぐ る 紛争 防 止 の 観 点か ら す る と︑ 不 合 理 な もの と 解 す るこ と はで き ず

︑賃 借 人 に も 利益 が あ る

︒ も っ と も

︑消 費 者 契 約 であ る 賃 貸 借契 約 に お い ては

︑賃 借 人は

︑通 常︑ 自 らが 賃 借す る 物 件 に生 ず る 通 常 損耗 等 の 補 修費 用 の 額 に つい て は 十 分な 情 報 を 有 して

お ら ず

︑ま た 賃 貸 人 との 交 渉 に よっ て 敷引 金 条 項 を 排 除 す る こと も 困 難 であ る こ と から す る と

︑敷 引 金 の 額 が敷 引 金 条 項の 趣 旨 か ら みて

高 額 に過 ぎ る場 合 に は

︑賃 貸 人 と 賃 借人 と の 間 に存 す る 情 報 の質 及 び 量 並び に 交 渉 力 の格 差 を 背 景に

︑ 賃 借 人 の利 益 を 一 方的 に 害す る も の と解 す る 余 地 があ る

︒そ う す る と︑ 消 費者 契 約 で あ る居 住 用 建 物の 賃 貸 借 契 約に 付 さ れ た敷 引 金 条 項 は︑ 当該 建 物 に 生 ずる 通 常 損 耗等 の 補 修 費 用と し て 通 常想 定 さ れ る 額︑ 賃 料の 額

︑礼 金 等 他 の一 時 金 の 授 受の 有 無 お よび そ の額 等 に 照 らし

︑ 敷 引 金 の額 が 高 額 に過 ぎ る と 評 価す べ き も ので あ る 場 合 には

︑ 当 該 賃料 が 近 傍 同 種の 建 物 の 賃料 相 場に 比 し て 大幅 に 低 額 で ある な ど 特 段の 事 情 の な い限 り

︑ 信 義則 に 反 し て 消費 者 で あ る賃 借 人 の 利 益を 一 方 的 に害 す るも の で あ って

︑消 費 者 契 約 法一

〇 条 に よ り無 効 と な る

︒こ れを 本 件 に つい て み る と

︑敷 引 金 特 約 が本 件 賃 貸 借 契 約 締結 か ら 明 渡し ま で の 経 過年 数 に 応 じて 一 八 万 円 ない し 三 四 万円 を 本 件 保 証金 か ら 控 除す る と い う もの

で あ っ て︑ 敷 引金 の 額 が

︑契 約 の 経 過 年数 や 本 件 建物 の 場 所

︑ 専有 面 積 等 に照 ら し

︑ 本 件建 物 に 生 ずる 通 常 損 耗 等の 補 修 費 用と し て通 常 想 定 され る 額 を 大 きく 超 え る もの で な い

︒ま た

︑本 件 契 約 に おけ る 賃 料 は 月額 九 万 六

〇〇

〇 円 で あ って

︑ 本 件 敷引 金 の 額 は︑ 上 記 経 過 年数 に 応 じ て上 記 金 額 の 二倍 弱 な い し三 쐚五 倍 強 にと ど ま っ て いる

︒ さ ら に賃 借 人 は

︑本

北研 49(3・ )

(13)

件 契約 が 更 新さ れ る 場 合 に一 か 月 分 の賃 料 相 当 額 の更 新 料 の 支払 義 務 を 負 う ほ か に は︑ 礼 金 等 他 の一 時 金 を 支払 う 義務 を 負 っ てい な い

︒ そ うす る と 敷 引金 条 項 は

︑ 敷引 金 の 額 が高 額 に 過 ぎ ると の 事 情 はな い か ら

︑ 信義 則 に 反 して 消 費者 の 利 益 を一 方 的 に 害 する も の で はな い

︒ 次に 最 高 裁 判所 平 成 二 三 年七 月 一 二 日

25

判 決 を み て みよ う

︒ 同 判決 は

︑ 敷 引 金条 項 が 消 費者 契 約 法 一

〇条 の 前 段 要件 を 具備 す る と した う え で

︑ 後段 要 件 の 該当 性 を 検 討 して い る

︒ すな わ ち

︑ 賃 貸借 契 約 に おい て 賃 借 人 が賃 貸 人 に 対し て さま ざ ま な 一時 金 を 支 払 う︒

賃貸 人 は

︑通 常

︑賃 料 の ほ か 種 々の 名 目 で 授受 さ れ る 金 員を 含 め

︑こ れら を 総 合 的に 考 慮し て 契 約 条件 を 定 め る︒ 他 方 賃借 人 は

︑ 賃 料の ほ か に 賃借 人 が 支 払 うべ き 一 時 金の 額

︑ そ の 全部 な い し 一部 が 建物 の 明 渡 後も 返 還 さ れ ない 旨 の 契 約条 件 が 契 約 書に 明 記 さ れて い れ ば

︑ 賃貸 借 契 約 の締 結 に 当 た って

︑ 当 該 契約 に よっ て 自 ら が負 う こ と と なる 金 銭 的 な負 担 を 明 確 に認 識 し た 上︑ 複 数 の 賃 貸物 件 の 契 約条 件 を 比 較 検討 し て

︑ 自ら に とっ て よ り 有利 な 物 件 を 選択 す る

︒賃 貸 人 が 契 約 条件 の ひ と つと し て 定 め たい わ ゆ る 敷引 金 条 項 を 賃借 人 が 明 確に 認 識し た う え で︑ 賃 貸 借 契 約締 結 に 至 った 場 合 は

︑ 賃貸 人

・ 賃 借人 双 方 の 経済 的 合 理 性を 有 す る 行 為 と 評 価 すべ き もの で あ る

︒敷 引 金 の 額 が賃 料 等 の 額等 に 照 ら し

︑高 額 に 過 ぎる な ど の 事 情の な い 限 り︑ 敷 引 金 条 項は

︑ 信 義 則に 反 し賃 借 人 で ある 消 費 者 の 利益 を 一 方 的に 害 す る も ので な い

︒ これ を 本 件 に つい て み る と︑ 敷 引 金 の 額が 月 額 賃 料の 三 쐚五 倍 程 度 で あっ て

︑近 傍 同種 の 建 物 賃貸 借 契 約 に 付さ れ る 敷 引金 条 項 に お ける 敷 引 金 の額 の 相 場 と 比べ て も 大 幅に 高 額で あ る こ とも う か が わ れな い

︒ e 定 額 補 修分 担 金 に 関 する ふ た つ の京 都 地 方 裁 判所 の 判 決 は︑ 賃 借 人 か ら賃 貸 人 に 対し

︑ 契 約 締 結時 に 交 付 され る 定額 補 修 分 担金 の 法 的 性 質が 目 的 物 の使 用

・ 収 益 の対 価 と 評 価さ れ る と き は︑ 原 則 と して 賃 料 と の 二重 払 い に なる と する

︒ 賃 料 とし て の 性 質 をも た な い とき

︑ ま た は 賃料 と し て の性 質 を も つ もの の 賃 料 月額 と 賃 借 人 が返 還 を 求 める

北研 49(3・ )

(14)

金 銭の 総 和 が 賃料 総 額 と し て算 定 さ れ てい る と き は

︑定 額 補 修 分担 金 を 賃 貸 人が 収 受 す るこ と の 合 理 性な い し 相 当性 あ るい は 契 約 締結 過 程 に お ける 交 渉 の 可能 性 か ら 消 費者 契 約 法 一〇 条 後 段 該 当性 を 判 断 する と す る

︒ これ に 対 し 敷引 金 条項 に 関 す る最 高 裁 判 所 の判 決 は

︑ 契約 締 結 過 程 にお け る 賃 借人 へ の 契 約 条項 の 明 示

︑こ れ に 基 づ く契 約 当 事 者の 明 確な 合 意 あ ると き は

︑ 敷 引金 の 額 の 明示 か ら 賃 借 人の 負 担 と なる 額 を 認 識 し︑ 契 約 当 事者 間 の 紛 争 防止 に な る こと の メリ ッ ト が 賃借 人 に 存 在 する か ら

︑ 正当 な 条 項 で ある と い う

︒し か し

︑ 敷 引金 額 と 予 想さ れ る 補 修 費用 額 と の 均衡 が 崩れ る な ら ば︑ こ れ が 契 約当 事 者 間 に存 在 す る 情 報︑ 交 渉 力 の偏 在 を 物 語 り︑ 当 該 敷 引金 条 項 は 不 当な 条 項 と 認め ら れる と い う

︒す な わ ち

︑ 賃借 人 が 複 数の 賃 借 物 件 から 自 己 に 有利 な 条 件 で 賃借 物 件 を 選択 で き る と いう 市 場 原 理を も って し て も 事業 者 と 消 費 者の 置 か れ た地 位 の 均 衡 が受 忍 で き ない ま で に 乖 離し て い る とき に

︑ 信 義 則に 反 す る と理 解 する

︒ 最 高 裁判 所 は

︑ 市 場原 理 の も とで 契 約 が 締 結さ れ る 限 り︑ 敷 引 金 に 関わ る 条 項 は︑ 原 則 と し て︑ 有 効 で ある と 解し て い る ので あ る

︒ f 敷 引 金 条項 に 関 す る 最高 裁 判 所 のこ の よ う な 見解 は

︑ そ の後 の 更 新 料 に関 す る 最 高裁 判 所 の 判 断を 伺 わ せ るこ と とな る

︒ 定 額補 修 分 担 金 や敷 引 金 と 同様 に

︑ 建 物 賃貸 借 契 約 にお い て 賃 借 人が 賃 貸 人 に交 付 す る 一 時金 に 更 新 料が あ る︒ 更 新 料 の法 的 性 質 は

︑定 額 補 修 分担 金 や 敷 引 金同 様 に 複 数の 見 解 が あ る︒ 更 新 料 の消 費 者 契 約 法一

〇 条 該 当性 に つい て の 最 高裁 判 所 の 見 解を 以 下 に みて み

26

よ う

︒ 最高 裁 判 所 平成 二 三 年 七 月一 五 日

27

判 決は

︑ あ る 条 項が 信 義 則 に反 し て 消 費 者の 利 益 を 一方 的 に 害 す るも の で あ るか 否 かは

︑ 消 費 者契 約 法 の 趣 旨︑ 目 的 に 照ら し

︑ 当 該 条項 の 性 質

︑契 約 が 成 立 する に 至 っ た経 緯

︑ 消 費 者と 事 業 者 との 間 に存 す る 情 報の 質 お よ び 量並 び に 交 渉力 の 格 差 そ の他 諸 般 の 事情 を 総 合 考 量し て 判 断 され る と の 見 解を 採 用 す る︒ そ して こ の 見 解か ら 更 新 料 に関 す る 条 項が 消 費 者 契 約法 一

〇 条 に該 当 す る か 否か を 判 断 する

︒ す な わ ち︑ 更 新 料 は︑

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(15)

当 初の 契 約 期 間 が 満了 し

︑ 賃 貸 借契 約 を 更 新す る 際 に

︑ 賃借 人 と 賃 貸人 と の 間 で 授受 さ れ る 金員

であ っ て

︑ 一般 に

︑賃 料 の 補 充な い し 前 払︑ 賃 貸借 契 約 を 継 続す る た め の 対価 等 の 趣 旨を 含 む 複 合 的な 性 質 を 有す る

︒更 新 料 が この よ うな 複 合 的 な性 質 を 有 す るこ と は

︑ 更新 料 の 支 払 には 少 な か らず 経 済 的 合 理性 が 存 在 する こ と を 表 す︒ ま た

︑ 一定 の 地域 に お い て︑ 期 間 満 了 の際 に 賃 借 人が 賃 貸 人 に 対し 更 新 料 を支 払 う 事 例 が少 な か ら ず存 在 す る こ とは 公 知 の 事実 で あり

︑ 従 前 裁判 上 の 和 解 手続 等 に お いて

︑ 更 新 料 条項 が 公 序 良俗 に 反 す る など の 理 由 から 当 然 に 無 効で あ る と の取 扱 いが さ れ て こな か っ た こ とは 裁 判 所 に顕 著 な 事 実 であ る

︒ こ れら の 点 か ら する と

︑ 更 新料 条 項 が 賃 貸借 契 約 書 に一 義 的か つ 具 体 的に 記 載 さ れ

︑賃 借 人 と 賃貸 人 と の 間 に更 新 料 の 支払 に 関 す る 明確 な 合 意 が成 立 し て い る場 合

︑ 賃 借人 と 賃貸 人 と の 間に

︑更 新 料 条 項 に 関す る 情 報 の質 お よ び 量 並び に 交 渉 力に つ い て

︑ 看 過 し得 な い ほ ど の格 差 が 存 する と みる こ と も でき な い

︒ そう す る と

︑ 賃 貸 借 契 約 書に 一 義 的 かつ 具 体 的 に 記載 さ れ た 更新 料 条 項 は

︑更 新 料 の 額が 賃 料の 額

︑ 賃 貸借 契 約 が 更 新さ れ る 期 間等 に 照 ら し

︑高 額 に 過 ぎる な ど の 特 段の 事 情 が ない 限 り

︑ 信 義則 に 反 し て消 費 者の 利 益 を 一方 的 に 害 す るも の に は 当た ら な い

︒ これ を 本 件 につ い て み る と︑ 更 新 料 条項 は

︑ 契 約 書に 一 義 的 かつ 明 確に 記 載 さ れ︑ 更 新料 の 額 は 賃 料の 二 か 月 分で あ り

︑賃 貸 借 契 約が 更 新 さ れる 期 間 を 一 年間 と す る もの で あ る か ら︑ 上 記特 段 の 事 情が あ る と は いえ ず

︑ 更 新料 条 項 を 消 費者 契 約 法 一〇 条 に よ り 無効 と す る こと は で き な い︒ 消費 者 契 約 法一

〇 条 は

︑ 任意 法 規 に よる 場 合 と 比 較し て 契 約 当事 者 間 に あ る不 均 衡 を 正当 化 し う る 合理 的 理 由 がな く

︑こ れ に よ って も た ら さ れる 権 利

・ 義務 の 不

28

均 衡 によ っ て 消 費者 の 地 位 が 信義 則 に 照 らし て 一 方 的 に不 利 に な って い ると 認 め ら れる 条 項 を 無 効と す る も ので

29

あ る

︒ 消 費者 と 事 業 者の 間 の 当 該 条項 に 関 わ る情 報 の 質

・ 量や 交 渉 力 の格 差 を背 景 と し て︑ 消 費 者 の 法的 に 保 護 され て い る 利 益に 合 理 性 のな い 不 均 衡 を生 じ さ せ

︑負 担 を 負 わ す条 項 を 無 効と す るの で あ る

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(16)

当該 契 約 条 項の 存 否 が 当 事者 の 権 利 関係 に も た ら す影 響

︑ と りわ け 消 費 者 にと っ て 一 方的 に 不 利 益 とな る 権 利 関係 が もた ら さ れ る契 約 条 項 に は︑ 不 当 性 が高 い

︒ こ の よう な 不 当 性が 承 認 さ れ る不 均 衡 に は︑ 当 該 条 項 自身 か ら 客 観的 に 導き 出 さ れ る不 均 衡 と 当 該条 項 が 具 体的 事 案 の あ る状 況 下 に おい て 生 ま れ る不 均 衡 と があ る

︒ 消 費 者契 約 法 一

〇条 該 当性 判 断 に あた っ て は

︑ この 両 者 を 区別 す る 必 要 が

30

あ る

︒ g 新 法 に よる 被 害 消 費 者救 済 の 可 能性

⎜ 얧 個 々の 消 費 者 の 事情

の 存 在の 可 能 性 賃借 人 が 定 額補 修 分 担 金

︑敷 引 金

︑更 新 料 とし て 賃 貸 人 に交 付 し

︑賃 貸 人 が収 受 す る こ とと な る 金 員の 法 的 性 質 は︑ 一 義的 に 明 ら かで は な く

︑ 複合 的 で あ る︒ こ の 複 合 的性 質 を 有 する 金 員 を 賃 貸人 は 事 業 全体

︑ 経 営 上 の観 点 か ら リス ク 回避 を 考 慮 しつ つ そ の 額 を定 め る

︒ 他方 賃 借 人 は

︑交 付 後 に その 額 の 相 当 性が 判 断 で きる よ う に な り︑ あ ら か じめ こ の当 否 を 判 断す る 方 法 が ない

︒ま た

︑具 体 的 な 根 拠が 賃 貸 人 か ら明 示 さ れ てい な い か ら 金額 の 適 否 を判 断 で き な い︑ と 事例 2 と 二 つの 京 都 地 方 裁判 所 の 判 決は い う

︒ そ して

︑ 定 額 補修 分 担 金 条 項を 原 則 と して 無 効 と す る︒ し か し

︑そ の 後の 敷 引 金 条項 や 更 新 料 条項 で の 最 高裁 判 所 の 見 解か ら す る と︑ 事 例 2 と 二つ の 京 都 地方 裁 判 所 の 定額 補 修 分 担金 条 項は

︑ 有 効 と判 断 さ れ る 可能 性 が あ る︒ 最高 裁 判 所 平成 二 三 年 三 月二 四 日 判 決は

︑ 消 費 者 契約 で あ る 居住 用 建 物 の 賃貸 借 契 約 に付 さ れ た 敷 引金 条 項 が 原則 と して 消 費 者 契約 法 一

〇 条 に該 当 し な いと い う

︒ し かし 例 外 と して

︑ 当 該 建 物に 生 ず る 通常 損 耗 等 の 補修 費 用 と して 通 常想 定 さ れ る額

︑ 賃 料 の 額︑ 礼 金 等 他の 一 時 金 の 授受 の 有 無 及び そ の 額 等 に照 ら し

︑ 敷引 金 の 額 が 高額 に 過 ぎ る場 合 にお い て

︑ 当該 賃 料 が 近 傍同 種 の 建 物の 賃 料 相 場 に比 し て 大 幅に 低 額 で あ るな ど 特 段 の事 情 あ る と き︑ 敷 引 金 条項 は

︑信 義 則 に 反し て 消 費 者 であ る 賃 借 人の 利 益 を 一 方的 に 害 す るも の と 評 価 され

︑ 消 費 者契 約 法 一

〇 条に よ り 無 効と な る︑ とい う

︒ま た

︑最 高 裁判 所 平 成 二三 年 七 月 一 二日 判 決 も 同様 の 見 解 に 立ち

︑敷 引 金 条項 は 原 則 とし て 有 効 と し︑

北研 49(3・ )

(17)

無 効と な る 例 外事 由 と し て 敷引 金 の 額 が賃 料 等 の 額 等に 照 ら し

︑高 額 に 過 ぎ るな ど の 事 情を 挙 げ る

︒ この 特 別 事 情の 存 否の 判 断 に おい て 敷 引 金 の額 が 月 額 賃料 の 三 쐚五 倍程 度 で あ る こと

︑近 傍 同 種の 建 物 賃 貸借 契 約 に 付 され る 敷 引 特約 に おけ る 敷 引 金特 約 の 相 場 と比 べ て も 大幅 に 高 額 で ある こ と も うか が わ れ な いこ と 等 の 事情 を 挙 げ る

︒こ の 最 高 裁判 所 判決 の な か で岡 部 判 事 は

︑以 下 の 反 対意 見 を 述 べ る︒ す な わ ち︑ 敷 引 金 の 性質 が 個 々 の契 約 ご と に 異な り う る もの で ある か ら

︑ 一時 金 で あ る 敷引 金 が い かな る 性 質 を 有す る も の であ る か

︑ 具 体的 内 容 が 明示 さ れ な け れば 敷 引 金 の額 の 妥当 性 を 検 討す る 機 会 や 交渉 す る 機 会の な い 状 況 が生 ま れ る

︒こ の 状 況 こ そが 消 費 者 契約 の 特 徴 で あっ て

︑ こ のよ う な状 況 か ら 消費 者 を 保 護 する こ と が 必要 で あ る

︒ 消費 者 契 約 にお け る 対 価 ない し 対 価 に対 応 す る 利 益の 具 体 的 な内 容 の明 示 に よ って

︑ 消 費 者 の契 約 締 結 の自 由 を 実 質 的に 保 障 す るこ と と な る

︒こ の 反 対 意見 に 対 し 田 原判 事 は

︑ 以下 の よう な 補 足 意見 を 述 べ る

︒す な わ ち 一時 金 の 法 的 性質 に つ い ての 具 体 的 内 容を 明 示 す べき と い う が

︑そ も そ も 一時 金 の概 念 が 必 ずし も 明 確 と なっ て い な い︒ 一 時 金 の 名目 が 必 ず しも 同 一 の 法 的性 質 を 表 象し て い な い

︒一 時 金 に つい て の慣 行 が 地 域ご と に お い て著 し い 差 異が 存 在 す る とい う 実 態 から 一 時 金 の 法的 性 質 を 一般 化 し て 論 じる こ と は 困難 で ある

︒ この よ う な 見解 の 対 立 が みら れ る も のの

︑ 多 数 意 見は

︑ 敷 引 金条 項 に 基 づ く敷 引 金 の 金額 が 賃 料 等 に比 し て 高 額で あ るこ と が 契 約当 事 者 間 に おけ る 個 別 事情 の 問 題 で あっ て

︑ 敷 引金 条 項 そ の もの の 一 般 的有 効 性 と は 異な る 問 題 であ る

︑と 理 解

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す る︒ 最高 裁 二 三 年七 月 一 五 日 判決 は

︑ 更 新料 条 項 が 賃 貸借 契 約 書 に一 義 的 か つ 具体 的 に 記 載さ れ

︑ 賃 借 人と 賃 貸 人 との 間 に更 新 料 の 支払 に 関 す る 明確 な 合 意 が成 立 し て い る場 合 に

︑ 賃借 人 と 賃 貸 人と の 間 に

︑更 新 料 条 項 に関 す る 情 報の 質 およ び 量 並 びに 交 渉 力 に つい て

︑ 看 過し 得 な い ほ どの 格 差 が 存す る と み る こと も で き ない

︑ と い う

︒す な わ ち

︑格

北研 49(3・ )

(18)

差 の存 在 を 容 認し

︑ 看 過 し えな い 程 度 の格 差 が み ら れる と き

︑ 信義 則 に 反 す ると 理 解 す る︒ これ ら 三 件 の最 高 裁 判 所 の

32

見 解 か ら する と

︑ 当 該 条項 を 契 約 当事 者 が ど の よう に 理 解 した か は さ て おき

︑ 当 該 条項 の 有効 性 は

︑ 一般 的

・ 抽 象 的に 判 断 さ

33

れる

︒ 当 該 契 約条 項 の 内 容が 客 観 的 に みて 不 公 正 であ る と し て

︑抽 象 的 な 評価 を 行う 点

︵ 例 えば

︑ 賃 貸 借 契約 書 へ の 一義 的 か つ 具 体的 な 更 新 料の 記 載 の 有 無︶ に お い ては

︑ 正 当 と いえ よ う

︒ しか し

︑最 高 裁 判 所の い う 特 段の 事 情 の存 否 す な わ ち︑ 建 物 へ の入 居 期 間 に 応じ て 通 常 損耗 等 の 程 度 も増 加 す る よう な 経過 年 数 に 応じ た 敷 引 金 額の 設 定 の 有無

︑ 賃 料 の 額︑ 賃 貸 借 契約 が 更 新 さ れる 期 間 等 と照 ら し た 更 新料 の 高 額 さか ら 当該 条 項 の 不当 性 を 吟 味 しえ な い こ とが

︑ 消 費 者 契約 に お け る消 費 者 の 特 性で あ る こ とを 考 慮 し て いな い

︒ この 三 件 の 最高 裁 判 所 の 見解 に よ る 限り は

︑ 定 額 補修 分 担 金 条項

︑ 敷 引 金 条項

︑ 更 新 料条 項 に 特 段の 事 情 が存 在 する と の 不 当性 か ら 被 害 回復 裁 判 手 続を 利 用 す る こと は 困 難 であ ろ う

︒ 建 物へ の 入 居 期間 に 応 じ て 通常 損 耗 等 の程 度 も増 加 す る よう な 経 過 年 数に 応 じ た 敷引 金 額 の 設 定の 有 無

︑ 賃料 の 額

︑ 賃 貸借 契 約 が 更新 さ れ る 期 間等 と 照 ら した 更 新料 の 高 額 さと い う 特 段の 事 情 は︑ 法 律 案 二 条四 項 の 個々 の 消 費 者 の事 情 に 該当 す る こ と にな る か ら であ る

14 15

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北研 49(3・ )

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