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国境を越えた代理懐胎と公序 : ドイツでの議論を 中心に

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国境を越えた代理懐胎と公序 : ドイツでの議論を 中心に

著者 林 貴美

雑誌名 同志社法學

巻 68

号 7

ページ 2755‑2808

発行年 2017‑02‑28

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2019.0000000133

(2)

    同志社法学 六八巻七号六〇七二七五五

――ドイツでの議論を中心に――

             

         

(3)

    同志社法学 六八巻七号六〇八二七五六

はじめに

  二〇一二年のハーグ国際私法会議常設事務局の報告によると、二〇〇六年から二〇一〇年の間に代理懐胎の実施数は十倍ほど増加し、国境を越えて代理懐胎を試みようとする者の数も増加しているという 1

。それを反映するかのように、自国で代理懐胎が禁じられているカップルがこれを許容する外国で代理懐胎を行い、その地で認められた依頼者カップルと子との親子関係を自国で認めてもらおうとする訴訟がヨーロッパの国内裁判所やヨーロッパ人権裁判所で次々と提起されている。

  日本においては、代理懐胎を含めた生殖補助医療を規制する法律はなく、日本産婦人科学会による自主規制に委ねられている。二〇〇三年に厚生労働省厚生科学審議会が代理懐胎を罰則付きで禁止すべきであるとの報告書

)2

を出し、同年、日本産婦人科学会もまた、対価の授受の有無を問わず、代理懐胎の実施及び斡旋への関与を会員に禁じる旨の会告 3

を出した。その後、法務省法制審議会生殖補助医療部会は、代理懐胎を禁止することを前提に分娩した女性を母とする旨の規定を設ける中間試案 4

を出した。二〇〇五年には、五〇歳代の夫婦が米国で代理懐胎により双子を得たケースが日本の法廷で初めて争われ 5

、二〇〇六年には、代理懐胎により生まれた子らと依頼者である日本人夫婦との親子関係を認める米国ネバダ州裁判所の裁判を東京高裁が承認した 6

。しかし、最高裁はこの判断を是認せず、ネバダ州裁判所の裁判を公序に反するとして破棄自判した(最二小決平成一九年三月二三日) 7

。二〇〇八年には、法務大臣・厚生労働大臣の依頼を受けた日本学術会議生殖補助医療の在り方検討委員会が﹁代理懐胎を中心とする生殖補助医療の課題︱社会的合意に向けて︱﹂と題する報告書を公表した 8

。同報告書では、①代理懐胎については、現状のまま放置することは許されず、法律による規制が必要であり、当面、代理懐胎は原則禁止とすることが望ましい。②営利目的で行われる代理懐胎には、

(4)

    同志社法学 六八巻七号六〇九二七五七 処罰をもって臨む。処罰は、施行医、斡旋者、依頼者を対象とする。③ただし、先天的に子宮をもたない女性及び治療として子宮の摘出を受けた女性に対象を限定した、厳重な管理の下での代理懐胎の試行的実施は考慮されてよい、といった提言がなされた。それから、すでに八年の年月が過ぎ去ろうとしているが、立法の見通しは今もなお立っていない 9

  前述の最高裁決定の結論に関しては、多くの評釈において肯定的に受け入れられていると評価できる。筆者自身も、代理懐胎に関わる立法作業が禁止の方向で当時進行中で、しかも代理懐胎が禁止されているのに等しい状況にあったことから、ネバダ州裁判所の裁判を承認することは立法に先立ち一定のルールを示すことになり、内国法秩序に及ぼす影響も大きいと指摘した ₁₀

。そして、最高裁決定補足意見と同様に、代理懐胎によって生まれた子の法的な保護は養子縁組という方法で実現すべきであると述べた。養子縁組による親子関係の形成を認める見解は、他にも見受けられ ₁₁

、依頼者夫婦との特別養子縁組を認めた審判例も公表されている ₁₂

  一方、本稿で取り上げるドイツは、明確に法律上代理懐胎を禁止し、刑罰規定までも有しており、外国での代理懐胎に基づき外国で成立した親子関係は公序に反するとする一連の裁判例が下されていた。ところが、ドイツ連邦通常裁判所は、二〇一四年一二月一〇日決定において、依頼者同性カップルと代理懐胎により生まれた子との親子関係を認める米国カリフォルニア州裁判所の裁判は公序に反せず、子の福祉の観点から承認し得るもので、依頼者らとの親子関係を認める旨判示した。

  日本よりも代理懐胎について厳格な態度をとるドイツでの方向転換は、ヨーロッパの異国での出来事であり、日本におけるこれまでの議論にまったく影響を与えないと言えるものだろうか ₁₃

。このような疑問から、本稿では、ドイツでの議論を参考に、国境を越えた代理懐胎をめぐる問題について再考することにした次第である。再考にあたり、ヨーロッ

(5)

    同志社法学 六八巻七号六一〇二七五八

パにおける近時の代理懐胎に関する裁判例を概観し、連邦通常裁判所決定が下された当時のヨーロッパの状況をまずみておくこととする。それに続き、同決定を正確に理解するため、ドイツにおける代理懐胎に対する法規制の状況や、同決定以前の国際的な代理懐胎事案における法的解決のあり方を紹介し、その後、同決定を取り上げ、検討を進めていくこととする。

一  ヨーロッパにおける近時の裁判例

1   公 序 違 反 肯 定 類 型

  代理懐胎を禁止するフランスでは、破棄院が二〇一一年四月六日に三つの判決を下し、米国での代理懐胎により生まれた子と遺伝的繋がりを有する依頼者夫婦との親子関係の成立を公序に反するとして認めなかった ₁₄

。代理懐胎を対象とする合意に効果を与えることは、フランス法の基本原則である人体と民事身分の処分不可能性の原則及び他の者のために出産または懐胎するためのいかなる合意をも禁止する民法一六条の七及び一六条の九に反し、フランスの公序に反するのであって、この判断は、ヨーロッパ人権条約八条違反にも国連の児童の権利条約三条に定める子の最善の利益の侵害にも当たらないと判示した。さらに、フランスは、代理懐胎により生まれた子と依頼者夫婦との事後の養子縁組 ₁₅

、認知、身分占有による親子関係の形成も徹底して認めないというように代理懐胎に対して強硬な姿勢をとっていた ₁₆

  二〇〇六年に代理懐胎を全面的に禁止する法律が施行されたスペインでは、子を持ちたいと望む夫婦が国外に流れたためか、その翌年に一〇〇〇人程度の子が米国で代理懐胎により生まれたとの報告がなされている ₁₇

。スペイン最高裁判所は、二〇一四年二月六日判決において代理懐胎に基づくスペイン人男性の同性婚カップルとの親子関係を認めた米国

(6)

    同志社法学 六八巻七号六一一二七五九 カリフォルニア州裁判所の判決は、公序に反し承認することができないと判示した ₁₈

。代理懐胎を禁止しているスペイン法を意図的に回避したものであることが重視されたようである ₁₉

。児童の権利条約三条の子の最善の利益に関しては、その具体化を検討するに当たっては、個人的な観点に依拠してはならず、国内法及び国際法の諸原則に内在する社会通念も考慮に入れなければならず、法律に違反するような親子関係は子の利益に反するし、代理母出産の商業化によって子が商取引の対象となり子の尊厳が侵害される危険性があることが指摘されている ₂₀

。また、ヨーロッパ人権条約八条についても、ワーグナー事件判決 ₂₁

を引用し、侵害がないと判断している ₂₂

。しかし、法廷意見に付された反対意見では、﹁子の最善の利益は最上位に位置づけられる権利であり、法律に基づき公序の保護が求められるとしても、子の最善の利益に反してはならない。親子関係において差別されない権利は公序を前提とするが、親子関係の原因に違法性があるからといって、公的当局によろうが私的機関によろうが、いかなる差別的扱いも正当化され﹂ず、公序違反として国内法を適用し、保護者のいない状況に子を置くおそれがあり、本件子の最善の利益は侵害される結果となると述べられている ₂₃

。この判決により数十組の同性カップルの代理懐胎により出生した子の出生届が不受理となったものの、スペイン政府は、代理懐胎を容認する国で出生した子の出生届については受理する方針を決定しているとのことである ₂₄

  ドイツにおいても、公序に反するとする一連の裁判例が下されていたが、これについては後述する。

2   公 序 違 反 否 定 類 型 ― オ ー ス ト リ ア

  オーストリアでは、生殖補助医療法で体外受精のための卵子はそれが得られた女性に用いることができると規定することで(三条三項)、代理懐胎は禁止されており、出産した女性を母とする規定がある ₂₅

(民法一三七条b)。それにもかかわらず、オーストリアでは、前述1でとりあげた国々と異なり、公序違反とならない旨の憲法裁判所判決がこれまで

(7)

    同志社法学 六八巻七号六一二二七六〇

に二つ下されている。

  二〇一一年一二月一四日判決は、イタリア人夫とオーストリア人妻が二人の配偶子からなる受精卵を用いて米国ジョージア州で代理懐胎してもらい、依頼者夫婦を子の父母とするジョージア州裁判所の裁判の承認が問題となったものである ₂₆

。憲法裁判所は、ジョージア州の代理懐胎に関する実質法を強行的な適用を欲する規定であると捉えている(判決理由

3 . 4 Ⅲ

₂₇

₂₈

。そして、代理懐胎を禁止する生殖補助医療法の規定は、強行規定ではあるが、オーストリアの基本的価値の構成要素でもなければ、代理懐胎を禁止するという点においても憲法上命じられているものでもないとする(

4 . 1

)。さらに、ジョージア州の裁判を承認せず、オーストリア民法に基づき、子の生物学上の母を法的な母とせず、生物学上の母でなく、子の本国法上も母とされず、子の母となる意思もなく、子と家族共同体も構成していない代理母に母の役割を強いることは、子の福祉に明らかに反するであろう(

4 . 2

)と述べて、ジョージア州の裁判の承認は公序に反しないと判示した。

  二〇一二年一〇月一一日判決は、オーストリア人夫婦が二人の配偶子からなる受精卵を用いてウクライナで代理懐胎を実施したケースである ₂₉

。ウクライナの身分登録官により交付された出生証書には、オーストリア人夫婦が子らの法的な父母として記載されていた。同判決においては、二〇一一年一二月一四日判決を基本的に引用し、生殖補助医療法の規定及びこれと結びつく身分関係の問題を規律する民法の規定は、オーストリア法秩序の基本的価値の構成要素ではなく、代理懐胎を禁止するという点においても憲法上命じられていないと述べた(判決理由

6

のたしとるす反に祉福の子は、こるすと母の子を母理代(と)。ア判子は止禁の懐理代の胎リは決理由中で、オースト ななも思意るずと母の子、れ、くい子と家族共同体も構成してないとさ母物でもせず、生学上の母なく、子の本国法上 オの承認をたーストリ証書し生出のナイラクウた法得取アこ秩物と母な的法を母の上学生序、でとユるす絶拒にめのを

5

ーィテスポア、てしそ)。

(8)

    同志社法学 六八巻七号六一三二七六一 利益よりも下位におかれ、それゆえ公序条項をこれに適用しないことは正当であるとする文献が引用されている。そして、憲法上、当該親子関係の判断についてオーストリア民法一三七条bを強行的に適用することは許されず、ヨーロッパ人権条約八条に照らし、親子関係の決定について外国法秩序及び外国の真正な公的文書という証拠が決定的なものであり(

6

)、オーストリア法の適用は子の私生活及び家族生活の尊重を受ける権利を侵害すると判示した(

7

)。

  もっとも、二〇一一年判決でのジョージア州の規定を強行規定と捉えた点や二〇一二年判決でのウクライナ出生証書について承認アプローチをとった点について批判がある ₃₀

3   ヨ ー ロ ッ パ 人 権 裁 判 所

  前述1で紹介したフランスの事件のうちの二ケースは、その後ヨーロッパ人権裁判所に提訴された。ヨーロッパ人権裁判所は、二〇一四年六月二六日、依頼者夫婦と子との親子関係の成立を認める米国州裁判所の裁判を承認せず親子関係を認めないことはヨーロッパ人権条約八条に反するとの判断を示した(

M en ne ss on

事件・

L ab as sé e

事件) ₃₁

。子がフランスで依頼者夫婦と事実上生活できている以上、ヨーロッパ人権条約八条に基づく家族生活の尊重を受ける権利の侵害は認めなかったが、子の私生活の尊重を受ける権利が侵害されていると認めたのである。以下、権利侵害を認めた点を中心に、少し長くなるが、その判旨を紹介しよう。

  繊細な倫理的問題に関わる代理懐胎に関してはヨーロッパにおいてコンセンサスが得られていない状況にあり(

§ 78

₃₂

、締約国には、代理懐胎を認めるかどうか、代理懐胎契約の結果として外国で出生した子と依頼者らとの法的な親子関係を認めるかどうかに関して、原則として広範な評価の余地が与えられている(

79

)。しかしながら、法的親子

(9)

    同志社法学 六八巻七号六一四二七六二

関係という子のアイデンティティという本質的な問題に関わるため、本件においては、フランスに与えられた評価の余地は制限される必要がある(

80

)。

  私生活の尊重は、すべての者が人間としてアイデンティティを確立できることを要請し、それには、親子関係も含まれる。フランスは、子らが別の国では申立人らの子としてのアイデンティティを有していることを認識しているにもかかわらず、フランス法の下ではその身分を彼らに拒絶している。当裁判所は、このような矛盾は、フランス社会における子らのアイデンティティを侵害していると考える(

96

)。

  条約八条は、特定の国籍を取得する権利を保障していないが、国籍は個人のアイデンティティの構成要素の一つである。子らの生物学上の父がフランス人であるにもかかわらず、子らはフランス国籍を承認してもらえるかに関して不確定な状況にあり、この不確定さのために、自身のアイデンティティの明確化に否定的影響を受けている(

97

)。

  子らは、依頼者夫婦から受遺者としてしか相続することができず、相続においても影響を受ける。これは、子らの親子関係に関するアイデンティティの一構成要素である(

98

)。

  フランスが、自国の領域内で禁じられている生殖補助医療を用いるために外国に行くことを自国民に思いとどまらせようとすることは容認できる。しかし、親子関係をフランス法上承認しないことの影響は、子自身にも及び、子の私生活の尊重を受ける権利に及ぶ。すなわち、すべての者が人間として、親子関係も含めてそのアイデンティティを確立できなければならないことを意味するが、これに影響が及ぶのである。したがって、この状況と子の最善の利益との適合性という重大な問題が生じる。子の最善の利益の尊重こそが、子に関わる判断すべての指針とされなければならない(

99

)。

  この分析は、本件のように、親の一方が子の生物学上の父でもある場合には、特別な様相を呈する。アイデンティテ

(10)

    同志社法学 六八巻七号六一五二七六三 ィの一構成要素としての生物学上の親子関係の重要性を考慮すると、この関係が生物学的に証明され、当該子と親がその完全な承認を求めているとき、このような性質の法的関係を子から奪うことは子の利益に資するとは言えない。出生証書の身分登録簿への登録が申請されたときに、子らと彼らの生物学上の父の間の関係が承認されなかっただけでなく、父の認知や養子縁組の方法や身分占有の効果によって親子関係を承認することも、この点に関する破棄院の判例により確立されたそれらの禁止と衝突することとなる。当裁判所は、この重大な制限が子らのアイデンティティ及び私生活の尊重を受ける権利に及ぼす帰結を考慮して、国内法における子らの生物学上の父との親子関係の承認も成立も妨げることにより、フランスは、その評価の余地を逸脱したと考える。生物学上の父と子らとの法的な関係の承認と成立を阻んでおり、フランスは、認められている評価の余地の範囲を逸脱した(

10 0

)。

  競合する諸利益のバランスをとる際に子の最善の利益に与えられるべき重要性も考慮すると、子らの私生活の尊重を受ける権利侵害があったと当裁判所は判断する(

10 1

)。

  このように、ヨーロッパ人権裁判所は、遺伝的な繋がりがあるにもかかわらず、父子関係を認めず、破棄院判例が認知、養子縁組、そして身分占有による親子関係の成立も認めないことを重視して、条約八条違反があったと判断したといえる。しかし、この判決からは、遺伝的繋がりのある依頼者母や遺伝的繋がりのない依頼者父に関しては特に述べておらず、フランスと異なり、代理懐胎後に養子縁組等による依頼者カップルと子との親子関係の形成の可能性がある場合には八条違反とならないのかも読み取ることはできない ₃₃

  ハーグ国際私法会議常設事務局によると、このヨーロッパ人権裁判所の判決の諸国への影響はすでに見受けられるようである ₃₄

。フランス破棄院は、二〇一五年七月三日判決で、依頼者男性カップルがロシアで代理懐胎により子を得たケ

(11)

    同志社法学 六八巻七号六一六二七六四

ースにおいて、外国で交付されたフランス人を親の一方とする子の出生証書に基づくフランス出生登録簿への登録を、代理懐胎を理由として拒絶することは正当化されないとして、これまでの判例を変更をした ₃₅

。スペインもまた、

M en ne ss on

事件判決を受けて、法改正に着手する旨の声明を出しているとのことである ₃₆

  これに対して、ドイツでは、フランスとは異なり、依頼者と子とが養子縁組により親子関係を成立させ得る可能性もあることから、

M en ne ss on

事件判決がどのような影響をもたらすか関心がもたれていた。そのようななか、連邦通常裁判所は、二〇一四年一二月一〇日決定において、代理懐胎により生まれた子と依頼者カップルとの親子関係を認める外国裁判は公序に反せず承認されるとの判断を示したのである ₃₇

  もっとも、その後、スイス連邦最高裁判所は、前記ドイツ連邦通常裁判所決定とほぼ同様の事案において、子と遺伝的繋がりがない登録パートナーである男性と子との親子関係を認めるカリフォルニア州裁判所の裁判を二〇一五年五月二一日決定で公序に反すると判断した ₃₈

。このようにヨーロッパにおいては、国境を越えた代理懐胎をめぐる法状況は、まさに混迷しているように見える。スイス連邦最高裁の判決については、五で検討することとする。

二  ドイツにおける代理懐胎に対する法規制 ((

  ここでは、連邦通常裁判所二〇一四年一二月一〇日決定を正確に理解するため、ドイツにおける代理懐胎に対する法規制の状況や、同決定以前の国際的な代理懐胎事案における法的解決の状況を紹介し、その後、同決定を取り上げ、検討を進めていくこととする。

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    同志社法学 六八巻七号六一七二七六五

1   代 理 懐 胎 の 禁 止

  包括的に生殖補助医療を規制する法律はないが、養子縁組斡旋及び代理母斡旋禁止に関する法律(一九八九年一二月施行)が代理母の斡旋・募集や申し出の広告を有償無償を問わず禁止し、これに反した場合には自由刑または罰金刑を科す(一三条a︱一三条d)。また、胚保護法(一九九一年一月施行)は、代理懐胎に関わる生殖補助医療技術の施療を禁止し、これに違反した場合にも自由刑または罰金刑を科す(一条一項七号)。あくまでも処罰の対象は、斡旋者や医療従事者であり、依頼者や代理母自身が罰せられることはない。

  このような規定を理由に、代理懐胎契約はドイツでは良俗違反(民法一三四条)であると考えられている。

2   母 = 分 娩 者 ル ー ル の 明 文 化

  一九九八年七月施行の親子法改正法により、民法一五九一条に新たに﹁子の母は、子を分娩した女性とする﹂旨の規定が挿入された。その立法理由として、次のように説明される ₄₀

。すなわち、遺伝上の母と分娩の母とが分離することは、子の利益に即さない。いずれを母として優先すべきかと考えた場合、分娩した女性を母とすることは、妊娠の時点ですでに始まっている母子関係の保護にも資する。分娩した女性のみが妊娠中及び出産時、出産後、直接的に子と肉体的、そして心理社会的な関係を有する。そしてまた代理母となり得る女性の利益も考慮しなければならないからである。出産した女性を母とするルールを明確化することは、代理懐胎の抑止に資する、と。

  さらに、立法理由によると、代理懐胎を禁止し、分娩者を母とするルールを徹底するために、遺伝上の母である卵子提供者が代理懐胎によって生まれた子を認知することができないように、認知の前提として必要となる分娩した女性と子との母子関係の否認もできないとされる ₄₁

。そのため、依頼者夫婦の妻の方は、後述3のとおり、夫の子を養子にする

(13)

    同志社法学 六八巻七号六一八二七六六

という方法でしか、子と法的な親子関係を形成することができない。

3   純 国 内 事 案 に お け る 処 理

  分娩した女性、つまり代理母が子との遺伝的繋がりに関係なく、子の母となる(民法一五九一条)。代理母が既婚者である場合には、民法一五九二条一号により、子の出生時に子の母と婚姻していた者が子の父となる。

  民法一六〇〇条一項一号に基づき代理母の夫の父性の否認がなされた場合または代理母が未婚の場合において、依頼者夫婦の夫の精子が用いられているときは、依頼者夫は、代理母の同意のもと子を認知することができる(民法一五九四条二号、一五九五条一項)。依頼者妻は、夫による子の認知後、子と養子縁組することで初めて親子関係を成立させることができる(民法一七四一条二項三文、一七五四条以下)。男性間の登録パートナーシップの場合も同様である(生活登録パートナーシップ法九条七項)。

  もっとも、養子縁組が常に認められるわけではない。民法一七四一条一項は、どのような場合に養子縁組が許容されるかの要件を定め、養子縁組が子の福祉に資するもので、養親と養子の間に親子関係を生じさせることが望まれる場合に、養子縁組を認める(同項一文)。法律または良俗に反する斡旋等による養子縁組の場合には、それよりも厳格な要件を充足しなければならず、子の福祉の観点から当該養子縁組が必要な場合にしか養子縁組は認められない(同項二文)。この規定は、一九九八年七月施行の親子法改正法により、子の売買等を予防的に阻止するために挿入された規定である ₄₂

  代理懐胎については、多数説 ₄₃

は二文の厳格な要件を充足する必要があり、事実上の親子関係がすでにあるなど、里親に預けられるよりも依頼者による養子がより良い方法だと認定されることが必要となる。裁判例においては、代理懐胎

(14)

    同志社法学 六八巻七号六一九二七六七 契約が良俗違反であること、そして当事者らはすでに事実上ともに生活していることから、養子縁組までは不要であるとして養子縁組を許可しなかったものもあるが ₄₄

、依頼者カップルの共通子という法的に安定した地位を与えることは子の福祉にとって必要であると判断したものもある ₄₅

。学説においては、一文に定める通常の要件でよいとする見解も有力に主張されており ₄₆

、下級審にもこの立場を採用しているものがある ₄₇

三  代理懐胎に基づく渉外的親子関係の成立に関するドイツにおける法状況

1   概 説

  代理母が自らの卵子を用いて代理懐胎をすることができるか、依頼者男性でなく第三者の精子を用いることができるか、依頼者は夫婦に限定されるか、同性カップルでも可能かなど、代理懐胎を有効としている国においても施術にあたっての要件は、国により実に様々である ₄₈

。また、代理懐胎により生まれた子の法的な親の決定の仕方についても、有効な代理懐胎契約があれば、依頼者が父母として出生登録をそのまま申請できる国もあれば、さらに親子関係を確認する裁判所の裁判を必要とする法制もある。

  ドイツにおいては、国際的な代理懐胎により生まれた子の親子関係については、外国裁判がない場合には、民法施行法一九条によって決定されるが、外国裁判がある場合には、家事及び非訟事件手続に関する法律(以下、家事事件手続法) ₄₉

一〇八条に基づく承認の問題となる。いずれの場合も、公序(前者については、民法施行法六条に定める公序要件、後者については家事事件手続法一〇九条一項四号に定める公序要件)が問題となる。

  国際的な代理懐胎をめぐる裁判例もいくつか公表されている。米国のように国籍について出生地主義をとる国で代理

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    同志社法学 六八巻七号六二〇二七六八

懐胎が行われた場合には、子は米国籍を取得し、それにより渡航手続のために必要な書類を揃えることが可能であることから、依頼者らとドイツに入国することが可能となる。ところが、ウクライナやインドのように代理懐胎により生まれた子に代理母の国籍の付与を留保する国で代理懐胎が行われ、子が当該国の国籍を取得できない場合には、子がドイツのパスポートを取得しない限り、子はドイツに入国することもできず、現地で足止めされることになる ₅₀

。そういった悲劇もドイツ国内で報道されている ₅₁

。インドでの日本人が関わった代理懐胎に関する

B ab y M an ji

事件 ₅₂

と同様の事態である。このような場合に、子がドイツ国籍を有することの確認を求めるといった行政訴訟がドイツで提起されてきた ₅₃

  また、連邦通常裁判所二〇一四年一二月一〇日決定の事案のように、依頼者が異性の夫婦ではなく、ドイツにおいて認められている同性間の登録パートナーシップを締結している男性カップルの場合には、自然に子を授かることができないことが明らかなため、代理懐胎であることを明らかにしないまま出生登録を行うことができず、子の出生地で認められた依頼者カップルと子との親子関係に従い、ドイツでも出生登録されることを求めて訴訟が提起されてきた。

2   外 国 裁 判 が な い 場 合

  民法施行法一九条一項は、親子関係の成立に関し、できる限り成立を認めやすくするために ₅₄

、子の常居所地法(一文)、父母の一方との親子関係についてはその父または母の本国法(二文)、そして、母が婚姻している場合には、一四条一項による子の出生時の婚姻の効力の準拠法(三文前段) ₅₅

を選択的に適用する。

  代理懐胎との関連で、一九条に関しては次のような議論が展開されている。

(16)

    同志社法学 六八巻七号六二一二七六九

⑴   三 文 前 段 の 「 母 」

  三文前段に定める﹁母﹂の解釈である。これは、先行問題(

E rs tfr ag e

)として法廷地法であるドイツ実質法によって解決されるべきであり、代理懐胎の場合、代理母となると解する見解がある ₅₆

。これに対して、自らの本国法に基づき母子関係の存在を主張しようとする者が一九条に定める﹁母﹂であり、依頼者たる母もここに含めるべきであるとする見解がある ₅₇

⑵   三 文 前 段 の 適 用 範 囲

  三文前段については、当該母とその夫と子との親子関係のみでなく、この夫婦以外の第三者と子との親子関係についても適用されるかについて議論がある。

  婚姻当事者である夫婦以外の第三者は、婚姻の効力の準拠法が適用されるための明白な抵触法上の関連を有していないことを理由に、婚姻の効力の準拠法によって第三者と子との親子関係を判断することはできないとする見解がある ₅₈

。これに対して、二文では、条文上、本国法が適用される親の一方との親子関係の成立のみがその法により判断されるが、三文前段ではそのような限定はない。そのため、三文前段による婚姻の効力の準拠法の適用範囲は特に限定されることはなく、婚姻当事者である夫婦と子との親子関係のみならず、母の夫以外の男性が子の父であるかといった問題についても適用されるとの主張もなされている ₅₉

。また、不貞行為と妻の合意のもとで行われた代理懐胎とを同等に扱うべきでないことや、代理懐胎を認める法と親子関係を定める法との一致を導くことが望ましいことから、三文前段を制限的に解する必要はないとする見解も主張されている ₆₀

。後者二つの見解によれば、代理母夫婦の婚姻の効力の準拠法により、依頼者夫婦と子との親子関係の成立も判断され、その成立が認められやすくなる。

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    同志社法学 六八巻七号六二二二七七〇

⑶   子 の 常 居 所

  常居所は、その者の生活の中心があるところとされる。原則として、未成年の常居所は、住所のようにその両親から導かれるものでなく、両親とは独立して決定される ₆₁

。生活の中心がどこにあるのかは、時間的及び社会的観点(いろいろなものとの結びつき、家族や、友人、職業等の関係による社会的な統合)に基づいて判断される ₆₂

  しかし、幼児については、親以外の者が常居所の決定に影響を与えるような社会的な接触を有することはあまりなく、新生児となると、生活の本拠すら有していないので、子独自に常居所を決定することは難しくなる。そのような場合には、将来的にその後どこで暮らすことになるかということなどが考慮されることになる ₆₃

。そのため、外国での時間的に限られたかなり短期間の滞在中に生まれた新生児は、出生地に常居所があるということにはならない。常居所は、物理的に現存することを要件とするので、短期の外国での滞在中に生まれた子が両親の本国に常居所を有するには、本国に入国することを要する。

  ドイツ人の依頼者カップルが外国で代理母に出産してもらい、その後ドイツへの子の入国が難航し外国での滞在が長引けば、子は出生地である外国で常居所を取得することになる ₆₄

⑷   優 遇 の 原 則

  判例・通説によると、前述のとおり、一九条で列挙されている法はあくまでも同順位で並列されたもので、一九条は、補充的段階的連結ではなく、選択的連結を採用している ₆₅

  では、選択的連結により導かれる複数の法が、例えば異なる者を父や母とするような場合は、どのように解決されるべきだろうか。子の福祉に最も資する法を適用すべきであるという点については、広く見解の一致が見られるが、具体

(18)

    同志社法学 六八巻七号六二三二七七一 的な基準については見解の対立がみられる。今日の通説は、最も迅速に親子関係の成立を認める法が最も子の福祉に資するとする ₆₆

。また、最も簡便に親子関係の成立を認める法が最も子の福祉に資するとみなすとする見解も主張されている ₆₇

  しかし、子の常居所地法が代理母の夫を、また、代理母夫婦の婚姻の効力の準拠法が遺伝上の父である依頼者男性を、それぞれ法律上父とする場合には、上述のような基準でも答えを出すことはできない。そのような場合には、子に﹁適切な(

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)﹂父を、すなわち、子の真実の父と思われる者(

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)、換言すれば、遺伝上の父と思われる者を父とする法が子のために優先されるとする見解も主張されている ₆₈

。同様に、代理懐胎の場合、精子提供を受けない限り依頼者男性が子の遺伝上の父であり、子を持つことを望み、家庭において子に責任を負うつもりであることからも、依頼者男性を父とする法が優先されるとの主張もある ₆₉

  子の福祉は個別事案ごとに具体的に探求されるべきではなく、抽象的に類型化して決定すべきであるとの見解もある ₇₀

。代理懐胎の場合は、依頼者と代理母との間で紛争が生じていない限り、依頼者カップルを法的な親とする法が子に最も有利なものであり、関係当事者すべての利益に資すると類型化することができるとも主張されている ₇₁

3   外 国 裁 判 が あ る 場 合

  ドイツにおいては、家事及び非訟事件に関する外国の裁判は、特別な手続を必要とせず、家事事件手続法一〇九条に定める承認障碍事由がない限り ₇₂

、承認される(一〇八条。なお、婚姻事件は除く(一〇七条))。

  英国裁判所の親命令や米国各州裁判所による代理懐胎に基づく親子関係に関する外国裁判については、一〇八条の承認の対象となる裁判であると解されている。一〇九条一項一号で定める国際裁判管轄に関しては、鏡像理論により、親

(19)

    同志社法学 六八巻七号六二四二七七二

子関係の成立に関する事件の直接裁判管轄と同様に決定される。すなわち、子、母または父らがドイツ人またはドイツに常居所を有するときは、ドイツ裁判所に管轄が認められるので(一〇〇条)、代理懐胎の場合には、たいていの場合代理母または子が裁判国の国籍または常居所を有していることから、管轄が問題となることはあまり考えられない ₇₃

  むしろ承認にあたって問題となるのは、一〇九条一項四号の公序要件である。これに関して、次に検討することにする。

4   公 序

  民法施行法一九条一項によって、ドイツ法とは異なり、代理懐胎を許容し、依頼者夫婦を法的な父母とする外国法が準拠法となるとすると、次に問題となるのが民法施行法六条の公序である。同条は、外国法の法規は、その適用がドイツ法の基本原則に明らかに合致しない結果をもたらすときは、適用しない旨規定する。

  裁判例においては、ウクライナでウクライナ人女性に代理懐胎してもらった事案がある ₇₄

。ウクライナ家族法一二三条二項によると、代理懐胎の場合には、遺伝上の父母が法的な父母とされる。しかし、ドイツにおいては、代理懐胎は明文で禁止されていることから、民法施行法一九条一項一文による子の常居所地法としてのウクライナ法の適用はドイツの基本原則に反すると判断されたのである。

  また、インドでの代理懐胎が関わる事案もある ₇₅

。インドには、代理懐胎に関する特別法はなく、ドイツと同様に分娩した者を母とし、子が母の婚姻中に生まれた場合には、母の夫を父とする規定があることから、インド法上、代理母夫妻が子の父母となる。しかし、インド厚生・家族省等により出されている代理懐胎に関するガイドラインにより、依頼者夫婦を出生証書に親として登録することが実務上可能である ₇₆

。ベルリン行政裁判所は、このガイドラインを民法施行

(20)

    同志社法学 六八巻七号六二五二七七三 法一九条一項の趣旨での法と解したとしても、代理懐胎はドイツ法上良俗違反で、代理懐胎に関わる斡旋業者及び医師の行為は胚保護法及び養子縁組斡旋法によって刑罰が科せられるのであり、民法施行法六条の公序に反すると判断している ₇₇

  家事事件手続法一〇九条一項四号は、外国裁判を承認した結果、ドイツ法の基本原則と明らかに合致せず、特に基本権と一致しない場合には、当該外国裁判は承認されない旨規定する。この規定は、民法施行法六条とほぼ同様の文言である。民事訴訟法三二八条一項四号及び家事事件手続法一〇九条一項四号の外国裁判の承認に関する公序要件は、通説・判例上、民法施行法六条の公序要件よりも緩やかであると一般的に解されている ₇₈

。その理由としては、①ドイツ裁判所で問題となる外国法を直接適用して事案を審理するよりも、外国裁判の承認が問題となる場合には、事案の内国牽連性が弱いのが通常であること、そして②当事者の外国裁判に対する信頼の保護と跛行的法律関係の発生の回避があげられる。特に、身分関係事件においては②が重視される。

  裁判例においては、代理懐胎により依頼者カップルと子との親子関係を確認する外国裁判は、代理懐胎を禁止するドイツの基本原則に反するとして承認されないと判断したものがある ₇₉

  学説においては、見解の対立がみられる。   公序違反と見る立場は、代理懐胎は、その斡旋等について刑罰を科すという強硬な手段で国内で禁止されており、代理懐胎の禁止を回避できないように、遺伝上の母である卵子提供者が代理母と子との母子関係を否認することも認めておらず ₈₀

、民法一五九一条に定める分娩者=母ルールは、ドイツ法の基本原則に属すると主張する ₈₁

。また、当事者がドイツ人またはドイツに常居所を有する場合、内国牽連性は十分にある。

  これに対して、公序に反していないとする立場は、実質法上の強行規定すべてが民法施行法六条にいうドイツ法の基

(21)

    同志社法学 六八巻七号六二六二七七四

本原則に属するのではなく、民法一五九一条に定める分娩者=母ルールは、基本原則とまでは言えないとする ₈₂

。あくまでも、個別事案における具体的な結果が問題となるのであり、内国牽連性等を考慮して公序に反するかを決定すべきで、依頼者カップルを法的な親とする外国法や外国裁判だからといって、一律に公序に反するのではないと説明される。裁判例においては、ドイツ人の依頼者男性がドイツ法に従い未婚の代理母が出産した子を認知する場合、代理母の同意があれば、認知は有効なものとされ、依頼者男性と子との親子関係は基本的に公序に反しないとされる ₈₃

。これに対して、同じ代理懐胎の取決めに基づき子が生まれているのに、母子関係については公序に反するとする点で一貫していないとの指摘もある ₈₄

  子が出生しており、民法一五九一条の目的はもはや実現され得ないのであり、子の出生後は、予防的観点は重要性を失い、個々の事案において、ドイツの公序の本質的な部分である子の福祉を最優先すべきであることも主張されている ₈₅

。また、基本法二条一項(人格の自由な発展を求める権利)・六条二項前段(子の監護及び教育に関する父母の権利義務)を根拠に子の親による監護と教育を受ける権利の侵害があることや ₈₆

、ドイツ国籍も与えられず、ドイツへの入国もできないような場合には、ヨーロッパ人権条約八条の私生活の尊重を受ける権利、子がその親との結びつきを有する権利や家族生活の侵害にあたるとも指摘されている ₈₇

。さらに、児童の権利に関する条約三条に鑑みて子の最善の利益を公序判断の際に考慮すべきであるとされる ₈₈

。このような条約に基づく基本的人権も民法施行法六条でいう基本権に含まれるからである ₈₉

  なお、養子縁組を通して親子関係の成立を認めるということについては、前述のとおり、裁判所で許可されるか不確実であり、子が外国にいる場合には、当該国では、依頼者がそもそも法的に父母であることからその地で養子縁組すること自体不可能であるといった問題点が指摘されていた ₉₀

(22)

    同志社法学 六八巻七号六二七二七七五 四  ドイツ連邦通常裁判所二〇一四年一二月一〇日決定 ((

1   事 実 の 概 要

  男性間で生活登録パートナーシップを締結した

X

1

を出代理母Aと、Aが産州する子の法律上の親で

X

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X

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X

1

X

に引き渡された。2

  同年六月、Xら及びBは、ドイツに帰国後、Bが外国で出生したことを登録するように身分登録所で申請したところ、身分登録所はこれを拒絶した。そこで、Xら及びBが抗告し、BがXらの共通子であるとする子の出生の登録を求めた。

2   原 審 決 定 要 旨 ( ベ ル リ ン 高 等 裁 判 所 二 〇 一 三 年 八 月 一 日 決 定 (

((

  ドイツ国籍を有する

X

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X

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(23)

    同志社法学 六八巻七号六二八二七七六

  しかし、米国判決における

11

)。録を父とし出生登てすことになる(る なそのようの裁判所関で、て方一るいてせさ立成がっよ与はな場夫の母理代はてっいに合よ、代場しに、合理母を母と 係に定決はたま決判を関胎そ取聴見意の他の、証きづ基にみの約契や明懐者親の間のルプッカ頼を依と子ずせと要必子

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関す反に序公は係理こ子親の間の子とるかと(、は決判国米)。い代なきで認承、ら2

  このような方法での親子関係の成立は、ドイツ法に不知のものであるのみならず、ドイツ法の基本原則にも耐え難い程に反している。ドイツ法上は、血縁または縁組のみに基づく親子関係しかない。代理懐胎契約に基づく親子関係は、ドイツ法によっては成立しえない。代理懐胎契約は、民法一五九一条、胚保護法一条一項七号、養子縁組斡旋法一三条cにおいて明文で規定されているように、ドイツ法秩序において一貫して拒絶されている(

12

)。

  前述の規定の立法目的は、これに関わる女性たちと子らの人間の尊厳の保護であり、ドイツ法体系において最も守られるべきものの保護である。子の人格の発達に対する母体内での子の発育が意味すること、そして、借り腹の取決めは、子の発育に対する懐胎者と子の間の生物学的及び心理学的関係の重要な寄与を考慮外に置き、借り腹という方法で生まれる子の本質的利益を無視していると立法者は考えているのである。この特別な関係が、請負の一種として妊娠を引き受けることを禁止するのである。さらに、出生後の健康上及び心理的リスクから当該女性と子が守られることになる(

13

)。

  それゆえ、代理懐胎の拒絶は、ドイツ法の基本的価値判断の核となるものとみなされる。女性が経済的必要性から妊娠の負担を負うこととなり、懐胎した子を商取引の対象とすることは禁じられている。本件においても母と子がまさにそのような危険に実際にさらされているのであり、一般予防的な考慮のみが問題となっていると反論することはできないであろう。公序違反かどうかを子の福祉に従い答えるならば、他の結論はあり得ないであろう。なぜならば、子の福

(24)

    同志社法学 六八巻七号六二九二七七七 祉は、親子関係を養子縁組手続以外で作り出すことを求めていないからである。まさに養子縁組手続は、依頼親が法律上の親であることが子の福祉に合致するか否かを包括的に審査するために法律上予定された場である。さらに、

X

X

2 はドイツ国籍を有しドイツに常居所を有していることから、強い内国牽連性があり、ドイツ法との乖離は、内国牽連性が弱い場合よりも、厳格に審査されねばならない(

14

)。

  本件登録の実施は、基本法一条一項及び二条一項から導き出される自らの出自を知る子の基本権にも反する。子の出生登録は、代理母についての指摘を含まず、それゆえ子にはその出自に関して本件で明白になった情報は知らされずにおかれるからである(

15

)。

  民法施行法一九条一項によっても、

16

)。ツのみに有しており、ドイが法イ適用されるからである(ツ

X

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3   連 邦 通 常 裁 判 所 決 定 要 旨

  カリフォルニア州高等裁判所の判決(以下、米国判決)は、家事事件手続法一〇八条によって承認され(

R n. 19

)、同一〇九条に定める承認障碍要件も問題とならない(

23

)。

 

a)

  国際裁判管轄   本件では、カリフォルニア州高等裁判所は、子の国籍や常居所にかかわらず、代理母がカリフォルニア州に常居所を有していたことから、国際裁判管轄権を有する(鏡像理論。家事事件手続法一〇〇条)(

23

26

)。

(25)

    同志社法学 六八巻七号六三〇二七七八

 

b)

  

27

(いなも反九序公の号四項一条違一〇の公序米国判決承、認にあたって)。

 

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  代理懐胎の事案において、外国裁判が法的な親の地位を依頼者に帰属させる場合でも、代理母ではなく、少なくとも依頼者の一方が、子と遺伝的に血縁関係にあるときは、ドイツの公序に反しないと解するのが妥当である(

34

)。

   ⑴  ドイツ法上の親子関係の成立(

35

36

    ⋮⋮︿略﹀⋮⋮    ⑵  ドイツ法上の代理懐胎の禁止(

37

39

    ⋮⋮︿略﹀⋮⋮    ⑶  家事事件手続法一〇九条一項四号によると、特に承認が基本権と合致しないであろう場合に、公序違反がある。個別事案での公序違反があるか否かの判断において、ヨーロッパ人権条約により保障された人権も考慮される(

40

)。

   

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一の間人るよに項一条法厳本基、はていつに母理尊代場二、項一条六び及項一条法依本基、はていつに者頼、

参照

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