研究紀要 (富山医科薬科大学一般教育)第 33号 (2005) 」LAS(vol.33,2005)
感情 の複雑化
―社会的感情の発生一 福 田 正 治
は じめ に
人 間 は動物 とは異 なる生物 であ ると考 え る人が世 の中 に多 くいる。例 えばキ リス ト教 を信 じ て い る人 の中 には,神 が人間を作 ったのであ り,動 物 か ら進化 した結果 と して ヒ トが存在 す ると 考 えて いない者 が い る。 この ことを アメ リカで は今 で も教 えて い る町が あ る。
感情 もまたわれわれが持 っている感情 と動物が持 って いる感情 とは異 な る ものであ ると考 え る傾 向が あ る。 も しわれわれの感情 が動物 と異 な ると仮定 す るな らば,何 が違 うかを明 らか に しな ければな らない。 怒 りを例 に挙 げ ると,人 間 は,相 手 に対 す る身体 的暴 力 は もちろんの こ と,言 葉 によ る暴力,無 言 によ る暴力, 日 によ る暴力 な ど と多種多様 な暴力 の形態 を持 って い る (13)。動物 の世界 に目を向 ければ,な わば りをめ ぐる争 い,メ スをめ ぐる争 い,食 料 をめ ぐ る争 い とアフ リカに飛 んで行かな くて もその例 を示す ことがで きる。 そ こには言葉 による攻撃 は ないか もしれないが,唸 り声 による威嚇行動 が存在 し,に らみ合 いの示威行動 も存在す る。 この よ うな比較行動学 か ら推定す ると,動 物 と人間の感情 にあま り差 はないよ うに見 え る。 それで は 同 じで あ るか と改 めて問 われれ ば,そ こに歴然 と した差異 を認 めな けれ ばな らないだ ろ う。例 え ば嫉妬 や屈辱感 は動物 には決 して存在 しない もので,人 間独 自の ものである。
進化論 的感情階層仮説 で は,感 情 の最高位 に ヒ トの感情 を もって きた (4)。 経験 か ら して, あ らゆ る動物界 を見渡 して, ヒ トほど感情豊 かな生物 は恐 らくこの地球上 に存在 しない とい うこ とが信 じるに足 りるか らであ る。我 々の 日常 は,す がすが しい朝 を迎 え,喜 怒哀楽 に富 んだ人生 を歩 み,そ して疲れ満 たされた夜 を迎 え る。 その繰 り返 しを人 は送 り,人 生 を終 ってい く。
感情 は 5種 類 の基本情動 で あ る喜 び,愛 情 /受 容,怒 り,恐 れ,嫌 悪 を土台 に進化 して き た (4)。ここで は感情 とい う言葉 と情動 とい う言葉 の使 い方 を意識 的 に変 えて あ る。感情 は主 と
して ヒ トだ けが持 ち,情 動 は ヒ トを含 めた動物全体が有 してい るもので ある。
感情 につ いて, 日本語 で考 えれば2000種類以上 の感情 を表す言葉 が あ る (5)。さ らにはその
組 み合 わせ を考 え るな らば無数 に感情 を表現 す る ことがで きる。 す なわ ち我 々 は無数 の感情 を感
じる ことがで きる ことを この ことは証 明 して い る。 も しそ うな らば,5種 類 の情動 か ら, どの よ
うな進化 を経て,ま た考 え方 で無数 の ヒ トの感情 まで進化 して きたのか,そ の ことを考 えなけれ
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ばな らない。
これ まで ヒ トの感情 は複雑 さのために,ど の よ うな戦略 を用 いて感情 を提 えればよいのか明 らか で なか った。 闇雲 に ヒ トの感情 を直接取 り扱 う経験主義 的 な心理学 もあ った し(6),応用心 理学 と して,例 えば個別 の恋愛 だ け,恥 だ けに注 目 して研究 され ることもあ った (7,8)。 しか しそ れが木 なのか森 なのか, ジ ャングルの中の何 であ るかあま り考慮 されなか った。現象 と して,生 きて い く我 々にとって重要 であるとい う暗黙 の同意 の下で議論 されていた。 しか し複雑 な ヒ トの 感情 を もう一度進化論か らどのよ うに捉 えた らよいのかを考 え るのが この論文 の 目的である。
基本情動 か ら感情への進化 には論理的 に大 きなギ ャップがあ る。近年 の霊長類 の行動生態学 の知見 (915)を参考 にす るな らば,感 情 は,社 会的感情 と知 的感情 に区分 して捉 え ることがで き る とい うのが基本的 アイデアで あ る。感情 をその機能 によ って大 き く社会的感情 と知 的感情 の 2 階層 に分 ける ことによ って,多 種多様 な感情 を 2種 類 の性質 を基本的 に持 った働 きに分類す るこ とがで きる。 その ことが我 々の感情 を考 え る場合,大 きな指標 の第一歩 にな るので はないか と考 え られ る。
1。 サ ル 社 会 の 行 動
情動 ・感情 を理解す るのに,情 動 ・感情が進化す るとい う仮定 の下 に進化論 的感情階層仮説 を提 唱 して きた (4)。 感情 は快 ・不快 の原始情動,喜 び,愛 情 /受 容,怒 り,恐 れ,嫌 悪 の 5種 類 の基本情動,そ して ヒ トにお ける感情 へ と進化 して きた。 ここで問題 は,5種 類 の基本情動か
らヒ トで いえば2000種類以上 の表現 を持つ感情 が どう して進化 して きたかであ る。進化 はマクロ 的 に見 れ ば連続的 に起 こった もので,決 して急激 に複雑 にな ったわ けでない。5種 類 の基本情動 が数1000万年 の時間をか けて ヒ トの感情 にな って きた事実 を見なければ ヒ トの感情 を理解 した こ とにな らないだ ろ う。
しか し我 々は,1000万 年 の過去 を振 り返 って世界 を再現す ることはで きない (1618)。 形態 は 化石か ら,あ る程度 の再現可能 であ るが,そ の行動,考 え方 の再現 はとてつ もな く困難 であ る。
人類 は約500万年前 にア フ リカの草原 か ら生 まれ,そ の間 に,ア ウス トラロ ピテクス 0ア フ ァレ ンシス, ア ウス トラロ ピテクス ・アフ リカヌス, ホモ ・ハ ビルス, ホモ ・エ レク トス, ネア ンデ ル タール人,ク ロマニ ヨン人 と幾多 の祖先が生 まれ,そ して滅 び,今 日のホモ ・サ ピェ ンス ・サ ピエ ンスに至 って いる。 これが数万年前 の頃であ り,ホ モ ・サ ピエ ンス ・サ ピエ ンスに至 って初 めて構造的 な言語 を用 い現在 の文明を持つ に至 った。
この500万年 とい うとてつ もない長 い期 間,感 情 は現代人 の感情 と同 じであ ったかを考 え る と,感 情 を一つで は捉 え られない複雑 さを考 えざる得 ない。以前 の感情 の定義 は ヒ トを対象 に し た ものであ ったが,果 た して500万年前 の ヒ トの感情 と現代人 の感情 と同 じであ ったか考え る必 要 が あ る。
個体 間 の コ ミュニケー シ ョンは最初,身 振 り言語 が音声言語 に先行 していた と考え られてい る (19)。 社会 的関係 は毛づ くろいや身振 りだ けで は間 に合 わな くな り,チ ンパ ンジーで は数 10種
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感情の複雑化 ― 社会的感情の発生一
類 の個別 の発声 を区別 して いる。 そ して祖先 の ホモ ・エ レク トスは数 100の単語 を区別 し,ホ モ ・ サ ピエ ンスに至 って言語 の階層構造 を持 つ に至 った。 この時期 を境 に感情 は大 きな質的変化 を遂 げた。
我 々 は祖先 の感情 を追跡 す る ことはで きない。複雑 な言語 を持 たなか った祖先 の生活 の喜怒 哀楽 を どの よ うに推定 すればよいのか。 ここに現在 の類人猿 の生態 を調 べ る ことによ って情動 ・ 感情 の空 白期間 を埋 め ることがで きるので はないか と考 え られ る。 おそ らく500万年前 にア フ リ カのサバ ンナか ら祖先が出発 した と して も,そ の生活 は,最 初,現 在地球上 にいる類人猿 とあま り変 らなか った。 そのよ うな期間 は少 な くとも 3‑400万 年 は続 いた。
霊長類 の種類 は,地 球上で200種類程度存在す る (20)。 霊長類 は大 き く原猿類 と真猿類 に分 け られ,原 猿類 はキ ツネザル, ロ リス,メ ガネザルの系統が含 まれ,真 猿類 は新世界 ザル,旧 世界 ザル,そ れ に ヒ ト・類人猿 に分 け られ る。新世界 ザルにはマーモセ ッ ト, リスザルが,旧 世界 ザ ルには ヒヒ,カ ニ クイザルが含 まれ,ニ ホ ンザル はここに属す る。類人猿 で はテナガザル, ゴ リ ラ,オ ラウー タン,チ ンパ ンジー, ボ ノボが属 して い る。 これ らの種,特 に類人猿 の 文化 "の 比較 が ここで は求 め られ る。
霊長類全体 を通 した生態比較 は少 ないが,個 々の霊長類 の行動 は近年比較的詳細 に研究 され, その情報が次第 に集 ま って きている (915)。まず始 めに群れの規模を考えてみると(15),原猿類 の ロ リスは平均 2匹 ,キ ツネザルは数匹,旧 世界ザルのカニクイザルは30匹程度, ヒ ヒは30‑80匹 , 類人猿 のチ ンパ ンジーは数 匹か ら80匹, ゴ リラは十数 匹程度 の群 れをつ くる。 そ して これ らの群 れが幾つか集 ま り大 きな生活空間 を形成 して いる。 ヒヒで は数 グル ープが,チ ンパ ンジーでは大 きい集団 の場合 は数 グループが,小 さい数 匹の集 団で は大 きい場合 は200以上 の グル ープを作 っ て い る。群 れの規模が数 匹 と少 なければ兄弟,家 族 の集団であ る可能性が高 いが,大 き くな ると い くつかの家族 が集 ま って形成 され ることにな る。 ここで重要 な ことは,類 人猿が数 匹か ら数十 匹 の集団 をつ くり,そ れが同一地域で共 に生活 し,相 互の接触が起 こるということである。決 し て単独 で生活 してい ることで はない とい うことであ る。
集団行動 を形成 して いるとい うことは,そ こに統制が取 れてい るとい うことを意 味 して い る。
多 くの群 れで はボスを中心 と した階級社会 が形成 され,そ の よ うな社会 で はボス とその他 のサル との間で,一 対一 の関係が維持 され るよ りもっと複雑 な社会 を形成 している。 これ は霊長類 で相 互 関係 を論 じる場合,個 体 と個体 の二者関係 で はな しに,3匹 以上 の三者関係,三 角関係 を通 し
た複雑 な関係 を眺 めなければな らない ことを意味 している。 この関係 の記述 は最近始 ま ったばか りで あ り (9'10), こ こで は 4‑5の 事実 の例 を挙 げて集団 の中 にお ける複雑 な関係 の流 れ を捉 え てみ る。
最初 の例 は家族 の中での記述 で あ る。 どこで もあ り3ゝ れ た場面 であ るが,子 供同士 は遊 びを
通 して群 れの規則 を学 んで い く。単 に遊 びを通 して力 をつ けた り,運 動能力 を学習す るだ けで は
ない。兄弟同士が どこまで じゃれあ うことがで きるのか,悪 遮ゝざけが許 され るのか学 んで い く。
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そ してその遊 びの中には最大 の第二者で あ る母親,父 親 の介入があ る。 2匹 の子 ザルが遊 んでい るときに,負 けたほ うが母親 ザルに助 けや仲裁 を求 めに行 くことが観察 されている。 また,子 ザ ルの周辺 で別 の メスザルが休んで いるときに, う るさ くて母親 ザルに唸 り声 を発 したときに,そ の母親 ザルが子 ザルたちの遊 びや喧嘩 を止 め され るとい う観察 もあ る。
もう少 し複雑 な例 で は,群 れでの性行動 であ る。通常 その群 れでのボスザルが メスザルを支 配 し,発 情期が きているメスザルに若 いオスザルが近づ くと威嚇 し,と きには攻撃 し怪我 を させ ることもある。 これが群 れでの一対一 の関係 であ り群 れでの掟 であ るが,さ て若 いオスザル は自 分 が ボスにな るまで遺伝子 を残す ことがで きないのか,ま た若 いメスザル はボス と しか性行動 で きな いのか とい うと,そ うで はない場合 もあ る らしい。 ボスザルが維持管理 で きる数 は大体40‑
50匹程度 が限界 と考 え られ,そ れ以上 にな るとボスザルは全 てのサルに監視 の 目をひか らせて い ることが物理的 にで きない。 ときにはオス同士 の喧嘩の仲裁 に入 らなければな らない こともあ る だ ろ うし,ま た群れ全体 を守 るため見回 りなど別 な ところに注意 を向 けなければな らない ことも あ る。若 いオスザルはな るだけボスザルの視界 の離 れた ところ,攻 撃 を受 ける距離 の範囲外か ら タイ ミングを計 り,若 いメスザルにチ ョッカイを出 し,メ スザル もボスザルを見 なが ら慎重 に若 いオスザルに近づ き,ボ スザルの見 えない隠れた ところで性行動 に及ぶ ことが報告 されている。
また無関心 を装 っていた若 いオスザルが ボスザル と他 のサル との喧嘩を見 て メスザルを引 き連れ て行 った との との報告 もあ る。 これ らはボスザル とメスザル と若 いオスザルの三角関係 の中での 行動 で あ る。
また ボスザル と若 いオスザルのメスをめ ぐる争 いで,周 りのメスザルたちが間に入 りその喧 嘩 を止 めて しま うことも報告 されている。
もう一例,ア カゲザル は新 たな食料 を見つ けると声 を出 して教 えあ ってい る。 その一声 を聞 いて ボスザルが来 て:つ いでその群れが来て生活 を営んでいる。 これを行わなければ後でボスザ ルか らい じめ られ ることがあ る らしい。時にあるサルは自分が見つ けた餌 に対 してす ぐに声 を出 さず に,少 し食べてか ら声 を出 した とい うことが報告 されて いる。 なぜ食料のあ りかを教え るの に一端時間 を置か なければな らないのだ ろ うか。
2。 社 会 的 感 情
霊長類の行動の研究か ら近年,サ ルか ら進化 してホモ 0サ ピエ ンスが言語を獲得するに至 る までの段階に社会的知性 といわれる能力を身 につけていったと考え られている(21)。 社会的知性 とは個体が複雑な集団の中でその存在を認めさせ自己の価値を通す社会的操作のことをいう。 こ れはまたマキ ャベ リ的知性 とも呼ばれている(9'10)
社会的知性 として上げ られているものに,欺 き,裏 切 り,注 意の操作,協 同,同 盟,連 合, 援助,支 持,好 ま しさ,動 作模倣,遊 びにおけるふ り,共 感などの行動が報告 されている。 これ
らの言葉 はあまりにも擬人化 されているきらいはあるが,現 象の解釈 としては興味あるものであ る。
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感情の複雑化 ― 社会的感情の発生―
上 の例 で も見 られたよ うに,欺 きには,隠 蔽,は ぐらか しな どの注意 の操作,さ らには無視 す る,3ゝ りをす る,見 えない ところで何 かをす る,隠 れ る,物 を隠す な どの操作が挙 げ られ る。
限 られ た食物 をめ ぐる抗争 で はボスザルの注意 を擬声 によ ってそ らし,そ の隙 に とって食べ ると い うこと,メ スザルをめ ぐる下位 のオスザルの振 る舞 いは これ らの欺 きの典型的 な行為 を示 して い る。
ボスの座 を巡 る争 いは熾烈 を極 める。遺伝子 を多 く残 そ うとす る本能 に従 えば,ボ スにな っ た ほ うが確実 に遺伝子 を残す確率 は上 が る。従 って力 をつ けて きたオスザルはその群 れを乗 っ取 ろ うとす る。 それで は単純 に力 だ けで乗 っ取れ るか とい うと話 はそ う単純 で はない。 そ こに社会 的知性 とい うものが要求 され る。 同盟,連 合,支 持,裏 切 りとい った社会 的操作 が な ければ力 だ けで ボスの座 は奪 い取 れない。例 えば集団の中でのメスザルの支持 を得 なければな らない との事, ときにはメスザルの中での高位 のメスザルに嫌 われたためにボスになれなか ったオスザル もいる。
あ るオ スザル は機嫌 を取 るためか ボスザルに対 してせ っせ と毛づ くろいす る場合 も見 られ る。 さ らにはボスの座 を狙 うのに,下 位 のオスザルが 2匹 連合 して ボスザルに向か ってい くこともある。
そ こで は第二位 の地位が約束 されて いるよ うであ るが,ま るで人間の社会 の縮図 を見 てい るよ う で あ る。
注意 の操作 や隠蔽で は,上 の例で述 べた若 いオスザル とメスザルをめ ぐる性行動 な どは典型 的 な もので あ る。若 いオ スザル とメスザル は連合,同 盟 で あ り,ボ スザル に対 して は欺 き,注 意 の操作,編 しを行 ってい る。人間社会 で は 影 で こそ こそ "と いわれ る行為である。援助,支 持 は子育 てや家族 の中で典型的 に観察 され,例 えば子育 てで,子 守 を若 いメスに任せた り,餌 の分 配 な どで もこのよ うな行為 が見 られ る。
さて,問 題 は このよ うな社会 的操作 を伴 う社会的知性 の発現 に対 し,情 動 0感 情 はどのよ う に働 いていたか とい うことで あ る。少 な くとも類人猿 の社会文化 は言語 も持 たず文字 も持 たない ことは確 かであ る。 コ ミュニケー シ ョンは原始的で あ り身体的表現 と発声 によ る識別 だ けで,明 らか に ヒ トの能力 とは異 な って い る。情動 は,5種 類 の基本情動 か ら構成 されてい るが,5種 類 の情動 だ けで, これ ら複雑 な社会的知性 を操作 で きるだ ろ うか, こ こに情動 か ら感情へ の進化 の 一段階 としての社会的感情をいうものを定義 しなければな らない理由がある。サルか らヒ トヘの 進化 の過程 をた どると,感 情 は単 に基本情動 か ら, ヒ トだ けに存在す る 「感情」 にな って い った と考 え るには無理 があ る。感情 は社会的知性 に対応 した社会 的感情 とヒ トの知性 に対応 した知 的 感情 に分 け られ (図 1‑3), ヒ トの感情 は基本情動 か ら,社 会 的感情 の獲得 を経 て知 的感情 ヘ
とつ なが って い った と考 え るのが妥 当で あろ う。
基本情動 の内容 を見てみ ると,群 れでの基本情動 は 一対一の関係の中に強 く見て取れる。 ボ スザル と他 の メスザル,オ スザルの関係 で は,若 いオスザルが ボスザルを恐 れ,攻 撃 を受 ける。
メスザルに とつて もオスザルの受容,子 供 の愛情 な ど個体 と個体 の間の中 に現 れている。基本情
動の中に三角関係の情動はないように思われる。
社会的感情 とは社会的知性 と関連す る感情であり, 集団 の中で の地位 の葛藤 に関連 して い る。
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チ ンパ ンジーや ゴ リラ,ボ ノボに観察 され る行動 であ り,サ ルには見 られていない。 ここでのサ ル とは類人猿 を除 いた旧世界 ザル以下 をい う。 この ことはわれわれの祖先が500万年前 にアフ リ カの草原 で生 まれて ホモ 0サ ピエ ンスに至 るまでの期間 に も存在 していたのであろ う感情 に相当 す る。
社会 的感情 は個体 が群 れの中,集 団 の中で生存 して い くため に発生 して きた知性 の一種であ り,適 応 の一種であ る。動物 が 3匹 以上集 まれば, も し脳 が進化 してい るな らば 2グ ループに分 かれ ることは必須 であ る。特 にオス ・メスが混 ざ って いればなお さ らであ る。 そのよ うな複雑 な 集団 の中で生 き残 り,遺 伝子 を残 して行 か な けれ ばな らない と した ら,社 会 的知性 は必然 的 に必 要 で あ り,そ れを補助 し強化す る機能 と して社会 的感情 が求 め られて きた。
社会 的感情 は同時 に集 団,群 れ 自体 を維持 す るための機能 で もある。人 とのかかわ り,人 と のふれあいを通 して,群 れ,組 織 との一体感 を育 み,外 部 の敵対 す る群 れ に対処 して行 かなけれ ば な らない。 そ こには支持,共 感,協 同,分 配 など組織意識 を高 め るための社会的知性が なけれ ばな らない。
われわれ人間の社会 を見渡 して も権力,地 位,名 誉,名 声 をめ ぐる争 い,彼 を,彼 女 をめ ぐ る行動 に多 くの智慧 を働 かせて い る (22)。 恐 ら く人 間関係 のよ き関係 に多 くの時間 と労力 をか け て い るのが人間であ る。 あ る時 は相手 を蹴落 と し,別 の時 には利用す るとい う社会的行動が多 く 見 られ る。 また会社 を守 るための組織犯罪 も多発 して いる。 そ こに発生す る感情 は,愛 情 であ り 憎 しみで あ り悲 しみであ る。法律 は基本情動,社 会的感情 を如何 に社会 の中で コ ン トロール して
い くかを含んでいる。政治,経 済 は基本情動,社 会的感情 の見本市である。 チ ンパ ンジーに この よ うな 「感情」 の証拠 を見 出す ことは非常 に困難 であ るが,そ こに見 られ る行動が同 じであるこ とか ら類推 す ると, こ のよ うな感情 の原型がチ ンパ ンジーに存在 していた として も不思議ではな い。
感情 とい うか らには主観的 とか, 自己意識 とい う機能 が備 わ っていなければな らないが,類 人猿 にお いてその芽生 えがすで に存在 して い る (23,24)。 チ ンパ ンジーにおいて 自己意識 の芽生 え
情 動
原始情 動
基本情動
社会 的感情
快 ・ 不快
喜 び、受容 ・ 愛情 、怒り、恐れ 、嫌悪
愛情 、憎 しみ 、嫉妬など
感 情知的感情 愛 、罪 、恥など 図 1.進 化論 的感情階層仮説 (2005)
感 情― δ一
感情の複雑化 ― 社会的感情の発生―
が あ り,鏡 像 テス トで,背 中につ けたペ ンキを 自分 の身体 に着 いた もの と して取 り除 こうとす る 自己鏡像認 知 が観察 され る。 そ こか ら出発 し,相 手 の心 を読 み取 る能力,読 心が 出て きた (25)。
社会 的知性 を実行 す るため にはボスが ど う考 えて い るか,メ スが ど う捉 えて い るかを認識 で きな けれ ば,欺 き,協 力 は行 えない。逆 の意味で言 えば,社 会的知性,社 会 的感情が あ ることが,自 己意識 や心 の理論 の証明 にな っている。 これ に連動 して共感能力 もまた心 を読 み取 る能力がなけ れば遂行 で きない機能 で,協 力,同 盟,連 合 の基礎 にな って い る (4)。
それで は,社 会的感情 を人間の言葉で焼 きなおす とした ら,何 が考え られ るであろ うか。我 々 はそれ を,恋 愛,憎 しみ,嫉 妬,妬 み,友 情 な どの原型で はないか と考 え る。 これ らは集団 にお け る個人 の感情 のゆれを示 して いるか らであ る。 あま りに も擬人化 しす ぎるので はないか,類 人 猿 で恋愛 な ど と言 え る感情 が あ るのか,友 情 な ど とい うす ば らしい機能 が あ るのか と叱責 され る か もしれない。 しか しそのよ うに捉 えて はいけない とい う証拠 もない。 われわれ はこれ らが人間 のそれ と同 じで あ るとい うつ もりはない。類人猿 の集団 の中の社会的知性 に伴 って, このよ うな 社会 的感情 の原型 が進化 的 に発生 した と述 べて い るだ けで あ る。 そ して これ らの社会 的感情 が ヒ
トの知 的感情 のベースにな った。
大脳皮質 は これ ら社会 的知性 を遂行す るための領域 を獲得 し,さ らには個体相互 の関係 の記 憶,匂 いで はな く顔 の記憶 を保持 す るための能 力 を獲得 して きた。知性 には社会 的知性,道 具 的 能 力,空 間能力 な ど多 くの要素 か ら成 り立 って い る (26)。 人類 は住 む環境 が広 が るにつれて,物 理 的な道具 の複雑 さを獲得 してい ったが,そ れ と同時 に社会生活 の複雑 さ も獲得 して い った。近 年,知 性 に は感情知能 も含 まれ る ことが いわれて い る (27)。 感情知能 の多 くは社会生活 を適応的 に営 むための感情 で, こ こで い う社会的感情 が多 くを 占めている。
3 . 知 的 感 情
ヒ トは言葉 を獲得 してそれを記録 に残せ るよ うにな って文化が起 こり,歴 史が蓄積 されてい っ た。 記 録 は口承 だ ろ うが文字 に依 存 しよ うが, 生 きて きた人 々 の智 慧 を記 録 し, そ こか ら宗 教 が
種 類
図 2.進 化論的感情階層仮説 (2005) 社会 的感情
基本情動
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始 ま り,そ して芸術 や科学 が開 か れ て い った。 さ らに は,道 徳 が始 ま り,哲 学 が作 られ て い っ た (28)。
前節 で は, ヒ トの感情 の土 台 には集団 の中で生 きて い くための社会 的感情 が あ ると指摘 した。
それ は恐 ら く類人猿 の中で発生 し,そ れが 5‑700万 年前,人 類 の祖先 が類人猿 か ら別 れ,一 歩 を踏 み出 した ときの感情 で はなか ったか と考 え られ る。数 100万年 の間,祖 先 の集団 は現在 のサ ルの集団 と比 べてそんなに変 わ らなか った。生産手段 を持 たない原始人 は自然 の食物 に頼 ってい る限 り,養 え る人数 は限 られ,そ こで はせ いぜ い数 10人の単位 であ ったか もしれない。集団内の 政争 は限 られ,ま た集団間で は人 口密度が小 さいために接触す る機会 も少 なか った。唯一,接 触 しな ければな らない ことが あると した ら結婚相手 の略奪 または獲得 であ り,そ れ は近親結婚 が遺 伝 的 に変異 を もた らす とい うことが経験 的 に受 け継 がれて いたか らに違 いない。数 100万年 の間, 知性 の変化 は非常 にゆ っ くりであ り,そ れにつれて社会的感情 の変化 も緩慢 であ った。
数 万年前 ごろ,大 脳皮質 を極端 に発達 させ たホモ ・サ ピエ ンス ・サ ピエ ンスが現 れ (29),記 録 を残 す術 を獲得 し,そ の うちに食料 を栽培す る技術 を獲得 した。 それか らの歴史 は記録 と して 残 ってお り, こ こで詳 しく論 じるつ もりはないが,一 つ指摘 しなければな らない ことは,集 団の 規模が数百人か ら数千人,数 万人 に,さ らには数十万人 と増え,都 市を形成す るよ うにな ってい っ た ことで あ る。数 10人程度 な ら,顔 も名前 も区別 で きるか もしれ ないが,そ の桁 を超え ると識別 は不可能 になる。 ここに支配 とい う考え方がでて くる。社会的知性 は磨 きをか け られて巧妙 になっ て い く。駆 け引 き,裏 切 り,同 盟,巧 妙 な協 同な どと意識的 な利 己的,利 他的行動が見 られてい
く。
図 3.進 化論的感情階層仮説 (2005)
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感情の複雑化 ― 社会的感情の発生―
この よ うな集団で は道徳 が作 られ,そ れ に伴 う感情 も作 られてい く(30)。 知 的感情 は文化 に 関連 した感情 で,宗 教,思 想,信 念,科 学 な どに依存 した もので あ る。従 って国,民 族,社 会 に よ って その現 れ方 は異 な って くる。 デカル トは情念論 で感情 と して30種類以上 を挙 げた。 その中 には絶望,臆 病,悲 しみ,憐 れみ,好 意,嘲 り,懸 念,安 心,内 心 の不安, 自己に対す る満足, 後悔,感 謝,憤 慨,誇 り,恥 ,い や気,残 りお しさ,軽 蔑,希 望,尊 重,軽 視,高 速,高 慢,謙 遜,卑 屈,尊 敬,執 心,不 決断,勇 気,大 胆,負 け嫌 い,羨 み な どがあ る (31)。 これ ら全 て は知 的感情 である。
例 えば,恥 は 日本 で は強 く現 れ るが,キ リス ト教 圏で は罪 の概念 に強 い ものが あ る。恥 は武 士道 や騎士道 に強 く現 れて きたが,時 間 と共 に廃 れてい った。 日本 では偽証 に対 して曖昧 な とこ ろが あ り 「嘘 も方便」 とい うことわざがあ る くらいである。 国会 で宣誓 して も嘘 を述べ た人 もい る。 しか しキ リス ト教圏で は宣誓 は神 に対 して行 うものであ り,偽 証 は神への裏切 りにな り社会 的 に再起不能 とな る場合 が あ る。
美意識 も芸術 が時代 と共 に変 って い るとす るな ら,そ れ も知 的感情 に含 まれ る。裸体 に対 す る美意識 は文明,文 化 でか な り異 な って い る。 ギ リシア文明 の 「ミロの ヴ ィ ーナス」「ポセイ ド ン」 の彫刻 はギ リシア時代 の美意識で あ り,神 への意識 であ った (32)。 ̲方 , 日本や中国ではそ の よ うな文化 が西洋文化 を取 り入 れ るまで一度 もなか った。 日本 の美術 で裸体 を協調 した もの は 非常 に少 な く,絵 画,彫 刻 で はつ いぞ強調 され た もの はみ あた らない。 それ に関連 し,羞 恥 の歴 史 に も興 味 あ る (33)。
キ リス ト教圏で は神への愛 が,仏 教圏で は慈悲 が知 的感情 にな る (3437)。 献身,思 いや り, 寛容, 自己犠牲 は人類 に とって共通 の感銘 を与 え る。文 明 のない と ころに このよ うな感情 は産 ま れて こなか った。人類への愛 とい う概念 は比較的新 しい もので,歴 史 と共 にその適応範囲 は広が っ て い った。地域 の概念 が広が るにうれて,対 象 であ る民族,人 間の範囲 も広が り,例 えばキ リス ト教 において,最 初 はユ ダヤ民族 だ けだ った ものが ロ ーマ人 に広が り,西 洋人 とい う広域 に広が り,最 終 的 に地球規模 にな った (38)。 博愛 ,人 間愛 や友愛 もまた新 しい もので, ヒ ュ ーマニテ ィ に至 って は高 々 3‑400年 前 の ことで あ る。 それ に平行 して,人 類 は悪 を発見 し,地 獄 の可視化 も行 え るよ うにな り,正 義,罪 の概念 も進化 させて きた (3941)。
この よ うに地域,歴 史 によ って我 々が感 じる感情 は異 な っている (4240。 国宝 や世界遺産 を 見 るとこの違 いが典型 的 に理解 され る。 これが知 的感情 と定義付 けた理 由で あ る。 ここで知 的感 情 とい う言葉 は知性 と感情 を組 み合 わせ た造語 で相反 す る言葉 の結合 で文化 に根 ざ した感情 を表 現 す る言葉 と して あえて表現 した。高次感情 とい う言葉 は特性 をあ いまいにす る。
知 的感情 は,あ る面 で は考 え る感情 であ り,学 ぶ感情 で あ る。 ア ヴ ィロ ンの野生児 の よ うに 動物 に育 て られ た ヒ トに とって,知 的感情 は望 むべ くもない (47)。 教育 を通 して,家 庭,社 会 を 通 して学 ばれ る感情であ り,我 々は確 か にそれを持 ち,感 じている自分 を見つ けることがで きる。
自分 ら しさを出 し自己実現 す るためには考 え る感情 が必要 で あ る。
人間 はさ らに未来 を予想す る想像力,過 去 を振 り返 る能力 を獲得 した。 そ うす るとそれ に伴
福田正治/」LAS(vol.33,2005)1‑14
い,未 来 に対 す る不安,恐 れが発生 し,過 去 に対 す る後悔 も出て くる。大脳皮質 は時間観念 と時 間 の可塑性意識 も獲得 しそれ に伴 う感情 も発達 させ た。類人猿 の時間能力 は数分程度 だ と言 われ て い るが, ヒ トは一生 のスパ ンを見渡す ことがで きる。 この能力 は人 に編 しや欺 き,憎 しみや愛 の長時間の保持 を可能 に し,生 涯続 く苦 しみ,喜 びを与 え ることにな った。類人猿 はい じめを根 に持 った行動 を示すか は定 かでない。
また信念 な どの機能 が加 わ ると知的感情 は高度 にな り,人 類 を救 うと同時 に破滅 させ る感情 へ と進化 させた。国家間,民 族間の紛争 は決 して社会的感情 の表れではな く知的感情 のなせ る業 で あ る。物理学 での三体問題 が解 けないよ うに,国 家,民 族 を含 む三者関係 は こ じれ ると解 けな い問題 にな って いる (4851)。
情報 の遺伝子 で ミー ム memeと い う考 え方 が あ る (52)。 身体 の遺伝 は遺伝子 で形成 されて い るが,文 化 の伝承 を遺伝子 になぞ らえて名付 け られた ものである。 この ミームは脳 をベースに し, 脳 に潜んで いる情報 の単位 と して定義 され る。 この ミームは複製 され,模 倣 とい う手段 によ って 伝播 され,言 語 が その典型例 で,文 化 の伝承 を考 え る場合,都 合 のよい考 え方 である。知的感情 もまた, こ こでい う ミームを構成 す る要素 であ る。学ぶ感情,考 え る感情 は我 々の周囲 に結構存 在 し,身 近 な もので は,い じめ,キ レル,自 殺,ボ ラ ンテ ィア,相 互互助 など,大 き くは道徳, 規範 が上 げ られ る。 これ らはすべて文化 と して人 々の間で伝承 されてい く感情 であ る。 その伝承 の メカニズムを考 えた とき,遺 伝子 の機能 の類推で もって考察す ると考えやす い。
時実 は脳 の働 きを 3層 に分 け,下 か ら 「ただ生 きる」 ための脳,「 た くま しく生 きる」 ため の脳,「よ りよ く生 きる」 ための脳 に分 けた (53)。 進化論的感情階層仮説 による分類か ら対応 させ ると,原 始情動 は 「だた生 きる」 ための情動 であ り,基 本情動 と社会的情動 は 「た くま しく生 き る」 ための感情 であ る。 「た くま しく生 きる」 ための脳 はか な りの部分 を脳 の中で 占めてい る。
そ して 「よ りよ く生 きる」 ための感情 が知 的感情 で,ホ モ ・サ ピェ ンスに至 って最 も進化 した。
恐 ら く,知 的感情 は大脳皮質 の中で も前頭葉 の前頭前野 とい う限 られた部分で営 まれていると考 え られ る。 澤 田は前頭前野 が人間性知性 の座 であ ると提案 して いるが (54),人間性知性 に感情知 性 が含 まれ る と した ら,前 頭前野が知 的感情 の座 ともい うことがで きる。 これ は仮説 であ り,今 後 の証 明を必要 と してい る。
4.情 動 ・感 情 の特 性
進化 は大 きく見れば連続的に換わ っているものであり,感 情 もまた然 りである。 ここでは情 動 ・感情の特性が進化でどのように変 って きたのか,図 4は い くつかの要素 について進化の方向 性を描いたものである。対象,相 互 コ ミュニケーション,情 報量,空 間,影 響力,持 続時間,身 体性,緻 密化,多 様性 ・複雑化,意 識性,遺 伝性などについて,原 始情動か ら知的感情までの流 れを表示 したものである。
‑ 1 0 ‑
対象
相互 コミュ=■ シ ョン 情報 量
広がり 影響 カ 持続 時間 身体性 緻密化 多様性 ・複 雑化 意識性 遺伝性
感情の複雑化 ― 社会的感情の発生―
情動 感 情
原始情動 基 本情動 社 会 的感情 知 的感情 集 団 一→ 不特定 多数 一‐ 一方通行 一→ 相互作用 一―→ 伝播
多 国 ・民族 強 歴史 的時間
身体 的 認知 的
低 一 無意識的
遺 伝
伊 札 夕 任 幹 缶
的 識 境 高 意 環
図 4.情 動 ・感情の特性
対象 は,社 会 的感情 の項 で も議論 したよ うに,原 始情動 は個体 を中心 と した環境 との相互作 用が快 ・不快 の原 因 の中心 で あ った。生物 が次第 に環境 に順応 し活動範 囲が広 が るにつれて個体 と個体 の 2者 関係が基本情動 の基礎 とな り,第 二者 の関係 が重要 とな る社会的感情 に進化 して き た。 ヒ トで は名前 も顔 も知 らない地球規模 の感情 を学ぶ ことがで き,影 響 を受 ける。
対象 との関連 で相互 コ ミュニケー ションは単 に環境 との関係であった ものが,個 体 との関係, そ して三角関係での相互作用,知 的感情で は感情伝播が問題 にな る。空間関係 は身体か ら出発 し, パ ー ソナルスペース,家 族,地 域 と次第 に広が り知 的感情 で は国家,地 球 さ らには宇宙規模 に広 が る。種類 は原始情動 で は 2種 類 であるが,社 会 的感情 が進化 して指数関数 的 に増加 した。時 に は人間の感情 は社会 的感情 のみで,原 始情動 や基本情動 はそれ らに隠れて見えな くな って しま っ
原始情動 基本情動 社会的感情 知的感情
快
喜 ぴ
受容ノ 愛情
愛 、笑み
愛 、甘 え
不 快怒 り
憎 しみ 、嫉妬
内 気
罪 、恥 、
嫌 悪ラット チンパンジー
図 5.情 動 0感 情の進化 と適応範囲
ヒ ト