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我孫子市の液状化被害とそれを教訓としたハザードマップの改訂

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(1)

我孫子市の液状化被害とそれを教訓とした

ハザードマップの改訂

根 

青 山 雅 史

**

小 山 拓 志

***

長 谷 川 智 則

****

Improvements to Hazard Map of Abiko City Based on Liquefaction Damage

Hiroshi UNE*, Masafumi AOYAMA**,

Takushi KOYAMA*** and Tomonori HASEGAWA****

[Received 26 March, 2014; Accepted 1 August, 2014]

Abstract

  The 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake brought severe damage caused by wide-ranging soil liquefaction across the Tohoku and Kanto districts. In Abiko City, Chiba Prefecture, heavy liquefaction damage occurred in a small area, which was not accurately predicted by the existing liquefaction hazard map. The authors consider the reason to be land history, such as landform development and artificial landfill, which was not taken into account in the assessment of liquefaction risk. Accordingly, Abiko City has revised the hazard map to take account of micro-landform classifications using land condition maps, old edition maps, and aerial photographs with the assistance of the Geospatial Information Authority's support team.

Key words: land history, liquefaction damage, liquefaction hazard map, landform classification, old edition topographic maps

キーワード:土地の履歴,液状化被害,液状化ハザードマップ,地形区分,旧版地形図 I.は じ め に  平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震 では,津波被害とともに,東北から関東地方にか けてきわめて広い範囲で地盤の液状化による甚大 な被害が発生した。とくに,千葉県北西部の東京 湾岸と,千葉・茨城県境の利根川下流域において 被害が著しく,そのほか,利根川中流部や古利根 川流域,鬼怒川・小貝川流域などの内陸部にも被 害が散在している(国土交通省関東地方整備局・ 公益社団法人地盤工学会, 2011)。内陸部の液状 化については,いずれも被害が狭い範囲に集中し ている。小荒井ほか(2011)は,それらの発生場 所が埋立地や干拓地,旧河道等の局地的な土地の 成り立ち(履歴)と密接に関係していることを指 摘し,旧版地形図や空中写真等の時系列地理空間

地学雑誌 Journal of Geography(Chigaku Zasshi) 124(2)287⊖296 2015 doi:10.5026/jgeography.124.287

   * 国土地理院   ** 日本地図センター  *** 大分大学

**** 玉野総合コンサルタント

   * Geospatial Information Authority of Japan, Tsukuba, 305-0811, Japan   ** Japan Map Center, Tokyo, 153-8522, Japan

 *** Oita University, Oita, 870-1192, Japan

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情報により把握することが可能であるとした。ま た,青山ほか(2014)は,利根川下流低地の液 状化被害の分布を詳細に明らかにし,微地形の分 布のみならず,江戸期以降の河川改修工事や明治 後期以降の浚渫砂による旧河道や旧湖沼などの埋 め立てといった人為的改変の経緯などの土地履歴 が液状化被害の発生に大きな影響を与えていたと した。  本稿では,平成 23 年(2011 年)東北地方太 平洋沖地震に伴う液状化により利根川下流域のな かでもっとも大きな被害を受けた地域のひとつで ある千葉県我孫子市について,事前に作成されて いた液状化ハザードマップの作成方法を調査し, それが今回の液状化を適切に予測していたかどう かを検証する。その上で,結果的に適切な予測が できなかった地点について,土地履歴などの観点 から液状化の要因を明らかにし,予測が適切でな かった原因を考察する。  さらに,地震後,我孫子市は,液状化ハザード マップを含む地震防災マップの改訂を行ったが, 著者の 1 人はその検討に協力したことから,改 訂の経緯を報告し,今後の液状化ハザードマップ 作成における留意点を問題提起する。 II.我孫子市における液状化被害  1)我孫子市布佐地区における液状化被害  我孫子市布ふ佐さ地区においては,液状化により, 戸建家屋の地中への沈み込みに伴う傾動(不同沈 下),電柱やブロック塀等構造物の地中への沈下 やそれに伴う傾動,水道管の破断などの顕著な液 状化被害が生じた。我孫子市(2012a)によると, 住宅等については,全壊 113 戸,大規模半壊 1 戸,半壊 42 戸(2012 年 1 月 20 日現在)の被害 が生じた。これらの被害は布佐地区全域で生じた わけではなく,国道 356 号線と県道 4 号千葉竜ヶ 崎線との「都みやこ交差点」付近から南西に細長くのび る長さ約 450 m,幅約 100 m の領域と,ここか ら南東側に約 100 m ほど離れたところにある約 100 m四方の範囲において,集中的に生じてい た(図 1)(青山ほか, 2014)。これらの液状化被 害が集中的に生じていた領域は,かつて湖沼が存 在した場所と一致することが,旧版地図や過去の 空中写真から読みとることができる(図 2,図 3)。 「都交差点」付近から南西側に存在した細長い沼 は「切れ所沼」とよばれ,明治 3(1870)年の 利根川の洪水により堤防が決壊して生じた押おっ堀ぽりが 沼として残っていた場所であった(中尾, 1981; 我孫子市史編集委員会近現代部会, 2004)。昭和 27(1952)年に利根川の浚渫土砂で埋め立てら れて宅地化され,現在は周辺の市街地と一体化し ている。  2)そのほかの地域における液状化被害  我孫子市においては,布佐地区以外についても 小規模ながら液状化被害が点在している。我孫子 市(2011)によると,布佐地区以外では 27 か所 で液状化の発生が確認されている。発生場所は手 賀沼の埋立地(若松地区)と台地を浸食した谷を 埋めた造成地(新あ ら き の木野地区,柴崎台地区,並木地 区,白はくさん山地区など)に限られており,被害は道路 図 1  我 孫 子 市 布 佐 地 区 の 液 状 化 被 害 分 布(基 図 は 2006 年 更 新 2 万 5 千 分 1 地 形 図「龍ヶ 崎」) (青 山 ほ か, 2014). 1:構 造 物 の 沈 下・傾 斜,2:構 造 物 周 辺 地 盤 の 沈 下 (抜 け 上 が り).

Fig. 1  Distribution of liquefaction damage in Fusa district, Abiko city (plotted on 1:25,000 topo-graphic map “Ryugasaki” revised in 2006) (Aoyama et al., 2014).

1: settlement and tilt of structures, 2: ground surface subsidence around structures.

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の損傷,塀の傾斜や亀裂などで,比較的軽微なも のであった。  このうち,谷を埋めた造成地の液状化発生地点 について,長谷川・宇根(2012)は,1940 年代 の米軍撮影の空中写真と現在の都市計画図の等高 線を用いて写真測量により盛土厚,旧谷の勾配, 谷の横断形等を調査した(図 4)。それによれば, 液状化が発生している地点は,盛土厚はおおむね 4 m未満,旧谷の勾配はほぼ 0°,谷の横断形は 比較的平坦な谷底部をもつお椀型であった。 III.液状化ハザードマップの検証  1)我孫子市液状化危険度マップ(2010 年版) の作成方法  我孫子市では,従前より避難場所や防災施設な どを地図上に示した「あびこ防災マップ」を作成 し,市民に配布してきたが,2010 年に改訂し市 民に配布した「あびこ防災マップ」(我孫子市, 2010)では,市民の地震防災に対する関心の高ま りを受けて,新たに「地震ハザードマップ」が追 加された。このなかには「液状化危険度マップ」 が含まれていた。これは,市全域の液状化の可能 性を「高い」「やや高い」「低い」「対象外」の 4 段 階(実際には「やや高い」「低い」は該当がない) に区分し縮尺 5 万分の 1 の地図で示したもので ある。  我孫子市市民生活部市民安全課(2010)によ ると,液状化危険度マップの作成にあたっては, 内閣府の「地震防災マップ作成技術資料」(内閣 府(防災担当), 2005)(以下「技術資料」と称する) に従い,次のような作業が行われた。まず,5 万 分の 1 土地分類基本調査「龍ヶ崎」の地形分類 図(千葉県, 1983)を用いて 50 m メッシュの微 地形区分データを作成した。その方法は,地形 分類図に 50 m メッシュをかけ,各メッシュに含 まれる地形分類のなかで最大の面積のものを代 表の地形分類項目とし,それを技術資料が地震 動予測のために用いている中央防災会議による 15区分の微地形分類項目に読み替えて微地形区 分データとした。読み替えの基準とした対応表を 表 1 に示す。次に,微地形区分ごとの AVS30(表 層 30 m の平均 S 波速度の推定値)を算出した。 ボーリングデータがある地点については土質区分 図 2  我 孫 子 市 布 佐 地 区 の 液 状 化 被 害 分 布(基 図 は 1928 年 測 図 2 万 5 千 分 1 地 形 図「龍ヶ 崎」) (青 山 ほ か, 2014). 1:構 造 物 の 沈 下・傾 斜,2:構 造 物 周 辺 地 盤 の 沈 下 (抜 け 上 が り).

Fig. 2  Distribution of liquefaction damage in Fusa district, Abiko city (plotted on 1:25,000 topo-graphic map “Ryugasaki” surveyed in 1928) (Aoyama et al., 2014).

1: settlement and tilt of structure, 2: ground surface subsidence around structures.

図 3 1947 年 米 軍 撮 影 空 中 写 真 R393-38. Fig. 3  Aerial photograph taken in 1947 by U.S.

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と N 値からそれぞれの地点の AVS30 が求めら れ,微地形区分から推定した AVS30 の値と空 間的に平滑化が行われ,メッシュごとに AVS30 が設定された。実際にはボーリングデータがき わめて少ないことから,多くの地点において微地 形区分による AVS30 がそのまま用いられた。 メッシュごとの地表最大速度は,震源断層モデル から推定された工学的基盤の最大速度に AVS30 の値から求めた表層地盤の増幅度を掛けること で推定された。震源断層モデルとしては茨城県 南部地震(M 7.3)および仮想我孫子市直下地震 (全メッシュの地下を震源とした M 6.9 の地震) の 2 つが想定された。しかし,すべてのメッ シュについて仮想我孫子市直下地震の最大速度 の方が上回り,実行上はすべてのメッシュに同 一の工学的基盤における最大速度が与えられた ため,地表最大速度は実質的には AVS30 の値 から求められた表層地盤の増幅度だけで決定さ れた。計算の結果は,計測震度に換算すると「砂 礫台地」「ローム台地」「自然堤防」「人工改変地」 において震度 6 弱,「谷底平野」「後背湿地・ デルタ」「埋立地・干拓地」においては震度 6 図 4  液 状 化 が 発 生 し た 谷 埋 め 盛 土 の 盛 土 厚(我 孫 子 市 柴 崎 台 地 区).液 状 化 発 生 場 所 は 国 土 交 通 省 関 東 地 方 整 備 局・公 益 社 団 法 人 地 盤 工 学 会,2011 に よ る.

Fig. 4  Thickness of filled soil in liquefied filled valley (Shibazakidai district, Abiko city). Distribution of sites of liquefaction is after Kanto Regional Development Bureau, Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism and Japanese Geotechnical Society (2011).

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強となった。なお,今回の地震で実際に観測さ れた震度は我孫子市役所(ローム台地に立地) において震度 5 弱,我孫子市の東に隣接する印 西市大森で震度 6 弱であり,想定を下回ってい た。  液状化危険度は,このように推定された地表最 大速度と微地形区分ごとに設定した液状化が発生 する最大地動速度との比によってメッシュごとに 評価された。液状化が発生する最大地動速度は, 松岡ほか(1993)に基づいて,例えば「自然堤防」 は 15 cm/s,「谷底平野」は 25 cm/s,などと設定 され,「砂礫台地」「ローム台地」「人工改変地」 については,「液状化の危険度がほとんどなく, 評価の対象外となる」(我孫子市市民生活部市民 安全課, 2010)としている。  この作業過程からわかるように,結果としては 微地形区分以外の要素はほとんど評価に影響せ ず,実質的には微地形区分のみで危険度が評価さ れたことになる。すなわち,微地形区分データの 「砂礫台地」「ローム台地」「人工改変地」は液状 化危険度マップでは「評価の対象外(液状化の危 険度がほとんどない)」,それ以外(「谷底平野」 「自然堤防」「後背湿地・デルタ」「埋土・干拓地」) は「液状化の危険が高い」と評価された。  2)液状化発生状況との比較  II 章 1)節で述べた我孫子市布佐地区における 集中的な液状化被害は,液状化危険度マップでは 「高い」と「対象外(危険度がほとんどない)」を またがる範囲となっていた(図 5)。この範囲は, 地形分類図では「自然堤防・砂州」と「盛土改変 地」に分類されており,微地形区分データではこ れに基づきそれぞれ「自然堤防」と「人工改変地」 とされた結果,液状化危険度マップでは「自然堤 防」の範囲が「液状化の危険が高い」,「人工改変 地」の範囲が「評価の対象外」と評価されたので ある。結果的には,液状化危険度マップは実際の 表 1  地形分類図から微地形分類データへの読み替え対応表(我孫子市市民生活部市民安全課, 2010 より一部改変).

Table 1 Conversion table from landform classification map to micro-landform classification data (partly modified after Citizen Security Division, Citizen Life Department, Abiko City (2010)).

地形分類図の地形区分 中央防災会議による微地形区分 備考 中位砂礫台地 ローム台地 低位砂礫台地 谷底平野 ボーリングデータ,周辺地形より判断 自然堤防 切土改変地 ローム台地 ボーリングデータより判断 砂礫台地 斜面 谷底平野 隣接する地形分類より判断 後背湿地・デルタ 人工改変地 旧河道 谷底平野 氾濫原平野 谷底平野 後背湿地・デルタ 谷底平野 谷底平野 自然堤防・砂州 自然堤防 盛土改変地 人工改変地 埋土地 埋土地・干拓地 高水敷 谷底平野

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液状化の発生を適切に予測していたとはいえな い。  また,そのほかの液状化発生地点のほとんども 「対象外」とされた地域であった(図 6)。これら の地点は地形分類図では多くは「盛土改変地」で あり,柴崎台地区については「切土改変地」に分 布していた。柴崎台地区は旧地形データでみると 細かい谷の浸入があり盛土と切土が混在している (図 4)が,地形分類図では「切土改変地」に一 括されていた。微地形区分データでは「盛土改変 地」は「人工改変地」に,「切土改変地」が「砂 礫台地」に読み替えられ,液状化危険度マップで はいずれも「評価の対象外」と評価されている。 IV.考 ―なぜ液状化危険度マップは液状化を 適切に評価できなかったのか―  液状化危険度マップが今回の液状化の発生を適 切に評価できなかった原因について,次のことを 指摘することができる。  ①既存の 5 万分の 1 地形分類図のみを用いて 微地形区分データを作成したこと  微地形区分データは基本的に 5 万分の 1 土地 分類基本調査「龍ヶ崎」の地形分類図のみから作 成されている。布佐地区にかつて押堀の沼(「切 れ所沼」)が存在したことは 5 万分の 1 地形分類 図では示されておらず,液状化の評価にも考慮さ れていない。なお,既存の他の地形分類図では, 2万 5 千分 1 治水地形分類図「龍ヶ崎」(関東地 方建設局・国土地理院, 1977)では「旧河道・旧 落堀」であることが示されているが,2 万 5 千分 1土地条件図「龍ヶ崎」(国土地理院, 1975)で は周辺とともに「盛土地」とされ,かつての押堀 図 5  我 孫 子 市 布 佐 地 区 の 液 状 化 危 険 度 マッ プ(我 孫 子 市, 2010)と 液 状 化 発 生 状 況. 1:液 状 化 危 険 度 が 高 い,2:対 象 外(液 状 化 の 危 険 度 が ほ と ん ど な い),3:構 造 物 の 沈 下・傾 斜,4:構 造 物 周 辺 地 盤 の 沈 下(抜 け 上 が り).

Fig. 5  Liquefaction hazard map (Abiko City, 2010) and distribution of liquefaction damage in Fusa district, Abiko city.

1: high liquefaction risk, 2: out of assessment (little probability of liquefaction), 3: settlement and tilt of structures, 4: ground surface subsidence around struc-tures. 図 6  我 孫 子 市 全 域 の 液 状 化 危 険 度 マッ プ(我 孫 子 市, 2010)と 液 状 化 発 生 状 況. 1:液 状 化 危 険 度 が 高 い,2:対 象 外(液 状 化 の 危 険 度 が ほ と ん ど な い),3:お も な 液 状 化 発 生 地 点(国 土 交 通 省 関 東 地 方 整 備 局・公 益 社 団 法 人 地 盤 工 学 会, 2011を も と に 簡 略 化).

Fig. 6  Liquefaction hazard map (Abiko City, 2010) and distribution of liquefaction damage in the entire of Abiko city.

1: high liquefaction risk, 2: out of assessment (little probability of liquefaction), 3: distribution of major site of liquefaction (simplified after Kanto Regional Development Bureau, Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism and the Japanese Geotechnical Society(2011)).

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の跡であることは読みとれない。  ②盛土改変地が人工改変地として評価された こと  地形分類図の分類項目を微地形区分データに読 み替える際に,「切土改変地」は原地形である「砂 礫台地」や「ローム台地」に読み替えられ,「盛 土改変地」が「人工改変地」に読み替えられてい る。技術資料で示されている,既存の地形分類図 の区分から中央防災会議の 15 区分に読み替える ための手順では,改変地については山地・火山・ 丘陵地・台地のなかに存在するものを「人工改変 地」とし,平野部のなかに存在するものは改変前 の微地形区分に分類することとされている。また, 液状化危険度の推定にあたって,「人工改変地」 は「砂礫台地」や「ローム台地」とほぼ同様に評 価されていることからわかるように,ここで想定 されている「人工改変地」はおもに台地の切土改 変地であり,「盛土改変地」を「人工改変地」に読 み替えることは,技術資料の意図が十分理解され ておらず適切ではなかったといわざるを得ない。  ③旧版地形図や過去の空中写真等で比較的容易 に知ることのできる土地履歴の情報が十分に 参照されなかったこと  液状化の危険度を評価するにあたって,旧版地 形図や空中写真等の土地の履歴に関する時系列的 情報はきわめて重要である(小荒井ほか, 2011; 青山ほか, 2014)。布佐地区については図 2,図 3 に示したようにかつて沼であったことは比較的容 易に知ることができ,評価の際に参照すべきで あったと考えられる。  加えて,メッシュごとに与えられた微地形区分 データをもとに危険度の評価を行う手法について は,仮に注目すべき地形や土地履歴の情報を取得 してもそれが小面積である場合には評価に反映で きないことを指摘したい。我孫子市の場合には 50 mメッシュの微地形区分データが用いられて おり,比較的狭い範囲の微地形も抽出されている が,布佐地区については幅 100 m 程度の旧湖沼 の範囲であるかどうかが液状化被害の発生に大き く関与しており,たとえ微地形区分の段階で旧 湖沼の存在がわかったとしても,微地形区分を 50 mメッシュのデータに変換する過程で平均化 されて微地形区分データに十分反映されず,結果 として微地形区分データのみの評価では液状化の 危険度を低く見積もったり液状化危険度に関する 詳細な検討を要する地域を見落としたりする可能 性があると考えられる。また,そのほかの液状化 発生地点についても,図 4 に示した柴崎台地区 のように,台地上の細かい谷が微地形区分データ に反映されず,台地上の谷における液状化危険度 の違いが検討されていない。  さらに,一般には,1 km または 250 m メッ シュの微地形区分データが用いられることが多 い。メッシュ化にあたっては,原則としてメッ シュ内でもっとも広い面積を占める微地形区分が そのメッシュの属性として与えられる。実際には 前述のように 100 m 程度の広がりの微地形の相 違が液状化被害の発生に大きく影響するため, 1 kmや 250 m といった単位での評価では液状化 の危険度を適切に判断できない可能性は一層大き いといえる。 V.ハザードマップの改訂  我孫子市は,地震後,「あびこ防災マップ」を 全面的に改訂することとし,2012 年 6 月から改 訂のための検討作業に着手した。とくに,このな かの「地震ハザードマップ」(「揺れやすさマップ」 「建物全壊率マップ」「液状化危険度マップ」によ り構成される)については,東日本大震災での被 害状況や前章で述べた危険度評価の問題点を踏ま えて,新たに解析を行い,全面的に改訂を行っ た。解析業務は「国土地理院防災情報支援チーム」 の支援,協力のもと,市の委託を受けた民間コン サルタントが実施した。  解析にあたっては,とくに微地形区分図の作成 に重点が置かれた。国土地理院の 2 万 5 千分 1 土地条件図をもとに,第一軍管地方迅速測図(明 治 14(1891)年作成,縮尺 2 万分の 1),旧版地 形図,空中写真,精密地盤標高図などを用いて改 変前の旧地形や,かつての池,沼の分布などを詳 細に確認しながら微地形区分図が作成された。 「人工改変地」はローム台地を大規模に造成した

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地域と定義され,成り立ちの異なる「盛土地」と は区別された。「盛土地」は谷底平野に盛土され たものと三角州・氾濫平野に盛土されたものに分 類され,台地上の谷を埋めた地域がわかりやすく 示された。旧湖沼などとくに留意すべき地域を明 示するため,「干拓地」として昭和 3(1928)年 時点での水域が埋め立てられた地域が分類され た。また,旧地形との関わりをわかりやすく示す ため,昭和 3(1928)年の旧版地形図と最新の地 形図を背景図とした微地形区分図がそれぞれ作成 された。  次に,微地形区分図から作成された 50 m メッ シュの微地形区分データのみをもとに,メッシュ ごとの AVS30 が推定された。この値を用いて, 前回同様の手法で我孫子市直下の地震を想定した 地表最大速度が求められ,これを換算した計測震 度が揺れやすさマップとして示された。液状化危 険度マップについては,「液状化ゾーニングマ ニュアル」(国土庁防災局震災対策課, 1999)を もとに微地形区分から直接評価が行われた。微地 形区分図のポリゴンデータから,メッシュ化によ る平均化の過程を経ずに,直接微地形区分と液状 化の可能性の関係を示す判定基準表を用いて危険 度が判定されたため,詳細な微地形区分の情報を 失うことを避けることができた。  これらの結果は改訂版「あびこ防災マップ」と してとりまとめられ,印刷物として 2013 年 5 月 に市民に配布された(我孫子市, 2013)。  新たに作成された「地震ハザードマップ」には, 解析結果である 3 種のマップのほか,「地震ハ ザードマップができるまで」として,これらの マップがどのように作成されたのかをわかりやす く解説するコラムが表示されている(図 7)。ま た,我孫子市のホームページには,解析のもとと なった微地形区分図と地震ハザードマップ解析業 務報告書(我孫子市, 2012b)の概要版が掲載さ れている。このことは,市民が土地の成り立ちを 理解し,地域の災害特性を把握して,自らの判断 であらかじめ適切な防災・減災行動をとることを 促すことに資するものとして評価できる。  国土地理院防災情報支援チームは,防災に資す るさまざまな情報の提供や,委託業者が行った地 形分類等のチェックなどを通じて解析業務を支援 した。本稿の筆頭著者はこのチームの一員として 支援に参画した。 VI.おわりにかえて ―ハザードマップのあり方への提言―  本稿で指摘した液状化ハザードマップの問題点 は,我孫子市の液状化危険度マップ固有の問題で はなく,多くの地域で行われている危険度評価に 同様にあてはまるといえる。  液状化の発生は,土地の履歴とそれを反映した 微地形に密接に関わりをもっている。危険度評価 図 7  我 孫 子 市 防 災 マッ プ(我 孫 子 市, 2013)に 示 さ れ た「地 震 ハ ザー ド マッ プ が で き る ま で」. Fig. 7  “How an earthquake hazard map is created?”

shown on Abiko City Disaster Prevention Map (Abiko City, 2013).

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にあたっては,これまで行われている定量的評価 に加えて,微地形区分を通じて土地の履歴につい ての十分な検討を行う必要がある。その際には, 液状化が地盤の物理的性質を強く反映した現象で あること,地盤の物理的性質の違いは土地の履歴 の違いの反映であることを十分に考慮して,空間 的な広がりも踏まえつつ,豊かな想像力をもって 土地の成り立ちを思い描くことが適切な評価につ ながると考える。  また,液状化ハザードマップに限らず,ハザー ドマップは住民が生活空間における自然の営みを 理解するための参考資料と考えるべきであり,そ のためには土地の成り立ちが理解できる地図とす ることが重要である(宇根, 2011)。その際,メッ シュによる評価は場合によっては平均化により地 域のリアリティを失わせる可能性があることに留 意して,これからのハザードマップの作成方法や 住民への周知のあり方を議論するべきである。 謝 辞  本稿の骨子は日本地理学会 2012 年度春季学術大会, 日本地球惑星科学連合 2012 年大会,日本地理学会 2013年度春季学術大会において発表した。  我孫子市市民生活部市民安全課,都市部布佐東部地 区復興対策室の皆さんには未公表資料を含む貴重な情 報をいただいた。  東日本大震災により被災された方々に心よりお見舞 いを申し上げ,一日も早い被災地の復興をお祈り申し 上げます。 我 孫 子 市(2010): あ び こ 防 災 マ ッ プ.[Abiko City (2010): Abiko Disaster Prevention Map (Abiko

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Honbu Sokatsu Hokokusho). (in Japanese)* 我 孫 子 市(2012a): 我 孫 子 市 復 興 計 画.[Abiko City

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我孫子市(2012b): 我孫子市地震ハザードマップ解析業 務委託報告書.[Abiko City (2012b): Report of the

Contract Service for Analysis of Earthquake Haz-ard Map of Abiko City (Abikoshi Jishin Hazard

Map Kaiseki Gyomu Itaku Hokokusho). (in Japa-nese)*

我 孫 子 市(2013): あ び こ 防 災 マ ッ プ.[Abiko City (2013): Abiko Disaster Prevention Map (Abiko

Bo-sai Map). (in Japanese)*

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Shishi Kingendai Hen). Board of Education of Abiko

City (Abikoshi Kyoiku Iinkai). (in Japanese) 我孫子市市民生活部市民安全課(2010): 我孫子市地震

ハザードマップ作成業務報告書.[Citizen Security Division, Citizen Life Department, Abiko City (Abikoshi Shimin Seikatsubu Shimin Anzenka) (2010): Report of the Contract Service for

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Fig. 1  Distribution  of  liquefaction  damage  in  Fusa  district,  Abiko  city  (plotted  on  1:25,000   topo-graphic  map  “Ryugasaki” revised  in  2006)
図 3 1947 年 米 軍 撮 影 空 中 写 真 R393-38. Fig. 3  Aerial photograph taken in 1947 by U.S.
Fig. 4  Thickness of filled soil in liquefied filled valley (Shibazakidai district, Abiko city)
Table 1 Conversion table from landform classification map to micro-landform classification data
+2

参照

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