宇宙輸送事業に関する一考察
その他のタイトル Concept of Space Transportation System
著者 羽原 敬二
雑誌名 關西大學商學論集
巻 42
号 6
ページ 1263‑1285
発行年 1998‑02‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/6415
関西大学商学論集 第42巻第6号 (1998年2月) (1263) 183
宇宙輸送事業に関する一考察
羽 原 敬
I は じ め に
1 宇宙開発事業の動向I)
宇宙開発は,第一世代から第二世代に,衛星の時代から宇宙ステーショ ンの時代に向かおうとしている(資料1)。宇宙利用の観点からは,第一世 代は人工衛星による軌道位置利用の実用化の時代であり,宇宙科学・通信・
観測の各分野にわたって開発実績をあげ,特に情報化社会の形成において,
衛星通信サービス,衛星放送サーピス,地球観測データ送付サーピスなど の新規事業分野が開拓されてきた。
第二世代は21世紀に向けての新たな挑戦•発展の時代である。中心は宇 宙ステーションを基本にした宇宙インフラストラクチャーの構築であり,
月面基地をはじめ,火星基地や惑星基地の建設など新しい有人宇宙システ ム開発の時代である。すなわち,無人宇宙機から有人宇宙機へ,軌道位置 利用から宇宙環境利用およぴ非地球資源利用への移行である。第一世代に おいても米 ノの有人宇宙活動が活発に行われてきた。たとえば,ソ連のミ ール計画のように半恒久的な宇宙ステーションの構築や,米国のアポロ宇 宙船による月面探査も実施されている。しかし,これらはあくまでも実験 基地としての役割を果たすものであった。第二世代の有人活動は,宇宙の 1)藤田康毅「宇宙開発の現状と展望」『三菱電機技報』Vol.65, No.IO, 1991, 2 (928)
‑ 9 (935)ページ。
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(資料1)宇宙開発の現状と展望
分 類 H 的 用 途
技術開発衛星 ・衛星本体技術の開発 ・衛星技術の確立
・搭載ミッションの字宙実証 ・字宙実証新規技術の利用
』発 有人宇宙船 •有人宇宙活動.船外活動実験 •宇宙活動医学
•月面探査 ・材料・理化学実験
・材料.理化学実験
無人宇宙実験衛屋 ・フリーフライヤーによる材料・薬品 ・宇宙材料製造 製造.理化学実験後の回収 ・理化学実験 科学衛星 .磁気圏・太9易活動.天文観測 .磁場電離層観測
・直接観測 ・超新星X線調査
科 ・X線電磁波観測 ・電離層・太陽活動予報
..f..• . )]探査機 •月面鋭測,楕陸位置調査 . n面基地選定 惑星探査機 •太陽系惑星ハレー替星探究 ・惑星デーク収集
固定通信衛星 ・固定地点間通信綱の提供 ・電話・TV・データ伝送. CATV,
•静JI: 軌道^ Kの国内•国際通信網の提 ピデオ会議
供 ・SNG
通 ・過疎地通信網・i:.5度情報網の設定
信 戟接放送衛拉 ・無培別広域放送の伝送 • NTSC, HDTV伝送
・簡易TV中継 ・スポーツ,催物中継 移動体通信衛星 ・固定点・移動体llll,移動体間通信網 ・船舶電話 •FAX, 位置通報, 自
の提供 動車電話
気象衛星 •静JI.: 衛星 4 個と極軌道衛星 2 個によ ・気象,海洋気象の監視 る全地球気象観測網の設定 ・気象予報.変動予報 海洋観測衛且 •海面の波高.海温等の観測 •水産資源探査.漁海況予報.海
観 (中沿j度太陽同期軌道) 難救助
測 地球安源衛星 ・地球表面の地形.温度.表面状況観 •国土.土地利用調査
測 ・農林資源,石油資源探査
(低甜度太陽同期軌道)
測地衛星 • 2地点1111の精密距離測定 ・大陸移動監視
・大陸間距離測定 ・地誕予報
存航行・測位衛星 ・複数個の衛星による位置決定 ・移動体測位と航法最適化
・標準時刻伝送 ・アマチュア無線中継
胃 ・アマチュア無線
宇宙輸送事業に関する一考察(羽原)
恒久的な施設としての生産拠点および生活拠点である宇宙基地の構築を目 指すものである。これらの宇宙インフラストラクチャーの構築は国際的な 協力関係のもとで進められる事業である。宇宙基地の建設は,人間の活動・
居住域を宇宙に広げるものであり,宇宙における,環境制御•生命維持シ ステム,電力供給システム,地球・月・惑星間の通信ネットワーク,医療・
健康管理システム,災害対策・救助システム,基地建設機械,輸送システ ムなど総合的な技術開発がさらに必要となる。
現在,宇宙利用(資料2)においては,地球周辺の軌道に人工衛星を投 人して,宇宙観測,通信放送,航行測位,地球観測などのサービスに供す る軌道位置利用が最も有効に利用されている分野である。宇宙科学親測用 の科学衛星,天文観測用の天文衛星,地球観測・監視用の気象衛星,地球 観測衛星,資源探査衛星,国際・地域・国内通信用の通信衛星,衛星放送 用の放送衛星,自動車電話・船舶通信用の移動体通信衛星,航空・航海管
(資料2)宇宙利用の概要 (1)軌道位置利用
•宇宙科学ー科学衛星(地球周辺環境観測,地球磁気圏観測,太陽系観測,月探査,
惑星探査 )
・天文科学一天文衛星(銀河X線観測,電波観測,クエーサー)
・地球科学一気象・地球観測衛星(気象観測,海洋観測,地球資源探査,測地,地
球環境監視 )
・通信・放送ー通信・放送衛星(国際通信,国内通信,地域通信,衛星放送,移動:::i}j船舶通信,航空通信,パーソナル通信,)
・航行・測位ー航行・測位衛星(航空管制,航海管制,交通管制,列車管制)
(2)宇宙環境利用
・材料科学一宇宙ステーション・フリーフライヤー(均等質材料の生成,結晶成長,
高純度材料生成,材料工場 )
・ライフサイエンスー宇宙ステーション(均等質薬品生成,高純度薬品生成,薬品
工場 )
•宇宙医学一宇宙ステーション(宇宙医療・宇宙病の研究,微小重カドでの述動能力)
・理化学研究一宇宙ステーション(高真空・微小重力下での物理・化学実験)
(3)非地球資源利用
•太陽発電一宇宙太陽発電(太陽光発電,マイクロ波屯力伝送)
•月資源一月面基地 (3He 燃料製造,金属精錬,無機材料生成,酸索製造)
・火星資源一火星基地(居住環境生成,金属・無機材料製造,酸索•水索製造)
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制・交通管制用の測位衛星などは現在すでに実用化されている。地球上で は得られない宇宙の無重力,高真空・太隔エネルギーなどの環境を利用し た均一,超高純度の材料・薬品の生成や理化学実験,および微小重力下で の患者の負担を軽くした新しい医療は,宇宙環境利用として宇宙利用分野 で将来が期待されている。現在開発が進められている宇宙ステーションの ミッションの一つでもあるスペース・フライヤー・ユニット (SFU)は, その一例である。地球上のエネルギー資源枯渇の解決対策としては,非地 球資源利用が採り上げられ,宇宙太陽発電と月面の3He燃料採集による地 球上での核融合発電が,エネルギー収支,環境アセスメントの点から十分 実現性のある計画とされ,検討が進められている。
2 宇宙産業の構成2)
宇宙産業は,①システムや機器を製造し提供する宇宙機器産業,②シス テムや機器の打上げおよぴ回収またはそれらの追跡・管制を行う宇宙輸送
(サーピス)産業,③打ち上げられたシステムや機器を利用する宇宙利用 産業から構成されている(資料 3)。それぞれの産業の特質は以下のとおり である。
(1)宇宙機器産業
宇宙空間で活動するシステムや機器,ソフトウェアなどを製造し提供す る産業である。この産業は,極めて特殊な製造設備,優秀な研究開発人材,
多額の開発資金を必要とする。
(2)宇宙輸送産業
システムや機器を宇宙空間に打ち上げたり,それを回収したり,または 宇宙空間で組み立てたり,あるいは打上げられたものを追跡・運用する産 業である。宇宙輸送産業の運用については,米国ですでに一部商業化され 成り立っているものもあるが,わが国では,この分野は宇宙開発事業団を 2)『宇宙関連産業の発展性に関する調査報告書』財団法人未米工学研究所,平成2年,
16ー17ページ。
中心とする国の事業として進められている。わが国においては,打上げ手 段については,独自ロケットの開発が進められているが,軌道上からの回 収技術をまだ完全に有しておらず,当面は米国のスペースシャトル等に依 存せざるをえない状況にある。わが国独自の宇宙活動を展開するためには,
総合的な輸送システムを構築することが求められている。
(3)宇宙利用産業
打上げられたシステムや機器を自ら利用,または利用のために提供する 産業である。衛星通信,衛星放送,地球観測,宇宙環境利用など各分野に おいて事業が展開されているが,商業ベースで運用されているものはまだ 一部である。
本稿では,上記のような実態を踏まえ,将来にわたり宇宙開発事業の中 で重要な基盤をなす宇宙輸送事業について,以下で考察をしてみることと する。
設建 設 設 げ 光 場 建 建 上 査 観 作 工 備 備 打 探 造
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II 宇宙輸送事業の概念
1 宇宙活動と宇宙輸送事業の範囲
わが国におけるロケットの打上げは,現段階ではそのほとんどが衛星を 軌道に打ち上げるためのものであるが,スペース・シャトルの打上げにみ られるように,世界的には,宇宙空間における一定の実験を行うために,
人員または実験装置を宇宙空間に輸送することを目的としたロケット打上 げも次第に多くなってきている。特に,現在各国が共同して計画を進めて いるスペース・ステーション計画では,宇宙空間に宇宙ステーションを建 設し,そこで国際的な協力の下に宇宙利用のための各種実験等を実施する
こととしており,宇宙輸送事業の発展が必要不可欠である。
(1)ロケットの打上げ作業と宇宙輸送事業の範囲
一般にロケットを用いて人工衛星を打ち上げる場合,①ロケット・衛星 の設計および製造→②射場への搬入→③糾立・整備→④ロケットの打上げ
→⑤ロケットの打上げ管制→⑥衛星の軌道投入→⑦衛星の機能確認→⑧衛 星の引き渡し→⑨衛星の運用および衛星の追跡管制, という一連の作業が 行われる。
宇宙条約等により,国は民間の宇宙活動に対する許可および継続的監督 を行うことが求められているが,この国際的責任を保証するためには,上 記ロケットの打上げに関する一連の作業において,宇宙輸送事業としては,
どの範囲を規制の対象と考えるべきかが問題となる。ただし,規制対象と する範囲については,宇宙条約等の国際的責任の保証という観点およびわ が国の民間宇宙利用を促進するという観点からも,必要かつ最小限の範圃 に届めるべきである。3)
3)無重力実験は輸送事業には当たらないが,規制は必要である。宇宙空間に達しな いものは除かれるが,宇宙開発事業団の活動は全て含まれる。
宇宙輸送事業に関する一考察(羽原) (1269) 189 (2)輸送事業の定義
既存の各輸送事業については,現行の法令において,それぞれの事業法 で次のように定義されている。
・鉄道事業
他人の需要に応じ,鉄道による旅客または貨物の輸送を行う事業。
・道路運送事業
他人の需要に応じ,自動車を使用して旅客または貨物を運送する事業。
・船舶運航事業
船舶により人または物を運送する事業。4)
•航空運送事業
他人の需要に応じ,航空機を使用して有償で旅客または貨物を運送する 事業。
これらの輸送について共通するのは,「他人の需要に応じる」,「輸送手 段」,「旅客または貨物の運送」であり,このことから輸送事業を定義すれ ば,「他人の需要に応じ,輸送手段を用いて,旅客または貨物の運送を行う 事業」ということができる。
(3)運送およぴ運送契約の意義
運送とは,一般に,「物品または旅客の場所的移動をなすこと」と定義さ れており,運送を行う旨の契約,つまり,「当事者の一方が物品または旅客 の場所的移動を約し,相手方がこれに報酬を約する契約」が運送契約であ る。運送契約は,物品運送の場合,運送人と運送委託者である荷送人を当 事者とする請負契約である。したがって,荷受人または貨物引受証の所持 人については,運送された物品の引渡しがなされるべき者であって,運送 契約の当事者ではないと考えられている。
通常,運送契約が成立したときは,運送人は運送品を受け取り,善良な 管理者の注意をもって,これを滅失・損傷することなく,相当の時期に目
4)「他人の需要に応じ」という文言がないのは.海上運送法による規制の趣旨から.
自己のために行うものは除かれていると解されるためである。
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的地までの運送品の移動を開始しかつ終了して,荷受人に運送品の引渡し をなすべき義務を負うほか,物品運送の性質上,運送品の受取後引渡しの 時までこれを保管すべき義務を負う。運送人は,上記義務を運送契約の相 手方たる荷送人に対して負担し,これを履行することにより運送契約上の 義務が完了することになる。しかし,運送品が到達地に到着した後は,荷 受人は運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得する5)こ とから,運送人は荷受人に対しても上記の義務を負担することになると解 されている。
(4)人工衛星打上げにおける運送契約要件
ロケットによる衛星の打上げについて考えると,衛星の所有者は,衛星 を打ち上げること,すなわち,地球上に存在する衛星を宇宙空間の特定の 位匿に移動させることを内容とする契約をロケットの所有者と締結するも のであり,これは,当該衛星をロケットという輸送手段を用いて貨物であ る衛星を宇宙空間の特定の位置に移動させることを請け負う運送契約であ る。したがって,ロケットによる衛星の打上げは,一定の条件において人 工衛星となりうる物体を運送品として,当該物体を宇宙空間の特定の位置
(軌道上)まで移動させることを委託した者を荷送人とし,その委託を受 けて輸送手段であるロケットを打ち上げ,運送品たる物体を宇宙空間の特 定の位置である軌道上で引き渡す義務を負う者を運送人とし,荷送人によ
り当該軌道上で衛星の引き渡しを受けるべき者として指定された者を荷受 人とする運送契約である。
また,荷受人である衛星の所有者は,運送品である衛星を物理的に直接 受け取るものではないが,ロケット打上げ者において当該衛星が滅失・損 傷していないことの機能確認を行ったうえで,衛星の管理・管制権の引渡 しを受けるものであり,これをもって,打上げ者の運送契約上の引渡し義 務を完了したものと考える。なお,一般の貨物運送においても,荷受人は
5)商法第583条第1項。
運送品の直接占有を取得することを要せず,占有改定により,運送人に引 き続き当該運送品を保管せしめても運送品の受取りがあったと解されてい る。
したがって,一連のロケット打上げ作業中,ロケットの打上げから衛星 の引渡しまでは,ロケットを使用して物品を運送する行為であり,これを 他人の需要に応じ,業として行うことは,宇宙空間への輸送事業を行うこ
とと考えられるものである。
2 損害賠償責任負担主体としての宇宙輸送事業者の範囲
ロケットの打上げから衛星の引渡しまでの間に行われる一連の業務は宇 宙輸送と考えることができるが,実際にはこれらの業務は,複数の者が連 携をとって行われることが多く,その中心となる宇宙輸送事業者として規 制すべき対象者をどのような要件を備えた者とすべきかが問題となる。こ の点については,宇宙輸送事業者として規制する目的が,宇宙条約等の国 際的責任を履行するためであることから,輸送途上において事故が生じた 場合において,損害賠償責任を負うべき者を考えれば,ロケットの所有者 を宇宙輸送事業者とするのが適切であると考えられる。
この理由は,自動車の損害賠償については,自動車の運転操作を行った 運転者ではなく,自動車を使用する権利を有する者,すなわち自動車の所 有者が運行についての最終的な責任を負うものであるとの考えから,運転 者を指揮・監督していたかどうかに係わらず,自己のために自動車を運行 の用に供する者は,これによって生じた損害を賠償する責に任ずる6)こと とし,自動車の所有者に最終的な責任を集中させていることによるもので ある。
ロケットの打上げの場合も,これと同様に,ロケットの運行に関する最 終的な責任は,点火作業,追跡管制等を行う者ではなく,当該ロケットの
6)自動車損害賠償保障法第3条。
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所有者叫こあるものと考えれば,所有者に責任を集中させることが適当で ある。8)
3 規制の対象とすぺき事業者の範囲 (1)実運送と運送取扱
現在の運送事業においては,社会生活の高度化・多様化,経済環境の変 化に対応し,自ら輸送手段を所有して,実際の運送を行う事業に加え,多 種多様な運送人や運送方法の中から最も適切な手段を迅速かつ的確に選択 して運送を委託する業務が分化した結果,運送取扱事業として発達してい る。この運送取扱事業を一元的に規制することを目的として制定されたの が貨物運送取扱事業法である。貨物運送取扱事業法においては,自ら輸送 手段を所有し,実際の運送を行う事業を実運送と定義しており,運送取扱 事業を利用運送事業と運送取次事業に区分し,それぞれ以下のように定義
されている。
•利用運送事業
他人の需要に応じ,有償で利用運送を行う事業。
•利用運送
運送事業者の行う運送(実運送に係わるものに限る)を利用してなす貨 物の運送。
・運送取次事業
他人の需要に応じ,有償で自己の名をもってする運送事業者(実運送事 業およぴ利用連送事業を経営する者に限る)の行う貨物の運送の取次もし くは運送貨物の運送事業者からの受取,または他人の名をもってする運送 事業者への貨物の運送委託もしくは運送貨物の運送事業者からの受取を行
7) 民 法 上 の 所 有 と は 異 な る こ と も あ る 。 使 い 捨 て ロ ケ ッ ト の 場 合 , 点 火 時 に 所 有 権 が移転している場合がある。
8) 追 跡 管 制 に よ り 事 故 が 生 じ た 場 合 に は , 追 跡 管 制 を 行 っ た 者 とロケット所有者と の内部関係によって解決すべきものである。
宇宙輸送事業に関する一考察(羽原)
う事業。
(2)宇宙輸送事業における運送取扱事業
宇宙輸送事業においても,運送取扱事業を考えることができる。すなわ ち,自ら輸送手段であるロケットを所有し,実際の運送を行う者が宇宙輸 送における実運送事業者であると定義できるのに対し,宇宙輸送における 利用運送事業は,他人の需要に応じ,有償で実運送事業者の打ち上げるロ ケットを利用して行う衛星の運送と定義することができる。宇宙輸送にお ける運送取次事業は,衛星打上げの取次等の事業形態が考えられる。これ らの宇宙輸送に係る運送取扱事業を規制の対象とすることについては,条 約上の必要性だけでなく国内の事業規制の状態を考慮して検討すべきであ
るとされている。
(3)宇宙輸送の付帯事業
ロケットの打上げから衛星の引渡しを宇宙輸送事業と定めることによ り,宇宙輸送のためには,
①宇宙輸送の前段階としてのロケットの組立・整備
②ロケットの打上げに必要な打上げ発射台の整備・運営およぴ管理
③ロケット打上げ時の追跡・管制
④打ち上げられた衛星の運航管理
などの打上げに付帯した各種の業務が一体的に行われ,運送人が運送義務 を完遂できることになる。したがって,これらの宇宙輸送に付帯して行わ れる事業についても必要な範囲で規制することが考えられる。9)
4 宇宙輸送事業の分類
現行の輸送事業法令においては,旅客運送,貨物運送のように輸送事業
9)現行の輸送事業法令においては,
①輸送に不可欠な施設を他人に使用させる事業(第三種鉄道事業等)
②輸送手段を他人に貸し渡す事業(船舶貸渡業等)
などが広い意味の輸送事業の一類型として一体的に規制されている。
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を輸送の客体によって分類しているが,宇宙輸送事業に関しては,旅客の 運送は,現段階においては考えられないため,輸送の客体による分類は意 味がないといえる。ただし,輸送の客体が現在の衛星打上げに限定されて いる段階から,近い将来において宇宙往還機が実用化される段階になると,
その使用機材の特殊性,地上に及ぽす影響などを検討した場合,現在の打 上げ輸送と異なる規制が必要とされ,次のように分類することが考えられ
る。
①打上げ輸送事業
他人の需要に応じ,ロケットを使用して,人工衛星を宇宙空間に打上げ・
回収等の運送を行う事業。
②宇宙往還輸送事業
他人の需要に応じ,ロケットおよぴ宇宙往還機を使用して,地球上と宇 宙空間の間において貨物および人員を運送する事業。
③宇宙軌道間輸送事業
他人の需要に応じ,人工衛星または宇宙往還機を使用して,人工衛星相 互間において貨物および人員を運送する事業。
④惑星間輸送事業
他人の需要に応じ,人工衛星または宇宙往還機を使用して,人工衛星と 惑星相互間において貨物およぴ人員を運送する事業。
III 宇宙輸送事業における関係当事者の責任およぴ損害負担10)
1 宇宙輸送事業(衛星とロケットの開発・打上げ・逼用)に係る関係者 技術開発を目的とする技術試験衛星および実験用衛星については,国の 100パーセント出資により,開発・打上げ・運用が行われている。通信衛星,
放送衛星等の実利用と技術開発の両方を目的とした衛星については,国と 10)人工衛星打上げ等に係る損害てん補等検討会『人工衛星打上げ等に係る損害てん
補等検討会報告書』昭和61年5月9日。
宇宙輸送事業に関する一考察(羽原)
ユーザーが技術開発と実利用の割合を勘案しながら一定の比率で開発費用 を分担して開発を行い,打上げを実施しており,打上げられた衛星はユー ザーが利用している。これは,国およぴユーザーの費用負担が軽減される とともに,ューザーが開発段階から積極的に関与することにより,ユーザ ーの意向を反映した衛星を開発することができるためである。
①技術試験衛星,実験用衛星
技術試験衛星と実験用衛星については,特殊法人である宇宙開発事業団 (National Space Development Agency of Japan)(以下NASDAと称 する)が,衛星の設計,製作,打上げ,およぴ運用を行う。 NASDAの業 務のうち,衛星・ロケットの設計,製作,発射整備作業等については,専 門メーカーが作業を請負っている。これらの作業の後に, NASDAが,衛 星・ロケットを打上げ,衛星を運用するか,または国立試験研究機関等が 利用する。
②通信衛星,放送衛星,およぴ気象衛星
通信衛星,放送衛星,気象衛星については, NASDAがわが国の技術開 発の必要に基づき,かつユーザー側からの委託を受け,11)衛星の設計,製作,
打上げ,および初期段階における追跡管制ならぴに機能確認を行う。
NASDAの業務のうち,衛星・ロケットの設計,製作,発射整備作業等に ついては,専門メーカーが作業を請負っている。これらの作業の後に,
NASDAは,衛星・ロケットを打上げ,初期段階における追跡管制およぴ 機能確認を行い,ューザー側に衛星を引き渡す。ユーザー側は,引き渡さ れた衛星を運用する。
宇宙輸送事業に係る関係者の責任およぴ損害負担の処理に関し,技術試 験衛星およぴ実験用衛星については, NASDAとメーカー等との関係が中 心となり,この関係は基本的に,通信衛星,放送衛星,およぴ気象衛星に 11)通信衛星および放送衛星のユーザーであるNTT, NHKなどは通信・放送衛星機 構に委託し,同機構がNASDAに再委託している。気象衛星のユーザーである気象 庁は直接NASDAに委託している。
196 (1276) 第 42 巻 第 6 号
おける NASDAとメーカー等との関係と同様であると考えられる。
NTT, NHKなどのユーザーは,通信・放送衛星機構(Telecommunica‑ tions Satellite Corporation of Japan)(以下TSCJと称する)との間で 衛星の打上げ等に関して協定を結ぴ,協定に定められた基本仕様に基づく 衛星の設計,製作,打上げならぴに初期段階における追跡管制およぴ機能 確認の業務をTSCJに委託する。TSCJはNASDAとの間で協定を結ぴ,
ユーザーから委託された業務を NASDAに再委託する。 NASDAは,自ら の開発の必要に基づき,かつTSCJの委託を受け,衛星の設計,製作,打 上げならぴに初期段階における追跡管制およぴ機能確認の業務を行う。こ れらの業務のうち,衛星・ロケットの設計,製作について, NASDAは仕 様書を定め,衛星メーカー,ロケットメーカーにそれぞれ請け負わせる。
NASDAはNASDAの指示に基づく試験をメーカーに行わせた後,その 状況を審査して衛星・ロケットを受領する。衛星・ロケットの受領後,ロ ケットの組立て等発射整備作業について, NASDAは仕様書を定め,発射 整備作業請負業者に請け負わせる。同時に, NASDAは,打上げに伴い,
ロケットヘの燃料注入等のカウントダウン作業についてメーカーからサー ビスを補助的に借り上げ,衛星・ロケットの打上げを行い,初期段階にお ける追跡管制およぴ機能確認を行う。
この後に, NASDAは,衛星の機能および性能を確認のうえ, TSCJに その衛星の持分を引き渡すとともに, NASDAの持分を貸し付ける。ただ し,重大な異常がある場合は,その取扱いにつき, NASDAとTSCJで協 議することとしている。 NASDAから衛星の引渡しを受けた後, TSCJは ユーザーに衛星を引渡す。ユーザーは,協定を結ぴ, TSCJに衛星の追跡管 制を委託し,その追跡管制のもとで衛星を利用する。
2 宇宙損害に関する契約関係当事者間の責任およぴ損害負担
宇宙輸送事業に係る損害に関する関係者の責任およぴ損害負担について は,衛星・ロケット打上げ前の段階と打上げ後の段階では,衛星・ロケッ
宇宙輸送事業に関する一考察(羽原)
トの補修をはじめ,非常に異なる条件に置かれることになるため,衛星・
ロケットが地上に置かれている段階(衛星・ロケットの設計およぴ製作,
発射整備作業,カウントダウン作業)と,衛星・ロケットが地上には存在 しない打上げ・運用段階に分けて検討することが必要である。
(1)衛星・ロケットが地上に置かれている段階
衛星・ロケットが地上にある段階において発生した損害については,地 上で使用される機器に係る注文者と受注者の責任およぴ損害負担の処理に 比べて,特に異なるものではなく,同様に取り扱うべきであると考えられ
る。
(2)衛星・ロケットの打上げおよぴ運用段階
宇宙空間に向けて打ち上げられた衛星・ロケットは.打ち上げられた時 点から地上に回収することがほとんど不可能になり.宇宙空間という地上 とは異なる環境において運用されることになる。このため,衛星・ロケッ トの打上げ以後は.発生する損害に関して,衛星・ロケットが地上にある 場合と比べ.次のような点で非常に異なる環境条件のもとに匿かれること
を認識する必要がある。
①宇宙環境の特殊性
宇宙環境は,微小重力,高真空,極低温であり,放射線の影響が大きい など,地上とは著しく異なった自然環境であり,未知の現象も多く存在す る。このため,現在の技術水準によっても衛星・ロケットに故障や事故が 発生する可能性が高く,予測不可能なリスクが存在する。
②回収・補修の困難l生
衛星・ロケットを打ち上げた後は.衛星・ロケットを回収することや.
その位箇に人間が到達することは,ほとんど不可能であり,たとえ可能で あっても膨大な費用がかかる。したがって,衛星・ロケットに故障が発生 した場合.これを地上に回収し,あるいは技術者が宇宙空間に到達し.そ 12)スペース・シャトルによって回収されることもあるが,これは低軌道でのみ可能
な活動であり,静止衛星軌道」..の衛星を回収することは,現段階ではできない。
198 (1278) 第 42 巻 第 6 号 の故障を修理することは極めて困難である。12)
地上からの操作により故障に対処することには限界があり,故障に備え て予備または代替の機器や部品を衛星・ロケットに搭載することにも自ず
と限界がある。
③原因特定の困難性
宇宙環境の特殊性,回収・修理の困難性から,衛星・ロケットに故障が 発生した場合,当該故障原因の解明は,推定によらざるをえないという事 情があり,原因を特定することは非常に困難な面がある。
④損害規模の巨大性
宇宙輸送事業には巨額の費用を要するため,衛星・ロケットに故障が発 生し,損害を生じた場合,その損害は巨額になる。これは,ロケットに故 障が起ると,衛星も含めた損害となり,ロケットは正常であっても衛星に 故障が発生し,衛星本来の機能が発揮できなくなれば,衛星の製作費だけ でなく,ロケットの製作,打上げをも含めた損害となる。衛星・ロケット は多くの機器や部品で構成されており,一部の機器や部品の故障であって も,修理ができないため,衛星・ロケット全体が機能しないことになる可 能性が大きく,発生損害が巨額になる条件がある。
こうした宇宙損害に関する特殊性を背景とした契約関係においては,衛 星・ロケットの打上げ以後に発生した損害に関する関係当事者の責任およ ぴ損害負担の検討に当っては,以下の点について考慮する必要がある。
①現在の技術水準では,宇宙環境の特殊性,回収・補修の困難性から,
衛星・ロケットは打上げ後の性能を100%保証することは不可能である。す なわち,衛星・ロケットは,開発過程にあり,現段階では注文者が一定の コストと計画予定上の制約から,メーカー側に要求する信頼度を設定して 発注しており,一定の故障発生率を許容する方法で衛星・ロケットの開発 が行われている。製作されたものが要求した信頼度に達しているか否かに ついては,予め地上で発射前に行う各種試験や解析により確認を行う方法 によっている。
宇宙輸送事業に関する一考察(羽原)
②衛星・ロケットの打上げ以後に発生した不具合の原因が,メーカーの 責に帰すべき事由によると推定される場合でも,実際には,注文者が事故 原因を立証し,メーカー側の責任を追求することは,原因解明•特定の困 難性から.極めて難しい。13)
③メーカーとの契約に,事故発生の責任を加重する条項を挿入すること は不可能ではないが,宇宙環境の特殊性,回収・補修の困難性など宇宙損 害に関する特l生から,メーカー側は,このリスクを予め定量的に把握する ことが困難であり,同リスクに対応するために,製造コストにリスク負担 分として相当多額の金額を付加する結果を招き,結局製造コストにはねか えることになる。
以上のような宇宙損害に関する特殊性を背景とした契約関係を考慮すれ ば,衛星・ロケットの打上げ以後損害が発生した場合には,宇宙輸送事業
(衛星・ロケットの開発,打上げ,運用)によって利益を得ようとする者
(ユーザーおよびNASDA)が,その損害を負担せざるをえないと考えら れる。
したがって,衛星・ロケットの打上げ,運用段階において損害が発生し た場合,当該損害に係る関係者の責任およぴ損害分担は,一般に以下のよ
うに考えられる。
(1)関係者の責に帰すべき事由により損害が発生した場合
①TSCJまたはユーザーは,衛星・ロケットの設計,製作,打上げ過程 において,直接これらの作業に関与する行為または指示等を行わないので,
初期機能確認以後, NASDAから衛星を引き渡されるまでは,これらの者 の責に帰すべき事由により損害が発生することは考えられない。
13)事故原因の解明と特定のためには,メーカー側の協力を得ることも考慮する必要 がある。メーカー,発射整備作業請負業者,打上げ役務提供メーカーなどの法的責 任の有無にかかわらず,衛星・ロケットについて損害が発生した場合には,衛星・
ロケットの開発,打上げ,運用に関与したメーカーおよぴ事業者は,事故原因の解 明と特定に協力する責任があると考えられる。
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衛星の引渡し後,管制,運用ミスなどTSCJまたはユーザーの責に帰す べき事由により損害が発生した場合には, NASDAと同様の責任およぴ損 害負担に準ずるものと考えられる。
②衛星・ロケットのメーカー,発射整備作業請負業者,打上げサービス 提供メーカーの責に帰すべき事由により損害が発生した場合
(a)帰責者は,損害について責任はあるが,宇宙損害の特殊性から,過失 すべてについて損害を負担することは過重であり,帰責者に重大な過失が ない限り,損害の有責者負担の原則を修正することが必要である。すなわ ち,相当の注意を欠いた軽過失については,帰責者ではなく,損害は原則 として NASDAおよぴユーザーが分担して負担せざるをえないと考えら れる。
(b)帰責者に著しく相当の注意を欠いた状態である故意または重過失があ った場合,衛星・ロケット打上げ後であっても,帰責者が相当因果関係の 範圃内において損害を負担すべきであると考えられる。
なお,衛星・ロケットのメーカーおよぴ発射整備作業請負業者等が作業 の一部を下請メーカーに請け負わせている場合には,一般に,債務者は履 行補助者の故意・過失についても責任を負うべきであるとされていること から,下請メーカーの故意・重過失については,衛星・ロケットのメーカ ー,発射整備作業請負業者等が責任を負うべきであると考えられる。現行 契約では,履行補助者である下請メーカーの行為は,元請負者たるメーカ ーの行為とみなすものとされている。
③打上げ機関としてのNASDAのユーザーに対する責任については,
NASDAは上記のNASDAに対するメーカーの責任および損害負担と同 様の責任およぴ損害負担を負うべきものと考えられる。
(2)関係者の責に帰すことができない事由により損害が発生した場合 関係者の責に帰すべからざる事由により損害が発生した場合,その損害 は,帰責事由がない以上,メーカー等に負担させることはできず, NASDA およぴユーザーが結果的に負担せざるをえないと考えられる。
宇宙輸送事業に関する一考察(羽原)
3 現行契約
現行の衛星・ロケットの開発,打上げ,運用に係る契約においては,関 係者の責任および損害負担について,以下のように定められている。
(l)NASDAとTSCJまたはユーザー
①打上げ前に, NASDAの責に帰すべき事由により損害が発生した場合 には, NASDAが責任を負う。
②打上げ以後に, NASDA,TSCJまたはユーザーの故意・重過失により 損害が発生した場合には,帰責者が責任を負う。
(2)NASDAと衛星・ロケットのメーカーおよぴ発射整備作業請負業者
①引渡し(発射整備作業では検査の合格)以前に生じた損害は,衛星・
ロケットのメーカー,発射整備作業請負業者が負担する。ただし, NASDA に帰責事由がある場合を除く。
②引渡し(発射整備作業では検査の合格)以後,衛星・ロケットのメー カーおよび発射整備作業請負業者は, 1年間または打上げ時点のいずれか 早い時点まで瑕疵担保責任を負う。ただし,瑕疵が衛星・ロケットのメー カー,発射整備作業請負業者の故意または重過失に基づく場合には,打上 げ以後であっても,当該瑕疵を発見後1年間の担保責任を負う。
(3)NASDAと打上げサービス提供メーカー
打上げサーピス提供メーカーの技術者が故意または過失により,
NASDAの施設・機材を破損または紛失した時は,発射整備メーカーは損 害を負担する。
衛星・ロケットが地上にある段階で損害が発生した場合には,帰責者が その損害を負担するとともに,衛星・ロケットのメーカーおよぴ発射整備 作業請負業者は,その作業について瑕疵担保責任を負うべきであると考え
られる。
衛星・ロケットの打上げ以後に損害が発生した場合には,衛星・ロケッ トのメーカー,発射整備作業請負業者,打上げサーピス提供メーカー,
NASDAの故意または重過失によるこれら帰責者が負うぺき損害を除い
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て,衛星・ロケットの開発およぴ打上げの注文者である NASDAとユーザ ーが損害を負担すべきであると考えられる。
IV お わ り に
1 宇宙輸送事業の将来14)
今後のわが国の宇宙輸送事業の方針は, 1996年に改訂された宇宙開発政 策大綱から次のように考えられている。
(1)宇宙活動の拡大,高度化,多様化の進展に伴い,宇宙活動を効率的に 展開していくためには,共通基盤的な設備,施設,およびシステム等の宇 宙インフラストラクチャーの開発・運用を進めていく必要がある(資料4)。 特に,宇宙へのアクセスに必要な輸送系は,わが国の宇宙活動を自在に展 開していくための基本であり,今までの開発で培った技術力をさらに利 用•発展させることが求められる。
(2)将来の輸送需要に対応して,宇宙環境保全に配慮しつつ,輸送コスト を大幅に低減させるためには,革新的な設計思想を採用した再使用型の輸 送系の実現が不可欠である。このため, H‑IIAロケット, HOPE‑X等 の成果を踏まえ,無人有翼往還機を含む再使用型輸送機の実用化を目指す 研究を進め,国際動向,需要動向を予測しながら,必要に応じ開発に着手 する。同時に,将来において期待される水平離着陸能力を有する完全再使 用型宇宙航空機(スペース・プレーン)に関する研究を関係機関が連携し て進める。
現在宇宙輸送システムが抱えている課題は,拡大する打上げ需要およぴ さらなるコスト低減要求への対応と回収需要への対応の二項目である。宇 宙輸送コストを大幅に低減させるためには,使い捨てロケットから再使用 型のものに移行していくことが国際的にも共通の認識であり,米国におい 14)渡辺篤太郎「7.宇宙一宇宙へ飛ぷー」「 H本機械学会誌JVol.100, No.942, 1997
年5月. 96‑104ページ。
i
・:宙輸送事業に関する一考察(羽原) (1283) 203 ても現スペースシャトルの後継機に向けて.現在の打上げコストを1桁引 き下げることを目標に技術開発が進められている。再使用型宇宙輸送機を 実現させるためには.機器の長寿命化,運航・整備性の向上などさまざま な技術が必要になるが.まず第一に必要な技術は.機体を効率よく回収す る技術である。第二に,使い捨てロケットでは片道輸送しかできないが.
今後の宇宙開発には.宇宙から資源を効率よく回収するシステムが不可欠 である。回収技術はこの両者に共通する必須の技術である。
宇宙往還機は.わが国に実績のない革新的技術課題を有することから.
効率よく実現するためには.段階的な技術リスクの解消を図ることが重要 である。このため実環境下で各種の飛行実験を実施し,これまで,軌道再 突入実験 (OREX).極超音速飛行実験 (HYFLEX).小型自動着陸実験 (ALFLEX).宇宙往還技術試験機 (HOPE‑X)に碁づく HOPE実用化 計画における準備飛行の結果, 2006年頃から宇宙ステーションヘの物資補 給・回収などの実用飛行を開始する予定である。HOPE‑XAの宇宙ステー ションヘの物資の補給能力は約7.5トン,回収能力は5トン程度となり.ス ペースシャトルでの運用よりも効率化できる見込みである。実用準備飛行 に必要となる費用は. HOPE‑X開発費の約3分の1程度と推定される。
さらに. HOPE-XA による飛行を積み重ねて.信頼性•安全性が実証され た後は.人員の輸送にも利用できる。
2 宇宙往還輸送システムの確立15)
H‑IIAロケットは,使い捨てロケットとしては経済性の高い輸送機で あるが,将来の本格的な宇宙開発時代に対応するためには,より経済性を 追求した輸送手段が必要となる。さらに,片道だけの輸送だけでなく,人 員も含めた往復輸送の必要性も増加してくる。これらの要求を満たすため には,航空機のように自由に宇宙を往復する完全再使用型の輸送システム 15)柴藤羊二「宇宙往還機開発計画の概要」「ALFLEX/HOPEシンポジウム講演前
刷集』航空宇宙技術研究所・宇宙開発事業団, 1996年12月9H, 1‑3ページ。
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(資料4)宇宙システムの構成
宇宙システム
軌道システム(orbital/deep space system)
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□
喜 ) ト フ ォ ー ム 軌道上作業支援機(orbital servicing vehicle)
二言〗t}こ験ノステム
(space base) 宇宙輸送システム(spacetransportation system)
[ 口 : こ
IC¥e口 三 三 :
Pごこht1ごLカ プ セ ル型
有翼型 軌道間輸送機
(orbital transfer vehicle) 地上システム(groundsystem)
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□。 : [ 三 ( ノ
buヨsノ)(mlSSlon)(引用文献:冨田信之『宇宙ヽンステム入門』東京大学出版会,1993年,3ページ,
茂原正道『宇宙システム概論』培風館,1995年,16ページ,
茂原正道『宇宙工学入門』培風館,1995年,3‑4ページ。 )