平成24年度教員免許状更新講習の実施報告
田 中 耕 治*
Summary Report of the Teacher Certificate Renewal Training Program in the fiscal year of 2012
Koji T ANAKA
はじめに
教員免許状更新講習も本格実施となって4年が経 過した.本年度,熊本大学においては,必修講習を 16(受講者は1,098人),選択講習を82(受講者は 2,525人)実施した.1)2)今年度の講習の終了にあたり,
受講者及び講習担当者が回答したアンケ−トをもと にこの一年間を振り返ってみることにした.
まずは,受講者のアンケートから振り返り,次に 講習担当者のアンケートを振り返ることにする.
Ⅰ 受講者のアンケートから
受講者に対するアンケートの質問項目は,次の「問 1」から「問6」までの内容で,「大変よい」,「よい」,
「あまりよくない」,「よくない」の4段階評定尺度に よる回答を求めた.また,問7は,自由記述による 回答を求めた.
問1 講師の声は聞き取りやすかったですか.
問2 講習の手段(プレゼンテーションソフトの使 用,プリント,板書,ビデオ等)は有効でした か.
問3 講習の内容は適切でしたか.
問4 学校にかえってからの自分の教育実践に生か せる内容はありましたか.
問5 自分のこれまでの教育実践を新しい視点から 振り返ることができましたか.
問6 講習の前に,講習のねらい,試験の際に資料 を見てよいかなど説明がありましたか.
問7 講習を終えての意見・感想をお聞かせくださ い.
まず必修講習では,「問1」から「問6」までの評 価を,必修講習(全体),会場別講習(熊本大学会場 での講習とサテライト会場での講習)の2つに分け て表で示した.また,選択講習においても,「問1」
から「問6」までの評価を,選択講習(全体),会場 別講習(熊本大学会場での講習とサテライト会場で の講習),そして担当講師別講習(解放制学部教員が 担当した講習と解放制学部以外の教員が担当した講 習)の3つに分けて表で示した.
次に,「結果の概要と今後の課題」を「講習全体」,
「会場別」,「担当講師別」,「質問項目別」にまとめた.
また,「結果の概要と今後の課題」の最後に,「問7」
の自由記述の内容を,「パソコンの申し込みについ て」,「講習内容について」,「試験について」,「その 他」の4領域に分けて紹介することにした.
なお,受講者の要望に対しては,平成25年度以降 に改善していく予定の対応も付記することにした.
1 必修講習の集計結果
⑴
必修講習全体⑵
会場別① 熊本大学会場での必修講習
② サテライト会場での必修講習
* 熊本大学教員免許状更新講習支援室副室長・
教育学部附属教育実践総合センター特任教授
表1−⑴ 必修講習全体(16講習 対象人数1,106人)
表1−⑵−①(11講習 対象人数759人)
表1−⑵−②(5講習 対象人数347人)
2 選択講習の集計結果
⑴
選択講習全体⑵
会場別① 熊本大学会場での選択講習
② サテライト会場での選択講習
⑶
担当講師別① 開放制学部以外の教員が担当した選択講習
② 開放制学部教員が担当した選択講習
3 結果の概要と今後の課題
⑴
講習全体全体的に見て,「必修講習全体」及び「選択講習全 体」のいずれでも,「大変よい」もしくは「よい」と 回答した受講者の割合が85%以上で,大変高い評価 を得ている.また,必修講習と選択講習のいずれで も,「大変よい」が「よい」の割合を上回っており,
昨年度と比べて改善が見られる.
受講者は,制度そのものの善し悪しは別として,
この講習を「有意義である」と感じているように思 われる.
講習を担当する講師においては,受講者や担当講 師の事後アンケート結果に目を通したり,お互いに
情報交換をしたりして,講習のより一層の充実を 図っていくことが期待される.
⑵
会場別熊本大学会場とサテライト会場の会場別に見た場 合,必修講習および選択講習のいずれでも,「大変よ い」もしくは「よい」と回答した受講者の割合が85%
以上で,大変高い評価を得ている.
特に,サテライト会場での選択講習については,
72%が「大変よい」と回答し,最も高い評価を得て いる.実際,受講者の中には,「講師が遠い所まで来 てくれてありがたかった」,「若いけど責任の重い校 務分掌をまかせられている.何かを学んで帰りた い」といった声が多くあり,受講者のモティベーショ ンの高さも感じたところである.
本学の特色の一つであるサテライト講習について は,その期待される役割と実際上の効果が大きい考 えられることから,今後とも引き続きご協力をお願 したい.
⑶
担当講師別選択講習をさらに詳しく担当講師別に見た場合で も,開放制学部以外の教員および開放制学部教員が 担当した選択講習のいずれでも,「大変よい」もしく は「よい」と回答した受講者の割合が80%以上で,
高い評価を得ている.
なお,開放制学部教員が担当した選択講習につい ては,「大変よい」と回答した割合が50%程度に留ま り,相対的に評価がやや低い傾向が見られる.担当 講師においては,担当者同士の引継ぎ,連絡,情報 交換などを密にして,講習のより一層の充実を図っ ていくことが期待される.
⑷
質問項目別講習のねらい等の明示,講習内容の適切性や有用 性,講習方法の有効性に関する問1から問6までの 質問を項目別に見てみると,必修講習全体および選 択講習全体のいずれでも,6つのすべての項目につ いて,「大変よい」もしくは「よい」と回答した受講 者の割合が85%以上で,大変高い評価を得ている.
その中でも,特に,問6の「講習の前に,講習のね らい,試験の際に資料を見てよいかなど説明があり ましたか」という質問内容については,「必修講習全 体」で84%,「選択講習全体」で71%が「大変よい」
と回答し,最も高い評価を得ている.この点につい ては,事務局から担当講師への周知が浸透していっ ているということであろう.
その一方で,問2の「講習の手段は有効でしたか」
と問3の「講習の内容は適切でしたか」という質問 内容については,必修講習全体および選択講習全体 のいずれでも,「大変よい」と回答した割合が50%未 表2−⑴(82講習 対象人数2,546人)
表2−⑵−①(73講習 対象人数2,129人)
表2−⑵−②(9講習 対象人数417人)
表2−⑶−①(62講習 対象人数2,024人)
表2−⑶−②(20講習 対象人数522人)
満に留まり,相対的に評価がやや低い傾向が見られ る.今後とも,より適切な内容となるように,また,
より有効な方法で実施できるように,講習の改善・
充実を図っていくことが引き続き期待される.
⑸
自由記述から(講習を終えての意見・感想をお 聞かせください)① パソコンでの申し込みについて
○パソコン操作が苦手な者には申込みが難しい.
(今後の対応)本学だけでも1年間に延べ3,500 人以上の受講者がこの講習を受講する.各受講 者の書類や情報のやり取り,或いは受講料の管 理等大変な作業になる.全国的にも勿論,九州,
熊本県でもパソコンでの対応となっている.ご 理解願いたい.
○Web申込初日に,受講申込みが集中し,定員一 杯となり希望する講習を申込みできなかった.
(今後の対応)平成25年度はWeb申込開始日時を 3期に分けて実施することにし,受講申込みが 集中しないようにしたところである.
講習の開設期間6・7月分を3月27日17時か ら,8・9月分を5月16日17時から,10・11月 分を7月29日17時からとしている.
○熊本県内各大学におけるweb受講申込開始日が まちまちで,自分が希望する内容を一括して見 ることができず,後から「あの講習を申込めば よかったと」思うことがあった.
(今後の対応)本学以外の県内各大学のweb受講 申込開始日は,3月27日,4月18日,5月16日 になっている.本学もWeb受講申込開始日を 3期に分けるので,少し課題は解決すると期待 している.詳細は,高等教育コンソーシアム熊 本のホームページ又は各大学のホームページで 確認願いたい.
○「受講申込みの仕方のシュミレーション」があっ たら,もたつかないと思う.
(今後の対応)このことも含めて,もっと一人ひ とりの受講者がスムーズに対応できるようにす るためパンフレットを作成した.熊本県内の各 教育委員会や学校は勿論,幼稚園や私立の学校 に在籍している受講者全員に配布予定である.
② 講習について ア よかったところ
○教育の現場で経験してきたことの理論的背景を 教えてもらって,砂に水がしみ込むように納得 した.ありがたかった.「アカデミックで大学 ならでは」の講義であった.
○講師の先生の,専門分野における豊富な知識に 裏付けられた講義はすばらしかった.質の高さ
と内容の深さを感じた.大学で行うなりのおも しろさがあった.
○最初は重たい気持ちで参加したが,講師の先生 がリラックスさせてくれた.内容も深く,学ぶ ことも多かった.こういう講習なら喜んで参加 したい.
○こういう機会にしか接することができない最新 の知識や情報,そして技能を学ぶことができて 感謝している.
○学校に帰ってからの自分の教育実践に生かせる 内容もたくさんあった.
○自分が今,一番知りたい内容でとても有意義で あった.
○ロールプレイや演習,グループワーク,ディス カッション,実技などの参加体験型のものがあ ると,主体的に学ぶことができた.
○オリジナルな教材を数多く紹介していただき,
自分の教える幅が広がったような気がする.
○自分のこれまでの教育実践を新しい視点から振 り返ることができた.そして,自分の課題が見 えてきた.
○「もっと頑張らなければ」という気持ちになった.
勇気と元気をもらった.貴重な体験であった.
自信を持って,教壇に立ちたい.
○幼稚園,小学校,中学校,特別支援学校,高校 といったさまざまな校種の先生方と交流が持て た.さらに,お互いに意見交換の場が持てたら いいと思う.
○教育課程の改訂の変遷や教育改革の流れがよく わかった.
○現場の経験があって,大学で学ぶのはとてもた めになる.
○特別支援教育に関する内容が大変参考になった.
○発達障害のある子どもへの対応について悩んで いたが,きちんと学ぶことができた.タイム リーであった.
○資料が充実していた.学校に持ち帰り校内研修 で広めたい.
○本日の参加型の授業の流し方で,これから自分 たちが実現していくべき授業の姿を見せても らった.文科省の説明よりも分かりやすかった.
イ 要望のあったところ
○少し,専門的すぎてついていけず,学校におけ る実践にも役立てるのは難しいところもあった.
○学校現場での教育実践につながる内容であった ら意欲がわく.できれば,教員が直面している 問題の解決のヒントや対応策などを学びたいし,
他の受講者と意見や情報を交換したい.そうい
う意味では,講師の幅を教育委員会の指導主事 などに広げてもいいと思う.
○プレゼンや資料の文字が小さすぎて読みづらい ときがあった.
○すばらしくためになる講義もあるが,そうでな い講義もある.
○法律等の裏話を聞くのはいいが,講師の個人的 な考えが強すぎたり,指導要領等を否定するよ うな話を聞くととまどってしまう.
○費用が3万円と高すぎる.
○シラバスに書いてある内容と少し違っている講 習もあった.
○資料はA4にそろえてほしい.
○講師の先生の伝えようとしていることがあちこ ちに飛んで,はっきり分からなかった.もう少 し焦点化した方がよいと思った.
○メモするのに追われた.専門語も多かった.そ れでスライドやパワーポイントでキーワード等 の提示があるとありがたかった.
③ 試験について
○講習前に,この講習の到達目標やテーマ,評価 基準,資料やノートを見てよいかなどを示して あるとしっかりと考えて講習に臨むことができ る.
○短い時間で聞いた内容を,整理する間もなく,
資料も見ないで,試験で論述するのは難しい.
○不合格の場合,理由や素点などは開示するのだ ろうか.
○必修領域の場合,2日間で4回のテストとなり,
大変疲れた.
○テストの可否で免許が再交付されるという制度 はなくした方がよい.
④ その他
○大学構内に入ってから,駐車場や講習会場まで の道のりが分からなかった.
(今後の対応)大学内の駐車場については各種行 事等により駐車できないことがある.各講習毎 の大学内の建物案内については,更新講習ホー ムページの「講習会場等一覧」で確認していた だきたい.建物内における講習会場については,
誘導表等で案内しているのでご理解願いたい.
○熊大から遠い所に住んでいるので講習を受ける 場合には宿泊を考えなければならない.サテラ イト講習は時間,労力,お金,子どもの世話等 でとても助かった.更に選択講習も充実してほ しい.
(今後の対応)「天草」,「八代」,「玉名」,「阿蘇」,
「人吉」でサテライト講習を実施している.受
講者の方々の強い要望もあり,必修講習だけで なく,選択講習も講習数の増加を図っていると ころである.
○みんなが受けたい講習を受けられるようにして ほしい.お金と時間を使って,希望しない講習 を受けなければならないということは避けたい.
(今後の対応)来年度は本学で必修16講習,選択 90講習を実施する予定である.受講者数に対す る定員は確保している.今後,更に講習内容の 把握に努めたい.
○講義形式で3時間受講するのはきつい.参加体 験型の形態や受講者同士の意見交換や情報交換 も取り入れてほしい.
(今後の対応)本学では必修講習の定員は最大70 名にしてあるため,グループワーク等の講習も 可能にしている.ただし,講習内容によっては 講義内容のみの形になることもある.また,大 学らしい専門分野における豊富な知識に裏付け られた質の高い講師中心の講習を望む声もある.
○時間はきちんと守ってほしい.遠くから来てい る人もいるので特に終わりの時間はきちんと終 わってほしい.
○免許状更新講習に意欲が持てない.一方的なシ ステムで受ける側は大変である.
○この講習自体が免許更新につながるのか疑問に 思う.
○この制度自体には反対であるが,この講習自体 はとてもためになるものである.
○県教育委員会がする研修とこの更新講習を組み 合わせて整理すると受講する先生方にも有益に なると思う.
○休憩時間をはっきりと位置付けてほしい.特に 大人数の場合,5分の休憩では女性トイレに行 列ができてしまう.
○現場の教員は,日々の仕事に追われ疲れている.
さらに負担をふやしても状況は好転しない.
もっとゆとりを持たせないと教師の独創性や柔 軟な発想は望めない.
○必修講習も校種を分けないと適切な講習は望め ない.
(今後の対応)必修領域の講習については,文科 省の提示があるため学校種ごとの講習はできな い.ただ,学校種が異なるからいろいろな情報 交換をする中,横断的にあるいは系統的に内容 を理解することができたという声もある.
○台風接近のための対応はあらかじめ案内に入れ ておいた方がよい.
(今後の対応)悪天候,自然災害等で休講する場
合は,各事項に基づき休講措置を設定している.
また講習当日のできる限りの早い時間帯に,管 理システムのトップページに休講情報を掲載し,
登録されたメールアドレスに知らせるようにし ている.
Ⅱ 講習担当者のアンケートから
担当講師の内訳は,熊本大学教育学部の教員が最 も多いが,薬学部,文学部,法学部,理学部,工学 部,医学部保健学科,医学部附属病院等,他の学部 の教員もいる.また,若干ではあるが,県内他大学 の教員や熊本県教育センターや熊本市教育委員会,
教育センター,そして県内支援学校からの教員もい る.アンケートへの回答者はのべ128人であった.
受講者に対するアンケートの質問項目は,次の「問 1」から「問6」までの内容で,「大変よい」,「よい」,
「あまりよくない」,「よくない」の4段階評定尺度に よる回答を求めた.また,「問7」から「問9」まで は自由記述による回答を求めた.
問1 作年度,教員免許状更新講習は担当しました か.
問2 教室の広さは適切でしたか.
問3 受講者の人数は適切でしたか.
問4 講習時間(コマ)は適切でしたか.
問5 受講者との双方向的なやりとりが,どの程度 図れていましたか.
問6 受講者の熱意は,どの程度感じられましたか.
問7 修了認定試験を実施する上で,配慮したこと,
困ったことがあったら書いてください.
問8 講習を実施した上で見えてきた課題があった ら書いてください.
問9 来年度の講習開設に向けての意見があったら 書いてください.
ここでは,上記アンケート項目のうち,問7,問 8,問9の,「修了認定試験を実施する上で配慮した こと・困ったこと」,「講習を実施した上で見えてき た課題」,「来年度の講習開設に向けての意見」3項 目を中心に取り上げ,講師の回答内容を,次の1か ら5までの5つのカテゴリーに大別して,現状と課 題を抜粋・整理することにした.その中で,残りの 問1から問6までの6項目に関する講師の回答も,
必要に応じて,随時取り入れることにした.
1 受講者の基礎知識・理解度に応じた講習内容 2 学校での教育実践上の課題に応じた講習内容 3 講習の実施形態
4 修了認定試験の実施方法
5 教員免許状更新講習制度の有効性
1 受講者の基礎知識・理解度に応じた講習内容 受講者の基礎知識・理解度に個人差が見られる現 状については,必修講習の場合,「幼,保,小,中,
高とすべての校種の人が受講する.また,経験年数,
本講習へのニーズ,前提知識などもまちまちの受講 者に,内容をどこに合わせるのか大変苦労した」,「内 容の詳細をシラバスに提示していたものの,受講者 の技能や熱意などの,学習に取り組む姿勢にかなり のばらつきがみられた」などがあった.選択講習で は,「専門の基礎知識がなくて受講している人もいて,
内容が理解できないで,教えるほうも,教えられる 方も困った」などがあった.
受講者の基礎知識,理解度等に応じた講習内容・
方法の工夫等として,「基礎的なことに重点をおい た内容となるように配慮した」,「事前のアンケート で受講者の基礎知識や理解度を推測した」,「免許の 種類や個人個人の能力差もあるので基礎的なことに 重点をおいた内容とした」などがあった.
次年度に向けた意見として,「選択講習の場合,受 講者のレベルや専門をある程度均一化する必要があ る.シラバス等で,技術的な分野では,かなり専門 的な知識が必要などと明示した方がよい」や「必修 講習の場合,受講者に対する事前のアンケート等で 受講者の基礎知識や理解度をできるだけ把握して講 習を組み立てたい」などがあった.
2 学校での教育実践上の課題に応じた講習内容 受講者の講習内容に対するニーズについては「受 講者は,学校現場での実践に役立つ,より具体的な 事柄・事例等を求めている」や「すぐに現場の授業 で使える資料がほしいという要望が強い」などが あった.
受講者のニーズに対する講習担当者の反応として,
「内容の精選と例示や学校現場ですに活用できるも のを増やしていきたい」などがあった.
受講者のニーズに応じた講習内容・方法の工夫と して,受講動機の把握では,「事前のアンケートで受 講者の詳しい受講動機や学びの要望を知りたいと 思った」や「受講者の声みたいなものを事前にもら うとこちらのモティベーションも高まると思う」な どがあった.
次年度の意見として,「事後アンケートを閲覧して,
来年の講習の改善に生かしたい」や『学生の態度に 比べると受講者は熱意を持って受講していると思っ た.受講者の期待に応えられるように努力したい」
などがあった.
3 講習の実施形態
講義中心の一方的な講習か,双方向的な受講者参 加型の講習かという形態については「さらに活発な 協議ができるようなワークショップの手法を取り入 れたい」,「双方向性を図ると,メンバー同士の相互 性を図ることは大切で,何とか時間を確保したい」,
「異校種の受講者で作ったグループで意見交換や情 報交換を行った」など肯定的な意見もあった.
その一方,受講者参加型の講習を実施する上での 困難な理由として,「受講者は,参加体験型のミニ ディスカッションや演習を好むようであるが,そう すると時間が不足する」といった講習時間にかかわ る要因や「受講人数が70人と多いので,グループワー クは行わなかった」という人数にかかわる要因も あった.
なお,講習担当者の回答では,教室の広さは,「ちょ うどよい」が81.8%で受講者の人数は,「適切だった」
が63.8%,「やや少ない」が0.8%,「やや多すぎた」
が27.6%であった.
次年度に向けた意見等として,「今年度は50名の 定員を受け入れたが,双方向の講習やグループワー ク等の手法を求めると40名が限度である」,「60名の 多人数集団では発言が少人数受講者に限られてしま う」,「グループ協議では,熱心に議論する受講者の 姿が見られ,その内容にも広がりや深まりが感じら れた.さらに資料収集や協議の進め方など検討した い」,「もう少し少人数(10〜15名程度)の方が受講 者との双方向のやり取りができるし,充実したもの になる」,「協議,演習,実技等を行うとすれば,受 講者の上限は20名だと思われる」,「講習内容を工夫 して,より深く体験し学んでもらう講座にしたい」
など,人数に配慮しながらも,積極的に双方向的な 講習をめざしたい」との声が多かった.
4 修了認定試験の実施方法
受講者にとっては,この教員免許状更新講習の修 了認定試験は,「合格しなければ教員を続けること ができない」ということであり,かなり,重く意識 して受講していると思われる.修了試験を実施する 側の講習担当者の思いとして,
○異校種の受講者がたくさんいて,試験の問題設 定(レベル,基準)に苦労した.
○時間が不足して,窮屈な時間で試験を実施して しまった.
○実験を主体としたので,試験自体の評価とどう 組み合わせるのかで困った.
○試験問題が難しすぎたことと,分量が多すぎた ことが試験を実施したあとわかった.
○採点の基準が難しかった.不可をつけていいの か迷った.
○各人の講習の成果,到達度を30分間の試験で,
どのように把握するかについて苦労した.
○グループ演習の結果から個人を評価するのが難 しかった.
○一人ひとりに実技試験を課すので,時間確保に 苦慮した.
などがあった.
試験にかかわる実施上の工夫として,「事前に試 験の実施要領を説明し,配布資料も見てよいことな どを伝えたので,受講者は安心したようである」,「必 ず回答できるように今日の講習の感想,今後に生か したいことなども書いてもらうことにした」,「グ ループで協議したことをもとに,教育実践上の課題 を各自が試験で回答するようにした」などがあった.
受講者の回答状況に対して,「受講者が普段の教 育実践の中で,課題意識を持ち,教育の改善に取り 組んでいるかどうかで,試験の回答に大きな差が生 じる.現職の教員である以上,講習内容を踏まえて,
自分自身の実践の課題を自覚し,その改善に取り組 む姿勢を文章に表現できる能力は備えてもらいた い」などがあった.
次年に向けての講習担当者の意見等として,「3 時間でまとまった話をして試験を行うのには無理が ある.受講者にとっても,聴いたばかりの内容につ いて試験勉強をする時間もなく,試験を受けるのは 大変だろうと思う.ある程度,内容のある話を,限 られた時間内に話そうとしたため,準備段階から苦 労した」などがあった.
5 教員免許状更新講習制度の有効性
受講者の熱意がどの程度感じられたかについての 講習担当者の回答は,「非常に感じられた」が31.5%,
「感じられた」が62.3%で,両者を合わせると,約 93.8%で,大変高い評価を得た.
このような,受講者の講習に対する講習担当者の 肯定的な反応として,「受講者が,思った以上に興味 を持って受講したことが試験の結果からうかがえ た」,「学校種や年齢にかかわらず,問いかけに対す る反応,話し合いや発表,試験において積極的に取 り組む姿勢が顕著に認められた」,「これまでになく,
受講者の熱意と反応をビンビン感じた.現場の先生 方の努力に寄り添いたい」,「現場の先生のニーズや 苦労を知ることができ,自分としても,とても勉強 になった」などがあった.
その一方,制度そのものへの批判的な意見もあり,
「ある狭い分野を1〜2コマ講義されても教員免許 状の実が上がるとは思えない.この講習を基に試験 が行われただけで,教員免許状更新をすることには 無理がある」,「政治的な動きに左右されるような講 習では,講習担当者も受講者もいまいち気合いが入 らない」,「一生懸命やっても,どの程度役に立って いるのかジレンマを感じる」,「講習の目的と受講者 の要望が乖離しているように思えた」,「上から押し 付けるような講習と感じてか,やる気のなさそうな 受講者もいた」などがあった.
講習担当者としての反省として,「受講者の期待 に添うことができるよう,自分自身も勉強したい」,
「これまでの講習で満足度の高かったものの紹介を 参考にして講習を設計したい」,「講習は量をこなせ ばよいというものではない.研修の内容,講師の質 が問われている」,「大学における講習が伝達講習に なってはいけない」,「受講者からの意見や批判を大 切にすべきである.現場の切実な悩みに相応する回 答が必要とされている」などがあった.
総じて,上記の5つのカテゴリーのうち,「1受講 者の基礎知識・理解度に応じた講習内容」は,受講 者の基礎知識,理解度に応じて講習を組み立てよう とする講習担当者の悩みや工夫,「2学校での教育 実践上の課題に応じた講習内容」は,教育実践,有 用性を重視する受講者からの要請に応じようとする 講習担当者の反応であり,両者はともに,受講者の 実態と講習内容との調整にかかわる課題である.
「3講習の実施形態」は,講義中心の一方的な講習か,
活動・演習・グループ討議,ゼミ等を含む双方向的 な受講者参加型の講習かなどの,講習形態にかかわ る課題である.これらの課題はいずれも講習担当者 が,受講者の側に立って講習内容・方法等の改善・
充実を,今後ともより一層図っていくべき事項であ ると言えよう.「4修了認定試験の実施方法」は,試 験を課すことによる課題,「5教員免許状更新講習 制度の有効性」は,講習制度そのものの有効性にか かわる課題であり,これらの課題はいずれも,制度 自体の目的に照らし合わせて,今後とも検討してい くべき事項である.
平成24年度は,教員免許状更新講習が本格実施と なって4年目の年であった.今年度の講習を担当し た講習担当者のうち,今までで,講習担当者を経験 した者は74.6%,初めて経験する者は25.4%であっ た.毎年の実施状況と実績を踏まえ,担当者同士の 引き継ぎ,連絡,情報交換などを密にして,講習内 容・方法の改善・充実を図っていくことが肝要とさ れよう.
おわりに
本講習が本格実施となって4年が過ぎ,講習を担 当する事務局は勿論,講習を受講する側も,講習を 担当する講師の側も,何となくやり方が分かり,一 応の落ち着きを見せてきたところである.それぞれ の関係がよくなり,受講者にも大学等の担当者にも 一定の成果がもたらされてきているように思う.受 講者に対するアンケートの中で,「大学での講習は,
専門的で,しかも,ふだん受けている研修と切り口 が違うので新鮮で,それはそれで興味深いし,ため になる」という声があった.また,受講者の講習担 当講師に対する評価が,年々高くなり,多くの担当 講師にも,「やってよかった」という充実感が芽生え てきているようにも感じる.3)
中央教育審議会から出された「教職生活の全体を 通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について
(答申)」4)では,教員養成・採用・研修の段階におけ る改善方策が示された.その中では,「学び続ける 教員」,「教育委員会と大学の連携・協同」等による 教員の資質能力の向上への取り組みが求められてい る.
そこでその「教員養成・採用・研修」とこの本学 教員免許状更新講習の関係について触れておきたい.
まず,「研修」についてであるが,実際に本学で,こ の4年間に必修講習だけで約5,000人の現職の教員 が研修をしている.多くの受講者からも,「この制 度には疑問を感じるが,内容には満足している」と いう評価もあり,本学は現職教員の資質向上にも貢 献していると考えられる.
次に「養成」についてであるが,現職の教員に講 習をして,現場の状況に触れた大学の教員は,その 中での学びを学生の「教員養成」に当然役立ててい ると考えられる.
また,「採用」については,この教員免許状更新講 習が教育委員会と大学の密接な関係の上に成り立っ ていて,今後さらにお互いの「採用」に対する考え 方や役割等の理解が深まれば,採用の部分にもいい 影響がでてくると考えられる.
以上のことからも,この教員免許状更新講習が今 後,「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総 合的な向上」につながっていくものだと考えられる.
今後,この講習を受講することによって,「自信を 持って教壇に立てる教師」がさらに多くなともに,
本学と教育現場とのつながりが深まることを願って いる.
付記
本実践報告は,熊本大学の教員免許状更新講習事 務局より事前にご承諾を頂いた上で,『熊本大学教 育実践研究』第31号(2014)に投稿・掲載されたも のである.関係者各位に対して,この場をお借りし て,感謝申し上げる次第である.
参考文献
1) 熊本大学『平成24年度教員免許状更新講習』
2) 熊本大学『平成24年度教員免許状更新講習のご案内』
3) 「受講者からの声・要望」『熊本大学教員免許状更新講習 管理システム操作・運用マニュアル』p28
4) 中央教育審議会『教職生活の全体を通じた教員の資質能 力の総合的な向上方策について(平成24年8月28日答 申)』