東医大誌 73(3)
: 236
-243, 2015
総 説
下部直腸癌における標準治療の課題
Problems of the standard treatment in lower rectal cancer
勝 又 健 次 Kenji KATSUMATA
東京医科大学消化器・小児外科学分野
Department of gastrointestinal and pediatric surgery, Tokyo Medical University
平成
27
年3
月12
日受付、平成27
年3
月31
日受理キーワード
:
下部直腸癌(rectal cancer)、機能温存手術(operation of functional preservation)、側方郭清(lateral lymphnode dissection)、術前放射線化学療法(preoperative chemoradiotherapy)、術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy)
(別冊請求先
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〒160
-0023 東京都新宿区西新宿 6
-7
-1 東京医科大学消化器・小児外科分野)
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-3340
-4575
は じ め にここ
10
年の大腸癌の治療の進歩と向上は目を見 張るものがある。手術手技においては機能温存を重 視した直腸癌手術と1996
年に保険収載された腹腔 鏡下手術の普及であり、薬物治療では治癒切除後の 補助化学療法の確立と進行再発大腸癌の化学療法に おける生存の延長である。腹腔鏡下手術は今や大腸癌手術の半数以上に行わ れ、進行癌においては開腹手術と同等の成績とされ ている
1)
。直腸癌においても積極的に行われている が進行直腸癌におけるエビデンスは未だ乏しく、手 術経験の豊富な術者が症例を選んで行うことが望ま しい状況である2)
。一方薬物治療では治癒切除後の補助化学療法の投 与期間や薬剤の選択は多くの臨床試験により確立さ れた
3,4)
。切除不能大腸癌では5FU
の単剤の治療の 頃には延命効果は8
か月と言われていたが、2004
年にオキサリプラチンが使用可能になって以降には 目覚ましい進歩を遂げ、現在では分子標的治療薬の出現や
salvage
で使用するレゴラフェニブなども加わり、overall survival(以下
OS)は約 3
年に達そうとしている
5)
。さらに薬物療法の奏効率の高さから 切除不能な肝転移や局所伸展大腸癌の切除も可能に なり、周術期の化学療法の存在意義が高まった6)
。 従来術前治療といえば直腸癌の放射線化学療法のみ であったが、現在では大腸癌の原発巣や転移巣に対 して術前化学療法が盛んに行うようになっている。しかしこのように治療の飛躍が著しい大腸癌治療 の中で下部直腸癌に対する治療法には未だいくつか の問題点を抱えている。下部直腸は他の大腸癌とは 異なる解剖学的な特徴による癌の進展形式の違い や、根治度を損なわずに排尿および排便機能を温存 した手術手技を行わなければならないことによる難 易度の高さがあり、現在の治療成績を凌駕する新た な方向性が未だ定まらない。本稿では下部直腸癌治 療の現状と問題点より今後の可能性から標準治療へ の方向性につき論じたい。
1.
下部直腸癌の解剖学的特徴大腸は発生学的に盲腸から横行結腸の中央部まで が中腸由来で、それより肛門側は後腸由来である。
組織学的には同じにみえるが、たとえば核酸代謝酵 素である
Thymidylate Synthase
およびDihydropyrimi-
dine Dehydrogenase
(以下DPD
)を測定するとDPD
に関して有意差があり7)
、同じ大腸でも若干の生物 学的な違いが存在する可能性がある。DPD
が高い ということは5
-FU
系の抗癌剤に耐性が存在する可 能性が推測される。さらに下部直腸は腹膜外にあり、外胚葉より発生する肛門と接合する。この部位での 外胚葉は排泄腔膜が分かれて肛門膜と尿生殖膜に分 かれていく。このため肛門の膜様帯には口側より直 腸粘膜上皮、単層円柱上皮、移行上皮などの粘膜が 存在する
8)
。脈管では動脈は下腸間膜動脈に主に支 配されているが、内腸骨動脈から分岐する中および 下直腸動脈からの血流が存在し、静脈も下腸間膜静 脈から門脈への流入のみではなく、内腸骨静脈から 大循環への還流が存在する。上部直腸より口側大腸 ではこのように大循環系と絡む血管は存在しない。同様に大腸のリンパ流は通常は流出入する脈管に 沿った上方向のリンパ流だけであるが、下部直腸は 上直腸動脈から下腸間膜動脈への上方向だけではな く、閉鎖腔や内腸骨動脈領域へ向かう側方方向への 流れや肛門管に近づけば鼠径部へのリンパ流も存在 するのである。
これらの解剖学的特徴はここに発生した癌の発生 や進展にいろいろな特徴をもたらしている。組織学 的には大腸癌と同じ分化型腺癌が多く発生するが、
印環細胞癌や未分化腺癌などの症例が散見されるの はこれらの組織が関与しているかもしれない
9)
。ま たさらに肛門管に近づくと肛門腺由来の腺癌や膜様帯由来の
basaloid
型の扁平上皮癌なども報告されている
10)
。転移形式は遠隔転移では還流する静脈血の 一部が大循環系に入るため、通常の大腸癌より肺への転移が多いのが特徴であり、リンパ節転移は、側 方への流れにより骨盤側壁リンパ節転移が多くな り、側方リンパ節の転移は骨盤内再発の一番の原因 となっている
11)
。このような特殊な場所にできた癌の難易度を高め たのは同部位が排泄に絡む臓器であり、癌の完全摘 除とともに肛門温存や排尿機能温存を考慮しなけれ ばならなかったことである。これは癌の根治手術と 一見相反する手技であり、癌進展の解明とともに手 術が拡大郭清から機能温存手術へと手技が移行して いったのである。たとえば排尿、性機能にからむ自 律神経は複雑な構成と臓器に絡み合っており、臓器 は温存できても神経を損傷すればその臓器障害が発 生し、根治度、温存の程度と機能障害の研究が
1980
年代から盛んに行われた。それまであまり認 識されていなかった自律神経の解剖学的研究も進ん だ。現在では骨盤内自律神経は交感神経系の左右の 腰部交感神経L1
-L4
から腰部交感神経が分かれ、下腸間膜動脈の近傍を通って左右が合流し上下腹神 経叢となり岬角やや尾側で左右の下腹神経となる。
下腹神経は副交感神経系の骨盤内臓神経
S2、S3、
S4
と合流して骨盤神経叢を形成し、骨盤神経叢か ら直腸、膀胱、精嚢および前立腺に分枝するという 構成が充分解明されている(図1
)。これらの神経 の機能では排尿機能は排尿時には尿道括約筋が弛緩 し、膀胱が収縮するわけであるが、これを支配して いるのは骨盤内臓神経である。一方性機能、特に男 性性機能は骨盤内臓神経が勃起に関与し、射精は腰 部交感神経に支配されている12)
。交感神経として仙 骨内臓神経が骨盤神経叢に入っていくが、発達してFig 1 直腸癌自律神経温存術
おらず現時点では臨床的意義は確かめられていない ことなどが分かっている。臨床では性機能で射精に 関しては全温存、勃起や排尿に関しては完全温存で はなくともある程度の機能が保たれることが判明し ている
13)
。2.
下部直腸癌の特徴1
) 癌の肛門側伸展と肛門温存従来直腸癌の標準術式としては直腸切断術が行わ れていた。肛門を温存する術式もさることながら、
自動縫合器がなかった時代には吻合が容易でなかっ たことも一因であるが、肛門側への癌の伸展があり、
肛門を温存することにより癌の遺残が懸念された。
し か し 実 際 に は 分 化 型 腺 癌 の
T1
-2
で は10 mm
、T3
-4
では20 mm
以上の肛門側伸展はなく14)
、さら に肛門側伸展以上に直腸固有間膜をAW
以上に切 除する術式が重要と認識され、1980
年代より肛門 温存術が盛んに行われるようになった。直腸S
状 部や上部直腸では直腸固有間膜を全切除する意味は なく、下部直腸では全切除が行われていた。欧米で はHeald 15)
がTME
(total mesorectal excision
) と い う術式を発表し、局所再発率が激減した。しかし上 部直腸癌などすべての直腸癌に対して行っていたた め、当初は縫合不全率が極めて高かった。本邦では すでに肛門側への癌の進展形式より上部直腸にはTSME(tumor specific mesorectal excision)が、下部
直腸にはTME
と側方リンパ節郭清が行われていた のである。しかし肛門を温存できても頻便や便の漏 れ な ど の 排 便 障 害 が 発 生 し、 こ れ に 対 し て はJ
-pouch
やtransverse coloplasty
などの再建法の工夫 が行なわれ改善を試みたのである16)
。J-pouch
は早 期の排便機能には寄与するが長期的には端々吻合と 変わらなくなるというのが一般的である。2
) リンパ節転移と郭清・上方リンパ節郭清
: 1895
年にはGerota
が系統 的リンパ流として上方と側方のリンパ節を指摘し た17)
。1950
年代にDeddish
らにより上方向の直腸リ ンパ流は腸間膜動脈の根部に向かうことが証明さ れ、同部位での切離(high ligation)が進行癌の術 式として妥当であり進行下部直腸癌のD3
郭清は下 腸間膜動脈の根部までと定義されている18)
。実際に はこの部位にまでリンパ節転移がある症例は大腸癌 研究会のアンケート調査では3.6%
で、T3
-4
では約5%
が転移陽性であり、無視できる頻度ではない。実際に上方リンパ節転移のある症例に
D2
郭清とD3
郭清を行ったことでの予後の改善が得られるか という検証がいくつかの論文でretrospective
に検討 されている。D3
郭清を行ってもリンパ節再発を抑 制するということはなく、遠隔転移を来たす予後因 子であることが示されている19)
(表1
)。D3
郭清に より、恩恵を得られる確率は0.4%
と推測されてお り、治療目的ではなく予後診断目的の意味合いが強 い。本邦では癌の進行度でリンパ節郭清の程度を決 めるのが一般的であるが、欧米ではリンパ節転移はsystemic spread
の一つであり、staging目的であると いう考えが強く、上方D3
郭清の結果はこのような 考え方の重要な裏付けにもなっている。また癌の根 治性に差がないのであれば根部結紮を進行癌に対し て行わなくても十分であり、メリットとして縫合不 全の減少や、再建腸管の機能温存などが報告されて いる20)
(表2
)。・側方リンパ節郭清
: Deddish
やSauer
らは下部 直腸癌では上方および側方のリンパ節転移が高率に 存在し、側方郭清の重要性を強調した論文を1951
年に発表した21)
。一方本邦では1927
年に仙波によ り22)
、その後久留により内腸骨動脈領域のリンパ節 郭清の重要性が指摘されていた。1970
年代には小 山、北條23)
らが傍大動脈リンパ節と側方郭清を行 い進行度II
およびIII
で5
年生存率が改善し、標準 術式として発達した。しかし欧米ではSauer
が側方 郭清を行い良好な成績を得ていたが24)
、出血量の多 さや排尿などの機能の廃絶が問題となり、その手技 は継承されなかった。本邦でも機能廃絶は大きな問 題であったが、1980
年代に神経を温存しつつ側方 郭清を行うという術式に発展し、機能温存的にも問 題なく13)
、根治性にも全く拡大郭清と遜色はなかっ た。しかし欧米では放射線治療により温存を図ると いう手段を選択することとなり、その流れは今日に表
1 上方リンパ節転移治癒切除後の再発形式
Recurrent site UD2
(n=78)
UD3/UD4
(n=207)
P value
lung 16(20.5) 36(17.4) 0.53
Liver 6(7.7) 19(9.2) 0.69
Pelvic cavity 7(9.0) 15(7.2) 0.63
Para
-aortic or
Mediastinal LNs 3(3.8) 4(1.9) 0.35
K Uehara Digestive surgery 375 2007 24
至っている(表
3)。
・側方郭清の現状 世界の中で下部直腸癌に対し て側方郭清を行っているのは本邦だけであり、リン パ節転移の頻度も解明されている(表
4)。臨床試
験として初めて行われたのがJCOG0212
であり、術 前の画像診断で側方リンパ節転移のない、進行度II
およびIII
の症例にランダム化に側方郭清の有無を 決めるものである。すでに側方郭清群で7%
に側方 リンパ節転移があることが報告され、側方郭清を行わなかった群で同等なリンパ節転移があれば有意差 に関し、本年度に最終報告がされる予定である。し かし今までの側方郭清に対する
meta
-analysis
では 出血量や手術時間が側方郭清群で長く、局所再発や 生存に差を認めなかったとされ25)
、現時点では側方 郭清が生存に貢献するデータは存在せず、JCOG0212
の結果が待たれる。3.
下部直腸癌の術前治療・放射線治療の現状 放射線治療は直腸癌手術の 側方郭清を省略し、骨盤内再発(局所再発)を抑制 するためにおもに欧米を中心に行われた。照射の方 法は術前に行うか術後に行われるか長年にわたり討 論されたが、Sauerが行った臨床試験で術前照射が 局所再発に勝り、以後術前照射が標準治療となっ た
26)
。しかし照射を行っても遠隔転移など生存が改 善されるわけではなかった。・放射線化学療法 術前放射線治療に化学療法を 併用し、局所および遠隔転移の制御が試みられた。
化学療法を併用することで生存の改善が得られるか を目的として行われたのが、
Gerard
の臨床試験FFCD9203
である27)
。化学療法を併用するとcom- plete remission
(以下CR
)率が高まり、局所再発率 が抑制された。放射線治療は術前照射が優れ、化学 療法の併用がさらに効果を増すことが判明したが、生存の延長を認めたのは
Swedish trial
のみである28)
(表
5)。
そこで切除不能大腸癌や術後補助化学療法で効果 を示していたオキサリプラチン併用化学療法を追加 することにより遠隔転移を含めた抑制が可能とな り、生存の延長に寄与することが大いに期待された。
しかし結果としては
STAR
-01 29)
などいずれも原発表
2 直腸癌に対する腹腔鏡下前方切除術における LAC
温存と合併症complication all AR
(888)AR+D3
(888)LCApre 584 LCAno-pre304 LCApre155 LCAno-pre256
SSI 32
(5.5%)17
(5.6%)18
(11.6%)16
(6.3%)leakage 43
(7.4%)40
(13.2%)*11
(7.1%)37
(14.5%)**colonic obstruction 20
(3.4%)9
(3.0%)4
(2.6%)7
(2.7%)re
-ope 36
(6.2%)19
(6.3%)8
(5.2%)18
(7.0%)all complication 130
(22.3%)69
(22.7%)42
(27.1%)62
(24.2%)*
P=0.005
**P=0.024
Hino T, et al. : World J Surg. 37 : 2935, 2013
表
3 直腸癌手術の変遷
1908 : Miles :
腹会陰式合併切除1939 : Dixon :
前方切除1940 : Babcock/Bacon :
貫通術式1941 :
久留:
腹会陰式合併切除を基本術式とする1950 : Deddish/Bacon :
側方郭清1960 : Steam/Deddish :
拡大郭清1974 :
北條/小山:
拡大直腸切断術1977 :
米国EEA
腸管吻合器1987 :
小松原 自律神経1979 :
今:
超低位前方切除1982 : Heald : TME
1983 :
土屋:
自律神経温存術1994 : Schiesel : ISR
1995 :
腹腔鏡下手術 本邦で保険収載2002 :
橋爪: da Vinci ロボット支援下手術
表
4 pT3T4
下部進行直腸癌の側方リンパ節転移頻度LLN meta Negative(%) Positive(%)
pT3(n=603) 502(83.2) 101(16.8)
pT4(n=50) 33(66.0) 17(34.0)
全体では
24%
大腸癌研究会 直腸癌に対する側方郭清の適応基準に 関するプロジェクト
巣の
CR
率、局所再発や生存に寄与することはなく、副作用が増すのみという結果になってしまった(表
6
)。また上乗せ効果を目的に分子標的治療薬の併用 でも同様の結果であった。ここで放射線治療の限界 が認識された。側方リンパ節転移に対しても完全制 御することは否定され30)
、術前照射も生存の延長を 示すことはできなかったのである。・術前化学療法 切除不能大腸癌の治療では遠隔 転移の縮小効果が対象となるため原発巣に対する効 果は検討されていなかった。そのため正確な奏効率 は把握されていないが、化学療法だけでも原発巣の 抑制の可能性が推測されていた。また術前化学療法 にはもう一つの臨床的意味があり、直腸癌の術後の
補助化学療法の導入率が結腸癌より低いことが認知 されている。このため術前よりある程度抗がん剤を 投与し、術後に追加投与することの臨床的評価も考 えられた。さらに今までの放射線化学療法の症例を 検討すると
ypCR
またはyp nealyCR
の症例の予後 がよいことが分かり、放射線化学療法ではおおむねypCR
が20%
位であった31)
。化学療法でこれに近いCR
率が得られれば同様の結果が期待できると考え られた。ここでSchrar
が発表したFOLFOX
にベバ シズマブを併用した治療でCR
が27%
であると報 告され、大いに注目されることとなった32)
。しかし 現時点では大規模臨床試験の報告はなく、NCCN
の ガイドラインではsmll phase II pilot study
で行われ 表5 代表的な CRT
の臨床試験の結果Sample Size Regimen CR Rate
(%)Local Recurrence
(%)5
-Year OS
(%)Sauer et al., NEJM, 2004
421 Pre
-operative CI 5
-FU + RT
̶6.0%* 76.0%
403 Post
-operative CI 5
-FU + RT
̶13.0% 74.0%
Roh et al. J Clin Oncol, 2009 ; NSABP R
-03
123 Pre
-operative 5
-FU / LV + RT
̶10.7% 74.5%*
131 Post
-operative 5
-FU / LV + RT
̶10.7% 65.6%
Gerard et al., J Clin Oncol, 2005 ; FFCD 9203
370 Bolus FL + RT 11.4%* 8.1%* 67.4%
363 RT 3.6% 16.5% 67.9%
Bossett et al., NEJM, 2006 ; EORTC 22921
253 CI FL + RT
-> adjuvant CT
̶7.6%*
̶253 RT
-> adjuvant CT
̶9.6% 67.2%
253 CI 5
-FU / leucovorin + RT
̶8.7%
̶253 RT ̶ 17.1% 63.2%
NSABP R0
-3DFS p=0.011
表
6 Oxaliplatin
併用の術前放射線化学療法の結果Ø German CAO/ARO/AIO
-04
PhaseIII P endpoint DFS T3
-4 oy Nx 1265 cases RT(50.4 Gy) +Fu±Ox pCR 17%vs13%(p=0.038)
Ø STAR
-01
PhaseIII P endpoint OS T3
-4 N1
-2 747cases RT(50.4 Gy) +FU With or without Oxaliplatin Increase toxicity without affecting primary tumor response
Ø ACCORD12/0405 PRODIGE 2
P endpoint pCR T3
-4Nx 598 cases RT(45
-50 Gy)Cap±Ox Local rec, OS, DFS no difference, Dworak score is only related 3y DFS Ø EXPERT
-C
CR 13.9%vs19.2% nealypCR 28.9%vs39.4%(p=0.008)
Local R 6.1%vs4.4% OS 87.6%vs88.3% DFS 67.9%vs72.7%
DFS : Dworak tumor regression grade score HR 0.68
ている段階と記載されているのみである。追随する 臨床試験として
PROSPECT trial
が行われており、エビデンスの構築が必要な状況であると記載されて いる。
PROSPECT trial
はあくまで放射線化学療法が 標準治療で化学療法をclinical trial
としており、そ の結果が待たれる(図2
)。4
新たな手術手技・腹腔鏡下手術 腹腔鏡下大腸切除術は
1996
年 に早期癌に対して、2002年には進行癌に対して保 険収載となった。実臨床では大腸癌では進行癌で あっても約半数以上の症例に腹腔鏡下手術が行われ ている。直腸癌に対する腹腔鏡下手術も積極的に行 われているが、技術的に高度であり特に下部直腸癌 の適応は慎重に扱うべきである。欧米ではCLAS-
SICII
により進行癌に対する成績で遜色のないことが示されている
2)
。本邦では早期癌に対して臨床試 験が行われ、短期成績であるが安全性に問題はな く33)
、retrospective
な検討であるが、進行癌でも症 例を選べば予後に差はないという結果が報告されて いる34)
。・ロボット支援下手術 腹腔鏡下手術は鉗子が直 線で鉗子の操作性は限定的である。骨盤壁の彎曲し た中に存在する直腸の手術には多少無理があるとい
える。
daVinci
を用いたロボット支援手術は腹腔鏡下手術の利点をさらに向上させるとともに、従来の 欠点や困難であるいくつかの点を可能にしている。
まずロボットアームに内視鏡や鉗子を固定すること によるブレの消失と、サージョンコンソールでの手 振れ補正機能がそなわっていることで、操作性に安 定感が増した。そして自由度
7
を有するEndoWrist
により、腹腔鏡では困難である部位の手術操作が可 能で、縫合も容易である。内視鏡も最大
10
倍の拡 大視効果を持つ高解像度の3D
画像が得られるため 立体感が得られ、円滑な手術操作が可能となってい る35)
。また腹腔鏡下手術は術者と併せて2
-3
人の医 師による操作であるが、daVinci
を用いたロボット 支援手術ではサージョンコンソールに座る一人の外 科医による遠隔操作での手術が可能である。しかし 触覚がないことやコストが非常に高いうえにまだ本 邦では前立腺手術しか保険収載されていないこと、腹腔鏡下手術と比べての絶対的な優越性を示すこと が難しいのが現状である
36)
。現在先進医療の申請に 向けて日本内視鏡外科学会ロボット支援手術検討委 員会大腸領域で前向き臨床試験を検案中である。お わ り に
大腸癌治療は手術および化学療法においてここ
10
年で飛躍的な進歩をとげた。エビデンスの乏し い抗癌剤治療や拡大リンパ節郭清と高度な機能障害 を残す手術から副作用を抑えた効果的な抗癌剤の選 択や適正なリンパ節郭清と低侵襲で機能温存が図ら れ、再発の少ない手術へと変遷した。しかし下部直 腸癌にはまだ解決されない側方方向のリンパ節に対 する適切な治療基準が充分示されていない。術前照 射も側方転移のない症例に限り、高い照射効果が得 られる症例が選別できれば有効な方法であることは 間違いない。一方本邦の下部直腸癌の治療成績は欧 米の成績より優れたものであり、しかも本邦からし か発信できない側方郭清という手技とリンパ節転移 のデータは世界に直腸癌治療のランドマークを示す ことになる可能性がある。側方郭清が省略できる症 図2 PROSPECT trial
例、転移があっても郭清のすることにより効果が得 ら れ る 症 例 の 分 析 が 必 要 で あ る。 幸 い に も
JCOG1310 :
側方骨盤リンパ節転移陽性の難治性下部直腸癌の予後改善を目指した治療に関する研究が 厚生労働科学研究委託で採択され、今後の更なる探 求と努力が求められる。
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北島政樹監修、勝又健次、久田将之、石崎哲央、林田康治、松土尊映、桒原 實、宮原光興、渡 辺 充、土田明彦