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小学校児童における水位表示の知覚に関する実験的 研究
著者 瀧野 千春
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 17
号 1
ページ 273‑278
発行年 1969‑02‑28
その他のタイトル AN EXPERIMENTAL STUDY OF THE PERCEPTION OF WATER LEVEL REPRESENTATION IN ELEMENTARY SCHOOL CHILDREN
URL http://hdl.handle.net/10105/3190
小学校児童における水位表示の知覚に関する実験的研究
瀧 野 千 春 (心理学教室)
問 題
垂直や水平の主要な方向をはじめ、それらに対して45度傾斜した各方向に関する子供の知覚に ついては、 Rudel & Teuber (1963)が直線やU字型の図形を用い、垂直、水平、斜などの位置 に関して弁別学習の難易度の比較を行なって、斜の位置における弁別学習は垂直や水平の位置に おけるそれに比べて困難であり、子供の年令が進むにつれて、その困難が減少してゆくことを指 摘している。
また、 Wurstenは垂直線や水平線および傾斜した線を呈示して、子供にそれらの線に平行し た線を描かせたり、円板上の指針をいろいろな所定の角度の傾きに、 setさせることによりその 基準線からのずれ(誤差)を手がかりとして、各方向の難易をしらべている。それによると斜方
向の難しさが指摘されている(Gibson, E. J. & Olum, Vリ1960, p.313)c
一方、いろいろな角度に傾けられたぴんの中に、はいっている液体の水位(Waterlevel)を予 想させることによって方向による難易の差をしらべる方法もあり、同時にこの方法はtrainingの 相違による影響を見ようとするものでもある(Smedslund, 1963; Beilin, Kagan, & Rabinowitz,
1966) 。
本研究はBeilinらの研究では考察の対象になっていない年令差(学年差)を問題点としてとりあ げ、更に誤数の分析を手がかりとして方向による難易の差を追求しようとするために行なわれた。
実 験
日的 垂直、水平、斜45度等の位置におかれたぴんの中の水の水位線の知覚が、訓練によって 向上するか。また形を異にする容器の場合に転移が見られるか。更に方向による差や年令差(学 年差)はどのような形であらわれるかを見ようとする。
実験条件 実験は、 (1) pretest, (2) training, (3) posttest, (4) transfer testの順序で 4段階に分けて行なわれる。 (2)のtrainingの条件として、以下に示すような5つのグループ がある。
知覚訓練群‑ ぴんの中の水位線を予想させる(Pグループ)
言語訓‑‑漂書芸禁芸警孟呈(V謹忘jv‑‑f)ル)
統制群‑I訓練は行なわない(Cグループ)
訓練およびposttestを行なわない(CNPグループ)
被験者 奈良市済美小学校1年生149名、 2年生150名。合計299名で訓練時の条件により5 つのグループに分かれる。その内訳は第1表に示すとおりである。
274 小学校児童における水位表示の知覚に関する実験的研究(瀧野)
実験材料および手続き pretestとposttestでは栓のついた試薬ぴん(円筒形で首がついてい る)を用い、 transfer testでは栓のついた丸底フラスコを用いた。試薬ぴん、丸底フラスコの中 には赤く着色した水が半分くらい入れてある。実験の実施時にはそれらの容器には、あらかじめ 第1表 被験者数 用意した伸縮性のある黒いカバーをかけることにより、容器の外形や傾
グループ巨年]2年
昌;
*^
﹂u I
V V C
O y‑I i‑I CT1 00CO CO CO C^] CO
斜の具合はわかるが、内容すなわち水位線はどのようになっているかに ついては、わからぬようにした。そしてランダムに呈示される8つの位 置(垂直2つ、水平2つ、斜(45度) 4つ)のそれぞれについて、水位 E 31線を予想させ、あらかじめ印刷して被験者に配布してある用紙により、
ニ ー∴ ∴∴ ∴‑∴∴二二∴∴
Total 149 150 た誤答数についても、 8つの各位置毎にしらべた上で、垂直、水平、斜 の3つのカテゴリーに分類する。
結 果
第2表に各グループの成績の平均値が示されている。この第2表からは、 pretestで8点満点 をとった被験者のdataは除外されている。それは訓練は成績を向上させるために行なうもので あるとの見地に立つためである。
第2表 学年別、テスト別の成績の平均値 被験 者数 pretest
年 2 年 F 1 年
101
第3表 pretestの分析
・l・ミ ・/'
定(Kramer, 1956;瀧野,
1.84
posttest transfer test
2 年l l 年 2 年1 1 年 2 年
5.45 5.95
pretest の結果について分散分析したのが第3表 で、学年、グル‑プ、その交互作用項のすべてにつ いて有意ではなかった。次に posttestの結果につ いて分散分析したのが第4表で、学年、グループの 両要因とも1%レベルで有意であったが、交互作用 項については有意でないとの結果がえられた。グル
‑プ差を見るためにmuhtiple range testによる検 1968)を行なったところ、 Pグル‑プと他の各グループとの問にの み、それぞれ1%レベルで有意差があった。
transfer testの結果の分析は第5表に示されており、これによると学年の要因のみが1%レベ ルで有意であった。
別表 posttestの分散分析 尚第3表〜第5表の分散分析はグル‑プ毎の被験
第5表 transfer testの分散分析 要 因 df SS I MS
学 年(A)
グル‑プ(B) A xB fithir
8.21**
第6表の分析にはKolmogorov‑Smirnov その結果2年のみが1 %レベルで pretest れされた。
第6表 正答にもとづく段階づけ
g」^i t三三l三三
Gl *﹂! O & JD
一 H a a a a
‑
2/2 2/2 1‑3/4 2/2 2/2 0/4 1/2 2/2 0/4 0/2 2/2 0/4 0/2 0‑1/2 0/4
被験者合計
10 25 79 63 5 11 23 21 3 2 2 0
29 53 59 52 5 3 19 5 1 1 2 1
122115 115
者数が異なるため、そのような場合に適した方法が 用いられた。 (例えばWiner, 1962, pp.241‑244参
D7?‑1
次に8つの各位置における正答率にもとづく段階 づけ(Beilin, et a]., 1966, p.324)を1年および2 年のpretestとposttstの結果に適用したものが第 6表である。すなわち第6表は各段階に属する被験 者の人数を示している。尚CNPグループはpostte‑
stを行なわないため,当然のことながら、第6表に は含まれていない。そして第2表では除外された8 点満点をとった被験者の dataは今度は第6表には 含まれている。
の検定(Siegel, 1956, pp. 127‑136)が通用され、
とposttestとの分布の問に有意差のあることが見出
次に誤答数の分析から各位置における難易度の相 違を見ようとしてまとめられたのが第7表である。
第7表には誤答数の分析と云う見地から、第2表に おいて除外された被験者のdataを含んでいない し、 posttestにおいてはCNPグル‑プのdataが存 在しないため、それだけdataも少なくなってい る.位置に関しては、垂直、水平、斜の3種類にま とめて表示されている。
分析に当っては、 X2‑testを用い、先ず垂直と水 平とをまとめたものと斜とについて、分布の相違を 第7表 位置別の正答と誤答の数
料
しらべ、更に垂直と水平との分布の相違をしらべるという方法をとった。それによると、第8表 がえられ、第8表から、 2年のposttestおよびtransfer testにおいて、垂直と水平との分布の 問に有意差がみられなかった以外は、すべて1%レベルで有意差がみられた。
276 小学校児童における水位表示の知覚に関する実験的研究(瀧野)
第8表 第 7 表に も と づ く x2の値
pretest posttest
学 年l 垂直と水平 垂直及水平と斜l 垂直と水平 垂直及水平と
17.73** 207.83**
ll.72** 144.25**
7.54** 230.83**
1.83 143.26**
transfer test
垂直と水平 垂直及水平と斜
16.91** 287.85**
.24 224.69**
考 察
第4表の分散分析およびそれにもとづく multiple range testの結果から知覚訓練の穿果が有 効であることがわかった。これは少し条件は異なるがBeilin, et al. (1966)も指摘しているとこ
ろである。尚学年差の要因が有意である点は、グループと学年の交互作用項が有意でない点と考 えあわせて、訓練による効果のうち、知覚訓練による効果が他よりも大である傾向は両学年を通
して見られるが、名訓練グループを平均すると、 2年の方が1年より大であることを物語ってい る。
第5表の分散分析において、学年差の要因のみが有意であったことから、 posttestにおいては 有効であったところの知覚訓練の効果も、形を異にする容器を用いた場合、効果的な転移を示さ なかったことがわかった。そしてこの傾向もBeilinの指摘のとおりであった。
第6表およびそれにもとづく分析は2年においては訓練により、より高次の段階への移行がみ られるが、 1年においてはそのような移行がみられないことを示している Beilinはこの点に関 しては、学年差にはふれていないが、訓練による高次の段階への移行はあると結論している。
第7表および第8表から、垂直、水平、斜の3種の位置における難易度について、最もむづか しいのは斜の位置であり、最もやさしいのは垂直の位置であるとの結果がえられた。この結果 はBeilinによる結論を更に、より明確にするものであり、その他の研究(Rude] & Teuberや Wursten)の結果と一致するものであるO
要 約
各学年毎に統制群を含めて5つのグループに分けられた、小学校1年生および2年生合計299 名を被験者として、垂直や水平や石打45‑に傾斜した位置など8種類の位置に呈示された、容器を 用い、その中の水の水位線を予想させた後、各グループ毎に知覚訓練や言語による訓練を行なっ てから、再び水位線を予想させるテストが実施された。そして更に形の異なる容器を用いて、水 位線の予想をさせるテストが転移を見るために行なわれた。
結果の分析から、以下の諸点が明らかになった。
(1)知覚訓練の効果が他の訓練の効果よりも明らかに大であったが、そ効果も転移テストに おいては明らかではなかった。
(2) 2年生においては訓練によって、より高次の段階‑移行する傾向が認められたが、 1年 生においては、この傾向は見られなかった。
(3)位置に関しては、最もむづかしいのは斜の位置であり、最もやさしいのは垂直の位置で あると云うことが確かめられた。
イ寸記 この実験に使用した材料の作成や、実施面で桧下栄子氏の協力を待た.
引 用 文 献
Beilin, H., Kagan, J., & Rabinowitz, R. 1966 Effects of verbal and perceptual traing on water level representation. Child Develo♪m., 37, 317‑329.
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Kramer, C. 1956 Extension of multiple range tests to group means with unequal numbers of replications. Biometrics, 12> 307‑310.
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Smedslund, J. 1963 The effect of observation oユa children's represe王station of the spatial
orientation of a water surface. /. genet. Psychol., 102, 195‑201.
瀧野 千春1968 Multiple range testの通用に関する一考察。奈良教育大学紀要人文・社会科学、
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Winer, B. J. 1962 Statistical principles in experimental design. New York: McGraw‑Hill.
(昭和43年6月24日受理)
278
AN EXPERIMENTAL STUDY OF THE PERCEPTION OF WATER LEVEL REPRESENTATION IN
ELEMENTARY SCHOOL CHILDREN
Chiharu Takino
Department of Psychology, Nara University of Education, Nara, Japan
The purpose of the present experiment is to investigate the perception of water level repre- sentation.
The subjects of this experiment were 149 lst-grade and 150 2nd-grade children who had been, respectively, divided into 3 experimental groups and 2 control groups. 3 experi- mental groups were as follows: (1) perceptual training group, (2) verbal training group by the horizontality principle, and (3) verbal training group by the water level principle. And one of the 2 control groups had no posttest session.
The experiment was consisted of 4 stages which were, in succession, pretest, training, posttest, and transfer test.
The materials used in pre- and posttest were straight-sided bottles and one used in transfer test was round-bottomed flask. These meterials, halffilled with red-colored liquid, were covered with opaque cloth and tilted at various angles to the horizontal. And subjects were instructed to guess the "water levels" of the liquid.
From the analysis of the data, several findings were obtained, and these were summariz- ed as follows:
(1) In posttest, perceptual training group was superior to verbal training groups and to control groups by the multiple range test.
(2) From the analysis of stage classification of pre- and posttest performance by the Kolmogorov-Smirnov test, subjects of the 2nd-graders were likely change to a lower class- ification.
(3) From the analysis of the number of erroneous responses by the chi-square test, the oblique positions were more difficult to guess than the horizontal and vertical positions, and the horizontal positions were more difficult than the vertical positions.