BuHetlnOftheFacultyolLlber8)^rts.N8gaSaklUnLVerSlty. N且ItJr且ISclenCe.Volー 38.No1.pp25‑51(Septemberl997)
総説 :日韓海峡域の植物 と植生の地理 学
伊 藤 秀 三
A
revleWOfphyto‑andvegetatlOngeography lntheJapan‑KoreaStraitregionSyuzoITOW
長崎大学数奇祁絶賛 (自然科学讃)第38怨 第1号 25‑51fi 別刷
1997年9月
= 1 )
A revIew of phyto- and vegetation geography in the Japan-Korea Strait region
Syuzo
howAbstract
Five patterns in plant distribution in the Japan-Korea Strait regIon were proposed and discussed. They are 1) Tshushima landbridge endemics, 2) continental elements, 3) Japan elements, 4) southern elements, and 5) norther elements. Their distributions are given in individual maps. Downward
deflection in altitudinal distribution was studied in several species of conifers (e.g. Abies firma, Torreya nucifera, Cephalotaxus harringtonia) and cool- temperate zone plants (e.g. Sorbus alnilolia, Carpinus laxi/larum, flex macropoda) in Tsushima and Oki Islands, in comparison with those in the welsern Kyushu mainland. Distributions of plant communities and associations hitherto described and reported were st.udied in the Japan-Korea Strait region .
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1) & ..tk$f;\JHlIIt£llIJ'i'1':t" (Plant Ecology Laboratory, Faculty of Liberal Arts. Nagasaki
University. Nagasak.i 852. Japan)
26 伊 蒲 秀 三
ま え か き
1967年以来.過去30年にわたって私 は九州の西部と北部の本土 と島供群 (甑列島,男女 群島,五島列島.平戸島 ・生月島と近辺の小島嘆,壱岐,対馬,沖の息 頚に群れては隠 岐群島)ならびにその彼方にある韓国の南部 と島供 (釜山近辺,巨済息.罷水近辺,珍息 莞島,南海部)の地物と植生を研究する機会に感 まれた。初b]には単独での調査行を続け ていた。1987年,長崎大学の中で対馬暖流域の自然史について幾人かの有志の間で総合的 な研究が話趨 となり,第 1回のコロキウム 「対馬暖流域の生物地理」が学部横断的な参加 省を得て開催 された.1988年には, このグループの 「対馬暖流域の生物分布特性に関する 研究」に文部省か ら長崎大学特定研究軽f2が与え られた。 また翌1989年には学内の教育研 究特別経費を得て.同般研究者と共に調香 と研究を続けることが出来た。 この流れを受け て.長崎大学6名 と韓国済州大学校の7名の研究者は,1992年〜1994年に文部省の科学研 究Zl国際学術研究 「対馬唆流域の生物地理」を得て.日本 と韓国で延べ11回の現地調杏 と
6回 シンポジウム・コt]キウム・講済会を行 うことが出来た (伊藤1995)。 こうした経過 の中で,私は単独で進めてきた植物 と植生の生態 と分布について,同線の研究者と一緒に 調査研究を継続することが出来た。成果のいくつかは既に幾苗かの論文に している (文末 の文献参照)。本稿 は, この経過の中で浮かび上がってきた日本と韓国 にまたが る課題を 展望 し,総合的な考察を行 うものである。
自 然 的 背 ★
El搾海峡域の現在の植物と摘生の構成 ・分布を考察するとき,3項E]の自然的背景を考 えなければな らない。すなわち. 1.地史的な背ft, 2.最終氷期の気候と海水準と陸域 環境, 3.現在の気候灸件である。
図 1は,更新世中期の陸地分布を湊 (1977 図付‑26)と氏亥 (1986 pl】3)か ら合 成 した古地理図であ る。 朝鮮半島 と日本列 島を連結 す る陸地 を, 本稿 で は対馬 陸橋 (Tsushlmalandbrldge)と呼ぶ ことにする。後述するように, この陸地で分化したかあ
るいは分布域を広げたと見なされる植物がいくつかある。
図 2は,最終氷期の最盛掛 こおける海水準の低下した時期 (25,000‑18,000年前) の 陸域の広がりと古格生地図である (原図 松岡数充1994)。 この時期は現在よりも気温は7
‑5℃低く,海水準は約120m低くて,九州本島と対馬 は地続きとなり,その西方に狭い朝 鮮海峡を挟んで朝鮮半島と対略していた。松岡 (1994)は花粉分析の結果を総合的に考案 して,九州の低地には針集樹‑落葉樹の混交林が広が っていたことを明らかにした (図
2 )
0最終氷期最盛期以降,気温と海水準は上昇 し,現在の気候状態が吸出した。現在の億物・
総 説 tj碑海峡域の植物と植生の地理学 27
図
28 伊 # 秀 三
植生の分布 は,地史的背景 と氷期の気候条件を背負いなが らも.現在の気候条件に最 も大 きく影響を受けている.気候条件のうち植物 ・植生の分布にかかわる温度条件 は,嘆か さ の指数 (WarmthIndex;Wl) と寒 さの指数 (ColdnessIndex,Cl)で表現できる (吉 良1948,1949)。図3は,吉良 (1949)が描いた日本列島の等値線 図 と任 ・吉良 (1975)
が描 いた朝鮮半島の等値線図を基礎と し,新たな資料 (東京天文台1991,金 ・伊藤1995)
を導入して, E]韓海峡域 について合成 した気候図である.
これら3つの図から示される自然的背景が.現在の植物 ・植生の分布を理解する上で考 案 されなければならない。
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I̲曳.〜絵説 El持海峡攻の織物と植生の地Jg!学 29
植 物 地 理
かつて私 は九州西部を中心に据えて見た植物地理について論じたことがある (L1億1977)。 同様の視点で.他にもいくつか論文や総説が出されて きた (外山1980.中西1989, 邑上19
89)。 これらの論説では, いずれも朝鮮半島における植物分布に関しては.植物箆 や図鑑 に記載されている分布域程度の情報をもとに論 じられている。本稿では視野を広げて日韓 海峡域を中心に置 き,植物分布 に関しては朝鮮半島側の資料 として自分自身による現地調 査に加えて.韓国の研究者 による論文からの引用を行った。特 に糾鮮半島の南西部の多鳥 海の島峡に関しては金 詰珠 と共同研究者による一速の論文 (金1984‑1996), 済州ELに関 しては金文洪 (1991),半島両部の鳶島と安島については下 (1985)か ら植物分布の情報 を得た。 また日本8Eqに関し,隠岐島については
t 嗣
(196& 1969),西上はか (1975).鈴木・ 中西 (1972),中西 (1980).野津 (1983)か ら,山陰の西部海岸について は開 く1972).宮本 (1970,1993,1977)から情報を得た。本稿にかかげる植物分布図 は,私 自身の調香 記録に基づ くほかは. これ らの文献 による。 とくに韓国の殆どの島峡における臓物分布資 料は上椙の文献によるところが多 い。
前著 (伊藤1977)では,植物分布の型に3つを設 けて論 じていた。すなわち, 1.南方 系または暖地系要素,2.冷温帯およびEl本要素,3 大陸系要素であった. その後に韓 国の南部島喚群の現地粥壷を進めてff科を集硫し,前掲の文献か ら得た情報をふまえて, 新たに対馬陸橋域起源植物を加え,かつ日本列島系植物と」ヒ方系植物とを分離し.全部で
5型をたてて以下に考祭を行うこととする.
1.対馬陛稚域起源種物
朝鮮半島と日本列島は.更新世中期には陸地で繋が っていた (図 1参照)。 この陸桶 を 介して.植物 は大陸からEl本列島へ あるいはEl本列島か ら大陸へ分/Tiを広げたであろう。
現在の対馬は,その陸橋域の東端 に近 いところにある。環在の分布域が陸橋の中, あるい はその近隣に限 られていて,陸橋域 に起源したとみなされる楕物がいくつかある。それを 対 鴨陸橋城起源植物と呼ぶ ことにす る.分相範Bflからみて.次の3つに分けて示す。
a.対馬固有種 (図 4)
1) シマ トウ ヒレン (SazLSSLLreaEnSLLLansKltam)(図4.図版1‑1)
生育地は対馬下島の白岳山頂の岩角地 に願 られる。生育鬼 は纏めて少ない。 2) ツシマ/ダケ (TtLmgLaLsushlmenSLSKltag)(図 4,図版 1‑2)
生育地は対馬下島の竜良山と白岳の山頂部のアカガ ン林内あるいは林縁に限られる. 生育丘は少ない。 邑上 (1985)によると, はかに.T{鳥と対馬上島の北端 にも産すると
30 伊 dB秀 三
言 う。
3) ヒメマ ンネン グサ (Sedum zenlaro‑LashLr()i MaklnO)(図 4)
生育地 は対。馬下島の竜良lLJと白岳の山頂部の霜岩地に
見 られるD江島 (1979)によると.上島の北端郡 と御岳
●a
◆ b
にも生育する。生育良 は少な
い。 ▲C
4) ツソマ ギポ ウノ (HosataEsLLShLmenSLSFu])ta) (図版 Ⅰ‑3)
全島の照菜樹林の林床や林縁 に広 く分布する0 8月〜
9月に開花.韓国に分布するケイリンギポウノ (HosLa TnLnOT・Nakal)に近縁とされる (Chungetal1991)0 b 対馬および周辺数カ所 に分布する種
5)ツシマスゲ (CarextsLLShlmeTtSISOhwl) 対馬 と佐賀県馬渡氏 (愈成1972)にのみ産す る。
6)ウスギワニグチソウ (PoLygonatum cryptanLhLLm
Lev etVan)
対馬と朝鮮半島南部の島供のみに産す ると言 う.朝鮮
半島島唄における分布の詳細 は不明であるo
c 対 馬陸橋域 とその周辺に分布する稀
7) ハ イビ ャ ク/ ン (JunLPeruSChLnenSLSL γar
Eg 4 礼馬B]百種
(a)ノマトウヒレン,(b) ノ
シマノデケ.
(
C)ヒメマ/千/クサの分布図
DIStrlbullOnmapof
Tsush】maendcmlCS ln the JapfLn‑koreaStraitT‑eglOn
(
a)SaussureaLnSuLarES Kltam.(b)'rLLtrigLaEsELShLmenSLS Kltag,
(a)SedumzenLar(トLashLr()A MElklno
procumbeTISEndl) (図 5a,図版1日,2,3)
本種のEl本における分布は伊藤 ・川里 (1980 図 1)に詳 しく, その後の調査によ る新い 、記録 は伊藤 ・松岡 (1994)にあるo これに朝鮮半島南部鳥嘆の分布 (金浜文 1991及び私信,金。tB珠・呉1995)を加えたのか図5aである。全/Jl布範朗 は対馬陸橋 域のなかにある。 なお本稀 の韓国 における写真 は金 ・呉 (1995 日3頁)と金浜文 (1991 76石下)にあり,本稿の図版IIには対馬北部の生育地 とともに金語沈教授提 供の牛耳島崖の写真 (2枚)を載せてある。 なお中井 (1914)には済州島班撃ILJの高 所に本種の生育が記録されている。全文洪教授 と私は共同調査 (1979年)により.木 秤で無いことを確認した。日本において生育済度が高 いのは.二札剛 ヒ東部海岸と近隣 の小払峡 と壱岐北部の島 (辰の島,若宮島,名烏島)である。
8)ダルマギ ク (AsterspalhuLL/oILuSMaxim)(図5b.図版 Ⅲ一1)
本種の分布 は, El本 においては玄界灘の島供を中心に分布 し,南に向かっては平戸. 五島列島を経て対馬陸橋域のさらに南 にある男女群島まで,乗に向かっては山口県の
総説 日韓海峡域の植物 と植生の地理学 31
伊 簾 秀 三
10)イトラ ソキ ョウ (AllLLLm ULrgLLnCuLaeFMaekawaetKltam )
平戸島の南部の岩角地 だけに分布する
固
有種であるOその分布と生愚 は伊藤 (1992), 染色体は茅野 (1992)に詳しい。考察 ここにあげた対馬陸橋域起源植物10種の うち,対馬固有種および周辺 にわず かに広 がる6種とイ トラ ソキ ョウはすへて内陸生の地物である。 それに対 し, ダルマ ギクと‑ イビャクシン. ゲンカイミミナ グサの3樺 はともに海岸の風衝崖地にのみ生 育し内陸 には生育しない点 で,前7種 とは展 なっている。 この3種, とくに ダルマギ クと‑イビャクノ ンが陸橋域の内陸で進化したとすれば.河畔岸 の立地 に適応 し進出で きたのはなぜか.興味 あ る課題であ る。
2 大陸系植物
明 らかに朝鮮半 島あるいはそれ以西に起源を もち. El本 にまで分布を広げている臓物を さす。 これらの植物の朝鮮半島における分布 や生態 については資料が少ない。将来,調査 が進 めは, ここの範噂からはずれる種 も出て くるであろ う.E】本 にお ける分布の広が りか
ら, 3型 に分 けて記述 す る。
a. 日本で は対馬 のみ に分布する樫
1)チ ョウセンヤマ ツツジ (Rhondodendro′lyedoe′lSe Maxlm VarPOuhhanenseNakal)(図 6,図版II‑2,
3)
+ a
本種 は日本 において は対馬のみ に分布す る。 その生育 ■ b
地 は山頂の岩角地か渓谷の岩石川岸かであ る。分布地を
図6に示す。浦田 (1979)と邑上 (1989)によると厳原 周辺 に も産す るという。 済州島の分布地 は対馬と同 じく LLJ地岩角地か渓谷の岩石川岸であ り (伊藤はか1993,金.
伊藤1994),川岸の群落 はチ ョウセンヤマツツ ジーノマ タニワタリノキ群集と名付けた (伊藤はか1993)。 なお チ ョウセ ノヤマツツジは,朝鮮半島部においては二次林 や林縁 に広く生育 する。 その様相 は.EI本におけるヤマ
ツツジの生態と同一である。 しか し対馬においては,チョ おける分布図
DISLrlbuLl()nm叩 OL
ウセンヤマツツジは前記の岩石立地か ら二次林 なと代償 ioTITI.neT!talelem ents 'n
図6 大陸系植物
(a)チ ョウセ/ヤマンノジと
(b)オオチダケサノの対 馬に おける分布図
DISLrlbuLl()nm叩 OL
coTtl】ncntalelem ents m
Tsushlma
(a)RhododeTldro/I
yedoenseMaxLm Vur ぞbO)uhAhsat?lebneSecぶnaeknasl,・s r・'ranchvardavldu Franch
植生 には進 出しない (伊藤1994)D 分 布の周辺 域 で生育
地 が岩角地 に限定す ることは興味深 い現象であ るが,そ
の理 由は明らかで fj:い。
総説 日韓海峡域の拾物 と植生の地理学 33
2)オオチ ダケサソ (AsELlbechLTlenSISFranch vardauとdu Franch) (図 6, 図 版Ⅳ一1)
前種 とおな じく,渓谷川岸 と山頂部の岩角地 (竜良山)に生育す る。分布地は少 fj: いO朝鮮半島のはか,中国東北部か らウス リーにも分布すると言う (野田1971)0 3)オオチョウジガマズ ミ (VLburTuLm CarlesILi‑Iemsl)
朝鮮半島か ら対馬まで/jy布す る。対馬 においてはコナラ林 に生ず るo浅茅湾周辺 と 北部のコナラ林 に多い。
4)チ ョウセ ンキ‑辛 (LespedezaTnaXLmOW乙CZLLCK Schn) 中国架北部,朝鮮半島か ら対馬の岩角地まで分布す る。 5)ア レチアザ ミ (BreedsegetumKltam)
中国東北凱 朝鮮半島か ら対 馬まで分布する。
6)ハ クウ ンキ スゲ (HeTnelocallLShahuunensLSNakal)(図版Ⅳ‑2)
朝生羊半島か ら対馬 まで分布す る (臓田はか1984,Chung andKang 1994). 対馬 においては海岸草地に多く (伊藤
・
lFl西 L984), また山TAの岩角地 (御岳, 白岳, 竜良山)にも生育するob 九州西部まで分布する種
7) チ ヲウセ ン ノ ギ ク (Chrysanthemum zawadshLLHerblCh subsp LaLLlobum Kltag)(図版Ⅳ 3)
対馬 (白岳),平戸島 (南部の佐志岳,樺岩),鹿児島県の磯聞岳の岩角地に分布す る0
8)ダ ンギ ク (CaryoptensLTICaTlaMaxlm)
朝鮮半島において El本 において も.岩的地のみに分布する (伊藤 ・川里1980.伊藤
図
伊 藤 秀 三
ほか1993)O 日韓海峡域 におけ る分布地 を図 7に示す。 朝鮮半島内陸部 にお け る分 布 と生態 につ いては情報がないQ
9) チ ョウセノニワフジ (IndLgOferahLT・llou)uMaxim) 平戸の南部 の岩山に分布す る。
.九州以東に分布 が及ぶ種
若干例 を挙 げてお く。 コバ ノチ ョウセンエノキ (近畿地方 まで), イ ワ /チ (小豆島 まで), ケ ンカイツツジ (中国地方 まで)。 ケ ンカイツツジは,朝鮮半 島や済州島におい ては二次林 に広 く生育 し, 対馬 にお いては岩角地 と二次林内の浅土地 に生育す る (tll藤 1994)。 分布域の周辺にあたる九州北部か ら中国地方 にか けては, 岩 角地 のみ に生育 し 二次林 には進出しない。
3 日本列島系の植物
ここで は, 日本列 島固有種の うち対馬 まで分布 し朝鮮半 島に及 ばない私 九州本L'1,まで 分布 し対馬 に欠 け る種をあげる。
1)対馬 まで分布す る種
コパノミツバ ツツij, ナツハゼ, トチパニンジ ン, ウ リノキ, イワキ ンパイ, オニ ケルミ. モ ミ。
2)九州本島 まで分布し対馬 に欠 け る稀
キパ ナアキギ リ, タカ ノツメ, コソアプラ, チ ドリノキ, オニモミリ.ウ リカエデ.
ウ リ‑ ダカエデ, マップす. ヤマツツジ. ‑イ ノ牛。対馬 にはブナ第 に達す る山地が ないので, ブナ岸 に産す る植物 (ブナ, ミズナラ, クロモジ属, サワゲルミなど)が 欠落す るの は当然であ り, それ らはここには特に挙 げて いない0
3)済州 島あ るいは朝鮮半島南部 まで分布 す る確
りヨウプとザ イ7 リボ クがあ るo済州 島や朝鮮半島における分布と生態の詳細 は不 明であ る。
4 甫方系植物
対馬暖流のために,対馬南部 は緯度が高いわりには温暖 であ り (図 3), 南方系の植物 が北上分布 してい る (例 ホルトノ牛, ‑ マポ ウ11ど)o九州西部 に沿って は.九州東部 におけるよ りも著 しく北上分布 す る種があ り,九州西回 り (北上)分布 と呼ばれ, その中 の若干 の種 は対馬 に達してい る (例 ナクオレノキ, ヤ クソマ ネyタイ ラン)。 このこと について は初 島・新 (1956)および中西 (1996)が多 くの例を挙 げ詳しく論じているO
総 説 El韓海峡域の地物と梅生の地 理学 35 5 北方系植物の南下分布
朝鮮半 島南部の島唄か ら, また山陰か ら対馬,壱岐を経て平戸, 五島列Iiもの海岸紛 いに 南下分布す る植物 をさす。
1)カノワ (QLlerCuSdenLataThumb)(図8a)
山地性のカンワは九州の育架山地 まで ブナ帯 に沿って分布 す る. このよ うfj:分布 を す るカシワとは別に.海岸林の要素として海岸 沿いに南下分 布 す る個体 群があ るO (図 8aにはブナ帯の分布 は描 いて いない。)対馬 においては,山陰以北にあるカンワー ネムノキ群集 として海岸斜面に成立す る群落であ る (中西1985)o種 と しての分布の 最南端 は五島列 島の南部 に及ぶ.
2) ツタウルシ (RhusamblguaLavallee exDLPpel)(EET8b)
本種 はブナ帯の森林に広く分布 し,九州 の脊梁山地 には普通 に生じている。一方 で 前記 のカ yワとおなじく, 沿岸域において南下分布している (図 8bには ブナ岸 の分 布 は描 いていない)。対馬 においては山地上部 に も稀 に生育す るが, 壱岐以南 では海 岸近くに生育 す る。長南史削ま五 島列島の宇久鳥 まで南下 し. そ こで は南方系の7 コウ
と迎んで生育 しているO生育畠 は多くはないが,個体群 は持続 的 に維持 されて いる。 3)エl/オオバ コ (PlantagocamLsc
h
atlCaCham)(図8C)4)スナ ビキソウ (MesseT・.SChmLdlaSlbLnCaLlnn) (図 8d) 5)‑マニ ンニク (ElymzLSmOLILSTrln)
この3掛 ま海岸生 の草本であ る。エ・/オオバ コはしばしば草地 に も生育 す る。 エゾ オオバ コとスナ ビキソウは韓Egの島掛 こも分布 す る。 ハマニ ンニクの九州 にお ける分 布地 は対馬北端と博多湾である。 その分布 と生態 について は中西 (1986)に詳 しい。
図
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.捜説 El斡海峡域の組物と絶生の地理学 37
対馬 と絶境 における冷温帯系種物の下降分布現象
対馬 において.冷温甫系植物が低 い海抜の照会樹林域 の中にまで下降分布することは, 外山 (1957,1980)によ って早くか ら指摘 されていた。 この記述とは別 に.′ト泉 (1987, 1989)は同様な現象が 日本海の隠岐 においても認 め られ ると指摘している。 この下降分布 現象を,九州本土.対瓜 田峡の問で比較 しよ うとす るのが,本節 のねらいであ るO
同一の温度条件 は.緯度 を北にゆ くほど低 い海抜に移ることは古くか らの常識であ るO この ことを数億 で表現で きるよ うにしたのが,召=良 (1948,1949) の暖か さの指数 であ っ た。本稿で もこの指数を用 いる。
吉良 (1948.1949)によ ると,暖か さの指 数は唆温帯 (殿 斐樹林域)180‑85, 冷 温等 (夏緑樹林域)85‑55であ り,両・TTの境界付近 にはモ ミ林が発達 す る。 九州西部においては, 照葉樹林域の上部 にはアカガ シ林とモ ミ林があ り.私 は7カガソ林域 の下限を哩か さの指 数105とした (伊藤1971)。現実 に7カガン林域の下限 は,九州本土の西部に位逆す る雲仙 や国見ILJでは海抜450m,対馬 中部で
は
300mであ る。森林帯の座標軸 と して標高の代 わ り に暖か さの指数を用 いると,地域 を越 えた比較が可能 とTi'る。 それはすでに伊藤 (1971) の巾で試みf:。九州西n%各地の温故条件と滋林帯 の海抜の調査に基づいて,森林帯比較の 座標軸 と して暖か さの指数 を用い. それに日韓海峡域の口本別 .2.X, 各地 (五島列氏 長崎 ・平戸地
方,対嶋,隠岐) の森林帯 の懐 古 を比較すると次のようになる
。
すなわち,五島列島の最高海抜
は七 ン岳JI60m,三王111440mで.
両山地ではアカガソはスダジイ
に混じって生育す るが7カガン
林が俊勢には発達しない (伊藤
1977)。五島列 島 で は海抜 Om T五■
(TZE) はwl‑140弱 に相当す る。長
崎 ・平戸地方 ではOmは
W
1‑130,対馬 ではW1‑120,隠岐 ではW1‑115となる (図 9)。 以上の森林帯区分の中にモミ 休の実際の分布を入れてみると,
詞 9 九州西経と対馬および尾坂おける海抜苗.宅かさの指数, 蘇
林(野●は冷温・の阻係viF位のTズ キ
地Elへev分布するaL)orL‑W)armth lndcゾxの海抜分布を示す。対烏とFa境で低海抜 IFoTeSt Zone relAtlOnS )r) the western KyushumaIn
land, Tsushlma and lklIslands Closed clrClesshow theaLt
Ltudm81dlStrlbutlOnOfSorbus aEnLfoLEaC Kocch. an
elementorthe cool‑temperate ToTCSt,LndlCatlngthedownw
arddeElect10nlndlStrlbutlOn lnrelatlOntOaltltudes
38 伊 jB 秀 三
雲仙において は海抜1000m前後 (WI‑74‑80)に発達す るのに対して. 対馬のLLJ地 (御 岳の山頂部)においてはW1‑95‑100付近 に発達 する (御岳において典型 的 な モミ‑I/辛 ミ群集7カガ・/亜群集が発達 し.大星山 と白岳では斬片的 なモミ林 があ り,竜良山ではモ ミは生育するが倭占林 にはな らない). このような山地上部のモ ミ林のほか に.対馬 で は 海抜20m前後の低海 抜地 にモ ミ林 (モミ一・/キミ群集ウラジロガシ亜 群娘) が成立する (伊藤1974.1991)。 それ はW1‑120弱の暖地 にあ り,河川の屈曲部の内側に発達して い る. その妓存林分 は今では2カ
所 で兄 いだされ るにすぎないが,
. 2 m
扶存叫,tや立地条件 か ら判断す ると, かつて は低地モミ林 は広 く存在 していた らしいが,現在
で はその立地の殆 どはス半の植 林地 と化して いる。11おモ ミの 申木 は,現在でも低地か ら高地 まで生育して いる。
障岐島 においても. かつては
「モミ林はほ とんど海面近 くか ら海抜430mまで生 じ」 て いた (岡1968)O モミ林が低海抜 か ら 発達 することは,小火 (1987. 1989)においても指摘されてい る。 同時 に 「西郷では暖かさの
指数は1085,海抜600mで は
推
定814とな る」 ので 「島 は はば
全域が照雄樹林の領域 にあるJ. それにもかかわらず.冷温等性 のカシワ, イヌ ンデ, ウリハタ カエデ. オオイ ワカガミ. ネ ズ コ. ヒメコマ ノが照東樹林域 の 中に生育 していると指摘してい
る。
こ う した背
f
l・の 中 で, 外山 (1957.1980) が指摘する冷温可
T‑l諾 刑州紬 仙
叩加
ヨ「
1
謡 SL, 仰朋
脚用心
ilH鵬由
・‑・‑ご
i 日 日 ⁝ T
図 10 対馬・FB鞍において下降分布LlsいP.韮樹 (a) ウラノ
ロガ/と(b)‑/キミ
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捻説 llPt海tt域の碓物と他生の地理学
帯系植物 の下降分布の実体 を,
図9 の
lPに分布海抜 の記鞍 をプ ロ ソトした。照蕃樹林の安東 で あるヤブツバキ, スダジィ, ウラジロガ /, イスノキ, カゴノ
辛,ソキミ, などでは,九州本 土 と対馬 ・隠岐の問では分布に 相違 は兄 いだせなか った (図10
a.b)。 ところが 7カガシ林やモ ミ林に多い7カガ./. ミヤマノ キミ, カヤ, イヌガヤでは
,対
馬や隠岐においてはWIのTTJAい 方へ (す なわち暖地に向かって)
下降分布が認め られ る (図118.
b,C)。 さらに冷温帯性の多くの
落染樹種 (アズキナン, ヤマポ
ウシ. コ‑ ウチ ワカエデ, ナナ カマド, イヌ /チ.7カ ンデ, 等) においては.明らかに対馬 や隠岐において朔著 なF降分布 が認 められる (図12&,b,C
,
d)O
ミズナラとクロモジ属 は対馬 に は欠落す るが,隠岐においては 海岸近くの海抜 にスダジイやヤ プッパキなどと共 に生育して い て,冷温帯 の植物 にしてはWI
指数に対して顕著 な下方分和が
認め られた。
対晦・隠岐 における冷温帯系 植物の下降分布の原因 はなにか。
小泉 (1989)は.「これらの植 物 はすべて氷河時代 からの生き
集り」 とみなしている。 これら
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一 一 一 回
図 11 対馬 .随坂において下降分布する針葉樹 (a)モミ,(b) カヤ,(C)イヌガ十
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(b)Torreya仙CL/eraSlobctZucc.and(C)CephaLo一aXuS hamngotrua 汰Koch,showlng downwarddcrlect】orH n dlStrlbutlOnlnTsush】maandOklIslands