糖尿病モデルマウスの腎および膵に対する ダパグリフロジンの抗炎症作用
やまがた あきら
山形 瑛
(腎臓病学専攻)
防衛医科大学校
令和2年度
目 次
第1章 緒言 1頁
第2章 2型糖尿病モデルマウスの腎マクロファージに対するSGLT2阻害薬の グルコース取り込みの抑制と直接的な抗炎症作用(研究1) 3頁
第1節 背景および目的 3頁
第2節 材料と方法 5頁
第3節 結果 11頁
第3章 1型糖尿病モデルマウスにおけるSGLT2阻害薬の膵島炎抑制作用(研 究2)
17頁
第1節 背景および目的 17頁
第2節 材料と方法 19頁
第3節 結果 22頁
第4章 考察 24頁
第5章 結論 30頁
謝辞 31頁
略語一覧 32頁
引用文献 33頁
図表 38頁
1 第1章 緒言
全世界における20~79歳の糖尿病(diabetes melltius; DM)の有病率は2019年
の時点で9.3%と推定されており、今後さらに増加すると予想されている(1)。糖
尿病性腎臓病(diabetic kidney disease; DKD)はDMの三大合併症のうちの1つ であり、慢性腎臓病(chronic kidney disease; CKD)の最も頻度の高い原因疾患で
ある(2)。本邦では年間3万人以上の新規透析導入患者がいるが、DKDが原因疾
患の 40%以上を占める(3)。DKD の患者は、腎機能悪化が進行することが多く、
最終的に透析や腎移植を必要とする末期腎不全(end stage kidney disease; ESKD)
となるリスクが非常に高く死亡に至ることも少なくない(4)。このような不幸な 転帰にならないように、DKDの発症を予防することや進展を抑制することが、
治療戦略として重要である。
ナトリウムグルコース共輸送体2(sodium-glucose cotransporter 2; SGLT2)阻害 薬は、腎臓の近位尿細管に存在するSGLT2によるグルコースの再吸収を抑制し、
尿中にグルコースを排出させ、血糖値を低下させる作用がある。そのため、近年、
SGLT2 阻害薬は経口血糖降下薬として DM やDKD に対して臨床的に広く使用
され(5)、血糖降下作用だけでなくアルブミン尿・蛋白尿の減少や糸球体硬化の 軽減などの腎保護作用が報告されている(6-8)。 DKDに対するSGLT2阻害薬の
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治療効果は複数の大規模前向き臨床試験で証明されており、SGLT2 阻害薬によ り腎機能の悪化およびESKDへの進行のリスクが大幅に減少した(9, 10)。
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第2章 2型糖尿病モデルマウスの腎マクロファージに対する SGLT2 阻害薬の グルコース取り込みの抑制と直接的な抗炎症作用(研究1)
第1節 背景および目的
DKD が進行するメカニズムは様々存在するが、微小炎症は DKD の主要な原 因の1つである(11)。 その代表的なメカニズムとして、炎症性メディエーター が腎臓へのマクロファージ(Mφ)の浸潤を誘発し、炎症反応をさらに増強させ
ることが挙げられる(12)。 SGLT2阻害薬は、DKDにおける腎臓へのMφ浸潤を 抑制し、さらに炎症性サイトカインやケモカインの産生を減少させることによ
り、抗炎症作用を発揮する(13-15)。さらに、SGLT2阻害薬は、腎臓だけでなく、
心血管系・肝臓・脂肪組織などの多くの臓器でも抗炎症作用を認めることが報告 されており、多面的な抗炎症作用の分子メカニズムが注目されている(12, 13, 16)。
Xuらは、SGLT2阻害薬のカナグリフロジンが、マウス腹水由来のマクロファ
ージを用いて、細胞内糖代謝を抑制し、オートファジーを増強することにより、
抗炎症作用を発揮したと報告した(17)。この結果は、カナグリフロジンは炎症細 胞が病態の主体となる炎症性疾患に対して有効である可能性を示している。さ らに宮地らは、脂肪組織で SGLT2 を阻害することにより、炎症を誘発する M1 型 Mφ が、抗炎症作用のある M2 型 Mφ に比べ、相対的に減少したと報告した
4
(18)。これらの研究では、SGLT2阻害薬が血糖降下作用とは独立して、Mφに直
接的な抗炎症作用を発揮する可能性があることを示している(17, 18)。
本研究では、まず、2 型 DMモデルマウスにおいて、SGLT2阻害薬のダパグ リフロジンの腎保護効果について検討した。次に、腎臓に浸潤するMφにSGLT2 というトランスポーターが存在するかどうかについて検証した。さらに、ダパグ リフロジンが腎 Mφ のグルコースの取り込みや炎症性サイトカインの産生に与 える直接的な効果についても検討した。
5 第2節 材料と方法
(1)実験動物
レプチン受容体欠損マウスであるdb/dbマウス(オス、8週齢、C57BLBLKS/J
lar- +Leprdb/+Leprdb)(日本クレア、東京都)は過食により著明な肥満と高血糖 を呈するマウスであり、2型DMモデルマウスとして使用した。コントロールと して糖尿病を発症しないdb/mマウス(オス、8週齢、C57BLKS/J lar-m+/+Leprdb)
(日本クレア)を使用した。全てのマウスは12時間の明暗サイクルで制御され た条件下で飼育され、食餌と飲水は自由摂取とした。治療群にはダパグリフロジ
ン(Chemscene、NJ、USA)0.5 mg/kg/日の用量で食餌に混入し12週間経口投与 した。
本研究における実施計画は、防衛医科大学校における動物実験倫理委員会の 承認を事前に得た(承認番号:19004)。全ての実験は、防衛医科大学校および 関連する実験動物使用に関するガイドラインと規制に従って実施し、動物の苦 痛を最小限に抑えるように努めた。
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(2)代謝データと血液の生化学的分析
8週齢から20週齢までの間、4つのグループのマウス、すなわちdb/mマウス コントロール(n=4)、db/mマウス+ダパグリフロジン(n=4)、db/dbマウス コントロール(n=8)、db/db マウス+ダパグリフロジン(n=8)を観察した。
毎週の平均食餌摂取量を測定した。体重は4週間毎に測定した。マウス尾静脈か
ら採血を行い、血糖値(メディセーフフィット、テルモ、東京都)を4週間毎に 測定した。血清クレアチニン値は20週齢時に酵素法により測定した。
(3)尿の解析
8週齢から20週齢までの間、メタボリックケージ(CL-0305、日本クレア)を 使用して4 週毎に24 時間蓄尿を行い、尿中アルブミンを ELISA 法 (Albuwell M、Exocell、PA)で測定した。
(4)病理組織
20 週齢時にマウスを麻酔下で安楽死させ、腎臓を採取した。ホルマリン固定 パラフィン包埋切片を作製し、Periodic Acid-Schiff(PAS)染色および Masson
Trichrome染色を行った。PAS染色を行った切片を使用し、全糸球体に対して分
節性硬化または全節性硬化がみられた糸球体の割合をカウントした。また、
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Masson Trichrome染色を行った切片を使用し、間質の線維化部位の面積率を測定
した。
(5)免疫組織化学
スライドグラス上のホルマリン固定パラフィン包埋切片に対し、脱パラフィ ン、親水化、抗原賦活化(pH9.0、98℃、30分)を行った。非特異的ブロッキン グ(Blocking One、03953-95、ナカライテスク、京都府)の後、ラット抗マウス
F4/80 IgG抗体(MCA497GA、Bio-Rad、CA)を一次抗体として4℃で24時間反 応させた (100倍希釈)。内因性ペルオキシダーゼブロック(Peroxidase block、
S202386-2、Agilent、CA)を行い, ペルオキシダーゼ標識抗ラットIgGポリク ローナル抗体(414311、ニチレイバイオサイエンス、東京都)を二次抗体とし て 室 温 で 1 時 間 反 応 さ せ た 。3,3'-ジ ア ミ ノ ベ ン ジ ジ ン 四 塩 酸 塩 (3,3'- diaminobenzidine tetrahydrochloride; DAB)を20秒間反応させて発色させた。
50糸球体および弱拡大(low power field; LPF)10視野あたりのF4/80陽性 細胞数をカウントし、1 糸球体および 1LPF あたりの平均陽性細胞数を用いて 評価した。
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(6)リアルタイムRT-PCR
腎皮質または採取した全ての細胞から Total RNA を抽出し、先行研究に基づ きリアルタイムRT-PCRを実施した(19, 20)。プライマーはTumor necrosis factor
(TNF)-α(Mm99999068、Thermo Fischer Scientific Inc.、DE)および、Monocyte chemotactic protein(MCP)-1(Mm00441242、Thermo Fischer Scientific Inc.)を使 用した。TNF-αおよび MCP-1のmRNAの相対定量は、比較 Ct(ΔΔCt)法を用 いて評価した。
(7)Flow cytometry (FCM)
12 週齢に麻酔下でマウスを安楽死させ、腎臓を採取した。肝の単核細胞
(mononuclear cell; MNC)を収集するための技法と同様に(21)、比重遠心法を用
いて腎の単細胞浮遊液を精製した。MNCが豊富な腎細胞をFcブロッカー (2.4 G2、BD Biosciences、NJ)とインキュベートして、非特異的結合を阻害した後、
APC標識抗CD45抗体(30-F11、eBioscience、CA)、FITCまたは PE標識抗F4/80 抗体(BM8、eBioscience)、PE-Cyanine5標識抗CD11b抗体 (M1/70、eBioscience) と反応させた。 さらに、ヤギ抗マウス SGLT2 抗体(sc-47401、Santa Cruz Biotechnology、TX)を一次抗体として反応させた後、PE標識抗ヤギ抗体(F0109、
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R&D Systems、MN)を二次抗体として反応させた。Novocyteフローサイトメー ター(ACEA Biosciences, CA)を使用し解析した。
(8)Mφのグルコース取り込み能とTNF-αおよびMCP-1産生能の解析 腎の単細胞浮遊液を精製した後、細胞をin vitroでダパグリフロジンの濃度に 応じてダパグリフロジンなし、2.3 nM(マウスの SGLT2 に対する 50%阻害濃 度)、23 nM、230 nMの4グループに分割し、20 ng/mlの合成拡散CpGオリゴ デオキシヌクレオチド(CpG-ODN; HC4033: TCCATGACGTTCCTGATGCT、
Hycult Biotechnology、Netherlands)で4時間刺激した。 同時にモネンシン(BD Biosciences)を添加して、細胞内からのサイトカイン放出を阻害した。刺激後に 細胞を収集しFcブロッカーとインキュベートした後、CD45、CD11b、SGLT2で 染色した。
Glucose uptake Cell-Based Assay Kit (600470、Cayman Chemical、MI)を使用 して、Mφのグルコース取り込み能を解析した。
Fixation/Permeabilization Solution Kit(BD Biosciences)を使用して細胞膜透過処 理を行い、FITC標識抗TNF-α抗体(MP6-XT22、eBioscience)およびFITC標識 抗MCP-1抗体(14-7096-41、eBioscience)で染色した。
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Mφのグルコース取り込み能と細胞内TNF-αおよびMCP-1産生能はNovocyte フローサイトメーターを使用して解析した。
(9)統計分析
全ての統計分析はJMP(version 14; SAS Institute、NC、USA)を使用した。全 てのデータは、平均値±標準誤差(standard error; SE)で表現した。 p<0.05を統 計的に有意であると判定した。
11 第3節 結果
(1)身体的・生化学的データの解析
投薬開始前にdb/db群とdb/m マウス群には体重、血糖値、尿中アルブミンに 有意差を認めたが、 db/dbマウス+ダパグリフロジン群とdb/dbマウスコントロ ール群の間に、体重、血糖値、尿中アルブミンに差はみられず、db/m マウス群
に比べいずれも有意に高かった(表1)。
1 週間あたりの平均食餌摂取量は db/db マウスの方が db/mマウスよりも有意 に多かったが、db/dbマウス+ダパグリフロジン群とdb/dbマウスコントロール
群の間には有意差はみられなかった(図1A)。
体重は8週齢から20週齢までの間、4週毎に測定した。db/dbマウス+ダパグ リフロジン群とdb/dbマウスコントロール群の間に有意差はみられなかった(図
1B)。
血糖値に関して、db/db マウスは db/m マウスと比較して常に有意に高値であ
った。16週齢と20週齢においてdb/dbマウス+ダパグリフロジン群がdb/dbマ ウスコントロール群よりも有意に低値であった(図2A)。
血清クレアチニン値に関しては、20週齢においてdb/dbマウスはdb/mマウス と比較して高値である傾向があった。db/dbマウス+ダパグリフロジン群はdb/db
12
マウスコントロール群よりも低値である傾向がみられたが、両群間に有意差は みられなかった(図 2B)。
尿中アルブミン定量に関しては、db/db マウスは db/m マウスと比較して有意
に多かった。20週齢においてdb/dbマウス+ダパグリフロジン群でdb/dbマウス コントロール群と比較し有意に少なかった(図2C)。
(2)腎組織の解析
20 週齢において db/db マウスの全糸球体に対する硬化糸球体の割合は、db/m マウスと比較し有意に多かった。db/db マウス+ダパグリフロジン群では db/db
マウスコントロール群と比較し有意に少なかった(図3A・B)。
腎間質の線維化の面積率に関しては、各群間で差はみられなかった(図4A・
B)。
(3)腎におけるダパグリフロジンの抗炎症作用
F4/80は成熟Mφに特異的に発現する抗原である(22)。 20週齢において、db/db マウスの糸球体および尿細管間質への F4/80+細胞の浸潤は、db/mマウスに比較 し有意に高度であった。また、db/dbマウスコントロール群と比較し、db/dbマウ ス+ダパグリフロジン群で有意に軽度であった(図5 A-D)。
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20週齢における腎の TNF-α および MCP-1 の mRNA は、db/dbマウスにおい てdb/mマウスと比較し、発現が高い傾向がみられた。これらのmRNA は、db/db マウス+ダパグリフロジン群で db/db マウスコントロール群よりも発現が低い 傾向がみられたが、統計学的に有意差はみられなかった(図6 A・B)。
(4)炎症性MφにおけるSGLT2+ Mφの存在とその割合
本研究では、腎マクロファージに対するSGLT2の抗炎症作用を検討すること を目的としており、炎症性Mφに限定した解析を行うために、以下の手順を踏ん だ。まず、腎の単一細胞浮遊液を前方散乱光シグナル(forward scatter; FSC)と 側方散乱光シグナル(side scatter; SSC)によりプロットし、好中球を除外するよ
うにゲートした(図7 A)。次に、腎の尿細管上皮細胞など免疫細胞以外の細胞 を除外するために、汎白血球のマーカーである CD45 陽性の細胞集団をゲート
した(図7 B)。その細胞集団をF4/80およびCD11bでプロットしたところ、3
つの細胞集団(F4/80lowCD11bhigh、F4/80highCD11blow、F4/80-CD11b-)に大別され た(図7 C・D)。F4/80lowCD11bhighの細胞集団はF4/80lowCD11bhigh Mφであり、
腎において、F4/80lowCD11bhigh Mφは炎症性サイトカインを発現し、尿細管上皮 細胞のアポトーシスを誘導したという報告がある(23, 24)。このF4/80lowCD11bhigh
14
Mφの表現型はM1型Mφであり(23, 24)、DKDの進行に重要な役割をもつ炎症 性Mφであると考えられている(25, 26)。
FCMで、抗SGLT2抗体で染色した細胞(赤色)とアイソタイプ(negative control)
で染色した細胞(灰色)を比較し解析したところ、一部のdb/dbマウスにおいて、
F4/80lowCD11bhigh Mφ の中に SGLT2 が陽性となる Mφ が少数存在することが示 唆された(図7E)。一方、db/dbマウス+ダパグリフロジン群ではF4/80lowCD11bhigh
Mφに対するSGLT2+ Mφの割合が低下している傾向がみられた(図7 F)。
図7Gのように、F4/80lowCD11bhigh MφにおいてSGLT2+ Mφが1%以上存在す るマウスは、db/dbマウスコントロール群では42.9%(16匹中6匹)であったの に対して、db/dbマウス+ダパグリフロジン群では20.0%(15匹中3匹)であっ た。
SGLT2+ Mφ が F4/80lowCD11bhigh Mφ において 1%以上存在するマウスを使用 し、SGLT2+ MφのF4/80lowCD11bhigh Mφに対する割合を解析した。db/dbマウス コントロール群(n=6)では12.1%であった一方、db/dbマウス+ダパグリフロジ ン群(n=3)では5.81% と有意に少なかった(図7H)。
(5)CD11bhighSGLT2+ Mφによるグルコースの取り込みと、ダパグリフロジン 投与によるグルコース取り込みの抑制
15
CpG-ODNで刺激した場合(赤色)、CD11bhighSGLT2+ Mφのグルコースの取り 込みは無刺激群(灰色)と比し増加した(図8 A・B、n=4)。CD11bhighSGLT2+
Mφによるグルコースの取り込みは、ダパグリフロジンを投与したことで濃度依 存 的 に 抑 制 さ れ 、 特 に 、23 nM お よ び 230 nM の 高 濃 度 に お い て は 、
CD11bhighSGLT2+ Mφによるグルコースの取り込みは有意に減少した(図8 C-F、
n=4)。
(6)In vitroにおけるF4/80lowCD11bhigh MφのTNF-αおよびMCP-1の産生
CpG-ODNでの細胞刺激により、F4/80lowCD11bhigh MφのTNF-αの産生は増加 した(図9 A・B、n=4)。ダパグリフロジン投与により、2.3 nMおよび23 nMで は F4/80lowCD11bhigh Mφ の TNF-α の産生に変化はみられなかったが、高濃度の
230 nMではF4/80lowCD11bhigh MφのTNF-αの産生が抑制される傾向がみられた
(図9 C-F、n=4)。しかし、有意な差はつかなかった。
F4/80lowCD11bhigh MφのMCP-1の産生に関しては、CpG-ODNでの細胞刺激や ダパグリフロジン投与によって有意な変化はみられなかった(図10 A-F、n=4)。
(7)単細胞浮遊液全体でのTNF-αおよびMCP-1のmRNA
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単細胞浮遊液全体では、in vitroにおけるCpG-ODNでの細胞刺激により、TNF- α の mRNA は増加した。ダパグリフロジン投与により濃度依存的に TNF-α の
mRNAは減少し、特に 23 nMおよび230 nMでは統計学的に有意差がみられた
(図 11 A、n=4)。
同様に、CpG-ODNでの細胞刺激により、MCP-1 のmRNAも増加した。ダパ グリフロジン投与により、23 nMおよび230 nMでMCP-1のmRNA が減少する 傾向がみられた(図11 B、n=4)。
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第3章 1型糖尿病モデルマウスにおけるSGLT2阻害薬の膵島炎抑制作用(研 究2)
第1節 背景および目的
1型DMは、インスリンを産生する膵臓のβ細胞の免疫反応を介した破壊に よって引き起こされると考えられている(27)。有病率は人種や地域により差は
あるが、全DM患者のうち5-10%が1型DMであると推測されている(28)。1 型DMは、食事前のインスリンと基礎インスリンの複数回の注射、または継続 的な皮下注射で治療するが、近年、インスリン注射にSGLT2阻害薬を併用す ることで、1型DM患者のHbA1c、体重、1日の総インスリン量および低血糖 イベントが減少する可能性が注目されている(29, 30)。一方、アメリカ糖尿病協
会(American Diabetes Association; ADA)は1型DMに対するSGLT-2阻害薬の 使用について、ケトアシドーシスのリスクがあることを警告した(31)。SGLT2
阻害薬が1型DMに対してどのような影響を与えるかは今後さらなる議論の余 地があるが、SGLT2阻害薬により膵のβ細胞が保護されたという報告もある (32)。
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本研究では、SGLT2阻害薬のダパグリフロジンを1型DMモデルマウスであ るNODマウスに投与して、膵島炎およびその主要因であるT細胞の細胞障害 性に対して、どのような効果があるのか検証した。
19 第2節 材料と方法
(1)実験動物
1型DMモデルマウスであるNODマウス(メス、8週齢)(日本クレア)を 購入した。全てのマウスは12時間の明暗サイクルで制御された条件下で飼育さ れ、食餌と飲水は自由摂取とした。治療群にはダパグリフロジン(Chemscene)
0.5 mg/kg/日の用量で投与した。
本研究における実施計画は、防衛医科大学校における動物実験倫理委員会の 承認を事前に得た(承認番号:17053)。全ての実験は、防衛医科大学校および 関連する実験動物使用に関するガイドラインと規制に従って実施し、動物の苦 痛を最小限に抑えるように努めた。
(2)DM発症の観察
糖尿病発症前のNODマウスにダパグリフロジン(0.5mg/kg/日、n = 21)また はプラセボ(n = 21)を13週齢から投与し、糖尿病の発症率を比較した。血糖値 を1週間毎に測定し(メディセーフフィット、テルモ)、250mg/dL以上を2週 連続で記録した時点を糖尿病発症と定義した。
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(3)病理組織
19 週齢時に DM未発症の NODマウス(コントロール群:n=9、ダパグリフ ロジン群:n=9)を麻酔下で安楽死させ、膵臓を採取した。ホルマリン固定パラ フィン包埋切片を作製し、hematoxylin-eosin(HE)染色を行い、膵島炎の程度を 評価した。膵島炎の程度は、各マウス30個の膵島を次のようにスコア化し、そ れぞれの群で膵島炎スコアの分布を検証した。
0:正常
1:単核球が膵島周囲と膵管へ浸潤しているが、膵島への浸潤は認められない。
2:単核球の浸潤が膵島の50%未満に認められる。
3:単核球の浸潤が膵島の50%以上に認められる。
(4)リアルタイムRT-PCR 第2章と同様の方法で行った。
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(5)FCM
30週齢時に麻酔下でマウスを安楽死させ、膵所属リンパ節を採取した。第2 章と同様の方法でそれぞれ単細胞浮遊液を精製し、T細胞について解析した。
T細胞の染色には、PE標識抗CD3抗体(12-0037-42、eBioscience)、PE標識 抗CD4抗体(12-0041-82、eBioscience)、PE標識抗CD8抗体(12-0083-81、
eBioscience)を使用した。BD FACS Canto TMⅡ(BD Biosciences)を使用し解析 した。
(6)T細胞のグルコース取り込み能の解析
T細胞の刺激には、ホルボール 12-ミリスタート13-アセタート(PMA、P-8139、
Sigma-Aldrich、MO、USA)40ng/mL、およびイオノマイシン(I-0634、Sigma-Aldrich)
4µg/mLを使用した。その他、第2章と同様の方法で行った。
(7)統計分析
全ての統計分析はJMP(version 14; SAS Institute、NC、USA)を使用した。全 てのデータは、平均値±標準誤差(standard error; SE)で表現した。 p<0.05を統 計的に有意であると判定した。
22 第3節 結果
(1)ダパグリフロジンの1型DM発症抑制効果
13週齢時点(DM発症前)の血糖値に関しては、コントロール群とダパグリ フロジン群の間に統計的に有意差はなかった(155±22mg/dL vs. 146±
20mg/dL)。
DMの発症率は19週齢の時点でコントロール群よりもダパグリフロジン群で 有意に低かった(33.3% vs. 4.8%、図12)。
さらに膵島炎の程度は、コントロール群よりもダパグリフロジン群で軽度で ある傾向がみられた(図13)。
(2) ダパグリフロジンによるT細胞のグルコース取り込みの抑制と、IFNγ mRNA発現の抑制
30週齢のNODマウス10匹中2匹において、膵所属リンパ節でCD4+SGLT2+ T細胞およびCD8+SGLT2+ T細胞の存在が確認された(図14)。
In vitroにおいてPMAおよびイオノマイシンでの刺激により、T細胞(CD3+ 細胞)のグルコース取り込みは増加した。ダパグリフロジンを投与したこと
23
で、T細胞のグルコースの取り込みが抑制される傾向がみられたが有意差はな
かった(図15)。
膵所属リンパ節の単細胞浮遊液全体では、in vitroにおけるPMAおよびイオ ノマイシンでの刺激により、IFNγのmRNAの発現は増加した。ダパグリフロ ジンを投与したことで、IFNγのmRNAの発現が減少する傾向がみられた(図 16)。
24 第4章 考察
研究1 で得られた主な新知見は次の3点である。すなわち、①SGLT2 阻害薬 ダパグリフロジンにより、db/dbマウスの尿中アルブミンが減少し、腎の炎症が
軽減した。②腎Mφの一部にSGLT2というトランスポーターをもつMφがあり、
炎症性Mφに対するSGLT2+ Mφの割合が、SGLT2阻害薬により低下した。③腎
Mφ のグルコース取り込みが、SGLT2阻害薬により減少し、また TNF-α の産生 が減少する傾向を示した。これらの結果は、DKDに対するSGLT2阻害薬の腎保 護作用によるものであると考える。
過去の研究においても、SGLT2阻害薬による治療により腎 Mφ の減少がみら
れたが、SGLT2阻害薬の血糖降下作用でDKDが改善したことにより、間接的に
DKDの進展が抑制され、腎の炎症が軽減したことは否定できない(12)。そこで、
本研究においては、ダパグリフロジンの血糖降下作用とは独立した直接的な抗 炎症作用に焦点を当てて実験を行った。先行研究では、db/dbマウスに対しダパ
グリフロジン 0.1-1.0 mg/kg/日の容量を投与したことで腎保護効果がみられ、本 研究の予備実験において中間用量である0.5 mg/kg/日でも同様に腎保護効果がみ られたため、0.5 mg/kg/日の用量でマウスに投与した(15)。本研究では、腎のMNC を採取し FCM で解析したことにより、腎の F4/80lowCD11bhigh Mφ の一部に
25
SGLT2陽性のMφが存在することが示された。過去にマウス腹水のMφにSGLT2 が存在するという報告はあったが(17)、腎 Mφ に SGLT2 が存在するという報告 はない。
本研究は、SGLT2が腎 Mφ に存在することを示した初めての研究である。し かし、全てのdb/dbマウスでSGLT2+ Mφが認められたわけではない。一部のマ ウスにSGLT2+ Mφが存在し、それ以外のマウスにはSGLT2+ Mφがほとんど存 在しないという理由に関して明らかにすることはできなかったが、次のように
推測している。すなわち、当初SGLT2は腎の近位尿細管上皮細胞に特異的に存 在すると考えられてきたが、近年、SGLT2が膵のα細胞や、様々な癌細胞など、
腎以外の様々な臓器・細胞に発現していると報告されている(33-38)。さらに、Mφ は不均一かつ多様であり、所属する組織・臓器や役割に応じて異なる表面抗原を
もつ(39, 40)。このことから、一部のMφにもSGLT2が存在し得るのではないか と推測した。
一方、腎の尿細管上皮細胞が尿細管腔中のアルブミン・蛋白質や酸化ストレス
などの負荷によって、Mφ様細胞に分化形質転換したという興味深い報告がある
(41, 42)。したがって、SGLT2が元々存在する近位尿細管上皮細胞が、DKDの悪
化によりストレスが加わったことで Mφ 様細胞に分化形質転換したという可能 性がある。さらに、この Mφ 様細胞が炎症性サイトカインやケモカインを産生
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し、DKDをさらに悪化させるというような悪循環を形成することも示唆される。
しかしながら、F4/80lowCD11bhigh Mφの表現型はM1型Mφが主であるという 報告はあるが(23, 24)、本研究ではM2型MφがDKDにどのような影響を与えて いるか十分な検討はできていない。また、分化形質転換したMφ様細胞のM1/M2 型マクロファージを含め機能についての報告はない。今後、in vitro で尿細管上
皮細胞に酸化ストレスやグルコースなどの負荷を加え、Mφ様細胞に分化形質転 換するか(F4/80などMφに特異的なマーカーの証明)検証し、さらにその細胞 のグルコース取り込みやサイトカイン産生について検討していく予定である。
本研究では、Mφのグルコースの取り込みおよび炎症性サイトカインやケモカ インの産生について主にin vitroで検討した。DKDの病態の1つにミトコンドリ ア障害が挙げられ(43)、ミトコンドリアDNA の漏出によりTLR9 が活性化して 腎障害を悪化させるという報告があるため(44)、Mφの刺激には TLR9 活性化作
用のあるCpG-ODNを使用した。 Mφの糖代謝や機能に関して、Mφにおける糖
輸送体(glucose transporters-1; GLUT-1)の過剰発現によりグルコースの取り込み が増加することで、炎症性メディエーターが誘導されることが報告されている
(45, 46)。一方、敗血症モデルマウスの初期段階において、マクロファージのグ ルコース取り込みを抑制し解糖系を阻害することで、炎症及び敗血症が軽減し たという報告がある(46)。そこで私は、SGLT2阻害薬でMφの糖代謝を阻害する
27
ことによって、Mφの活性化を抑制することができるのではないかと仮説を立て た。本研究の結果から、SGLT2 阻害薬ダパグリフロジンを投与することで、
CD11bhighSGLT2+ Mφ によるグルコースの取り込みが抑制され、Mφ の機能抑制 が誘発され、TNF-α産生が抑制傾向になったと考えている。さらに、ダパグリフ ロジンによりF4/80lowCD11bhigh Mφに対するSGLT2+ Mφの割合が減少したこと から、ダパグリフロジンには Mφ の分化や遊走を抑制する作用があると推測し ている。これらの結果は、ダパグリフロジンがMφの糖代謝を抑制し、炎症を誘 発する機能を直接的に軽減させることを示唆している。
本研究において、TNF-α および MCP-1 産生能に関しては、F4/80lowCD11bhigh Mφまたは腎MNC全体での検討であり、そのうちの一部であるCD11bhighSGLT2+ Mφに限定したTNF-αおよびMCP-1産生能に関しては検討することができなか った。SGLT2が存在しないMφとCD11bhighSGLT2+ Mφの間に、どのような機能 や性質の違いがあるのかなど、将来的により詳細な検討が必要である。
DKD における SGLT2 阻害薬の腎保護作用は、多くの研究で報告されている
(13-15)。ダパグリフロジンによる腎保護作用のメカニズムとして、糸球体内圧 の低下や腎の炎症の軽減が考えられている(47)。本研究においても、ダパグリフ ロジンによる治療は尿中アルブミンを有意に減少させ、硬化糸球体の割合も減 少させ、腎保護効果を示すことができた。一方で、他のSGLT2阻害薬であるエ
28
ンパグリフロジンをdb/dbマウスに投与すると、蛋白尿は改善しなかったが腎の 線維化は軽減したという報告もある(48)。 本研究では、逆にアルブミン尿は減 少したが、腎の線維化はほとんど認めなかったという結果であった。異なる結果 であった理由として、線維化の程度や観察期間・使用する薬剤の種類や濃度など が影響していることなどが挙げられる。
本研究ではダパグリフロジン以外のSGLT2阻害薬については検討していない が、これまでの研究において、SGLT2 阻害薬の腎保護作用や抗炎症作用につい
て多くの報告があることから(6-8, 13-15)、他のSGLT2阻害薬にも本研究で示し た腎マクロファージに対する直接的な効果があるのではなかと推測する。今後 の研究課題とし、詳細な検討を行う予定である。
研究2では、DM発症前のNODマウスにダパグリフロジンを投与すると、
DMの発症率は有意に抑制され、膵島炎スコアも低い傾向がみられた。In vitro において、ダパグリフロジンを投与することでT細胞による糖の取り込みが抑 制される傾向がみられ、膵所属リンパ節の単細胞浮遊液全体IFNγ mRNAの 発現も低下する傾向がみられた。T細胞の組織傷害性において糖の取り込みが 重要であることは報告されており、グルコースが少ない微小環境では、腫瘍浸 潤性T細胞は好気性解糖が限定され殺腫瘍活性が抑制される(49)。本研究にお いて、膵所属リンパ節のT細胞の一部にSGLT2が発現していたことを初めて
29
見出した。ダパグリフロジンがSGLT2からの糖取り込みを抑制することでT 細胞による膵島障害性を弱めて、糖尿病発症を抑制する可能性がある。1型
DM患者にSGLT2阻害薬を投与することは、ケトアシドーシスの発症に注意を
払う必要はあるが、細胞障害性T細胞の機能を抑制し、インスリン依存状態へ の移行を遅らせることができる場合があると考えられ、臨床的にも効果が期待 される。
研究2においては、T細胞のSGLT2陽性率やグルコース取り込み、IFNγ産 生に関して十分な統計学的解析ができておらず、将来的により詳細な検討が必 要である。
30 第5章 結論
2型DMモデルマウスに対して、ダパグリフロジンを投与することで、尿中ア ルブミンは減少し、腎の炎症も軽減した。腎の炎症性Mφの一部にSGLT2が存 在することが示され、ダパグリフロジンにより腎 Mφ のグルコース取り込みが 減少した。さらに、ダパグリフロジンにより腎Mφ の TNF-αの産生が抑制され る傾向が示された。
DM 発症前の 1 型 DM モデルマウスにダパグリフロジンを投与することで、
膵島炎が軽減され、DMの発症を抑制することができた。膵所属リンパ節のT細 胞の一部にSGLT2が存在することが示された。ダパグリフロジンによりT細胞 のグルコース取り込みが減少し、膵所属リンパ節の単細胞浮遊液全体でのIFNγ
mRNA発現が抑制される傾向がみられた。
以上により、2型 DM の腎および 1型 DM の膵におけるダパグリフロジンの 免疫細胞を介した抗炎症作用が示唆された。
31 謝辞
本稿を終えるにあたり、防衛医科大学校免疫微生物学講座教授 関修司先生、
衛生学公衆衛生学講座教授 角田正史先生をはじめ諸先生方々には、研究環境 面での御配慮を頂きました。厚く御礼申し上げます。
本研究に際し貴重な御指導、御校閲を賜りました防衛医科大学校腎臓内分泌 内科学講座教授 熊谷裕生先生に深く感謝申し上げます。
また、御助言、御協力を賜りました腎臓内分泌内科学講座准教授・大島直紀先 生をはじめとする同教室の諸先生方、並びに秘書の菰田啓子さんに深く感謝の 意を表します。
本研究の主旨は、第62回日本腎臓学会総会(2019年、名古屋)において発表 した。
32 略語一覧
ADA: American Diabetes Association CKD: chronic kidney disease
DAB: 3,3'-diaminobenzidine tetrahydrochloride
DKD: diabetic kidney disease DM: diabetes melltius
ESKD: end stage kidney disease FCM: flow cytometry
FSC: forward scatter
GLUT-1: glucose transporters-1 HE: hematoxylin-eosin
LPF: low power field
MCP: monocyte chemotactic protein MNC: mononuclear cell
PAS: Periodic Acid-Schiff
SGLT2: sodium-glucose cotransporter 2 SSC: side scatter
TNF: tumor necrosis factor
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38 表1: 治療開始前(8週齢)の各群のデータ
db/m (n=4)
db/m+Dapa.
(n=4)
db/db (n=8)
db/db+Dapa.
(n=8) 体重(g) 25.8±1.9 24.8±0.9 41.6±0.6* 40.7±0.6* 血糖値(mg/dL) 181±6 177±4 278±54* 267±42* 尿中アルブミン(µg/day) 38±18 34±21 501±47* 576±38*
db/m:非糖尿病モデルマウス
db/db:2型糖尿病モデルマウス
結果は平均値±標準誤差で表した。 *p<0.05 vs. db/m
39 図1. 食餌摂取量および体重
db/m:n =4、db/m+Dapa.:n =4、db/db:n =8、db/db+Dapa.:n =8。
(A)1週間の平均食餌摂取量を示した。db/dbマウスの方が db/m マウスより も有意に多かったが、db/dbマウス+ダパグリフロジン群とdb/dbマウスコント ロール群の間には有意差はみられなかった。結果は平均値±標準誤差で表した。
*p<0.05 vs. db/m
(B)体重を示した。db/dbマウス+ダパグリフロジン群とdb/dbマウスコント ロール群の間に有意差はみられなかった。結果は平均値±標準誤差で表した。* p<0.05 vs. db/m
40 図2. 血液および尿の解析
db/m:n =4、db/m+Dapa.:n =4、db/db:n =8、db/db+Dapa.:n =8。
(A)血糖値を示した。db/dbマウスはdb/mマウスと比較して有意に高値であっ
た。16週齢と20週齢においてdb/dbマウス+ダパグリフロジン群がdb/dbマウ スコントロール群よりも有意に低値であった。結果は平均値±標準誤差で表し た。*p<0.05 vs. db/m, ♰p<0.05 vs. db/db.
41
(B)血清クレアチニン値を示した。20週齢において db/dbマウスはdb/m マ ウスと比較して高値である傾向があった。db/dbマウス+ダパグリフロジン群は
db/dbマウスコントロール群よりも低値である傾向がみられたが、両群間に有意
差はみられなかった。
(C)尿中アルブミンを示した。db/dbマウスはdb/mマウスと比較して有意に
多かった。20週齢においてdb/dbマウス+ダパグリフロジン群でdb/dbマウスコ ントロール群と比較し有意に少なかった。結果は平均値±標準誤差で表した。* p<0.05 vs. db/m, ♰p<0.05 vs. db/db.
42
図3.糸球体病変におけるダパグリフロジンの効果(20週齢)
db/m:n =4、db/m+Dapa.:n =4、db/db:n =8、db/db+Dapa.:n =8。
(A)腎切片のPAS染色の代表的な写真を示した。400倍。
(B)db/dbマウスの全糸球体に対する硬化糸球体の割合は、db/mマウスと比較
し有意に高かった。db/dbマウス+ダパグリフロジン群ではdb/dbマウスコント ロール群と比較し有意に低かった。 結果は平均値±標準誤差で表した。*p<0.05 vs. db/m, ♰p<0.05 vs. db/db.
43
図4.間質病変におけるダパグリフロジンの効果(20週齢)
db/m:n =4、db/m+Dapa.:n =4、db/db:n =8、db/db+Dapa.:n =8。
(A)腎切片のMasson Trichrome染色の代表的な写真を示した。100倍。
(B)腎間質の線維化の面積率に関しては、各群間で差はみられなかった。結果 は平均値±標準誤差で表した。
44 図5.免疫組織化学によるF4/80染色(20週齢)
db/m:n =4、db/m+Dapa.:n =4、db/db:n =8、db/db+Dapa.:n =8。
(A)糸球体の代表的な写真を示した。400倍。糸球体にF4/80+細胞(赤矢印)
の浸潤がみられた。
(B)db/dbマウスの糸球体へのF4/80+細胞の浸潤は、db/mマウスと比較し有意
に高度であった。また、db/dbマウスコントロール群と比較し、db/dbマウス+ダ パグリフロジン群で有意に軽度であった。結果は平均値±標準誤差で表した。
45
*p<0.05 vs. db/m, ♰p<0.05 vs. db/db.
(C)尿細管間質の代表的な写真を示した。100倍。尿細管間質にF4/80+細胞(赤 矢印)の浸潤がみられた。
(D)db/dbマウスの尿細管間質へのF4/80+細胞の浸潤は、db/mマウスと比較し 有意に高度であった。また、db/dbマウスコントロール群と比較し、db/dbマウス
+ダパグリフロジン群で有意に軽度であった。結果は平均値±標準誤差で表し た。*p<0.05 vs. db/m, ♰p<0.05 vs. db/db.
46 図6.腎組織のリアルタイムRT-PCR(20週齢)
db/m:n =4、db/m+Dapa.:n =4、db/db:n =8、db/db+Dapa.:n =8。 腎皮質における(A)TNF-α、(B) MCP-1のmRNA発現を示した。
腎のTNF-αおよびMCP-1 のmRNAは、db/dbマウスにおいて db/mマウスと比 較し、発現が高い傾向がみられた。また、db/dbマウス+ダパグリフロジン群で
db/dbマウスコントロール群よりも発現が低い傾向がみられたが、統計学的に有
意差はみられなかった。結果は平均値±標準誤差で表した。
47
48
図7.炎症性MφにおけるSGLT2陽性Mφの存在とその割合
12週齢の時点で、db/dbマウスコントロール群およびdb/dbマウス+ダパグリ フロジン群の腎の単細胞浮遊液を精製し、Flow cytometry (FCM)で解析し た。
(A) 腎の単一細胞浮遊液を前方散乱光シグナル(forward scatter; FSC)と側 方散乱光シグナル(side scatter; SSC)によりプロットし、好中球を除外するた
めにC1でゲートした。
(B)C1でゲートした細胞のうち、CD45陽性の細胞集団(C2)をゲートし た。さらに、(C)db/dbマウスコントロール群および(D)db/dbマウス+ダ
パグリフロジン群それぞれにおいて、CD45陽性細胞(C2)をさらにF4/80お よびCD11bでプロットした。
(E)db/dbマウスコントロール群および(F)db/dbマウス+ダパグリフロジン
群の、F4/80lowCD11bhigh Mφ(C3、C4)におけるSGLT2陽性Mφの存在を示唆 する代表的な図。抗SGLT2抗体で染色したMφ(赤色)とアイソタイプ
(negative control)で染色したMφ(灰色)を比較。
(G)F4/80lowCD11bhigh MφにおいてSGLT2+ Mφが1%以上存在するマウス は、db/dbマウスコントロール群では42.9%(16匹中6匹)であったのに対し
49
て、db/dbマウス+ダパグリフロジン群では20.0%(15匹中3匹)であった。* p<0.05 vs. db/db.
(H)SGLT2+ MφがF4/80lowCD11bhigh Mφにおいて1%以上存在するマウスを 使用し、SGLT2+ MφのF4/80lowCD11bhigh Mφに対する割合を解析した。db/db マウスコントロール群(n=6)では12.1%であった一方、db/dbマウス+ダパグ リフロジン群(n=3)では5.81% と有意に少なかった。結果は平均値±標準誤 差で表した。*p<0.05 vs. db/db.
50
51
図8.CD11bhighSGLT2+ Mφによるグルコースの取り込みとダパグリフロジン投 与によるグルコース取り込みの抑制
腎の単細胞浮遊液を精製した後、細胞をin vitroで20 ng/mlのCpG-ODNで刺激 した。CD11bhighSGLT2+ Mφによるグルコース取り込みを解析した。
(A) CpG(-)、Dapa.(-)
(B-E)CpG-ODN で刺激された CD11bhighSGLT2+ Mφ によるグルコースの取り 込み(赤色)の代表的な図。CpG-ODNによる刺激なしの場合(灰色)との比較。
(B)CpG(+)、Dapa.(-)
(C)CpG(+)、Dapa. 2.3 nM
(D)CpG(+)、Dapa. 23 nM
(E)CpG(+)、Dapa. 230 nM
(F)CD11bhighSGLT2+ Mφによるグルコースの取り込みは、ダパグリフロジンを 投与したことで濃度依存的に抑制された。
n=4。結果は平均値±標準誤差で表した。*p<0.05 vs. CpG (-), Dapa. (-). ♰p<0.05 vs.
CpG (+), Dapa. (-).
52
53
図9.F4/80lowCD11bhigh MφによるTNF-α産生に対するダパグリフロジンの効果
TNF-α産生についてFCMで解析した。
(A)CpG(-)、Dapa.(-)
(B-E)CpG-ODNで刺激されたF4/80lowCD11bhigh MφによるTNF-α産生(赤色)
の代表的な図。CpG-ODNによる刺激なしの場合(灰色)との比較。
(B)CpG(+)、Dapa.(-)
(C)CpG(+)、Dapa. 2.3 nM
(D)CpG(+)、Dapa. 23 nM
(E)CpG(+)、Dapa. 230 nM
(F)ダパグリフロジン投与により、2.3 nMおよび23 nMではF4/80lowCD11bhigh Mφ の TNF-α 産 生 に 変 化 は み ら れ な か っ た が 、 高 濃 度 の 230 nM で は F4/80lowCD11bhigh MφのTNF-αの産生が抑制される傾向がみられた。しかし、有 意差はなかった。n=4。結果は平均値±標準誤差で表した。*p<0.05 vs. CpG (-), Dapa.
(-).
54
55
図10.F4/80lowCD11bhigh MφによるMCP-α産生に対するダパグリフロジンの効 果
MCP-1産生についてFCMで解析した。
(A)CpG(-)、Dapa.(-)
(B-E)CpG-ODNで刺激されたF4/80lowCD11bhigh MφによるTNF-α産生(赤色)
の代表的な図。CpG-ODNによる刺激なしの場合(灰色)との比較。
(B)CpG(+)、Dapa.(-)
(C)CpG(+)、Dapa. 2.3 nM
(D)CpG(+)、Dapa. 23 nM
(E)CpG(+)、Dapa. 230 nM
(F)CpG-ODNでの細胞刺激やダパグリフロジン投与によって、MCP-1の産生 に有意な変化はみられなかった。n=4。結果は平均値±標準誤差で表した。
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図11.単細胞浮遊液全体でのTNF-αおよびMCP-1のmRNAの発現
(A)CpG-ODNでの細胞刺激により、TNF-αのmRNAは増加した。ダパグリフ
ロジン投与により濃度依存的に TNF-α の mRNA は減少し、特に 23 nM および
230 nMでは統計学的に有意差がみられた。n=4。結果は平均値±標準誤差で表し
た。
*p<0.05 vs. CpG (-), Dapa. (-). ♰p<0.05 vs. CpG (+), Dapa. (-).
(B)CpG-ODNでの細胞刺激により、MCP-1のmRNAは増加した。ダパグリフ ロジン投与により23 nMおよび 230 nMでMCP-1の mRNA が減少する傾向が みられた。n=4。結果は平均値±標準誤差で表した。
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図12.ダパグリフロジン投与による糖尿病発症の抑制
NOD:n =21、NOD+Dapa.:n =21。
各群のDM未発症のNODマウスの割合をカプランマイヤー曲線で表した。DM の発症率は、19 週齢の時点でコントロール群よりもダパグリフロジン群で有意 に低かった。
*p<0.05 vs. NOD
58 図13.ダパグリフロジンによる膵島炎の抑制
(A)膵島の代表的な組織所見。200倍。コントロール群で膵島へのリンパ球 浸潤が高度であったのに対し、ダパグリフロジン群では軽度であった。
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(B) コントロール群(n=9)およびダパグリフロジン群(n=9)における膵島炎
スコア(0:正常。1:単核球が膵島周囲と膵管へ浸潤しているが、膵島へ の浸潤は認められない。2:単核球の浸潤が膵島の50%未満に認められる。
3:単核球の浸潤が膵島の50%以上に認められる。)の分布。コントロー
ル群に比較し、ダパグリフロジン群で膵島炎スコアが低い傾向がみられ た。
60 図14.膵所属リンパ節のFCM
30週齢の10匹中2匹のNODマウスにおいて、膵所属リンパ節でCD4+SGLT2+ T細胞(A、Q2)およびCD8+SGLT2+ T細胞(B、Q2)の存在が確認された。
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図15.In vitroにおけるT細胞のグルコース取り込みに対するダパグリフロジ ンの効果
n=3。
PMAおよびイオノマイシンでの刺激により、T細胞のグルコース取り込みは増 加した。ダパグリフロジンを投与したことで、T細胞のグルコースの取り込み が抑制される傾向がみられた。
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図16.単細胞浮遊液全体におけるIFNγのmRNAの発現におけるダパグリフ ロジンの効果
n=3。
膵所属リンパ節の単細胞浮遊液全体では、in vitroにおけるPMAおよびイオノ マイシンでの刺激により、IFNγのmRNAの発現は増加した。ダパグリフロジ ンを投与したことで、IFNγのmRNAの発現が減少する傾向がみられた。