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安武 優一

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題 目

消化管粘膜における尿酸の保護作用の検討

やすたけ ゆういち

安武 優一

(消化器病学専攻)

防衛医科大学校

平成 28 年度

(2)

目 次

第1章 緒言 4

第2章 インドメタシン小腸障害モデルマウスにおける経口尿酸投与の検討 第1節 目的 8

第2節 方法 8

第3節 結果 10

第4節 小括 10

第3章 デキストラン硫酸ナトリウム大腸炎モデルマウスにおける尿酸の経肛 門的投与の検討 第1節 目的 11

第2節 方法 11

第3節 結果 12

第4節 小括 13

第4章 尿酸前駆体のインドメタシン小腸障害への作用および前駆体からの尿 酸合成阻害による影響の検討 第1節 目的 14

第2節 方法 14

第3節 結果 16

第4節 小括 17

(3)

第5章 インドメタシン小腸障害に対する尿酸の作用部位の検討

第1節 目的 18

第2節 方法 18

第3節 結果 19

第4節 小括 20

第6章 Caco-2細胞株を用いたヒト小腸上皮モデルにおける尿酸の抗酸化作用

の検討

第1節 目的 21

第2節 方法 21

第3節 結果 23

第4節 小括 24

第7章 考察 25

第8章 結論 28

謝辞 29

引用文献 30

図表 39

(4)

第1章 緒言

尿酸は分子式 C5H4N4O3,分子量 168 の弱酸性の有機化合物である.食餌か ら摂取される核酸や体内で合成される核酸のうちプリン体骨格を有する核酸の 代謝産物として合成される.尿酸はキサンチンオキシダーゼによりキサンチン やヒポキサンチンから合成された後,ほとんどの哺乳類ではウリカーゼにより さらに生体にとって無害なアラントインへ代謝される(図 1).ヒトを含む霊長 類の一部は進化の過程でウリカーゼを喪失しており【1】,ヒトでは尿酸がプリ ン体の最終代謝産物になる.

健常なヒトにおいて生体内には通常約1200mg の尿酸プールが存在しており,

尿酸産生量はおおよそ700mg/日であり,このうち約500mg/日が尿中に排泄され,

約 200mg/日が汗,消化液などに排泄される.ヒトの血液中の尿酸の基準値は男

性で 4.0mg/dL(240mM)から 6.5mg/dL(390mM),女性で 3.0mg/dL(180mM)

から 5.0mg/dL(300mM)とされているが,ウリカーゼを有しているマウスの血

液中の尿酸は0.5mg/dL(30mM)から0.8mg/dL(50mM)程度である.よく知ら れているように高尿酸血症は痛風のリスクファクターであり,また肥満【2,3】, 高血圧【4,5】,インスリン抵抗性【6】,心血管障害【7-9】,との関連も指摘さ れている.

これまで高尿酸血症の成因としては,尿酸産生量の増加(尿酸産生過剰型),

尿中尿酸排泄能の低下(尿酸排泄低下型)および両者の混在した混合型に大別 されてきた(図2).近年ゲノムワイド関連解析(Genome-wide association study:

GWAS)による血中尿酸異常症との関連が明らかにされた疾患感受性遺伝子のな かに薬物排出トランスポーターの 1 つである ATP-binding cassette transporter

sub-family G member2 (ABCG2,別名BCRP)がある.当校の分子生体制御学講

座らによりABCG2が尿酸輸送を行うこと,ならびにABCG2遺伝子の機能半減

(5)

型変異Q141K(rs2231142)により尿酸輸送が減少すること,ABCG2遺伝子にお いて機能低下をきたす頻度の高い遺伝子型の組み合わせ(Q126X(rs72552713)

と Q141K)が,痛風の主要な病因であることが報告された【10】.ABCG2 は尿

細管への尿酸輸送を行うトランスポーターの 1 つとして認識されてきたが,

Abcg2 ノックアウトマウスを用いた実験では血清尿酸上昇とともに尿中尿酸排

泄量の増加を認めた.この予想に反する現象の仮説としてABCG2が腎以外にも 発現し,腎外排泄の低下を引き起こす結果高尿酸血症となり,ABCG2以外のト ランスポーターを介して尿中排泄量が増加しているのではないかとされた.そ して腸管上皮にABCG2が多数発現し,腸への排泄がABCG2の主要な尿酸代謝 の経路であることが報告され【11】,高尿酸血症の成因として従来尿酸産生過剰 型とされてきた集団には腎外排泄低下型と真の尿酸産生過剰型が存在すること が示された(図2).

尿酸は高尿酸血症や高血圧などと関連がある一方で,抗酸化作用を有してお り一重項酸素や活性酸素,パーオキシナイトライトなどの除去作用がある【12】. ヒトの血中に最も高濃度で存在する抗酸化物質は尿酸であるとされ【13,14】,

またヒト血清中の抗酸化物質全体の約半分を尿酸が担っているともされている

【13】.生体内での作用としてパーオキシナイトライトによる脂質過酸化および 蛋白質過酸化の抑制作用などが知られている【15】.

進化の過程でウリカーゼを消失することにより獲得した尿酸の持つ抗酸化作 用は生体内で重要な意義を持つと予想されているものの,実際に,その有用性 が報告されている疾患はあまり多くはない.その理由の一つとして尿酸は炎症 促進作用を有することが挙げられる.例えば一酸化窒素の産生低下を招いて血 管内皮細胞障害を起こす作用【16】,ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリ

ン酸(NADPH)オキシダーゼの活性化に関連して活性酸素を増加させる作用

【17】,が知られており,尿酸が抗酸化作用と炎症促進作用の両義的な働きを持

(6)

つ存在であることが,生理的意義の解釈を難しくしている.

中枢神経疾患領域においては尿酸の有用性が示唆されており,パーキンソン 病では高尿酸血症が病気の進行を遅らせるという保護的な効果が報告されてお り【18,19】,また多発性硬化症では血中の尿酸値が低い患者の方がより疾患活 動性が高くなるとの報告があり【20】,その動物モデルである実験的アレルギー 性脳脊髄炎マウスにおいて血清尿酸値の上昇が症状を軽減するとの報告がされ ている【21,22】.

これまで尿酸が消化管で排泄されているとの知見が乏しかったため,消化器 疾患と尿酸との関連に関する報告は少ない.短腸症候群で尿酸アンモニウム結 石が増加するとの報告や【23】,乳児期のロタウイルス感染患者において尿酸ア ンモニウム結石による腎後性急性腎不全を来したとの報告がある【24,25】.

ABCG2により腸管上皮から尿酸が排泄されているため消化管は常に尿酸に曝露

されていると考えられ,尿酸が中枢神経疾患でみられるような保護的な作用を している可能性はあるが,消化器疾患と尿酸との関連は調べ得た限り報告はな い.

小腸は約6mの長さ,表面積は約250m2におよぶ最大の腸管臓器であるが,口 からも肛門からも離れた位置にあるため検査をすることが困難であり,未知の ことが多い臓器である.近年カプセル内視鏡やバルーン内視鏡の発明により小 腸の検査が可能となり,その普及により新しい知見が得られるようになった.

その一つにこれまで考えられていた以上に小腸潰瘍が多いということががある.

抗血小板薬や非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:

NSAIDs)を内服していない集団においても無症状の小腸アフタや小腸潰瘍が7%

に認められ【26】,超高齢化社会に伴い増大している低用量アスピリン内服患者 では 30-63.6%に【27-29】,NSAIDs 長期内服患者においては 29-68%に認められ た【26,30】,と報告されており,注目度が増している.一方治療の観点から

(7)

H2受容体アンタゴニストやプロトンポンプインヒビターが有効な胃十二指腸潰 瘍とは異なり,小腸潰瘍の治療については有効な薬剤が乏しい.NSAIDsによる 消化管粘膜障害や潰瘍形成においては 1.薬剤による直接的粘膜障害,2.腸管 透過性の亢進【31,32】,3.TLR4やTLR2を介した腸内細菌の関与などが主要 な機序として想定されているが【33,34】,それ以外に酸化ストレス障害が関与 も報告されている【35】.消化管へ排泄された尿酸の抗酸化作用は低用量アスピ

リンや NSAIDs による消化管粘膜障害の病態進展に関与する可能性も想定され

る.

以上の背景から,尿酸の消化管における役割を検討することが消化器疾患の さらなる病態解明につながると考えた.

(8)

第2章 インドメタシン小腸障害モデルマウスにおける経口尿酸投与の検討

第1節 目的

尿酸には炎症促進作用と抗酸化作用による保護作用が存在すると考えられる が,消化管においてはどのように作用するかは明らかではない.マウスによる 実験的腸炎モデルを用いて尿酸の消化管での役割及び作用を検討した.小腸障 害のモデルとしてインドメタシン(Indomethacin: IND Wako 093-02473,Lot.

PEM1480)を用いて実験を行った.マウスは尿酸を代謝するウリカーゼを有し

ているため血中尿酸濃度は著しく低くなるので,尿酸の小腸障害モデルへの影 響を検討するにあたり,マウスの生体内で尿酸がアラントインへ合成されるこ とを阻害する目的でウリカーゼの阻害剤であるオキソン酸カリウム(potasium oxonate:KOX Sigma-Aldrich 156124,Lot.STBD2638V)を用いた.

第2節 方法

(1)インドメタシン小腸障害モデル

C57BL/6Jマウス(8週齢,雄)を実験に使用した.インドメタシンを10mg/kg

で腹腔内投与し,24時間後に安楽死させて小腸を採取した【34】.実験は防衛医 科大学校実験動物倫理委員会の承認を得て行った (承認番号 13069).マウスの 飼育は防衛医科大学校実験動物使用に関するガイドラインに従い,通常のマウ ス飼料および自由飲水にて行った.

(2)ウリカーゼ阻害

C57BL/6Jマウス(8 週齢,雄)に対しオキソン酸カリウムを 250mg/kg で 12

(9)

時間毎に腹腔内投与しウリカーゼを阻害した【36,37】.インドメタシン投与30 分前よりオキソン酸カリウムの投与を開始した.オキソン酸カリウムは水に難 溶性のため0.5%カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)に懸濁 して投与した.実験は防衛医科大学校実験動物倫理委員会の承認を得て行った (承認番号 13069).マウスの飼育は防衛医科大学校実験動物使用に関するガイド ラインに従い,通常のマウス飼料および自由飲水にて行った.

(3)尿酸投与

C57BL/6Jマウス(8週齢,雄)に対し尿酸(uric acid:UA,Sigma-Aldrich U2625,

Lot.BBJ8674V)を250mg/kgで12時間毎に経口投与した【38,39】.インドメ

タシン投与30分前から尿酸の投与を開始した.尿酸は水に難溶性のため0.5%カ ルボキシメチルセルロースに懸濁して投与した.実験は防衛医科大学校実験動 物倫理委員会の承認を得て行った (承認番号 13069).マウスの飼育は防衛医科 大学校実験動物使用に関するガイドラインに従い,通常のマウス飼料および自 由飲水にて行った.

(4)肉眼的検討

小腸の肉眼的所見については,安楽死の 30 分前に 1%エバンスブルー200μl を静脈内投与し,摘出した小腸に漏出したエバンスブルーによる青斑(blue spot)

を計測し,これをインドメタシンによる潰瘍面積として評価した【34,40】.

(5)組織学的検討

小腸の組織学的所見は採取した小腸の一部を 10%ホルマリンで固定しパラフ ィン包埋,切片作成後ヘマトキシリン・エオジン染色し,絨毛(villous),陰窩

(crypt)の高さを測定し小腸絨毛の萎縮をvillous/crypt比(V/C ratio)として計

(10)

測することでインドメタシンによる絨毛の萎縮として評価した【34,40】.

(6)統計処理

各データは平均値±標準誤差で表した.各群の平均値の比較は一元配置分散 分析,Tukey-Kramer 法での多重分析にて行った.p値 0.05 未満を有意差ありと した.

第3節 結果

(1)インドメタシンによる小腸障害に対する尿酸経口投与の検討

対照群(control群n=6),インドメタシン投与群(IND群n=6),尿酸経口投与 群(IND+KOX+UA群n=6)の潰瘍面積はcontrol群1.5±0.6mm2,IND群31.6±

2.1mm2,IND+KOX+UA 群 12.0±1.2mm2(p<0.001)であり(図 3A),オキソ ン酸カリウムと尿酸の経口投与はインドメタシンによる小腸潰瘍を有意に抑制 した.またV/C ratioはcontrol群2.83±0.15,IND群1.15±0.13,IND+KOX+UA

群2.04±0.25(p=0.021)であり,オキソン酸カリウムと尿酸によりインドメタ

シンによる絨毛萎縮が有意に抑制された(図3B,C)

第4節 小括

インドメタシンによる小腸障害は尿酸経口投与により有意に抑制された.

(11)

第 3 章 デキストラン硫酸ナトリウム大腸炎モデルマウスにおける尿酸の経肛 門的投与の検討

第1節 目的

大腸炎のモデルとしてデキストラン硫酸ナトリウム(dextran sulfate sodium:

DSS,Wako 160110, Lot.M7191)投与マウスを用い.大腸における尿酸の作用を

検討した.前述の方法でウリカーゼを阻害した状態で尿酸を経肛門的に投与し その効果を確認した.

第2節 方法

(1)DSS大腸炎モデル

C57BL/6Jマウス(8週齢,雄)を実験に使用した.3%DSS溶液を自由飲水で

5日間投与した後,通常の飲用水を3日間自由摂取させた後に安楽死させて大腸 を採取した【41,42】.実験は防衛医科大学校実験動物倫理委員会の承認を得て 行った (承認番号 13069).マウスの飼育は防衛医科大学校実験動物使用に関す るガイドラインに従い,通常のマウス飼料および自由飲水にて行った.

(2)ウリカーゼ阻害

第2章と同様にオキソン酸カリウムを12時間毎に腹腔内投与した.オキソン 酸カリウムの投与は実験期間中継続して実施した.

(3)尿酸投与

C57BL/6Jマウス(8 週齢,雄)に対し実験開始時より尿酸を 250mg/kgで12 時

(12)

間毎に経肛門的に投与した.尿酸は水に難溶性のため 0.5%カルボキシメチルセ ルロースに懸濁して投与した.実験は防衛医科大学校実験動物倫理委員会の承 認を得て行った (承認番号 13069).マウスの飼育は防衛医科大学校実験動物使 用に関するガイドラインに従い,通常のマウス飼料および自由飲水にて行った.

(4)肉眼的検討

DSS 腸炎モデルにおいては体重の変化,および採取した大腸の長さおよび腸 管の1mm当たりの重量(腸管重量/腸管長比)を測定し,炎症に伴う腸管の肥厚,

短縮の程度で評価した【41,42】.

(5)統計処理

各データは平均値±標準誤差で表した.各群の平均値の比較は一元配置分散

分析,Tukey-Kramer 法での多重分析にて行った.p値 0.05 未満を有意差ありと

した.

第3節 結果

(1)DSS腸炎に対する尿酸の経肛門的投与による大腸の変化

対照群(control 群 n=6),DSS 投与群(DSS 群 n=6),尿酸 注腸投与群

(DSS+KOX+UA群n=6)の腸管長はcontrol群57±3mm,DSS群46±1mm,DSS

+KOX+UA 群 55±5mm(p=0.016)であり(図 4A),DSS 腸炎による腸管の 短縮が尿酸投与により抑制された.腸管重量/腸管長比はコントロール群 9.96±

0.2mg/mm,DSS群13.0±0.8mg/mm,DSS+KOX+UA群9.4±2.1mg/mm(p=0.008) であり(図4B),DSSによる腸管重量/腸管長比の増加も抑制された.

(13)

(2)DSS腸炎に対する尿酸の経肛門的投与による体重変化

尿酸の経肛門的投与及び KOX の腹腔内投与により DSS 腸炎における体重減 少はDSS投与8日目に抑制された(図4C).

第4節 小括

腸管長や重量の変化からはDSS 腸炎において尿酸が保護的に作用することが 示された.また体重の変化も8日目で有意差が得られた.

(14)

第 4 章 尿酸前駆体のインドメタシン小腸障害への作用および尿酸合成阻害に よる影響の検討

第1節 目的

第 2 章,第 3 章の結果より尿酸は小腸および大腸において保護作用を示すこ とが示唆された.小腸には経口投与,大腸には注腸投与であり尿酸の消化管粘 膜への直接曝露の効果が確認された.

ヒトにおいて消化管に存在する尿酸は体内で合成されて ABCG2 により消化 管管腔へ排泄されたものに多くが由来する.そこで尿酸の前駆体であるイノシ ン酸(inosinic acid:IMP,Sigma-Aldrich57510,Lot. BCBC7177V)を投与し血液中 の尿酸の濃度を上昇させるモデルで尿酸の消化管での働きを検討した.マウス はウリカーゼを有しており尿酸前駆体投与だけでは代謝されてしまうので,ウ リカーゼ阻害剤を投与した.さらにイノシン酸やその代謝物であるキサンチン やヒポキサンチンが保護作用を示す可能性を除外するため,キサンチン・ヒポ キサンチンから尿酸を合成する酵素であるキサンチンオキシダーゼをフェブキ ソスタット(febuxostat:FEB,Teijin,Lot.12040K)を用いて阻害する実験を行った.

第2節 方法

(1)インドメタシン小腸障害モデル

第2章と同様にインドメタシン10mg/kg投与し,24時間後に安楽死させて小 腸を採取し,肉眼的所見の検討を行った .

(2)ウリカーゼ阻害

(15)

第2章と同様にオキソン酸カリウムを12時間毎に腹腔内投与し,インドメタ シン投与30分前からオキソン酸カリウムの投与を開始した.

(3)イノシン酸投与

イノシン酸は500mg/kgで12時間毎に腹腔内に投与した【43】.インドメタシ ン投与30分前にイノシン酸投与を開始し,血清尿酸濃度上昇の確認のためイノ シン酸投与開始25時間後に血清尿酸濃度を測定した.実験は防衛医科大学校実 験動物倫理委員会の承認を得て行った (承認番号 13069).マウスの飼育は防衛 医科大学校実験動物使用に関するガイドラインに従い,通常のマウス飼料およ び自由飲水にて行った.

(4)フェブキソスタット投与

フェブキソスタットはマウスでウリカーゼ阻害剤下の血清尿酸値上昇の抑制 が報告されている5–6 mg/kg/日となるよう50μ/mlの水溶液として自由摂取させ た【44】.オキソン酸カリウム投与開始の 24 時間前より摂取を開始した.実験 は防衛医科大学校実験動物倫理委員会の承認を得て行った (承認番号 13069).

マウスの飼育は防衛医科大学校実験動物使用に関するガイドラインに従い,通 常のマウス飼料および自由飲水にて行った.

(5)尿酸測定

マウス血清尿酸濃度は酵素反応法(SRLに受託)で測定した.

(6)肉眼的検討

肉眼的所見については,第 2 章と同様にエバンスブルー静注後の青斑を計測 することで評価した.

(16)

(7)組織学的検討

組織学的所見は第2章と同様にV/C ratioを計測することで評価した.

(8)統計処理

各データは平均値±標準誤差で表した.各群の平均値の比較は一元配置分散 分析,Tukey-Kramer 法での多重分析にて行った.p値 0.05 未満を有意差ありと した.

第3節 結果

(1)イノシン酸腹腔内投与による血清尿酸濃度上昇

対照群(control群n=6),インドメタシン投与群(IND群n=6),イノシン酸投 与群(IND+KOX+IMP群n=6)の血清尿酸濃度はcontrol群0.40±0.11mg/dl,IND 群 0.23±0.03mg/dl,IND+KOX+IMP 群 4.37±0.48mg/dl(p<0.001)でありイノ シン酸とオキソン酸カリウムの腹腔内投与により尿酸の有意な上昇を認め,イ ンドメタシン投与では上昇しなかった(図5A).

(2)イノシン酸腹腔内投与によるインドメタシン小腸障害に対する効果

対照群(control群n=6),インドメタシン投与群(IND群n=6),イノシン酸投 与群(IND+KOX+IMP群n=6)の潰瘍面積はcontrol群1.5±0.6 mm2,IND群31.6

±4.6 mm2,IND+KOX+IMP群15.8±3.3 mm2(p<0.001)と,イノシン酸とオキソ ン酸カリウムの投与はインドメタシンによる小腸潰瘍を有意に抑制した(図5B). またV/C ratioはcontrol群2.83±0.15,IND群1.39±0.14,IND+KOX+IMP群1.97

±0.37(p<0.001)であり,オキソン酸カリウムと尿酸によりインドメタシンに

よる絨毛萎縮が有意に抑制された(図5C,D).

(17)

(3)イノシン酸腹腔内投与に対するキサンチンオキシダーゼ阻害剤の効果

対照群(control群n=6),イノシン酸投与群(KOX+IMP群n=6),フェブキソ スタット投与群(KOX+IMP+FEB群)の血清尿酸濃度はcontrol群0.23±0.06mg/dl,

KOX+IMP 群1.63±0.4mg/dl,KOX+IMP+FEB群 0.70±0.62mg/dl(p=0.006)

でありフェブキソスタットはイノシン酸投与による血清尿酸濃度上昇を抑制し た(図6A).また対照群(control群n=6),インドメタシン投与群(IND群n=6) イ ノシ ン酸投与 群(IND+KOX+IMP 群 n=6),フェブキソスタット投与群

(IND+KOX+IMP+FEB群)の潰瘍面積は control群 1.5±0.6 mm2,IND 群 31.6

±4.6 mm2,IND+FEB 群 31.8±11.8 mm2,IND+KOX+IMP 群 15.8±3.3 mm2, IND+KOX+IMP+FEB群25.8±7.0 mm2(p<0.001)であり(図6B),イノシン酸 による小腸潰瘍の改善はフェブキソスタットにより減弱した.フェブキソスタ ット単独ではインドメタシンによる小腸潰瘍の改善は見られなかった.V/C ratio は control 群 2.83±0.15,IND 群 1.39±0.15,IND+FEB 群 1.48±0.43, IND+KOX+IMP群1.97±0.36, IND+KOX+IMP+FEB群1.68±0.28(p<0.001)で あり,イノシン酸によるV/C ratioの改善はフェブキソスタットにより減弱する 傾向を認めたが有意ではなかった(図6C).

第4節 小括

尿酸の前駆体であるイノシン酸の腹腔内投与はインドメタシンによる小腸障 害を抑制した.また,キサンチンオキシダーゼ阻害剤で尿酸合成を阻害すると イノシン酸投与による小腸障害抑制作用が減弱したことからイノシン酸ではな く尿酸がインドメタシンによる小腸障害抑制作用に関与していることが示され た.

(18)

第5章 インドメタシン小腸障害に対する尿酸の作用部位の検討

第1節 目的

第 4 章の結果から体内で尿酸が合成されるモデルにおいてもインドメタシン による小腸障害は抑制されることおよびその抑制作用は尿酸にあることが示さ れた.一方,消化管粘膜上皮細胞内の尿酸が抑制作用を示すのか,尿酸が消化 管管腔に放出されて作用するのかは明確ではない.消化管粘膜上皮における尿 酸排泄の機序は不明な部分が多く,基底膜側での細胞内への取り込みの機序は 不明であるが,管腔側での排泄に関してはABCG2 が重要な働きを担っている.

そこで,ABCG2の阻害剤を用い,管腔側への尿酸排泄を阻害しその影響を検討 した.

第2節 方法

(1)インドメタシン小腸障害モデル

第2章と同様にインドメタシンを10mg/kg で腹腔内投与し,24時間後に安楽 死させて小腸を採取し,肉眼的所見の検討を行った.

(2)ウリカーゼ阻害

第2章と同様にオキソン酸カリウムを12時間毎に腹腔内投与し,インドメタ シン投与30分前からオキソン酸カリウム投与を開始した.

(3)ABCG2阻害剤

ABCG2阻害剤であるKo143(Sigma-Aldrich k2144,Lot.122M4708V)を10mg/kg

(19)

で12時間毎に腹腔内投与した【45-47】.Ko143の投与はイノシン酸とオキソン 酸カリウム投与の30分前に実施した.実験は防衛医科大学校実験動物倫理委員 会の承認を得て行った (承認番号 13069).マウスの飼育は防衛医科大学校実験 動物使用に関するガイドラインに従い,通常のマウス飼料および自由飲水にて 行った.

(4)イノシン酸投与

イノシン酸は第4 章と同様に 500mg/kg で 12 時間毎に腹腔内投与した.イン ドメタシン投与30分前にイノシン酸投与を開始した.

(5)統計処理

各データは平均値±標準誤差で表した.各群の平均値の平均値の比較は一元 配置分散分析,Tukey-Kramer 法での多重分析にて行った.p値 0.05 未満を有意 差ありとした.

第3節 結果

(1)イノシン酸腹腔内投与に対するABCG2阻害剤の効果

対照群(control群n=6),インドメタシン投与群(IND群 n=6)イノシン酸投 与群(IND+KOX+IMP群 n=6),Ko143投与群(IND+KOX+IMP+Ko143 群 n=5)

の潰瘍面積はcontrol群1.5±0.6 mm2,IND群31.6±4.6mm2,KOX+IMP群15.8

±3.3mm2,KOX+IMP+Ko143群18.3±2.8mm2(p<0.001)であり(図7A),V/C ratio は control 群 2.83±0.15,IND 群 1.39±0.15,KOX+IMP 群 1.97±0.36, KOX+IMP+Ko143群1.83±0.34(p p<0.001)であった(図7B).ABCG2阻害剤 により消化管管腔への尿酸輸送を阻害してもイノシン酸投与のインドメタシン

(20)

による小腸障害の抑制効果は維持された.

第4節 小括

インドメタシンによる小腸障害の抑制効果は,消化管管腔へ排泄された尿酸 ではなく消化管上皮細胞内での尿酸が重要な働きをしていることが示唆された.

(21)

第6章 Caco-2細胞株を用いたヒト小腸上皮モデルにおける尿酸の抗酸化作用 の検討

第1節 目的

第2章から5章までの実験から尿酸が消化管粘膜で保護的に作用することが 示された.尿酸は極めて強い抗酸化物質であり,ヒト大腸癌由来細胞株である

Caco-2細胞株を用いた小腸粘膜上皮モデルを用いて尿酸の抗酸化作用を検討し

た.過酸化水素による細胞膜障害の際に放出される乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase:LDH)で測定し,インドメタシンによる脂質過酸化をマロンジ アルデヒド量で測定(TBARS法)した.さらにトランスウェルを用いて基底膜 側から管腔側への尿酸輸送モデルとし,ABCG2阻害による効果を検討した.

第2節 方法

(1)Caco-2細胞

Caco-2細胞は理研細胞バンクより提供を受けた.イーグル最小必須培地(MEM

Sigma-Aldrich M4656, Lot. RNBD9366))にウシ胎仔血清(FBS最終濃度が10%に なるよう調整),非必須アミノ酸(NEAA gibco 11140-050, Lot.1607458,最終濃度

が1%になるよう調整),ストレプトマイシン(最終濃度が100u/mlになるよう調

整),ペニシリン(最終濃度が100u/mlになるよう調整)を加えて作成した培地 中に1×105/mm3となるように播種したのち37℃,5%CO2環境下で培養した.培 地は2日ごとに交換し,21日間以上経過し十分に分化したものを小腸上皮モデ ルとした.

(2)過酸化水素による酸化ストレス障害による細胞膜障害の検討

(22)

培地に過酸化水素(Hydrogen peroxide:H2O2, Wako 081-04215, Lot.KPH4739)を 加え,3時間後に培地中の漏出されるLDHを測定(標準化対応法:SRLに受託)

し酸化ストレス障害による細胞膜障害として評価し,尿酸の有無による影響を 調べた【48】.過酸化水素は最終濃度が250μMに尿酸は最終濃度が400μMに なるよう添加した.

(3)インドメタシンによる脂質過酸化の検討

培地にインドメタシンを加え,48時間後に細胞を溶解し,TBARS法(TBARS kit,Cayman, 10009055, Lot.0456338))によりマロンジアルデヒド

(malondialdehyde:MDA)を測定し脂質過酸化物の生成量を評価し,尿酸の有無 による影響を調べた【49】.INDは最終濃度が500μMに尿酸は最終濃度が400 μMになるよう添加した.

(4)トランスウェルを用いた尿酸輸送モデル

ポアサイズ0.4μm,12mm径のトランスウェル(Transwell®-COL, corning, 3493,

Lot.23914994)上でCaco-2細胞を十分に分化させ小腸上皮モデルを作成し【50】

(図9A),尿酸輸送のモデルとした.下層に7.5mg/dL尿酸含有培地を添加し24 時間毎に72時間まで上層の尿酸濃度を測定した.

(5)尿酸輸送モデルにおけるABCG2阻害剤の効果

トランスウェル下層に7.5mg/dL尿酸含有培地を添加し,トランスウェル上層

にABCG2阻害剤作用のあるベラパミル(Verapamil:Wako 222-00781,

Lot.AWE2594)を100μM添加し48時間後にトランスウェル上層の尿酸濃度を

測定した.同条件でABCG2を阻害し250μMの過酸化水素添加による細胞膜障 害に対するABCG2阻害の効果を検討した.

(23)

(6)統計処理

各データは平均値±標準誤差で表した.2群の比較にはStudent’T testで,3群 以上の各群の平均値の比較は一元配置分散分析,Tukey-Kramer法での多重分析 にて行った.p値0.05未満を有意差ありとした.

第3節 結果

(1)過酸化水素投与に対する尿酸の細胞膜障害性の検討

過酸化水素刺激後の培地中のLDHはコントロール群32.3±1.5U/L,H2O2群 89.8±32.8U/L,H2O2+UA群45.3±5.3U/L(p<0.001)であり(図8A),尿酸投 与群で過酸化水素投与によるLDH漏出は有意に減少した(n=5).

(2)インドメタシンに対する尿酸の脂質過酸化の検討

マロンジアルデヒド産生量はコントロール群4.05±0.59μM,IND群9.60±

0.94μM,IND+UA群6.36±0.09μM(p<0.001)であり(図8B),インドメタ

シン投与により脂質過酸化は有意に上昇し,尿酸によりその上昇は抑制された

(n=5).

(3)トランスウェルによる尿酸の輸送とABCG2阻害剤の検討

トランスウェル下層に尿酸を添加した後のトランスウェル上層の尿酸濃度は 24時間後1.93±0.17mg/dl,48時間後3.70±0.32 mg/dl,72時間後5.53±0.39 mg/dl

(p<0001)と経時的に上昇した(図9B).またトランスウェル上層にベラパミ ルを添加した場合は48時間後のトランスウェル上層の尿酸濃度は1.98±0.15 mg/dl(p<0.001)とベラパミルによりトランスウェル上層への尿酸輸送が阻害

(24)

された(図9C).尿酸の過酸化水素による細胞障害への効果は上層なし下層UA 群33.8±1.5 U/L,上層H2O2下層UA群50.6±4.6 U/L,上層H2O2+ベラパミル

下層UA群45.3±2.2 U/L(p=0.009)でありABCG2阻害剤の影響を受けなかっ

た(図9D)(n=5).

第4節 小括

尿酸はその抗酸化作用により消化管上皮で保護的に作用することが示唆され,

インドメタシン腸炎による粘膜上皮の脂質過酸化抑制を介した障害作用は尿酸 により軽減された.また,トランスウェルを用いた実験で尿酸の基底膜側から 管腔側への移動が確認でき,ABCG2阻害剤はその移動を阻害した.この際,尿 酸の保護作用は軽減されなかったことから管腔への放出は尿酸の保護作用に関 与していないことが示唆された.

(25)

第7章 考察

今回の実験において,尿酸は2つのマウス腸炎モデル:インドメタシン小腸 障害およびDSS大腸炎に対して保護的な作用を示した.また経口や注腸といっ た局所的な尿酸投与ばかりではなく,イノシン酸の腹腔内投与によるヒトプリ ン体代謝モデルを用いた血中尿酸濃度の上昇に伴って保護効果が確認された.

以上から,ヒトにおけるプリン体代謝の過程で合成された尿酸が消化管に対し て保護的に作用する可能性が示唆された.これは尿酸の消化管への新たな生理 作用を示したという点で極めて興味深い知見と考えられる.尿酸前駆体の全身 投与に対しキサンチンオキシダーゼ阻害剤であるフェブキソスタットを使用し た場合には血清尿酸が低下するとともに腸炎保護作用が減弱したことは,今回 の実験で認められた消化管に対する保護的作用に主要な要素が尿酸にあること 示唆した.

また,ABCG2は腸管上皮細胞の管腔側に発現し,上皮細胞内から管腔への尿 酸の排泄を司ると考えられている.今回の検討ではin vivoモデルにおいてもin

vitroモデルにおいてもABCG2の阻害剤は尿酸の保護作用に影響しなかった.以

上からは尿酸の保護効果は細胞内の尿酸濃度の上昇があれば十分発揮されるの ではないかと示唆された.

尿酸は関節腔などの閉鎖空間で濃度上昇し結晶化するとNLRP3インフラマ ソームの活性化を惹起し,IL-1βなどの炎症性サイトカイン増加を介して炎症を 促進する作用があることが報告されている【51】.今回行ったオキソン酸カリウ ムとイノシン酸を投与して血中尿酸濃度を上昇させたモデルでは血中尿酸濃度 はおおよそ3mg/dl以下であり,ヒトの高尿酸血症の基準をはるかに下回る.そ れゆえ消化管管腔内で尿酸結晶が産生されている可能性は極めて低いと考えら れ,炎症促進作用は認めなかったと考える.今回行った実験の範囲では血中尿

(26)

酸値は比較的低濃度であり,さらに高濃度にした場合には炎症促進作用がみら れるか,消化管保護効果が認められるかどうかについてはさらなる検討が必要 である.

尿酸が疫学的に疾患保護的に作用することが示唆された疾患としては多発性 硬化症【20】,パーキンソン病【19】などがあるが,これまで尿酸が疾患モデル などで有効性を示されたものは少ない.多発性硬化症のモデルであるアレルギ ー性脳脊髄炎モデルマウスにおいては尿酸投与がその症状を改善したとの報告

【21】と尿酸の前駆体であるイノシン酸投与も症状を改善するが脳組織中でイ ノシン酸上昇では症状を改善せず,尿酸の脳組織内での上昇が必要であったと の報告があり【52】,このアレルギー性脳脊髄炎ではパーオキシナイトライトの 上昇がその成因に関与しているとされ【21】,尿酸のパーオキシナイトライトの 除去作用をその効果の一因であると推論している.

我々が実験を行ったインドメタシン小腸障害モデルに関しては,インドメタ シンの直接的粘膜障害,腸管透過性の亢進,TLR-4を介した腸内細菌の作用,

活性酸素の影響などがその病態に関与していると報告されている【53】.尿酸の 抗酸化作用に着目して腸管上皮モデルであるCaco-2細胞株を用いて行った今回 の実験により,尿酸は過酸化水素による腸管上皮の細胞膜障害を軽減し,イン ドメタシンによる腸管上皮の脂質過酸化を軽減することが示され,尿酸の保護 効果が抗酸化作用によるものであることを示唆した.ヒトでもマウスと同様に 低用量アスピリンやNSAIDs内服による小腸潰瘍に対し尿酸やその前駆体の投 与が有効である可能性がある.ただマウスで尿酸の効果が示されたのは,本来 ウリカーゼによりアラントインへと代謝され血中や消化管内にほとんど存在し ないはずの尿酸が作用したためである可能性があるため,元々ウリカーゼを持 たず尿酸が血中に存在し腸管に排泄されているヒトにおいて実際に尿酸が保護 的に働いているのかどうかは検討の余地がある.

(27)

尿酸は腸管上皮内において抗酸化作用によりインドメタシン腸炎に対して保 護的に働いたと推測されたが,消化管管腔側でインドメタシン腸炎の病態に関 連する因子としては腸内細菌の存在が挙げられる.腸内細菌と酸化ストレスに 関しては多数の報告があり,特にFusobacterium属やClostridium属のような保護 的な作用が報告されている菌には偏性嫌気性菌が多く,酸化ストレスに感受性 が高い.管腔に放出された尿酸が抗酸化ストレス効果を発揮して腸内細菌叢を 変化させ,これが病態形成に関与した可能性も完全には否定できないが,今回

の実験でABCG2の阻害剤を用いて管腔側への尿酸排泄を阻害しても小腸障害

にほとんど影響がみられなかったことからは,尿酸が腸内細菌叢を変化させる 可能性は少ないと考えられる.また全身投与のみならず,腸管局所への直接的 投与でも明確な保護作用を認めており,尿酸の作用の機序は多岐に渡る可能性 がある.

今回の研究のlimitationの一つはin vivoで実際にマウスの消化管管腔内に尿酸 が移動しているかを評価できていない点がある.この点に関しては腸管上皮細 胞内への尿酸の取り込み機構についてこれまで十分には明らかにされておらず,

今回の検討でもABCG2による腸管上皮からの放出の点でのみの検討となって いる.仮に消化管上皮細胞内の尿酸濃度が保護作用に関与が深いのであれば,

腸管上皮への取り込み機構の障害や低尿酸血症は消化管炎症性疾患の病態に深 く関与する可能性がある.

(28)

第8章 結論

尿酸は消化管で保護的に作用することが明らかとなり,その機序として脂質 過酸化抑制が重要な要素であること,および粘膜上皮内の尿酸の存在が重要で あること,また治療手段に乏しいNSAIDsによる小腸粘膜障害に尿酸の抗酸化 作用が有望である可能性が示唆され,消化管の保護という尿酸の新たな生理機 能を明らかにした.

(29)

謝辞

本稿を終えるにあたり,御指導,御校閲を賜りました防衛医科大学校内科学 講座教授 穂苅量太博士および防衛医科大学校長 三浦総一郎博士に衷心より 感謝申し上げます.

本研究の遂行に際し,貴重な御助言,御協力を賜りました防衛医科大学校内 科学講座教室員諸先生に深く感謝の意を表します.

また本研究の一部は防衛医科大学校振興会および厚生労働省難治性疾患克服 研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」からの助成金により実施し ました.この場を借りて深謝いたします.

本研究の主旨は,厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性炎症性腸管障害に 関する調査研究」班会議(2015年1月,東京),日本消化器病学会大会 (第56 回,2014年10月,神戸),(第57回,2015年10月,東京),日本消化器病学 会総会(第101回,2015年4月,仙台),日本消化器免疫学会総会(第51回,

2014年7月,京都),日本潰瘍学会総会(第41回,2013年12月,大阪),第 45回日本消化吸収学会総会(第45回2014年11月東京)(第46回,2015年11 月,千葉),米国消化器病学会大会 (2015年5月,ワシントンD.C.)(2016年 5月,サンディエゴ)において発表した.

(30)

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(39)

図 表

(40)

図1.哺乳類のプリン体代謝

プリン体骨格を持つ核酸はアデニル酸,グアニル酸,イノシン酸へと代謝され,ヒポキサンチン,

キサンチンからキサンチンオキシダーゼにより尿酸へと合成される.尿酸はウリカーゼによりさら にアラントインへと代謝され尿中に排泄される.

ヒポキサンチン イノシン酸

キサンチン アデニル酸

尿酸

キサンチン オキシダーゼ

核酸

グアニル酸

アラントイン

ウリカーゼ

(41)

図2.ABCG2の機能低下からみた高尿酸血症の新たな成因分類

上段:ABCG2 の機能低下は腎臓への尿酸排泄低下(上段左)のみならず消化管への腎外性尿酸排 泄低下(上段右)を引き起こす結果,高尿酸血症の原因となる.

下段:従来高尿酸血症の成因は産生過剰型(A)と腎排泄低下型(B)に分類されていたがABCG2 の機能低下型の存在により従来産生過剰型と考えられていた病型には真の産生過剰型(A1)と腎 外排泄低下型( )が存在することが明らかになっている. 文献 より引用

(42)

図3.インドメタシン腸炎に対する尿酸経口投与の効果

尿酸経口投与によりインドメタシンによる小腸潰瘍が改善した(A).顕微鏡像:control 群,IND 群,IND+KOX+UA群(B).尿酸投与によりインドメタシンによる絨毛萎縮が改善した(C).

IND:インドメタシン,KOX:オキソン酸カリウム,UA:尿酸.

* p<0.05 v.s. control群,# p<0.05 v.s. IND群.統計学的分析には一元配置分散分析,Tukey-Kramer の多重分析を使用し、p値0.05未満を有意差ありとした.各データは平均値±標準誤差で表した(各 群n=6).

(A)

0 10 20 30 40

潰瘍面積(mm2)

IND IND+KOX+UA control

50m 50m 50m

(B)

* ,#

0 1 2 3

IND IND+KOX+UA control

# (C)

V/C ratio

IND IND+KOX+UA control

(43)

図4 尿酸注腸投与のDSS大腸炎への影響

尿酸注腸投与は腸管長の短縮を改善し(A),腸管重量/腸管長の増加を改善した(B).尿酸投与は 8日目で体重減少を改善した(C). * p<0.05 v.s. control群,# p<0.05 v.s. DSS群.

DSS:デキストラン硫酸ナトリウム,KOX:オキソン酸カリウム,UA:尿酸.

統計学的分析には一元配置分散分析,Tukey-Kramer の多重分析を使用し、p 値 0.05 未満を有意差 ありとした.各データは平均値±標準誤差で表した(各群 .

70

*

75 80 85 90 95 100 105 110

0 1 2 3 4 5 6 7 8

○:control

△:DSS

□:DSS+KOX+UA

day

体重変化(%)

DSS DSS+KOX+UA control

0 10 20 30 40 50 60 70

腸管長(mm)

(A)

DSS DSS+KOX+UA control

0 2 4 6 8 10 12 14

腸管重量/腸管長比(mg/mm)

(B)

* ,#

* (C)

#

#

#

(44)

図5 イノシン酸腹腔内投与によるインドメタシン小腸障害への影響 イノシン酸腹腔内投与はマウスの血中尿酸値を上昇させた(A).イノシン酸腹腔内投与はインド メタシンによる小腸潰瘍を改善した(B).顕微鏡像:control群,IND群,IND+KOX+IMP群(C). イノシン酸腹腔内投与はインドメタシンによる絨毛萎縮を改善した(D).IND:インドメタシン,

KOX:オキソン酸カリウム,IMP:イノシン酸.* p<0.05 v.s. control群,# p<0.05 v.s. IND群.統 計学的分析には一元配置分散分析,Tukey-Kramer の多重分析を使用し、p 値 0.05 未満を有意差あ りとした.各データは平均値±標準誤差で表した(各群n=6).

IND+KOX+IMP

50m

IND

50m

control

50m

(C) (A)

0 1 2 3 4 5 6

血清尿酸値(mg/dl)

IND IND+KOX+IMP control

(B)

0 10 20 30 40

潰瘍面積(mm2)

IND IND+KOX+IMP control

* ,#

* ,#

(D)

#

IND IND+KOX+IMP control

0 1 2 3

V/C ratio

* (B)

* ,#

(45)

図6 IMP投与に対するキサンチンオキシダーゼ阻害剤(FEB)の効果

フェブキソスタットはイノシン酸による血清尿酸値の上昇を抑制した(A).フェブキソスタッ トはイノシン酸の小腸潰瘍抑制を減弱した(B).フェブキソスタットはイノシン酸による絨毛萎 縮改善を減弱した(C).IND:インドメタシン,KOX:オキソン酸カリウム,IMP:イノシン酸,

FEB:フェブキソスタット.* p<0.05 v.s. control 群,# p<0.05 v.s. IND 群,## p<0.05 v.s.

IND+KOX+IMP 群.統計学的分析には一元配置分散分析,Tukey-Kramer の多重分析を使用し、p

値 未満を有意差ありとした.各データは平均値±標準誤差で表した(各群 . 0

1 2 3

control IND+KOX

+IMP

IND+KOX +IMP+FEB IND IND+FEB

* *

* ,#

* 0

0.5 1 1.5 2

control KOX+IMP KOX+IMP+FEB

#

血清尿酸値(mg/dl)

0 10 20 30 40

control IND+KOX

+IMP

IND+KOX +IMP+FEB IND IND+FEB

*,##

* ,#

潰瘍面積(㎜2

V/Cratio

(A) (B)

(C)

(46)

図7 イノシン酸投与マウスに対するABCG2阻害

(A)イノシン酸による小腸潰瘍抑制効果はABCG2阻害剤では変化しなかった.(B)イノシン酸 による絨毛萎縮の改善はABCG2阻害剤では変化しなかった.IND:インドメタシン,KOX:オキ ソン酸カリウム,IMP:イノシン酸.* p<0.05 v.s. control群,# p<0.05 v.s. IND群.統計学的分析 には一元配置分散分析,Tukey-Kramer の多重分析を使用し、p 値 0.05 未満を有意差ありとした.

各データは平均値±標準誤差で表した(各群n=6).

0 10 20 30 40

潰瘍面積(㎜2

control IND+KOX +IMP

IND IND+KOX +IMP+Ko143

0 1 2 3

control IND+KOX +IMP

IND IND+KOX +IMP+Ko143

V/Cratio

(A) (B)

* ,# * ,#

* ,#

* ,#

(47)

図8.Caco-2細胞におけるUAの抗酸化作用

尿酸は過酸化水素による細胞膜障害を抑制し(A),インドメタシンによる脂質過酸化を抑制した

(B).H2O2:過酸化水素,IND:インドメタシン,UA:尿酸.* p<0.05 v.s. control群,# p<0.05 v.s.

H2O2群,## p<0.05 v.s. IND群.統計学的分析には一元配置分散分析,Tukey-Kramerの多重分析を 使用し、p値0.05未満を有意差ありとした.各データは平均値±標準誤差で表した(各群n=5).

(B)

0 2 4 6 8 10 12

MDA(μM)

control IND IND+UA

##

0 20 40 60 80 100 120

control H2O2 H2O2+UA

#

* (A)

LD(U/L)

(48)

0 1 2 3 4 5

図9.トランスウェルによる尿酸輸送とABCG2阻害の効果

トランスウェルの模式図(A).経時的に尿酸は基底膜側から管腔側へ輸送され(B),ABCG2阻害 剤で尿酸輸送は阻害された(C).ABCG2阻害剤はH2O2による細胞障害に対する尿酸の効果に影響し なかった(D).H2O2:過酸化水素,UA:尿酸.* p<0.05 v.s. 24h後,** p<0.05 v.s. 48h後,# p<0.05 v.s. control群,## p<0.05 v.s. 上層なし下層UA群.統計学的分析には2群の比較にはStudent’T test,

3群以上の比較には一元配置分散分析,Tukey-Kramerの多重分析を使用し、p値0.05未満を有意差 ありとした.各データは平均値±標準誤差で表した(各群n=5).

0 1 2 3 4 5 6 7

24h 後 48h 後 72h 後

*

**

尿酸濃度(mg/dl)

Caco-2

下層 上層

0 10 20 30 40 50 60

LD(U/L)

上層なし 下層 UA

上層H2O2

+verapamil 下層UA 上層H2O2

下層 UA

#

control verapamil

尿酸濃度48h後(mg/dl)

(A) (B)

(C) (D)

##

##

図 1.哺乳類のプリン体代謝    プリン体骨格を持つ核酸はアデニル酸,グアニル酸,イノシン酸へと代謝され,ヒポキサンチン, キサンチンからキサンチンオキシダーゼにより尿酸へと合成される.尿酸はウリカーゼによりさら にアラントインへと代謝され尿中に排泄される.  ヒポキサンチン イノシン酸 キサンチン アデニル酸 尿酸 キサンチンオキシダーゼ 核酸  グアニル酸 アラントイン ウリカーゼ
図 5   イノシン酸腹腔内投与によるインドメタシン小腸障害への影響                              イノシン酸腹腔内投与はマウスの血中尿酸値を上昇させた(A).イノシン酸腹腔内投与はインド メタシンによる小腸潰瘍を改善した(B) .顕微鏡像: control 群, IND 群, IND+KOX+IMP 群(C) . イノシン酸腹腔内投与はインドメタシンによる絨毛萎縮を改善した(D) .IND:インドメタシン,
図 6 IMP 投与に対するキサンチンオキシダーゼ阻害剤( FEB )の効果
図 7   イノシン酸投与マウスに対する ABCG2 阻害

参照

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