トナカイ遊牧民コリャークの植物利用に関するレポ ート
著者 呉人 恵, 齋藤 玲子
雑誌名 北海道立北方民族博物館研究紀要
巻 14
ページ 63‑92
発行年 2005‑03‑30
URL http://hdl.handle.net/10502/5609
北 海 道 立 北 方 民 族 博 物 館 研 究 紀 要 第14号 Bulletin of the Hokkaido Museum of Northern Peoples 14:63-92 (2005)
トナ カ イ 遊 牧 民 コ リ ャ ー ク の 植 物 利 用 に 関 す る レ ポ ー ト 呉 人 恵 ・ 齋 藤 玲 子
A Report on Utilization of Plants among the Reindeer-herding Koryak
Megumi KUREBITO and Reiko SAITO
As has often been pointed out, the indigenous peoples in the north make wide use of plants in spite of limited vegetation which consists mainly of bushes, grasses, fern and lichen. In No.13 reindeer-herding brigade which is located in the northernmost part of the Severo-Evensk district, Magadan region, reindeer-herding Koryak make use of a number of plants for sustenance, housing, clothing, medicine, rituals, and amusement. The present paper aims to make an ethnobotanical description of plant use among the reindeer-herding Koryaks in No.13 brigade, based on linguistically exact descriptions of each Koryak plant name along with each plant's biologically exact identity.
1.は じ め に
永 久 凍 土 に 覆 わ れ た 北 方 の ツ ン ド ラ 地 帯 で は 、 限 ら れ た 植 生 で あ る に も か か わ らず 、 植 物 を 有 効 に 生 活 に 取 り 入 れ て き た こ と は 、 最 近 の 日 本 人 に よ る 研 究 だ け で も す で に 高 柴 (1995:103)、 齋 藤(1995:39)ら が 指 摘 し て い る と お り で あ る 。 マ ガ ダ ン 州 セ ヴ ェ ロ ・ エ ヴ ェ ン ス ク 地 区 最 北 の 第13ト ナ カ イ 遊 牧 ブ リ ガ ー ド(以 下 、 第13ブ リガ ー ド と 略 す る) 周 辺 地 域 も 例 外 で は な い(写 真1)(地 図)。 こ こ に は 、 グ イ マ ツ1)の 喬 木 を 除 け ば 、 ハ イ マ ツ 、 ハ ン ノ キ 類 、 ヤ ナ ギ 類 、 ツ ツ ジ 類 、 い わ ゆ る 白 樺(Betula:カ バ ノ キ 科 カ バ ノ キ 属)
富 山 大 学 人 文 学 部 教 授(Toyama University)
北 海 道 立 北 方 民 族 博 物 館 学 芸 員(Hokkaido Museum of Northem Peoples) キ ー ワ ー ド コ リ ャ ー ク 、 ツ ン ド ラ 、 植 物 利 用
Key Words Koryak, Tundra, Utilization of Plants
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呉 人 ・齋 藤 トナ カ イ 遊 牧 民 コ リャ ー クの 植 物 利 用 に 関す る レポ ー ト
な どの 潅 木 や 、 イ ネ 科 等 の 草 本 、 シ ダ植 物 、 コケ 植 物 、 地 衣 類 、 ま た 菌 類(キ ノ コ)が 生 育 して い る が 、 これ ら の植 物(と 菌 類)の 多 くが 彼 らの 生 活 の さま ざ ま な側 面 に取 り入 れ
られ 利 用 され て きた 。
第13ブ リガ ー ド 第5ブ リ ガ ー ド(
1マガダ ン州
コ リヤ ー ク自治管 区 才 坊 一 ツ ク纏
写 真1 地 図
本 稿 は 、 言 語 学 と民 族 学 と専 門 の異 な る呉 人 と齋 藤 が 、 この 第13ブ リガ ー ドに お け る植 物 利 用 の あ りよ うを 共 同 で記 述 し た もの で あ る 。 具 体 的 に は 、 呉 人 が2004年8月 初 め か ら9 月 初 め に か けて 第13ブ リガ ー ドで お こな っ た現 地 調 査 に も とづ き作 成 した レポ ー トに齋 藤 が 民 族 学 的 視 点 か ら再 検 討 を加 え、 北 方 の 他 民 族 の植 物 利 用 との 比 較 もお こ な い つ つ(注 参 照)加 筆 修 正 した もの で あ る 。
日本 人 に よ る ロシ ア極 東 地 域 で の フ ィ ー ル ドワ ー クが 増 え て い る に もか か わ らず 、 正 確 な 種 の 同 定 を と も な う社 会 科 学 的 研 究 は必 ず し も 多 い と は い え ず 、 特 定 集 団 の周 辺 の 自然 環 境 との 関 係 につ い て 、 と くに 生 物 学 的 な 視 点 を 取 り入 れ て 実 証 的 な調 査 研 究 を 行 うこ と が 期 待 され て い る(手 塚 ・水 島1997:97)。 本 稿 は 、 専 門 の 異 な る研 究 者 の 共 同作 業 に よ りこ うし た 課 題 に取 り組 み 、 言 語 学 的 に 正 確 な植 物 名 称 とこ れ に対 応 す る生 物 学 的 に正 確 な 種 の 同 定 に も とづ き 、 今 後 の 民 族 植 物 学 的 研 究 の た め の 基 礎 的 記 述 を試 み た も の で あ る。 それ と と も に 、本 稿 は ま た 、 博 物 館 員 に とっ て は 現 地 調 査 が 叶 わ ず と も、 現 地 調 査 を お こ な っ て い る研 究 者 と そ の収 集 資 料 を 共 有 し 、 ま た そ れ ぞ れ の 専 門 に も とつ い た 知 見 を 共 有 し合 う こ と に よ っ て 博 物 館 の 資 料 収 集 や 調 査 研 究 を蓄 積 す る可 能 性 を模 索 した 試 み の ひ とつ で も あ る。
コ リ ャー ク は 、 オ ホ ー ツ ク 海 や 太 平 洋 沿 岸 で 海 獣 狩 猟 や 漁 携 をお こな う海 岸 定 住 民 コ リ ャ ー クnamalSanと 、 内 陸 で トナ カ イ 遊 牧 に 従 事 す る トナ カ イ 遊 牧 民 コ リ ャ ー ク cawcovanに 大 別 され る 。 両 者 の 間 に は植 物 利 用 に 関 して い くつ か の 顕 著 な相 違 点 が 見 ら
北 海 道 立 北 方 民 族 博 物 館 研 究 紀 要 第14号(2005.3)
れ る 。 以 下 で は これ に つ い て も適 宜 、 言 及 して い くつ も りで あ る 。
マ ガ ダ ン州 セ ヴ ェ ロ ・エ ヴ ェ ン ス ク地 区 は 、 マ ガ ダ ン州 東 部 に位 置 し て 、 オ ホ ー ツ ク海 の 北 端 ギ ジ ガ 湾 に 面 し た エ ヴ ェ ン ス ク村(北 緯61度50分 、 東 経159度15分)に 行 政 の 中 心 を置 き、 内 陸 は 北 に オ モ ロ ン河 ま で そ の 領 域 を伸 ば し て い る。 大 陸性 の 気 候 で 寒 暖 の 差 が 激 し く、 夏 は 平 均 気 温 が摂 氏10度 を超 え る一 方 で 、 冬 の 低 温 が 顕 著 で 氷 点 下40〜60度 に な る。 ま た 、 年 間 の 降 水 量 も少 な い 。 海 岸 近 くは 不 連 続 永 久 凍 土 帯 で 、 内 陸 は連 続 的 永 久 凍 土 で あ る。2004年8〜9月 に 呉 人 が調 査 をお こな っ た時 点 で 、 第13ブ リガ ー ドは セ ヴ ェ ロ ・ エ ヴ ェ ンス ク地 区 の 中 で も と りわ け気 候 の 厳 しい 地 域 で あ るオ モ ロ ン河 東 の支 流 の ひ とつ ケ ガ リ川 を 中心 に500頭 ほ ど の トナ カ イ を遊 牧 し て い た が 、2005年1月 現 在 は 同 じ くオ モ ロ ン河 西 の 支 流 の ひ とつ で は あ るが 、 これ ま で の遊 牧 地 よ り西 に位 置 し、 よ りエ ヴ ェ ン ス ク 村 に 近 い 大 ア ウ ラ ン ジ ャ 川 に 向 か っ て 遊 牧 ル ー トを 変 更 中 で あ る 。 これ は 地 区 に か つ て3 つ あ っ た トナ カ イ 遊 牧 ソフ ホ ー ズ が トナ カ イ の 激 減 に よ り1つ に統 合 され た の を受 け 、 孤 立 化 を避 け る た め にお こ な わ れ て い る もの で あ る。
な お 、 本 稿 の も と に な る 呉 人 の 現 地 調 査 に第13ブ リガ ー ドで 協 力 して い た だ い た の は 、 以 下 の4人 の 方 々 で あ る。 聞 き取 り調 査 だ け で は な く、 い っ し ょ に ツ ン ドラや 丘 を歩 き 、 植 物 を集 め 、 そ の利 用 方 法 を 手 に とっ て 教 え て い た だ い た 。 この よ うな 得 が た い 貴 重 な体
験 を可 能 に し て くだ さ っ た これ ら の方 々 に は心 か ら感 謝 の 意 を表 した い 。
写 真2 Ajvalan Viktorija Ivanovna (1960年 、 マ ニ ラ 生 、 女 性)
写 真3 1tyk'eva Vera Ev'j akova(1941年 、 ヴ ェ ル フ ・パ レ ニ 、 ト ゥル カ イ 川 生 、 女 性)
写 真4Jav'ek Jakov Andreevich(1955年 、
ヴ ェ ル フ ・パ レ ニ 生 、 男 性) 写 真5Xechchaj Sergej Elij akovich(1950年 、 第6ブ リガ ー ド生 、 男 性)
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呉 人 ・齋 藤 トナ カ イ 遊 牧 民 コ リャ ー ク の 植 物 利 用 に 関す る レポ ー ト
2.用 途 別 に 見 る トナ カ イ 遊 牧 民 コ リ ャ ー ク の 植 物 利 用
山 田(1977:251)は 、 植 物 が 利 用 さ れ る用 途 を生 計 維 持 、 住 、 衣 、 工 芸 お よ び 特 殊 用 途 、薬 、 儀 礼 ・忌 避 等 、 娯 楽 の7種 類 に類 別 して い る が 、 第13ブ リガ ー ドに お い て も こ れ ら の広 い 範 囲 にわ た る植 物 の 利 用 が 認 め られ る。 表1で は 、 山 田(同 上)の 類 別 に 沿 っ て コ リャー クの 植 物 利 用 状 況 を表 示 す る 。
表1 トナ カ イ 遊 牧 民 コ リャ ー ク の用 途 別 植 物 利 用 状 況 生活維持
住
食物 生活用 具
生活道 具 燃料 飼料 肥料 魚 毒 建材 防風 衣 工芸 お よび
特 殊用途
染料 結束
そ の 他 薬
儀 礼 ・忌 避 等
娯 楽 遊び
観賞
0 0
0 0
X X X
0
X
0 0 D
0 0 O O
X
食 料 、 飲 料 、 嗜 好 品
トナ カ イ 権 、 トナ カ イ 鞭 、 ボ ー ト、 ス キ ー 板 、 魚 囲 い 場
植 物 採 集 用 、 道 具 類 の柄 、 刃 物 類 の鞘 焚 き火 、 ス トー ブ 用
ユ ル トの 枠 木 、 敷 き床 、魚 肉 の 干 し場
ブ ー ツ 保 温 、 オ ム ッ トナ カ イ 毛 皮 用
自 ら製 作 し な い が 、 か ご ・編 袋 等 を海 岸 定 住 民 と交 換 し て 入 手 し使 用 して い た 皮 な め し
塗 り薬 、 飲 み 薬
葬 儀 、 トナ カ イ 屠 殺 、 占 い 、 ユ ル ト設 営
遊具
ち な み に 、 ヨ ヘ ル ソ ン の 『Koryak』 の 索 引(JocHELsoN 1975[1908]:817‑842)か ら は 、35の 種 が 異 な る と 思 わ れ る 植 物 と 、 シ ダ(fern)、 コ ケ(moss)、 ヤ ナ ギ(willow/
Salicaceae)と い う3つ の 総 称 を 拾 う こ と が で き る 。 一 方 、 本 報 告 で は33種 に つ い て 利 用 法 を 記 す が 、 今 回 の 呉 人 の 調 査 で は こ の 他 に も 名 称 等 の 聞 き 取 り を し た も の が あ る 。 そ の な か に は 、 よ り植 物 利 用 が 盛 ん な 海 岸 コ リ ャ ー ク に つ い て も 調 査 を 行 な っ た ヨ ヘ ル ソ ン が 記 録 し て い な い 植 物 も 含 ま れ る 。
以 下 で は イ ン フ ォ ー マ ン トか ら 聞 き 取 っ た そ れ ぞ れ の 植 物 の コ リ ャ ー ク 語 名 と ロ シ ア
北 海 道 立 北 方 民 族 博 物 館 研 究 紀 要 第14号(2005.3)
語 、 さ らに和 名 、 ラ テ ン語 の学 名 を あ げ 、 具 体 的 な用 途 につ い て も記 載 す る 。 そ れ ぞれ の 植 物 情 報 につ い て どな た が提 供 し て くだ さっ た も の か を 、 「用 途 」 の 項 目の 末 尾 に 名 前 の 最 初 の姓 の イ ニ シ ャルA、1、J、 Xで 明 記 す る も の とす る。 ま た 、 コ リャ ー ク語 の 名 称 は 本 文 中、 括 弧()に 入 れ た 英 語 と 区別 す る た め に括 弧 に入 れ ず に あ げ る も の とす る。 学 名 と和 名 は 『環 境 調 査 ・ア セ ス メ ン トの た め の 北 海 道 高 等 植 物 目録 』(伊 藤 ほ か1985〜
1994)に 準 拠 し、 そ こ に 掲 載 さ れ て い な い植 物 につ い て は 、 『北 方 植 生 の 生 態 学 』(沖 津 2002)、 『朝 日 百 科 植 物 の 世 界 』(八 尋 編1997)『 日本 の 野 性 植 物 コ ケ 』(岩,月 編 2001)、 『原 色 日本 新 菌 類 図 鑑 』1、H (今 関 ・本 郷1987‑89)に 基 づ い た 。 ロシ ア 語 名 に つ い て はイ ンフ ォ ー マ ン トの 聞 き取 り と と も に、 便 宜 の た めCMHPHOB(2002)か ら も 引用 し た 。 用 途 別 に 記 述 す る植 物 に は通 し番 号 を付 す 。 同 じ植 物 で も部 位 に よ り用 途 が 異 な る 場 合 に は(コ リャ ー ク語 名 も異 な る た め)、 同 じ番 号 の 後 にa,b… をつ け 相 互 に 照 合 しや す い よ うにす る(た だ し 、 部 位 も 同 じ場 合 に は 通 し番 号 の み)。
コ リャ ー ク 語 の 場 合 、 通 常 、 木 本 類 と キ ノ コ 類 以 外 の 草 本 は 絶 対 格 複 数 形 で 表 わ され る。 した が っ て 、本 文 中 で は これ らの植 物 名 は 絶 対 格 複 数 形 で あ げ 、 そ れ ぞれ の植 物 の 項 で 、単 数(sg。)、 双 数(du.)、 複 数(p1.)の す べ て の形 をあ げ る。 な お 、 それ 以 外 の 名 詞 は絶 対 格 単 数 形 で 、 動 詞 は 不 定 形 で あ げ る も の とす る。
3.生 活 維 持
3.1.食 物 3.1.1.食 料
コ リ ャ ー ク は 植 物 を 食 料 と し て 利 用 し て き た 。 以 下 で は 、 そ の 具 体 を 見 て い く が 、 そ の 前 に 植 物 採 集 に 用 い る 道 具 類 に つ い て 紹 介 し て お く。
ま ず 、 野 生 の 根 茎 類 の 採 集 に は コ リ ャ ー ク 語 でwijηijと 呼 ば れ る 鉄 製 の 掘 り棒 を用 い る(写 真6)。 鈴 が 吊 る し て あ る こ と も
あ る が 、 こ れ は 野 生 動 物 が 近 づ か な い よ う に し た り、 連 れ が い 写真6掘 り棒 る と き 自 分 が ど こ に い る か 相 手 に わ か る よ う に す る た め で あ る と 言 わ れ て い る 。
ナ イ フ 類 は 採 っ て き た 地 下 茎 ・球 根 を 細 か く切 っ て 干 す と き に 使 用 す る 。 一 方 、 バ ラ の 1種(13)ojpackocSoを 摘 む の に は 、 ハ サ ミwaηqowalを 使 い 茎 の 部 分 を 切 る 。 こ れ は 次 の 年 も 採 集 で き る よ う に 根 を 残 し て お く た め の 配 慮 で あ る 。
3.1.1.1.根 茎 類
食 料 と し て の 利 用 で は 、 ま ず 第 一 に 根 茎 類 が あ げ ら れ る 。 第13ブ リ ガ ー ドで 採 集 さ れ て い る の は 、 主 に コ リ ャ ー ク 語 でmijmijo, anatew, jomηoと 呼 ば れ る3種 類 の 根 で あ る 。 こ 67
呉人 ・齋藤 トナカイ遊牧民 コ リャー クの植 物利用 に関す る レポー ト
れ ら は 味 が そ れ ぞ れ 異 な り、 食 べ 方 も 異 な る 。 コ リ ャ ー ク 語 名 に つ い て 言 え ば 、 根 茎 類 一 般 を 表 わ す 包 括 名 は な く 、 相 互 に 派 生 関 係 の な い 一 次 語 で あ る こ と か ら 、 根 茎 類 に 対 す る 個 別 的 か つ 具 体 的 な 認 識 の あ り よ う が う か が え る 。
(1a)
コ リ ャ ー ク 語 名:mijmij(sg.), mijmij∂t〜mijmijte(du.), mijmijo(pl.) ロ シ ア 語 名 LuaBe茄
和 名:タ デ 科 ミ チ ヤ ナ ギ 属 の1種 学 名:Polygonum sp.
用 途:8月 終 わ りか ら9月 初 め に か け て 、 花 が 落 ち た 後 で 根 を 集 め る 。 秋 の 終 わ り な ら ば 生 の ま ま 、 トナ カ イ の 生 の 肝 臓 と い っ し ょ に 混 ぜ て 食 べ る 。 ま た 、 冬 用 に 天 日乾 燥 し て 保 存 す る 。 第13ブ リ ガ ー ド か ら 東 南 に200キ ロ ほ ど の シ ロザ ケqetaqetが 獲 れ る ヴ ェ ル フ ・パ レ ニ 地 方 で
は 醗 酵 イ ク ラwillelηenや 乾 燥 イ ク ラpθ ↑alalηθn、 あ る 写 真7 mijmijo い は 冬 な ら 凍 っ た サ ケqet∂qetaqetと 混 ぜ て 食 べ る こ と も あ る 。 苦 味 が 強 い 。 〈1>2)
(2)
コ リ ャ ー ク 語 名:onat(sg .), anatet(du.), onatew(pl.) ロ シ ア 語 名:KoneeqHHK KoneeqHHKoBblii
和 名:カ ラ フ ト ゲ ン ゲ 学 名:Hedysarum hedysayoides
用 途:晩 春 の6月 頃 、 ま だ 葉 が 出 て い な い 時 あ る い は 秋 の 終 わ
り に 掘 る 。 生 の ま ま ア ザ ラ シ の 脂 肪valivalか ら 取 っ た 油 ・々,ρ JNO(!W
matgamat(以 下 、 ア ザ ラ シ 油)に つ け て食 べ る。 秋 に は きれ い に剥 い て 乾 燥 させ て か ら冬 用 に保 存 す る。 ア ザ ラ シ油 か凍 っ
た 生 の トナ カ イ の肝 臓 と食 べ る 。 ヴ ェル フ ・パ レニ 地 方 で も食 写 真8 θnatew す る が 、mijmijoの よ う に イ ク ラ と い っ し ょ に 食 べ る こ と は な い 。 た だ し 、 そ の 理 由 は 不 明 。 甘 み が あ る 。<1>3)
(3)
コ リ ャ ー ク 語 名:jemηojom(sg .), jemηot(du.), jemηo(pl.) ロ シ ア 語 名:朋 甑aH KlpTOl11K1, capaHa
和 名:ス ベ リ ヒ ユ 科 ク ラ イ ト ニ ア 属(和 名 不 明) 学 名:Claytonia sp.(C. acutifolia?)
北 海 道 立 北 方 民 族 博 物 館 研 究 紀 要 第14号(2005.3)
用 途:葉 と 根 を い っ し ょ に 夏 に 集 め 、 乾 燥 さ せ た も の を トナ カ イ の 血 の ス ー プkewlo?opaηaに 入 れ て 煮 て 食 べ る 。 ま た 、 夏 に 食 す る ト ナ カ イ の 胃 の 内 容 物jilgajilを 絞 っ て 煮 た ス ー プ jilga?epaηaに も 混 ぜ る 。 甘 み が あ る 。 生 食 は し な い 。 〈1>4) ヨ ヘ ル ソ ン は こ の ス ベ リ ヒ ユ 科 植 物 を コ リ ャ ー ク 語 で1'natと
し 、ロ シ ア 語 で 「甘 い 根 」と呼 ば れ る と 記 述 し て い る(JOCHELSON 1908:578)。 語 形 は(2)の カ ラ フ トゲ ン ゲ に 近 い 。
写 真9」 θmη0 根 茎 類 に は こ の 他 、ajikiw5)と い わ れ る も の が あ り、jomηoと 同 様 、 トナ カ イ の 肝 臓 や サ ケ の 醗 酵 イ ク ラ と混 ぜ て 食 べ る そ う だ が 、 第13ブ リ ガ ー ド周 辺 で は 採 集 さ れ て い な い 。 た だ し 、 第13ブ リ ガ ー ドか ら 東 北 に 約100キ ロ に 位 置 す る ク レ ス テ ィ キ ・ トナ カ イ 遊 牧 基 地 で 呉 人 が2002年 冬 に 調 査 を し た 際 、 こ こ で はajikiwは 生 育 し て お り、9月 に 葉 が 枯 れ て 根 が 太 る 頃 に 採 集 し て 、 生 の ま ま カ ワ ヒ メ マ スkacawの 卵 を 醗 酵 さ せ た も の 、 あ る い は 醗 酵 さ せ た トナ カ イ の 血wilkiwelと 混 ぜ て 食 べ る と の こ と で あ っ た 。 冬 用 に も 保 存 す る 。
3.1.1.2.葉 茎
コ リ ャ ー ク は 根 茎 類 だ け で は な く、 葉 茎 の 部 分 も 食 用 に し て き た 。 春 、 夏 の ま だ 花 が 咲 い て い な い 時 に 摘 ん だ 葉 を 、 トナ カ イ の 心 臓 、 月刊藏 、 肺 、 蹄 、 唇 な ど を 煮 て 細 か く刻 み 、 新 鮮 な 血 液 と い っ し ょ に 混 ぜ て 醗 酵 させ た 食 品wilwilと い っ し ょ に 食 べ る こ と が 多 い 。
(1b)
コ リ ャ ー ク 語 名:qoj awot(sg .), qoj awtat(du.), qoj awto(pL) ロ シ ア 語 名:田aBe茄
和 名:タ デ 科 ミ チ ヤ ナ ギ 属 の1種 学 名:Polygonum sp.
用 途:(1a)mijmijoの 葉 の 部 分 。 qoj awtoと は 、 「ト ナ カ イ の 草 」(qoj a「 ト ナ カ イ 」, wt
「葉 」,‑o絶 複)の 意 味 で 、 文 字 通 り ト ナ カ イ が 食 べ る 。 コ リ ャ ー ク は 醗 酵 し た トナ カ イ の 血wilkiwelと 混 ぜ て 食 べ る 。
<1>
(4)
コ リ ャ ー ク 語 名:wewewtθn(sg .), wewewtat(du.), wewewto (pl.)
ロ シ ア 語 名:xHnpeH
和 名:ア カ バ ナ 科 ヤ ナ ギ ラ ン 属 の1種6) 写 真10 wewewto
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呉 人 ・齋 藤 トナ カ イ 遊 牧 民 コ リャー ク の植 物 利 用 に関 す る レポ ー ト
学 名:Charnaenerion sp.
用 途:春 あ る い は 夏 の ま だ 花 が 咲 い て い な い 時 に 葉 を 集 め て(1b)のqoj awto同 様 、 トナ カ イ の 醗 酵 し た 血 と混 ぜ て 食 べ る 。 〈1>
(5)
コ リ ャ ー ク 語 名:cacak(sg.), cacakat(du.), cacakaw (Pl.)
ロ シ ア 語 名:?
和 名:キ ク 科 の1種 学 名:Compositae sp.
用 途:夏 、 葉 を 摘 ん で そ の ま ま 食 べ る 。 甘 み が あ る 。 〈1>
写 真11cacakaw 3.1.1.3.漿 果 類
第13ブ リ ガ ー ド周 辺 地 域 で は 、 ウ ラ シ マ ツ ツ ジ 、 コ ケ モ モ 、 ク ロ マ メ ノ キ 、 ホ ロ ム イ イ チ ゴ 、 ガ ン コ ウ ラ ン な ど の 漿 果 類(ベ リー)も 豊 か に 生 育 す る 。 漿 果 類 に つ い て は コ リ ャ ー ク 語 の 命 名 の し か た が 二 分 さ れ る 。 す な わ ち(6a)(7a)(11)は 漿 果 類 を 表 わ す SavanSanと い う包 括 名 か ら の 二 次 的 派 生 語 で あ る の に 対 し 、(8)(9)(10a)は 包 括 名 と は 語 源 的 に 関 係 の な い 一 次 語 で あ る 。 こ の 違 い が 、 重 要 度 な ど と な ん ら か の 相 関 が あ る か ど う か は 、 こ れ か ら 調 べ て み た い と こ ろ で あ る 。 こ れ ら の 利 用 法 は 以 下 の と お り で あ る 。
(6a)
コ リ ャ ー ク 語 名:kalokawtaSavanSan(sg .), kalokawta5'avanS'at(du.), kalokawtaSavanSo (P1・)
ロ シ ア 語 名 apKToyc aπbH油cKHh, Bo朋bH xroRa, Me双BeHくbH Hro皿a, TomKH朋Ka 和 名:ウ ラ シ マ ツ ツ ジ
学 名:Arctous alpinus
用 途:実 は8月 末 か ら9月 に 集 め て 、kilikilの 材 料 に し た 。kilikilと は 、 シ ロ ザ ケ 、 カ ワ ヒ メ マ ス な ど の 魚 あ る い は トナ カ イ の 肝 臓 を 煮 て つ ぶ し た も の に ア ザ ラ シ 油 な ど を 混 ぜ た 料 理 で あ る 。 こ の 実 以 外 に も ガ ン コ ウ ラ ン や ク ロ ミ ノ ウ グ イ ス カ グ ラ(俗 称/ア イ ヌ 語:ハ ス カ ッ
プ 、 ロ シ ア 語 名>KHMO刀OCTb、 コ リ ャ ー ク 語 でSal'ecSan 写 真12 kalokawtaSavanS'o (sg.), Sal'ecSat(du.), S'al'ecSu(pl.))の 実 と 混 ぜ て 食 べ る こ と も あ る 。 実 は ア ザ ラ シ 皮 製 袋pewθ1に 入 れ て 、 地 面 に 穴 を あ け る か 苔 の 下 に 入 れ て 保 存 す る 。<1>7)
北 海 道 立 北 方 民 族 博 物 館 研 究 紀 要 第14号(2005.3)
(7a)
コ リ ャ ー ク 語 名:yajanSavanSan(sg .), yajanSavanSat(du.), yajanS'avanSo(pl.) ロ シ ア 語 名:6pyCHHKa
和 名:コ ケ モ モ
学 名:Vaccinium vitis‑idaea
用 途:現 在 は 砂 糖 と 混 ぜ て 食 べ る こ と が 多 い が 、 か つ て は そ の ま ま 食 べ た 。 秋 、 す で に 凍 り始 め た 頃 に 集 め る 。 トナ カ イ 毛 皮 製 太 鼓 に 利 用 し た 皮 を 縫 い 合 わ せ て 作 っ た 袋jajajkol'vocajocYθnに 入 れ て 、 屋 外 の 機 の 上 で 保 存
す る 。 低 血 圧 に 効 く と い わ れ て い る 。 〈1>8> 写 真13yajanSavanSo
(8)
コ リ ャ ー ク 語 名:liη ∂1(sg .), liη1θt(du.), liη1u(pL) ロ シ ア 語 名:ro岬6HKa
和 名:ク ロ マ メ ノ キ 学 名:Vaccinium uliginosum
用 途:夏 に 採 集 し て そ の ま ま 食 べ る か 、kiliki1に 混 ぜ て 食 べ る 。 か つ て は 小 さ な ア ザ ラ シ 皮 製 袋 に 入 れ て 冬 用 に
苔 の 下 に 保 存 し た 。<1> 9) 写 真14 1iηlu
(9)
コ リ ャ ー ク 語 名:jittθjit(Sg .), jittot(du.), jittu(pL) ロ シ ア 語 名:Mopo田Ka
和 名:ホ ロ ム イ イ チ ゴ 学 名:Rubus Chamaemorus
用 途:夏 に 採 集 し て そ の ま ま 食 べ る 。 利 尿 作 用 が あ る と い わ れ て い る 。 〈1>)
(10a)
コ リ ャ ー ク 語 名:vel'Saj(sg .), vol'Sajte(du.), val'Sajo(pl.) ロ シ ア 語 名:cMOpoAHxa xpacxaA
和 名:ユ キ ノ シ タ 科 ス グ リ 属 の1種 学 名:Ribes sp.
用 途:夏 に 集 め て そ の ま ま 食 べ る か 、 最 近 で は ミ キ サ ー で つ ぶ し て 砂 糖 を 混 ぜ 、 お 茶 請 け に す る 。 〈1>
写 真15vθ1'Sajo 71
呉 人 ・齋 藤 トナ カ イ 遊 牧 民 コ リ ャー ク の植 物 利 用 に関 す る レポ ー ト (11)
コ リ ャ ー ク 語 名:jacuSavanSan(sg.), j acuSavanSat(du.), j acuSavanSu(pl.) ロ シ ア 語 名:田HK田a cH6Hpcxax
和 名:ガ ン コ ウ ラ ン 学 名:Ernpetyurn nigrum
用 途:kilikilに 混 ぜ て 入 れ る 。 水 分 に 富 ん で お り 、 夏 の 暑 い 時 に 水 分 補 給 の た め に 摘 ん で 食 べ る と い わ れ て い る 。 〈1>11)
3.1.1.4.キ ノ コ 類
キ ノ コ の 採 集 は ロ シ ア 人 か ら 受 容 し た も の で あ る 。 第13ブ リガ ー ドで は 、 女 性 や 子 供 た ち が 暇 が あ る と 近 く の 丘 に 夏 、 キ ノ コ採 り に 出 か け る 。 ロ シ ア 人 と 同 じ く 、 妙 め た り ス ー プ に し た り し て 食 べ る 。 一 部 、 干 し て 保 存 す る こ と も あ る が 、 ロ シ ア 人 に 比 べ る と キ ノ コ 採 り に は そ れ ほ ど積 極 的 で は な い 。 ツ ン ド ラ に は 多 様 な キ ノ コ が 生 育 す る が 、 こ れ ら は ト ナ カ イ が 食 べ る も の で 、 人 間 が 食 べ る も の で は な か っ た 。 コ リ ャ ー ク 語 に は 個 別 の キ ノ コ
を 表 わ す 語 が な く 、 興 奮 ・幻 覚 作 用 の あ る ベ ニ テ ン グ ダ ケwapaq(学 名:.4〃zα 纏 α rnuscayia)以 外 は す べ て 包 括 名(12)paSon(sg.), paSonat(du.), paSonaw(pl.)で 呼 ば れ て い る こ と か ら も コ リ ャ ー ク の キ ノ コ に 対 す る 関 心 の 薄 さ が うか が え る<1>。 12)
3.1.2.飲 料
コ リャ ー ク は これ ま で 市 販 の ア メ リカ製 の ダ ン(ま た は タ ン:碑)茶 や ロ シ ア製 の 紅 茶 を主 な 日常 の 飲 料 と して き た が 、 それ 以 外 に も野 草 の 茶 を飲 む 習 慣 が あ る。 今 で も紅 茶 が 手 に入 らな い 時 に は 煎 じて 飲 む こ とが あ る。 利 用 す る野 草 とそ の 方 法 に つ い て は 以 下 の と お りで あ る 。
(6b)
コ リ ャ ー ク 語 名:kolokawtθn(sg .), kalokawtat(du.), kalokawto(pl.)
ロ シ ア 語 名:apKToyc a乃n曲cK曲, Bo朋b朋ro双a, Me耶e>Kb朋roπa, ToπoKH朋Ka 和 名:ウ ラ シ マ ツ ツ ジ
学 名:Arctous alpinus
用 途:夏 か ら 秋 に か け て 葉 を 集 め て5分 く ら い 沸 か し て 飲 む 。<1>
(7b)
コ リ ャ ー ク 語 名:yajanSan(sg .), yajanSat(du.), yajanSo(pl.) ロ シ ア 語 名:6pyCHHKa
和 名:コ ケ モ モ
北海道立北方民族博物館研 究紀要 第14号(2005.3) 学 名:Vacciniuyn vitis‑idaea
用 途:9月 初 旬 〜 中 旬 に 葉 を 集 め る 。 集 め た ら す ぐ に フ ラ イ パ ン で 妙 る 。 乾 い て 茶 色 に な っ た ら 、 沸 か し た お 湯 に 入 れ る か さ ら に 少 し だ け 沸 か し て 飲 む 。 こ の お 茶 を yajan(Pocajと い う 。<1>
(13)
コ リ ャ ー ク 語 名:ojpackocSan(sg.), ojpackocSat(du.), ojpackocSo(pl .) ロ シ ア 語 名:uixno6xxx
和 名:バ ラ 科 バ ラ 属 の1種(ア ン ブ リ オ テ ィ ス バ ラ か) 学 名:Rosa sp.(R. amblyotis?)
用 途:花 が 咲 き 終 わ っ た 後 、 実 が な る 。 そ の 実 と 葉 と茎 を い っ し ょ に 切 っ て お 茶 を 沸 か す 。 こ の お 茶 を ojpackocSacajと い う 。 冷 ま し て 飲 め ば 暑 気 払 い に な る 。 川 の ほ と り や 森 に 生 育 す る 。8月 後 半 に 実 が 熟 し て 自然 に 落 ち た も の は 拾 っ て お 茶 に 入 れ て 飲 む 。 皮 袋 の 中 に 集 め て 冬 用 に 保 存 す る 。<1>
写 真16 0jpackocSo
(14)
コ リ ャ ー ク 語 名:gecaq(sg .),ηecaqat(du.),ηecaqaw (P1‑)
ロ シ ア 語 名:Kyp剛bcKHfi qali KycTapHHKoBbIll,6arWbHHK, nHTHJIHcToqHHK KycTapHHKoBbIH
和 名:キ ン ロ バ イ 学 名:Potentilla fruticosa
用 途:花 が 咲 き 終 わ っ た 後 、 根 は 抜 か ず に 茎 だ け を 摘 み 、 写 真17 ηecaqaw そ の ま ま5〜6分 沸 か し て 飲 む 。 苦 い の で 砂 糖 を 入 れ て 飲 む と い い 。 〈1>
(15)
コ リ ャ ー ク 語 名:jiwjicSan(sg.), jiwjicSat(du.), jiwjicS'u(p1.) ロ シ ア 語 名:HBaxxaH
和 名:ヤ ナ ギ ラ ン
学 名:Chamaenerion angustifolium
用 途:9月 初 め 、 花 も 葉 も 落 ち 茎 が 黄 色 く な っ た 後 、 摘 ん で 沸 か し て 飲 む 。 〈1>14)
写 真18 jiwjicSu
73
呉人 ・齋藤 トナ カイ遊牧 民 コリャー クの植 物利 用 に関す るレポー ト (4)
コ リ ャ ー ク 語 名:wewewton(sg.), wewewtθt(du.), wewewto(pl.) ロ シ ア 語 名:xHnpeH
和 名:ア カ バ ナ 科 ヤ ナ ギ ラ ン 属 の1種 学 名:Charnaenerion sp.
用 途:近 年 で は 葉 を 集 め て 乾 燥 さ せ 、 沸 か す か ポ ッ ト に 熱 湯 と い っ し ょ に 入 れ て 飲 む 。 た だ し 、 こ れ は コ リ ャ ー ク の 伝 統 的 な お 茶 で は な い と い わ れ て い る 。<1>
(IOb)
コ リ ャ ー ク 語 名:vθ1'Saj(sg.), val'Sajte(du.), vθ1'Sajo(pl.) ロ シ ア 語 名:cMOpoAHxa KpaCHBA
和 名:ユ キ ノ シ タ 科 ス グ リ 属 の1種 学 名:Ribes sp.
用 途:7〜8月 に 葉 を 集 め 、 乾 燥 さ せ て 、 沸 か し て 飲 む 。<1>
3.1.3.嗜 好 品
嗜 好 品 と し て 利 用 され る も の に は 、 以 下 の も の が あ る 。 な お 、 興 奮 ・幻 覚 作 用 が あ る と い わ れ るベ ニ テ ン グ ダ ケ は こ の 地 方 で は生 育 し な い 。
(16a)
コ リ ャ ー ク 語 名:wanaw
ロ シ ア 語 名:川cTBeHHHqHaH cMo照 和 名:グ イ マ ツ の 松 脂
学 名:(Layix gmelinii)
用 途:噛 む 。 傷 口 に つ け て も よ い と 言 わ れ て い る 。 〈X>
(17)
コ リ ャ ー ク 語 名:SakatkecSan(sg .), S'akatkecSat(du.), S'akatkecSo(pl.)
ロ シ ア 語 名:naxoq曲
和 名:キ ク 科 ヨ モ ギ 属 の1種 学 名:Arternisia sp.
用 途:燃 や し て 灰 に し た も の を タ バ コtavaqと 混 ぜ て 唇 と歯 の 間 に は さ む 。 柔 ら か くて い い に お い が す る の で 手 を 拭 く と い い と も い わ れ て い る 。 〈1>
写 真19 wanaw
写 真20 SakatkecSo
北 海 道 立 北 方 民 族 博 物 館 研 究 紀 要 第14号(2005.3)
(18)
コ リ ャ ー ク 語 名:りajcacame(sg。),ηajcacamjet(du.), ηajcacamjo(pI.)
ロ シ ア 語 名:?
和 名:ニ オ イ シ ダ 学 名:Dryopteris fragrans
用 途:燃 や し て 灰 に し た も の を タ バ コ と 混 ぜ て 唇 と 歯 の
間 に は さ む 。 〈X> 写 真21 ηalcacamlo
3.2.生 活 用 具 ・生 活 道 具 ・燃 料 ・建 材 3.2.1.木 本 類
木 本 類 は葉 、枝 、 幹 な ど部 位 に よっ て 複 数 の 用 途 を も つ 場 合 が あ る。 た とえ ば ミヤ マ ハ ン ノキ は 、 樹 皮 は 染 色 用 、 幹 は権 の 部 品 用 、枝 と葉 は儀 礼 用 とそれ ぞ れ に用 途 が 異 な る。
ま た 、 ポ プ ラ15)は同 じ幹 で も 、 ス キー 板 や ボー トな どの 生 活 用 具 や 燃 料 に利 用 され る だ け で な く、 コ リャー クの 伝 統 的 な お 守 りYiCYijの 素 材 と し て使 わ れ る な ど、 儀 礼 的 な 機 能 も 担 っ て い る とい え る。 以 下 で は、 主 に幹 の部 分 が 生 活 用 具 、 生 活 道 具 、 燃 料 、建 材 な どに 利 用 され る木 本 類 の 用 途 に 限 定 し て表 で 示 す 。 そ れ 以 外 の 用 途 につ い て は、 随 時 、 各 用 途 別 に 見 て い く こ と にす る 。 左 端 は通 し番 号 で あ る。 それ ぞ れ の 木 に は和 名 とコ リャ ー ク語 名 を あ げ る。 木 本 類 の名 称 は 草 本 類 と は異 な り、 通 常 、特 に複 数 性 を明 示 す る必 要 が な い 場 合 に は 、 絶 対 格 単 数 形 で 言 及 され る こ とが 多 い の で 、 以 下 で も これ に し た が うも の と す る 。
そ れ ぞ れ の 木 材 は そ れ ぞ れ が 持 つ 特 質 に し た が っ て き わ め て 巧 み に使 い 分 け られ て い る。 この 地 域 で最 も汎 用 性 の 高 い グイ マ ツ は ま ず は な ん とい って も燃 料 と し て の 利 用 価 値 が き わ め て 高 い 。 ま た丈 夫 な 性 質 上 、 ユ ル ト(大 型 の伝 統 的 な トナ カ イ 毛 皮 製 テ ン トで 、 中 に仕 切 りをつ け て 複 数 の 家 族 が 同居 で き る)の 枠 木 や 魚 肉 の 干 し棚 な ど の建 材 用 に用 い られ る だ け で は な く、 権 の 滑 走 板 な ど に も用 い られ る。 ハ イ マ ッ は松 脂 が 豊 富 な た め、 燃 えつ き が 早 くな お か つ 長 時 間 燃 え る た め薪 に利 用 され る が 、 そ れ 以 外 の 利 用 価 値 は ない 。 walYil(柔 白樺)16)は、 他 の木 材 に 比 べ る と柔 軟 性 に 富 ん で お り、iの 木 材 と し て の 価 値 が 高 い 。 ナ ナ カ ンバ17)もま た柔 軟 性 に 富 ん で お り、 権 の 湾 曲部 や 機 用 の トナ カ イ の 鞭 の柄 の木 材 と し て適 して い る 。 ミヤ マ ハ ン ノ キ は 丈 夫 な だ け で な く柔 軟 性 に も富 ん で い る た め に 、斧 な ど の柄 に 適 し て い る。 ま た 、 薪 とし て も利 用 され る。 ポ プ ラは 柔 らか くて 軽 い た め 、 工 作 しや す く、 ス キ ー 板 や ボ ー トの 木 材 と し て 利 用 され る 。 ヤ マ ナ ラ シ18)やヤ ナ ギ19>
は 、 柔 らか す ぎ るた め建 材 や そ の他 の 造 形 素 材 に は適 さず 、 薪 と して の み 利 用 され る。
ま た 注 目し て お き た い の は 、 権 の 素材 と して い くつ か の 木 材 が用 い られ る が 、 これ らは それ ぞ れ 単 一 で 一 台 の権 が作 られ る の で は な く、 そ れ ぞ れ の 部 位 の性 質 に合 わせ て 素 材 が
75
呉人 ・齋藤 トナカイ遊牧民 コ リャー クの植物利用 に関す るレポー ト 表2 木 本 類 の 用 途
16b
19a
20
21
22a
23
24
25
グ イ マ ツ yeyuw ハ イ マ ツ q∂cvoqθ 」 カ バ ノ キsp.柔 白 樺 walyil
ナ ナ カ ン バ 1〕∂CVOI〕 θC
ミヤ マ ハ ン ノ キ Yillel〕
ポ プ ラ tagal ヤ マ ナ ラ シsp.
ナnencew
ヤ ナ ギsp.
pilyalSun
ユルト枠木 0
機の部品 0
O
0
O 鞭
0 薪
O
O
0
0
0
0
魚肉干し棚 0
刃物の柄
0
0
刃物の鞘
0
ス キー板
O
ボ ー ト
0
使 い 分 け られ て い る とい う点 で あ る。 た と え ば 、 饒 の最 も基 本 的部 分 は 滑 走 板paktolηen で あ る が2°)、秋 の 雪 の ま だ 少 な く潅 木 や 石 が 露 出 して い る土 壌 の悪 い ツ ン ドラ に は 、 丈 夫 な グイ マ ツ が 適 して い る。 冬 に な る と、 よ く滑 るwalYil(柔 白樺)の 滑 走 板 に付 け 替 え ら れ る。 柔 軟 性 と丈 夫 さ を兼 ね 備 え た ミヤ マ ハ ン ノキ はrの 湾 曲 部 に利 用 され る とい う具 合 で あ る。
(20)
コ リ ャ ー ク 語 名:walYil(sg .), walYilit(du.), walYiliw(pl.) ロ シ ア 語 名:6e」laH 6epesa
和 名:カ バ ノ キ 科 カ バ ノ キ 属 の1種 ラ テ ン 名:Betula sp.
用 途:機 の 部 材 と し て 用 い る 。 柔 ら か い 白 樺 と い わ れ る 。
(21)
コ リ ャ ー ク 語 名:ηecven〜 ηocveりec(sg.),ηecvθt(du.),ηocvo (Pl・)
ロ シ ア 語 名:Kop∬HKOBaH 6epesa 和 名:ナ ナ カ ン バ
ラ テ ン 名:Betula nana 写 真22ηecvon〜 ηθcv∂ η∂c
北海道 立北方民族博物館研究紀 要 第14号(2005。3) 用 途:大 き い も の は 権 や トナ カ イ の 鞭 用 に 利 用 。 小 さ な も の は ユ ル トの 寝 具 の 毛 皮 の 下
に 敷 く。 あ る い は 箒 を 作 る の に 使 う。
(24)
コ リ ャ ー ク 語 名:n'ancew(sg .), n'oncevot(du.), n'ancevu(pl.) ロ シ ア 語 名:OcHxa
和 名:ヤ ナ ギ 科 ヤ マ ナ ラ シ 属 の1種 ラ テ ン 名:Populus sp.
用 途:薪 に 用 い る 。
(25)
コ リ ャ ー ク 語 名:pilyalSun(sg.), pilyalSat(du.), pilyalSu (P1・)
ロ シ ア 語 名:HBa
和 名:ヤ ナ ギ 科 ヤ ナ ギ 属 の1種 ラ テ ン 名:Salix sp.
用 途:薪 に 用 い る 。 刀 の 鞘 の 材 に も す る 。
3.2.2.草 本 類 写 真23 pilyalSun
JocHELsoN(1908:629‑638)が す で に 記 述 し て い る よ う に 、 海 岸 定 住 民 コ リ ャ ー ク は 優 れ た か ご 製 品 の 作 り手 で あ る 。 一 方 、 ツ ン ド ラ の トナ カ イ 遊 牧 民 コ リ ャ ー ク に は か ご製 品 を 作 る 習 慣 は な い 。 ち な み に 第13ト ナ カ イ 遊 牧 ブ リガ ー ドで も 植 物 性 の 編 袋emcejocY∂n も 植 物 用 の 加 工 具(杭 き 櫛 、 槌 な ど)も ひ と つ も 確 認 さ れ な か っ た 。 唯 一 、 イ ン フ ォ ー マ ン トの1人ltek'eva Vera Ev'j akovaさ ん に よ れ ば 、 か つ て は 根 茎 掘 り に 行 く と き に1960年 に 叔 母 か ら譲 り受 け た 編 袋 を 使 用 し て い た が 、 い つ の ま に か ク ズ リ に 食 べ ら れ て し ま っ た
と の こ と で あ る21)。
ち な み に 、 こ の 地 方 か ら ヴ ェ ル フ ・パ レ ニ に か け て の ツ ン ドラ の トナ カ イ 遊 牧 コ リ ャ ー ク は 自 分 た ち で は や は りか ご 製 品 ・編 袋 は 作 ら な い 。 代 わ り に 春 に ナ イ フ 、 ア ザ ラ シ の 毛 皮 の 靴 底kultalηonや ア ザ ラ シ 皮 製 ひ もleYiηilη θnな ど と と も に ウ ス テ ィ ・パ レ ニ 地 方 の 海 岸 定 住 民 コ リ ャ ー ク が 作 る 製 品 を 、 トナ カ イ 毛 皮 、 トナ カ イ 毛 皮 製 衣 類 な ど と 物 々 交 換
し て い た そ う で あ る 。
JocHELsoN(1908:637)は 、 トナ カ イ 遊 牧 民 に バ ス ケ ッ ト を 編 む 習 慣 が な い こ と に つ い て 、 「トナ カ イ 遊 牧 民 コ リ ャ ー ク の 女 性 は 時 間 が な く 、 ま た 冬 の 寒 い テ ン トは バ ス ケ ッ ト を 編 む 作 業 に は 適 し て い な い 」 と 指 摘 し て い る 。 筆 者 が 調 査 し た 第13ブ リ ガ ー ドの 位 置 す る 地 域 は 、 冬 は マ イ ナ ス60度 に も 下 が る 大 変 寒 冷 な 地 域 で 、 編 製 品 の 素 材 と な る イ ラ ク 77
呉 人 ・齋 藤 トナ カ イ 遊 牧 民 コ リャー クの 植 物 利 用 に 関す る レポ ー ト
サ(Uytica spp.)、 ハ マ ニ ン ニ ク(Elyynus〃zo〃ZS)な どが 生 育 し な い 。 ま た 、 トナ カ イ 遊 牧 民 コ リャー クの 女 性 は た し か に 大 変 忙 し く、 と りわ け 大 半 の 時 間 を皮 な め し、 染 色 、 縫 製 な ど手 間 の か か る トナ カ イ 毛 皮 の加 工 に 費 や し て い る。 トナ カ イ 毛 皮 は季 節 を 問 わ ず 彼 らの衣 類 と して 用 い られ る ば か りで は な く、 住 居 で あ る夏 用 の ユ ル トjajaηaや冬 用 の テ ン トjuwpalatkanな ど に も利 用 され る。 女 性 た ち は 、 新 しい 衣 類 の 準備 だ け で は な く、 ユ ル トや テ ン トな どの 大 物 の 修 繕 に も 多 くの 時 間 を 費 や さ な けれ ば な ら な い の で あ る。 ま た 、 上 述 の よ うに 、 トナ カ イ を所 有 しな い 海 岸 定 住 民 コ リャ ー ク に 自分 た ち の加 工 し た ト ナ カ イ毛 皮 製 品 を バ ス ケ ッ トな ど と交換 し た とす る な らば 、 相 互 補 完 の 関 係 が そ こ で成 り 立 っ て お り、 わ ざ わ ざ 自分 た ち が バ ス ケ ッ トを編 む必 要 が な か っ た の は容 易 に 想 像 で き る。
な お 、植 物 製 の食 器 ・調 理 具 な ども第13ブ リガ ー ドで は確 認 され て い な い 。
4.衣
コ リャ ー ク の植 物 の 衣 類 へ の 利 用 は 、 管 見 の か ぎ りで は 、 オ ム ツや 生 理 用 ナ プ キ ン と保 温 の た め の ブー ツ の 中 敷 な どの 補 助 的 な もの に か ぎ られ て い る。
4.1.オ ム ツ ・ナ プ キ ン
オ ム ツ や ナ プ キ ン に は コ ケ を 利 用 す る 。 近 隣 の ツ ン グ ー ス 系 の エ ヴ ェ ン は 木 屑mθ1'ecSo(pl.)を オ ム ツ に 使 う と の こ と で あ る が 、 コ リ ャ ー ク は 使 わ な い 。 木 屑 は 使 っ た 後 、 臭 く な っ て 一 回 し か 使 え な い が 、 コ ケ は 臭 く
な ら な い の で 、 乾 か し て 再 利 用 で き る か ら だ と い う 。 ち な み に 、 コ リ ャ ー ク は 木 屑 を 焚 き 火 の 火 口 に 使 う だ け で あ る 。 利 用 す る コ ケ は 用 途 に よ っ て 次 の2種 類 が 認 め ら れ て い る 。
写 真24 vitSu
(26)
コ リ ャ ー ク語 名:vitSan〜vitSavit(sg .), vitSat(du.), vitSu (pl.)
ロ シ ア 語 名:Mox酬 朋aMnapc y双eTeh 和 名:チ ャ ミ ズ ゴ ケ
学 名:Sphagnum fuscum
用 途:乾 燥 さ せ た 後 、 新 鮮 な 湿 っ た コ ケ と 混 ぜ て 袋 に 入 れ て 保 存 す る(理 由 に つ い て は 不 明 と の こ と)。 手 や 皿 な ど を 拭 く た め 78
写 真25
北 海 道 立 北 方 民 族 博 物 館 研 究 紀 要 第14号(2005.3) に も 利 用 さ れ る 。(写 真25)<1>
(27)
コ リ ャ ー ク 語 名:meYθn〜miyamiw(sg .), meYθt(du.), meyu(pl.)
ロ シ ア 語 名:Mox朋H凪eH田HHbI 和 名:ヤ ナ ギ ゴ ケ 科 の1種 学 名:Amblystegiaceae sp.
用 途:女 性 の 生 理 用 ナ プ キ ン と し て 利 用 。 ま た 、 こ の コ
ケ は 葬 儀 の 際 に も 用 い ら れ る 。 す な わ ち 、 一 切 れ を 死 者 写 真26 meYU の 口 に 含 ま せ る と と も に 、 顔 を ぬ ら し た こ の コ ケ で 拭 く。 使 用 済 み の コ ケ は 後 に 、 死 者 を 火 葬 す る 際 に い っ し ょ に 燃 や す 袋 の 中 に 入 れ る22)。〈1>
4.2.ブ ー ッ の 中 敷 (28)
コ リ ャ ー ク 語 名:vaSajl'oηon〜vaSaj(Sg̀ .),vaSajte(du.), vaS'ajo(pl.)
ロ シ ア 語 名:ceHO 和 名:イ ネ 科 の1種 学 名:Poaceae sp.
用 途:ブ ー ツ の 底 に 入 れ る(vaSajatak)(写 真28)。 季 節 を 問 わ ず 利 用 さ れ る 。 夏 は 歩 く の に や わ ら か く、 冬 は 暖 か い 。<1>
こ の 草 は ま た 、 占 い に も 利 用 さ れ る 。6本 を 結 ん で 旅 行 や 遊 牧 ル ー トな ど 移 動 に か か わ る こ と を 主 に 占 う。 写 真 29で 見 る よ う に 、6本 が ど こ で も 絡 ま ら ず に 丸 い 円 状 に な る の が 一 番 よ い と さ れ て い る 。 こ の よ う な 草 占 い を ve↑ajpajYiη θn(vaS'aj「 イ ネ 科 」, pajYiη 「肩 甲 骨 占 い 」,‑a一 挿 入,‑n絶 単)と い う。 ち な み に 第13ブ リガ ー ドで は 、 同 様 に 移 動 に か か わ る 吉 凶 を 占 う肩 甲 骨 占 い も 平 行 し て お こ な わ れ て い る が 、 草 占 い を 表 わ す 語 が 肩 甲 骨 占 い の 派 生 形 で あ る こ と は 、 草 占 い が 肩 甲 骨 占 い よ り 後 で 発 生 し た 補 助 的 な も の で あ る こ と を う か が わ せ る 。
〈」〉
写 真27vaSajo
写 真28
写 真29
呉 人 ・齋藤 トナ カ イ 遊 牧 民 コ リャ ー クの 植 物 利 用 に 関 す る レポ ー ト (29)
コ リャ ー ク 語 名:jelη θvθ↑aj(sg.), jolηevo↑ajti(du.), j∂II〕ovθ(raju(pl.)
ロ シ ア 語 名:?
和 名:イ ネ 科 ノ ガ リヤ ス 属 の1種 学 名:Calamagrostis sp.
用 途:夏 、 ブ ー ツ の 底 に 入 れ る 。 丈 夫 で こ な ご な に な ら な い 。 シ ロ ザ ケ の 捕 れ る パ レ ニ 地 方 で は 、 か つ て イ ク ラ の 筋 子 を こ の 草 に 編 み こ ん で 乾 燥 さ せ た が 、 現 在 で は イ ク ラ は 塩 漬 け に す る だ け な の で 、 こ の よ う な 利 用 は も は や 見 ら れ な い と い う こ と で
あ る 。 写 真30jolηeve↑aju
5.工 芸 お よ び 特 殊 用 途
トナ カ イ 毛 皮 を衣 類 と して 利 用 す る た め に は、 まず 屠 殺 し た 家 畜 トナ カ イ か ら とっ た 毛 皮 の加 工 作 業 が 不 可 欠 で あ る。 この 加 工 作 業 は主 に 、 皮 な め し工 程 と必 要 に応 じ て 染 色 工 程 とか らな る。 この2つ の 工 程 の い ず れ に も植 物 が利 用 され る。 以 下 で は 、 そ れ ぞれ の 工 程 を 記 述 しな が ら、 そ の 中 で 植 物 が どの よ うに利 用 され て い る か を 見 て い く こ とに す る。
以 下 は イ ン フ ォ ー マ ン トの1、Aか らの 聞 き取 りを整 理 して 記 述 した もの で あ る。
5.1.皮 を な め すenanvat∂k〜jajitaSavak
屠 殺 し て 剥 い だ 毛 皮 は 、 ま ず 皮 な め し や 必 要 に 応 じ て 染 色 を 施 し て 縫 製 が で き る 状 態 に し な け れ ば な ら な い 。 皮 な め し に 用 い られ る 道 具 と し て は 、 な め し 棒wiwijと
な め し 板enanvenaη 、 さ ら に な め し 棒 の 中 央 に 嵌 め る な め し 石awatと な め し 鉄palwanta?awotが あ る 。 ま た 、 な め し 剤 の 削 り落 と し に は ナ イ フ が 、 毛 皮 の 伸 展 や 柔 軟
化 に は 足 が 重 要 な 役 割 を 果 た す(写 真31)。 皮 な め し に 写真31
使 わ れ る な め し剤 に は(こ れ を植 物 と 呼 ん で い い か ど うか は わ か らな い が)、 伸 展 の た め に トナ カ イ の 胃 の 内 容 物 が 、 柔 軟 化 の た め に トナ カ イ のjaS'atが 多 く用 い られ る。 さ ら に 柔 軟 化 を促 進 す る た め にハ イ マ ツ の針 葉tomtom(19b)も 使 わ れ る 。
トナ カ イ 毛 皮 の 皮 な め しの 手 順 は以 下 の とお りで あ る。 方 法 は 上 に あ げ た 季 節 別 の 毛 皮 の種 類 に か か わ りな くほ ぼ 同 じで あ る とい わ れ て い る。
1)屠 殺 して 剥 い だ皮 を、 夏 な ら ば地 面 に広 げ 、必 要 な らば 丸 ま らな い よ うに 回 りに石 をお い て 固 定 し て 、1〜2日 干 す 。 冬 な ら ば、 剥 い で 湿 っ た ま ま の状 態 で 包 ん で 保 存 す
北 海 道 立 北 方 民族 博 物 館 研 究 紀 要 第14号(2005.3) る 。2月 頃 に 広 げ て1ヶ 月 ほ ど屋 外 に 吊 る し て 干 す 。
2)乾 燥 し た 毛 皮 を ユ ル ト の 中 に 運 び 入 れ 、 皮 を 上 に 毛 を 下 に し て 敷 い て お く 。 踏 ま れ る こ と に よ っ て 柔 ら か く す る た め で あ る 。 「毛 皮 を 踏 む 」 こ と をmocek、 「踏 ま れ た 毛 皮 」 をmθcanalYθnと い う。 こ れ に 対 し て 、 ま だ 踏 ま れ て い な い 毛 皮 はamcakinalYon(a‑..‑ki否 定, mca「 踏 む 」, na1Y
「毛 皮 」,‑o一 挿 入,‑n絶 単)と い う 。
3)踏 ん で あ る 程 度 柔 ら か く な っ た 毛 皮 は 、 ま ず は な め し 石 で 、 次 に な め し 鉄 で 肉 や 脂 肪 を 剥 が す 。 毛 皮 の 問 や 脂 肪 を 剥 が す こ と をkeηjukと い う(写 真32)。 冬 に 保 存 し て お い た 毛 皮 は 、3〜4月 に こ の 作 業 を お こ な う。
写 真32
4)さ っ と煮 た トナ カ イ の 胃 の 内 容 物 を 皮 の 内 側 に 塗 りjilqa enajkelek(jilq r胃 の 内 容 物 」‑a道 具 格 、enajkelek「 塗 る 」)、 包 ん で1日 置 く。 こ れ は 毛 皮 を 伸 展 さ せ る た め で あ る 。 こ の 反 甥 物 は 、 夏 の 緑 色 を し た も の だ け を 使 う 。 夏 な ら ば そ の ま ま 新 鮮 な も の を 使 い 、 冬 な ら ば 夏 に 地 面 に 掘 っ た 穴 に 保 存 し(写 真33)、 必 要 に 応 じ て 取 り出 し て 使 う 。
5)1日 た っ た ら 取 り 出 し て 広 げ て 、 乾 い た 部 分 が あ っ た ら そ の 部 分 だ け に 再 び 胃 の 内 容 物 を 塗 っ て 包 ん で 半 時 間 ほ ど置 く 。
6)再 び 広 げ て 、 ナ イ フ で 反 傷 物 を 削 り 落 と す 。 7)そ の 後 、 な め し石 、 な め し 鉄 で な め し た り 、 足 で
し ご い た り し て(S'aptak「 足 で し ご く 」)、 乾 か す 。
8)さ っ と 煮 た トナ カ イ の 糞 を 塗 る 。 こ れ は 、 毛 皮 を 写 真33 柔 ら か くす る た め で あ る。 胃 の 反 甥 物 同 様 、夏 な ら ば新 鮮 な糞 を、 翌 春 な ら ば前 年 の 夏 に集 め て 穴 に埋 め て お い た もの を適 宜 取 り出 して 使 う。
9)再 び包 ん で1日 置 く。
10)毛 皮 が 柔 らか くな る ま で 何 度 か 糞 を 塗 る(写 真34)。 も し 、 トナ カ イ の 糞 だ け で は 柔 ら か くな ら な い場 合 に は 、 さ ら にハ イ マ ツ の針 葉
を女 性 の尿 と混 ぜ た もの を塗 る。
11)ナ イ フ か な め し鉄 を使 っ て糞 を削 り落 とす 。 12)再 び な め し石 で な め し た り、 足 で し ごい た りす る。
13)で き あ が っ た も の は仕 立 て る ま で 包 ん で 保 存 す る 。
な お 、 チ ュ ク チ で は トナ カ イ 毛 皮 の加 工 工 程 と と も
に 、 トナ カ イ 革(レ ザ ー)の 加 工 工 程 も記 さ れ て い る 写 真34
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呉人 ・齋藤 トナカイ遊牧民 コ リャー クの植物利用 に関す るレポー ト
(BoGoRAs 1904‑09:220)。 し か し 、 コ リ ャ ー ク で は 以 上 の 工 程 で つ く ら れ た 毛 皮 が ユ ル トカ バ ー や ユ ル トの 帳 に 利 用 さ れ た 後 、 ナ イ フ で 除 毛 し た(n'acek「 除 毛 す る 」)も の が レ ザ ー と し て 用 い られ る だ け で 、 チ ュ ク チ に 見 ら れ る よ う に 除 毛 後 、 新 た に 漂 白 や 燃 煙 が 施 さ れ る わ け で は な い の で 、 こ こ で は 記 述 し な い 。
5.2.染 色 す るjomj atθk
JocHELsoN(1908:628‑629)に よ れ ば 、 コ リ ャ ー ク は 毛 皮 や 編 製 品 の 素 材 を 染 色 す る jomj atakた め に 、 海 の 泥 、 湿 地 の コ ケ の 煮 出 し 汁 、 魚 皮 か ら 取 っ た 膠 と混 ぜ た 炭 、 ク ラ ン ベ リ ー の 煮 出 し 汁 、 柳 の 樹 皮 、 ハ ン ノ キ な ど 多 様 な 染 料 を 利 用 す る と さ れ て い る 。 こ の う ち 、 海 の 泥 と コ ケ の 煮 出 し 汁 は 編 み 製 品 の 染 色 に 用 い ら れ 、 後 述 す る よ う に 編 み 製 品 を 作 ら な い こ の 地 域 の トナ カ イ 遊 牧 コ リ ャ ー ク に は 確 認 さ れ な い 。 ま た 、 漿 果 類 の 染 料 と し て の 使 用 も こ の 地 域 で は 認 め られ な い 。
こ の 地 域 に お け る トナ カ イ 毛 皮 の 染 色 に は 、 な ん と い っ て も 主 に ミヤ マ ハ ン ノ キ の 樹 皮wicwij(22b)が 用 い られ る。 ミヤ マ ハ ン ノキ は 山 の斜 面 に生 え るが 、 これ を7月 初 旬 、 葉 が 出 始 め た 頃 か 、8月 末 か ら9月 初 め に採 集 し、根 元 の太 い 部 分 か ら樹 皮 を集 め る。 根 元 に近 い太 い 幹 の 部 分 を切 り取 り、 ナ イ フ の 背 や 角 張 っ た 鉄 製 の棒 な どで 削 い で い く(写 真35)。 ハ ン ノキ の樹 皮 を は が す
写真35 こ と をwitajak〜wiηelθkと い う
。
以 下 が 、 トナ カ イ 毛 皮 の 染 色 工 程 で あ る 。
1)集 め て きた ハ ン ノキ の 樹 皮 は 細 か く砕 き、 清 潔 な 毛 皮 の上 に お い て 日の 当 た らな い と こ ろ で何 度 か か き 回 し な が ら乾 燥 させ る。 清 潔 な 袋 に入 れ て ユ ル トの ど こ か に 吊 る して お く。
2)女 性 の 尿 を 焚 き火 の そ ば な どの 温 か い場 所 に 鋭 い に お い が す る ま で 置 い て お く。
酸 っ ぱ い にお い に な っ た 尿 はm∂jetaS∂tと い う。 こ れ に細 か く砕 い て 乾 燥 させ た樹 皮 を浸 して 何 度 か 混 ぜ る 。 尿 に 樹 皮 を混 ぜ る こ と をwijimletakと い う。 ふ た を し て 暖
か い 場 所 に お く。 手 で 握 っ て ぼ ろ ぼ ろ と樹 皮 が 壊 れ る よ う な ら ば 完 成 。 こ の よ う な 状 態 に な っ た 樹 皮 を Yatol]valen wicwijと い う。
3)毛 皮 を 広 げ 、 樹 皮 を 取 っ て カ を 込 め て 皮 に こ す っ て い く(写 真36)。 こ の よ う に し て 染 色 す る こ と を jomjatokと い う。 染 色 し た 側 を 内 側 に 包 ん で 一 日 お く 。 う ま く染 色 で き な い 場 合 に は 、 「尿 の 主 」 が
病 気 だ と 言 わ れ る 。 写真36