日本 管 理 会 計学会誌
管理 会計 学2000 年 第9巻1号
論 文
複合型情報
シ ス テ ム における情報
シ ス テム ・ コ ス トの管
理安 藤 武 真 *
〈 論 文 要 旨〉
重 要 な 社 会 基 盤の 1 つ となっ て い る情 報 シス テム は よ り高 速で よ り複 雑な ものへ と 日々進化の速 度を速めて い る .情報シ ス テ ム が 誕 生 し た当初 と比べ , 情報シス テム は 限
ら れ た一
部の利 用者に よ る限定的な利 用 方法か ら,不特定多数の利用者に よ る多種 多様 な 利 用 方 法へ と変 化を遂 げて きた。それに伴い 情報システム の構造も単純な集中型の シ
ステムか らよ り複 雑 な分 散 型 ・複 合 型の シ ステム へ とその形 態 を 変 化 させて きてい る. 情報シ ス テムが一般 化 し始め た当 初に コス ト管理手法と して 開 発さ れ た チ ャ ージバ ッ
ク ・シス テム は複雑 化 を遂 げ た今日の情 報シ ステ ム におい て も利 用 され続 けて い るので あろ うか.も し,チ ャージバ ッ ク ・シ ス テムが 利 用 さ れて い ない とすれ ば
, どの ような
手段で情報シス テ ム ・コ ス ト管理 を行っ てい るの であろ う か.本 論 文の 目 的は, 実 態 調 査の結 果に基づ き,複合型情報シス テ ムに お ける情 報シス テム ・コス トの効率的 な管理
につ い て今 後の指 針 を見い だすこ とにある.
〈 キ ーワー ド〉
実 態 調 査, 情 報 シ ス テ ム , 分 散 化 ネッ トワーク,チ ャ ージバ ッ ク ・シ ス テム
, 活 動基
準原価計算
2000 年 3月21 日 受付
2000年 9月 1日受理
*横浜国立 大 学 大 学 院 国 際 開 発 研 究 科 博 士 課 程
The Japanese Association of Management Accounting
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The Japanese Assoolatlon of Management Aooountlng
管理 会 計 学 第9巻1号
1. は じめに
現 代の 多様 化 し高 速 化 さ れ た社 会は高 度に発展 し た情 報伝 達 手段 に よっ て支え ら れて い る. す な わ ち,電話 ・テ レビ ・イン ターネ ッ トな どの情 報 伝 達 手段の発 展が時 間 的 ・空間的 格差 を 埋 め,社 会の ボーダーレ ス化 ・高速 化を もたら し て きたの で ある.こ れ ら情 報伝 達手 段の なか で も近 年 特 に発 展 し て きたの が イ ン タ ーネ ッ ト に代 表 さ れ る よ うな情 報 シ ス テ ム で ある
(Stewart[1997D .情報 シス テ ム は 電子機 器の発 展 と と もに一般化さ れ, も はや我々 の社 会を維 持 する上で 必 要不 可欠な もの と なっ て い る.
こ うして社 会基盤 と なっ て きた情 報シ ス テ ム は よ り高 速で よ り複 雑 な もの へ と 日々進 化の 速 度 を速めて い る.情 報シ ス テ ム は当初一部の利 用 者によっ て 限定的に利 用さ れてい た が, 現在
で は不特 定多 数の 利 用者によ っ て多種多様に使用 さ れ る とい う変 化 が 起 こ っ て い る (櫻 井 通 晴 ・村上敬 亮 [19981 >. 情 報シス テ ム を取り巻く環境の こ の よ うな変化は情報シ ス テ ム の コ ス
ト構 造やその適正 なコ ス ト算 定に も大 きな影 響 を与えて い る.
情 報シス テ ムが一般化 し始め た当初, コ ス ト管 理 手 法 と して 開 発 さ れ導入 さ れて き た チャ ー
ジバ ッ ク ・シ ステム は ネッ トワ ーク化や 分散 化に よっ て複雑な形 態を取る ように なっ た今 日の 情 報 シス テ ム に おい て も利 用され続けて い るの であろ う か。も し,チ ャージバ ッ ク ・シ ス テ ム が利 用さ れてい ない とすれ ば, どの ような手段で情 報シス テ ム ・コ ス ト管理 を行っ て い るの で あろ うか,
本 論 文の 目 的 は,実態調査の 結 果に基づ き, 複合 型 情 報シス テ ム に おける情 報シス テム ・コ
ス トの効 率的 な管理 につ い て今 後の指 針を見い だすこ とにある.
まず, 厂1.情 報シス テム の コ ス ト管 理につ い て の実 態 調査」におい て, 情 報シス テ ム の 変遷 につ い て触れ,集 中 型 情報シス テム か ら複 合型情報 シス テ ムへ の移行につ い て その 流れ を説明
す る.さ らに,今 回行っ たア ンケー ト調査の意 図 ・目的及 び標 本の選定 ・項 目の設定につ い て 示 し, 基礎 資 料に基づ い て実 態を把 握 する.次に 「2.集 中 型情 報シス テム下の コ ス ト管理」に おい て , 実態調査の 結果に基づ い て, 伝 統 的 な集 中型 情 報シス テム の 現況と集 中型情報シス テ
ム 下におけるコ ス ト管理の主要な手 法で ある チ ャ ージバ ッ ク ・シス テ ム の 現状と 問 題点 につ い て 明確 に す る.さ らに 「3.複 合 型情 報シ ス テ ム下の コ ス ト管理」で は昨今 集 中型 情 報シス テ ム か ら 移行 しつ つ あ る複 合型情 報シス テ ム の 現 況 とこ れに伴 うコ ス ト管理の 現状 と 問 題点につ い
て考 察す る.最 後に 「4.効 率 的情 報シ ス テム ・コ ス ト管理 に向けて」に おい て , ア ウ トソーシ
ン グへ の 可能性につ い て 言 及 し, 複 合 型 情 報シス テ ム の コ ス ト管理 に対す るABC ア プロ ーチ を試みる こ とに す る.
1.情 報 シス テ ム の コ ス ト管理 につ い ての実 態 調 査 1. 1 情報 シス テ ム の変遷
1954 年に初め て企業に導入 され たコ ン ピュ ータ の 目的が 工場の給 与 支 払い 簿の作成で あっ た ように,初期の コ ンピ ュ ータ は弾 道計算や人 口統 計な どの統 計処理,給 与 計 算や金種 計算な
どの 会 計処 理とい っ た単一の機 能 し か持たず,し た が っ て単一の原価 計算 対 象 (ユ ーザー〉の
み に対 して原 価を測定し 原価管理 を行 えばよかっ た(Flatten, McCubbrey , 0’Riordan and
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複 合型 情 報シス テムに おける情報シス テム ・コ ス トの管理
Burgess[1989D.
し か し, 汎用型の コ ン ピュ ータの 開発な ど情報技 術の進 歩に伴い , 生産管理, 物流管理,労 務管理 な どの よ り多機能な 処 理 が 可能と なる と,大量で多様なユ ーザーが 情 報 シス テム の 利用 を 希 望 す るよ うに なっ た.これ に 応 じ る た め,情 報シス テ ムへ の投資は増 加 し, その開 発 ・運 用コ ス ト も増 加 して き た.こ の ように情 報シス テム ・コ ス トが 増 大 して く るにつ れ
, 情報 シス
テ ム資源の 効率的な管理が必 要に なっ て きた .(図 1)
コ ン ピ ュ ー タ の 発 明
↓ コ ン ピ ュ ー タの 認 知 度 の 上 昇 汎 用 コ ン ピュ ー タ の 発 展
↓ ユ ーザ ーの 増 加 / 多 様化 シ ス テ ム 投資 の 増 加
シス テ ム 開発 ・運 用 コ ス トの 増 加
↓
情 報 シ ス テ ム 資 源 の 効率的 管理 の 必 要性
管理の 効 率化 利 用 の 効 率化
匝
資源 の 有 効利 用コ ス トの 配 賦 問 題 利 用 統 制 の 必 要 性
チ ャ ー ジ バ
ッ ク ・シ ス テ ム 図 1 チ ャージバ
ッ ク シス テム 出 現 の背景
情報シス テ ム 資源の 効率的な管理を行 うた めに 2つ の ア プロ ーチ が考えられ た .すなわ ち, 情 報シ ス テ ム管理の効 率 化と情 報システ ム 利 用の効率 化で ある.
情 報シス テ ム管 理の 効率化 と は,情 報シス テ ム資 源の管 理 を情報シス テ ム部 門 な ど 1ヵ所に 集 中 させ る ことに より管 理 活動の大 幅 な削 減を目指 す もの である. し か し, 同時にそ れは情報
シ ス テム 部門の業 績管理 とコ ス トの 配 賦 問 題 をもた らす もの で もあっ た.す なわ ち, 情 報シス
テ ム部門 はユ ーザ ーに提供 する サ ービス を何 ら かの手段で評価 し なけれ ば な らな くなっ たの で
ある.
一方, 情 報シ ス テム利 用の 効率 化とは, 情報シ ス テ ム資 源の利 用 率を 100% に近づ け るこ と によ り情報シ ステムへ の投 資 を最低限に抑 えよ うとする もの で ある.こ れ は当時 の情報 シス テ
ム資 源が高価かつ 希少な存在で あっ た こ とに起 因 す る.情 報シス テム資源の利 用 率を高める た め に は情報シ ス テ ム需 要の 平 滑化と利 用 総 量の抑制が必要で あっ た,
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管理会 計 学 第9巻1号
情報シス テ ムの管理の 効 率化 と利用 の効 率化の 1つ の解 決法と して , ユ ーザーに課金する と
い う方 法 を 最 初 に考 え出 したの は ア メ リカの 各 大学の コ ン ピュ ータ ・セ ン ターで あっ た.こ の
よ うな施設の利用者は学生か ら教授, 政府機関など様々で あ り, ま た業務 対象は研 究か ら事 務
処 理, 政府の ため の個 別 の プロ ジ ェ ク トな ど広範囲に渡っ て い た.それ ゆ え, 利 用 者 別 ・業 務 別の情 報 シス テム ・コ ス トの測定は複雑かつ 困難で あっ た.さ ら に, 当時の コ ンピュ ータ は非 常に高 価であ り追 加 投資 を行 うこ と は容 易で は な かっ た.この ような 状 況 下にお か れ た各大学
は経 済学上の 分配 理 論をコ ンピュ ータの 資源 配 分に応用 し, ユ ーザーの 利用に応 じて料金を徴 収 し始め た. こ れ が今 日の チャ ージバ ッ ク ・シス テ ム の 原型 と な る もの で ある (陳豊 隆
[1992]),
情 報シ ス テム部 門が プロ フィ ッ ト・セ ン ターと して認識 さ れて い る場合 ,情 報シス テ ム ・コ
ス トを料金 と して課金する こ とには十 分な意味が ある.な ぜ な ら,情 報シス テ ム資源 が有限で ある の に対 し, 情 報シ ス テ ム の 重 要性と複 雑 性は増 加 して きてい るので , 情報シ ス テ ム資源の 効 率 的利 用や 情報シ ステ ム 運用に対 するユ ーザーの
参加 意識 を高め なけれ ば な ら ない か らで あ
る .こ れ を達成 するため に は 配 賦よ りも課金の方が 優れ て い る と考え ら れて い る (溝口周二
[1993]).
チャージバ ッ ク ・シス テム を利用する こ とに よ り, 情報 シス テム部門の 業 績 評価は明確 にな り, ユ ーザ ーの 利 用 量に連 動 した課 金が ユ ーザ ーの 利 用 総 量 を抑 制 する ことに なっ た.ま た, 課 金 率に政 策 的傾 斜を設 定 する こ とに よっ て 情 報シ ス テム需要の 平 滑 化 を進め る こ と がで き
た ,この よ うに して チ ャージバ
ッ ク ・シス テ ム は アメ リカ国内を 中心に普及 してい くこ と と な
っ た.
チャージバ ック ・シス テ ム の 特徴は情 報シス テ ム ・コ ス ト を何 ら かの基準 (例 えば, ユ ーザ ーの利用 した CPU 時間や 印刷行数)に基づ い て 設定さ れ た料金の 徴収を 通 じてユ ーザ ーに負
担 させ る ところ に あ る(Bookman [1972]).
こ の手法の利 点は2つ ある .1つ は業績 評価な どに役立つ 会計 情 報を提 供で きる こ とであ り,
もう1つ は課金率を 政策 的に設 定するこ とに よっ て 情 報シ ス テ ム 需要を統 制 し, 情 報シ ス テム
の効率的な 運用を可 能にする こ とで あ る.こ の 2つ の利 点の た めに チ ャ ージバ ッ ク ・シス テム は今 日 まで改 良 を 加 えら れ な が ら採用 さ れ続けて き た.
チャージバ ッ ク ・シス テ ム が採用 さ れ る か どうか は情 報シス テ ム部門 が コ ス ト・セ ン ターか プロ フ ィ ッ ト・セ ン ターか によっ て異なっ て くる.すな わ ち,コ ス ト・セ ン ターで あ れ ば情 報
シス テ ム ・コ ス ト を個 別に と ら えず本 社 費へ 直 接算入する手 法や,個 別に と ら えるが共通 費と して配分 する手法が用い ら れる.ま た, プロ フ ィ ッ ト ・セ ン ターで あれ ば課 金に よる チ ャ ージ
バ ッ ク ・シ ス テム とい う手法 やア ウ トソーシ ング とい う手 法が用い ら れ るこ とにな る.
1.2 集 中型情 報システム か ら複 合 型 情 報 システ ムへ の移 行
昨今に お け る社 会全 般 的な財 ・サービス市場の成 熟 化 と多様 化の流れ は売 り上げの低 下 と利 益の減少をもた ら し,企業に対 して よ り市場に 近い情報の 獲得やネッ トワーク の構 築に よ るバ
リュ ーチ ェ ーン の再 構 築を求める こ と に なっ た.ま た,情報シス テ ム に対 する需 要の増 加はユ ーザー数の増 加 と多様化 を促 すこ と となっ た.この ようなユ ーザ ー数の増 加 と多様 化がコ ンピ
ュ ータの 普及 と相互 に影響 を及ぼ し あっ た結 果 ,従 来か ら あ る単純 な大量情 報処 理プロ セス と は別 に小 規模で多様 な情 報シス テ ム に対す る需 要を増 加 さ せ るこ とになっ た.
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