キ ャンパ ス ・メール学習 コースウェアの開発
‑CA
I総合教育 システム
(PC‑SCAI)の利用例 ‑
北 原 栄 子
1
.はじめに
コ ン ピュー タを教 育 に利 用 す る
1つ の形 態 と して,
CAI(Computer AssistedInstruction)がある。 これは,学習者の能力 に応 じた 「 個別学習」
を目的 とす るもので, コンピュータが,学習者 に学ぶべ き教科の内容の説明や 問題,解答, ヒン トなどを,あ らか じめ作製 したシナ リオに基づいて提示 し, 学習者 はコンピュータと対話 しなが ら,教科の内容を理解 した り,操作や技能 の習熟を図 るとい うものである。 この対話型教材を コースウェアとい う
。アメ リカのテ ィーチ ングマ シンに始 ま り,
B.F.スキナ‑の プログラム学 習理論 を基 に した この
CAIがわが国に紹介 されたのは
,1960年代 は じめ と早 い時期であ った。 しか し,当初の
CAIが大規模 な‑ ‑ ドウェア環境を必要 と
したため,高価 な教育設備 とい う事 で実 際の教育 にはなかなか使用 されず,
1970年代の終わ りか ら
1980年代 にかけてのパ ー ソナル コンピュータの普及 を 待っ事 になる。
1975
年,わが国に
「CAI学会」が創立 され理論的 ・実践 的研究が進 め られ た。それか ら
,17年が経過 している。 この間の‑‑ ドウェアの発展やメディア の多様 な出現 は
,CAIの方式を変えて きた。その発展 は一般的に第
1世代
CAI( 伝統的
CAI ) ,第
2世代 CAI( 環境型
CAI ) ,第
3世代
CAI( 知的
CAI)と分類 されてい る。現在 までの ところ,
CAIには
2つの問題が指摘 されてい
〔135〕
136
商 学 討 究 第
42巻 第
4号 る。
第 1の問題 は,あ らか じめ想定されたシナ リオによったコースウェアを学習 す るため,学習者か ら質問が出来ないことや,予想 されていない質問や解答 に 対処で きないとい う教授方法に関わるものである。 この点の解決の方向は,第
5世代 コンピュータといわれる並列処理を可能 にしたハー ドウェアの環境の も と,人工知能や認知科学など知識情報処理理論を基礎 に した知的
CAI
(Inte‑ lligentCA士:ICAI) ,知 的個別指導 システム
(IntelligentTutoringSys‑ tem :ITS)として現在盛んに研究が進め られているところである ( 第
3世代
CAI ) 。
第
2の問題 は, 学習教材の説明, 学習者の正答誤答, 学習者 に与えるヒン ト, 学習者が引き起 こすか もしれないあ らゆる誤動作など, 学習者 に提示す る
CAI用教材 (コースウェア)を設計 し, コンピュータ‑実装す ることにかか るコス
トパフォーマ ンスの問題である
。この コースウ ェアの作成 を支援す るもの と して,オ ーサ リングシステム
(Authoringsystem :教材作成支援 システム)が開発 された。オーサ リン グシステムを利用す ることで,教師は,プログラム言語や コンピュータに関す る知識がな くて も,エディタの指示 に従 って教材を入力 し,比較的簡単 にコ‑
スウェアが作成で きると言われている。市販 されているオーサ リングシステム は,教材の画面入力に関 してはかな り改善 されて きている。テキス ト画面 は ワープロなみの文章作成編集能力を もってお り, グラフィック画面 はタブレッ トやメニュー,アイコンによって操作でき,アニメーション画面の作成 も容易 になってきている。 しか し,教授方法に関わるコースウェア設計の部分 は依然 として難 しく,作成者 は多 くの時間を費やさざるを得ない。学習法に優れた現 場の教師が,その知識を生か して容易に作成す るためには,現在のオーサ リン
グシステムにはまだ改善の余地があると思われ る。数1
0分の授業のコースウェ ア作成のために数
10時間 も必要 とした ら,その システムは実用 とはな り得ない であろう
。本稿では, このオーサ リングシステムを含む
CAIシステム ( オーサ リング
キャンパス ・メール学習コースウェアの開発
137ツール とも言われ る)を主題 として,
2.で は,わが国の
1985年か ら現在 に 至 るまでの コンピュータ教育事情 と
CAIにつ いて概観 し,
3.で は
CAIシ ステムについて
,4.で は
CAIシステムの
1つであ る日本電気
(NEC)の
PC‑SCA
Iを使用 して開発 した 「キ ャンパ ス ・メール学習 コースウェア」を紹介 す る。
2 .コンピュータ教育と CA】
わが国の情報処理教育 の歴史 は
1950年代後半か ら始 ま った といわれ る。 ま ず大学や研究所の研究機関で研究,開発が行われ,国産 コンピュータが商品化 された
1960年代 には, コ ンピュータ教育が大学 のカ リキ ュラムに取 り入れ ら れ始めた。やがて,情報化社会 に対応す るための産業界の情報処理技術者の需 要 は,教育面での対応を迫 り,
1969年 には高等学校 の学習指導要領 に情報処 理 に関す る科 目が導入 された
。1970年 に商業高校 に情報処理科,
1972年 に工 業高校 に情報技術科が設置 された。企業内や専門学校での情報処理教育 も盛ん
に行われ るようにな った。
1970
年代の終わ りか ら
1980年代 にかけて,
LSI技術の進歩が,低廉で性能 の良 いパーソナルコンピュータを市場 に送 り,いわゆる 「 パ ソコンブ「ム」を 作 りだ した。今 までは高価で操作の難 しか ったコンピュータが一般に普及 して いったのである。 コンピュータ教育の‑ ‑ ドウェア環境 はメイ ンフ レーム ・コ ンピュータか ら, スタ ン ドア ロン型 マイ クロコンピュータへ と移行 してい っ
た 。
しか し,教育界の状況が, このよ うな コンピュータ産業界の発展 と同時に進
んで いた訳で はなか った。そのため
,1984年, 当時の中曽根首相 は政府の重
要政策 として「 教育改革」をかかげ,臨時教育審議会 ( 以下 「臨教審」 とす る)
を設置 した。その第
1部会の審議事項を
「21世紀を展望 した教育のあ り方」 と
し,検討課題の
1つに 「 高度科学技術化,情幸 酎ヒ‑‑等 に対応す る教育のあ り
方」をとりあげ,高度情報化社会 に対応すべ く, コンピュータを活用 した学校
138
商 学 討 究 第
42巻 第
4号
教育 をめざ した答 申を発表 したのであ る ( 第
1次答 申
(1985年)〜第
4次最 終答 申
(1987年) ) 。すなわち,「 情報化社会への対応」 は,「 国際化
」「 個性主 義」 とな らんで,政府の教育改革 目標の
1つ とな ったのである。臨教審の答 申 を うけ,政策実行 のために,
1984年 には文部省学術国際局 に 「 学術教育課」
が設置 された
。1985
年 は 「 情報教育元年」 または 「マイ コ ン教育元年」 とも言 われ, コン ピュータを学校教育で活用 してい くとい う一定の方 向が示 された年であ った
。CA
Iが どのよ うな状況の もとで コンピュータ教育 に利用 されて きたかを知 る ために, コンピュータ教育 における教育行政の方針, コンピュータ教育を進め るための‑ ‑ ドウェア環境 と しての学校‑の コンピュータ導入計画, ソフ ト ウェア環境 としての
CAIの開発 などについて
1985年か ら現在 に至 る状況 につ いて述べ る。
2, 1
コンピュータ教育 における教育行政の方針
1985
年
3月,文部省社会教育審議会教育放送分科会 ( 後 に教育 メデ ィア分 科会 と改称) は,『 教育 におけるマイクロコンピュータの利用について 』
〔5〕
の報告を発表 した。 これ は,「 教育 の場 において,マイ クロコンピュータを導 入す る際の指針」 とな ることを意図 した ものであ る。学校教育 にお けるコン
ピュータの利用 については 「 情報化社会 に対応す る初等 中等教育のあ り方 に関 す る調査研究協力者会議」での提言 もあ る
(1985年
8月) 。 これ らによれば, 学校教育 におけるコンピュータの利用の形態 は
(1) コンピュータを利用 した学習 ソフ トウェアなどによる教育
(CAI )
i(2) コンピュータに関す るいわゆる情報処理教育
(3
)教科の指導計画作成や学校経営援助のための利用
(CMI‑Computer ManagedIIIStruCtion)とい うことがで きる
。 (2)は, コンピュータの機能や操作のよ うな技術的側
面の基礎だけではな く, ソフ トウェアに関す る知識 ・能力あるいは社会 におけ
るコンピュータの役割や,人 との関わ りなどについての教育である。 これは,
キャンパス ・メ‑ル学習コースウェアの開発
139臨教審の答申の中では,将来の高度情報化社会 に生 きる子供達 に必要な資質 と
しての 「 情報活用能力 (コンピュータ ・リテラシイ)」の重要性 と,学校教育 での育成 とい う形で表現 されている。
教育課程審議会 は, この答 申を検討 し教育 内容 と教育方法 の改善 を答 申 し た。 これ らを盛 り込んだ形で,文部省 は1
989年
3月,新学習指導要領を公示
した。教育 内容 に関 して は, 「 情報活用能力の育成」 とい う見地か ら,1
993年度か ら,中学校の技術 ・家庭科 に選択科 目として, コンピュータの操作を学 習す る新領域 「 情報基礎」が設 け られ ることにな った。高校で は,数学,理科 で コンピュータを活用 した授業を位置づ け1994 年度 か ら実施す る事 にな って いる
。教育方法に関 しては,学習の動機づけや理解の促進など効果的教育のた めにコンピュータや VTR などの教育機器を活用す る事を勧めている。
2. 2
学校へのコンピュータ導入計画
1985
年,文部省 は
5カ年計画で 「 教育方法開発特別設備費補助」をスター トさせ,新規事業 として初年度20 億円を割 り当てた
。この補助金 は公立の小 ・ 中 ・高 ・特殊教育諸学校で,パ ソコン, ワープロ, ビデオデ ィスクなど教育設 備,機器を購入す る際,義務教育 には
2分の
1,高等学校には
3分の
1の補助 金 を出す もので,学習 システムや
CAIシステムの導入 ・開発 などを も補助の 対象 とす るものであ った。1
989年 までには総額
123億 円計上 されて きた。その 結果,
5カ年計画の最終年 には全国公立学校の設置台数 は1
8万台を越えること
になった ( 表
1) 0
文部省 は引 き続 き,1
990年か ら新たな
5カ年計画 として,1
994年 までには, 小学校の8
0%には各3台,20% にはパ ソコン教室を設置 し各22 台,中学校の70
%にはパ ソコン教室を設置 し各22 台,3
0%には各8台,高校 はすべての普通高 校 にパ ソコン教室を設置 し各23 台ずつ,総計約32 万台を導入す る計画である。
パ ソコン教室の設置にともなって, コンピュータの利用形態 はスタ ン ドアロン
型か ら
LANを構築 したネ ッ トワーク型へ となって きている。
140
商 学 討 究 第
42巻 第
4号
表 1 コンピューターの設置状況 ( 公立学校)
学校区分年度 1983 1985 198亡き 1987 1988(%) 1989 1990.3 19
8
a5.1 1985.10.1 1986
.3.31 1987.3.31; コ ン
ピュータ;1枚平均(%) (%) (%) (%) (%)
設置台数 設置台数
′1 0.6 2.0 8.5 13.5 2
1
.0 30.9 23,572 3.1中 学 校 3.1 12.8 22.8 33.5 44.8 58.9 34,069 5.5
高等学校 56.4 81.1 86.3 93.7 96.3 97.8 121,900 29.8
特殊軟膏 ‑ 21.1 40.3 49.9 62.9 71.0 2,577 4.1
2 .3 CAl の開発
学校教育 に
CAIが導入 されたのは,端末機
20台を使 って,国立教育研究所 の実験的プロジェク トとして実践 された東京都葛飾区常磐中学校
(1974)や, 筑波大学学術情報処理セ ンターによる茨城県竹園東小学校の 「マイコンクラス ルーム
CAI 」が先進である
(1978)〔1〕
〔4〕 。1985
年国立教育研究所で は,
CAI教育 の実践サ ンプルを示すために研究 プ ロジェク トを発足 させた。 それ は,研究所が
CAI学習 システムの設計や教育 ソフ トウェアの開発を行い,全国各地の研究実践校
10校以上を,それぞれの地 域の教育セ ンターと共同 して指導す るとい うものであった。研究実践校には,
16ビッ トのパ ー ソナル コ ンピュータを
1学級の人数分設置 し,学習用 ソフ ト ウェアを,正規の授業で活用 した ( 対象 は高等学校) 。 このプロジェク トは,
CAI教育 システムを開発 と実践の両面で捉えた もの として注 目された。
この年,社会教育審議会教育 メディア分科会 は,教育用 ソフ トを開発す る専 門衷や, 自作 ソフ トを作成す る教育関係者の参考 になるよ うにと 「 教育 ソフ ト
ウェアの開発指針」をだ した。また,品質評価基準 もな く学校現場 に流布す る
学習 ソフ トを危慣 した 日本教育工学会で は,「 学習 ソフ トの開発環境 シ ンポ
キャンパス ・メール学習コースウェアの開発
141ジューム」を開催 し,学習 ソフ トの品質の向上 を意図 した。 また
,CAI学会 は
「CAI学習 ソフ トの評価基準案 」
〔6〕を公表 し,
113項 目のチ ェック リス ト をあげ,メーカーはソフ トの作成,出荷 に際 して この基準案のチェックを ク リ アす るよ うになったが,残念な事 にこのチェックはソフ トウェアの内容 に関す るものではなか ったO
教育用 ソフ トや CAIの研究 にとって,
1986年 に設立 された文部省 と通商産 業省の共同所管 になる 「 ㈲ コンピュータ教育開発セ ンター
CEC」の果 た した 役割 は大 きい。
CECは現在まで,異機種間の ソフ トウェアの互換性を考慮 し た教育用 コンピュータシステムの標準化や,教材作成支援 システムの開発,敬 育用 ソフ トウェアの調査研究 など
CAI導入のために組織的な活動を行 って き ている
。導入 されたパ ソコンを教育の現場で活用 してい くためには,学習 ソフ トが不 可欠である
。わが国で は,‑‑ ドウェア購入のためには予算がつ くが, ソフ ト
ウェア購入のためには予算がつかないという現状があり,近年,教育用サイ ト
・ライセ ンス制度が導入 されてきた とはいえ,予算不足のためソフ トを購入す ることがで きなか った り,市販 ソフ トを授業の教材 として使お うとす るとき不 満があ った りして,教師が 自作の ソフ トを作成す ることが,望ま しいとされて きた。 しか し,それには非常な時間 と労力が要求 され る。教師が開発 した自作 教育用 ソフ トを,データベースに登録 して,パ ブ リック ・ドメイ ンソフ トとし て公開す る事 も試み られている
〔13〕が, とて も充分 とはいえない
。1990
年の 日本教育振興会 の調査 によれば,21 台以上 の コ ンピュータを保有 し,
LANを構築 している小学校,中学校の うち,
LANで利用で きるソフ ト が足 りないため利用率がそれぞれ20
.7%,25.0%にす ぎない とい う。文部省 が, コンピュータ利用の実証的な研究や,学習指導用 ソフ トウェアの開発など
につ いて,都道府県の教育委員会 に委託 した り
(1990),通産省が,民間の ソ
フ ト会社に無利子融資を行い 「 情報活用能力養成 ソフ トウェア」の開発を促進
しよ うと してい る
(1991 )など,教育用 ソフ ト供給の努力がな されて いる現
状である。
142
商 学 討 究 第
42巻 第
4号
3.CALシステム ( オーサ リングツール)
コ ンピュータが学校 に導入 された当初,学習 ソフ トの開発 は
BASICなど の汎用言語でお こなわれていた。
〔13〕に登録 されているソフ トもほとん どが
BASICで書かれている。 しか し,大 きな学習 ソフ トを作 ろ うとす ることは, プログラム言語 に精通 していない教師にとっては難 しく, 自作の学習 ソフ トを 作成 しよ うとす ると
CAIシステムを利用す ることになる
。現在市販 されてい る
CAIシステムのほとん どが個別指導型
CAIシステム といわれ るものであ る
。この システムは一般的に
①学習実行管理 システム ( エグゼキュータシステム)
②教材作成支援 システム ( オーサ リングシステム)
③授業管理ネ ッ トワークシステム
④評価支援 システム
の
4つの システムか ら構成 され る
〔1〕 。( スタン ドアロン型では③の システム は必要ない。 )
CA
Iシステムで コースウェアを作成す る手順 は, まず作成す る教材の内容 を分析 し,コースウェアの設計 を行 う。これ はコースウェアの 目的, 教育 目標, 利用形態,以前の学習状況などを考慮 して コーズウェアの開発の全体構想を決 めることである。次に,オーサ リングシステムを使用 して, コースウェアを作 成す る。コースウェアは学習者 に提示す るフレーム(
Frame)と学習制御データ
( 以下 「ステ ップ」 とす る) とメ ッセー ジデータ ( KR情報)か らなる。
フ レームはコースウェアを構成す る単位である。 コースウェア作成者 は, フ
レームによって学習者が学習課程で何を学び, どのように思考す るのかを示す
のである。フ レームは, 学習の指示,内容の説明,例示 などを提示す るために,
複数のメデ ィアフレーム (グラフィック,テキス ト,イメージ画,音声,アニ
メー ション)を使 って表示す る画面 に,学習者が質問にたい して解答す るため
の解答欄, フレームの表示を一時停止す るポーズ ( 時間を指定)などの要素を
含めた ものである。
キャンパス ・メール学習コースウェアの開発
143ステ ップは教授方略 とも言え るもので,オーサ リングシステムの性能を左右 す るものである。ステ ップは学習者 にどのフレームを提示 し,学習者か らの反 応 に対 して次 にどのフ レームを提示す るかなどを決める,いわば コースウェア の進行役 ともいえ るものである。ステ ップの大 きさは,フ レーム内の情報や反 応の組み合わせを変える事 により調節で きる
。ステ ップが粗す ぎる場合 には学 習者の理解度がわ るくな り,細かす ぎる場合 は,時間がよけいにかか って学習 が くど く感 じられて,学習意欲をそがれた りす る。そのプログラムのステ ップ が学習者 に適当であったかどうかの検証 は,実施 した結果の理解度や成績など によって検討す る事がで きる。
KR情報 は,質問に応答 した学習者 に提示 され るコンピュータか らのメ ッセージである。 フレームもステ ップも更新 ・削除な ど編集す ることがで きる。で きあが ったコースウェアはコースウェアデバ ッグ 支援機能でチ ェックやテス トが行われる。
次に,学習者が このコースウェアを実行す るわけだが, この時エ グゼキュー タである学習実行管理 システムが起動する。学習者 はコースウェアを選択 し, 氏名を入力す る。 システムは学習者の以前 に行 った学習の状態などをデータと
して用意す る。 学習者 は,キーボー ドやマ ウスを使 って, 提示 された コースウェ アに従 って,問題 に解答 した り,コンピュータか らの問い合わせに応答 した り,
ヒン トを参照 しなが ら学習を進めてい く
。学習実行の課程で, システムは学習 者の回答,応答時間,応答 カテゴ リー等を記録 し,それを評価 してその後の課 題を学習者 にとって最適 な ものに変更す ることもある。記録 は次回の学習者情 報 として保存 され評価支援 システムのデータとなる。ネ ッ トワーク型で学習を 実行す るときには,授業管理ネ ッ トワークシステムがあわせて利用 され る。
評価支援 システムは学習終了後の コースウェアや学習記録の分析を支援す る ものである。各学習者の理解度や学習課程を分析 した り,各 フレームにたいす る応答を分析 して コースウェアの評価を行い,改訂や教材の指導方法の資料 と す る。
市販 されているシステムによって は, C言語,
BASIC言語等で書かれたプ
ログラムをコースウェアに組み込む ことができるものがある。それによってシ
144
商 学 討 究 第
42巻 第
4号
ミュレーシ ョンを見せた り, コースウェア実行中にプログラムを実行 させ るな どの柔軟 なシステム とな っている。また,ワープロソフ ト「 一太郎」の文書 ファ イルや
MS‑DOSのテキス トフ ァイル,図形作成専用 ソフ トで作成 したイ メージ画をそれぞれ コースウェアの部品 として利用す るためのコンバータを用 意 しているシステム もある
。近年,マルチメディア
CAIシステム といわれ るよ うに, コースウェアの提 示 にさまざまなメディアを利用す ることがで きるよ うになった。 ビデオディス ク, ビデオテープ,
CD‑ROM,音声合成,画像応答 システムな どか ら得 ら れ る映像や,静止画面を見て理解 した り,音声による説明を受 けた り,通信機 能を使 って情報データベースを利用す るなど,表現豊かな学習 ソフ トが作 られ るようになって きている。 しか し,依然 として教材作成者の開発負担の問題 は 残 されたままであ り, この点での
CAIシステムの開発が期待 される。
4.
キ ャンパ ス ・メール学習 ユー ス ウエ ア
本学情報処理セ ンターで稼働 しているキ ャンパス ・メール ( 学内メール)の システムは,
<Mai1‑RunnerⅡ>とい う富士通
B・S・Cの製品である。セ ンター実習室か らは,通信 ソフ ト"
MailTerm''を使 い, フルス ク リー ン モー ドで
<Mai1‑RunnerⅡ>を提供 してい る。現在 は情報処理セ ンターの 端末,研究室 ・ゼ ミ室の端末
(NEC/FACOM/EPSON/IBM etc)か ら 使用す ることができろ。昨今のパ ソコン通信のブ‑ム も手伝 って,キャンパス
・メールの利用 については関心が持たれている。 このシステムについては,学 内の利用 に限定 され る,アクセスが遅 い,新 しいメールやメ ッセージが上位 に 出ない,内蔵 ワープロの使 い勝手が悪いなどの問題が指摘 されているが,学生 のパ ソコン通信の実習 とい う意味では十分価値があると思われ る。情報処理セ ンターで は春期 と秋期にこのキ ャンパ ス ・メールの講習会を行 った。その時の 経験 と,キ ャンパ ス ・メールの掲示板「フ リーボー ドあれ これ」にの った
Q/Aを もとに,
PC‑SCAIを用 いてキ ャンパス ・メール学習のための コースウェ
キャンパス ・メール学習 コースウェアの開発
145アを作成 した。実際に通信 しなが ら,利用の仕方を学習す ることはで きないの で, ここでは
<Mai1‑RunnerⅡ>を擬似的に経験す る事によって学習 しよ うとす るものである
。すなわち,‑‑ ドの環境 としては,
LANで 情報処理セ ンターと接続 している必要 はない
。PC‑SCAIには,スタ ン ドアロン型 とネ ッ トワーク型があ り本稿では前者
(PC‑SCAI‑Tl)を使用 した
。PC‑SCAIオーサ リングツールの概略を図
1に示 した
。PC‑SCAIは
C言語 とアセ ンブ
図
1 PC‑SCAl オーサ リングツール
146
商 学 討 究 第
42巻 第
4号 ラ言語によって組 まれたシステムである。
機器構成 は,図
2の とお りである。
図
2オーサ リングシステム機器構成 本稿で作成 した学習 コースウェアの概要を図
3に示 した。
図
3キャンパス .メール学習コースウェア概要
キャンパス ・メール学習コースウェアの開発
147この学習 コースウエアは,情報処理セ ンターの教育用端末室の
NECPC‑9801
で,いっで も誰で も利用で きるもの とした。‑‑ ドデ ィス クに学習実行 システム
(PCSCAI‑S)とキ ャ ンパ ス ・メール学 習 コース ウェア
(C‑MAIL)
を いれてお き,起動 メニ ューか ら選択 して実行 す る
。また,
PC SCAI‑Sと
C‑MAILはフロッピデ ィス クで も提供す るので,
640KBの
PC‑9801があれば利用者 は借 り出 して研究室,ゼ ミ室などで学習す る事 もで
きる。不特定の学習者を対象 とするので,予め学習者情報を登録す ることを し ないで,学習実行 システムの学習者情報処理を 「 新規登録」に して,学習者を 自動的に登録することに した。
コースウエアを開始す ると,最初に簡単なア ンケー トに答えて もらい,学習 者がどのように学習 した ら良いかのモデルを示 した。学習者 はそれを参考に し てつ ぎの処理‑進む
。『 情報処理セ ンター案内』は,情報処理セ ンターの利用 がまった く初めての人,キャンパス ・メールを初めて使 う人などのために,セ ンター利用の際の利用申請の仕方や,セ ンターの施設案内をイメージ画を使 っ て 「目でみる」形で案内するものである。
『キャンパス ・メール学習』では 「キャンパス ・メールガイダ ンス」で概略 を学び,「キャンパス ・メールの世界へ」で実習室端末
FMRを使 ってアクセ スす る方法を示 した。キャンパス ・メールの 「 掲示板」 と 「メール箱」のサー ビスを,それぞれ別の コースとした。「 掲示板」のコースウェアでは,掲示 さ れているメッセージをよんだ り,掲示板 にメッセージを書 き込んだ りす る方法 を学習す る。「メール箱」では,学習者宛 にきているメールを読んだ り,文書 を作成 して,相手 に送信す ることを学習す る。
「Mial‑RunnerⅡ」 で使わ れ る基本的な作業, 例えば, 画面のスクロールの仕方 とか,内蔵 ワープロを使 っ て文書を作成す る,文書の保存期間を見 るなどはサブコースとして,学習のど んなところか らで も参照できるように した。 このサブコースを実行 していると
きは,画面を図
4のように して,その状態を明 らかに した。
148
商 学 討 究 第
42巻 第
4号
【款
諦HIT10
O】の文書の内容です 朝顔胆親 ‡街 板 l
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打ⅠT100
」です .順泣 先週 得点 曲名 歌手名 鰍
ト珪強豪喜
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巨,:轟く琵岩‑=‑‑ 選望≡署≡≡器諾
妻 こ こ 音 頭浸き 遠 軽笹
重=L=ー 義整要望 で
‑
喜 萱讃 ‑
▽ ■ ‑ g * ) 裏
装J繭.・ #
振 J 才 覗 ‑ = 振 J 才 覗 ‑ =
図
4サブコース実行例
『キ ャンパ ス ・メール Q
andA』は,質問箱の形式で,初心者の疑問やエ ラーの対処の仕方,利用のノー‑ウを質問に答える形で提示 した ものである。
これはそれまでに作成 したフレームや前述のサブコース も,適宜ステ ップで呼 び出 して使用す ることに した。
̀̀MailTerm"
で実行す るキ ャンパス ・メールはフルスクリー ンモー ドで
あるため, コースウエアをそれ らしくす るために,フレームを作成する際に工
夫を した。即 ち,【 処理を選択す ると 「 処理実行中」をあ らわす画面を出 して
か ら画面が きりかわる】【マウスカーソルを当て クリックした とき,その部分
が反転す る】【 データ入力部分がブ リンクす る】【スクロールバーやスクロール
ボタンをクリックす ると表示画面が変わる】などスクリーンモー ドのように見
せかけるために,メディアフレームの重ね る順序を工夫 した り,タイマー機能
を使 った り,アニメーション機能を利用す るなどした。また,何度 も使用す る
画面な どは,イ メー ジ画面 と して登録 した。画面 的 には,実 際の
「Mai1‑キャンパス ・メール学習コースウェアの開発
149 RunnerⅡ」の画面を再現で きた。学習者 はユーザ名やパ スワー ド,掲示板 のメッセージ,メール箱の送信用メールなどをフレームの 「 解答欄」に入力 し て,キャンパス ・メールの疑似体験ができるようになっている。
PC‑SCA
Iを使 って 「キャンパス ・メール学習 コースウエア」を作成す る 時に,予想以上に時間が必要であった。原因の
1つには,マニュアルの問題が ある。 『プログラム言語やコンピュータを知 らない教師で も手軽にソフ トが作 られる‑‑』 とい うか らには,事例を含めた分か りやすいマニュアルが求め ら れるであろう
。グラフィック画面で作成中のメディアフレームの残容量 として
%表示がされ, 残容量
0%となると【メモ リがいっぱいです】とい うエラーメ ッ セージがで る。この ときは, 新 しいメディアフ レームを作成す るとよいのだが,
コースウェア作成中に,必要なワーク領域が確保できないために 【システムエ ラーです】 というエラーメッセージがでた り,簡単なアニメーション画面を作 成 して フレームで他のメディアフ レーム と合成 しよ うとす る時,【メモ リ不足 のためアニメーションメディアは提示できません】 というエラーメッセージが でる。 これにたい しては, システムを終了 させて再度処理を行わなければな ら ない。筆者 も, ドライバや漢字変換のため
FEP(日本語 フロン ト・エ ン ド・
プロセ ッサ)を
EMSメモ リ上 において,メイ ンメモ リをで きるだけ大 きくし ておいたが,時々このエラーを回避す ることができなか った
。PC‑SCAIは
1991
年のバ ージ ョンア ップで もメモ リーに関 して は改訂がな く,大 きなコー スウェアや良質のアニメーションを利用す るためには,
EMSメモ リーなどに 対応 したシステムとしてい く必要があろう
。コースウェア作成の前処理 としての教材の設計 ( 教材の構造化)については,
「ISM‑98」(NEC)
という教材チャー ト作成 システムがある。 これは教材を コースウェアにのせ易 くチャー ト( 図式)のかたちで出力す るソフ トであるが, 今回は使用 していない。本 コースウェアでは,おもに情報処理セ ンターで行 っ
た講習会のマニュアルをチャー ト化 して教材の設計を行 った。 コースウェアの
目的と,学習到達 目標を明確にするためにも, このチャー ト化はかな り念入 り
に行 う必要がある。
150
商 学 討 究 第
42巻 第
4号
今回使用 した
PC‑SCAIが開発 された
1986年当初 は, このシステムを活用 す るユーザにとってキーボー ドか らの入力 は 「 難 しい」 とされ,タブレッ トを 入力手段 ( テキス ト入力ではキーボー ドも併用) としていたが,
1991年 には サブセ ッ トとして簡易 コースウェア作成 ツール
「FrendlyCAT」 が発売 され た。 これ はマウス とキーボー ドを入力手段 とし,アイ コンやホ ップア ップメ ニ ューか ら必要 な機能をマウスで操作 して コースウェアを作成す るものであ る
。作成 したコースウェアはす ぐに確認で き,
PC‑SCAiで編集す ることが できるので手軽なツール という事がで きる。
4.
おわ りに
1992
年以降の新教育課程の実施 にともない,教育現場‑の多量のパ ーソナ ル コンピュータの導入が予想 され,‑ ‑ ドウェアを活用す るための
CAIシ ステムやオ‑サ リングシステムの重要性が認識 されて きている.市販 されて いるシステムは,本稿で 使用 した
NECの
PC‑SCAIの他 に も,富士通の
SCHOOL‑ACE, 日立 ソフ トエ ンジニア リング社の
MIGHTY‑CAL2, ローヤルカ レッジの
TMOS,
SCCの
PINE‑ACEⅡなど
30種以上 あ り, ソ フ トだけの価格で は
2万 円
〜150万円 ( 最多価格
20万 円) ,
TDKの
TUTORシステムは‑‑ ド・ソフ ト一体化のため,
30端末構成で
5000万 円 とい う価格 である。今後使い勝手の良い廉価なシステムが発表 されると思われ るが,実際 に作業を した筆者の経験か らいえば,実用的なコースウェアを作成する事 は, メーカーが宣伝するほどには 「 簡単」であるとは思われない.
CA
Iが普及す るためには, コンピュータの専門家, メディアの専門家 と教 師が分業 ・協力 しなが ら,教育用 ソフ トウェアを作成す ることができるような 理論的 ・社会的な体制が必要であると思われる。その 1つの具体的な提案 とし て,
〔10〕は,現場教師の優れた教授法をモ ジュール化 して知識ベース とし, それを用 いて コース ウェア作成支援 エキスパ ー トシステムを構築 し, コン
ピュータに詳 しい技術者
(SME‑SubjectMatterExpert)が,実用的な コ‑
キャンパス ・メール学習コースウェアの開発
151スウェアを作成す るという方向での検討を行 っている。
さらに,オーサ リングシステムでコースウェアを作成 し,実際の学習の場で 利用す るときに,解決 されなければな らない問題点がある。それは,
CAIシ
ステム,オーサ リングシステムが特定の機種上で しか使用や きないとい う汎用 性の問題である。現在市販 されているシステムの大部分 は,それが開発 された 特定の機種や
OSを対象 としているため,それによって作 られたコースウェア は限 られた範囲内で しか使用で きない。そのため,機種や
OSが変わると,そ れまでの コースウェアがまった く使用できないという事 になって しまう。人的
・物的資源の活用の意味か らも,作成 された教材 ソフ トウェアはで きるだけ多 くの機種上で使用で きる事が望 ま しい。この点に関 しては, 現在までのところ前 述の
CECを中心 に,汎用性の高い
C言語や
PASCALなどでイ ンタプ リタ 型の
CAI言語 を作 り,その言語でオーサ リングシステムを構築 し, コース
ウェアを作成す るという研究が進め られ,一部実用化 されている。
本稿で紹介 したキ ャンパス ・メール学習 コースウェアは,今後多 くの学習者
に利用 されることで,不足の部分などに修正や改訂を加えなが ら,さらに有効
なコースウェアに してい く予定である。
152
商 学 討 究 第
42巻 第
4号 参 考 文 献
〔1〕中山和彦 ・ 木村捨雄 ・ 東原義訓著 :「コ ンピュー タ支援 の教育 システム
ー CAI 」, 東京書籍
(1987)〔2
〕後藤忠彦 :コンピュータと教育情報 システム」 ,東京書籍
(1986)〔3
〕西之園春夫 : 「コンピュータによる授業設計 と評価」 ,東京書籍
(1986)〔4
〕産業能率大学総合研究教育工学研究セ ンター 「 教育 はコンピュータによって どう 変わ るか
CAIのすべて」 ,産業大学出版
(1985)〔5
〕文部省社会教育審議会教育放送分科会 「 教育 におけるマイ クロコンピュータの利 用 について」( 前掲 〔2
〕pp.1164‑182)〔6
〕菊川健 :
「CAI学習 ソフ トウェアに関す る品質基準 について」( 前掲 〔2
〕pp. 41‑44)〔7
〕中野照海 ・平沢茂 : 「 実践教職課程講座
14‑教育 とメデ ィアー」 , 日本教育 図書 セ ンター
(1988)〔8
〕三宅 なはみ : 「コ ンピュータを考え る :コンピュータ リテラシ‑」 ,佐伯編 『 教 育 の方法 第
10巻教育 と機械
Ⅳ‑1』pp.120‑159,岩波書店
(1987)〔9
〕浜野保樹 : 「ハイパーメディア と教育革命」,アスキー出版
(1990)〔10
〕田村 ・渋谷 ・佐藤 :コースウェア作成支援エキスパー トシステムに関す る一考察
‑ 『 知識 と操作』モ ジュールの作成 ‑ 「 情報処理学会報告書
」91‑CE‑15, 情報処理学会
(1991 )
〔11
〕文部省編 : 「わが国の文教施策」昭和
60年度〜平成
3年度
〔12〕
「 第
7回朝 日
CAIシンポ ジューム リポー ト」 ,朝 日新聞社
(1991 )
〔13〕 「'90
年新作 自作教育 ソフ ト年鑑」 , 日本電気
(1990)〔14〕NEC