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(27)
商 事 危 瞼 分 散 論
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木
曾 榮 作
一一203‑一
一︑商事危瞼の熾酬念F止型態
(≡)(二 〕
自然の物理的危害に基く財産損滅の危瞼
生産過程の上に於ける不確定性
豫期に反する個人的行爲の逸脱に基く就会的危瞼
個人の知識欠如に基く危瞼
市場危瞼
二︑商事危瞼の分散型態︑
ム危瞼除去方法の型態
e,有害な事態嚢生の防止
⇔不確定性除去のための豫見叉は研究調査
\日諸危瞼の結合︑
商事危瞼分散論
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ノ 昏一一204一
(28)
口
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商事危瞼分散論
四積立金・補償金又は危瞼の相殺
B危険韓嫁方法の型態
日企業﹂者・投資者叉は㎜労働者への危除鵬臨鐸嫁
ω衷熟束者への危論鵬輯嫁}
商事危瞼の概念と型態
総ての経濟活動は︑その型態と程度とを異にするとはいえ︑常に或る﹁不確定性﹂(q昌8肖宮冒ξ)を俘うもので
り ヨ ある︒これを﹁経濟危瞼﹂(国88目ざ団尻犀)叉は﹁商事危瞼﹂]W易訂霧面︒剴﹃犀)と稻する︒
この種の危瞼の概念は︑費用(Oo石︒δ)︑損失(目o器,及び損害(∪鈎目蟄σq①)に樹する不確定性を意味するものに外
ならない︒
一企業過程に於て︑資本の喪失即ち損失が確實に豫見せられる場合にあつては︑これを費用の一項目として算定す
ることが可能となるが︑これに反してその獲生が不確實な場合に於ては︑その獲生は男困oぴ暮暮ξに關する判断と
なつて︑切駐犀に關する一問題として取り上げられること﹂なる︒
或る学者は︑危険の普遍性について次の如ぐ述べている︒即ち﹁富の所有者は︑若し彼が理性的な人間であるなら
ば︑その富を或る事情で酒費に充てない限りは︑何等か生産的な企業に必す投資するであろう︒而も︑.投資するから
には︑他人の不正直さやその財産の所有橿値の低下叉は延佛による貨幣償値の攣化などに基く投資の部分的損失とい
う危瞼が存するであろう.若し彼がその富を正貨(oΩ娼㊦90)の形として蓄藏して危瞼から冤かれようとするならば︑
盗難の惧れが存するー!勿論︑利得の機会などは放棄しているとしても︒また︑そめ富を直ちに消費するように決意
,
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一205‑一 (四)、
したとすれぽ︑彼は貧困化するという危瞼を敢て冒すごと﹂なるものである︒L
以上の危瞼の存在は吾人の就会生活の上にあつて︑屡π髄鹸する所ではあるが︑商業活動に於てこれらの危瞼稜生
が重大な考慮の封象として吾人の關心を喚起するようになるのは︑一つの危瞼獲生の結果がその所有財産叉な他の利
ロヒもへもるも釜樹象の全膣に謝して︑相封的に大なる損失叉は損害を及ぼすに至る場合に於てfある︒O冨昌霧O・国鴛臼賢はか﹂
るいわば商事危瞼を襲生的観鮎から吹の如く型態分類を試みている︒(︑飼
ω自然の物理的危害に基く財産損滅の危瞼︒.
この種の危瞼は︑暴風雨︒洪水・火災・降霊等の所謂︻不可抗力L(P︒諺o協Ooeの部類に属する自然災害であ
るが︑商業活動にあつては最も重大な結果を襲生する性質のものである︒農産物の栽培︑,並びに家畜の飼育及び蓮途
に於ては特に重要な關係を有する︒商品の総原償(日9己8︒︒守算定には︑か﹂る危瞼豫防に要する費用及び危瞼嚢
生に基く生産上の損失がその中に含められなければならない︒
倒生産過程(団ぎ働ロ︒葺く①鷲08コ自︒慶)の上に於ける不確定性︒
これは前項と密接に關連しているものであるが︑生産過程上に於て‑
㈲冒原料品の強靭脚度(0Ω訂①置σQ酔げOh]B暮ゆ円冒冨)
切帥労働の数憲丁度(囲需①O試くOβ①の︒︒O{蜀び05
似天候の攣化(ぎ藝8窪曇げ巴︑
等の測定が慮用科学の嚢達の現段階にあつては︑必すしむ完全とは言い得ないために︑商事活動を投機的たらしめる
噛こと﹂なるものである︒
㊨豫期に反する個人的行爲の逸睨に基く就会的危瞼︒
商峯危瞼分散論,
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一 ・206̲
(30)
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商事危瞼分散論
これには窃盗・使い込み及び儒造のよ弓な危瞼並びに祀会的集團行動の豫見不能に基因する危瞼︑例えばストライ
ク・暴動・職孚・關税率攣更・税制改革・各種禁止法の制定等が含められる︒
へ㊥◎個人の知識欠如に基く危瞼︒'
或る意味に於ては︑・危瞼はすべて﹁知識の欠如﹂乃至は﹁無智﹂(Hσ登昌o旨ロ8)に基いて獲生するものと言い得
る︒然し︑か玉る危瞼嚢生の原因となるHσq昌oN蟄昌︒oには明らかに二つの異なる型態が認められるであろう︒即ち︑
その︻つは人智の限界性から生する危瞼であり︑他の﹁つは個人が利用し得た知識を利用しなかつたか叉は利用し得
なかつた﹂めに基いて嚢生する危瞼である︒
前者の型態の目σq昌o旨β︒①は経濟活動に於ける競孚に封しては何等の影響をも與える要素とはならないものである
■が︑後者の型態に屡するHσq8旨琴︒は経濟活動に於て有する個人的立場の有利性を失わしめ︑從つて彼を競争の場
から騙逐させる危瞼獲生の原因となる︒優れた知識及び技能を有する人女は企業上の有利な機会を捉えて利盆を獲得
するに至る︒かくして︑多激の潜在的競孚者(団oまβ該鑑︒o琴b①寓ゆo目磁)は知識の欠如にょつて駆逐せられるか或は
少くとも有利な競孚條件の上に立ち得ないこと﹂なるのである︒●
的市場危瞼(崔塵目一h①酔一脚一〇自犀ロロ)︒
市場危瞼とは商品費買過程に於ての時間的維過の中に焚生することがある償格及びその他の市況(寓起犀簿
8β象菖O塁)に於て豫見し得ない不確定性を意味する︒﹂
帝場危瞼の存在という事實が如何に莫大な投機的利潤(酸娼o︒巳暮才Φ鷲oh律︒・)を商事活動に從事する人々i就中︑'
外國貿易企業者に牧得させたかということは︑過去︑特に初期の貿易史の跡を尋ねることにょり論讃せられるであろ
ハらねコミう︒とれは運輸通信の便が未嚢達のために基く國際商品流通の不圓滑化及び需給の異常な不均衡を利用しての貿易活 ■
'
■
章
D動の現われに外ならない︒勿論︑十八世紀に至る迄のこのような國際商品流通の歌態の下にあつては︑危瞼の嚢生も
ω頗る多く︑且つそれに基く損失・損害も甚大なものがあつたことは想像に難くない︒特に通信機關の欠如は自然的及
び人的諸危瞼に封する保護又は豫防を著しく困難ならしめた︒かくして︑蓮逡船舶の乗組員の給與も貿易商品の安着
ダび を條件として支梯われ︑全乗組員は事實上に於て一種の投機的貿易活動に参加していたのであった︒
然るに︑十九世紀に入るに及んで︑市場危瞼の様態は異常な憂容を受けるに至つた︒即ち︑國際通信機關の急速な
ハ ねレ,稜達改善は︑各市場に於ける商品儂格の差異を著しく減少させ︑從つてA市場の在荷過剰とB市場の在荷不足に基く︑
ノ贋格の開きも正常時にあつては縮減されること逗なつた︒かくして︑國際的卸費市場相互間に於ける國際商品償格の
開きは市場間の蓮逡費の限界内に止まり︑企業利潤率も以前に比して低下し︑貿易企業は投機的性格から鞘取的性格
への移行過程を辿つたのであつた︒たビ例外的には︑未開國を封象とする貿易企業のみが依然として胃瞼的貿易を績
けているに過ぎない︒︒.・
一般的には︑﹁危瞼﹂の立場からは︑商品の販費と購入との時間上の前後關係は危瞼の程度に大なる差異を生じな
いが︑契約商品の引渡履行及び購入商品虚分に至る迄の時間の長さに比例して橿格と市況の攣動による危瞼獲生の可
能性が存する.設備叉は商品に資本を投下した後に︑商品僧格下落のために企業が破綻した例は特に多く見出される
所であり︑また契約後に原料と勢銀の高騰に基く・企業の損失獲生の例も少くない︒︑
前述の便格上の攣動は︑消費者の嗜好攣化に基く需要低下r円け①bB①鼠§昌閑ざ鴇9①Oo還欝昌網の破綻の如きそ
の適例)︑能率のヨリ高い生産方法の出現(手織から機械織への韓換の如き)︑ヨリ優れた敷用を提供する競争商品一
餅の登場(電球用ヵーボン・ブイラメントに代るタングステン・フィラメントの如き)叉は一般物慣水準の攣動(金の
一生産減少による物償騰貴の如き)等に基因して獲生するものである︒,
商︑事危険分散論
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一208‑一
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商事危瞼分散論
もつとも︑企業に封して不利な諸攣化をも齎す可能性が存する︒即ち豫期し難い諸愛化の国o言び崇ξが大なる
場合にあつて︑有利な諸憂化の優越性によつて利得を牧めようとするときには︑商事活動・は﹁投機的性格﹂
(o慶℃①8冒寓くφ︒ゲ鷺29①犀)を帯びると稻せられるのである︒若し投下資本が高度に特殊化している場合には,この
投機的要素は必然的に増大する︒不動産・穀物・棉花・生果物・砂糖・家畜類等は多く投機的商品として取引せられ
るものであるが︑これらのうちの多くの砦のは所謂﹁掛繋ぎ﹂(国①画σq冒σq)の方法を通じて投機的要素の縮減を圖る
ことが可能である︒
商事活動にあつては︑多くの場合︑経螢者は市況の攣化に基ぐ利潤獲得よりはむしろ損失危瞼から冤れることに重
要度を置くものである︒もつとも︑嚴密な意味に於ける投機活動にあつては︑投機は利潤の主要な源泉となること論
を侯たない︒.毒
次に生産過程(団触oΩβ︒試ぐ㊦鷲o︒霧巴について見るに︑との場合にあつては高度の投機性は比較的に限られた生
産部門に見出されるに過ぎない︒鑛業及び石油抽出穿孔の如きはその典型的なものであるが︑これらの生産部門に於
ける高度の投機性は︑主として生産技術の諸獲明に依るもので︑これに加えて市場及び生産に關する不確定性から生
する危瞼がその原因となる︒
商事危険が国o暫詔o菖o置部門よりはむしろ寓鴛犀Φ菖昌σq部門に主として嚢生する根基について考察すると︑これ
は次の諸要因に求め得よう︒・
先す嵐鴛犀露宣㎎の本質としては︑これが﹁人間的誤差﹂(皆目蟄昌㊦ρ口暮一〇昌)に富むことを指摘しなければなら
ない︒勿論︑吾人は冒葭犀①葺昌σqの各部面に於ける研究︑特にその統計学的研究の進歩嚢達を無櫃値覗するものでは
ないが︑嵐卸粍犀Φ菖昌σqの研究分析に用いられる統計は﹁李均法則﹂(ビ欝ぞ亀b︿①旨σq霧)乃至は冒ヨ<o㎞日邑$の範
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