数学 II 演習 ( 第 5 回 ) の略解
目 次
1
問1
の解答1
2 n
行n
列のときにはどうなるのか3
3
行列式とは6
4
行列式の重要な性質20
5
行列式の計算の原理24
6
行列式を計算するには29
7
問2
の解答35
8
問2
を見直すと38
9
問3
の解答44
10
連立一次方程式とは44
11
基本変形により連立一次方程式を解くこと47
1 問 1 の解答
以下では
,
与えられた行列をA
と表わすことにします. (1)
与えられた行列A
の行列式を計算してみると,
例えば,
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
2 −1 0
− 1 2 − 1
0 − 1 2
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
= 2 · ¯¯
¯¯ ¯
2 − 1
− 1 2
¯¯ ¯¯
¯ +
¯¯ ¯¯
¯
− 1 0
− 1 2
¯¯ ¯¯
¯ ( 1
列目で展開)
= 2 · (4 − 1) − 2
= 4
となることが分かります
.
よって,
det A = 4
となることが分かります.
(2)
与えられた行列A
の行列式を計算してみると,
例えば,
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯
2 −1 0 0
− 1 2 − 1 0
0 − 1 2 − 1
0 0 − 1 2
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯
=
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯
0 3 − 2 0
−1 2 −1 0
0 − 1 2 − 1
0 0 − 1 2
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯
( 1
行目+ 2
行目× 2 )
=
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
3 − 2 0
− 1 2 − 1
0 − 1 2
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
( 1
列目で展開)
=
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
0 4 − 3
− 1 2 − 1
0 −1 2
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
( 1
行目+ 2
行目× 3 )
=
¯¯ ¯¯
¯
4 − 3
− 1 2
¯¯ ¯¯
¯ ( 1
列目で展開)
= 8 − 3
= 5
となることが分かります.
よって,
det A = 5
となることが分かります.
(3)
与えられた行列A
の行列式を計算してみると,
例えば,
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
t − 1 0
0 t − 1
− 1 0 t
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
=
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
0 − 1 0
t
2t − 1
− 1 0 t
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
( 1
列目+ 2
列目× t )
=
¯¯ ¯¯
¯
t
2−1
− 1 t
¯¯ ¯¯
¯ ( 1
行目で展開)
= t
3− 1
となることが分かります.
よって,
det A = t
3− 1
となることが分かります.
(4)
与えられた行列A
の行列式を計算してみると,
例えば,
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
1 1 1
a b c
a
2b
2c
2¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
=
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
1 0 0
a b − a c − a a
2b
2− a
2c
2− a
2¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
µ 2
列目+ 1
列目× ( − 1) 3
列目+ 1
列目× (−1)
¶
=
¯¯ ¯¯
¯
b − a c − a
(b − a)(b + a) (c − a)(c + a)
¯¯ ¯¯
¯ ( 1
行目で展開)
= (b − a)(c − a) · ¯¯
¯¯ ¯
1 1
b + a c + a
¯¯ ¯¯
¯
= (b − a)(c − a) · ¯¯
¯¯ ¯
1 0
b + a c − b
¯¯ ¯¯
¯ ( 2
列目+ 1
列目× (−1) )
= (b − a)(c − a)(c − b)
= (a − b)(b − c)(c − a)
となることが分かります.
よって,
det A = (a − b)(b − c)(c − a)
となることが分かります2 n 行 n 列のときにはどうなるのか
ここで
,
興味のある方がいるかもしれませんから, n ∈ N
を勝手な自然数として,
A
n=
2 − 1 0 · · · 0
−1 2 −1 . .. .. . 0 . .. ... ... 0 .. . . .. ... ... − 1 0 · · · 0 − 1 2
| {z }
nコ
, B
n=
t − 1 0 · · · 0 0 t − 1 . .. .. . .. . . .. ... ... 0
0 . .. ... − 1
− 1 0 · · · 0 t
| {z }
nコ
という
n
行n
列の行列A
n, B
n の行列式がどうなるのかということを考えてみることに します.
まず
, A
n の行列式について考えてみることにします.
いま,
d
n= det A
nと表わすことにすると
,
d
n= 2 ·
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯¯
2 −1 0 · · · 0
− 1 2 − 1 . .. .. . 0 . .. ... ... 0 .. . . .. ... ... − 1 0 · · · 0 −1 2
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
| {z } ¯¯
(n−1)コ
+
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯¯
−1 0 0 · · · 0
− 1 2 − 1 . .. .. . 0 . .. ... ... 0 .. . . .. ... ... −1 0 · · · 0 −1 2
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
| {z } ¯¯
(n−1)コ
( 1
列目で展開)
= 2d
n−1−
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯¯
2 −1 · · · 0
− 1 2 . .. .. . .. . . .. ... − 1 0 · · · − 1 2
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
| {z } ¯¯
(n−2)コ
µ 2
番目の行列式 を1
行目で展開¶
= 2d
n−1− d
n−2となることが分かります
.
したがって,
d
n= 2d
n−1− d
n−2, (n ≥ 3) (1)
となることが分かります.
いま,
d
1= ¯¯ ¯ 2 ¯¯ ¯ = 2, d
2=
¯¯ ¯¯
¯
2 −1
− 1 2
¯¯ ¯¯
¯ = 3
となることに注意すると, (1)
式から,
d
n− d
n−1= d
n−1− d
n−2= · · ·
= d
2− d
1= 1
となることが分かりますから,
d
n= d
n−1+ 1, (n ≥ 2) (2)
となることが分かります
.
よって, d
1= 2
となることに注意して, (2)
式を繰り返し用い ると,
d
n= d
n−1+ 1
= (d
n−2+ 1) + 1
= · · ·
= d
1+ (n − 1)
= n + 1
となることが分かります.
以上から,
det A
n= n + 1
となることが分かります.
次に
, B
n の行列式について考えてみます.
すると,
例えば,
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯¯
t − 1 0 · · · 0 0 t −1 . .. .. . .. . . .. ... ... 0
0 . .. ... − 1
− 1 0 · · · 0 t
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
| {z } ¯¯
nコ
=
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯¯
0 − 1 0 · · · 0 t
2t −1 . .. .. . .. . . .. ... ... 0
0 . .. ... − 1
− 1 0 · · · 0 t
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
| {z } ¯¯
nコ
( 1
列目+ 2
列目× t )
=
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯¯
t
2−1 · · · 0 0 t . .. .. . .. . . .. ... − 1
− 1 0 · · · t
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
| {z } ¯¯
(n−1)コ
( 1
行目で展開)
=
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯¯
0 −1 · · · 0 t
3t . .. .. . .. . . .. ... − 1
− 1 0 · · · t
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
| {z } ¯¯
(n−1)コ
( 1
列目+ 2
列目× t
2)
=
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
¯¯
t
3−1 · · · 0 0 t . .. .. . .. . . .. ... − 1
− 1 0 · · · t
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯¯
| {z } ¯¯
(n−2)コ
( 1
行目で展開)
= · · ·
=
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
t
n−2− 1 0
0 t − 1
− 1 0 t
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
=
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
0 − 1 0
t
n−1t − 1
−1 0 t
¯¯ ¯¯
¯¯ ¯
( 1
列目+ 2
列目× t
n−2)
=
¯¯ ¯¯
¯
t
n−1−1
−1 t
¯¯ ¯¯
¯ ( 1
行目で展開)
= t
n− 1
となることが分かります.
したがって,
det B
n= t
n− 1
となることが分かります.
3 行列式とは
行列に対する基本的な概念として
,
「行列式」というものがあります.
線型代数学の教科 書を見ると,
行列式をきちんと定義するために,
「置換」や「置換の符号」といった皆さん にとっては余り馴染みのない概念が最初に議論されていたり,
行列式に関する様々な性質 が次から次へと述べられていたりするために,
「行列式は何をやっているのか良く分からな い」という印象を持たれる方も多いのではないかと思います.
しかしながら,
「行列式」は 線型代数学における最も基本的な概念のうちのひとつですから,
皆さんも行列式に関する 基本的な考え方をしっかりと理解して,
早いうちに慣れておくと良いのではないかと思い ます.
行列式に関してしっかりとした理解を得るためには,
何よりもまず,
行列式を理解する上で大切な点
¶ ³
(i)
行列式とは「(
符号付きの)
体積」を対応させる関数である.
(ii)
そうした関数は行列式が持つ三つの性質で一意的に特徴づけられる.
µ ´
という二つの点を理解することが大切ではないかと思います
.
そこで,
ここでは,
これら二 つの点について少し考えてみることにします.
さて
,
一般に, n
行n
列の行列A
に対して,
行列式と呼ばれる数を対応させることがで き,
正方行列A
の行列式を「det A
」という記号を用いて表わしたり,
1¯¯ ¯ A ¯¯ ¯ (3)
という記号を用いて表わしたりします
.
2 すると,
行列式とは, A 7−→ det A
というように
,
正方行列A
に対して, det A
という数を対応させる関数であると考えるこ とができます.
ただし,
行列式に対するより良い理解を得るためには, A
の各列ベクトル を,
例えば, a
1, a
2, · · · , a
n∈ R
n と表わすことにして,
行列A
を,
A =
³
a
1a
2· · · a
n´
1行列式のことを英語で「
determinant
」と言います.
2
A
が1
行1
列の行列のときには, (3)
式の記号は「絶対値」と紛らわしいですが,
「絶対値」とは別物で あるということに注意して下さい.
と表わすことで
,
「n
行n
列の行列A
を考えること」と「R
n の中のn
個のベクトルa
1, a
2, · · · , a
n∈ R
nを考えること」とは同じことであると考えて
,
行列式をa
1, a
2, · · · , a
n∈ R
n というn
個のベクトルを変数とする関数として考察するということが大切なポイントになります.
3 そこで,
行列式とは, R
n のn
個のベクトルa
1, a
2, · · · , a
n∈ R
n に対して,
数を対応 させる関数であると考えて,
この関数を,
f (a
1, a
2, · · · , a
n)
と表わすことにします
.
4 このとき,
以下で見るように,
行列式は,
行列式を特徴づける三つの性質¶ ³
(
イ)
多重線型性(
ロ)
歪対称性(
ハ)
規格化条件µ ´
という三つの性質で特徴づけられることが分かります
.
5 考え方の本質は正方行列が一般 のサイズの場合でも全く同じですから,
これら三つの性質をより良く理解するためと,
話 を具体的にするために,
以下では, n = 2
の場合に説明することにします.
すると,
この場 合,
行列式とは,
平面R
2 上の二つのベクトルa
1, a
2∈ R
2 に対して,
何か数を対応させ る関数f (a
1, a
2)
であって,
3ここでは
,
列ベクトルにもとづいて説明することにしましたが,
列ベクトルの代わりに行ベクトルを考え て,
以下の議論を行なっても,
実は,
同じ結論にたどり着きます.
また,
「面積」や「体積」という概念が直感 的に理解しやすいように,
実数行列にもとづいて行列式を説明することにしましたが,
複素行列の場合にも全 く同様の議論ができます.
4関数という感じを出すためと
,
この関数を特徴づける性質がはっきりするように, det A
ではなく, f(a
1, a
2, · · · , a
n)
と表わすことにしました.
5教科書によっては
, (
ロ)
の「歪対称性」を「反対称性」と呼んだり,
「交代性」と呼んだりしていますが,
これらの言葉は全て同じ性質を表わしています.
行列式を特徴づける三つの性質
( 2
行2
列の場合)
¶ ³
(
イ)
多重線型性:
勝手なベクトルa
1, a
01, a
2, a
02∈ R
2 と,
勝手な実数c ∈ R
に対し て,
次が成り立つ.
f(a
1+ a
01, a
2) = f (a
1, a
2) + f (a
01, a
2) f (c · a
1, a
2) = c · f (a
1, a
2)
f (a
1, a
2+ a
02) = f(a
1, a
2) + f (a
1, a
02) f (a
1, c · a
2) = c · f (a
1, a
2)
(
ロ)
歪対称性:
勝手なベクトルa
1, a
2∈ R
2 に対して,
次が成り立つ. f (a
1, a
2) = − f (a
2, a
1)
(
ハ)
規格化条件: e
1= Ã
1 0
! , e
2=
à 0 1
!
に対して
,
次が成り立つ. f (e
1, e
2) = 1
µ ´
という三つの性質を持つ関数であるということになります
.
ここで
, (
イ)
という性質は,
例えば, a
2∈ R
2 を,
勝手にひとつ固定して, f ( · , a
2)
を, R
23 a
17−→ f (a
1, a
2) ∈ R
という
a
1 だけの関数であると思ったときに,
「R
2 の足し算」を「R
の足し算」に写し,
「
R
2 のスカラー倍」を「R
のスカラー倍」に写すということです.
6 また, (
ロ)
という性 質は「a
1 とa
2 を引っくり返すと( − 1)
倍される」ということです.
7 特に, a
1= a
2 と してみると,
f (a
1, a
1) = −f (a
1, a
1) (4)
となることが分かりますから, (4)
式から,
2 · f (a
1, a
1) = 0
となり,
f (a
1, a
1) = 0
6このように
,
「足し算」を「足し算」に写し,
「スカラー倍」を「スカラー倍」に写すような写像を,
一般 に,
線型写像と呼びます.
今の場合,
こうした性質が,
個々の変数a
1, a
2に対して,
それぞれ成り立つので,
多 重線型写像と呼びます.
7一般の
n
行n
列の場合には,
例えば,
f (a
1, a
2, a
3, · · · , a
n) = −f(a
3, a
2, a
1, · · · , a
n), ( a
1↔ a
3)
というように
,
「a
1, a
2, · · · , a
nのうちのどれか二つの変数を引っくり返すと(−1)
倍される」ということで す.
a 1 a 2
x y
0
図
1: a
1, a
2∈ R
2 に対して, a
1, a
2 を二辺とする平行四辺形の面積を対応させることがで きる.
となることが分かります
.
8さて
,
線型代数学の教科書には,
これら三つの性質が行列式を特徴づけるということが 説明してありますが,
これだけでは,
何だか意味も良く分からないと思われる方も多いの ではないかと思います.
そこで,
次に,
行列式の幾何学的な意味について,
少し考えてみる ことにします.
我々は, ( 2
行2
列の行列の)
行列式とは,
平面R
2 上の二つのベクトルa
1, a
2∈ R
2 に対して,
何か数を対応させる関数であると考えました.
そこで,
逆に,
「平 面上の二つのベクトルを与えたときに,
自然に定まるような数とは何だろうか」というこ とを考えてみます.
すると,
「a
1, a
2∈ R
2 から定まる平行四辺形の面積はどうだろうか」と思い付く人がいるかもしれません
(
図1
を参照).
9そこで
,
いま,
平面R
2 上の二つのベクトルa
1, a
2∈ R
2 に対して, a
1, a
2 から定まる平 行四辺形の面積を対応させる関数を,
S(a
1, a
2)
と書くことにします
.
この関数S(a
1, a
2)
が,
行列式の持つ(
イ), (
ロ), (
ハ)
という三つの 性質を持つかどうかということを考察したいわけですが,
例えば, (
イ)
の多重線型性が成 り立っているとすれば,
S( − a
1, a
2) = − S(a
1, a
2) (5)
となっているはずですから,
必然的に「負の面積」というものを考えなければならなくな るということに注意します.
すなわち, a
1, a
2 を二辺とする平行四辺形と− a
1, a
2 を二辺 とする平行四辺形とは合同ですから,
普通の意味では,
それらの面積は等しくなるわけですが
, (5)
式を成り立たせるようにするためには,
どちらかの面積には( − 1)
倍を掛けて,
「面積は負である」と考えなければならないわけです
(
図2
を参照).
最初のうちは
,
「負の面積など考えるのはおかしい」と思われる方もあるかもしれませ んが,
実は,
「向き」という概念を考慮に入れると,
「符号つきの面積」というものをきちん と定義することができます.
また,
以下で見るように,
「符号つきの面積」は,
上で述べた8さらに
, (
イ)
という性質と合わせると,
より一般に, a
1 とa
2 が平行のとき,
すなわち, a
1 またはa
2 が,
相手の何倍かになっているとすると,
f (a
1, a
2) = 0
となってしまうことも分かります.
9皆さんの中には
, a
1 とa
2 の間の内積を思い浮かべられた方がいるかもしれません.
ところが,
内積は,
a
1, a
2 の入れ替えについて対称なので,
残念ながら, (
ロ)
という性質が成り立ちません.
また, 3
行3
列の場 合を考えると,
今度は, R
3 上の三つのベクトルa
1, a
2, a
3∈ R
3 に対して,
数を対応させるような関数になっ ているはずですが,
内積を考えたのでは,
このような関数を自然に作ることは難しくなります.
a 1 a 2
x y
− a 1 0
S(a
1, a
2) S( − a
1, a
2)
図
2: a
1, a
2 を二辺とする平行四辺形と− a
1, a
2 を二辺とする平行四辺形とは合同なので,
普通の意味では,
それらの面積は等しい.
a 1 a 2
a 2 a 1
S(a 1 , a 2 ) > 0 S(a 1 , a 2 ) < 0
x x
y y
0 0
図
3: a
1, a
2∈ R
2 に対して, a
1, a
2 を二辺とする平行四辺形の符号付きの面積S(a
1, a
2)
を 考えることができる.
(
イ), (
ロ), (
ハ)
という三つの性質を持つことが分かるので,
「面積はいつでも正である」と 考えた場合よりも,
数学的にずっと扱いやすくなるという利点もでてきます.
さて
,
図2
における二つの平行四辺形を見比べてみると,
「a
1 から見たときには, a
2 は 反時計周りに回転する方向にある」のに対して,
「− a
1 から見たときには, a
2 は時計周り に回転する方向にある」という違いがあることが分かります.
この事実に注目すると,
一般 に, a
1, a
2∈ R
2 に対して, a
1, a
2 を二辺とする平行四辺形の「符号つきの面積」S(a
1, a
2)
を,
平行四辺形の「符号つきの面積」
¶ ³
(1) a
1 から見て, a
2が反時計周りに180
度回転するまでに得られる方向にあるとき, S(a
1, a
2) = | S(a
1, a
2) | .
(2) a
1 から見て, a
2 が時計周りに180
度回転するまでに得られる方向にあるとき, S(a
1, a
2) = −|S(a
1, a
2)|.
µ ´
というように定めることができます
(
図3
を参照).
ただし, a
1, a
2∈ R
2 から定まる平行 四辺形の普通の意味での(
正の)
面積を,
|S(a
1, a
2)|
というように絶対値を付けて表わしました
.
例えば, a
1∈ R
2 を,
勝手にひとつ固定して,
a 1 a 1
a 1 a 2
a 2 a 2
a 2
a 2
a 2 a 2 S (a 1 , a 2 ) < 0 S(a 1 , a 2 ) = 0
S(a 1 , a 2 ) > 0
0 0
0
図
4: a
1 を固定して, a
2 を,
長さを保ったまま, a
1 の定める方向から始めて,
反時計回り に回転させてゆくときの符号付きの面積S(a
1, a
2)
の変化.
a 0 1
a 1 a 1 + a 0 1
a 2 h
01h
1h
01h
001l
2y
0 x
図
5: a
1, a
01, a
1+ a
01 から, a
2 を延長して得られる直線に下ろした垂線の長さを,
それぞ れ, h
1, h
01, h
001 とすると, h
001= h
1+ h
01 となる.
a
2 を,
長さを保ったまま, a
1 の定める方向から始めて,
反時計回りに回転させてゆくとき の符号つきの面積S(a
1, a
2)
の変化を追ってゆくと,
最初は正の面積が段々増えてゆき, a
2 がa
1 と直交する方向を向いたときに面積が最大になり,
その後,
正の面積は段々減って, a
2 がa
1 と反対の方向に向いたときに面積が0
となり,
その後は,
面積が負となり,
同様 の変化をするというように解釈するというわけです(
図4
を参照).
そこで
,
このように符号つきで面積を考えたときに, S(a
1, a
2)
という関数が,
上で述べ た(
イ), (
ロ), (
ハ)
という三つの性質を持つことになるのかどうかということを考えてみる ことにします.
まず
, a
1, a
01, a
2∈ R
2 として, (
イ)
のS(a
1+ a
01, a
2) = S(a
1, a
2) + S(a
01, a
2) (6)
という性質が成り立つかどうかということを考えてみます.
そのために, a
1, a
01, a
1+ a
01∈ R
2 などから, a
2 を延長して得られる直線に垂線を下ろして,
それらの高さを,
それぞれ, h
1, h
01, h
001 と表わすことにします(
図5
を参照).
すると,
図5
から,
h
001= h
1+ h
01(7)
となることが分かります
.
このとき,
さらに, a
2 の長さをl
2 と表わすことにして, (7)
式の2a 1 a 1 a 1
a 2 a 2
− 2a 1
S(a
1, a
2) S(a
1, a
2)
S(2a
1, a
2)
S( − 2a
1, a
2)
0 x 0 x
y y
c = − 2
のときc = 2
のとき図
6: a
1 を2
倍すると,
平行四辺形は向きを変えずに,
面積が2
倍になる.
一方, a
1 を− 2
倍すると,
平行四辺形は向きを逆にして,
面積が2
倍になる.
両辺に
l
2 を掛け算すると,
h
001· l
2= (h
1+ h
01) · l
2= h
1· l
2+ h
01· l
2(8)
となることが分かりますが
,
平行四辺形の面積は,
垂線の高さに底辺の長さを掛け算して 得られることに注意すると, (8)
式から,
S(a
1+ a
01, a
2) = S(a
1, a
2) + S(a
01, a
2)
となることが分かります
.
10 よって, (6)
式が成り立つことが分かりました.
次に, a
1, a
2∈ R
2, c ∈ R
として, (
イ)
のS(c · a
1, a
2) = c · S(a
1, a
2) (9)
という性質が成り立つかどうかということを考えてみます.
すると, c ≥ 0
のときには, a
1 と同じ向きにa
1 の長さがc
倍されることになりますから,
平行四辺形は向きを保ったま ま,
面積がc
倍されることになり,
S(c · a
1, a
2) = c · S(a
1, a
2)
となることが分かります
(
図6
を参照).
一方, c ≤ 0
のときには, a
1 と逆の向きにa
1 の 長さが| c |
倍されることになりますから,
平行四辺形は向きを逆にして,
面積が| c |
倍され ることになり,
S(c · a
1, a
2) = −| c | · S(a
1, a
2)
= c · S(a
1, a
2)
となることが分かります
(
図6
を参照).
よって,
いずれにしても, (9)
式が成り立つこと が分かります.
以上から,
関数S(a
1, a
2)
はa
1 という変数に関して線型写像になっている10図
5
では,
平行四辺形の符号つきの面積がすべて正であるような場合を描いていますが, h
1, h
01, h
001, l
2 が 負の値を取ることも許すことにすれば,
面積が負になる場合でも, S(a
1, a
2) = h
1· l
2 などの式はそのままの 形で成り立っていることに注意して下さい.
a 1 a 2
S(a 1 , a 2 ) > 0 x y
0
a 1 a 2
S(a 2 , a 1 ) < 0 x y
0
図
7: a
1, a
2 を二辺とする平行四辺形とa
2, a
1 を二辺とする平行四辺形は同じ平行四辺形 になるが,
向きは逆になる.
x y
0 e 1
e 2
1
1 S(e
1, e
2) = 1
図
8: e
1, e
2 を二辺とする平行四辺形は,
正の向きを持つ,
一辺が1
の正方形になる.
ことが分かりました.
全く同様にして,
関数S(a
1, a
2)
はa
2 という変数に関しても線型写 像になっていることが分かりますから, (
イ)
の「多重線型性」という性質を持つことが分 かります.
次に
, a
1, a
2∈ R
2 として, (
ロ)
のS(a
1, a
2) = − S(a
2, a
1) (10)
という性質が成り立つかどうかということを考えてみます.
すると, a
1, a
2 を二辺とする 平行四辺形とa
2, a
1 を二辺とする平行四辺形は同じ平行四辺形になりますから,
もちろん,
| S(a
1, a
2) | = | S(a
2, a
1) |
というように
,
普通の意味での面積は等しいわけですが,
向きが逆になることに注意すると
, (10)
式が成り立つことが分かります(
図7
を参照).
最後に
,
e
1= Ã
1 0
! , e
2=
à 0 1
!
∈ R
2 として, (
ハ)
のS(e
1, e
2) = 1 (11)
という性質が成り立つかどうかということを考えてみます
.
すると, e
1, e
2 を二辺とする 平行四辺形は,
正の向きを持つ,
一辺が1
の正方形になりますから, (11)
式が成り立つこ とが分かります(
図8
を参照).
以上から
,
関数S(a
1, a
2)
は(
イ), (
ロ), (
ハ)
という三つの性質を持つことが分かりまし た.
すなわち, (
イ), (
ロ), (
ハ)
という行列式を特徴づける三つの性質とは, a
1, a
2 の定め る平行四辺形の符号つきの面積が持つ性質を抽象化したものであることが分かりました.
そこで
,
次に,
皆さんにじっくりと理解していただきたい大事な点は, (
イ), (
ロ), (
ハ)
と いう性質を持った関数は,
実は,
ひとつしかないということ,
すなわち,
いま考えているn = 2
の場合には, S(a
1, a
2)
という関数しかないということです.
このことは,
直感的 には, a
1, a
2∈ R
2 というベクトルを,
勝手に二つ与えたときに, f (a
1, a
2)
という値は, (
イ), (
ロ), (
ハ)
という性質を用いることだけで,
あるひとつの数にぴったりと決まって しまうということを意味しています.
そこで,
このことを具体的に確かめてみることにし ます.
いま
, 2
行2
列の行列A = Ã
a b c d
!
が
,
勝手にひとつ与えられているとします.
我々は,
これを, a
1=
à a c
! , a
2=
à b d
!
∈ R
2という二つのベクトルが与えられたと解釈したのでした
.
そこで, f (a
1, a
2)
という関数 が, (
イ), (
ロ), (
ハ)
という三つの性質を持っていると仮定したときに, f (a
1, a
2)
という 値が,
ある値にぴったりとひとつ定まるのかどうかということを考えてみることにします.
後の議論でも大切になりますから,
まず, (
イ), (
ロ)
という二つの性質だけを認めたとき に, f (a
1, a
2)
という関数の形がどこまで定まるのかということを考えてみます.
そこで
,
前と同様に,
e
1= Ã
1 0
! , e
2=
à 0 1
!
∈ R
2と表わすことにします
.
このとき, a
1 を, a
1=
à a c
!
= a · Ã
1 0
! + c ·
à 0 1
!
= a · e
1+ c · e
2と分解して
, (
イ)
という性質を用いると, f(a
1, a
2) = f(a · e
1+ c · e
2, a
2)
= f(a · e
1, a
2) + f (c · e
2, a
2) ( (
イ)
から)
= a · f (e
1, a
2) + c · f(e
2, a
2) ( (
イ)
から) (12)
というように書き換えられることが分かります.
さらに,
a
2= b · e
1+ d · e
2というように分解して
,
同様の書き換えをしてみると, (12)
式から,
f (a
1, a
2) = a · f(e
1, b · e
1+ d · e
2) + c · f(e
2, b · e
1+ d · e
2)
= ab · f (e
1, e
1) + ad · f (e
1, e
2)
+ bc · f (e
2, e
1) + cd · f (e
2, e
2) ( (
イ)
から) (13)
となることが分かります.
11 このとき, (
ロ)
という性質から,
f(e
1, e
1) = f(e
2, e
2) = 0 f (e
2, e
1) = − f (e
1, e
2)
となることが分かりますから, (13)
式と合わせて,
結局,
(
イ), (
ロ)
という二つの性質を持つ関数の具体形¶ ³
f (a
1, a
2) = (ad − bc) · f (e
1, e
2) (14)
µ ´
というように書き換えられることが分かりました
.
すなわち, (
イ), (
ロ)
という二つの性 質を持つような関数は,
「f (e
1, e
2)
の値を何にするか」という定数倍の不定性を除いて, (14)
式のように,
その関数の形が決まってしまうことが分かりました.
そこで
,
さらに, (
ハ)
という規格化条件も満たされているとすると, f (e
1, e
2) = 1
となりますから
, (14)
式と合わせて,
(
イ), (
ロ), (
ハ)
という三つの性質を持つ関数の具体形¶ ³
f (a
1, a
2) = ad − bc
µ ´
というように
,
唯一通りに関数の形が定まってしまうことが分かります.
特に,
上で,
「符 号つきの面積を与える関数S(a
1, a
2)
は(
イ), (
ロ), (
ハ)
という三つの性質を持つ」という ことを確かめましたから,
このような面積は,
具体的には,
平行四辺形の符号つき面積
¶ ³
S(a
1, a
2) = ad − bc
µ ´
という式で与えられるということも分かりました
.
以上により
, n = 2
のとき,
行列式とは「符号つきの面積を対応させる関数」であり,
こ のような関数は(
イ), (
ロ), (
ハ)
という三つの性質で一意的に特徴づけられるということ が分かりました.
皆さんは,
次に, n = 3
の場合を考えて,
上でn = 2
のときに行なった議 論を参考にしながら,
行列式が, R
3 の三つのベクトルa
1, a
2, a
3∈ R
3 に対して, a
1, a
2, a
3 の定める平行六面体の符号つきの体積を対応させる関数であることを「しみじみと納得」してみて下さい
.
12 この場合,
「向き」とは,
いわゆる右手系か左手系かということになり11皆さん
,
確かめてみて下さい.
12例えば
, a
1, a
01, a
2, a
3∈ R
3 として, n = 2
のときと同様に, a
1, a
01, a
1+ a
01 という三つのベクトルから, a
2 とa
3 の定める平面へ垂線を下ろしたときに,
三つの垂線の長さの関係がどのようになるのかということ を考えてみると,
V (a
1+ a
01, a
2, a
3) = V (a
1, a
2, a
3) + V (a
01, a
2, a
3)
となることが納得できるかもしれません