高堂 聖英 1
相互侵入高分子網目構造を基盤とする光運動材料の開発:
架橋アゾベンゼン液晶高分子/メタクリレート複合系 Preparation of Photomobile Polymer Materials with Interpenetrating Polymer Network Structures:
Crosslinked Azobenzene Liquid-Crystalline Polymer/Polymethacrylate Composites
応用化学専攻 高堂 聖英
TAKADO Kiyohide
1.緒言
近年,クリーンな太陽光エネルギーを電気エネルギ ー等に効率良く変換するデバイスが低炭素社会実現 に向けた新エネルギー技術として注目を集めている.
中でも光エネルギーを直接仕事に変換する光運動 材料は,原理的に小型軽量化や光–力変換効率向 上が実現可能であることから盛んに研究が行われて いる.アゾベンゼンを組み込んだ架橋液晶高分子フ ィルムに紫外光を照射すると,アゾベンゼンのトランス –シス光異性化に伴う構造変化を引き金にして,液晶 分子の配向変化がフィルム表面領域のみで誘起され る.その結果,表面層が異方的に収縮し,フィルムが 屈曲する․1 さらに,架橋アゾベンゼン液晶高分子フィ ルムを高分子基板と積層すると,多彩な三次元運動 を誘起することが可能である․2 しかし,この積層フィ ルムは剥離しやすく,繰り返し耐久性が低いという課 題があった.近年,複数の高分子網目が分子鎖レベ ル で 絡 み 合 っ た 相 互 侵 入 高 分 子 網 目
(Interpenetrating Polymer Network; IPN)構造(図1)
を形成することによって,高分子材料が飛躍的に高 強度化することが見いだされた․3 そこで,本研究で は力学的強度および光学的性質に優れたメタクリレ ートポリマーを架橋アゾベンゼン液晶高分子にブレン ドしてIPN構造を構築するにより,強度と光応答性に 優れた光運動材料の創出を目指した.
図1.IPN構造の模式図
2.実験
本研究で用いた化合物の構造式を図2に示す.架橋
アゾベンゼン液晶高分子フィルム(PAzo)はラビング 処理を施した液晶セル中においてアゾベンゼン液晶 モノマー(A6AB6)および架橋剤(DA6AB)を光重合 することによって得た.IPNフィルムは二段階で重合 することにより作製した.ラビング処理を施した液晶セ
ルにA6AB6,DA6AB,光重合開始剤,そして低分子
液晶(1BZ6)の混合物を封入した.液晶相温度まで 降温して光重合を行った後,低分子液晶を除去し,
架橋アゾベンゼン液晶高分子テンプレートフィルム
(PAzoTP)を得た.得られたフィルムをメタクリレートモ
ノマー(MMA,BMA,DDMA),架橋剤(EGDMA),
開始剤の混合物に浸漬した後,熱重合することによ っ てIPNフ ィ ル ム (PAzo/PMMA,PAzo/PBMA, PAzo/PDDMA)を作製した.
図2.化合物の構造式
3.結果と考察
ラビング方向に対して平行な偏光吸収(A//)および垂 直な偏光吸収(A⊥)を測定し,配向秩序度(S)を以下 の式から算出することによって,IPNフィルムにおける アゾベンゼンの配向状態を評価した.
S = (A// −A⊥)/(A// + 2A⊥)
いずれのフィルムにおいても,ラビング方向に対して 垂直な偏光吸収に比べ,平行な偏光吸収の方が大 きくなった.配向秩序度を見積もったところ,IPNフィ
ルムはPAzoTPと同程度の値を示した(図3).これら
の結果より,IPN化しても液晶分子配向の異方性が維 持されていることが分かった.
N
N O
O 4
O 4
O
A6AB6
N O 4 O
N 4O
O
O O
DA6AB
BMA: R = C4H9 MMA: R = CH3
DDMA: R = C12H25
O O
R
O
O
O O 5
1BZ6
O O
O O
EGDMA
高堂 聖英 2
図3.フィルムの偏光吸収スペクトル
30 ˚CにおいてIPNフィルムに紫外光(366 nm,10 mW/cm2)および可視光(>540 nm,40 mW/cm2)を照 射したところ,いずれのフィルムも可逆的な屈伸を示 した.また,PAzo/PMMA,PAzo/PBMAはPAzoTPに 比べて屈曲が遅くなったのに対し,PAzo/PDDMAは 速い屈曲を示した(図4).これは,ガラス転移温度が
低いPDDMAとIPN化することによってフィルムの弾性
率が低下するためであると考えている.これらの結果 より,IPNフィルムの光屈曲挙動はメタクリレート成分 の物性に大きく依存することが分かった.
IPNフィルムをラビング方向に引張し,フィルムの力学 特性を評価した.各フィルムの応力–ひずみ曲線を図 5に示す.PAzo/PMMAおよびPAzo/PBMAは破断応
図4.(a)PAzo/PDDMAの光屈曲.(b)フィルムの光 屈曲挙動.フィルムサイズ: 3 mm × 1 mm × 16 µm.
力が飛躍的に向上した.また,PAzo/PMMAは弾性 率(E)が大幅に向上した.一方,PAzo/PDDMAは破 断応力および弾性率が低下した.ガラス転移温度が 高いメタクリレートポリマーとIPN化したフィルムほど弾 性率が大きくなったことから,IPNフィルムの力学特性 はメタクリレート成分のガラス転移温度に依存すること が明らかとなった.
図5.フィルムの応力–ひずみ曲線
4.結論
架橋アゾベンゼン液晶高分子とメタクリレートポリマー を用いてIPN構造をもつ光運動材料を作製した.フィ ルムの偏光吸収スペクトルからアゾベンゼンの配向 秩序度を評価したところ,IPN化しても液晶分子配向 の異方性が維持されていることが分かった.IPNフィ ルムに紫外光および可視光を照射したところ,可逆 的な屈伸を示した.IPNフィルムの光屈曲挙動はメタ クリレートポリマーの物性に依存しており,ガラス転移 温度が低いPDDMAを導入したところ,屈曲速度が向 上した.また,PAzo/PMMAおよびPAzo/PBMAは破 断応力が飛躍的に向上した.ガラス転移温度が高い メタクリレートポリマーとIPN化したフィルムほど弾性率 が大きくなった.IPN化することによってフィルムの機 械的強度や光応答性が大幅に向上した.
参考文献
(1) Y. Yu, T. Ikeda et al., Nature 2003, 425, 145.
(2) M. Yamada, T. Ikeda et al., Angew. Chem. Int. Ed.
2008, 47, 4986.
(3) J. P. Gong, Y. Osada et al., Adv. Mater. 2003, 15, 1155.
論文・学会発表
K. Takado, T. Ube and T. Ikeda, Mol. Cryst. Liq.
Cryst., 2014, 601, 43-48.
T. Ube, K. Takado and T. Ikeda, Mol. Cryst. Liq.
Cryst., 2014, 594, 86-91. 他2報 18th International Symposium on ADMD 2014 2014年日本液晶学会討論会 他15件
(b) (c)
(a)
(b) (c)
(a)
Bending Angle
(b) (c)
(a)
0 20 40 60 80 100 120
0 10 20 30 40 50 60
Bending Angle /degree
Time /s PA70D30
PA70D30/PBMA99D1 PA70D30/PMMA99D1
0 20 40 60 80 100 120
0 10 20 30 40 50 60
Bending Angle /degree
Time /s
0 20 40 60 80 100 120
0 10 20 30 40 50 60
Bending Angle /degree
Time /s
Bending Angle
0 20 40 60 80 100 120
0 60 120 180 240 300
Bending Angle /degree
Time /s 0
20 40 60 80 100 120
0 60 120 180 240 300
Bending Angle /degree
Time /s 0
20 40 60 80 100 120
0 60 120 180 240 300
Bending Angle /degree
Time /s 0
20 40 60 80 100 120
0 60 120 180 240 300
Bending Angle /degree
Time /s 0 20 40 60 80 100 120
0 60 120 180 240 300
Bending Angle /degree
Time /s 0
20 40 60 80 100 120
0 60 120 180 240 300
Bending Angle /degree
Time /s
PA35D15 PA35D15/PMMA PA35D15/PBMA PA35D15/PDDMA
Bending Angle
(b) (c)
(a)
0 20 40 60 80 100 120
0 10 20 30 40 50 60
Bending Angle /degree
Time /s PA70D30
PA70D30/PBMA99D1 PA70D30/PMMA99D1
0 20 40 60 80 100 120
0 10 20 30 40 50 60
Bending Angle /degree
Time /s
0 20 40 60 80 100 120
0 10 20 30 40 50 60
Bending Angle /degree
Time /s
Bending Angle
0 20 40 60 80 100 120
0 60 120 180 240 300
Bending Angle /degree
Time /s 0
20 40 60 80 100 120
0 60 120 180 240 300
Bending Angle /degree
Time /s 0
20 40 60 80 100 120
0 60 120 180 240 300
Bending Angle /degree
Time /s 0
20 40 60 80 100 120
0 60 120 180 240 300
Bending Angle /degree
Time /s 0 20 40 60 80 100 120
0 60 120 180 240 300
Bending Angle /degree
Time /s 0
20 40 60 80 100 120
0 60 120 180 240 300
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PA35D15 PA35D15/PMMA PA35D15/PBMA PA35D15/PDDMA
(a)
(b)