緒 言 体内に投与された放射性医薬品から放出されたガン マ線は,シンチレータとの相互作用により光信号とな り,光電子増倍管(photomultiplier tube: PMT)で電気 信号に変換された後に画像化される1).この PMT は, 一般的なアンガ型シンチレーションカメラで 1 検出器 あたり 60 本程度使用されており,光信号を変換して 増幅させるだけでなく,シンチレータ面のどの位置に ガンマ線が入射し,発光したのか,位置を同定する役 割をもっている.そのため,PMT の出力(感度)にば らつきが生じると検出器内の均一性が低下し,プラナ 画像や single-photon emission computed tomography
(SPECT)画像に欠損様やリング状のアーチファクト を発生させるため2),定期的な均一補正データの取得 や日常点検および定期点検として検出器と SPECT 画 像の均一性を確認する必要がある. シンチレーションカメラの保守点検は,社団法人日 本画像医療システム工業会規格「ガンマカメラの性能 の保守点検基準 JESRA X-0067*C-2017」3)で定められて おり,コリメータを装着しない固有均一性について は,毎月測定を行い,積分均一性および微分均一性が 仕様値の 1.5 倍以内になっていることを確認するとし ている.しかし,コリメータを装着したプラナ画像と SPECT 画像の均一性については,目視でアーチファ
Influence of Scintillation Camera Uniformity on Artifact Generation: A Simulation
Study
Norikazu Matsutomo,1, 2* Tomoaki Yamamoto,1, 2and Eisuke Sato1
1Department of Medical Radiological Technology, Faculty of Health Sciences, Kyorin University 2Faculty of Health Sciences, Graduate School of Health Sciences, Kyorin University
Received November 20, 2017; Revision accepted April 30, 2018
Code No. 922 Summary
Purpose: Non-uniformity of a scintillation camera can result in artifacts on planar, projection, and
single-photon emission computed tomography (SPECT) images. The purpose of this study was to evaluate the effect of field uniformity on artifact generation. Methods: Using a simulation phantom, we investigated the relationship between uniformity of the image and artifacts on planar, projection, and SPECT images. All the non-uniformity images were generated by decreasing the photomultiplier tube sensitivity ranging from 0% to 10%. Quantitative analysis was performed using integral and differential uniformity. We also visually assessed artifact magnitude. Results: Integral and differential uniformity increased with decreasing the photomultiplier tube sensitivity and tended to be higher in SPECT images compared with planar and projection images. For visual assessment, mean scores in SPECT images were higher than in planar and projection images for artifact detection.
Conclusions: Our results indicated that decreasing field uniformity is expected to produce artifacts in planar and
SPECT images. Also, SPECT images require very high-field uniformity.
Key words: artifacts, scintillation camera, quality control, field uniformity, single-photon emission computed tomography (SPECT)
クトがないことを確認するとされており,明確かつ数 値的な判定基準はない.また,検出器の感度均一性と アーチファクトとの関連性は広く知られているもの の4~6),感度均一性がどの程度低下するとアーチファ クトが発生するか,また認識可能であるか,われわれ の知る限り数値的に評価したデータは存在しない. Figure 1 にプロジェクション画像ではアーチファクト を認識することができず,SPECT 画像の異常から検 出器の感度不均一を指摘しえた自験例(ファントム データ)を示す.このときの検出器の uniformity(積分 均一性)は,7.7%と装置メーカの推奨値(5%以下)を上 回っていた.検出器の均一補正データを再取得してか ら撮像を行った画像と比較すると,SPECT 画像では, その違いが明らかであるが,プロジェクション画像で 違いを指摘するのは困難であることがわかる.このよ うに検出器の感度均一性とアーチファクト発生の関係 は直線的または相補的ではない可能性が考えられる. 本研究の目的は,検出器の感度均一性とアーチファ クト発生の関係を数値的かつ視覚的に明らかにするこ とである.われわれは,シミュレーションを用いて, 検出器の感度均一性を変化させた画像を作成し,アー チファクトの発生を物理評価と視覚評価から検証した. 1.方 法 1-1 使用機器 シミュレーションデータの作成は,汎用パーソナル コンピュータと核医学画像処理解析ソフトウエアパッ ケージ Prominence Processor Version 3.1(核医学画像
処理技術カンファレンス)7)で行った.使用した汎用
パーソナルコンピュータは HP Pavilion 570(Hewlett-Packard Company)で,operating system は Windows 10,プロセッサは Intel®Core™ i7,実装メモリは 8 GB である.また,解析には Prominence Processor Ver-sion 3.1 および,Daemon Research Image Processor Ver 3.01(富士フイルム RI ファーマ社)を使用した. 1-2 ファントムデータの作成 作成したファントムデータは,面ファントムと円柱 ファントムで,面ファントムはプラナ画像,円柱ファ ントムはプロジェクション画像と SPECT 画像の評価 に使用した.各ファントムの構造を Fig. 2 に示す. 核種は99mTc,プラナ画像のマトリクスサイズは 256 ´256 で,ピクセルサイズは 0.5´0.5 mm2,収集カウン トは 1 M カウントとした.SPECT 画像のマトリクス サイズは 128´128,ピクセルサイズは 2.0´2.0 mm2,収 集カウントは,1 ピクセルあたり 50 カウントとし, 99mTcの水に対する散乱線と線減弱係数(0.15 cm–1)を 付加してプロジェクション画像を作成した.コリメー タ条件は低エネルギー高分解能型で,総合空間分解能 がコリメータ表面から 100 mm の距離で full width at half maximum が 7.9 mm となるように計算した.
SPECT 画像再構成は filtered back projection 法で 行い,画像再構成フィルタに ramp フィルタ,前処理 フィルタに遮断周波数 0.48 cycles/cm,次数 8 のバ ターワースフィルタを使用した.遮断周波数は,総合 空間分解能からサンプリング定理を用いて算出した.
Fig. 1 Image examples of the myocardial phantom.
Upper panel shows projection images. Lower panel shows SPECT images.
(a) Non-corrected, (b) Post-corrected.
The artifact was observed on non-corrected SPECT image (arrows).
また,散乱線補正には triple energy window 法8)を,
減弱補正には Chang 法9)(閾値法,線減弱係数 0.15
cm–1)を用いた.
1-3 感度均一性を変化させた画像の作成
検 出 器 の 感 度 均 一 性 を 変 化 さ せ た 画 像 は, Prominence Processor のʠgeneration of uniformity dataʡとʠuniformity correctionʡを用いて作成した. ʠgeneration of uniformity dataʡは,PMT の感度を低
下させた補正データ(不均一マップ)の作成に,ʠuni-formity correctionʡは,作成した不均一マップを用い て画像に均一補正を行う処理に使用した. 検出器の感度均一性を低下させる要因の一つとし て,個々の PMT の感度が異なることが挙げられる. 本研究では,この状態をシミュレーションするため, 49 個の PMT に対して,15 個の PMT の感度を段階的 に低下させ,感度均一性を低下させた補正データ(不 均一マップ)を作成した.PMT の感度は,感度低下が ない場合を 1.0 とし,0.01 間隔で 0.9 まで変化させた. 本研究では,この PMT の感度低下を感度低下率(de-creased sensitivity,0–10%)と定義した.次に,この 不均一マップを方法 1-2 で作成したプラナ画像とプロ ジェクション画像に乗算して均一性を変化させた画像 を作成した.感度を低下させた PMT の配置と作成し た不均一マップを Fig. 3 に示す. 1-4 評価項目 1-4-1 積分均一性と微分均一性の変化 感度均一性が画像に与える影響は,各画像の均一部 にそれぞれ関心領域(region of interest: ROI)を設定し (Fig. 4),積分均一性(integral uniformity)と微分均一 性(differential uniformity)から評価した.ROI サイズ は,ファントムサイズの 80%程度となるよう設定し た.積分均一性と微分均一性は式 1 から算出し,微分 均一性は 5 ピクセル単位での最大値と最小値から最大 偏差を 1 ピクセルずつずらして計算し,算出したすべ ての均一性の最大値とした10). 積分均一性,微分均一性 最大値最小値最大値最小値 (1) なお,プロジェクション画像と SPECT 画像の均一 性測定については日本画像医療システム工業会規格で 定められていないが,プラナ画像との対比を行うため JESRA X-0051*C-2017に準じて評価した. 1-4-2 アーチファクトの視認性 アーチファクトの視認性は,核医学検査業務に従事 する核医学専門技師 13 名(経験年数:9±4 年,最長: 15 年,最短:5 年)による視覚評価(視覚スコアリング) で行った.画像を表示するカラールックアップテーブ ルは Black & White,表示ウインドウレベルは,下限 値を 0%,上限値を 100%で固定した.視覚スコアリ
Fig. 3 Generation of non-uniformity correction maps.
Decreased sensitivity: (a) 0%, (b) 5%, (c) 10%, (d) the arrangement of the photomultiplier tubes (PMTs). We decreased the sensitivity of PMTs represented by a gray circle.
ングの基準は,アーチファクトが認識可能な場合は 2 点,認識可能だが他のノイズとの区別が困難な場合は 1 点,認識不可能な場合は 0 点とした.なお,画像表 示は観察者ごとランダムに行い,アーチファクトの種 類や感度を低下させた PMT の本数,配置などの事前 情報は非公開として観察者実験を行った.また,観察 者実験を実施するにあたり,倫理委員会への承認を行 い,観察者全員から事前にインフォームド・コンセン トを取得し,観察者の個人情報が特定できないように 匿名化を行った. 2.結 果 2-1 積分均一性と微分均一性の変化 各画像について積分均一性と微分均一性の変化を Fig. 5 に示す.プラナ画像では,感度低下率を高くす ることで積分均一性と微分均一性はわずかに高値を示 す傾向にあった(Fig. 5a).感度低下がない場合の積 分均一性は 9.3%,微分均一性は 7.1%となり,感度低 下率を 5%とした場合の積分均一性は 9.8%,微分均一 性は 7.8%となった. プロジェクション画像について感度低下率を変化さ せても積分均一性と微分均一性に大きな変化は認めら れなかった(Fig. 5b).感度低下がない場合の積分均 一性は 17.8%,微分均一性は 14.3%となり,感度低下 率を 5%とした場合の積分均一性は 18.9%,微分均一 性は 13.7%となった.一方,SPECT 画像では,感度低 下率が 2%以上になることで積分均一性と微分均一性 は急激に増大した(Fig. 5c).感度低下がない場合の積 分均一性は 17.2%,微分均一性は 16.0%となり,感度 低下率を 5%とした場合の積分均一性は 33.0%,微分 均一性は 27.0%となった. 2-2 視認性 視覚スコアリングの結果を Fig. 6 に示す.すべて の画像で感度低下率の増加とともに視覚スコアは高値 を示した.観察者の半数が「アーチファクトを認識可 能だが他のノイズとの区別が困難」と判定し,残り半 数が「認識不可能」と判定した場合,視覚スコアは 0.5 となる.プラナ画像で視覚スコアが 0.5 以上となる感 度低下率は 4%以上で,すべての観察者がアーチファ クトを認識可能と判定できた感度低下率は 10%で あった(Fig. 6a).プロジェクション画像について視 覚スコアが 0.5 以上となる感度低下率は 6%以上で あったが,プロジェクション画像では完全にアーチ ファクトを認識することができなかった(Fig. 6b). 一方,SPECT 画像について,視覚スコアが 0.5 以上と なる感度低下率は 2%以上で,感度低下率が 5%以上 になることですべての観察者がアーチファクトを識別 可能と判定した(Fig. 6c). Figure 7 に視覚スコアリングに使用した画像の一例 を示す.プラナ画像では,感度低下率を高くすること で欠損様のアーチファクトが確認できる.一方,プロ ジェクション画像では,感度低下率を高くしてもアー チファクトの発生ははっきりとしない.しかし, SPECT 画像では,感度低下率が高くなることで画像 中心とその周囲にリングアーチファクトが発生してお り,プロジェクション画像よりもアーチファクトの発 生を鋭敏に捉えていることがわかる. 3.考 察 検出器の感度均一性が核医学画像の画質に与える影 響は大きく,感度均一性が低下することで画像に欠損 様やリング状のアーチファクトが生じる.そのため, 画像の均一性の確認は装置の品質管理を行ううえで必 須項目となっているが,目視評価が主であるため,そ の精度は観察者の経験に大きく依存する.これまで, 感度均一性とアーチファクトの関連性についていくつ か報告されている11, 12)ものの,アーチファクトの発生 を定量的かつ視覚的に評価した研究はない.本研究で は,シミュレーションを用いて PMT の感度を段階的
Fig. 4 Regions of interest (ROIs) setting for evaluation of uniformity. (a) Planar, (b) projection, (c) SPECT images
に低下させて検出器の感度不均一を再現し,アーチ ファクト発生との関係を評価した.その結果,先行研 究と同様に PMT の感度低下がアーチファクトを発生 させることを再確認できた.また,PMT の感度低下 率を変化させた結果,感度低下率が 2%以上になるこ とでアーチファクトの発生を認識でき,特に SPECT 画 像が検出器の不均一性を鋭敏に反映することを示した. プラナ画像では,感度低下率を高くすることで積分 均一性と微分均一性は高値を示す傾向にあったが,そ の変化はわずかであった.ガンマカメラの性能の保守 点検基準3)では,固有均一性の保守基準値を積分均一 性,微分均一性ともに仕様値の 1.5 倍以内と定められ ている.本研究では,コリメータを装着した均一性を 評価しているため単純な比較は困難であるが,積分均 一性と微分均一性の評価のみでは装置の異常を検出で きない可能性が考えられる.一方,プラナ画像のアー チファクトを視覚的に評価した結果,観察者の半数が アーチファクトを認識できる感度低下率は 4%以上で あった.これは前述した固有均一性の保守基準値をカ バーできる範囲であり,目視による均一性評価の利便 性と有効性を示していると考える.本研究は PMT の 配置と本数を固定して感度のみを低下させた極めて限 定的な状況を想定しているが,目視による均一性の確 認は始業時の点検項目となっており,機器の異常を知 る手段として重要であることが示されたと考える. プロジェクション画像の評価では,感度低下率を高 くしても積分均一性と微分均一性に変化は認められな かった.また,視覚評価においてもアーチファクトを 認識できる感度低下率は 6%以上とプラナ画像よりも 高くなった.一般にプロジェクション画像は短時間で 撮像されるため,統計ノイズが多く含まれる.本研究 で使用したプラナ画像とプロジェクション画像の収集 カウントから統計ノイズ量を考えると,プロジェク ション画像の統計ノイズ量は非常に多いことがわか
Fig. 5 Variation in integral and differential uniformity as a function of decreased sensitivity. (a) Planar, (b) Projection, (c) SPECT images
SPECT images are highly sensitive to changes in decreased sensitivity.
a b c
る.そのため,プロジェクション画像では積分均一性 と微分均一性の変化が乏しく,視認性も低下したと考 える13).一方,SPECT 画像では,感度低下率 2%以上 で積分均一性と微分均一性が急激に増加し,アーチ ファクトの認識も可能であった.SPECT 画像は,360 度方向のプロジェクション画像を逆投影することで作 成される.すなわち,全プロジェクション画像の信号 (アーチファクト)が SPECT 画像に伝達されたため, わずかな感度の低下でもアーチファクトとして現れた と考える.また,本研究では画像再構成時にノイズ除 去を目的にバターワースフィルタを使用した.このバ ターワースフィルタによりノイズ成分が除去されたた め,アーチファクトの認識が容易になった可能性も考 えられる.現在,さまざまなガイドラインで撮像中の 体 動 や ア ー チ フ ァ ク ト の 有 無 を 確 認 す る た め, SPECT 撮像後にプロジェクション画像をシネモード や サ イ ノ グ ラ ム で 観 察 す る こ と が 推 奨 さ れ て い る14~16).しかし,本研究の結果から,プロジェクショ ン画像のみの観察ではアーチファクトを十分に認識で きない可能性が示された.診療に適した画像を提供す ることは診療放射線技師の責務であり,SPECT 撮像 を行った際には,正しい画像が得られているかプロ ジェクション画像のみならず SPECT 画像についても 確認を行う必要がある. 検出器の感度均一性を変化させてアーチファクトの 発生を評価した結果,感度低下率が 2%以上になるこ とで SPECT 画像にアーチファクトが発生した.Iida らは,12 施設で均一な円柱ファントムを撮像した結 果,複数の施設で SPECT 画像に不均一が生じたと報 告している17).SPECT 画像の均一性に影響を与える 因子はさまざまであるが,先行研究と同様に感度均一 性の低下は画像にアーチファクトを生じさせるため, 日常点検と定期点検が重要であると考える. 本研究では,感度均一性の影響を数値的に検証する ためにシミュレーションデータを用いた.そのため, 実際の装置で起こりうるすべての異常や使用頻度,経
Fig. 6 Correlation between visual assessment scores and decreased sensitivity. (a) Planar, (b) Projection, (c) SPECT images
a b c
年変化,気温,湿度などを考慮できていない.また, PMT の本数はソフトウエアの関係上,一般的に使用 されている本数より少ない数でシミュレーションを 行った.しかし,画像を作成する際の有効視野をカ バーしており,相対的な PMT の感度低下をシミュ レーションしているため,本数の違いによる影響は少 ないと考える.シミュレーションから得られた感度低 下がないプラナ画像の均一性は,一般的なシンチレー ションカメラよりも高値を示した.これはコリメータ を加味していること,散乱線成分を十分考慮できてい ないことなどが要因として考えられるが,感度均一性 の影響を相対的に評価しているため大きな問題になら ないと考える.加えて,対象とした核種は99mTc のみ であり,エネルギーピークのずれについては検証して いない.エネルギーピークのずれは,シンチレーショ ンカメラの均一性に大きな影響を与えるため18),今後 は実機による検証が必要である. 4.結 語 検出器の感度均一性とアーチファクト発生との関係 を,シミュレーションを用いて物理評価と視覚評価か ら検証した.本研究は PMT の配置と本数を固定して 感度のみを低下させた極めて限られた条件下での検証 であり,実際の装置の不具合をすべて検証していない が,先行研究と同様に検出器の感度均一性が低下する ことで画像にアーチファクトが発生し,SPECT 画像 がその影響をもっとも鋭敏に捉えていることが明らか になった.また,本研究結果から,目視による日常点 検の有効性と重要性が示された. 謝 辞 本研究に際して観察者実験にご協力をいただいた核 医学専門技師の諸兄に感謝いたします.
Fig. 7 Visibility of image artifacts on each image.
問合先
〒181-8612 三鷹市下連雀 5-4-1
杏林大学保健学部診療放射線技術学科 松友紀和
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