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特集ロシアと中国 ロシア極東と中国の通商 経済関係 ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所 V. クチェリャヴェンコ Владимир Кучерявенко (Институт экономических исследований Дальневосточного отделения РАН) О

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はじめに/36 1.ロシア極東の経済と対外経済関係/36 2.ロシア極東経済にとっての中国/38 3.ロシア側に募る不満/38 4.資金の流れと銀行/40 5.投資面での協力/41 はじめに 特集「ロシアと中国」の一環として、当会と 提携関係にあるロシア科学アカデミー極東支部 経済研究所のクチェリャヴェンコ研究員に、ロ シア極東と中国の経済関係というテーマでご寄 稿をいただきました。以下、邦訳してご紹介い たします。 (編集部)

1.ロシア極東の経済と対外経済関係

極東連邦管区はロシアの連邦管区の中で最 大の面積を誇る管区である。そこにはロシア の領土の36%強がある。ただ、その人口はロ シア全体の5%を超えない。ロシア極東の大 部分の地域は、住民の定住にはあまり適さな い。極東連邦管区の人口密度は、ロシアの他 地域や隣接の北東アジア諸国より著しく劣る。 ロシア極東の平均人口密度は1km2当たり約 1.1人であるが、日本は1km2当たり337.8人、 中国は134.6人である。ロシア極東の住民の主 な居住区は中国、モンゴルの国境沿いにある。 ロシア全体の国内総生産に占める極東地域 のシェアは、その人口比と概ね一致しており、 5.1%と評価されている。国の鉱工業生産に占 める比率は4.3%、農業のそれは3.6%である。 近年、極東連邦管区の経済は継続的な成長 傾向を示している(2005年の地域総生産の成 長は前年比4.3%であった)1)。ただし、極東 の経済指標は、ロシア全体のそれから遅れを とっている。 現在ロシア極東は、その経済発展が外国貿 易の水準と構造によって決定される地域の一 つとなっている。中国、日本、韓国、米国、 モンゴル、北朝鮮などの諸国と直接隣接して おり、ロシアにおいてのみならず、アジア太 平洋地域においても地理的・経済的優位性を 有している。ロシア極東を経由してヨーロッ パからアジアへの最短輸送路が通じている。 ロシア極東の諸港はユーラシアを横断するシ ベリア鉄道とバイカル・アムール鉄道に結び つき、また、ロシア極東沿岸に沿っていわゆ る北極航路にも通ずる。

ロシア極東と中国の通商・経済関係

ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所 V.クチェリャヴェンコ Владимир Кучерявенко (Институт экономических исследований Дальневосточного отделения РАН)“Обзор торгово-экономических взаимоотношений Дальнего Востока России с КНР”

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表1 ロシア全体の国内総生産と極東連邦管区の地域総生産の推移 (前年=100) 2000 2001 2002 2003 2004 2005 ロシア全体の 国内総生産 110.0 105.1 104.7 106.8 107.1 106.0 極東連邦管区の 地域総生産 103.0 105.9 103.8 106.9 104.1 104.3 (出所) Регионы России. Основные характеристики субъектов Российской Федерации. 2005: Стат. сб. / Росстат. − М., 2006. 表2 ロシアの対中国貿易に占める極東連邦管区のシェア (%) 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 ロシアの 中国からの輸入 14.7 15.0 10.9 17.7 14.9 13.8 16.4 ロシアの 中国への輸出 10.9 18.8 43.7 19.7 18.0 17.8 19.3 輸出入 合計 11.7 18.2 34.1 19.1 17.1 16.4 18.1 (出所) Российский статистический ежегодник. 2005: Стат.сб./ Росстат. -М., 2006, с. 702; Деваева Е. И., Попов В. Е., Прокапало О. М. Экономическая конъюнктура Дальневосточного федерального округа в 2005г. / Пространственная экономика, 2006, № 2, с. 58 から算出。 表3 ロシア極東と中国の貿易額の推移 (100万ドル) 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 ロシア極東の 中国からの輸入 170.0 131.4 142.2 176.2 424.1 491.5 655.3 1,187.4 ロシア極東の 中国への輸出 878.8 383.8 982.3 1,696.5 1,046.9 1,406.2 1,491.8 2,162.9 輸出入 合計 1,048.8 515.2 1,124.5 1,872.7 1,471.1 1,897.7 2,147.1 3,350.3 ( 出 所 )Прокапало О. М. Региональная социально-экономическая динамика: Дальний Восток и Забайкалье, Хабаровск: РИОТИП, 2003, с. 202, 210, 219, 236; Деваева Е. И., Попов В. Е., Прокапало О. М. Экономическая конъюнктура Дальневосточного федерального округа в 2005г. / Пространственная экономика, 2006, № 2, с. 57; Данные таможенной статистики. 最近までロシア極東の対外経済関係で主流 となってきたのが、商品貿易と外国投資であ る。近年になって、サービスの輸出入と、外 国人労働者の就労が発展し始めた。 ロシア極東の鉱工業生産に占める輸出の比 率には、非常に高いものがある(ダイヤモン ド部門の場合は44.5%)。一部の部門ではこの 比率が極端に高いものとなっている(石油製 品では55%、漁業部門では66%、林業・木材 工業部門では約90%)2) 同様に輸入も地域経済の中で目立った役割 を果たしている。過去10年間に商品小売販売 に占める輸入品の割合は40%の水準にあった。 2005年のロシア極東の輸出商品構成で、シ

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ェアの大きいものは、石油および石油製品 (39.4%)、魚介類(18.4%)、木材(14.5%)、 鉄鋼(11.3%)であった。全体として燃料、鉱 物原料と金属が59.3%を占め、さらに食品が 19.1%となっている3) 2005年の主な輸入商品は、機械、設備、輸 送手段(59.2%)、燃料、鉱物原料、金属(13.9%)、 工業消費財(11.0%)、食品(7.2%)、化学品 (6.1%)であった4)。主要なパートナーはア ジア太平洋諸国、とくに中国、日本と韓国で ある。 極東連邦管区はアジア・太平洋地域、とく に北東アジア地域諸国とロシアの対外貿易で 重要な役割を果たしている。ロシア極東経済 のアジア太平洋地域志向は、まず何よりもそ の貿易に見て取れる。ヨーロッパ・ロシアの 貿易に占めるアジア太平洋地域との取引のシ ェアが10~17%にすぎないのに対し、極東連 邦管区では88%に達する。

2.ロシア極東経済にとっての中国

そして、北東アジア地域でロシア極東の最 重要な取引パートナーの一つが中国である。 ロシア極東の貿易相手国として、中国は日本 に次いで安定した第2位を占めている。中国 は2005年にロシア極東の全輸出の34.3%を受 け入れ、ロシア極東地域の生産物の最大の輸 入者となった。一方、極東連邦管区の輸入に 占める中国の割合は20.4%である5) ロシアの対中貿易に占める極東管区のシェ アは比較的安定していて、表2に見るように、 2005年には18.1%であった。ロシアの対中輸入 に占める極東のシェアは16.4%、輸出では 19.3%である6) ヨーロッパ部から距離的に隔絶しているた め、極東管区は、90年代初頭に、中国から消 費財および食品を調達することに向かわざる をえなかった。1990年代に中国とロシア極東 地域の貿易・経済関係が急速に伸び、ロシア 極東の一連の地域(とくにアムール州、ユダ ヤ自治州、より弱い度合いながら沿海地方と ハバロフスク地方)の市場が、中国の隣接す る諸省を強く志向するようになった。現在こ の依存関係はやや弱まっている。1993年にア ムール州の輸入の98.5%、ユダヤ自治州では 97.4%が中国からであったのに対し、2001年に はアムール州で76.0%、ユダヤ自治州で27.5% にまで低下した7) 現在、ロシア極東の輸入に占める中国から の輸入の割合は20%強にすぎないが、同国は 依然として最重要な貿易パートナーにとどま っている。 表3からは、ロシア極東と中国の貿易が、 一定の不安定性を伴いながらも、全体として 増大基調にあることが見て取れる。貿易額が 激しく動いたのは、中国からの輸入が急減し た1998年から1999年までと、ロシア極東側の 輸出が低下した2002年である。前者は、明ら かに、ロシアおよびアジアでの通貨・金融危 機の結果であろう。後者については、ロシア の統計によれば、この時ロシア全体から中国 への輸出は低下していないどころか増大して いるので(2002年に前年比36%増)8)、極東 分の減少はロシアの国防産業で生じた組織的 な再編に関連している可能性がある。コムソ モリスクナアムーレ航空機生産合同から、中 国にスホイ戦闘機38機を納入する契約の当事 者としての資格が奪われてしまったのが、ま さにこの時期だからである9)

3.ロシア側に募る不満

ロシア極東は、急激に産業を発展させつつ ある中国東北地方の資源・技術基盤の強化に、 大いに貢献してきた。ロ中の国境が開放され

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てからわずか数年で、ロシアとの貿易に特化 する綏芬河、黒河、撫遠といった中国の小村 が、多くのホテル、銀行、商業センターを抱 える羽振りの良い都市になった。ロ中関係の 発展、貿易・観光の拡大が、中国の国境地帯 を大いに潤したことは疑いない。これに対し、 対中貿易がロシア極東にとってもつ意義につ いては、評価が分かれている。 とくに、ロシアにとってこれまで続いてき たような中国との経済関係は、輸入関税・付 加価値税収入の大規模な喪失を意味するとい う意見は、広く共有されている。というのも、 ロ中貿易では、当事者が無数の個人商人や中 小企業であり、収入が細分化されるため、そ の捕捉・管理が著しく困難だからである。ま た、大規模な投資プロジェクトの実現を不可 能にする。 貿易に用いられる外貨資金の量も、捕捉困 難である。担ぎ屋は国境を越える際に持ち出 しが許されている金額だけ申告しつつ、通常 は様々な手を使って、はるかに多額の現金を 持ち出す。両国の通関統計を比較すると、1 つの品目についての出し入れの金額が大幅に 食い違っており、この点を確認できる。取引 では依然として主に現金決済が用いられ、こ のためロシア側だけでなく、中国商人も、申 告なしで多額の外貨をもって国境を越えるこ とが可能になっている。 ロ中の貿易関係の商品構造を見ると、対極 的で、相互補完的なものとなっている(表4 参照)。 表に見て取れるように、ロシア極東から中 国への輸出で大きなシェアを占めているのが 燃料、鉱物原料、金属である。その点で中国 は、北東アジアの他の貿易パートナーと大差 ない。その際に、とりわけ大きなシェアを占 めているのは、石油製品である(輸出総額の 42.4%)。対象となっている2005年には、ロシ ア極東から中国に原油は輸出されなかった。 これは日本と対照的であり、ロシア極東から 日本への輸出の41%は原油によって占められ ている。表4にある「原料・同加工製品」は、 ほぼ全面的に木材からなっている。また、「食 品」は魚および海産物である。 注目されるのは、ロシア極東から中国への 輸出で、機械・設備の割合が急減しているこ とである。2001年にそのシェアが70%であっ たのに対し、2005年には3%に落ち込んだ。 これはおそらく、ロシア極東で生産される軍 需製品の輸出契約のうち、いくつかが期間を 完了したことに関連していよう。その結果、 ロシア極東から中国への輸出が、資源に傾斜 する傾向が強まっている。 原料、燃料、建材、肥料などからなる中国 のロシア極東からの輸入は、生産的な性格を 帯びている。つまり、中国に輸入された商品 は主として、中国経済の、そして東北地方経 済の発展のために使用される。これに対し、 ロシア側の中国からの輸入は、主に衣類、靴、 食品、そして一部家電品などの消費財が主流 である。このような内容では、ロシア諸地域 の経済発展に果たす貿易の役割を低下させて しまう。 表4 ロシア極東と中国の輸出入商品構成 (2005年、%) ロシア極東 の対中輸出 ロシア極東 の対中輸入 機械、設備、輸送機器 燃料、鉱物原料、金属 化学品 原料・同加工品 食品 工業消費財 その他 3.0 55.0 0.5 25.9 12.0 0.1 3.5 15.0 8.4 7.3 6.0 - 63.3 - (出所)Деваева Е. Структура внешнеторговых потоков Дальнего Востока России / Проблемы Дальнего Востока, 2006, № 4, с. 76-77

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ロシア極東諸地域の政治家やエコノミスト は、こうした状況に関する憂慮を常に抱いて いる。ロ中間では経済的利益のバランスが崩 れており、中国側が得をしているという意見 が後を絶たない。 ロシアでは、とくにロシア極東では、中国 製の消費財について、「二級品、前近代的また は老朽化した設備でつくられた製品」という イメージが完全に定着している10)。このよう に、ロシア極東の経済は、中国の隣接地域に 必要な資源を供給しているだけでなく、中国 製品に対する需要も提供しており、中国東北 地方の生産、雇用、輸出を支えてあげている ことになる。 さらに言えば、中国東北地方の工業企業の 技術的後進性が残っているのは、多分に、ロ シア極東とシベリアの消費者たちが安かろう 悪かろうの商品を大量に買っているからなの である。中国当局は長年にわたり、この状況 を正そうとしてきた。それでも、中国の零細 企業たちは、設備導入をしてより質の高い商 品をめざすよりは、安い商品を生産し続ける ことで当座を凌ごうとしている。かくして、 ロシアは、中国東北地方の経済的後進性の保 持に一役買っていることになる。 しかしながら、中国だけが得をしていると いう見解は、公平を欠く。第1に、ロ中貿易 が発達したお陰で、ロシア極東の市場が消費 財と食料品で満たされた。第2に、価格競争 の結果、地元の商品が値下がりした。ロシア 極東の住民の一部は、中国との貿易でカネを 稼ぎ、これが社会における失業の低下、中産 階級の形成を促し、他の一部(最も購買力の 低い人々)は、この貿易のもたらした安い商 品のお陰で、何とか生き延びているのである。 ロシア極東の地域予算に入ってくる税収に 関して言えば、そのかなりの部分は、まさに 中国商人と、中国商品を取り扱っているロシ アの個人事業主によってもたらされる(市場 の商人や個人事業主からの税収、関税収入)。 一部の都市では、中国商品の取引で、税収が 数倍に伸びたと指摘されている11)。 しかも、ロシア極東は、ほぼ一貫して、中 国との貿易で黒字を計上している(前掲の表 3参照)。1993年から2005年までの黒字の累計 額は、74億710万ドルに達する12) しかしながら、これらの収入のうち、地元 極東の経済の発展に使われたものはほんのわ ずかである。ロ中貿易の急激な拡大は、一部 のビジネスマン、大規模な国営企業を富ませ ただけで、彼らは獲得した資金を大方、極東 の経済ではなく、自らの目的に使ってしまっ た。対照的に、中国の指導部は国境貿易を、 国益のため、そして東北地方の利益のために 利用している。

4.資金の流れと銀行

資本逃避をめぐる状況が、次第に変わって きている。1998年の通貨・金融危機でルーブ ルのレートが下落し、ロシアで輸入消費財を 販売する収益性が低下する一方、ロシアの伝 統的な輸出商品を輸出する収益性が急上昇し た。その結果、かつてはロシアで稼いだ売上 の大半をドルに換え、しばしば非合法に、中 国に持ち帰っていた中国商人が、現在ではそ の資金を大物の商売人(地下銀行のオーナー) に流し、その商売人は貯めた資金でロシアの 輸出品を買っている。こうしたスキームでは、 外貨はそもそも国境を越えない。地下銀行が 貨幣の貯蔵、決済、海外送金の役割を担って いるのだ。中国人の地下銀行がいかに効果的 に活動しているかを間接的に裏付ける証拠と して、ロシアの国境警備員が、ロシアから中 国に不法に帰国しようとする中国人を逮捕し ても、彼らが現金をもっていないということ

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が挙げられる13)。これ以外にも、木材その他 の原料の買付け、あるいは投資目的での中国 からロシアへの資金の流れもある。 ロシアと中国間の銀行同士の協力も進展し ている。両国の銀行間でのコルレス関係が拡 大している。その一環として、ロシア・ルー ブルおよび人民元を使って両国間の国境貿易 を決済するシステムが整備されつつある。 2003年にルーブルと元の使用の実験がブラゴ ウェシチェンスクと黒河地区で始まった。 2004年だけで、中国の銀行がロシアの銀行に 開設したコルレス勘定に繰り込まれた額は 1,450万元に上り、前年比220%増大した。ロシ アの銀行が中国の銀行に開設したコルレス勘 定に繰り込まれた額は17億6,490万ルーブルで、 同414%の伸びであった14)。ルーブル口座と元 口座が不均衡になっているのは、国境貿易の 構造を反映している。つまり、ロシア側の輸 出は主に外貨商品からなっており、これはロ ーカル通貨での決済に移行しようとする関心 を低下させる。 2005年からこの決済システムを地理的に拡 大することが決定され、ロシア側では沿海地 方、ハバロフスク地方、アムール州、チタ州、 ユダヤ自治州、アルタイ共和国に、中国側で は黒竜江省,内蒙古地区、吉林省、新疆ウイ グル自治区に広がった。 しかし、現在のところ、ロシア・中国間の 銀行部門の協力は、全面的にポテンシャルが 発揮されるに至っていない。中国にロシアの 銀行の支店は一つもなく、いくつかの駐在員 事務所があるのみである。中国に支店を開設 することに関し同国の法令が定めている基準 を満たしているロシアの銀行が、一つもない からだ。中国の銀行は、ロシア銀行システム の不安定性を理由に、ロシアの銀行に対しク レジットラインを開設することを拒んでいる。 中国の銀行は積極的にリスクをとってロシア との貿易取引、投資プロジェクトに融資をす るということをしていない。中国とロシア極 東の銀行間でコルレス関係が構築されている にもかかわらず、決済の主要部分は引き続き、 第三国の銀行を通じて行われている15)。

5.投資面での協力

投資協力に関しては、拡大は遅々としてい るものの、ここ数年、いくつかの前向きな動 きが出てきた。2005年中に中国商務省は、ロ シアでの投資プロジェクト82件を登録し、そ の契約総額は3.2億ドルに上った16)。うち、極 東管区分が全体の6.3%である。一方、2005年 にロシア極東が中国から受け入れた投資は 2,020万ドルであった。しかし、ロシア極東の 受け入れた外国投資のうち、中国からの投資 の比率は、2004年で0.2%、2005年で0.3%にす ぎない。 2005年にロシア極東が中国から受け入れた 投資のうち、67.4%がハバロフスク地方による 受入である。以下、ユダヤ自治州の9.2%、沿 海地方の9.1%、アムール州の7.6%、サハリン 州の6.1%と続いた17)。サハ共和国はロシア極 東で最大規模の外資受入を誇るが、中国の投 資は受け入れていないのが興味深い。マガダ ン州にも中国の投資は入っていない。 全体として、今のところ、中国からロシア 極東への投資の急増は望める状況ではない。 第1に、ロシア極東は、労働コスト、労働生 産性、エネルギー消費効率といった点で、中 国に対する優位性をもっていないからである。 第2に、中国自身が外国投資の大口の受入国 であり、第三国の投資を受け入れるという点 でむしろロシアと競合し合うからである。 中国の大企業がロシア企業と投資面で協力 できる条件が良好なセクターでは、中国企業 はほとんどが国営となっている。ロシアの民

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間企業側は国家保証を得られないので、両者 の協力は困難となろう。 その一方で、ロシア極東において設立され る外資参加企業の件数という点では、引き続 き中国資本のものが最も多い。ただ、それら はほとんどが中小企業である。中国人は、 100%中国資本の企業を設立しようとする傾 向にある。設立が盛んなセクターは商業、外 食、縫製、ホテル、建設、農業、木材加工な どである。2004年現在でロシア極東の主要地 域に登記されている中国資本参加企業の件数 を見ると、沿海地方:573、ハバロフスク地方: 334、アムール州:64、となっている18) 最近、中国のロシア極東経済への投資規模 を大幅に拡大することになるようなプロジェ クトが検討されている。まず、石油パイプラ インの建設、そしてブレア水力発電所の中国 国境の工業地区への送電輸出がある。もう一 つの大規模プロジェクトとして、ロ中国境の 商業コンプレックス「ポグラニーチヌイ・綏 芬河」の建設がある。また、沿海地方、アム ール州での木材一次加工が軌道に乗りつつあ る。ユダヤ自治州では中国の木材企業が箸を 生産する小規模工場を開設した。同自治州の ビロビジャンでは、家具、ベニヤ板、寄せ木 の生産が計画されている。 しかし、このような肯定的動きにもかかわ らず、ロシア極東での中国の投資活動はまだ 地域経済に大きな影響を与えるまでには至っ ていない。

【注】

1)Деваева Е. И., Попов В. Е., Прокапало О. М. Экономическая конъюнктура Дальневосточного федерального округа в 2005г. / Пространственная экономика, 2006, № 2, с. 45 2 )Регионы России. Основные характеристики субъектов Российской Федерации. 2005: Стат. сб. / Росстат. − М., 2006. にもとづいて算出。 3)Деваева Е. И., Попов В. Е., Прокапало О. М. Экономическая конъюнктура Дальневосточного федерального округа в 2005г. / Пространственная экономика, 2006, № 2, с. 58 4)Там же, с. 59 5)Там же, с. 57 6)Российский статистический ежегодник. 2005: Стат.сб./ Росстат. -М., 2006, с. 702; Деваева Е. И., Попов В. Е., Прокапало О. М. Экономическая конъюнктура Дальневосточного федерального округа в 2005г. / Пространственная экономика, 2006, № 2, с. 58 にもとづいて算出。 7 )Прокапало О. М. Региональная социально- экономическая динамика: Дальний Восток и Забайкалье, Хабаровск: РИОТИП, 2003, с. 202, 210, 219, 236. 8)Российский статистический ежегодник. 2005: Стат.сб./ Росстат. -М., 2006, с. 702 にもとづいて 算出。 9 ) Посьетцев А. Гособоронотказ / Дальне- восточный капитал, 2004, № 3 (http://kapital.zrpress.ru/subjnum/2004/0301.asp) 10)Ларин В. Л. Китай и дальний Восток России. Владивосток: Дальнаука, 1998. с. 142-143 11)Ларин В. Посланцы поднебесной на Дальнем Востоке: ответ алармистам / Дальневосточный ученый N20, 16 октября 2002 12 ) Прокапало О. М. Региональная социально- экономическая динамика: Дальний Восток и Забайкалье, Хабаровск: РИОТИП, 2003, с. 202; Прокапало О. М. Социально-экономический потенциал субъектов Федерации российского Дальнего Востока. Хабаровск: Издательство ХГТУ.- 1999. с. 105; Деваева Е. И., Попов В. Е., Прокапало О. М. Экономическая конъюнктура Дальневосточного федерального округа в 2005г. / Пространственная экономика, 2006, № 2, с. 57 に もとづいて算出。 13)Нырова Н. Китайские компании приграничной торговли и их место в международной преступной деятельности / Проблемы Дальнего Востока, 2004, № 1, с. 102 14)Деловой Китай, том VIII. Экономика и связи с Россией в 2000-05 гг., М, 2005, С.106 15 ) Александрова М. В. Российско-китайские приграничные экономические отношения – М.: Издательство «ОГНИ», 2005, с. 173-174 16)Инвестиционное сотрудничество России и Китая / Материалы III-го Российско-китайского инвестиционного форума (http://www.rc-forum.ru/cooperation/report/) 17)Деваева Е. И., Попов В. Е., Прокапало О. М. Экономическая конъюнктура Дальневосточного федерального округа в 2005г. / Пространственная экономика, 2006, № 2, с. 62 にもとづいて算出。 18)Деловой Китай, том VIII. Экономика и связи с Россией в 2000-05 гг., М, 2005, С.107

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