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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

遺伝性痙性対麻痺28型のモデルとしてのDdhd1ノック アウトマウスの解析

森川, 拓弥

http://hdl.handle.net/2324/4784422

出版情報:九州大学, 2021, 博士(理学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

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(様式3)

氏 名 :森川 拓弥

論 文 名 :遺伝性痙性対麻痺 28 型のモデルとしての Ddhd1 ノックアウトマウス の解析

区 分 :甲

論 文 内 容 の 要 旨

両親がいとこ婚であり、その子が痙性対麻痺(下肢の痙縮と歩行障害を主な症状とする遺伝性神 経疾患)を発症している家系から、エクソーム解析を用いてDDHD1遺伝子内の新規4塩基欠失を 責任変異として同定した (Miura et al 2016)。DDHD1が責任遺伝子である痙性対麻痺を SPG28 (Spastic paraplegia type 28)という。この疾患は希少疾患であり、治療法もない。また、DDHD1 はリン脂質の代謝酵素をコードしており、脂質の代謝異常がどのように神経疾患引き起こすのか、

そのメカニズムが明らかになっていない。それらを明らかにする目的で、CRISPR/Cas9 を用いて 患者の持つ変異を模倣した Ddhd1ノックアウトマウスを作成した。SPG28は遅発性の疾患である ため、老齢マウスを用いてで実験を行う必要があった。

26ヶ月の月齢のマウスで、FBA (Foot base angle)テスト(歩行時の後脚と地面の角度を測定す る手法)を用いて歩行障害様症状の観察に成功した。同じく 26 ヶ月のマウスの大脳を用いてリピ ドーム解析(リン脂質の網羅的測定)と RNA sequencing を行ったところ、アラキドン酸を含む LPI (Lysophosphatidyl inositol) 20:4がノックアウトマウスで有意に低下しており、細胞間コミュ ニケーションやシナプス伝達に関わる遺伝子の発現が有意に変動していた。さらに、6 ヶ月の症状 の出る前の段階においても、脊髄における軸索の脱落が起こっていることを免疫染色によって確認 した(Morikawa et al 2021)。アラキドン酸を含むLPIが引き起こすシグナリングが神経回路の構成 に関わっていることが知られており、アラキドン酸を含むLPIが減少することがこのシグナリング を脆弱化させ、神経細胞の衰退を引き起こしているという発症モデルを提案した。

さらに、SPG28 の血中バイオマーカーを同定する目的で、Ddhd1 ノックアウトマウスの血漿を

用いてリピドーム解析を行った。その結果、予想に即して Ddhd1の基質である PI (Phosphatidyl inositol)とLPA (Lysophosphatidic acid) 24:0が Ddhd1ノックアウトマウス上昇していることを明 らかにした(未発表)。これは、PIまたはLPA 24:0がSPG28のバイオマーカーとして利用できる 可能性を示唆している。実際にこれらを SPG28 のバイオマーカーとして使用するためには、ノッ クアウトマウスで見られた PIとLPA 24:0の上昇が、SPG28患者の血漿においても再現される必 要がある。2021年 7月にSPG28患者の血液を採取することができ、現在リピドーム解析の準備中 である。

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参照

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